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801 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 16 28 ID /90afY0a 素で間違えた ヤンデレスレの間違いだった 802 名前:ヤンデレウィルスに感染してみた[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 16 30 ID DVyEHqHf 赤鬼泣いた」 昔々あるところに心の優しい赤鬼がいました。 人間たちと仲良くしたいと思っていましたが、みな怖がって近づきません。 家の前に 「心優しいオニの家、どなたでもおこしください。 おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてござます。」 という立て札を立てても、人間たちに信じてもらえませんでした。 そんな時、遠くの山に住む幼馴染の青鬼ちゃんがやってきました。 「やあ赤鬼、元気がないな、どうしたんだい?」 落ち込む赤鬼が心配になった青鬼ちゃんが尋ねました。 赤鬼は青鬼ちゃんにすべてを話しました。 すると青鬼ちゃんは 「なんだ、それならアタシにいい考えがある。 アタシが村に下りて暴れまわる。 そこにアンタが止めに入り村人を助ける。 そうすれば村人にアンタが優しい鬼だと分かって貰える」 「でもそんなことをしたら青鬼ちゃんが……」 「アタシのことなんて気にしなくていいんだよ。 アンタのためなら、アタシはなんだってできるんだ」 「そうか、ありがとう、ありがとう」 うれしさのあまり赤鬼は青鬼ちゃんに抱きついてしまいました。 青鬼ちゃんは青鬼なのに赤くなってしまいましたが、 それを言うと青鬼ちゃんが怒るので黙っておくことにしました。 そして次の日、計画を実行に移すことにしました。 「そうだ、アンタは遅れておいで、一緒にいくと怪しまれるからね」 赤鬼が頷いたのを確認すると、青鬼ちゃんは村へ降りていきました。 それからしばらくの後、村のほうから人の悲鳴が聞こえてきました。 「もういいかな」 赤鬼は青鬼ちゃんに言われたとおり、遅れて村へ降りていきます。 村の入り口に立った赤鬼は言葉をなくしました。 ほんの少し前まで人々でにぎわっていた村が、廃墟と化していたのです。 「なんだこれは、なにがおこったんだ」 村に入っていくと、そこかしこに無残に変わり果てた村人が転がっていました。 奥へ奥へ村を歩きましたが、動くものは何一つありません。 「たああああすけてええええええ!」 そのときです、村人の悲鳴が聞こえました。 赤鬼は悲鳴のしたほうへ走ります。 「……!?」 そこには既に事切れた村人を片手に持った青鬼ちゃんがいました。 「青鬼ちゃん!なんてことを!」 村人を投げ捨てて青鬼ちゃんは言いました。 「いっただろ?アタシは、アンタのためならなんだってできるって。 これでアンタの心を乱す邪魔者はいなくなったんだ。 さあ、山に戻って二人で暮らそう。二人じゃ寂しいなら子供を沢山産んでやる」 そう言って青鬼ちゃんは笑いました。村にはもう人間はいませんでした。 返り血を浴びた青鬼ちゃんは青鬼なのに赤くなってしまいましたが、 それを言うと青鬼ちゃんが怒るので黙っておくことにしました。 あかおには、しくしくとなみだをながしてなきました。 803 名前:ヤンデレウィルスに感染してみた[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 20 23 ID DVyEHqHf 「K」 暗い部屋に篭って『彼』を眺める、それが私の日課。 あの雨の日、校庭で『彼』を拾ってから。 雨に濡れて冷たく光る『彼』に魅了されてから。 『彼』を拾った次の日から、何日も学校を休み部屋にこもり、一日中眺めている。 朝日を反射し輝く『彼』も素敵。 月光で冷たく煌く『彼』も素敵。 『彼』に舌を這わせる。ひんやりと冷たい感触が気持ちいい。 このままずっとこの部屋で二人で……そんな生活も終わりを迎えることになる。 親に無理やり学校へ連れてこられたのだ。 車に乗せられて登校。『彼』は上着の内ポケットに忍ばせた。 上着にかかる『彼』の重みが妙に心地よかった。 昼休みまでが我慢の限界だった。 5時限目始業のチャイムが鳴ったとき、私はまだ廊下にいた。 どこか適当に使われていない教室に忍び込む。 授業のない空いた教室にこもって『彼』を眺めた。 そのほうが授業なんかよりもずっとずっと大切で有意義だ。 どれだけの時間『彼』を眺めただろう。 このまま放課後までこうしていられたら、そんな願いはもろくも崩れ去る。 教室のドアが開かれ、キツイ化粧でレンズの厚いメガネをかけた女教師が入ってきた。 ノックもなしにドアを開けたのは生徒指導の柳川だった。 なんてデリカシーのない人間だろう私と『彼』の二人きりの時間を邪魔するなんて……。 そんなだから40過ぎても嫁の貰い手がないんだ。 「ちょっと、授業中になにして――」 柳川が嘗め回すような視線を私に向け、その視線が『彼』で止まった。 「な、あなた!学校になんてものを……!」 『彼』を奪われる! 柳川の手が私の腕に伸び、私は掴まれまいとその腕を振り払った。 804 名前:ヤンデレウィルスに感染してみた[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 25 07 ID DVyEHqHf ――すっ 「ぇ…………?」 鳩が豆鉄砲食らったような顔をする柳川、そんな面白い顔できたんだ。 次の瞬間、首から大量の血が噴出し二人に降りかかる。 とっさに喉を押さえたが、手の隙間から血があふれ出し床に広がっていく。 血の気が引いていくのがわかった。 なんてことをしてしまったんだ! どうしよう、こんなこと、うそ、嫌、いや、イヤ…… 『彼』を汚してしまうなんて!!! よりによって、こんな、こんな女の血で! 早く、早く帰って『彼』を洗わなきゃ! 元凶の柳川は虚ろな瞳で喉を押さえ、血の海に横たわっている。 ただ汚い水溜りを広げる柳川。 無性に腹がたつ、こんな女の血が、『彼』を汚した……! がら空きの腹に力の限り、蹴りを入れる、一回、二回、三回、これで勘弁してやろう。 去り際に唾を吐きかけ、私は大至急で家を目指した。 こんな場所、学校では安心して『彼』を洗えない、愛でられない。 はやく、二人の家へ。 それから数時間後彼女は死体となって発見された。 自宅の自分の部屋で全身を鋭利な刃物で滅多刺しにしてベッドの上で死んでいた。 自宅玄関は鍵が掛けられ、自室には内側から鍵が掛けられており、 抵抗した後や争った後がないことから、自殺と思われる。 百以上ある刺し傷のほとんどが股間、下腹部に集中していたという。 表情は満足げで幸せそうだったという話だ。 自殺に使われた刃物はいまだ見つかっていない。 end 805 名前:ヤンデレウィルスに感染してみた[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 26 21 ID DVyEHqHf 以上です やっぱSSってむずかしい 806 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 29 12 ID /90afY0a 805 割り込んですみませんでした それとGJ! 童話にはヤンデレがよく似合います 807 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/20(水) 23 42 12 ID ZGLIirxB 青鬼が素晴らしく可愛いw 808 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/21(木) 00 54 40 ID 2AB4fr7J 赤鬼と青鬼の話をさっきイミフで見掛けたんだが? 809 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/21(木) 00 57 41 ID 2AB4fr7J すまん童話だったのかw 810 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/21(木) 11 24 47 ID BLVk/4oM GJ! 誰か拉致監禁もの書いてくれないかな 811 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/21(木) 20 47 17 ID Y1gWvfE7 片手で村人を持つ青鬼ちゃんに萌えた 812 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 30 22 ID frfOcExm では投下致します 813 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 33 25 ID frfOcExm 第4話『動機』 ■幽霊視点 私が死んでから、何年の月日が流れたでしょうか? 幽霊になると本当に自分の流れる時間の間隔が曖昧です。 普段は誰もいないアパートの一室にて独りで過ごす日々が続いたせいか、孤独がたまらなく恐くなっていました。 この幽霊物件と呼ばれた部屋を借りようとする人間は私の存在を知ると数日以内に居なくなる。 最近では噂が蔓延なく行き届いているのか、借りようとする人間はいなくなっていたはずでした。 すぐに独りぼっちになるけど、一番堪えたのは私の存在を拒絶して痛々しい一言を私にぶつける。 私だって生前は恋する女の子なんですよ。 化け物とか、幽霊とか、人殺しとか言われて喜ぶ人間なんてこの世にいるはずがない。 その言葉を聞くだけで普通に傷つきます。1週間以上はずっと落ち込んで泣いたままなんです。 成仏できない間はそんな酷い毎日が続くと私は思い込んでいた。だけど、世の中には幽霊以上に生粋な方がいることを私は知りました。 松山光一さん。 現在の私が住み着いている部屋に住んでいる男の子。 その人は私が幽霊だと知っていても、部屋を抜け出すこともなく、 私の存在に怯えて拒絶せずに何となく家賃が安くなるというだけで私を受け入れてくれた人。 それだけで私の寂しさと悲しみは癒された。癒されたんです。 たった、小さな、いや、本当に小さなきっかけで人の心というのものは癒されると実感しました。 光一さんの共同生活は……私がずっと夢見ていた彼氏彼女の生活を送っています。 光一さんと一緒にいるだけで胸の鼓動が止まりません。 これが恋なのでしょうか? 生前の私は本当につまらない人間でした。 受かった大学が自分のレベルよりも難易度が高かったために留年と退学の二つの選択肢に挟まれて勉学に忙しい日々。 大学で出来た友人は男漁りのために大学にやってきたんでしょうか? 毎日、毎日、毎日、どこぞの男の人と合コンに行ったり、デートしたり、 真面目に日々を生きている私が馬鹿馬鹿しく思えるぐらいに遊んでやがりましたよ。ちくしょうが。 814 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 34 29 ID frfOcExm そんな男ばっかり追いかけていた友人の幸せな顔を見た時はちょっとばかりの殺意と恋に対する憧れな想いを抱きました。 女を磨くためにゃ、それなりのお金がいる。新しいお洋服に、TVで怪しい通販番組に電話をして怪しいダイエット商品と ヤベぇ薬など購入したり、と女の子はとてもお金がかかるんです。 自然と両親から送られてくる仕送りばかりでは生活できずに山に芝刈りに行く事を誰が責められようか? ええっ。 山の豊富な食材を仕入れないと私の生活はやっていけませんでしたね。 そこらに生えている怪しいキノコや雑草や木の実など自然の食材はタダなので食費節約に本当に丁度良かった。 ただ、それが私の死亡フラグになろうとは夢にも思いませんでした。 その晩に山から取ってきた食材をどうやって美味しく料理を食べるのかと神の一手を打つぐらいに長考して、導き出した答えは。 とりあえず、何でも焼いておこう。炭で。 部屋を閉め切っていることも気付かずに炭で食材を焼いて、何か灰色の煙が部屋を充満するが空腹の胃袋が暴れているので そんな細かいことは気にしません。キノコを焼くと美味しいそうな匂いがしたので私は無我夢中で食い散らしていると体に異常が。 口から笑いが全く止まらなくなったのです。その場で笑っている間に炭を焼いた煙が部屋中に行き渡り 私は笑いながら、一酸化炭素を中毒になるまで吸って。 死亡。 死因 一酸化炭素中毒死。 当時は女子大学生が一酸化炭素中毒自殺したと小さな新聞社が取り上げていましたが、 それだけで宮野由姫という人間の死はそれ以降は触れられることはありませんでした。 まだ、恋の一つもしていないのにこんな死に方をすれば、死んでも死にきれますか!! その未練が残っている限りは私は幽霊として存在し続けることでしょうね。 だから、光一さん。 あの女と関わるのはもうやめてください。 わたし、私だけを見て。お願いですから。 815 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 36 28 ID frfOcExm ■光一視点 昼頃になると何だか睡魔が襲ってきそうだが、幽霊が背後霊のようにべったりと甘えている事以外は何事もない平凡な休日であった。 ある程度の家事を済ませて、ヤンデレゲーをやっていると俺の携帯にメールの着信音が鳴っていた。 メールの相手はなんと、藤寺さんだった。 この間、俺の家へ遊びにやっていた時は後ろで可愛らしく睨んでいる幽霊が体を乗っ取るという珍騒動のおかげで 大した時間も取れずに帰っていた。というか、俺が痛い人という誤解を解くことが大半だったような気もしなくはないが。 メールの内容は単純にこう書いてあった。 松山くん あの、この前に遊びに行った時に私忘れ物とかしなかったかな? ちょっと、人の頚動脈ぐらい簡単に切り裂きそうな、毎日毎日研いでいる 鋸なんだけど。 もし、松山くんの家に忘れているんだったら 今、公園にいるので持って来てくれないかな? その後に、一緒にどこかへ食べに行こうよ。 ということで今から30分以内に来て下さい 絶対に来てね。私、ずっとずっと待っているから それじゃあ。 あんな危ないモノを持って、公園まで行くのかよ。 と、メールを読んだ俺の感想だった。 「ふーん。光一さんは健気な幽霊を置いて、可愛いあの子とお昼を食べに行くんですか」 背後霊が嫌味たっぷりに言ってくる。まるで小姑のような細かいことをネチネチといびってやると思い切りに顔が出ていた。 「由姫さんはお留守番。水と食料は備蓄しているので勝手に食べてくれ」 「いや、私幽霊なんだから別にそんなもの食べなくても生きれるし」 由姫さん。あんた、死んでるでしょ。 「それに光一さん、あの女は危険です。常識的に考えてくださいよ。 どうして、鋸なんかを人様の家に忘れてくるなんてありえないですよ」 「常識外の存在がそれを言うか?」 「女心を理解できない光一さんよりも説得力がありますよ。恐らく、 今回は光一さんを遊びに誘うために忘れて行った鋸を口実に使ったようですね、むむっ、許せん」 「鋸はちゃんと隠して持っていかないと銃刀法違反で逮捕されるし」 「行くんですか?」 「行くよ」 藤寺さんがそこまで気を遣って誘ってくるなら男として行かなきゃならない。家で由姫さんと一緒にいるよりはマシだね。 「むむむっ。私と一緒に居てくれるって約束したじゃないですか!!」 「約束してないでしょ」 「休日は家族と暮らすのが一番いいんです。芸能人が貧乏人には一生食べられないだろみたいな美味しいそうな高級料理の紹介している テレビ番組を一緒に見たり、貧困層には一生行けないような観光地特集とか見て、今日は過ごしましょうよ」 「何かそれヤダ」 幽霊と一緒にテレビ番組を見る内容がそんなモノしか流れてない放送を視聴するだけで心が病んでいきそうで恐い。 というか、番組内容にちょっと殺意が沸きそう♪ 「それだったら、藤寺さんと一緒に昼を食べて来るよ」 「ぬっ? ワタシヲステルンデスカ?」 「捨てるとかそういうんじゃない。ただ、付き合うなら生身の女の子がいいと思うんだ」 「生身!? 生身ですか。やはり、幽霊のような不老不死よりも若くてピチピチした人の方がいいんですね!! うっっっっっ!!!!!!」 「若さの問題じゃねぇだろ」 と、幽霊は泣き崩れて会話にもならんかった。幸い、俺は幽霊に同情して優しい言葉をかけるような人間ではなくて、 号泣している由姫さんは完全にスルーして、藤寺さんが忘れた鋸を適当な包装紙に包んで、さっさと我が家を後にした。 816 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 37 33 ID frfOcExm ■幽霊視点 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 殺してやる!! 光一さんを!! この手で八つ裂きにしてあげます。何が生身の女の子ですか? 私のような幽霊は光一さんの心をGETするような魅力がないと言うつもりでしょうか? 許せなかった。 私よりも、あの女を選んだ光一さんが。 幽霊という存在はこの世に未練があるという他に存在する方法があると聞く。 それは『憎悪』 人を呪い殺すことができる憎悪という感情こそがこの世に干渉する程の力を持つことができる。 すでに人の心を捨て去った私は充分に光一さんを殺すための力がある。 所詮、死者と生者。結ばれるはずもない二人が恋仲の関係になるなんてありえないんです。 だったら、どうすればいいか? 私は今まで考えることを拒否したことに辿り着く。 光一さんが生きているなら、死者になってもらえばいい。 私が生き返るなんて奇跡が起きるはずもない。光一さんに幽霊になってもらって、二人は永遠に愛し合って生きていく。 それが一番の理想ですね。 他の女の人に渡してたまりますか。 これは私の幽霊として意地です。 痛みも感じさせずに殺してあげますから 楽しみに待っていてください。光一さん。 天国と地獄を充分に味わって、一緒に逝きましょう。無限の監禁の始まりです。 それが私達にとって、何よりの幸福ですから。 さてと、荷造りして新天地を目指しましょうか。 よいしょ。よいしょ。 817 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/08/21(木) 22 39 29 ID frfOcExm 以上で投下終了です 幽霊の日々は次で最終回です 鮮血の雨が降ってくれたらいいと思いますね それでは 818 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/21(木) 23 20 16 ID o082N6Hc 817 GJ! 続き楽しみにしてます 819 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00 00 12 ID yCSenGJd 次回最終回なのか… 楽しみだが切ないな 820 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 00 28 29 ID CXqqqm7Q まぁ主人公がどうなろうとヤンデレ娘が幸せならハッピーエンド というわけでハッピーエンド希望 821 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 09 53 26 ID 3wVryIJu 817 GJ!!次回が最終回なのか。もうちょっと続いてほしかったかな。 ところで藤寺さんはヤンデレ娘なのかな? 822 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 10 49 07 ID nHYpSRrK 805 怖い良いね 滅多刺しで自殺ってできるのかな 823 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 16 10 08 ID nmJF9oA5 できないでしょ、傷が深いだけで警察は他殺の線で捜査するって聞いた。 滅多刺しなんて・・・・武市半平太は腹を十字に割いて切腹したらしい 824 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 16 11 48 ID I16U4Pu0 ためらい傷だらけの割腹自殺があったけどな 825 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 17 48 45 ID PDEl+kVw 三文字じゃなかったか? 826 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 18 30 21 ID qXpkSTmJ 殺してやる!!殺してやる!!殺してやる!! 某赤い汎用人型決戦兵器のパイロットじゃあるまいし… 一時期、野草を食ってた俺が言える事じゃないが、死因がマヌケ過ぎる… ともかくGJ!!! 827 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 18 42 40 ID XlGlIY/r 透歌さんの続きが読みたいのは俺だけじゃないはずだ 828 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 22 56 13 ID LEKzwJps 某赤い汎用人型決戦兵器のパイロットって誰さ? 829 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 23 04 37 ID CXqqqm7Q はいスルー 830 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 23 32 40 ID qXpkSTmJ 828 汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン弐号機 専属搭乗者 惣流 アスカ ラングレー コイツはヤンデレか?…否ッ!タダのワガママ女だと思う。 件のシーンは映画見たらわかる… 透歌さんか…待ちだな… 831 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 23 41 03 ID 3wVryIJu アスカはヤンデレでもなく、ワガママ女でもなく、ただのキチガイ女だよ。 なんでこんな女が人気あるのか理解に苦しむ。 832 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/22(金) 23 45 37 ID TMyyseBm アスカはデレてないというか明確な恋愛感情をもってないだろ 病んだ愛情表現と言えそうな行動もなかったし。 しばらく来てなかったから話が分からんな、透過さんとやらを漁ってくるぜ 833 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 00 10 18 ID IIYFFQoY それ以前にみやむーが声優をやっている時点でびっくりしたわ 全盛期の頃と比べ、今はなにやってんの? 834 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 00 53 13 ID xvehgwXH エヴァで一番ヤンデレっぽいセリフは 「裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!父さんと同じに裏切ったんだ!」 835 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 00 54 01 ID FPcKzvTf パチンコ関係のイベントにちょくちょく出てるらしいよ 831 アスカ好きも居るんだからキチガイ呼ばわりは止めてくれよ… 836 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 01 11 40 ID oTN5Fj8k アスカはヤンデレってよりも病ンデルかな、量産型倒しまくるとこは格好良くて好きだよ 恋愛感情で動いてるヤンデレをロボット兵器なんかに乗せたら絶対人類は救われないなw 837 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 01 27 37 ID IzLKCuZw つまりヤンデロイドでおk 838 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 02 04 09 ID wzoRhu7o ヤンデレっ娘一人の思いも叶えられない人類なんて救われなくてもいいさ 839 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 03 55 41 ID kW6DoFeU アスカがヤンデレかツンデレかただの基地か知りたいなら エヴァ板にいけば懇切丁寧に教えてくれるぞ。 10年以上検証してきた猛者ぞろいがいっぱいいる。 840 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 04 18 39 ID 8UMTg8+/ もういいだろアスカなんて 境界線にいるようなやつは解釈のしかたによってキチガイにもヤンデレにもとれるんだから ただ荒れるだけだろうが・・・ ある程度スレの住人の賛同を得られる女じゃないとめんどくさいぞ これっていつもあるようなレナはヤンデレ論だろ・・・ 841 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 08 21 42 ID C58IiWeM ・版権モノは専用スレでお願いします。 842 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 08 38 47 ID VA/aJOvN それはSS投下のお約束であってネタ雑談のお約束じゃないぞ。 アスカついて話続けろとは言わんが 843 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 09 33 30 ID J30wvJaE ヤンデレの前で偶数枚の花びらがついた花で『好き、嫌い、好き……』をやりたい 844 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 11 11 51 ID Uh29z4Pg 843 「どうして『嫌い』が入るの……? ねぇ、なんで!?」 845 名前:花うらなわない ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/23(土) 12 00 45 ID wzoRhu7o 「あ、美玖ちゃん、見てよこの花。花占いの花だ!」 僕はそう言いながら、黄色い雄花を核として、周りを白い花弁が取り囲んでいる清楚な花を指差した。 何故だかはしらないけど、この花は花占いの花として使う花なのだそうだ。 僕はその群生している花から一本を引き抜いて、花占いを始めた。 「好き……嫌い……」 と、そこまで数えたときのこと。 何かそこそこの質量があるものが縄跳びの縄のような音を立てて僕の眼前を掠めた。 同時に、美玖ちゃんのスカートがひらりと翻る。突風でも吹いて何かが飛ばされてきたりしたのだろうか。 「白だ……」 「え?」 「い、いや、花の色がさ」 といいながら花を見た僕は驚愕させられた。まだ二本しか引き抜いていないはずの花びらが、もう一枚しか残っていない。 「どうしたの? 変な顔して」 彼女はそういってコロコロと笑う。 「美玖ちゃん、ダメじゃないか、ずるしたら」 「じゃあ君は“嫌い”でもいいって言うの?」 さっきの何かは彼女の足だったのか。超高速の蹴りで一枚の花弁だけを残して花を蹴散らすなんて、さすが美玖ちゃん、相変わらず人間離れした所業だ。 僕がそのことで文句を言うと、彼女は一変、表情を険しくした。 「いや、そういうわけじゃないけど……でもこれは運命っていうか、そういうのを見るもののわけだし」 「誰が私と君を引き裂くような運命を作っているの?」 彼女の表情の険しさはどんどん増していく。僕はビクビクしながら答える。 「え、ええっと……神様、とか?」 「私と君を引き裂くんだったら、たとえ神様だって殺してやるわ」 彼女はそう言って、にっこりと微笑んだ。 彼女がそういうんだったら、本当にそうしてしまうんだろう。 神様も長生きしたいのか、以来僕が彼女について花占いをすると、必ず“好き”という結果が出た。 846 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 13 16 24 ID rkxC65y5 なるほどそうなるのか もっとやって下さい 847 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 14 09 58 ID DhDAs1Wp タイトル読もうとすると噛むな OK、もっとやるんだ 848 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 14 33 38 ID T+LsnirE 845 神を殺した者はカンピオーネと呼ばれ、その権能を簒奪できるっていうから ヤンデレは恋愛の神様(アフロディテとかエロスとか)を殺すといいんじゃない? 849 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/23(土) 14 39 23 ID wzoRhu7o 例のごとく、 843を見てついやってしまっただけなので続きません 850 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/23(土) 14 56 10 ID 8UMTg8+/ 848セリカを思い出してしまったじゃないか・・・・・ 851 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 37 49 ID oprcGLxV どうもこんばんは。 ヤンデレ家族が、日曜日の約1時30分をお知らせします。 清算編です。 852 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 39 19 ID oprcGLxV *** 私は、家族のみんなが好き。 時々不機嫌なことがあるけど、普段は聞き上手で相談しやすいお父さん。 家族全員の面倒を見る、しっかり者のお母さん。 同級生の友達から紹介してと頼まれるぐらい、格好良くて目立つ弟。 そんな弟にいつまでもくっついて離れない、子供っぽい一面を持つ妹。 ずっとずっと、家族五人で仲良くしていたい。 進学したり就職したり結婚したりで離ればなれになっても、胸を張って私の家族だと言い切れる仲でいたい。 お父さんとお母さんは二人とも元気でとっても仲が良いから、離れたりしないはず。 心配があるとすれば、妹がいつまでも兄離れできない場合の説得の仕方。 無理矢理言うことを聞かせようとすれば妹の性格じゃ、間違いなく反発する。 弟に同じクラスの可愛い女の子を紹介してあげたけど、恋仲になったことは一度もない。 どこが気に入らなかったのか、と弟に聞いたら予想外れで、女の子の方から謝ってきたそう。 だいたい会ってから一週間以内、早い場合なら、朝会ったらその日の夕方に。 そんなことばかり続くものだから、最近じゃ弟に女の子を紹介できなくなった。 断られる度に弟は落ち込んでしまうから。 どこが駄目だったのかと同級生の子に聞いたけど、誰もが口をつぐむばかり。 早く弟に彼女ができないかしら。あと、妹にも彼氏ができないかしら。 まったく、仲の良すぎる弟と妹も困りものだわ。 853 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 42 45 ID oprcGLxV *** 困った。 記念すべきほどではないが、一応久しぶりに学校へ登校する、復帰一日目。 朝っぱらから右腕にギプスを装着していることによる弊害が発生した。 「腕が、通らねえ……」 右腕のサイズのみが格闘ゲームのキャラクター並の太さになっているため、 長袖シャツが合わなくなってしまったのだ。 当たり前と言えば当たり前。……なのだがなんとなく不機嫌になる。 今の俺の気分は、なんというのだろう、新学期を迎えた時のようにちょっぴり高揚しているのに、 いきなり出鼻をくじかれたような感じだ。 仕方ない。シャツはやめて、上は白のTシャツだけにしよう。 で、ズボンを穿いて、肩から制服の上着を着て……と。 ふうむ、まるで大怪我をした人みたいな風体だな。 肘が曲がっちゃいけない方向に曲がったんだから、あながち外れてもいないけど。 これから学校だけじゃなく、外出する時もこれかよ。 怪我なんかするもんじゃない。 高橋みたいに、医者に掛からないように生活態度を改めるべきだな。 リビングで以前と同じように朝食を摂り、学校へ向かう。 一週間前と違う点は、まず葉月さんが迎えに来ていないというところ。 それは当たり前だ。俺があんな形で振ってしまったのだから、迎えに来るはずがないのだ。 ここ最近の数ヶ月はほとんど毎朝葉月さんに会っていたから、惜しい気分もあるが……もはやどうにもならない。 女々しいぞ、俺。すっぱり忘れろ。 さて、一週間前と違う点、その二。 「あの、さ」 「なあに、お兄ちゃん」 「こっちは高校に向かう道なんだけど……」 「いいじゃない、時間はたっぷりあるんだもの。私は遅刻なんかしないよ」 妹が弟と腕を組み、一緒に通学路を歩いている。 それだけなら何の変哲もない、俺が毎朝見てきた光景だ。 だが、以前とは明らかに違う。 何故、妹が俺らと一緒に高校へ向かおうとしているのだ。 まあ……いつかやるだろうな、と危惧していたことが現実になったというべきかもしれん。 時間的に見ても、高校から中学へ一直線に向かえばなんとか遅刻せずに済む。 大好きなお兄ちゃんと長くくっついていられる。 妹的には、遅刻するかもしれないというデメリットを計算に入れても、メリットが勝る。 妹はいいだろうさ。妹は。 だが俺はどうだ。高校の校門まで兄に寄り添って歩く中学生の妹を持った俺の立場は。 幸い学校には弟を知っていても妹の顔は知らない人間がほとんどだからいいが、来年度からはそうも行くまい。 妹は俺らと同じ高校に通うと言って、実際に受験して合格した。 そうなったら、名字で兄妹であることがバレバレ。 心配しすぎ? 皆俺の妹の顔なんて覚えていない? ははははは。これがまた、そうも行かんのだよ。 見よ、同じ路を歩く男子高校生達の興味津々の視線を。 なんかね、俺の妹は目立つんだ。悪い意味でなく、良い意味で。 今は中学生だから背も低いが、これから大きくなるにつれて身体の要所も成長していくだろうし、 年齢不詳の母親譲りの整った顔も大人びていくのだろう。 事実、俺が高校に上がった辺りから驚くほどの成長を見せたからな。 両手に収まるぐらい小さかった子猫がちょっと見ない間にこんなに……というぐらいの驚き。 俺が高校を卒業したら、どれだけ容姿に磨きが掛かるか。 期待四割、悲しさ四割、そして……虚しさ二割。 弟も妹も容姿のレベルが高いのに、俺だけボーダーライン付近なのはどういうわけだ。 俺はしばらく使っていなかったボディソープの容器の口から出てくる塊かよ。 お湯と一緒にこねくり回してやらないと使い物にならない。 いや、もちろん比喩だから肉体的にこねくり回して欲しくない。 こねくり回されるのは辛いんだよ……腕が折れたら特に辛い。 854 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 46 01 ID PwRNJ9OX 支援になるかしら 855 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 47 15 ID oprcGLxV さて、校門前。 あと十メートルぐらいで妹はとんぼ返りして中学校へ向かうだろう。 ここに来てまでUターンしないということは、校門ギリギリまで付いてくるはず。 まさか校舎まではついてこないはずだ。 ふと、校門前の様子がおかしいことに気付いた。 生徒が校門を通る時、ほとんどの人間が一瞬驚きの表情を見せるのだ。 ここからでは死角になっていて見えないが、何かがあるらしい。 ふむ。動物の死骸か、はたまた浮浪者か、建前上男子高校生には見せられない書籍が転がっているか、それ以外か。 「あー……あのさ、そろそろ中学に行った方がいいんじゃない?」 「何言ってるの? あと少しなんだから恥ずかしがらなくてもいいじゃない」 「そうじゃない。恥ずかしいんじゃなくって」 弟がなにやら焦っている。 こら、後ろにいる俺を振り向いて助けを求めてくるんじゃない。 お前が何を焦っているのか、こっちは知らんのだ。 校門の前に来て見せるこの動揺の原因…………校門に何かがある、と見た。 ということは、弟はその何かの正体を知っている。 「頼むから、言うことを聞いてくれ。もうここからでも聞かれてるかもしれないんだから」 「誰に聞かれても何も困ることなんかないでしょう?」 「そう……なんだけど、さすがに相手が悪いというか……と、とにかく帰るんだ!」 弟が強く言い放ち、妹の肩を掴んだ瞬間――それは現れた。 「……げぇ」 弟が焦るのにも納得だ。 たしかにこれは相手が悪い。特に妹にとって。 おまけに弟が妹の肩を掴んでいるというこの光景もあまりよろしくない。 姿を現わしたのは、日本人のくせにサラサラの金髪の女子高生、葵紋花火だった。 そりゃ、こんな一見しておっかなさそうな女が進路に居たら誰でも驚くよ。 花火の奴、弟が来るのを校門前で待っていたのか。 好きな男子生徒が来るのを校門でじっと待つ女の子。 聞こえはいいが、実際にいいものかどうかは、女の子次第だ。 校門前で待っているのが花火だったら、ほとんどの生徒なら朝から果たし合いでもやらかすのかと思うだろう。 俺だったら殴られるのを覚悟するね。 弟にとってはどうやら嬉しいことであるらしい。 こっちに向かってきた花火を向いて、朝の挨拶をした。 「おはよう、花火」 「ん……おはよ」 「別に待っててくれなくてもいいんだよ」 「それは…………まさか」 「じゃなくて、外にいたら寒いでしょ? 教室の中の方がずっと暖かくないか?」 「……嫌いじゃない」 「そっか。花火がそう言うなら、止めないよ」 花火が首を横に振る。それを見て、弟が微笑む。 何、この置いてけぼりにされた気分。 二人ともわけがわからん。なんで今の会話でやりとりができるんだ。 花火の台詞があまりに省略されすぎて解読できない。 花火の省略語の意味を一瞬で悟る弟だっておかしい。 こっちは朝の挨拶までしか理解できなかったっていうのに。 こいつら、どれだけお互いのことを理解しあっているんだよ。 856 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 50 10 ID oprcGLxV 花火は弟の手首を掴み、手を引いて歩こうとする。 だが、それをよしとしない人間がここに居る。 もちろん俺ではない。俺の妹である。 妹は弟の右手を掴み、その場から動かない。 お兄ちゃんは渡さない、というやつだろうか。 けど、俯きながら怯えていては花火には到底敵うまい。 「……手」 「て、手が……どうしたっていうの、花火ちゃん」 「離せ」 たった一言なのに、鋭く突き刺さる花火の言葉。 それでも妹はまだ手を離さない。 後ろで見ているから分かる妹の怯え。 膝が、笑っている。 弟を止めるために手を掴んでいるというより、自分が立つためにしがみついていると言った方がふさわしい。 「早く、行け」 「嫌……私が一緒にいないとお兄ちゃんが、盗られちゃう。だから、嫌」 「こいつは、物じゃない」 「お兄ちゃんはずっと私の傍にいるの。それを、譲ったりなんか……」 「――小っさい妹」 妹の腰が引いた。左足が後ろに下がる。 今の妹は、歯をガチガチと鳴らさないよう、奥歯を噛みしめていた。 「勘違いで、こいつに惚れるな」 その一言で、決着が着いた。 妹は弟の手を離した。 支えを失い、膝を地に付けそうになった妹を、後ろから支える。 花火はそれ以上何も言わず、弟の手を引いて校門をくぐっていった。 妹はまだ震えている。 恐怖から覚めていないわけではない。 怒りに震えていた。悔しさが表情に表れている。 「だ、大丈夫か?」 「何よ……何なの。違うんだから、そんなんじゃない。 本当は、お兄ちゃんは私だけに優しくって、他の人なんか見ないのに……」 「お、おい?」 「こんなの、信じない。じゃなきゃ、私は……ただの馬鹿じゃない! 絶対に、勘違いなんかじゃないんだからっ!」 妹は俺をふりほどくと、坂道を上る生徒の流れに逆らい、全力で駆け下りていった。 857 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 52 14 ID oprcGLxV 「やあ、来たか我が友よ」 「おはようさん、お前が相変わらずいつも通りで、俺は安心したよ」 二年D組の教室に入り、自分の席に着いた途端高橋が話しかけてきた。 先週末から昨日まで欠席し、久しぶりに来たら腕をギプスで固めている俺を見て、 クラスメイトもさすがに驚いているようだった。 だがまさか監禁されていたとまでは知るまい。知っているのは担任と葉月さんと高橋ぐらいだ。 「先に謝っておく。済まない」 「何をだよ。お前、何かしたのか?」 「何もしていないことを謝っている。 久しぶりに登校してきたら机の上に花が一輪刺さった花瓶が乗っていた、というお約束を実現できなかった」 「いまいち元ネタがわからんのだが……別に期待してないぞ、俺は」 それ、多分いじめだろ。 実行するんじゃねえ。 「しかしまあ、見事に重傷人だな」 「ああ。右腕が使えないのがここまでやっかいだとは思わなんだ」 「ふむ。……それでどうやって勉強するつもりだ?」 「うむ。……我が友よ。ノートを」 「タダで貸し与えるほど僕もお人好しではないよ。 そうだね、君の怪我が治るまで、昼飯時に毎日ジュースを奢ってくれるのなら応じてもいい」 「この間まで俺は宿題を無償で見せてやってたっていうのに、お前はそれかよ」 「交換条件を出してこない君が悪い。まあ、諦めるんだな」 こいつ……その辺は暗黙の了解ってやつで、わかるだろ? 俺が何の条件も出さなかったんだから、お前だって無条件で見せてくれよ。こんちくしょうめ。 「もういい。お前に頼ろうとした俺が馬鹿だった」 「今更気付いたのか。そうとも馬鹿だよ、君は」 怒るな、猛るな、俺の心。 今、右腕は使えないんだ……。 こいつが憎たらしくても、ひたすらに堪え忍ぶんだ。 「他の奴に頼むからいい」 「ほう、誰に頼むつもりだ?」 「ノートをとってそうで、タダで貸してくれる奴ぐらいいるだろ」 「ほう、例えば……葉月さんとかかな?」 胸が痛む。呼吸が数秒間だけ確実に止まった。 高橋がここで葉月さんの名前を出したのは、俺が葉月さんを振ったと知っているから? いいや、性悪なところのあるこいつでも、そんなことはしないはずだ。 「どうかしたのか?」 「……なんでもない。時々関節が痛むんだよ。まだ直りきってないから」 きっと、俺が気にしすぎているだけだ。 時間が解決してくれる。 これまでだって、中学時代にハードに振られた時だって、そうだったんだ。 858 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 55 14 ID oprcGLxV 結局、昼食時間にジュースを奢る契約を、高橋と交わしてしまった。 数人の友人に頼んだ結果、理解できる内容のノートを持っているのが奴しかいなかった。 宿題はやってこないくせに、どうして黒板の内容はきっちり書き写すのか、いまいち俺には理解できない。 ともかくそんなわけで、弁当を食べ終えた後にこうしてジュースを買いに向かっている。 校内に自販機は数カ所設置されている。 部室棟、購買前、校舎の一階。 自分の教室から近いのは、もちろん一階にある自販機だ。 教室に近い分生徒が最も利用するため、昼休みになったらすぐ混み合う。 しかし時間帯をずらしてしまえば割と簡単に買えてしまう。 階段を下りて遠目に自販機前を見ると、例にならって、幸いなことに一人もいない。 ちょっと早足で歩き、自販機の前へ。 俺はカフェオレでいいか。高橋は、えー……と、いちごオレだったな。 お金を入れ、ポチポチと、品を自販機から吐き出させる。 自販機の口を開け、カフェオレといちごオレを取り出す。 「……ん、ん?」 あれ、いつのまにかこの自販機には、当たりを引けばもう一本くれる機能が付いていたのか? もう一本、紙パック入りのカフェオレが入っている。 ふうむ。当たり機能付きにしては、それらしきパネルが見あたらないし、おめでとうの機械音声さえ流れない。 これは――単に誰かが忘れていっただけ、かな? 「あ、やっぱり忘れてたんだ」 手にとって余り物のカフェオレを見つめていると、左から声が聞こえてきた。 何気なく左を向くと、そこにいる女子生徒と目が合った。 「あ……葉月、さん……」 「あなたが見つけてくれて良かった。他の人だったらきっと持って行かれてたよ」 「うん、たぶんそうだろう、ね……」 「どうしたの? なんだかボーッとしてるけど。 もしかして、風邪もひいちゃった?」 「そうじゃないよ。そういうわけじゃない」 そういうのが原因じゃなくて……葉月さんの態度が、気になった。 振ってしまったから、葉月さんに会ってももう話せないだろうと考えていた。 けど、葉月さんは全然そんなこと気にしていない。 まるであの日の出来事が無かったかのように。 俺に振られたことを、全く引き摺っていない。 俺が、気にしすぎなのかな。 カフェオレを渡すと、葉月さんは以前と同じように――軽く笑ってくれた。 「ありがとう。また、同じことしちゃったら、その時はよろしくね」 「うん。その時は、持って帰ったりしないよ」 「お願いだよ? 約束だから、ね? それじゃ、また!」 「また……教室で」 葉月さんはきびすを返し、階段を上っていった。 「そっか。そういうこと、か」 吹っ切ったんだな、葉月さん。 俺とのことは過去にした。気持ちを整理したんだ。 なんだか、気分が軽い。 気付かないうちに俺は葉月さんのことを気に懸けていたんだろう。 でもそれも――今、この時で終わった。 俺も気持ちを整理しないと。 また、葉月さんとクラスメイトとして付き合っていくために。 告白される前の、友達未満の関係に戻るんだ。 859 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 57 04 ID oprcGLxV 終わりです。 支援乙、 854。 860 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 01 59 51 ID D95dtIbw うおおおリアタイktkr GJ! 葉月さんはふられた程度であきらめる人じゃないよな 今後が楽しみだ 861 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 02 01 55 ID RU1p3rEH うわっ!この時間はいくらなんでもないなと思ってたら来ていた! 乙です。妹の怒りと葉月さんが段々病んできて、ジミーが勘違いで吹っ切れた… なんだ、学校来てからかなり変化してきたなオイ。 あと、最初のあれは誰だ…?姉? 862 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 02 19 20 ID VC4FmTO7 このSSかなり息が長いからスルーしてた どんなお話? 863 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 02 21 43 ID ZC7YTrdh 859 GJ! なんか葉月さんって何もしていなくても、何もしていないからこそ余計に読者の想像をかき立ててしまうヤンデレスレに相応しいヒロインだと思う 864 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 02 44 43 ID FHrY/1a+ GJ!! 葉月さんの態度が気になるな… 865 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 07 48 31 ID lpOUKRlG GJ! でも清算編って兄貴は何を清算するかを楽しみです 866 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 08 26 51 ID VpVUW1lu GJ! しかし、妹の凋落はなはだしいなw 867 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 10 08 13 ID SRKEN0By 862 兄が理不尽にぼこぼこにされる話 868 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 10 33 05 ID edt53kR7 865 たぶん理不尽にぼこぼこにされるんだろう 清算編 869 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 10 33 32 ID WlfZCYCY 兄貴頑張れ! 葉月さんは怖いが・・・ 870 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 10 48 26 ID OMBpQQEJ グッジョです! オレも葉月さんに愛されたい。 871 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 11 50 08 ID T9Tk6IB4 460KBか、次スレ立てたほうがいいかな ってことで立ててきます 872 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 11 54 19 ID T9Tk6IB4 立てますた ヤンデレの小説を書こう!Part18 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1219546353/ 873 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 13 17 11 ID StWtKAEu 物凄い久しぶりに来た 小説が随分増えてて俺歓喜。 でも、終わらないお茶会ゲーム化の話って消えたの? 874 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 21 54 35 ID zqYu1FYU 873 あー、一応言いだしっぺな人です。 ちまちま進行中。投げ捨てはしないつもりですがまだまともに動いてはいませんな。 とりあえずお茶会と君誰のゲーム用テキストが大体完成せんと進まないし、 私もお茶会作者様もそれ一本ではないので期待スンナ。と言い訳しておく。 あとここでも名乗らなアカンかね? 875 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 22 05 04 ID T9Tk6IB4 ちょw あれ進んでたのか、すげえ 発売されたら買うから気長にガンガッテおくれ 876 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 22 10 19 ID n7C6Iz40 花火性格悪いなー。 勘違いって知ってるなら言えよ。わかってるなら対応しろよ。 もともと好きではないけど、今回さらに嫌いになったぞ。 妹より兄貴の方が遥かに馬鹿見てるじゃねえか。 877 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/24(日) 22 13 13 ID zw1Khtk4 まるで100%被害者なんだって面してるのも鬱陶しいな 本当に出てくる度にイライラしてしまう 878 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 00 04 34 ID AfqtpdPE というか今まで勘違いだと教えなかったのはなぜ? さっさと言えば煩わしいのが減る、もしくわ減らすのが簡単になるのに 879 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 00 29 32 ID lEjm+lGo 勘違いだと教える→妹、ジミーになつく→ジミー幸せになる→花火むかつく …ということではなかろうか 880 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 00 39 25 ID bp66XkOG 878 恋敵から勘違いと言われて普通信じるか? 結局記憶が戻らなければただの妄言にしか聞こえない 881 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 00 43 50 ID h9T0a7hp 876 経緯はどうあれ兄貴が花火の顔を傷付けたのは事実だからな。簡単には割り切れないんだろう。 むしろ自分達の子供が虐待されてることに気付かなかった両親が悪い。特にしまいどんまんの方。 882 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 01 57 34 ID JSW8+Rfq 881気付いていたが何もしてなかったはずじゃ? まぁいいや、 ↓これ以降ヤンデレっ子のバストについての話題↓ 883 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 02 45 20 ID zIN16Jx7 巨乳以外認めねぇ 884 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 03 02 24 ID etXkOtZA えー、貧乳だっていいじゃないか。 その場合、敵認定される他の女性が巨乳ならばなお良し。 個人的には可もなく不可もなくの普乳が良いかな、 火種が増える設定だと思ふ 885 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 07 07 11 ID 3kXaHebH 逆レイプって大抵騎上位じゃん。 女を下から見上げる時何も遮蔽物がないと余計むなしい。 天井のシミ数えるなんてヤダ。 886 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 08 13 30 ID sSvmLvR+ ねぇ…君はどうしていつも胸の大きな女に目が行くの? 大きな胸なんて結局はただの脂肪だよ? そんなものがそんなにいいの?君は小さい方が好きだって言ってくれたじゃない 小さい方が敏感だって、だから貧乳が好きだって 知ってる?巷では貧乳を品乳と書くんだって。意味は品の良い乳なんだって だってそうじゃない。あんな脂肪の塊なんて将来垂れてみすぼらしくなるだけ 君の言いつけどおり毎日絆創膏を乳首につけてるよ。それに男装だってしてる …私以外の胸を見ないならそんな目いらないと思うんだ なんか電波を受信した 後悔はしていない けど巨乳も良いよね~ あれ?誰かk 887 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 09 06 38 ID c998Qmrz 大きいおっぱい、小さいおっぱい、そんなの人の勝手。 本当におっぱい好きな男なら、どんなおっぱいでもイけるよう頑張るべき。 888 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 17 43 55 ID V/GMaBV2 , ´ `ヽ、 { } . } `} / , _ - ‐ -`、 , く 我は主を裏切っても、ホレた女は lー ´ `ー - ‐- ´ー 、 ソ絶対にモノにします l_ _ ヽ、 , /´ , l /,, ̄  ̄ ー -、- ー 、_ / , /, ´/,-‐=== = 、ゞ , 二 `ーV、 ´ { ,ゝ / ,= = ヾ ゙-- ´r - 、㍉/) `´ `、i ヽ, 、f´ヒソ` i f心 ソ /, ケ ヾi ゞ. ´ l `゙ ´ ./} / ヽ , ,,. | /ン ,一´、 , 、 / / , / l ヽ 、 ,. 、 , . / ,!, , ヽ `ー ―――― , 、 \ /. イ// . ヽ ゙゙゙゙ , ト l , l ! ヽ , l \ l , . |. , ヽ _ _, / | ,`‐ | l | l , \ | | l \. \ 889 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/25(月) 19 47 29 ID JSW8+Rfq ヤンマーニヤンマーニヤンマー・・・ 懐かしいな。DVDボックスが欲しい 890 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 01 06 12 ID JFoHqwSc 今月分のぽけもん黒はまだか 891 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 16 40 ID yXHTQsMQ では投下します。第六話です 892 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 17 29 ID CJDUtNmt マジかwwwktk 893 名前:ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 17 52 ID yXHTQsMQ 「大丈夫ですか!? ゴールド!」 部屋に戻った僕の様子を見て、ポポは予想通りのリアクションをとった。 僕が治療を受けている間に香草さんから事情を説明されていたポポは、僕が怪我をしたという情報と僕がいつまでも戻らないという状況からかなりあらぬ妄想をしてしまい、心配になっていたのだろう。 僕は飛びつかれる前に、左足をかばって半歩下がる。 「大丈夫だよ、大した怪我じゃなかった」 作り笑いを浮かべながら、飛びついてきて僕の胸に顔をうずめているポポの頭を優しく撫でてやる。 「心配したです……」 ポポは嗚咽と共にそう言ったきり、僕の胸の中で大泣きしてしまった。 僕が苦笑いと共に香草さんを見ると、香草さんはやれやれ、といった様子で両の手のひらを天井に向け、顔を左右に振った。 ポポは数分すると泣き止んだが、しゃっくりはしばらく収まりそうもなさそうだ。 これじゃあ昼飯を食べにいけないな、と思っていると、僕の怪我を配慮してか、職員が部屋まで三人分の食事を運んできてくれた。 でもなにやら一食だけ妙にデロデロしたものが……。色は赤紫、それに緑の粒々が入っている。漂ってくる香りは酸系。そして時折湯気以外の気体を噴き出している。 「それは怪我人用の特別栄養食とのことなので、ゴールドさんがお食べ下さい」 職員に尋ねたら、そんな回答が返ってきた。 マジかよ……こんなの食べたら、たとえ怪我人ではなくなっても病人になってしまうそうだ。 うんざりした顔の僕を、香草さんは意地の悪い笑みを浮かべながら見ている。 ……やっぱり彼女の言行はプライドの高さとかそんなものからくるものではなく、単に性格が悪いせいなんじゃないか、と思い直したくなる。 ポポは意味が理解できないのだろう、目をまん丸にして僕と香草さんを見ている。まあ野生ではこの程度の見た目のものは困惑するものの内に入らないか……。 「香草さん、ポポの食事、お願いします」 僕はこのデロデロと格闘するので精一杯だ。 「そんなの言われなくても分かってるわよ!」 おおっと、予想外の言葉だ。昨晩のこともあるのだろうが、これはいい傾向だ。 さて、これで僕は心置きなくこのデロデロと戦えるわけだ。……逃げたい。逃げることを第一義に置いている僕にとっては、これと戦うという選択肢は普通ありえない。 手を動かそうにも動かない。そしてそのまま対峙すること数分。 敵の隙を見出せない。一体どこから攻めたらいいのやら。 一方、香草さんは蔦を使って自分の食事とポポの食事を平行して進めていた。万能だな、蔦。攻撃に防御に移動に雑務と何でもできるじゃないか。 「あれ? ゴールド、手が止まってるわよ、手伝ってあげましょうか?」 香草さんは僕とデロデロの状況に気づき、悪魔じみた提案をしてきた。答えはもちろんノーだ。 「いや、だいじょう……」 「ほっといたら何も食べないでしょ! 自分で食べれないなら私が食べさせてあげるわよ!」 い、いや遠慮させていただきたい……というかなんで半目半笑いなのさ怖いよ! ああ! 蔦を伸ばさないで! そして僕に巻きつけないで! そして口を強制的にこじ開けないで! 顔を上向きで固定しないで! 「はい、あーん!」 香草さんはそのデロデロを器用にスプーンですくって――ああ、なんかすごく糸引いてるよ! ――僕の口元まで運ぶ。 口調だけは語尾にハートマークでもついていそうな甘々なものだ。でもこの状況にあーん、なんて可愛らしい言葉はふさわしくない! あ゙ーん゙、そう、この状況にふさわしい言葉はあ゙ーん゙だ! ああ、当然香草さんはそんな僕の思考なんてガン無視だ! そんなことを考えている間にもスプーンは僕の口の中に……ら、らめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 「こ……こんなの初めて……」 人間の尊厳のようなものを破壊された僕は、床でビクンビクン跳ねながらよく意味の分からない台詞を口走る。 いや、何を言っているのかよく分からないが、これは初めてのものとしか言い表しようがない。 「何やってんのよ大げさね! むしろ食べさせてあげたんだから感謝しなさい!」 「じゃあ……香草さんも食べてみる?」 僕はむくりと上体を起こすと、上目遣いで恨めしげに香草さんを睨む。 894 名前:ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 18 53 ID yXHTQsMQ 「何言ってんの、もう容器は空よ?」 香草さんは容器を見て余裕の表情を浮かべている。 「まだ僕の口の中に残ってるよ……」 そう、まだ僕はデロデロを飲み込んでいないのだ! ……いや、飲み込めていないだけだけど。 「は、早く飲み込みなさいよ! 汚いわね!」 それを聞いて香草さんは露骨に焦っている。 「口移ししてあげるよ……うふふふふ……」 「! ゴ、ゴールド、本気で言ってるの? 大丈夫?」 顔面を蒼白にし、ジリジリと後ずさる香草さんを部屋の隅に追い詰める。 「大丈夫? だって? 僕をこんなにしたのは香草さんじゃないか。責任、とってもらうよ?」 ああ、大丈夫じゃないとも。こんなもの皿一杯食わされて大丈夫な人間なんていたら見てみたいね。なぜかいつもより頭がよく冴えている。 今の僕なら何だって出来そうだ! 香草さんと普段の立場を逆転することぐらい訳ないね! 「よ、寄るなバカぁ!」 香草さんは涙目でそう抗議するが今の僕には届かない。フフフ、この至近距離じゃ一切の攻撃手段は行えないだろう。 せいぜい体当たりくらいだ。しかし体当たりなんてしたら僕の口の内容物が彼女に噴霧される。彼女もそれをよく理解していることだろう。 「あっ……」 逃げ場を失った彼女はポスンとベッドに倒れる。フハハハハハ、後は煮るなり焼くなり僕の自由だ! 「さあチコ、召し上がれ」 僕はそう言って口を半開きにして彼女に覆いかぶさろうとした瞬間。 ちゅーーーーっ。 眼前一杯にポポの顔が広がっている。 おかしい。僕は香草さんに口の内容物を口移ししようとしていたはずなのに、何故ポポに口の内容物を吸いだされているんだ? いやいや、物理的にはおかしなことなんて何もない。僕が香草さんに覆いかぶさる寸前、ポポが脇から入ってきて僕の唇を奪ったっていうだけだ。 「何ですかコレ酷い味です!!」 ポポがむせながら狂乱し床をのた打ち回る音で、ようやく僕は静止から覚めた。 「ポ、ポポ、一体何やってんだよ!」 何やってんだよ、と言われるべきは間違いなく僕のほうなんだろうけど、今はそんな冷静な思考が出来ていないからそんなことを言われても困る。 「だって、ゴールドがずっと口に入れてたから、ごちそうだと思ったんです……」 ポポは顔を真っ赤にして涙目でそう訴えた。 僕は水をポットからコップに移してやり、ポポに飲ませてやる。 そして僕はポットから直に水を飲む。 「っぷはあ! 死ぬかと思った!」 口をこれだけゆすいでも、口中には異臭がこびりついている。本当に酷いものを食べた。 僕がうずくまって荒い呼吸をしていると、突然服を引っ張られた。振り向けば、香草さんが目に涙を浮かべてベッドの角に座っている。 どうやら蔓で引っ張られたようだ。しかしなぜか心なしか着衣も乱れているような。 「アンタ……一体何してくれんのよ……」 何故か香草さんは激しくお怒りのようだ。いや、これは怒りなんだろうか。突然物凄い眠気が襲ってきたから良く分からない。 なんかもういいや、寝よう。 そして僕はそのまま床に横になった。 ぐったりとしただるさで目が覚めた。 体を起こそうと思ったが、腹部に乗っている何かに邪魔された。 その何かとは香草さんの上体だった。ベッドの脇におかれた椅子からベッドのほうに倒れかかるように眠っている。つまり僕はベッドの上。 これはベッドに寝ている僕を介抱しているうちにそのまま寝てしまったって感じだよね、どう考えても。 おかしいな、なんでこんなことになってるんだ? 僕は早朝目を覚まし、そして……あの胸糞悪くなるような体験をした後部屋に帰って…… それで……何か明らかに毒物な昼食を香草さんに食べさせられて……その後の記憶がない。なんだ、つまりは全て夢だったんだろうか。 いやな夢を見たなー、と自分を誤魔化す。しかし、その淡い願望はふとももに巻かれた真新しい白い包帯によって否定された。 はあ、と落胆のため息を吐く。そうすると、僕は昼食を食べた後、そのまま寝て……いや、失神しまったのかな。 それで香草さんが僕の様子を心配して見ていた、ってのが一番辻褄が合うかな。何か違う気がするけど、そういうことにしておこう。 895 名前:ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 19 33 ID yXHTQsMQ はは、香草さんが起きたらお礼言わないとな。僕はそう思いながら枕元のポケギアに手を伸ばす。待ち受け画面のデジタル時計の表示は十六時半の辺りを指していた。 時間から鑑みるに、四時間程度寝ていたらしい。多分あのデロデロ、睡眠薬も入ってたな。じゃなきゃアレを食べさせられた後、気がつけばこの時間になっている説明がつかない。 確かに安静にさせるには寝させるのが一番いいけども、事前に一言くらい言ってくれてもよかったようなものなのに。 さて、これからどうしようか。起きようにも、香草さんを起こすのも悪いしな。そうだ、ポポはどうしているだろう。 僕はそう思って顔を左に向けた。 ポポが部屋の中央で蔦でぐるぐる巻きにされて逆さ吊りになっていた。 えええええええええええ。 えええええええええええええええええええええええ。 いや、待ってよ、意味がさっぱり分からない。 というかポポの顔に血が集まって赤く膨れている。これはかなり危ない段階なんじゃないだろうか。 こうしちゃいられない、と香草さんをどかして、ポケットから十得ナイフを取り出し、ナイフを立てると、ポポを支えながら蔦を切断した。 「大丈夫かポポ!」 血圧を適切にするために上体を持ち上げながらポポに話しかける。 「……ぅ……ぁ」 ポポは小さくうめき声をもらすのみだ。やはりかなり危ない状態にあったらしい。 「なによ一体……」 僕が頭をどけたからだろう、香草さんも目をすりつつ起き上がってきた。 「香草さん! なんでこんなことしたんだよ!」 僕は思わず香草さんに怒鳴る。普段なら怖くてとても出来ないが、ちゃんと怒ることができてよかった。 「こんなことって……悪い鳥にはしつけが必要でしょう?」 彼女はしれっと恐ろしいことを言っている。おかしい。僕の記憶が定かなら、ポポに対する香草さんの対応はマシになったはずなのに。 まあついさっきも飛んだようなまったくあてにならない記憶だけどさ。 「悪い鳥って……ポポが一体何をしたって言うんだよ!」 「何……ってゴールド、あなたそれ本気で言ってるの?」 香草さんの表情が急に訝しげなものに変わった。 「ああ、本気さ!」 本気で言ってるの? と聞かれればこう答えるしかない。 「あなた、あんなことしておいて、私に何をしたか覚えてないの? それとも別にあんなことは大したことの内に入らないってわけ?」 「あんなこと……って、シルバーとのポケモンバトルのこと? あれは確かに巻き込んで悪かったよ。でも、ポポは関係ないだろ?」 「……その後よ」 香草さんは呆れるように言った。その後? その後に何があったっていうんだ。 「その後? 巡査さんに説教されて、女医さんに治療してもらって、部屋に戻って、昼食を無理やり香草さんに食べさせられて、それで寝ただけだろう!?」 僕がそう言うと、彼女は落胆を露にした。 「……はあ。なによ、バカ。何も覚えてないのね。確かにあなたは正気のようには思えなかったけど、にしたって酷いわ、ホントに」 覚えてないのね。その予想外の言葉に、僕は動揺する。 「……僕が何かしたのか?」 「何か、なんてもんじゃないわ。とんでもないことよ。私を酷く辱めたわ」 「辱めた……だって!? まさか、僕がそんなこと……」 辱めた。その言葉で頭が真っ白になる。僕は本当に何も覚えていない。でも、もしそれが真実なら、僕は最低の人間じゃないか。 そう思う。ただ、同時に疑念も浮かぶ。 「あの鳥と一緒になってやったわ。だからあの鳥には罰を受けてもらったの」 「だったら僕だって罰を受けるべきだろ!」 僕がそう叫ぶと、香草さんはキョトンとして僕を見た。その発想はなかったようだ。 「……それもそうね」 「よし! ならば吊るせ! 死なない程度に!」 僕はそう言って体を大の字に開いた。記憶がないとはいえ、罪は罪。ならば償わなければ。 「何やってるの?」 「え、な、何って、逆さ吊りにしやすいようにって」 なんか冷静に言われると凄く恥ずかしい。一思いにやってほしい。 「罰は私が決めるわ」 「え、でもそれだと平等じゃな……」 「主犯と共犯で刑が違うのはあたりまえでしょ……」 「確かに……」 「でしょう。そうね……罰は……」 896 名前:ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 21 04 ID yXHTQsMQ と、香草さんが思案を始めたとき、ポポが目を覚ました。同時に飛び上がり、僕の後ろに隠れた。 「酷いです! どうしてあんなことしたですか!」 ポポは泣きながら香草さんを責める。 「どうして……って分からないわよ、そんなの」 香草さんは悪びれる様子なくそう返した。 ……分からない? 「ちょっと待って香草さん、分からないってポポが僕と一緒に……その、悪いことをしたからなんじゃないの?」 僕は当然の疑問を香草さんにぶつける。香草さんは少し顔をしかめ、そのまま沈黙している。 ……何か話が香草さんの都合のいいように曲げられている気がする。ここはポポにも話を聞いてみるべきだ。 「ポポ、僕が昼食をとってから今に到るまで、何があったか説明してくれないか?」 「せつめい?」 ああ、説明と言われても、ポポは事情が分からないか。 「どうやら僕、昼食食べてから記憶がなくて。それで、なんでこんなことになっているか分からないんだ」 「なんでって、だからアンタ達が私を酷く傷つけるようなことを……」 香草さんは慌てるように僕達の会話に割って入った。それに対してポポが反抗する。 「ポポは何もしてないですー! ただポポはゴールドと口移しで食べ物を食べただけです!」 ……口移し? 僕が? ポポと? 口移しというのは、つまりマウストゥーマウスってことで、つまりそれは……。 待て待て待て待て、今本題はそこじゃない。それにポポはほら、妹というか娘というかなんというかほらアレだようん。セーフ? ノーカウント? 「ポポ、もう少し詳しく話してくれないかな」 僕は脳内を駆け巡る余計な思考から目を逸らし、平静を装ってポポに質問する。 「はいです! ゴールドはご飯を食べた後からなんだかおかしくなったです」 「おかしくなった?」 「いつものゴールドじゃなくなったです。それでチコに口の中のものを移そうとしたです」 「僕が!? 本当に!?」 信じられない。だってまるで記憶にない。それに僕はそんなことを思っても行動を起こす度胸なんて持っていない。確かにアレを無理やり食べさせられたショックはあったけど、そんな大胆な方法で反抗に出るなんて思えない。 「本当です! ポポはそれで、ゴールドはとってもおいしいものを食べてるんだと思ったんです。だからゴールドから口移しで食べさせてもらったです。……すごくまずかったです」 ポポはうつむいて舌を出した。 「そしたらゴールドは倒れて、それでポポ悪くないのにチコにいじめられたですー!」 ポポはそう言うと僕の背中に泣きついた。 香草さんは相変わらず沈黙だ。 「香草さん、これが真実なんだね?」 「……そうよ。でも! ゴールドが私に酷いことしようとしたのは事実じゃない!」 う、それを言われると痛い。ポポの話から判断しても、僕が大変なことをしでかす一歩手間までいったのは事実のようだし。……でも、辱めた、って表現は大げさなんじゃないかな。 「でも、ポポは何も悪くなかったじゃないか。僕はちゃんと罰を受けるから、ポポに謝りなさい」 僕はそう言って背中に張り付いているポポを剥がし、香草さんとむき合わせた。香草さんがポポにやったことには正当性がない。 どうして香草さんがあんなことをしたかは分からないけど、形式だけでも謝ってもらわないと、この先旅を続ける上でどんな支障が生じるか分からない。 香草さんは顔を時々上げて口を動かそうとし、しかし口を止めて顔を下げるという動作を数回繰り返した。ポポはそのたびにビクビクしている。 897 名前:ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 22 02 ID yXHTQsMQ 「……ぅ、ごめんなさい」 その繰り返しの後、ようやく香草さんはそう言った。当のポポはどうしていいのか分からないのだろう、目を所在無さげに漂わせている。 これ以上は望みすぎか。ようやく関係が改善してきたと思ったのに、また前に逆戻りか。そう考えると気が重くなる。そして、僕が受ける罰についても。 「罰は……今はいいわ」 香草さんのその言葉で、僕は口を大きく開いた。まさかあの我儘な香草さんが、何の復讐もなしに引き下がるなんて、考えてもいなかった。 香草さんは顔を上げて僕のそんな様子を確認する。すると表情を明るくし、いつもの様子で僕に言った。 「あくまで今は、って意味なんだからね! 絶対にこのことを忘れるんじゃないわよ!」 その様子はすっかりいつもの香草さんで、僕は脅されているような状況なのに、ほっとしてしまう。 「うん、覚えておくよ」 出来れば永遠に来ないで欲しいな。 とりあえず、これで一応は場が収まったと思ったので、僕は女医さんのところに、昼食に何を混ぜたか問いただしに行くことにした。香草さんとポポもついてくるそうだ。まあそうなると思ったけど。 僕が強い口調で意識の喪失と性格の一時的変化について問いただしたら、「ああ、そう。たまにあるのよ」と軽く流されてしまった。しょうがないから次からは普通の食事をとるように、と指示された。 僕はその回答に到底納得はいかなかったが、ポケモンセンターは全国的にネットワークでつながれているので、ブラックリストにでも入れられたら今後の旅がどうなるか分かったもんじゃないから、おとなしく引き下がった。香草さんが無言でいてくれてよかった。 日が暮れてなかったらきっと猛抗議していたことだろうな。 日が暮れてしまったから香草さんの感情の変化はよく分からないが、普通の食事をとるように、と言われた時に心なしか沈んだように見えたのは、僕の気のせいだったのだろうか。 898 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 24 40 ID yXHTQsMQ 以上で第六話終わりです 自分で月一更新と決めていながら、それすらギリギリであることが情けない……。速筆の書き手さんを見習わなければ 899 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 28 53 ID O6NNz4x9 GJ 徐々に香草さんが黒くなってるなw 900 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 03 56 19 ID x+lfS+hT GJ! 香草さんが怖くなってきたな、逆さ吊りはきつそうだwww 901 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 04 00 17 ID CJDUtNmt GJw 罰が楽しみだwww 902 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 10 10 52 ID H1+iKr9G GJGJ! 香草さんは勿論大好きですがポポはもっと大好きです! しかし今からこれじゃあ 新しいポケモンゲットしたらもっと黒くなりそうだなw 903 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 19 10 56 ID vRSOuB48 香草さんは本妻宣言でもしそうだな…… 904 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 19 55 31 ID TtcDzWK2 ポポは純粋だな・・・それともこれからだんだんと病んでいくんだろうか 905 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 21 56 11 ID TccKzACl 純粋な子が病むととても美しいだろうな 906 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 22 03 50 ID 4/5Ax+Di ポポに多少の腹黒さを感じるのは俺だけ?w 907 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/26(火) 23 00 23 ID 6Fcj+M11 そう言われると腹黒娘に思えてくる 908 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 10 47 07 ID EtkyZogW そして三角関係勃発か 909 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 20 26 14 ID i0PIrAAC きーみはだれとキスをするー? 910 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 22 16 56 ID d9at+56/ 私? それとも… 911 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 23 41 16 ID hEazbRab あなた…? 912 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 23 46 59 ID 386zJRfc ねぇ、なんで答えてくれないのよ。 ねぇ・・・・・? 913 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/27(水) 23 49 16 ID CgasLD69 さっき気が付いたんだが、ヤンデレスレいつのまにか増えてるんだな 914 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/28(木) 19 02 52 ID sr303+7a あれは逆レイプがメインじゃない? 915 名前:罰2[sage] 投稿日:2008/08/29(金) 23 20 23 ID SFV3VAKR 「ねえ、いつまでこうしてなきゃいけないの?」 「嫌なの?嫌じゃないよね?」 「もう5時間だよ…。いい加減見飽きたでしょう?」 「ぜ~んぜん、一日じゅう見てても飽きないよ。」 「せっかくの休みなんだからどこかに行こうよ。」 「言ったよね、今日は私だけを見てって。」 「天気も良いし…。」 「君が悪いんだよ、私以外の女を視界に入れるから。」 「普通に生活してたら入るでしょう。」 「だから、休みの日は私だけを見て、私以外の女を視界に入れないで」 「もしも、休みの日にほかの女を見たら…。」 「私…ナニするかわからないよ…。」 916 名前:罰2[sage] 投稿日:2008/08/29(金) 23 25 53 ID SFV3VAKR またです。ごめんなさい。 他に罰が思い浮かばない…。 917 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/30(土) 10 16 32 ID ClcjHTBr 死ね 918 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/08/30(土) 18 41 13 ID 441CGgIq 死ぬのはあなたよ! この泥棒狐め! 919 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/30(土) 18 41 24 ID O8lMHDWf シネとか言うな! 言葉大好き 920 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/30(土) 18 44 40 ID zwHch3Id スクデイの言葉ってさヤンデレヤンデレいわれてるけどデレてたか? なんかヤンデルのほうが正しい気がするんだが 921 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/30(土) 18 53 57 ID 8urpjYKZ 920 普通はスクイズだろjk それは読解力が弱いからだと思われる スクイズは最初はそれなりにデレてたし エセヤンデレブームにのっかった作品群とくらべるとちゃんとつくりこんであるぞ 922 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/30(土) 20 41 18 ID XPvirrwR ちゃんとデレ→ヤンのテンプレを踏んでたジャマイカ 923 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 03 02 45 ID 3X/gOlkk 死ね 924 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 03 38 50 ID E2WhbjkT 生きろ 925 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 05 23 59 ID zp4v3LgF まずい!僕の 生きろ というギアスが、ここは逃げろと叫んでる!!それほどまでの相手なのか、ヤンデレっ娘は!!! 926 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 07 32 05 ID 9Yf0TR/S ウザクは本気で死んでもいい。むしろ死ね。 そういえばギアスのニーナも一応ヤンデレっぽい気がする 主人公に対してデレてるわけじゃないけど 927 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 07 41 26 ID BS0+Tr0m ユフィに対してはデレデレですよ 日本人を虐殺しろ宣言に従って超兵器作るぐらいには 928 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 09 30 40 ID 3X/gOlkk 死ね 929 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 12 07 37 ID 3tY7Cfeo 生きろ 930 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/08/31(日) 13 45 52 ID PCUizSK6 死ぬ 931 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 15 03 17 ID eN1Ixm/N 生きろ、そなたは美しい 932 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 15 27 36 ID SwAFQfop 田島陽子に怒られるぞ、そんな時はポマードポマードって3回唱えるんだ! 933 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 22 05 45 ID bUWjhzrf ヤンデレを泥酔させて、次の朝に 『昨夜大切な約束したのに覚えてないのか』 とか思わせぶりに言ってみたい 934 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 22 25 13 ID T9NEpzA2 泣き喜んで飛びついてくるような気がするんだが その後どうするんだ 935 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/08/31(日) 22 25 58 ID ufBO2XmJ 933 鬼畜w そういうことばっかりやっていたら確実に死亡エンドだろうな 936 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/01(月) 20 52 50 ID CnQkPIZk ヤンデレ数珠繋ぎを見てふと思い浮かんだものを投下したいのですが、よろしいでしょうか。 937 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/01(月) 20 56 31 ID REW078f4 936 かまわん 投下する作業に戻りなさい 938 名前:無題[sage] 投稿日:2008/09/01(月) 21 01 07 ID CnQkPIZk それでは、投下させていただきます。 最近、姉がよく僕に姉の親友の話題を振ってくる。 高階由紀子さんというらしいその人は姉の親友で、姉の好きな人の妹さん。 なぜか、姉は僕にその人がいかにいい人かというのを力説するのだ。 「すっごく美人なのよ」 「頭も良くて、優しい子なの」 「絶対気に入るって!」 僕はいつも適当に聞き流していたのだが、ある日姉の忘れ物を届けに姉の大学まで足を運んだときに、女との邂逅を果たすことになった。 「はじめまして」 確かに姉が褒め称えるだけあって美人だったが、何というのだろうか、少し目が澱んでいるような気がした。 さて、実はそれ以来彼女にはあっていなかったのだが・・・なぜか今、僕は姉に縛られ、高階さんに差し出されている。 「ごめんねー、でも、由紀子がどうしてもあんたを欲しいって言うから」 「私も兄さんを差し出しますし、ギブ&テイクですわね」 たしかに、姉の下には以前写真で見た男性が転がっている。 彼の方はどうやら気絶しているみたいで、全く反応がない。 「でも、何で・・・」 「だって、あたしが何言ったって反応なかったし、逢っても特に気に留めた様子もないし・・・ま、あたしもだけど」 「私達、お互いに相談してたんです。どうやったらお互いに好きな人を振り向かせられるか」 「彼にもあんたにも彼女いるから、一旦は諦めようと思ったんだけど・・・無理だった」 「だから、いっそ引き離してしまえって思ったんです。引き離して、ずっとずっとずっとずっとずうううううううっと一緒にいたら」 そこで彼女は言葉を切り、僕に向かって幸せそうに微笑んだ。 「きっと、私のほうを好きになりますよね?」 ここまで否定を許さない疑問を、僕は知らない。 ガクガクと震える足。いや、足だけじゃなくて、全身が震えている。 「さあ、行きましょう?二人の家に」 「じゃあね、たまには会いに行ってあげる」 そして、僕は意識を暗闇に落とした。 最後に映ったのは、姉の微笑。脳裏をよぎったのは心配性な恋人だった・・・。 次回、監禁される弟のもとへ颯爽と恋人が現れる!由紀子はその時、一体どうするのか!? ・・・ごめんなさい、嘘です。続きません。 939 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/01(月) 22 58 41 ID uwCNtnKA GJ 940 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/02(火) 01 51 35 ID RepfORLq GJ!! 941 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/02(火) 10 29 45 ID MCSVx2Lx ねっとりと愛されるのでしょうな、羨ましい 942 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 08 08 38 ID tEgctjTX まだ埋まってないな 943 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 08 37 42 ID b45ZZuj3 次スレ立てるの早かったのかな 今のペースなら480KBぐらいになったら立てればちょうどいいかも 944 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 08 57 17 ID Q99mUBz+ 480じゃ誰かが埋めネタいれるとき困るかもしれない465くらいでいいんじゃ・・ 945 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 17 39 10 ID +46NOfFA ヤンデレの女の子に埋められたい… 946 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 18 44 02 ID N3ewePSy ヤンデレの女の子に開き直ってベタベタしたらどうなるの? 947 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 18 44 46 ID FYLGqhsR 後が怖い 948 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 21 27 39 ID j9qoXAJQ 埋まってない、僕の乳首みたい! 949 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 22 02 49 ID xxCWamAY なんか次スレで怒られたから産めに来ました 950 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 00 46 31 ID UZXw/h5b 庭でやけに大きな穴を掘っているヤンデレに話を聞いてみたい 951 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 07 28 32 ID KDHTdGEI ムダにフラグ立てるなよ(笑) 952 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 12 04 44 ID 9wMe8Z7e 後9KB 500KBか1000レス、行くのはどちらが先かな 953 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 12 48 26 ID QGzrYv6h 埋めネタ待てばいいじゃん 954 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 14 15 58 ID 7z3NqSvh , ´ `ヽ、 { } . } `} / , _ - ‐ -`、 , く lー ´ `ー - ‐- ´ー 、 ソ l_ _ ヽ、 , /´ , ヤンデレよりも千草がいいですよ l /,, ̄  ̄ ー -、- ー 、_ / , /, ´/,-‐=== = 、ゞ , 二 `ーV、 ´ { ,ゝ / ,= = ヾ ゙-- ´r - 、?/) `´ `、i ヽ, 、f´ヒソ` i f心 ソ /, ケ ヾi ゞ. ´ l `゙ ´ ./} / ヽ , ,,. | /ン ,一´、 , 、 / / , / l ヽ 、 ,. 、 , . / ,!, , ヽ `ー ―――― , 、 \ /. イ// . ヽ ゙゙゙゙ , ト l , l ! ヽ , l \ l , . |. , ヽ _ _, / | ,`‐ | l | l , \ | | l \. \ 955 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 19 43 17 ID P6DlXTTz ume 956 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 01 29 32 ID 6jvyj67w 説得して縄を解いてもらったあと、 『悪いが水をくれないか』 とか何とか適当なことを言ってその隙に脱出したい 957 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 01 39 53 ID 1p4IV8Im 追いかけられるのを楽しむんですね。わかります。 ヤンデレにはこういう楽しみ方もあるということです。 958 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 02 25 47 ID J0Scv0VT 俺は追いかけられるのは怖すぎてダメだな 子供の頃から怖い夢といえば何かに追いかけられる夢だった 959 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 07 18 24 ID GytxPyd9 1度でいいから自分がオドオドしてるヤンデレ娘にストーキングされてるのに気づき 自宅近くで偶然出会ったと装い家に上げて、 茶を一緒に飲んで少し話して気が緩んできたところで 「ところで俺をストーキングした気分はどうだった?」って切り出し そのまま罵りながら二度とストーキングするなと言い渡して絶望に追いやりたい。 そして「ストーキングがだめなら一緒に住めばいいんだ」と思い立ったヤンデレ娘に監禁されて そのまま(ヤンデレ目線では)仲睦まじく暮らしていきたい 960 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/06(土) 08 34 16 ID aCv2xoqC 家にあげた時点で主導権は女の子に。 961 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 09 01 09 ID JEecpl36 959 早くその妄想をSSにする作業に戻るんだ 962 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 10 12 45 ID vZckIV5E 一度あったら二度目はない希ガス 963 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 13 40 34 ID PgP/QgYk ttp //netallica.yahoo.co.jp/news/47558 これを元ネタにしてなんとかSSかけないかなぁと妄想中・・・ 964 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 13 45 09 ID Bp6MXgcx 離婚を突きつけたのはちょっと減点だけど、でも萌えたw 965 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 16 33 52 ID ZtKB+iJx もちろん回答者は全部奥さんです 966 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 18 29 14 ID Ow1sE+VS 963を見て一般人の兄が 「クズ女死ね」 って言ってた。 やっぱ当然の反応なのか。 967 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 18 30 32 ID V+41bACy 965 そんなSSどっかでみたぞw 常駐してる掲示板の住人全てが幼なじみってやつ 968 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 19 12 49 ID rppyUZHh 966 昔、これの逆のパターンがあってな 969 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 19 17 26 ID Bp6MXgcx 967 これだろw ttp //www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/291.html これは怖……ゴホンゴホン、萌える 970 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 19 40 34 ID JsJSQcw0 967 驚異的だな…だがそんな娘も俺は好きだ 971 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/06(土) 23 09 33 ID aCv2xoqC 正直、微妙。 972 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 01 06 05 ID gBaon0kk お前の好みは聞いてないです 973 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 01 18 18 ID j97vrx+U なんだ俺の好みを聞きたいのか? 974 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 01 36 15 ID upEPklJa いや、俺の好みが聞きたいんだろ? 975 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 01 42 53 ID Il+iTL1H 聞かれてないけど俺の好みは年齢8歳から12歳までの可愛い系の女の子! 976 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 02 08 26 ID 3ZAmLkzs 969 こしばてつやのラブゴッドに似てるな 怖さと萌えはラブゴッドのほうが数段上だが 977 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 13 28 03 ID E+UPt4ou う め 978 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 16 00 09 ID A5p32M1d 梅 979 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/07(日) 16 18 48 ID fM23Jqtn つまらんな 980 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 18 57 09 ID yUpQMJ45 >常駐してる掲示板の住人全てが幼なじみってやつ こ~こはど~この箱庭じゃ?が、近いかな。 981 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 20 00 31 ID cl6myywB 980 そういやあれもヤンデレだよなw 982 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 07 12 07 ID F/5juXVk あれやるごとに俺のPCもこんな娘だったらなぁって思う 983 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 08 28 57 ID 92fg/sBx 埋まる寸前なら言える バイト先に弱々しい感じの女の子が入ってきた ヤンデレであれ 984 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 13 21 15 ID N3GG9kXY 「ヤンデレであれ」 その言葉を最後に 983は暗く冷たい土の中に生きたまま埋葬された。 985 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 13 43 10 ID 3Ke/iGyF 勘違いしてるこがいるな 986 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 19 53 10 ID O5BKf1/p 産め 987 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 22 43 09 ID aYpEMoo7 私の子を 988 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/09(火) 00 28 30 ID 0D89m8VU そして 989 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/09(火) 01 28 01 ID rveX81P+ 私と 990 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/09(火) 07 48 40 ID dXLGm/PQ 一緒のお墓に入りましょう 991 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/09(火) 07 49 33 ID v07bWG+W ヒィィ 992 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/09(火) 11 17 27 ID If/9jvXM こらこら(笑) 993 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/09/09(火) 11 44 10 ID 8uZK4QD8 ヤンデレに 「愛してないけどおっぱい揉ませろ」 って言ったらきっとおっぱいでビンタされるんだろうなと…でも巨乳限定だよな…… でも本物のヤンデレはそこで覚醒して毎晩自分の胸をマッサージしたり 豊胸器具やら整形外科に行ったりするんだろうな そんで家に呼び出して 「どうしたらわたしのこと愛してくれるのかな?一生懸命頑張ったんだよ? この前より少しは大きくなったんだけどこれでも愛してくれないのかな?ねえ? それとも大きさよりも形なのかな?言ってくれればどんな形にでもするよ?」 とかおっぱいさらけ出して迫ってきたりとかしてなんてこんな妄想を昼間っから してるわけだけどこのスレもあと少しなんだからさっさと泥棒猫と一緒に埋めようぜ ってなわけで埋め!!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/480.html
501 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/19(月) 02 22 19 ID x1fv1e7I 496 青天の霹靂って感じですな。儀介さっさと告白しとかねえか、ダメなやつめ! 498 全裸よりぱんつのほうが好きな俺 502 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/19(月) 11 43 15 ID 4J/lvCUb このペースだと今週末にはこのスレも埋まることになるな。 2・3スレ目よりはスローペースだったが、 一ヶ月ならエロパロ板ではかなり早いほうだな。 503 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 04 25 ID te4Gve8c 投下しますよ 504 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 05 18 ID XjUBHhrl 投下します。おにいたん2、5話。 444 今回行頭にスペースかましたが読みやすさはぜんぜん変わってないと思う。 漏れは大抵1文を40字前後で終わらせて改行するスタイルだから スペースはわざとかまさなかったんだ。 505 名前:『首吊りラプソディア』間幕[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 05 32 ID te4Gve8c それは唐突にやってきた。 少女はいつも通りに暮らしていた、そのつもりだった。実際にその通りだった。しかし 突然、何かのスイッチが入ったかのように、思考に不安がよぎる。大切なあの人が、急に 去ってゆくかもしれない。自分の前から姿を消すかもしれない。 そんな馬鹿な、と思う。 そんなこと有り得る筈がない、そう思い直して再びペンを取り、ノートに文字を綴って 想い人への恋文を完成させてゆく。これを受け取ったときの反応はどのようなものだろう、 そんなことを考えながら、鼻唄を歌いながら、文字を綴ってゆく。 きっと悪い結果にはならないだろう、と思う。彼と両想いなのは普段の生活でも充分に 分かっている。あと一歩、恋人となるのに必要なのは僅かな勇気だけだ。勇気を持ち一歩 を踏み出すことが出来るのならば、全てが上手くいくだろう。 先程の悪い考えを振り払うように、少女はポジティブに考えを繋げてゆく。 だがそれは、不安の裏返しだということだ。 振り払うということは思考の中にネガティブな考えが残っているというこであり、それ が少しずつ根を伸ばしているということでもある。気持ちというものを養分に成長し、心 の隙間を埋めるように肥大して、やがては全てを侵食して埋め尽くそうとする。 その現象は、彼女の中で発生していた。 胸の軋みを感じて、筆が止まる。 彼は自分の気持ちを受け止めてくれるのか、肯定だった気持ちは猜疑心へと変わり始め、 否定の考えが幾つも浮かんできていた。もしかしたら他に好きな人が居るのではないか、 自分に向けられているのは愛情ではなく他のものではないのか。 その理由は、何なのか。 彼女は結論する。 殺さなければ、奪われてしまう。 少女は少しずつ、だが確かに狂ってゆく。 506 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 07 43 ID XjUBHhrl ロボさーん?お先にどうぞー? 507 名前:『首吊りラプソディア』Take6[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 08 11 ID te4Gve8c 「ほ、本当でござるか!?」 フジノの叫びに、サキは頷いた。 フジノの驚きはもっともだ、俺自身も報告書を読んで驚いた。俺の場合は驚きすぎて、 声が出なかっただけのこと。そこに記されていたのは、予想を遥かに越える結果だった。 32人、それが昨日『首吊り』に殺された者の人数だ。 一晩でそれだけ殺すなんて、幾ら何でもふざけている。中には模倣犯の犯行もあるかも しれないと思ったが、共通点が幾らかあったらしい。殺された対照が全員女性だという事 の他に、結び目が特定のもの、ということだったらしい。多少のずれはあるものの、どれ も同一人物の手で結ばれたもののようだった。角度や強さが一致するのは他人では有り得 ない、という判断からだ。 しかし、疑問もある。 今までは老若男女関係なく殺して回っていたのに、年齢の差こそあるものの被害者全て が女性なんてことは実際に有り得るのだろうか。いや、有り得ると言うしかない。現実に そんな状態なのだから、認めるしかないだろう。 だとしたら、 「目的が変わったのか?」 「恐らく、決まったと言った方が正しいのでしょうね。何かのきっかけがあって、目的が 生まれたのでしょう。多分結び目を同じくしているのも、自己を表す為のものです」 508 名前:『首吊りラプソディア』Take6[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 09 26 ID te4Gve8c ということは、『首吊り』は俺達管理局員に向けて何かのメッセージを送ってきている ということだろうか。他の人間に何かを示したいのなら『首吊り』をしていることくらい しか伝えられないし、結び目が共通していることは、外部に漏らすような内容ではない。 そもそも事件が解決した後にならなければ犯行の詳しい内容は外に流れないし、そのこと で伝えたいならば寧ろ自首をしてくる筈だ。だから、これは管理局員に向けたもので多分 間違いないだろう。 「問題は、奴の意識が誰に向いているのか、でござるな」 管理局全体に向いたものか、それとも個人に向いたものか。 個人的には、特定の誰かに向けられたものだと思う。管理局に対するものならば、今更 女ばかりを殺すということは何の意思表示にもならないからだ。弱いものを狙ったなんて 考えは、とうの昔に議論され尽くしている。一般人が確率システムを使うようになって、 女性が弱いなんて意識は無くなった。それに被害者の中には『月の魔女』の片割れも居た らしいので、弱さなどは殆んど無縁のものになっている。だからと言って強い者が対照か と言えば、それは絶対に違うだろう。殺された者の殆んどは、普通の人だからだ。つまり 女性であれば誰でも良く、それがメッセージになる誰か。 さっぱり分からん。 「サキ、どんな意味があると思う?」 「女性に恨みがあるとか、その線では? 女なんて皆消えてしまえ、という」 「ならば犯人は男でござろうか?」 全員で首を捻り、唸る。 509 名前:『首吊りラプソディア』Take6[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 12 25 ID te4Gve8c カオリは今日は仕事が入っているらしいので来れないとの話だったが、今のような事態 ならば寧ろ丁度良かった。サキは元よりフジノも捜査に協力してくれることになり、皆で 考えているのだが、カオリだけは居てはいけないからだ。そんな意味ではある程度自由に なることが出来るから、申し訳ない話だが少しありがいと思った。 「しかし、性別か」 これは意外と良い線かもしれない。俺の第一目的は表向きには『首吊り』の捜査、逮捕 となっているが、個人の考えとしては二番目だ。本当の目的はカオリにかかっている容疑 を外すことであり、『首吊り』が男であると証明が出来るならば、カオリの容疑は完全に 晴れることになる。全て確率システムを使っての犯行なので身体的特徴を掴めず、それ故 にカオリが容疑者となっている訳だが、逆に言えばそれだけなのだから。 「フジノはどっちだと思う?」 「ん? よく考えたら、女かもしれんでござるよ」 「どういうことだ?」 出来れば男だと予想してほしかったが、何か考えがあるのだろう。尋ねると、フジノは 俺の腕を掴んで抱き寄せた。突然のことにバランスを崩して膝枕の世話になったが、これ と『首吊り』が女であることと何の関係があるのだろうか。 「例えば、例えばの話でござるよ?」 こちらに冷たい視線を向けるサキを見ると、念を押すように言い、 「拙者はこの虎吉殿と触れ合っているときが、一番幸せでござる。それがもし誰かが奪う としたら、それはもう怒り心頭でござるよ。今のパターンで言えば、拙者を抜けば虎吉殿 に一番近いのはサキ殿でござるから、警戒すべきはそこでござるな」 510 名前:『首吊りラプソディア』Take6[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 13 55 ID te4Gve8c フジノが言いたいことは大体分かってきたが、果たしてそれは有り得るのだろうか。 「拙者は違うと思いたいが、嫉妬深い娘ならば他の女に注意が向いたら、それだけで気分 が悪くなる者も居るのでござる。疑ってしまえばキリが無く、疑いの視線はやがて全ての 女に向けられてゆき、積もりに積もった怨念やら何やらで……」 ブスリ、でござる。 そう言って、サキに軽く手刀を突き出した。 無いことも無いかもしれない、ここに居るのは管理局員を除けば罪人ばかりだ。中には 嫉妬のあまり間女を殺して入ってきた者も居るだろうし、重度の者ならば連続しているの も説明がつく。理屈は通るのだが、しかし人数がおかしいと思う。距離の問題は空間転移 を利用すれば解決出来るが、一晩で32人は無理がある。単独でそこまで殺すのは、まして 証拠を何も残さずに連続で続けるのは無理がある。複数での犯行、となればどうだろうか。 「それも無理か」 そんな人間が集まればその場で即殺し合いになってしまうだろうし、人を殺してしまう 程に嫉妬深い人間がそうそう居るとは思えない。偶然に起こることも有り得ないだろう。 そうだと仮定しても、結び目の条件が同じなら『首吊り』の役目という人物が必要になる。 リスクを犯してまで、そんな必要があるとは思えない。あるとするならば自己を示す為で、 それならば他人は邪魔になってくる筈だ。 思考が無限ループを起こしそうになり、考えることを一旦止めて体を起こす。フジノが 一瞬残念そうな顔をしていたが、サキの視線が毎秒ごとに冷たくなってきているような気 もするし、こうしている自分も何だか馬鹿みたいなので続けるのは駄目だ。 「気分転換にメシでも行くか」 「あ、私はパスです。やることがあるので」 511 名前:『首吊りラプソディア』Take6[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 15 29 ID te4Gve8c 視線で尋ねると、サキは自分の首に首輪を填めた。色は透明、ランクの外。監獄都市で 生まれた二世が着けているもので、聞き込み調査などでよく使われるものでもある。サキ は前者には当てはまらないから、どこか特別な場所に用事があるのだろう。 珍しくスーツではない私服姿なのも、その為か。 「ん?」 それを見て、何だか妙な感じを受けた。昔どこかで見たことがあるような気がしたが、 気のせいだろうか。記憶を辿ってみるが、思い出すことが出来ない。喉元まで上ってきて いるのだが、他人の空似という可能性もあるし、全然違う人物かもしれない。 「そんなにジロジロ見ないで下さい、また罪を重ねるつもりですか?」 「いや、カオリは居ないから罪人扱いも無いだろ」 それにしても気になる、何とも気持ち悪い。さっきまでは『首吊り』で一杯だったが、 今は別の意味で頭が一杯だ。尋ねれば一発で分かるのだろうが、人違いならば藪蛇で妙な ことを言われかねない。こいつは何故か俺に対してだけは、そんなタイプだ。 「どうしたでござるか?」 「何でもない」 不思議そうな目で見てくるフジノに答え、再びサキを見た。 「何ですか?」 どこか不満そうな表情を浮かべているサキに首を振り、俺は部屋を出た。 512 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 16 28 ID te4Gve8c 今回はこれで終わりです 第二章開始 513 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 17 15 ID XjUBHhrl んじゃ、改めて投下開始 514 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 18 18 ID XjUBHhrl 「ふくちう、でつ!」 和室。座卓にはフルタワーサイズの巨大パソコンが2台・・・1台はRAIDサーバーのようだ。 20インチはある大ディスプレイは贅沢にもSVGA。字が大きくて目には優しそうだ。 部屋には巨大なページプリンターが鎮座。時折紙を吐き出している。 OA用紙が詰まった段ボール箱が積み重なって壁を形成。まるでどっかの会社の事務所である。 唯一、布団とそこにおいてある2、3のぬいぐるみがここの主がどういう人物かを表している。 「復讐とはいうけどね、薫ちゃん」 ここは禾森邸にある薫の部屋。ぬいぐるみがなかったらとても幼稚園児の部屋ではない。 「どうするの?」 この日、休みの耕治とあずさは薫と話し合っていた。 6畳間はパソコンと関連機器、それとダンボールに囲まれ、座るところは薫の布団しかない。 そこに3人は座り込んで話をしている。 「あのおんなには、ちかるべきむくいをあたえるでつ!」 その邪悪な(笑)正体を晒した後、笑留は禾森邸に入り浸っていた。 もー毎日食いたい放題、ソドムやゴモラも裸足で逃げ出す痴態が繰り広げられていた。 「ちょっと・・・薫ちゃん?まさかあの男みたいに・・・」 旧山那邸の地下にねむる誰かさんを思い出し、あずさが不安を述べる。 「みづからてをかけるなんて、ぐのこっちょうでつ!」 エヘンと威張る薫。 「てをよごちゃづ、つまーと(スマート)にいきまつ!」 「て、手を汚さずって・・・」 「とのためのきりふだは、もうちゅうもんづみでつ♪」 「ちゅうもん?」 ちゃちゃっ、ちゃちゃっ、ちゃららら~♪ 薫の大好きなアニメのOP曲が流れる。薫の携帯の着信音だ。 「あい、かぁる、でつ♪」 「・・・」 「あい!とどきまちたか?つぐとりにいきまつ♪」 短い会話ですぐに電話を切る薫。 「『だいがち』のおぢたんからでちた。かぁるのきりふだがとどいたらちいでつ」 「『代貸』・・・って、・・・の事務所から?」 「とうでつよ?」 「まさか・・・拳銃じゃないでしょうね・・・?」 あまりに物騒な薫の発言にまた不安の声を上げるあずさ。 「ちゃっきもいいまちたよ?みづからてをかけるのは、げたく(下策)でつ」 人指し指を一本だけ立てて、ちっちっちっ、の動作をする薫。 「とれに、ぱんぱん(銃のことらしい)なんかつかったら、だいがちやくみちょうたんまでめいわくかかるでつ」 「そりゃそうだけどな・・・」 「ちょっと、『ぢむちょ』いってきまつ」 よっこいしょ。薫は立ち上がり、愛用のバッグを首から提げる。 「その荷物、重いの?ついていこうか?」 場所が場所だけに気は進まないが、一応大人の耕治が薫に言ってはみる。 「かぁるの、てのひらにのるぐらい、かるいでつ」 「そっか」 「あ、おにいたん?」 「なんだい?」 「おねがいがあるのでつが」 「俺に出来ることなら・・・なぁに?」 「おにいたんにちかできないことでつ」 「?」 薫は一度は出て行きかけたが、思い出したことがあり耕治に話しかける。 515 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 18 50 ID XjUBHhrl 「でんわちてほちいとこがあるでつ」 「電話?」 「てれびきょくでつ」 「TV局?フラムーン(薫の好きなアニメ)の放送を野球中継で中止するなとか?」 「とんなことつるぐらいなら、『きゅうぢょうにばくだんをちかけた』といたづらでんわちたほうがはやいでつ」 「おい・・・」 「あのね、おにいたん、○○○○○○○○が、あちたのなんぢからながれるかきいてほちいのでつ」 「え?○○の○○?明日は確か・・・・があるから、いつもなら10時半ぐらいじゃない?」 「あちた、かくぢつに、ながれるよういってほちいでつ」 「うーん?聞いてくれるかなぁ?」 「みたとおねえたんのなまえをだつでつ。おねえたんはかいちゃのえらいちとでつから」 「そうなの?」 これはあずさの声。 「おねえたん・・・みたとおねえたんは、『ちーえむ』とかもやってるでつよ?」 「初めて知った・・・」 「そういやうちの店にテレビ局の人連れてきて打ち合わせしてたっけ」 「とうでつ。あと、だんぼーるに『ばつ』がついたのがあるのでつが」 そういうと薫はダンボールの中の一つを指差す。黒マジックででっかく『×』が描かれてある。 「とのなかのかみを『ちゅれっだー』にかけててほちいでつ」 「わかった」 「つぐかえってきまつからね♪」 そして薫は出て行った。 「おお、薫ちゃん」 「あ、『くつりや』のおぢたん!おひたちぶりでつ♪」 某『反社会的団体』事務所内。そこにいたのは代貸と呼ばれている人物と、もう一人。 通称『薬屋』。めったに事務所に出てこない、この団体における麻薬のエキスパートである。 「薫ちゃん、この前はえらい目にあったな」 「へいきでちた」 薫は事務所のソファーに座り、対面の2人と話し始める。 「あそことはもう話し合いがついたからな。よく勉強させたし」 というと代貸と薬屋はにやりと笑う。 (たぶんかぁるがもらったおかねのばいいじょうをもらったか、げんぶつでもらうことにちたか、でつね) とは薫は思ったが、口には出さない。不用意な発言が命にかかわる世界である。 「で、おぢたん、たのんでたのはできまちたか?」 「おう、もちろんよ!」 というと薬屋は懐から粉薬の袋を取り出した。全部で5つ。 「薫ちゃんの注文どおりのもんだ。粉薬にして、服用後5分で効果開始、10分後に切れる。バックファイヤはなし」 「ぱーふぇくと、でつね♪」 「感謝の極み」 おどけて紳士の礼をする薬屋。 「普通効果は長いほうがいいんでな。失敗作の中に丁度いいレシピがあったんで作ったけど・・・」 そこで言葉を切り、薫のほうを覗き込む薬屋。 「しかし、なんに使うんだい?まさか、これで一服もって誰かを交通事故にするとか?」 「とんなつかいかたはちまてん」 薫は言い切る。 「とれだと、くつりがからだにのこりまつ。そこからここにたどりつかれたらこまりまつ」 「OK。それならいい」 「言っただろ。この子は並みのガキじゃないって」 これは代貸の言葉。 「しかし、なんに使うんだ?俺にはそういう使い方しか思いつかなかったけどなぁ」 「ひみつ、でつ♪」 そういうと、薫はないしょ、のポーズをとる。そして立ち上がる。 「では、かえるでつ。おかねは、いいんでちたね」 「今日はサービスだ。とっときな」 「ありがとでつ♪」 516 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 20 29 ID XjUBHhrl 一方、主が一時不在の部屋ではシュレッダーがうなりをあげていた。 「ちょっと、これ、ドイツ語よ?」 「読めねぇ・・・いったい薫ちゃんはなにをやってたんだ?」 薫に言われたとおり、耕治とあずさは『×』と書かれたダンボールの中身をシュレッダーにかけていた。 中にあったのはコピー用紙の山。インターネットからプリントアウトしたものらしいが中身が何か全く検討つかない。 「あ、これ日本語・・・、んん?『自白剤の歴史と効果』?」 「これもだ・・・『MDHDの人体における効果時間と調整レシピ』?」 「これは・・・は?『誘導尋問を行なう上での質問技術とミスリーディング』?」 「麻薬と尋問・・・誰かの本音を聞きだすのかなぁ?」 「あれだ。耕治が浮気してないか、一服もって拷問するんだ」 「笑えねぇ・・・あ」 「ただいま、でつ♪」 部屋の主が帰ってきた。かばんをかけると寝床の布団にどっこいしょと座り込む。 「かぁるちゃん、おかえり~」 「おねえたん、ごみとうじできてまつか?」 「ごめんね、まだなの」 「ゆっくりでいいでつ。ただ、かくぢつにつててくだたい!」 「ヤバイの?中身見られたら捕まるとか」 「よむだけならつみにならないとおもいまつが、これがよめるちとなら、あくようができるでつ」 「悪用・・・」 「ねぇねぇ、薫ちゃん?」 麻薬の使い道が分からないあずさがもう一度聞く。 「文章ちょっと読んだんだけどさ・・・これでさ・・・耕治を拷問するの?」 「おにいたんに、でつか?」 ケラケラと笑い出す薫。 「おにいたんのことはちんじてまつから、とんなひつようないでつよ?」 「あのさ・・・薫ちゃん。さっきから気になってたんだけど」 と耕治はパソコンの画面を指差す。 「この『おにいたん店で盗聴3/1.mp3』ってファイル、なに・・・?」 「おとめのひみつ、でつ♪」 そういうと薫はいそいそと問題のファイルをゴミ箱フォルダに移動した。 (不用意な発言はできないな・・・) 「あ、おにいたん。でんわのけんはどうなりまちたか?」 「その件?間違いないよ。それは明日22:40ごろ放送だって」 「よろちいでつ」 「そういえばさっき薫ちゃん宛に荷物が届いたよ?」 あずさは薫が出て行った直後に来た宅配便の荷物を取り出す。 「送り主が『バラエティショップ防犯用品研究所』・・・だって」 「あい。これでふくちうのどうぐ、でんぶとろいまちた♪」 嬉しそうに言う薫。 「バラエティショップって・・・中身はあれ?スタンガンとか?」 「ちがいまつ。これは、えみるおねえたんへのぷれぜんと、でつ」 「笑留さんの?あの人に護身グッズとかいらないんじゃない?」 「逆に襲うほうだろうな」 あははははは・・・と乾いた笑い声を上げる耕治とあずさ。 「でさ、薫ちゃん。復讐って、いつするの?」 「あちたでつ♪」 「明日?!」「早っ!」 あまりの急展開に驚く二人。 「あちたでないとだめなのでつ。このきかいのがつと、つぎのらいげつではできないかもなのでつ」 次の来月では出来ないかも?変な日本語に首をかしげる二人。 「あちたは、えみるおねえたんが、こられないひでつ」 そうなんだろうか?再び首を傾げる二人。 「かくぢつにちたいので、おにいたんにおねがいがあるでつ」 「なんだい?」 「みたとおねえたんの、でんわばんごうをおちえてほちいでつ」 517 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 21 17 ID XjUBHhrl (かいわのないようは、おにいたんたちはちらないほうがいいでつ) そういって部屋を出て行った薫は、外に出て美里と話をしているようだ。 「しかし、なに考えてんだろうな薫ちゃんは・・・?」 「明日なんかあったっけ?」 「確かグループ店長会議、19時から・・・そっか!明日は笑留さんは実家に確実に泊まるんだ」 「そっか。本部からだとここより自宅のほうが近いからか。それを念を押しに言ったって事?」 「だろうねぇ。何で聞かれたくないかわかんないけど」 口を動かしながらも、二人は例の×印ダンボールの中から取り出した紙をシュレッダーに投入していく。 やがて、箱の中から、1冊の本が出てきた。 「これ・・・捨てたらヤバイんでしょうね・・・」 「どした、あずさ?」 ダンボールから出てきた文庫本を手に、首をかしげるあずさ。耕治はそれを取り上げる。 「うーん、とき子さんの持ってる推理小説じゃない?」 「あのひと、サスペンスドラマ好きだもんね」 「これはとき子さんに聞いてから決めたほうがいいな」 「そうね」 耕治はこの本だけを薫の机のうえに置いた。 「面白いんだったら、借りてみよ」 「おもしろいんじゃない?なんかのミステリー大賞とったとか帯に書いてるし」 「へー?!・・・タイトルなんていうんだったっけ?」 「えっとな・・・」 耕治は再び取り上げて題名を見る。 「・・・?『魔術はささやく』・・・?」 「あ~らかぁるちゃん、いらっしゃい」 「こんにちわ、でつ♪」 次の日の夕方、薫はテュルパンを訪れた。店の事務所にはフロアでの仕事を終えた笑留がパソコン相手に格闘していた。 「おねえたん、おちごとでつか?」 「今日会議でねぇ~資料がまとまらないの~」 といいつつキーボードを叩く。 「おねえたん、おつかれでつね」 「おつかれなの~だけど薫ちゃんが来てくれたら疲れも吹き飛ぶの~」 笑留は椅子を回転させて薫のほうを向き微笑む・・・涎を垂らしながら。 「かぁるちゃんのおしっこ飲んだら元気出るの~」 「え、えみるおねえたん・・・」 さすがにドン引きする薫。 「お、おねえたん。だいどころにいってこーひーでも、もらってきまつ」 「ああ~ん、かぁるちゃんのほうがいいのに~」 薫は事務所から厨房に移動する。 「おねえたん、てんちょうたんに、こーひーをいれてくだたい!」 「うん、わかった!ちょっとまっててね」 偶然食器を返しに来たあずさがいたので薫は笑留用のコーヒーを頼む。 あずさは食器棚からコーヒーカップ一式を取り出す。 「かぁるちゃんは牛乳でいい?」 「あい!あいつでおねがいちまつ!」 「はーい」 あずさは大きな薬缶に入ったコーヒーを保温のため弱火にしていたコンロからとり、コーヒーに注ごうとする。 「あ、おねえたん、ちょっとまってくだたい」 「どうしたの?」 薫はポケットから薬の入った包みを取り出すとそれを開け、中にある怪しげな粉をコーヒーカップにいれた。 「か、薫ちゃん・・・それ、毒じゃないでしょうね?」 「とんなわけないでつ!おみちぇがつぶれるでつ!」 「な、ならいいんだけど・・・」 といいながらあずさはその問題のカップにコーヒーを注いだ。 そして冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、グラスに注ぐ。 あずさはカップとグラスを小さなお盆の上に置いた。 「薫ちゃん、これ、持てる?」 「あい!」 薫はあずさから貰った盆を手に再び事務室に向かう。 518 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 22 00 ID XjUBHhrl 「えみるおねえたん、ただいまでつ」 「あん、かぁるちゃんありがと~」 笑留は席からたち薫の前に立つと盆からコーヒー一式を受け取った。 薫は盆を地べたに置くとグラスだけ両手で持つ。 「では、いただきます。んぐんぐんぐ・・・」 笑留はホットをブラックのまま飲んだ。 「おねえたん・・・にがくないでつか?」 「これがいいのよ。このほうがコーヒーの味が分かるし」 2、3口で飲み干すと笑留はまたパソコンの画面に向かう。 「さーて、飲んだら気合入ったぞー!やるぞー!」 笑留はまたキーボードを打ち始めた。 「こっぷ、かえちてきまつね」 薫は笑留のコップをのけ、厨房に持っていった。そして、帰ってきたとき。 「えみるおねえたん、ちょうちはどうでつか?」 「抜群抜群・・・って、あれ・・・あ・・・なんか目が回ってきた・・・なんで?」 「おねえたんはつかれてるのでつよ・・・」 がばっ! 気がついたら笑留はキーボードの上に突っ伏して寝ていた。 「え?あたし、なにしてた?」 「おねえたん、つかれてねてたのでつよ」 「え・・・そうなんだ。何分ぐらい?」 「20ふんぐらい・・・でつね」 「よかった~」 笑留は胸をなでおろす。 「おねえたんがちんぱいでちたが、もうだいぢょうぶでつね?」 「うん!だいじょうぶ!」 笑留は薫に対し力こぶを作る動作をする。 「じゃーやるぞー!あと30分!」 「がんばってくだたい!かぁるは、これでかえるでつ」 「うん!今日はおうちにいけないけど、またね~」 パソコンに体を向けてるので後ろを向いたまま笑留は手を振る。 「あい!おねえたんも、がんばってくだたい!」 そういって出て行った薫の瞳には月色の光がともっていたが、笑留はそれに気づけなかった。 519 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 23 01 ID XjUBHhrl その夜、22時過ぎ。禾森邸。薫は携帯で笑留に電話した。 ぷるるるる~、がちゃ。 「あ、かぁるちゃんだ~」 「えみるおねえたん、かぁるでつ♪」 「きゃ~かぁいい~♪」 「おねえたんと、てれびでんわではなちたいでつ」 「わかったぁ、ちょっと待っててね」 薫は居間のパソコンを操作し、大画面のテレビをパソコン画面に切り替えテレビ電話を起動する。 すると、画面にでっかく笑留の姿が映し出される。 「あ~かぁるちゃん映った~♪あれ、耕治君にあずさちゃんたちもいるの?」 「あい♪みんなでいまにいまつ」 笑留は画面の中で手を振っている。ちなみに声はテレビのスピーカーから流れている。 笑留は自室のパソコンからテレビ電話をしていた。後ろに部屋の風景が映っている。 風景といっても、後ろに映っているのはベッドとその上に乗った笑留がいつも持っている鞄ぐらい。 ちなみに彼女はスーツ姿のまま。もしかしたら今帰ったばかりかもしれない。 「おねえたん、いまかえったとこでつか?」 「そ~なの~、お兄ちゃんはもう帰ってきてるんだけど、お姉ちゃんがまだ帰ってきてないの」 「おにいたん・・・ゆういちてんちょうたんでつか」 「うん!でさー、せっかくみんないるんだしさ~」 そういうと笑留はいきなり服を脱ぎだそうとする。 「お、おねえたん!ちょ、ちょっとまつでつ!」 「えー?!どうしたの、かぁるちゃん?」 「あのね、おねえたん。ゆういちてんちょうたんとおはなちちたいのでつ」 「え~!!」 明らかに不満の声を上げる笑留。 「てんちょうたんとおはなちがあるのでつ。かぁるのおねがい、だめでつか?」 「うーん、ちょっとまっててね」 そういうと笑留は画面から姿を消した。部屋の外に出たようだ。 画面から小さく「おにーちゃーん!」って声が聞こえる。 「おにいたん、いまなんぢでつか?」 「10時半に少し前・・・25分」 「ぎりぎりでつね・・・」 520 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 24 08 ID XjUBHhrl 1~2分して画面の前に元店長-樹元雄一が現れた。後ろには笑留がベッドの上に座っている。 「はーい、おまたせー薫ちゃん♪」 「ゆういちてんちょうたん、よびつけてごめんなたいでつ」 「いいよ~」 そういって雄一は笑う。 「いつも妹が迷惑をかけてるからね」 「おにいたんからいちどきつくいってくだたい!」 「うんうん、いっておくよ」 後ろでは笑留が口を膨らましてプーと怒った表情。 「でね、てんちょうたん」 「なにかな、薫ちゃん?」 「てんちょうたんたちのおへやに、てれびはありまつか?」 「あるよ?」 「ちょっとつけてくだたい」 「テレビ?そういや今の時間帯だと・・・笑留、テレビつけて」 「テレビねー、おっけい」 笑留はベッドに転がっていたリモコンをとると画面から見て右にリモコンを向けた。この画面からはテレビは見えない。 「あ、うちのCMやってる」 「ほんとだ」 『ぐるぐるきょうも~♪』 ウエイトレスが複数お盆に料理を載せてクルクル回転している。テュルパンのCMだ。 ”きていぢぢつ、つくるでつよ・・・” 「え?」 「笑留、どうした?」 ”おねえたんは、ゆめをみてたのでつ・・・” 笑留はテレビを見たまま動かなくなる。 「笑留、おい!」 雄一は画面から離れると、その手を笑留の肩にかける。笑留は雄一の手を自らの手で払うと、その手首をつかんだ。 ”いまは、あくむをみてるでつ・・・” ”ゆめは、ちゃめるでつ・・・” 「うん・・・ゆめだから・・・さめるよね・・・」 「笑留、どうしたんだ、おい!」 笑留は雄一の手首をつかんだまま雄一のほうを振り向く。 その瞳は月色の光を灯していた。明らかにヤバい瞳だ。 「え・・・え・・・えみるさん?」 「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」 笑留は、雄一をベッドに押し倒した。 521 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 25 46 ID XjUBHhrl 以上です。 次回、完結。またエロ。そして修羅場。 ・・・新スレが起つまでに間に合えばいいが。 522 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/20(火) 00 27 28 ID XjUBHhrl ・・・だめだ。もう450KB使い果たしてる・・・orz 523 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 04 47 06 ID 7yxgMxT1 512第二章キタ━━(゚∀゚)━━!!GJ! 開始早々サキが嫉妬? 過去に虎吉と関わりがあったようだし今後の展開がますますwktk 521遂に病みが来るかと思ったら次で終わりとはw 大爆発に期待w 524 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 12 49 49 ID 0xGFv+j9 サキが急に可愛く見えてきた俺ガイル ロボ氏GJ! ◆dkVeUrgrhA氏もGJ!次回最終回? 450 #13189;越えたし次スレ立ててきていいのかな? 問題ないようなら行って来ますね 525 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 13 29 22 ID 0xGFv+j9 立ててきました ヤンデレの小説を書こう!Part5 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174364890/ 526 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 15 58 11 ID +UBnlJRw 埋めついでに愚痴を少々。 このスレでは雑談が少なめだった。 実にSSスレらしいのだが、少々寂しくもあった。 住人が減ってしまったのかな、と思ったりする俺ガイル 527 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 16 14 43 ID 7IMjvgJf SSスレで雑談を遠慮するのは当たり前のマナーだろ、常識的に考えて…… 容量とか考えろよ 528 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 16 38 21 ID lRPxiCOf いいものじゃないか、神光臨の頻度が増えたと思えば。 529 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 16 39 46 ID +UBnlJRw それはそうなんだけどさ……なんだか、感想レスも最近減った気がするんだ。 覗きに来る人が減ってたりしたら、なんか悲しいわ…… みんな、居るのか? うぅぅぅぅ………… ヤンデレスレはエロエロよー! orz 530 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 17 14 07 ID 5QfzGFlb 覗いてるけど読んでないしな、俺の場合 531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 17 15 31 ID lRPxiCOf ふ ざ け る な 俺の常駐では控え室を除くとここが一番過密なんだぞっ! _| ̄|○ 532 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 17 53 56 ID WNu2Za9q 作品以外のレスで埋め尽くされた今の嫉妬スレを見ろ。あれは泣きたくなる。 作品が投げ出されたにも関わらず、ハチ公のように続きを待つ俺の気持ちも考えろ。 533 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 17 54 28 ID XjUBHhrl ヤンデレスレは個人的には感想専用スレが欲しい 534 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 17 57 16 ID XjUBHhrl 532 逆レイプスレなどヴァカが暴れて職人全員逃亡、 新作投下がないまま次スレ移行だぞorz 535 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/20(火) 19 42 57 ID LXxhQSKc 神気取りの勘違いバカを潰すのは最高の娯楽だけどなw 536 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 19 57 34 ID 2DdENjVX 嫉妬スレに飽き足らず、ヤンデレスレにまで来たか…… 537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 19 57 56 ID 3Ccti8Mu と、工作員が言ってましたw 538 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 04 47 ID 4PUniF5d 535 お前、嫉妬スレで荒らしやっているバカだろ? 539 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 08 09 ID Qr9CS35h 538 嫉妬スレを荒らしておいてこっちだけ無傷でいようなんて虫が良すぎるんだよw やられたぶんはキッチリやり返すからなw 540 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 09 57 ID WNu2Za9q 539 単発IDの荒らしはこっちにも来ているのか・・・。 541 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 13 14 ID 6c/a9RbQ 荒らしは全力でスルーしろ 542 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 42 55 ID fWZsslMS 539 お前、彼女も友達もいないんだろうなぁ。 可哀相な人だねぇ…(つД`) 荒らし回る暇があったら、出会い系にでも登録しなよ。 あっ、ゴメン!ひきこもりのニート君には無理だったよな…本当にごめんな。 それから、君にはこれ以降一切、かまわないけど気を落とすなよ。 生きてれば、きっといつかいい事あるよ! いいグロ画像拾うとかさ。 君、グロ好きだろ? じゃあ元気でな!w( ´ー`)y━・~~ 541 おもいっっっきり、かまっちまった。 コレ以降は全力でスルーする。 543 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 45 12 ID z26hRunX 以後、つっこみ禁止!!! ↓ 544 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 46 35 ID lRRpX25M 最近お茶会のご主人が来ないなあ。 確かに創作活動には波があるのは分かってるんだけど…… 545 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/20(火) 20 47 49 ID OjoOwn80 542 殺すぞw 546 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 48 09 ID WNu2Za9q とりあえず、ずっとお預けの生殺し状態なので、 慎太郎君の人のパソコンは早く直ってほしい。 547 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 52 20 ID z26hRunX そういやさ、ミ(ry主催のイベントが明日あるな。 548 名前:うふ~ん[うふ~ん] 投稿日:うふ~ん ID DELETED うふ~ん 549 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 20 55 57 ID qhPMkswl 勝利云々のやつか・・・ 相変わらず暇みたいだなw 550 名前:うふ~ん[うふ~ん] 投稿日:うふ~ん ID DELETED うふ~ん 551 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 21 00 35 ID K5hDoGw/ 544 俺もお茶会と上書きの続きを待ち望んでる。 もちろん他のシリーズもだが。 552 名前:うふ~ん[うふ~ん] 投稿日:うふ~ん ID DELETED うふ~ん 553 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 21 13 31 ID 4PUniF5d ナナリーは知っている。自分一人では食事もままならないことを。 ナナリーは理解している。自分には自分の為に無償で奉仕してくれる人間が必要だと。 ナナリーは気づいている。そんな都合の良い人間は、兄を置いて他にはいないのだと。 ユフィお姉さまはもちろん、ミレイさんやシャーリーさんにも、 まして、最近お兄様の部屋に転がり込んできた雌猫なんかに お兄様は決して渡しません。 お兄様は一生私のことだけ考えて、私のためだけに働いていればいいんですよ。 ねえお兄様。お兄様も幸せですよね? こんな「絵に描いたような」儚げな妹の世話をできて。 クスクス。 皆が黒い黒い言うから、実はナナリーはこんなこと考えてるんじゃないかと 思ってしまうじゃないか(´・ω・`) 俺もこんな腹黒い妹が欲しいww 554 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 21 14 16 ID qhPMkswl ? 555 名前:名無しさん@ピンキー[yuuki3090] 投稿日:2007/03/20(火) 22 17 17 ID dqDM3zAs 553 ギアスの中でヤンデレといえばセシルさんを忘れてはいけないと思う。 でもそんなナナリーもいいと思うよ! あっ、ニーナもヤンデレなのかな? 556 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 22 19 50 ID NXnptOos セシ・・・え? 557 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 22 22 07 ID qhPMkswl ナナリーはスザクだからねえ 558 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 23 04 16 ID la/22RYP ところで明日の病み鍋PARTYに行く人いる? 俺行こうか迷ってるんだけど、ハルヒもひぐらしも未来日記も読んでないから 行っても買うものあるのかどうか不安で… 559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 23 16 41 ID WNu2Za9q ヤンデレの名を騙ったキチガイ系少女ぐらいしかなさそうだからいい。 そして、何度も言われているがひぐらしは邪悪ヒロインであってヤンデレではない。 560 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 23 26 12 ID 7IMjvgJf 559 詩音は一応ヤンデレ。 561 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/20(火) 23 33 35 ID z26hRunX じゃぁぁあくをぉぉ かぁきぃぃけぇすは さぁぁけぇびあぁげぇるきょおぅぼぉうな 「嘘だっ!」 わかる奴はデモンベインをプレイしたことがあるやつ。 562 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/20(火) 23 36 32 ID BZY/W1nG 糞SS投下まだああああああああああ!? かも~んなw 563 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 24 08 ID rKpbPAHa 553 私は、自分ひとりの力ではベッドから下りることができない。 生まれつき、足が不自由だったわけではない。 ずっと昔、私が10歳の頃までは自分の足で歩くことができた。 歩けなくなったのは、お兄様の11歳の誕生日。 お母様に頼まれて、洋菓子店へケーキを受け取りに行ったときのこと。 両手で胸の前にケーキを持ち、私はお兄様のことを考えていた。 えへへ。お兄様はまたひとつ、大人になった。 あと七年経てば、結婚できる。 だってお兄様はお義父様の息子だもの。 血が繋がっていなければ、結婚はできる。そんなこと、とっくの昔に知ってるわ。 ――ああ、お兄様に早く、早く会いたい。 ――そして、いつものように胸にうずくまって、匂いを嗅ぎたい。 ――お兄様。お兄様。お兄様………… そんなことを考えていたら、突然足に痛みを感じた。 そして、世界が一回転した。 ごず、という音が聞こえてきた。耳を伝ってではなく、直接、音が脳に響いた。 ぼんやりと目を開けると、自動車のタイヤが目の前にあった。 人が駆け寄ってくるのが見える。その中の一人が声を出した。 ――女の子が轢かれたぞ! 誰か救急車を呼べ! その言葉を聞いて、私は自分がどんな状態にあるのか、ようやく理解した。 車にはねられたんだ、と。 そのことを理解した瞬間、足が痛みを訴えだした。 皮を引き剥がされた。肉を力づくで引き裂かれた。もっと深く、繊細な部分を破壊された。 時間を遅らせて、痛みが少しずつ私の脳を冒していく。 そのまま痛みが加速していくかと思ったら、痛みが引いていって、同時に力が抜けていった。 今度は眠くなってきた。地面が黒くて、固くて、ちくちくするのに、恐ろしく眠い。 ――眠るのなら、お兄様の腕の中が良かったな。 最後にそう考えて、私は目を瞑った。 目を覚ましたときに見えたのは、白。 上手く開かない目をゆっくり開くと、視界の隅にお兄様の顔が見えた。 たまらなくなり、お兄様の体に抱きつこうとしたら、脳を刃物で突き刺された――気がした。 痛みに耐えられなくなり、再びベッドに身を任せる。 そんな私に向かってお兄様が言った言葉。 今でも忘れない。 「僕のせいだ。僕がお前についていっていれば、良かったんだ。 そしたら、こんなことにならなかったんだ。 ごめん。もう……お前を一人にはしない。絶対に」 お兄様の泣き顔が可愛いとか、その涙を一滴残らず飲み干したいとか思うよりも先に、 その言葉が嬉しくて、私は泣き出してしまった。 ――だって、お兄様のプロポーズだもの。これ以上、嬉しいことなんかこの世にはないわ。 564 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 24 49 ID rKpbPAHa それから、私とお兄様の甘い生活が始まった。 もうかれこれ、8年は経つ。 朝はお兄様が私を起こしてくれる。朝食を食べさせてくれる。 昼には息を切らせて部屋に戻ってきて、昼食を食べさせてくれる。 夕になっても、もちろん夕食を食べさせてくれる。 そして、その後はずっと私の部屋に居てくれる。 私はベッドに身を起こして、お兄様はベッドに腰掛けて、二人でお話をする。 このときが、とても幸せ。 心が暖かくなって、自然と笑みがこぼれる。 でも、それ以上に幸せなときがある。 それは、お兄様が私を抱いているとき。 お兄様が私の肩を掴んでキスをする。そして無理矢理ベッドに押し付けて、首筋を舐め上げてくる。 暖かい手が背中に回り、腰を撫でて、お腹に辿り着く。 パジャマのボタンを優しく脱がせて、下着の留め金を外して、強引にたくし上げる。 お兄様の目が大きく開かれる。私の、むき出しになった乳房を凝視している。 そのまま獣のように乳首に吸い付き、舌で転がしてくる。右に左に、執拗に責め立てる。 乳首にかみつきながら、私の履いているパジャマと下着をずらして、優しく足首から脱がせる。 お兄様は息を荒らげながら、ベルトに手をかけて、ジーンズ、トランクスの順に脱ぎ捨てる。 大きくそそり立ったお兄様のいちもつを見ているだけで、私のアソコは疼く。 欲しい。あれを咥えたい。強く締め付けて、お兄様の吐き出すものを全て飲み込みたい。 何度も、荒々しく突いてほしい。奥の奥、子宮を浸すほどの精液を出してほしい。 でも、私が何を言わなくてもお兄様は私の言うことを聞いてくれる。 慣れた手つきで私の足を広げる。壊れ物を扱うように優しく、ゆっくりとした動きで。 お兄様が一言、いれる、と告げた。私の中にお兄様のペニスがはいっていく。 その瞬間、私の心は切なくなる。 激しく腰を打ちつけられているというのに、まだ足りない気がする。 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと。 奥――いや、心の臓に達するまで、突いてほしい。犯し尽くしてほしい。 私の顔は、涙と、唾液と、汗でぐちゃぐちゃ。 きっとひどい顔をしているだろう私に、お兄様はいつも言ってくれる。 「愛してる」 そして、お兄様に熱いものを注がれて――ようやく私の心は満たされる。 565 名前:~事故と、男と、妹と、女四人~[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 26 38 ID rKpbPAHa でも、体を重ねた後に見る夢は、最悪。 私は腕を縛られていて床に転がされている。 そうなったら、足が動かない私には何もできなくなる。 そんな私には目もくれず、四人の女が、お兄様を犯している。 姉だった女性。友達だった二人。誰だか知らない女。 一人がお兄様の頭を股で挟んでいる。 二人がそれぞれお兄様の腕を掴み、自分の股間に無理矢理押し当てている。 最後の一人がお兄様の腰の上に跨り、上下に腰を振っている。 憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。 この足さえ動けば。そうしたらあの女どもを蹴り殺してやるのに。 殺意をこめて女どもを睨む。 歯を食いしばり、眉を上げ、目じりを吊り上げる。 死ね。消えろ。滅べ。逝ってしまえ。 そう強く念じる。 すると、女の一人がこう言った。 『もう、わたしたちはしんでるの』 別の一人も声をだした。 『あなたに、ころされたのよ』 また、別の声がする。 『あなたは、さいていのおんなね』 残る一人が、私を見つめる。 『じつのあにに、ひとごろしをさせるなんて』 最後に、声が重なる。 『『『『貴女が死ねばよかったのに!!!!』』』』 そして、私はベッドの上で目が覚める。 こめかみに汗が伝う。額を拭うと、寝汗がびっしょりと手にはりついた。 手をパジャマで拭う。なかなかとれない。 いらいらする。また、あの女どもの夢を見てしまった。 あいつらは死んでまで私の邪魔をするのか。 そもそもあいつらが悪いのだ。お兄様と私の大事な日常を犯したのだから。 でも、所詮は夢。あいつらの夢も、妄想どまり。 私の現実は、こう。 「お兄様。おはようございます」 「……ああ。おはよう」 お兄様の起きたばかりの顔を拝むことができるのは、この世界で私ひとり。 そして、お兄様は私ひとりだけのもの。 終 勢いで書いた。反省はしていない。 そもそも原作知らないし。 566 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 27 01 ID axSnNLxl ヤンデレはキャッハハハッハハハハ!! と笑いながら包丁を泥棒猫に突き刺すのが本来の主流ではない 本来のヤンデレというのは 好きな男性に声をかけられない程に人見知りが激しくて引っ込み思案で バレンタインのチョコをひっそりと机の中に入れておくような大人しい女の子が 黒化して行く過程が本来のヤンデレじゃないのか? ツンデレは単純にツンとして、恋人同士になればデレという単純な構造だが ヤンデレはそこまで過程が複雑で痛々しい姿があるところがいいんだよ。 と、言ってみるテストw 567 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 33 00 ID rKpbPAHa 以下、つっこみ禁止 ↓ 568 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 36 27 ID axSnNLxl ヤンデレ論はどこですればいい? ゼロは何も教えてくれない 569 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 00 44 15 ID rKpbPAHa このスレ的には、 ・ヒロインが、狂うほど(病的)に主人公を愛している。 ということで決着がついている……気がする。 主張じゃなくて、「こんなんどうだ?」というシチュの説明(プロット)なら歓迎だ。 ヤンデレ論を作って、ヤンデレのあり方を決め付けるのは可能性を狭くする。 570 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 01 02 16 ID UmXH/Ari 566 つムヒョロジ7巻 571 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 08 15 20 ID B6OVAqRs 565 これはGJ! 俺も原作知らないから素直に楽しめました 572 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 08 35 41 ID ckeix0gM そろそろヤンデレも体系化の時期なのかも知れんな。 573 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 08 59 59 ID VLtWfF9Z 572 T-72神教くらい壮大なネタと割り切らないとまた荒れる予感。 別に体系化しなくてもいいんじゃない?もしくは枝分けせずに各自が○○派を名乗るとか。 オブイェークト 574 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 10 00 14 ID wHi2ca1H 自分の好きなヤンデレは、 多大なる葛藤の果てに自分の親友であった泥棒猫を突き刺し (この時点ではまだ病んでいない)愛を得ようとするけど、 やはり因果応報というか、天命というかで自分の思い通りに ならないことばかり起こって、その中で段々とヤンでいく娘 要は泥棒猫を刺すこと から 病んでいく娘 575 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 10 40 09 ID SyNaLU9T 世の中にはヤンデレと狂気系を混同する人が大杉る 576 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 10 49 22 ID hW7+A4fq 「ヤンデレ」って一件「ヤンキーのツンデレ」かとオモタ 表記としては 「病んデレ」のほうがいいかも知れないが 「やんでれ」とうまく読めない人もいるかな? 「ツンデレ」とのシャレでもあるだろうし。 577 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 10 56 12 ID rKpbPAHa 573 どんなヤンデレが好きかという雑談に過ぎないから、神経質にならなくてもいいとおもうぞ。 というわけで、俺も 572に釣られてみる。 俺が好きなタイプ。 ↓ 可愛さあまって憎さ百倍、愛憎型ヤンデレ。 例) ・主人公とは、前世で恋人だった。 ・しかし、主人公に拒絶される。そして黒化。 ・「私の思い通りにならないなら、いっそ殺してあげる。 でも勘違いしないでね。憎いからじゃないの。 誰よりもあなたを愛してるから、あなたを永遠に私のものにしたいから、『あなた自身』が欲しいのよ」 ↓ サクッ 575 狂気系ってひぐらしのレナみたいなデレてないヒロインのことか? あれはただのヤンデルだな。 578 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 11 35 25 ID TJoiUQVn デレが強いのが好きだ デレが強ければ強いほどヤンが際立ってぞくぞくするし 579 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 12 07 30 ID 6sW0OSnS 当方ド田舎につき『病み鍋PARTY』とやらの感想を希望。 今日やってんだよね? 580 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 12 07 30 ID 8RLiN9P/ 572 よし、じゃあ俺は元々は普通の娘だったのが 予期せぬ不運などで想いを阻まれそれが沈殿鬱屈していき 表面は正気を取り繕いつつも段々と狂気が現れていく 外圧後天的進行性ヤンデレ派を主張する。 581 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 12 43 31 ID XRzno3ep それなんて空鍋? 582 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 15 28 36 ID MrQwIGlG 前スレで話せといわれたので前スレで。 GS美神に出てきた乙姫様はいいヤンデレだった。地雷女と評されてたが。 もしモノホンの浦島太郎がやってきたのならどうなってただろうか。 583 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/03/21(水) 16 28 03 ID d3l8hkRD 582 乙姫が地雷なのは主に年齢のせいかとwww ていうか横島に惚れる女(妖怪含む)は大抵ヤンデレだった気がw 584 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 17 31 46 ID VLtWfF9Z 579 病み鍋PARTY行ってきたよ。 落書きブースに「静岡から来た」とか「富山から来た」とか、 果ては「福岡から来たけど辛いので次回はもう少し西で」みたいなことも書いてあったよw んで、参加者はだいたい100人前後かな?11時に行って1時ごろには出ちゃったけど、 12時半ごろにはもう新規入場者はほとんどいなかったな。 サークルさんはカタログ上では30あったけど、実際は来てない空机や新刊落として 出品なしなサークルさんが結構あった。 内容は10円の2Pくらいしかないほとんどただのチラシから200円前後で10P前後の コピー本が多く、500円前後のオフセット本が2~3サークルだった。 ジャンルはカタログの申し込みジャンル統計によれば、オリジナル41%ハルヒ14% 未来日記とひぐらしが10%ずつあとその他ちょこちょこ。 実際行ってみた感想はスタッフさんや他の参加者には悪いけど、 「暇潰し&物見遊山にはなったかな」てのが正直なところ。 他に知りたいことある?一応11/11に病み鍋PARTY2が開催予定らしいが。 585 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 17 38 07 ID yaTD/2fl 病み鍋の会場に空鍋が置いてあった… 586 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 17 43 09 ID VLtWfF9Z 585 「ご自由におかき混ぜください」ってアナウンスもあったよ。 スタッフさんがわざわざ家からコンロ、お玉、鍋の三点セットを持ってきたみたいw 587 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 17 58 43 ID yaTD/2fl 開始からしばらくは「ねこうさプリン」さんに集中してたなぁ 588 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 18 49 03 ID SyNaLU9T 587 あーやっぱなあ 某長門小説の人とかは? 微妙にスレ違いの話題だが 589 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 18 58 36 ID OnQthCXe 狂気系でもデレがあればヤンデレなんじゃねーかな? お茶会シリーズとかそんな感じだし 590 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 19 25 44 ID SyNaLU9T ヤンデレと狂気系は似ててもやっぱり別ジャンルだと思うんだ……。 ・狂気系デレ=病んでいてデレ ・ヤンデレ=病むほどにデレデレ マッドラブとシックラブの違い、みたいな。 いない君~の如月更紗と神無士乃が分かりやすい例。前者は狂気系デレ、後者がヤンデレ。 (これからの展開でどうなるかわからんけど) お茶会は「狂気の中のヤンデレ」メインだからいいんだけどね。両者兼用的な。 ヤマネとかグリムとか妹とか。 狂気系ヤンデレとでも言うべきハイブリッドデレ。自分で言ってて意味わかんね。 591 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 20 11 12 ID 9I1IM2Bw 正直な話狂気系もOKにして欲しいなあ。ネタがあることはあるんで。 592 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 20 46 17 ID enNVI4x2 そういやぁ病み鍋にノベゲーだすとか言ってなかったけ? 593 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 20 58 39 ID SyNaLU9T 591 狂気系でスレ立ててみてはどうか、と思う それとも俺みたいなのがほのぼの純愛にでも移るべきなのか 594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 21 30 27 ID rKpbPAHa 園崎詩音は狂気系ヤンデレヒロインだろう。 彼女をヤンデレヒロインと認めるならば、このスレで狂気系ヤンデレが受け入れられない理由は無い。 というわけで、 591! Come on! 準備はOK! ゴングを鳴ら(ry 595 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 22 23 50 ID MrQwIGlG そのザキとやらはヤンデレなのか?誰に惚れて狂うんだ? 596 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 23 12 33 ID 6sW0OSnS VLtWfF9Zさん、感想ありがとう♪ なんとなく微妙な感じが伝わってきたよ。 でも空鍋が用意されてるあたりに、スタッフの心意気を感じてしまった。 福岡で開催なら行ってみたいな。 最後に一つ、次回も行くかな?かな? 597 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 23 18 40 ID 6sW0OSnS スマソ書き忘れ。 yaTD/2flさんにも感謝を。 ありがとう。 598 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/21(水) 23 18 53 ID ymo3Ey0M 狂気系ヤンデレ… 恋愛対象の喪失などにより、絶望から狂気に至るヤンデレ というのだと思う 599 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 01 08 57 ID GnpXbvy+ 590 俺にとっては「鶏が先か卵が先か」と同じにしか見えない。 600 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 01 18 15 ID gLOMFaMi 愛ゆえに狂っていくのがヤンデレ 既に狂ってた人が人を好きになりましたーじゃ違うんだ、そこから執愛に派生していくならともかく 601 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 01 42 32 ID 2dhwRX7h みんなそれぞれ、これっていうヤンデレがあるんだな ヤンデレにも色々だって、冗談ヌキで勉強になった 602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 02 45 55 ID 07MahryA なんでわざわざそんなハードルの高い条件のとこに投下しなければならないのか…プロじゃあるまいし 誰も気軽に投下出きる環境が欲しいってだけなのがわかってないみたいだな… そ―ゆーナチュラルに傲慢なところが書き手の立場の人間には我慢ならないってのが理解できないのか? …やはり根本的に相容れないみたいだ。 603 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 05 34 39 ID 5rzVUOvC 喚くな、自分でスレ作れ 604 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 05 35 49 ID QXed479+ まあ一度肥えた舌は元には戻らないってものだし 605 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 05 36 50 ID uSxsqvB2 んー、難しいね、ヤンデレ。奥が深い。 俺は病んでる人~ってのもアリだと思うよ。というかそっちの方が自分は好きだし、個人的にわかりやすい。 まあけど好きな余りに病むのもばっちこい。けどこっちの方が病む過程も表現しないといけないから、書くのが難しそう。 まあ、なんにしろ、物語中に病みさえすれば何だってGJ出しますよ。病むのが最初からでも後半でも。 606 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 06 56 18 ID c/SrAEaW その”病んでいく過程”とやらを描いてあるSSはまとめサイトでいうとどれにあたるんだ? 607 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 08 00 22 ID gLOMFaMi 病的な愛≒病人の愛 いや、もういいわ。 変なこと言ってすまんかった。 608 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 08 22 55 ID 5ArBZU46 606 「彼が望むな死んでもいい」は? 609 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 08 32 56 ID 5ArBZU46 「彼が望むなら死んでもいい」だった。スマソorz 610 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 14 05 16 ID 4fLIHgKV スレの繁栄を考えるとどっちもありでいいんじゃないか? 微妙な違いを細分化して新スレ立ててもいいことないと思うよ、経験上 611 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 17 47 08 ID to05I7ZD 608-609 そして、その言葉のとおりに 「貴方のためだから…その為に死ねるなんて、嬉しい…」 と、笑いながら自分の首を掻っ切ったり毒盃を飲んだり出来ればそれはヤンデレ。 612 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 21 12 47 ID c/SrAEaW 611 …やっぱこのスレではそういうオチがデフォルトなのか? そういうのが好かれているのか? ハッピーエンドが好きな奴!手ぇ上げろ! ノ 613 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/22(木) 21 29 27 ID 9nHI0JrG ノ 614 名前:名無しさん@ピンキー[yuuki3090] 投稿日:2007/03/22(木) 21 33 16 ID GP0tKLlJ ノ 615 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 21 33 44 ID MCgmcbfK ノ 616 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 21 39 54 ID kx2z9wc4 ノ 時に、ハッピーエンドとは何だろう? 617 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 21 50 42 ID c/SrAEaW 俺が言うハッピーエンドは、主人公とヒロインが生存していて、 二人が結ばれて、周りの環境もそれなりに幸せという、よくあるタイプのエンディング。 いわゆる生存END。 このスレ的なハッピーエンドとは違うとわかっているけどね…… 618 名前:慎@携帯 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/03/22(木) 21 55 19 ID c33AD0ja ノ >>616同感。何をもってハッピーエンドとするのか、というのはプロット考えてたりするとよく思う。個人によって変わってくるのかな…自分は、登場人物がどんな形であれ幸せになるならばハッピーエンドになると思いますが。 619 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 00 44 48 ID uLPF6L7t トゥルーエンドって区分もあるからややこしい……。 俺は名前しか知らないけど、誰か明確な区分って知らない? 620 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 00 52 04 ID K1JbsCOM 高橋葉介の文庫版で「お気に召すまま」って作品のヒロインがなかなかのヤンデレ >ハッピーエンド ヤンデレ的には一緒に心中するか、主人公の体の一部を切り取って保存する くらいしか思いつかない。 失明や手足切断させられた主人公が、ヒロインの助けを借りて二人一緒に 生涯を共にするくらいかな。まぁ、俺だとこのハッピーエンドだが。 全然ハッピーじゃねぇな。 621 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 02 15 12 ID WQMy9EOp 俺は惚れた女に殺されるならてんで構わないけどなあ ただしジワジワなぶり殺すのは痛いので、ナタなんかで、こう、スパッと、一気になら 622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 02 42 23 ID nVT1FjUG ヒロインの執拗なヤン攻めに主人公の精神が崩壊して人形化 従順になった主人公と二人で幸せに暮らす みたいなのがハッピーエンドじゃね? 623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 02 48 07 ID 79PH3+n7 622 それなんてマナマナエンド(w そういや本スレの方何が起きたんだ? …確かにあれは感想書きにくいが 624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 06 37 52 ID Am0zAZSp 嫉妬スレは雑談ばかり。ヤンデレスレはSSばかり。 嫉妬スレとは正反対の状況だ…… 悪いことでは、ないんだけどさ。 625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 09 48 10 ID U6qYWsDk 不満ありげな理由がさっぱりわからん。最近別になんら悪いこともないのにやたらと「憂慮」しまくる奴が多すぎ。 626 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 12 35 39 ID AQy9hT8q 625 ヤンデレはどれだけ幸せでも不安なのさ 627 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 12 40 52 ID 1qNt958Q 個人的にヤンデレは 「主観的にはハッピー、客観的にはバッド」だとおもう。 628 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/23(金) 16 18 27 ID 39MPvq61 R.D. レインの「Do you love me?」ってヤンデレっぽいよな? 何か二人とも壊れてる感じがして好き。 629 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 16 19 04 ID 39MPvq61 ごめん、さげ忘れた… 630 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 16 27 27 ID IKuwm1G7 皆の衆!待ちに待った保管庫の更新が来たぞ! 631 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/23(金) 22 39 05 ID UefKDqeo 皆さん、すいません 黒の領域は未完とさせていただきます。 632 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 22 39 45 ID 4q2dMHO/ なっ・・・・・・・・・・・・ 633 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 22 42 32 ID IklbAATP 631 なんで・・・、なんでそんな人を絶望させるような事を言うんだよorz 634 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 22 51 26 ID U6qYWsDk ∩___∩ 、、 | ノ ヽ ( っ ))) / ● ● | / / 631 | ( _●_) |ノ / こいつすげえアホ 彡、 |∪| ,/ /__ ヽノ /´ (___) / トライデント氏はトリップ割れしたみたい。 本物は普通に嫉妬スレに投下して、トリ変更で対応してる。 635 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/23(金) 22 59 26 ID Am0zAZSp 471 名前: トライデントd123 [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22 32 50 ID avr619Mt 以上 投下終了です。 472 名前: トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22 36 14 ID N2859HjO 以上 投下終了です。 473 名前: トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22 37 07 ID avr619Mt とりあえず、トリップ変更しておきます。 記号の前に"#"を付け忘れたみたいだな。 これからは ◆J7GMgIOEyA このトリップだということか。 634。お前さんの親切さに感動した!結婚してくれ!……いやごめんうそ。 636 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 12 19 27 ID 1wyffFHU ネタみたいなものは思いつくんだが文才が無いっつー現実に打ちのめされたOTL なのでここに思いついたネタとか書いてみても良いだろうか? まぁ病んでるかどうかは自信がいまいち無いが。 637 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 12 54 47 ID kq72ybrI 636 男は度胸!何でも試してみるもんさ! 638 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 13 33 45 ID OjrMk0cJ 637 ならばお言葉に甘えて。 舞台としてはファンタジーかそれに属したもので 人間ではない魔法使いの少女(以下A)が人間の少女(以下B)に惚れる(まぁ性別はどうでも良いけど) 付き合い始めてしばらくして「寿命の違い」に悩み始める。 元々他人との付き合いが少ないAは一人で考えてるうちに病み始め 「だったらBを人形にしてしまえばいい」という結論に至る。 それからAは始めに薬を使ってBを「憶えている事が出来ない」ようにし(薬は少しずつ盛って徐々に物忘れが酷くなったように思わせ) BをAの館に同棲する。 それからAはBに「治療できるかも知れない」と言って術を施す、それは対象の精神を幼児にまで退化させるもので これも薬と同様に少しずつ施していく。(術には副作用なものとして術者に異常な独占欲が発生する) その後、AはBの人格とかを用意していた人形に移植し、Bの本来の肉体は地下に保存する。(人形の動力はAの力) それと同時に館の周囲を結界か何かで完全に隔離し、更に「二度と離れる事が出来ないように」 とお互いの魂を同化させる。 思いついたのはこんな感じ、グダグダな感がしないでもないが・・・・ しかもベースにしたのが某弾幕STGな辺り、厨臭さ満載な俺・・・ちょっとヤマネに解体されてくるorz 639 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 14 29 59 ID qZR9C9Ya 638 そのあとで「B」の肉体にさまよう死者(女)の魂が宿る。 ↓ 「B(女)」は生前に恋人だった「C(男)」を捜しはじめる。 ↓ 復活した「B」の肉体を求めて「A(女魔法使い)」が動き出す。 これならさらにややこしくなる。 640 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 16 50 20 ID srpR2hK9 638 俺はBの肉体に宿った残留思念が人格を形成してBが2人いるような状態を付加したい。 まぁどっかでみた設定だが。 流れとんぎって梅 幼馴染みだったあいつは、中学の頃から少しよそよそしくなった。俺も理由がわからず 避けるようになった。進学する高校が別になったことがわかった時俺は賭けに出た。 卒業式のあと体育館裏でキスをして好きだったと告げた。 最初の頃は普通だった。最寄り駅までの登校とたまの休日デート。だがある日あいつは言った。 「最近メールの返信遅くない?」 そんなつもりは無かった。確かに新しい友人も増えたがおろそかにした記憶は無かった。 「だって2、3時間開く時あるじゃん。私、不安で……」 この時点で気づけば良かったのだろう。まる1日放置したのならともかく。 だが次の日からはもっとエスカレートした。 「昨日も7時までメールくれなかった……私とメールするの嫌になっちゃった?」 「ねぇメール打つのに30分もかからないよね?どうして間開けちゃうの?」 「友達とカラオケって……ねぇ私のこと嫌い?メールとか面倒になっちゃった?」 「午前中ほとんどメールくれないよね。授業と私どっちが大事?」 「私以外の人とメールする暇はあるのに私にはくれないの?」 「一番多いとか量の問題じゃないよ。その人とメールしてる時は私のこと考えて無いでしょう?」 「直接会える時間が短いからメールに頼るしかないのに、メールまで返してくれないの?」 メール依存症だった。今では30分携帯を放置しておけばあいつからのメールが10件は入る。 1時間すれば30件は超える。 641 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 16 51 21 ID srpR2hK9 15 31 message; 何してるの?私は今掃除中(-_-メ 当番なんだぁ 15 37 message; 忙しかった?ごめんね。 15 40 message; やっぱり気になるよ… 15 44 message; ねぇ本当に何してるの? 15 45 message; ごめんね。メール邪魔だよね。 でも寂しぃよ。。。 15 47 message; どうして返事くれないの? 15 48 message; メールしすぎだょね。 本当にごめん。 15 50 message; 嫌いになっちゃった? ごめん。本当にごめん。 でも寂しぃの。。 15 52 message; 本当にどうしたの? 何かあった? 15 55 message; お願い、嫌いじゃなかったら 返事、して。 寂しぃ 大量のメールを前にして俺は途方にくれる。どうしたら良いのか誰か教えて欲しい。 だが誰も答えなど知らず、今日も俺はメールを返す。きっと俺まで狂う日は近い。 642 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 16 52 42 ID srpR2hK9 5スレも素敵にヤンデレスレはエロエロよー!! 643 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 17 19 58 ID qZR9C9Ya ちょwwwおまwww仕事中にニヤけさせんなよwww軽くゾクゾクしたわwww 644 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/24(土) 18 02 33 ID Kc6v2acH メールで縛る子はリアルに結構いるから困る 645 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/03/24(土) 23 32 45 ID kq72ybrI メール返すのが遅くてよくワンコがきたな だったら電話でいいじゃんってよく笑ってたっけ… どこで間違えたんだか俺… 646 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 00 32 03 ID SBtrjBGT 頻度はともかく内容が同じようなメールなら彼女から来るんだが 647 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 00 39 27 ID vlsTT9cd 646 どれと似てるのかにもよるがフラグだな。 何のフラグかは言えないな。 648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 01 06 23 ID qmoDUzaH >「ねぇメール打つのに30分もかからないよね?どうして間開けちゃうの?」 そうか俺はヤンデレだったのかww 649 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 01 55 23 ID JG5osZPT おかしいよね、送る相手なんていないのに 650 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 02 38 59 ID 3apb/ark それ携帯じゃなくて靴だしね。 651 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 02 49 16 ID FjzecZD9 コーラ、おいしいです 652 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 08 48 21 ID LHg0vcsg それは、しょうゆです 653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 09 04 48 ID /7rDjX3q しょうゆ、おいしいです。 654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 09 12 33 ID AGT+yq8d それは、焼肉のタレです 655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 12 35 50 ID OOm+/ddn 焼肉のタレ、おいしいです 656 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 13 30 50 ID zL7t2ae/ 何打この流れ 657 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 14 10 07 ID vlsTT9cd しまった。やってしまった。 「へぇ、このタレ美味しいな」 何気ない日常の一言だが俺の場合は死亡フラグだ。うっかり言ってしまったものの、後の祭。 「ぅん美味しいね。私とこれとどっちが好き?私以外のものに興味持たないでって 言ってるじゃない!!どうして?私の存在はタレ以下なの?もう私に飽きちゃった? 一生懸命料理してるのに……一緒に食べてる私でも私が作った料理でも無くタレが 大事なの?なんで?私のこと好きって言ってくれたじゃない。嘘だったの? 私だけを見てよ!!他のものなんて見ないで。タレなんてどうでもいいでしょう? 大事なのは私でしょう?違うの?タレなの?」 目の前で彼女が暴走し始める。今夜も長くなりそうだ。 勢いでやった。後悔している。 658 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 17 02 41 ID W2NnIHKf 657 うむ。なかなかいい味をだしてるじゃないか。 ヤンデレ本を発見したのでカキコ。 吉村達也著作「初恋」。 16年前に一度だけキスをした相手に迫られるというホラー作品。ぞくぞくするぜぇ 659 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 18 47 28 ID yzL+wX+t 658 詳しく教えてもらおうじゃないか 660 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 18 57 58 ID W2NnIHKf それじゃ箇条書きでその女の行動を記そう。 ・弁当の材料で男の似顔絵を作り、弁当箱を男の会社に届ける。 弁当を作っているときに、「上手く作れない」という理由で涙をこぼす。涙は具の中に吸い込まれる。 ・望遠カメラで男の写真を撮る。上手く撮れた写真は畳二枚分の大きさに引き伸ばす。 ・ベッドに引き伸ばした写真を敷いて眠る。それにくちづけたり、乳を擦り付けたりする。 こんなシーンが他にも大量にでてくる。 俺の頬から笑い皺が浮かんだまま消えないぜw この作品は俺らのツボを上手くついている! 661 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 20 46 13 ID uOljji8w ヤッベェなソレ、狂ってるな もちろん誉め言葉ですが何か? 662 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 21 10 05 ID 95QR7z47 660 独身男性? これが男性に伴侶がいれば修羅場スレ向けにもなるぜww 663 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 21 25 57 ID W2NnIHKf ヒント:主人公は左手の薬指に銀色のわっかをつけている。 ついさっき読み終わったわけだが……これ、嫉妬スレ・ヤンデレスレ・純愛スレのどれでも通用する。 664 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 23 01 12 ID 9wmp7HhK じゅ、純愛い? 665 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 23 06 58 ID uOljji8w ほのぼの純愛な 666 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/25(日) 23 10 57 ID W2NnIHKf んにゃ、純愛スレ。ほのぼのしないから、ほの純とはちょっとだけ違う。 ラストを見ればわかる。 667 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/26(月) 07 39 47 ID SXLCg+fo 俺がこのスレにとどめをさしてやるぜ! ヤンデレスレはエロエロよー! 668 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/26(月) 08 36 15 ID kVerkYes まだだっまだ終わらない!!!!力を貸してくれーっ!!ヤンデレスレはーっ 669 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/26(月) 09 18 49 ID r2vbyj0s エ ロ エ ロ よ ―――――――――― ! ! ! ! 670 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/26(月) 09 29 11 ID fqEqVeuq ヤンデレスレに止めを刺すわ 671 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/26(月) 10 35 54 ID jBNwuPMV 名無し君… 私と一緒に… 一緒に埋まろう? これで、ずっとずっと一緒だよ
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1069.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 35 12 ID Sf6DhUew ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part8 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186477725/-100 ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 39 22 ID 4v1yW4gU 神速で2get 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 39 31 ID Sf6DhUew 以下、投稿します。 4 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 40 13 ID Sf6DhUew 「9/16 日曜日」 こんなに愛しているのに、どうして。 こんなに近くにいるのに、どうして。 こんなに想っているのに、どうして。 どうして。 あなたは気付いてくれないのだろう。 いつでもあなたのことを考えているのに。 そう。毎晩あなたの写真とお話して、気がついたら朝が来てしまうくらいに。 好き。世界で一番好き。 こんなに好きなんだから、わたしの気持ちが叶わないはずないのに。 どうして。 5 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 40 48 ID Sf6DhUew ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ 「ん…」 …朝だ。 いつもの規則的な電子音で目が覚める。 毎朝のことだが、早朝の寝ぼけた頭にこの大きな音は辛い。 布団から腕を出してゆっくりとその音源に手を伸ばすが、どうやらわずかに届かない。 そうして俺の手が空を掴んでいると、ふいにアラーム音が止まった。 「んー…?」 なんだか分からないが小うるさい音が止んだようだ。 ここはひとつ、もう少しの間惰眠を貪ろう。そう思ったときだった。 「こらっ!」 「んあっ!?」 突然の怒鳴り声に驚き、微妙に情けない声を出しながら起き上がる。 すると、そこにいたのは由香里だった。 「お兄ちゃん。起きて」 「んー…」 目をこすりながら、否定とも肯定ともとれない声を出す。まだ頭が働かないのだ。 「んー、じゃないでしょ。ほら早く」 そう言う由香里の片手には、目覚まし時計があった。 なるほど、アラームを止めたのは由香里か。 「…分かったよ」 ようやく目が覚めてきたので、俺はベッドから這い上がった。 大きなあくびをしながら首や肩を回すと、ボキボキっと鈍い音が鳴った。 「うわ…、ちょっとおじさんくさいよ」 「うるさい」 由香里の冷ややかな指摘を無視し、俺は重い足取りで部屋を出た。 「行ってくるよ」 男の支度なんて、本当に手早いものだ。 15分程度の間に身支度を整えて朝食も済ませた俺は、それだけ母に告げて家を出た。 「ちょっと、待ってよー」 そう言われ振り向くと、由香里が少し慌てた様子で追いかけてきた。 「人に起こしてもらっといて、なんで先に行っちゃうかなぁ」 「なんで、って言われてもなぁ」 俺は少し困って頬をかく。 「ていうかさ、なんで俺より早く起きてるのに俺より支度が遅いの?」 素朴な疑問だ。由香里の支度はいつも長く、正直いちいち待っていられない。 すると、由香里は少し怒ったような顔をして言った。 「女の子は支度に時間がかかるものなの!」 「そんなもんかね」 「そんなもんなの」 それだけ言うと、由香里は俺の隣に並んで歩きだした。 俺はふと、そんな妹の横顔を覗く。 由香里の顔立ちは俺と違って、完全に母親譲りだ。 もともと浅黒い俺とは違う白い肌が、いつの間にか覚えた化粧でほんのりと染められている。 茶色がかった髪は、地毛だろうか。思えば妹の髪など気にしたことがないので、ちょっと判別がつかない。 とにかく、そんな妹の髪はツインテールにまとめられて歩く度に揺れている。 確かに、こいつもいつの間にか年頃の女の子になっていた。 そりゃ身支度に時間がかかるはずだ。 そんなことを考えていると、いつの間にか由香里もこちらを見ていた。 「どうしたの?」 「ん? ちょっとね」 「なに?」 由香里は訝しげに首を傾ける。 「まあ…。お前も大きくなったな、と思って」 「なにそれ」 由香里は不思議そうな顔で、もう一度首を傾けた。 6 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 41 51 ID Sf6DhUew 俺と由香里が通う高校は、自宅から歩いて10分程度の距離にある。 今朝も由香里と他愛のない話をしている間に、学校へ辿り着いていた。 「おはよう。笹田くん」 ちょうど校門を抜けたところで、聞き慣れた声に呼ばれた。 「ああ、委員長。おはよう」 挨拶を返すと、委員長は長い髪を左手で耳にかけながら微笑んだ。最近知ったのだが、どうもこれは彼女の癖らしい。 他の女子ならちょっと気取った感じに見えるだろうが、委員長がやると清楚な感じに見えるから不思議だ。 「今日も妹さんと一緒なのね」 委員長は笑みを崩さずに言った。 「ああ」 俺がそう言うと、隣で由香里が頭を下げた。 「おはようございます。先輩」 「おはよう」 委員長も律儀に頭を下げて挨拶を返した。 「…じゃあ、わたし行くね」 そう言うと、由香里は一年生用の玄関へ向かって行った。 「可愛い妹さんね」 委員長が由香里の後姿を見つめながら、つぶやくように言った。 「そうかな」 「笹田くんはそう思わない?」 「よく分からないよ。兄妹だからね」 由香里を見送った俺は、今度は委員長と並んで歩き出す。 横で歩く彼女を見て、俺はあることに気付いた。 「委員長さ、最近ずっとメガネじゃない? コンタクトやめたの?」 俺がそう言うと、委員長は一瞬顔を赤くした。 「え、ええ」 「どうしたの? なんか心境の変化とか?」 「う、ううん。何でもないの。ちょっと、何となくっていうか…」 委員長はなぜかしどろもどろになる。あまり聞かれたくない話なのだろうか。 そんな間に、俺たちの教室の前まで来ていた。 すると、クラスメイトの一人が俺を見つけた。 「おーい、笹田。お前が聞きたいって言ってたCD持ってきたぞー」 「お、マジで?」 急いで友人のところへ行こうとして、委員長の存在に気付く。 「俺、行くね」と言おうとしたが、それより先に委員長が口を開いた。 「どうぞ。気にしないで」 委員長がいつもの笑顔でそう言ったので、俺は軽く頷いてからCDの、もとい友人のもとへ駆け出した。 「…笹田くんが、似合うって言ってくれたんだけどな」 委員長が小さな声で何かを言った気がしたが、よく聞き取れなかった。 7 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 43 42 ID Sf6DhUew 昼休み、俺は机に突っ伏して仮眠を取っていた。 こうして午後の授業のために体力を温存しておくのは、学生にとって重要な一日のプロセスなのだ。 しばらくの間そうしていると、あろうことか俺の安眠を妨害する不届き者が現われた。 誰かが俺の肩を叩いているのだ。 「………」 無論、シカトだ。 俺の大事な時間をそうそう他人に奪われてやるわけにはいかない。 しかし、どうしたことか。この不逞の輩は、俺の肩を叩き続ける。 トントン、トントン、と小刻みに俺の肩でリズムをとる。いい加減に鬱陶しくなった俺は、勢いよく起き上がった。 「なんだよ!」 そう言った瞬間、何か硬いものの角で頭を叩かれた。 「痛っ!!」 「全く。授業中だけじゃ寝足りないのか、お前は」 確実にコブが出来たであろう頭頂部を押さえながら見上げると、そこには担任の若槻先生がいた。 手に持っているの数学講師用の三角定規だ。…あれで殴られたのか、俺。 「いてて…。な、なんですか先生」 「今日の昼休みは、何か予定がなかったか?」 「予定…?」 そう言われて思い巡らすが、何も浮かんでこない。そんな俺を見て若槻先生は大きなため息をついた。 「…完全に忘れてるな。まったく、今日の昼休みは部活のミーティングだろう」 「…あ!」 思い出した。今日は美術部のミーティングがあったのだ。 美術部では選考会が近づくと必ずミーティングを開くことになっている。半分幽霊部員の俺でも、これは参加しなくてはまずい。 「まだ始まったばかりだろう。今からでも行ってこい。きっと芳野が怒ってるぞ」 腕時計を見ながら先生が言った。若槻先生は美術部の顧問でもあるのだ。 「は、はい! 行ってきます」 慌てて教室を出て行く。廊下は走るな、なんていってる場合じゃない。 「はぁ。だよなぁ、絶対芳野先輩怒ってるだろうなぁ…」 美術室へと向かって走りながら呟く。 我らが美術部の部長である芳野先輩は、俺にとっては頭の上がらない相手だ。 俺にとっては、というのは間違いか。おそらく彼女の周囲のほとんどの人間にとってはそうかもしれない。 先輩は容姿端麗、学業優秀、運動センスはおろか芸術センスも抜群、とまさに完全無欠のスーパーマン、いやスーパーウーマンだ。 おまけにちょっとした完璧主義者であり、自分に厳しいが人にも厳しい。 俺も一年の入部以来、何度芳野先輩に説教されたか分からないくらいだ。 とにかく急げなければ。俺は光のような速さで駆け行き、ものの1分程で美術室まで到着した。 「でも…。入るの怖いなぁ」 中へ入るのを躊躇う俺。しかしずっとこうしている訳にもいかず、俺は意を決した。 「…はぁ。素直に謝ろう」 ひとつため息をつくと、美術室の扉を開けた。 「すいません。遅れました」 そう言って中へ入ると、会議中の部員たちの目線が俺に集まった。…勿論先輩の目線も。 ミーティングの進行をしていた女子生徒がちらっと芳野先輩の方を見ると、先輩は顔色を変えずに「続けて」とだけ言った。 俺を無視したまま進行され始める会議。俺は非常に気まずい空気の中、昼休みの終わりを待った。 しばらく経って、先輩の締めの言葉でミーティングは終了した。 ぞろぞろと部屋を後にする部員たち。俺もさりげなくその列に加わる。 「笹田。あんたはまだよ」 「ですよね」 逃亡はあっけなく未遂に終わった。 8 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 44 58 ID Sf6DhUew 二人だけとなった部室で、先輩が口を開く。 「まったく。幽霊部員のあんたでも、会議くらい顔を出すものと思ってたけどね」 「いや、でも一応顔は出して…」 「コンパじゃないんだから、途中から少しやってきて『顔を出しました』なんて通用しないわよ」 まるでグサっという擬音が聞こえてきそうなほどの物言いに、思わずたじろぐ。 「す、すいません」 「だいたいもうちょっと部活出なさいよ。何のために部活入ってるの?」 「すいません」 「そんなダラダラ過ごしてたらね、高校生活なんてすぐに終わっちゃうわよ」 「すいません」 「すいませんすいませんってあんた本当に分かってんの!? ちょっとそこに座りなさい」 しまった、話してるうちに先輩を興奮させてしまった。一番悪いパターンだ。 「いや、でも先輩。もうすぐ授業…」 「なに?」 「なんでもないです…」 次の授業は遅刻だろうな…。 そう思いながら俺は、先輩に聞こえないように小さくため息をついた。 「以上だ」 午後4時半。若槻先生がホームルームの終わりを告げると、教室はすぐに騒がしくなった。 大急ぎで部活へ出る者、浮かない顔で補習に向かう者、特に予定もないので友人とだべりだす者。 生徒も先生もまだ残っていて、いろんな声が教室中を行き巡る。いつもの放課後の光景だ。 「さて、どうしようかな」 特に放課後の予定を決めていない俺は、一人呟く。 すると、近くの席の委員長が近寄ってきた。 「笹田くん」 委員長は俺のそばに来て軽く微笑む。 「笹田くん、今日は何か予定あるの?」 「ん、特にないけど」 俺がそう言うと、彼女は長い横髪を耳にかけてまた笑った。 「じゃあ、ちょとわたしに付き合ってくれない?」 「えっと、どうかしたの?」 「それがね、今日は図書館の当番なんだけど、もう一人の当番の子がお休みで…」 委員長は少し目を伏せた。 そういえば、委員長は図書館の司書係だった。 何度か仕事中の姿を見たことがあるが、本当に彼女のイメージにぴったりだった。 決して「地味だから」ではなくて、委員長の持つ、なんとなく知性的な雰囲気がそう思わせたのだと思う。 9 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 45 37 ID Sf6DhUew 「ちょっとわたし一人じゃ作業が大変で、よかったら手伝ってもらえないかなって」 委員長が申し訳なさそうに言った。 まあ、たまにはそうやって静かに放課後を過ごすのも良いかもしれない。人助けにもなるし。 そう考えた俺は「いいよ」と言おうとした。 しかしその声は、教室のドアを開ける音ともに突然入ってきた威勢のいい声にかき消された。 「笹田、いる?」 そう言いながら、ずかずかと下級生の教室に入ってきたのはもちろん芳野先輩だ。 先輩は教室の中から俺を見つけると、いつものキツめの口調で言った。 「今日は部活出るんでしょうね? 選考会も近いんだし、当然出るのよね?」 ずいっと俺に顔を近づけてくる先輩。至近距離で睨んでくるその目は、きっと「YES」の答えしか許さない。 「ああ、えっと…」 なんてタイミングが悪いことだ。俺は困ってしまい、横目で委員長を見る。 するとやはり、委員長も困ったような表情で下を向いている。 そんな様子に何か感じたのだろうか、先輩がじろじろと俺たちを見た。 「…もしかして、何か予定でもあったの?」 「あ、いや…」 口ごもる俺。 どうしたものか、実に困ってしまったこの状況。 しかしこの直後、さらに困ってしまうことが訪れた。 「お兄ちゃん。ちょっと帰り買い物付き合ってよ。荷物一人じゃ持ちきれなくて…」 そう言いながら、由香里が元気よく登場した。 まさしく、二度あることは三度あったのだ。 由香里は、俺のそばに立っている二人の上級生に気づく。 「あ、えっと。…他の予定あった?」 由香里はばつが悪そうにそう尋ねた。 「いや、その…」 本当に、どうしたものか。 自分でも情けないと思うのだが、俺が何も言えないでいると、委員長が控えめな声で口を開いた。 「わ、わたしはいいよ。元々自分の仕事だし…」 委員長は少し早口で続ける。 「やっぱり人に頼ってちゃダメだよね。…ごめんね、笹田くんの予定も考えないで勝手なこと頼んじゃって」 そう言うと、最後に「また明日ね」とだけ残して委員長は歩いていった。 なにか悪いことをしてしまったような気がして、俺は「うん」などと気弱な返事しか出来なかった。 すると、その様子を見ていた芳野先輩が口を開いた。 「…まあ今日は好きにしなさい。でも、せめて次の選考会にはちゃんと作品出しなさいよ」 釘を刺すようにそう言うと、先輩も教室を後にしていく。 「………」 「………」 残された俺と由香里。 「あー。買い物だっけ? 今から行く?」 「…んー、今日はもういいや。予定があったならそっち優先しなよ」 そんなことを言い残すと、由香里もそさくさと帰ってしまった。 一人残される俺。 「………」 「………」 「………」 「…帰ろ」 なんだかよく分からない状況に気疲れしてしまった俺は、一人帰宅することにした。 10 名前:ヤンデレは誰だ[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 46 58 ID Sf6DhUew 「9/17 月曜日」 あの人とわたしの距離は、近いようで遠い。 もう少し勇気をだせば、もっと一緒にいられるかもしれない。 でも、それが出来ずにいつも遠くから見ている。 今日の放課後は、結局誰と一緒に過ごしたのだろう。 あの人の近くには、いつも他の女の子がいる。 わたしのほうが、好きなのに。 絶対わたしのほうが、あの人のことを好きなのに。 どうして。 11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 48 00 ID Sf6DhUew 今回分、投稿終わりです。 お目汚しでなければまた続きを書かせていただきたいと思います。 12 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 58 07 ID zt9lqecl 11 乙&GJ! ヒロイン達もそれぞれ可愛いし主人公もいい感じにヘタレだし先が楽しみ。 個人的には先輩がイイな 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 04 00 56 ID 5xT8VqoK 11 GJJJ!!!1111 いい病みだ。wktkしながら待ってるぜ! 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 04 53 21 ID BtcirU3n 11世界中のヤンデレラバーに代わって言いたいことを代弁させてもらう。 誰 か 気 に な る ジ ャ マ イ カ!! とりあえず頑張って誰か突き止めてやるぜ! 最後に超GJ!! 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 04 59 18 ID EZp2Qy0X よし、わかった 犯人はヤス あとGJ 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 05 46 36 ID TO9Pn9e6 本命:若槻先生 対抗:母 穴:使っている机の精霊 大穴:俺の別人格 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 12 23 50 ID kpUuvuMC こりゃ次回どう転ぶかね……じっくり熟成された病みが出て来そうだ。 14 一瞬ヤンデレバーに見えちまったじゃないかw 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 12 50 18 ID UbOy+I4Z ほう、うまいな こういう形式のは初めてだからいいと思う ありそうでなかった感じだし これからの伏線とか練り込みにも期待 19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 13 39 16 ID vnIrH0sF ヤンデレなのは主人公だな それなら全ての辻褄が合う 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 16 23 20 ID wM7+gh9f 19 「あの人の近くには、いつも他の女の子がいる」って書いてあるんだが・・・ この世界の女性はみんなレズなのかw 21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 16 44 28 ID zaYl+O+q 19 何の辻褄だよw初回からどんだけ伏線が張られてるんだw 22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 16 51 31 ID PH2RZxP7 17 ヤンデレバー?、ヤンデレ喫茶みたいなもんか? 23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 16 57 51 ID slqTC318 チョコバーとかスイカバーとかの方さ 24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 17 25 39 ID UbOy+I4Z よくわからないなw 血の味でもするのか? 25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 20 47 33 ID eSNKF9jF いつもより少しだけしょっぱい 26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 20 52 51 ID NnKJzdAh 食べると性欲MAX&理性崩壊 27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 22 06 16 ID V1H/GQFF 前スレ訂正 ヤンデレの小説を書こう!part9 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186477725/ 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 22 18 00 ID Oy6SXXKV 泥棒猫の肝臓のことかと 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 22 53 03 ID NOG2Immr 世界「これでお前の告白チャンスは終了、妊娠効果によりお前の希望は0だ! ヒャーハッハーやったー私の勝ちだ!!」 言葉「・・・何を勘違いしているんですか?」 世界「ヒョ?」 言葉「誠君は私の彼女ですよ?」 世界「何いってるんだ、誠の心はもう・・・」 言葉「速攻魔法!狂乙女魂!理性を全て捨て効果発動!」 世界「狂乙女魂?」 言葉「このカードは泥棒猫及び邪魔者以外のカードを引くまで何枚でもドローする事ができる そしてその数だけ悲劇のヒロインは常軌を逸した愛の戦士となり追加告白できる」 世界「悲劇のヒロイン・・・?・・・!!あの時!」 (言葉)「沢永さんに犯されたことにより誠君の気を引きつけることはできますが 純血を奪われた悲しき身となります」 世界「言葉の奴・・・そこまで考えて・・・」 言葉「そしてさらにチェーン!速攻魔法発動!ナチェットブレイカー! 狂乙女魂が発動した時追加告白と同時に泥棒猫にも追加攻撃できる!」 「さぁいくぜ!まず一枚目!ドロー、害虫カード加藤乙女を捨て(ry 30 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 45 39 ID f93AyQ5E 自転車のペダルに力を入れて、足に残る鈍痛を少し気にかけかばうように、ごく見慣れた道を行く。 住宅地を抜け、公園の傍を通るあたりになると、すぐに汗が体から吹き出てきた。 照りつける日光の破壊力はすさまじいものがある。 さらに、蒸した温風が頬をかする。 その風に混じって草木の青臭い匂いが鼻をつく。 夏の熱気でより青臭さが増しているので、気に留めないではいられない。 そして、暑いとそう思えば思うほどに、発汗量は右肩上がりにまし、皮膚を伝い蒸れている。 気持ちが悪いこと、この上なく不快指数は大絶賛で五桁を優に突破した感がある。 「今日は本当に天気になったなあ。」 しかし、口をつついて出てきた第一声は暑いではなく、雨雲を淘汰し、澄明に晴れ上がった蒼天への賛辞の言葉だった。 澄み切った青空にぽっかりと浮かぶ白い入道雲―。 最近は随分と夏らしくなってきたものだ。 これで吹く風が製鉄場の熱気を孕んだものではなく、少しでも涼しいものであれば完璧なのだが。 少しどころか南氷洋の氷山の風でもいいくらいなのだが。 熱気と相殺してきっと丁度良くなるはず―。 ああ、駄目か。それでは四季がなくなってしまう。 ゴム人形のような変遷を遂げてきたであろう僕の表情を眇めた目で見ていた時雨がくすり、と笑う。 「ふふ、今日は学校帰りに、一緒に何か冷たいものでも食べましょうか?」 そういえば、入院中に一度もアイスを口にしていない。 折角だから、今日はアイスにしよう。 ちなみに僕は、アイスをまとめて5個は一度に食べる主義なので、それを食べると必ずと言っていいほど大出費になる。 31 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 47 20 ID f93AyQ5E 学校に到着すると、自転車を自転車置き場にとめようとして時雨に止められた。 入院以来学校に来るのはこれが初めてで、入院中に変わってしまった自転車置き場を時雨に教えてもらう。 なんでも、来年の新入生は増えるからと言う理由らしい。 だからといって、一学期から変える必要は無いだろう、という不満を持ったが自転車を規定の位置へ動かす。 僕が自転車を止めたときに近くでパンクしたときのように、空気が抜けていく音がした。 後ろに振り返り、黒髪の少女のほうへと駆け寄る。 彼女の自転車の車輪を確認するとやや大きめの穴があいていることに気がついた。 どうやら、落ちていた鋭利なガラス片が自転車のチューブを刺し貫いたようだ。 「落ちてたガラスを踏んでパンクしちゃったみたいだね。」 「運が悪かったのね。家自体はここから遠くないから、歩いて帰るわ。」 そこへ、タイミングを見計らったようにクラスメイトの岸が現れる。 岸は眼鏡をかけている女子で、やや高めのハスキーボイスで話す子で、理沙の所属する委員会の副委員長だ。 「朝から何してるの?落ちてた瓶の破片にも気づけないでパンクさせるなんて馬鹿みたい。そこ、私の自転車置き場だから早くどいてよ。」 「……。」 不躾に僕らを払ったところに彼女の不快感が現れている。 岸さんは時雨の隣の定位置に自転車を止め、荷台の紐を解いている。 しかし、僕は一点、さっきの岸さんの発言に疑問を抱いたことがある。 同じ疑問を時雨も抱いていたようで、手を自転車周辺で動かしている岸さんに声をかける。 「岸さん。」 「なぁに?北方さん。今忙しいんだけど。」 ぞんざいに答える。 32 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 49 46 ID f93AyQ5E 「あなた、どうして私の自転車がパンクしたことを知っていたのかしら?」 暫くの沈黙。 その沈黙に岸さんが狼狽していること顕現されているのは誰の目にも明らかだ。 「……どうしてって、あなたたちが話しているのを聞いたからわかってんだけど?それが問題あるの?それとも、愛しい彼との話はどんなことでも他人に聞かれたくない訳ですか?」 「そう、でもあなた、さっき、『瓶の破片』ってはっきり言ったでしょう?弘行さんはガラス、としか言ってない筈だけれど?」 「っ!」 「どうして、あれが瓶の破片だとわかったのかしら?あなたには人知を超越した超能力でもあなたにはあるのかしらね?」 あれが、瓶の破片であることがわかるということは、まずあれを意識して敷設したからに他ならない。 要するに岸さんは時雨に嫌がらせをした、ということだ。 それから、僕は時雨の自転車置き場をかがんで観察した。 すると、いくつも車輪が来るであろう場所に鋭利なガラス片が配置してあった。 かなり用意周到に準備をしていたようだ。 「あなたがあれ、仕掛けたのよね?」 「ふん、知らないわよ。ガラス片って聞いたから、類推しただけだから。感情の無いあなたとは違って、類推はできるので。」 そんなやり取りが耳に入る。 あれだけ準備をしておきながら、いざその事実がばれると、逆に怒りだし時雨の人格批判をするとは許せない。 盗人猛々しいというところだ。 「他人の攻撃なんてやめて、本当のことを洗いざらい喋ったらどうですか?」 「車輪止めの近くに一列にガラス片が並んでいた。それで時雨の自転車に4つ穴ができていた。普通に考えてガラス片が自然に並ぶわけが無いだろう? それにさっきの発言から岸が疑われても仕方がない、違いますか? それなのに、時雨を逆に批判することができるんですか?」 鼻でせせら笑うような不愉快な笑い方をしたきり、何も語ろうとしない岸と僕の間でいたずらに時間が流れる。 「……所詮、あなたも私が憎らしくてたまらない松本理沙の協力者なんでしょう?」 時雨が嗤笑を受けたことに対して、相手の手の内を既に看破しているし、敢えて理沙の強力だと理解させることそのものに意義があるということも理解していると告げた。 すると、一回舌打ちをしてボソボソと何かをつぶやくと、敢えてそれを否定することなく、ふてぶてしいまでに居直った。 「ああ、そう。理解しているなら説明は蛇足。それに私がただの歯車のひとつだと言うなら、私が責められる言われは無いんじゃないの?」 しかし、理沙に協力しているかどうかについてはあいまいにはぐらかされた感が否めない。 察しの通り、理沙に協力している、だから話すまでもない、そういうわけだろうか。 「じゃ、もう用は済んだようだから、もう行くから。」 そう、矢継ぎ早に言葉をつなぎ教室に向かっていってしまった。 33 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 52 01 ID f93AyQ5E 去っていく岸の背中をただ何もする事ができず見送った後、僕達も自転車置き場から離れ、昇降口へ向かう。 「痛っ!」 時雨が自分の上履きを取り出して床の上に置き、指を離そうとした瞬間、上履きの死角に取り付けられてた鋭利な刃で指を傷つけていた。 彼女の線傷から赤い雫が飛んだ。 よく彼女の指や手を眺めると、何箇所かに絆創膏が貼られていた。 おそらく、全てが理沙のしてきた嫌がらせの結果なのだろう。 その光景を目にしたことで、僕が時雨を選択したことで、生じた理沙への罪悪感がわずかでも薄れていくような気がした。 そして、時雨は俯いて上履きに取り付けられた刃を取り除き、ティッシュでくるみ、制服の外ポケットにしまった。 それから、鞄を片手で開こうとした。 彼女が鞄に応急処置の器具をしまっていることを知っているので、僕は殺菌した後、線傷全て覆うように絆創膏を貼った。 そのとき、応急処置をする僕の手を暖かい滴りが伝うのを感じた。 僕が戻ってきたとしても、いつも通りの苦しい日常が始まる、そう感じたのだろうか。 「時雨、許してもらえないのはわかっているけれど、理沙に代わって謝るよ。 本当に申し訳ない。僕自身、時雨がこんなひどい目に遭っているということになかなか気づいてあげられなかった。」 大丈夫か、という心配よりも謝罪したい気持ちがはるかに立ち勝っていた。 それから、僕は入院する前と同じ一学期のスケジュールに従って、学校生活に臨んだ。 しかし、それらは当然の事ながら、僕が入院する前のそれとは違ったもので、授業中と休み時間の別なく、執拗なまでに口実を探し出しては、時雨への迫害を繰りかえしていた。 当然、僕は批判したため、親友の南雲や何人かの友人は協力してくれた。さらに、担任の田並先生からも当事者と目される女子に対して厳重注意がなされた。 そのため、男子の中で時雨に嫌がらせするものはおらず、表立った場所での女子によるいじめを防ぐことができた。 しかし、もとより時雨への迫害に参加していたものは大半が女子である為、大きくは情況が好転してくれはしなかった。 そして、僕以外の人間に対しては最低限以上の会話はせずに、休み時間はほぼ全てと言っていいほど僕の傍にいた。 時雨は僕に対して、今までどおりの接し方で話しかけてきた。 この前作ってみた料理がどうとか、お勧めの本がどう、彼女のお父さんがいない間、家に来る頻度が高くなった使用人の誰それがどうした、などという当たり障りの無い話をしてきた。 それが僕への気遣いであることは言うまでもなく、逆にその心遣いが痛々しく感じられてしまう。 と、同時に彼女が如何に強い人であるかを再認識させられる。 というのも、彼女は下らない非難中傷の類を無視し、今朝のようなハプニングに直面したとしても、冷静に対処している為である。 それでも、その理性的な行動の裏には数日前に僕の前で見せたような深い悲しみが深々と根ざしていることは疑いない。 時雨は依存してしまうから、と言っていたがそうならないように相当苦しい努力を続けているのだ。 だから、そんな彼女の悲しみをわずかな時間の間でも忘れ去れることができれば、と考えて彼女を夏休みに突入する今週の土曜日に映画に誘うことにした。 もちろん、回答は二つ返事で快諾してくれた。 34 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 53 29 ID f93AyQ5E 土曜日―。 この一学期最後の日を迎えるまでにこれといった変化はなく、時雨も柔らかい表情をしている時間が心なしか増えてきたような気がする。 理沙の体調も相当良くなっており、何度となく妹を見舞いに行った。 僕と理沙との間にはあれ以来、壁ができたかのように、関係は希薄である。 理沙から僕に話しかけてくることもなくなった。 彼女に僕から話をしても口をきいてくれることは無かった。 時雨の事をかばう僕に対する怒りと自分を拒んだ悲しさ故の事であろう。 だからと言って、時雨をかばう僕や友人にまで迫害の手が及ぶことは一度としてなかった。 流石の理沙も僕を巻き込んでまで、いじめを拡大させようとは考えていなかったのだろう。 ようやく小康状態に入りつつあり、かつてのようにとは行かないまでも、それに近いほどの安寧の日々が再び訪れる兆しが感じられるようになった。 そんな中で迎える夏休みである。 終業式が終わった後、約束どおりの時刻に駅で待ち合わせてから電車で、時雨と映画館に向かうことにしている。 時雨を待たせるわけにはいかないので、いつも以上に時間に気を払いながら、五分前には到着するように家を出る。 自転車で通過していく道々も、解放感に浸っている今はとても明るいものに思えてくる。 夏特有の日差しが強く、少しばかり午後から映画に行く計画を立てたことを後悔した。 自転車を駅前に昔から住んでいる老翁が管理する自転車置き場に置くと、集合場所の駅の時計前に視線を走らせる。 35 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 55 51 ID f93AyQ5E そして、即座に網膜に像を結んだ彼女の方へと小走りで向かう。 彼女は表情に現れてこそ無かったが、わずかな仕草からわくわくする気持ちを抑えきれずにいることがわかった。 それはこちらも同じ話な訳で、 「お待たせいたしました、時雨様。」 お嬢様に仕える一介の使用人の立場になりきって、それらしいポーズを作りそんな事を言ってみた。 「ふふふ、使用人は主よりも先に来るのがルール、違うかしら?」 などと楽しそうに返してきた。 「おお、これはこれは、お嬢様のご指摘の通りでございます。どうか寛大なお心でお許しを。」 そう言ってから、お辞儀をして垂れていた頭を上げる。 そこにいる時雨はいつもの制服ではなく、私服姿だった。 白を基調として薄いピンク色の模様が入ったワンピースに身を包み、肩にはミニバックの紐がかけられている。 そして、腰にまで届きそうなカラスの濡れ羽のように美しい光沢を保っている黒髪。 制服姿しか目にしたことが無い僕にはただただ美しいと息を飲んで、凝視することしかできなかった。 目鼻立ちも整った美人であり、ガラス細工のような繊細さをも持っている彼女。 その彼女に触れてしまうことで壊れてしまいそうで―。 「……私の顔に何かついているの?」 「い、いや、その、綺麗だなって。」 咄嗟にかけられた声に狼狽して声が裏返ってしまった。 「くす、ありがとう。けれど、声が裏返っていたわ。」 「へ?あ、ごめん。」 「ええ、気にしないから大丈夫よ。行きましょう。」 そうして二人は駅の構内に仲良く入っていった。 その姿を監視する影が二つあることに気づくことなく―。 36 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 57 11 ID f93AyQ5E 僕たちの住んでいる町から4駅先の町にある映画館で、僕らは流行のファンタジー小説が元ネタになっている映画を見ることにした。 案外、時雨はこういうものが好きで、映画の間、僕の手を握る手に力を入れながら、スクリーンを凝視していた。 何事にも冷静沈着な彼女のイメージとは違った一面が際立った感じがする。 まぁ、どんな人であっても、新たな一面を見出すというのはなかなか楽しいものだと思う。 それにしても、結果的に時雨が喜んでくれたことには変わりは無いので、僕は満足だった。 映画館を出ながら、映画の感想と考察を聞かされ、僕も自分の意見を言わされてなかなか困ってしまったが、 これほどまでに感情豊かな時雨も可愛いと思う。 映画論議に花を咲かせながら、僕らは町はずれにある、高級感が漂う喫茶店に入った。 こういう店によく来るあたり、流石は時雨、というところか。 しかも彼女の行きつけの店に部類されるというのだから恐れ入る。 当の僕は、と言うと、高級感がありながら瀟洒さも兼ね備えている雰囲気の店内にただただ圧倒されるばかりで話にならない。 客の中にも当然、若者がいるはずがなく、皆それなりの年を召した人ばかりで、ごま塩頭ばかりしか視界に入らない。 突然の闖入者である僕に入り口に近いテーブルに腰掛けているご老人方の痛い視線が集中する。 これは、とんでもない場違いな場所に、来てしまったようだ。 37 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 00 59 29 ID f93AyQ5E そんな事を考えながらウェイトレスについていき案内された四席用のテーブルを挟んで向かい合わせに座る。 案内された席に腰掛けると柔らかな椅子の感触が心地よく、近くの壁に掲げられている絵も有名な画家の絵であった。 さらに花瓶の花も店の雰囲気に非常に合っており、これらの事からもこの店が如何に子供が入るべき場所で無いかが良くわかる。 それ以前に、もう少し僕が肩の力を抜けるような場所につれてきて欲しいのですが、時雨さん。 いや、これでは寿司にわさびとしょうゆを大量につけて、食べて美味しいなどといっている外人のような感じじゃないですか? しかも、それを日本の回らない寿司屋で満足げにやらかしている。 そんな感じじゃないですか、いや、本当に。 いや、むしろ僕は外人だからしょうがない、ということに、つまるところ治外法権という伝家の宝刀を行使できるわけでは……って、そんなこと無いか。 治外法権の行使どころか、相当まずい状況下に自分が置かれていることに気がついた。 というのも、今、僕が座っているこの席は窓に面しており、外の通りから思い切り見えてしまう場所である。 まず、この時点でいかん。 しかもよくよく考えると、こういうお店は無駄に単価が高くできているものだという経験的法則性にたどりついた。 さらに、映画代と電車賃を使った僕の財布にお札が入っていることなど、万に一つも無いわけで、入っていたとしてもそれらのお札にはすぐに羽が生えて飛んでいってしまうだろう。 状況的に最悪。 死亡フラグが立ってしまったようなものだ。 僕のような一般人は飲み物だけ頼んで退散しますか。 しかし、本当にとんでもないところに来ちゃったもんだと、わが身の不幸を何度目になるかわからないが呪った。 すると、愉快そうに向かいの席の時雨が特有の優しげな微笑みを見せてくれた。 「くすくす、とんでもないところに来ちゃった、って顔してるわね。」 「いや、そう思うなら、別の喫茶店にしてくれれば良かったのに。」 「いいえ、たまにはこういうお店でもいいと思って、そうそう、ここのプリンはとても美味しいのよ。 弘行さん、プリン好きだって言っていたから。」 「いや、しかし、お財布様が不可能だと申しているのですが。」 返す刀でそう言うと、どうもつぼにはまってしまったらしく、肩を震わして少しの間、笑っていた。 こういう活き活きとした時雨を見るのは僕も好きである。 「ふふふ、大丈夫よ。私が全て払っておくから。あなたは好きなものを頼んでいいのよ、ね?」 「じゃ、折角だから甘えさせてもらいましょうか。」 そんなわけで僕はプリンアラモードを、時雨は抹茶パフェを食べることになった。 「弘行さん、そのプリンおいしいかしら?」 「うん。もちろん、おいしいよ。」 何でも一流のパティシエが作っているらしく、普段食べるものより数段は美味しく感じられる。 まぁ、こんなのは雰囲気を作って美味しく感じさせるようなものだからなぁ。 38 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 01 00 ID f93AyQ5E しかし、それはさておき、女の子におごってもらう僕。 ……いや、なんというか、男の面目が丸つぶれだとか、そんな事を通り越して、もはや自分が哀れに思えてきた。 をいをい、本当にどうするんだよ、俺は! そんな自問をしていることを見透かしてか、見透かしていないからか良くわからないが、時雨は至って楽しそうにパフェを口に運んでいた。 それも、恐ろしいほどに日常的で落ち着いた仕草で―。 なんとなく、ブルジョアジーと無産階級との格差を感じたような感じがするが、細かくは追及しないでおく事にしよう。 あー、僕らが精一杯背伸びしたところで、ブルジョアになんて勝てるわけないじゃないですか! 店の落ち着いた雰囲気に心地よさを感じ始めてか、ついのんびりしすぎて、店を出た頃には太陽がだいぶ傾いていた。 が、それから少しデパートによって、お店を冷やかしながら巡って回った。 帰途に着く電車に乗ったときはもう日没間際であった。 が、彼らは気づかなかった。この電車に乗り込んだ二人を尾行している人間がいるなどということには―。 39 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 03 04 ID f93AyQ5E 住み慣れた町の駅に降り立ったのは、既に日が暮れてしまった頃だった。 映画を一緒に見て、感想を言い合って、レストランに入る。 弘行さんを変に緊張させてしまって、レストランの選択はいささか失敗した感が否めなかったけれど。 好きなものを食べて、これからの休みの計画に思いを馳せる。 沈みゆく太陽を眺め、オレンジ色の光に包まれながら、私は彼と二人隣り合った席に座っている。 そして、今こうして手をつなぎあって、暖かさを確認している。 ただ、それだけのことだけれど、普通の人からすれば取るに足らないことだけれど、 そんなささやかな事が今までの私にはどんなに努力しても得られなかった。 もしかすると私は自分の殻に篭り、努力も不足していたのかもしれない。 けれど、私はそんな普通のささやかな喜びを今、かみ締めようとしている。 しかし、私の心の中には未だに暗雲が消えずにいた。 横の弘行さんの指先に見ると、その小さくて繊細な指に『それ』ははめられており、あたりに燐光を放っているかのようにまばゆかった。 それは彼と初めて結ばれた時、彼の傍にいる善き日々が続くことを願って指にはめてあげたプラチナのリングであった。 彼は指からはずすことなく、はめ続けてくれているみたい。 私にとってその事実は喜ぶべきこと。 けれど、つい前まで命を絶とうとしたことを思い出して自分の浅はかさが思い出されてくる。 こんなにも彼に思われていたにも拘らず、私はその彼を悲しませるようなことをしようとしていたのだ。 あの日以来、松本君が理沙と交わったという話を村越さんから聞き、それが正しいかを確認せずに、 彼が私をかばうことに苦痛を感じ、嫌気がさしたのだと解釈した。 と、同時に私の存在が大きく彼の人生を狂わせてしまう、そう狂信するようになった。 あの時私は命を絶つことが、正しく最善の道であることを信じて疑わなかったけれど、結局、それは独りよがりだった。 私の指にはめられたリングが月光を反射する。 自殺しようとしたときに私はこのリングを少しでも省みただろうか。 そのリングの存在を忘れ去り、弘行さんが私の事を嫌っている、という醜い疑念さえ心の奥底に宿しさえした。 松本君は私の事を信じて、妹の理沙ではなく私を選択してくれたのだ。 その誠実な彼に対して、私はなんと不誠実だったか。 それに私は結局、彼に助けられてばかり。 彼に恩返しの一つもできていない。 ずっと依存するばかり。 依存と共存は別の事に他ならない。 依存して生きていながら、わずかな事から疑念を宿すなんて、恥ずべき寄生虫としての生き方そのもの。 にもかかわらず、弘行さんはこうして私を受け止めてくれている。 熱い何かが瞼を濡らし、頬を伝っていく。 40 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 06 08 ID f93AyQ5E 「どうしたの?」 突然泣き出した私に気づいた彼は驚愕の色を隠せずに、そう問いかけた。 「ううん、なんでもないわ。」 「本当に大丈夫?何かあるなら、僕じゃ不十分かもしれないけれど、話を聞くよ。」 こう返事すると彼をより心配させてしまうことになることはわかっていたのに。 彼にいらぬ心配をさせるなんて、私は愚かだ。 「いいえ。ただ、こうやって当たり前の事のように、あなたと一緒に時間を過ごせることが、なんだか夢のように感じられて。」 もちろん、この発言に嘘偽りは無いつもりだ。 弘行さんはその言葉を聞くと一旦立ち止まった。 「そうかもしれないね、でも、幸せというのは、こういったささやかな事が涙でではなく、当たり前に受け止められるようになった時を指すんだと思う。 時雨も今は大変かもしれないけれど、いつかそんな幸せに至れると思うよ。」 真剣な眼差しで私の瞳を見据えながら、ゆっくりとまるで幼子を諭すかのように、言った。 「……。」 本当に弘行さんは優しい、いや優しすぎるのだ。 だから、このままではいけない、と理解していても依存してしまいたくなる。 弘行さんは諭すように言って、ニコリと微笑んだ後、再びゆっくりと歩を進め始めた。 ところどころにある街燈に照らされた道をゆっくり歩いていく。 言ってしまえば、彼は私にとって麻薬のような人に他ならない。 離れることができない人。どうしても依存してしまう人。 もっと端的に言ってしまえば、私は彼の存在なくして生きていくことはできない。 どれほど歩いたかわからないけれど、彼と別れなければならないところにまで差し掛かった。 「じゃあ、時雨、今日はお疲れ様でした。じゃ、また明日。」 弘行さんはいつも去るときに、また明日、と言ってくれる。 けれども、何故か今日はそのいつもと変わりない言葉が永別の言葉になってしまうかのような気がしてならないほど、突き放された感じがした。 「待って」 私は弘行さんを呼びとめた。 もう二度と会えないように感じられたからであり、弘行さんの事を疑っていた事実を清算したいと思ったから。 41 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 09 09 ID f93AyQ5E 「…弘行さん、私には、謝らなければならないことがあります。」 「……?」 即座に彼の表情が頭が疑問符で埋まったような表情に変わった。 「単刀直入に言うと、私は弘行さんの事を疑っていました。」 それから、私は抱いていた疑念の事、その情報をもたらしてくれた村越さんについてなどを包み隠さず、全て話した。 心の内に秘めていたものを吐露することは心に安定にもたらしてくれる。 対して、それを受け止める側は苦しい思いをするもの。 当然、私は謝って済む問題だとは思わなかった。 たとえ、烈火のごとく彼が怒ろうともそれは私にとっての報いなのだと思う。 母から受けた暴力と同質のものを受けたとしても、彼からのそれならば甘んじて受け入れる。 けれども、彼は私の事を何一つ詰ることは無かった。 そして、よどんだ曇りのような気まずい沈黙の後、彼は口を開いて 「時雨が僕の事を責めても、僕は時雨の事を責める立場に無い。僕自身、時雨を裏切ったのだから」と言う。 そう言われてしまうと、私はどうすればよいのかわからなくなってしまう。 私は私なぞ彼には相応しくない、程度の事は言われてしかるべきだと覚悟していただけに、肩透かしを食らってしまったかのような気持ちになってしまう。 けれども、私には受けるべき罰が存在する。 まず、弘行さん自身はあくまでも襲われた側で、一点たりとも汚点が存在しないことだけは確か。 「弘行さん、あなたはあくまでも襲われた側。だから、決して悪いことなど無いわ。だから、あなたが許しを欲するならばあなたを許してあげます。」 当然、私がこんなことを言える立場の人間ではない。けれど、彼に自罰的になってほしくない。 また、涙が頬を伝っていく。彼の前では仮面をはずした私とはいえ、情け無いほどに泣いてばかり。 「だから、あなたは私をどうしたら許してもらえますか。」 そう私は言いたかった。 しかし、それはあまりにも虫の良すぎる話。 確かに彼ならば、許しを請えばおそらく許してくれるだろう。 それで、最後に残った暗雲も消え去るであろう。 42 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 10 43 ID f93AyQ5E しかし、私は彼の傍に立てるだけでもこれほどありがたい事は無いと思うべき。 だから、私から許しを請うという分にあっていないことはしてはならないはず。 そんな事を続けていれば、結果的に弘行さんを苦しめていくことになるかもしれない。 だから、私はここで許しよりも罰を求めなければならない。 けれども、彼は私のそんな気持ちを察してくれないで、寧ろ察した上でなのだろうか、彼は私は悪くない、と言った。 「………時雨、許してくれて、ありがとう。僕は時雨に関わらず誰でも、そんな情報を手にしたら、当然信頼をし続けることなんてできないと思う。 過程はどうあれ、僕は時雨を裏切ってしまったから。だから、僕は時雨も悪いとは思わない。 だから時雨が自分のしたことに後ろめたく思っているなら許してあげる。」と。 彼は私の心を読みつくしているのだろうか、どの一言よりも私の心を軽くする言葉を平然と紡ぎ出してしまった。 「それに、僕が言えた義理じゃないけど過ぎ去ったことを許すとか許さない、なんて事で時雨ともう話したくない。僕は時雨を嫌な気持ちにさせたくないよ。」 相手の事を信じない私でも見捨てずにいてくれる彼。 自分の事は棚に上げて、ただただ愛おしく感じる。 その気持ちがうれしくて、私は弱くなってしまう。 けれども、その弱さがいつもいつも彼を傷つけることになると思うと、悔しくてたまらない。 43 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 13 25 ID f93AyQ5E 目の前に立っている彼女は涙でその目を潤している。 昼間はあれだけ楽しそうに、屈託の無い表情豊かな微笑みを見せてくれた彼女が今、涙を流している。 まるで感情の篭っていないと思われても仕方の無い発言を弄したのでは、当然彼女は泣き止むわけが無い。 大風呂敷を広げる事はできても、誠実な慰めの言葉一つかけられない自分が嫌だ。 彼女が苦しむ理由は僕が理沙と過ちを犯したと思い込んで、僕の事を信じていなかったということだ。 理沙が僕の病室を訪れた一週間以上前の日。 確かに僕は彼女を拒絶した。 しかし、僕以外の誰かから情報を得たとすれば、僕が彼女を裏切った、そうとってもおかしくは無い。 それに、僕も一線を越えそうになったのだから、見方しだいでは裏切ったといえる。 ましてや、理沙とつながりがあると彼女自身が行っていた村越とか言う子ならば、僕の事を信じられなくなるのは至極当たり前だ。 僕は馬鹿だ。 今日のこの瞬間まで、ここ数日を彼女と幸せなひと時を過ごした程度の認識しか持たなかったのだ。 彼女に自殺を思いとどまらせた、好きな彼女に依存されてもいい、などといいながらその男が信用できなければ、そんな言葉、一枚の紙切れほどにも意味を成さない。 いや、それどころか保証されることが無い約束ほど残酷なものは無い筈だ。 そんな半信半疑とみている男とこの数日間を過ごしたのだとすれば、それは何らかの苦痛を与えたのだろう。 僕は、それが誤解であることを証明したかった。 僕の約束が軽佻浮薄なその場限りのはったりであると誤解されるのは嫌だった。 しかし、それを泣いている彼女に証明できるだけの弁舌も冷静さも僕には伴っていなかった。 だから、不誠実な言葉しか出ないのだ。 だから、泣き崩れる彼女の肩を抱きとめることもできないのだ。 だから、呆然と馬鹿みたいに立ち尽くすしかないのだ。 おそらく、目の前にガラスの小片があるならば、今の僕ならばためらうことなく己が心臓めがけてつき立てることができたであろう。 しかし、それは自分の罪を飲み込んだまま逃げてしまうことである。 そして、時雨を本当の意味で捨ててしまうことだ。 僕は自己嫌悪の産物であるそれを心の奥底に十重二十重に鍵をかけて封印した。 44 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 15 25 ID f93AyQ5E 丁度、その時、僕の後ろ手に聞きなれた少女の声が聞こえた。 即座に後ろに振り返る。 わずか六歩の位置に理沙は佇んでいる。 「あははっ、お兄ちゃんだ~。」 その声に僕は背骨が氷柱に変わったかのような感覚を覚えた。 「何驚いているの?まさか、お兄ちゃん、私の事を忘れちゃったわけじゃないよね。」 「あ、そうか。お兄ちゃん。私と会えて嬉しいんだよね。その、久しぶりだから。ずっと、待っていたんだよ、お兄ちゃん?」 そういうと、理沙は片頬を吊り上げるような冷酷な笑みをたたえて、時雨の方に向きなおした。 その笑みは僕が今まで一度として目にした事が無い程の狂気と憎悪そのもの。 それは一人に向けるものとしては遥かに強すぎる。 この二人を近づけることは惨劇を生む。それはほぼ間違いない。 しかし、僕の胴を貫く氷柱によってか、その身を芋虫ほどにも動かせなかった。 「北方先輩、お久しぶりですね。」 「……。」 気丈に振舞っていた彼女からはその強さの根源である冷静さも失われ、乾いた嗚咽の音と震えを呈すのみ。 「どうしたんですか?いつも冷静な先輩らしくないではありませんか?」 「目的の為ならばどんな事だってできる、冷静、ううん違う。冷徹に人を貶める事だってできる。それが先輩じゃなかったんですか?」 「……違う。」 時雨はいっそう強く肩を震わせながら、弱弱しく告げた。 その震えた姿からはかつての冷静さも人を圧倒する一種の威厳も彼女からは排されていた。 理沙はその時雨を上から意地の悪い笑みを浮かべたまま見下ろしている。 そして、その意地の悪い表情からは勝者から敗者へ与えられる残酷な憐憫が感じられた。 45 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 17 43 ID f93AyQ5E 「何がそんなに悲しくて涙を流しているんですかね~?」 「ああ~、わかりました。先輩はお兄ちゃんに捨てられたんだ!あれだけいいように使われていれば、当然嫌われますよね。 私が何度も身を引くように警告したのに、それなのに引かないからこういうことになっちゃうんですよ?」 「あはは、でも、お兄ちゃんは優しいから、敵にすら、とっても優しいから、この程度で済んでいるんだよ。」 「散々、人の大切な、私だけのお兄ちゃんを弄んでおいてッ!」 「もう、先輩はどうなるか、分かっていますよね?」 時雨は傍の僕のズボンに震える手で弱弱しく握り締めている。 弱弱しい彼女ができる最善の選択。 それは僕に助けを求めること。 彼女は僕の罪を許してくれる、そういった。 だから、ここで、この土壇場で僕を信頼をしてくれているのだ。 僕の入院中に立てた誓いを再確認するまでも無い。 僕は彼女を守るしかない、たとえこの命が失われようとも。 「理沙、いい加減にしろ!お前が害意を持っている以上、時雨には指一本触れさせないッ!」 その言葉と、時雨の態度とが理沙を完全に爆発させた。 「あはははは、お兄ちゃんは操られているんだよ!だから!その女の呪縛から解き放ってあげるから、もう少しだけ静かにしていてね。」 「それに、私とお兄ちゃんの仲を引き裂いた連中もその女と同じく、お兄ちゃんを操って遊んでいるだけ!だから、そいつらも片付けるからね! もう後、3000秒もすれば、そうたった3000秒でッ!片をつけるからね、だから、それまでの我慢だよ。」 46 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 22 11 ID f93AyQ5E 「被告。北方時雨!」 「罪状。強盗罪!傷害罪!恐喝罪!強姦罪!拘束による身体的苦痛!名誉毀損罪!人道に対する罪! 主なものはこれら、まだ余罪は言い切れないほどある!情状酌量の余地なし!控訴は認めない!」 「検察も弁護人も要らない!ただ私、被害者であり裁判官である、私だけが閻魔が如く下されるべき罰をお前に下せるのだ。」 「判決。死刑ッ!死をもって深すぎる罪を償え!もちろん、並みの苦痛で贖えるものではない!」 「死刑執行ッ!」 そういうと、理沙はこちらに駆け始めながら、上着の内ポケットからナイフを取り出し、鞘を捨て、刃の光を煌かせた。 まるで、時が止まったかのような衝撃であった。 それがもう一閃している頃には、あと一秒二秒の内に時雨の命はない、そう確信した。 ここで僕ができることはただ一つ―。 時雨の前面を覆いつくすこと。 そして、時は動き始める。 鈍い音と激しくしぶく血潮によって、その動き始めた時を感じる。 腹に突き立てられた白刃の冷たさも、それすらもすぐに覆い隠した血潮の熱いと感じられるまでの暖かさ、倒れこんだ先のアスファルトが陽光の暖かさを吸った為に現れる生暖かさ、 全てが怜悧なまでの現実味を持って僕に襲い掛かる。 急所ははずしたようだが、臓腑をかなり傷つけた。 もう蝸牛ほども動けまい。 いずれにせよ出血多量で僕は死ぬだろう。 だが、これでよかった。 愛する時雨に信頼されずに死ぬのは嫌だったから。 これこそが僕の取るべき選択だったのだ、そう今では妙な納得がいっていた。 47 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 25 05 ID f93AyQ5E しかし、僕が守りたかった時雨がここで一緒に殺されるのは嫌だ。 北方時雨。 生まれながら、苦難の連続で、自分を殻のうちに閉ざし、ただ状況を冷静に静観し、誰からも好かれることなく、それが自分の運命であると信じてきた少女。 彼女はここで生きて、いくらでも生を享受しなければならない。 彼女の新たな人生は時間の経過と共に様々な呪縛から解き放たれて、始まるはずなのだ。 だから、今はただ逃げろ。 それ以外は望まない。とにかく、逃げろ。 理沙の許してくれ、という哀願の声がしたような気がするが、それはもう気にならない。 運命をあざ笑うしか能が無い、残酷な神様とやら、もし、居るんだったら、僕を苦しませろ。 そして、気持ちよく逝けるように走馬灯を見せようなんていう狭小な雅量は決して見せるな。 走馬灯なんかいらない、いいから時雨を助けてやってくれ。 どうせ、神様なんて当てにならないことはわかっていた。 だけど、この期に及んで追いすがってみる。 さして、僕は力を振り絞って叫ぶ。 刺した相手が僕であることに気づいて、断末魔の叫びをあげる理沙を無視して、 寧ろそれよりも声が大きくなるように、出血が多くなることなど厭わずに、腹に力を入れる。 「時雨、逃げろ!逃げて、逃げて、自分の運命に絶望することなく、ただ生きるんだ!絶望だけで人生を終えてやることは無い! だから、逃げろ!逃げてくれ!」 「嫌ッ!あなたが居ないなら生きていても、意味が無い!だから、私も死ぬわ。だって、私はあなたに命を捧げているのだから。」 感情を高ぶらせて、泣き叫ぶ時雨に優しく諭すように言った。 けれど、もう僕の口には既に逆流した血液が流れ込み始めている。 話す分だけ、血液が流れ出るのは当たり前か。 「時雨、僕に命を捧げたなら、僕も時雨に命を捧げる。…だから、僕は時雨の中で生き続ける。 そうすれば、ずっと傍にいてあげられる。『闇の日は、そう長くは続かないものだよ。だから、自分の生を精一杯享受しなさい。』 これは時雨のお父様が言っていたことだよ。 時雨が死んで誰も喜ぶはずか無い。そう、病院で、入院してる、君のお父様も、」 苦しい。 血が口内に充満し、口角を伝っていた血とは比べ物にならないまでの勢いで血を吐き出す。 「い、生き…………ろ。」 48 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 26 54 ID f93AyQ5E そう精一杯の力を込めて、言い終わると、時雨は双眸に強い決意を込めて、涙の跡が生々しく残る頭を振って頷き、走り去っていった。 それを見届けたあたりで、再び勢いよ口内に溜まった血が溢れ出た。 気づけば、目の前に血溜りができていた。 気づけば体がすこし軽くなったように感じられる。 おそらく、血液の分だけ軽くなったのだろう。 薄れていく視界。そして、その視界には時雨は既にいない。 下腹部のナイフは抜き取られていない。 だから、段階的に血を放出しているが、これが抜き取られればおそらく、僕はいよいよおしまいだろう。 見れば、理沙は泣きながらも、誰かに電話をかけているようだ。 視界がぼやけつつあるのと同様に、聴覚にも異常をきたし始めているようだ。 しかし、理沙が泣きながら、誰かに僕の応急処置を頼んでいるようだった。 そんな事をしても無駄だ。もう間に合わないだろう。 しかし、ここで誰かに僕を任せたとすると、理沙は時雨を追うつもりのようだ。 「り…さ、や…め………ろ。し……ぐれ…を……殺さ…………ない…で、く、れ。」 「お兄ちゃん……ごめんなさい。」 ただ、薄れ行く視界の先に、闇の中に理沙の姿が消えていくだけだった。 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 28 44 ID f93AyQ5E 以上です。 パソコン様が大往生なされた為、なかなか投稿できませんでした。 次回くらいに終わると良いなぁ、そんな感じです。 では、また。 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 01 37 28 ID MMnF8Q1o リアルタイムGJ!! 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 18 08 ID KzKv5HVn GJ!どんな最後になるのか楽しみだ 52 名前: ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 35 16 ID dBF1t/59 すいません、4ヶ月ほど来てませんでしたが久しぶりに投下します。 久しぶりすぎて鳥が違うかもしれませんがその際は別人ということで。 53 名前:(仮称)まなみ[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 39 38 ID dBF1t/59 相川まなみには最近気になる男性(ひと)がいる。 麻枝春彦。この夏限定のヘルプとして本店から派遣された同僚。 まなみの働くファミレスは小さな港町にある。大都市間を結ぶ国道沿いにあるので 儲けはそれなりだが、基本的に店は閑散としている。そのため、海水浴客でにぎわう 夏以外はたった4人の従業員しかいない。 そして夏。今年も恒例の本店よりヘルプ従業員がやってきた。今年のヘルプは非常 に珍しい男性従業員。現在チェーン店全体でも3人、一人は本社づとめなので実質2人 しかいない貴重品である。 まなみたちの店への派遣は通常「島流し」と呼ばれ、全店舗からくじ引きで決めら れる。ところが今回来た春彦は自ら志願してきたというのだ。気にならないはずがない。 「お・に・い、さんっ♪」 まなみは倉庫で在庫チェックをしていた春彦に声をかけた。 「まなみちゃん、なにかな?」 「おにいさんは、どうしてここに来たんですか?」 春彦がここに来て1週間。まなみは幾度となく春彦へぶつけてきた質問を繰り返す。 春彦の答えはいつもは愛想笑いをするか、「そんな気分だった」というだけだった。 しかしこの日は違った。 「まなみちゃん、そんなに気になる?」 「気になりますっ!」 まなみは即答する。 「だって、おにいさんのこと、来たときからずっと気にかけてたんですよ?!店に来て からずっと、お客さん相手の作り笑い以外にお兄さんの笑った顔見たことないし・・・」 「そう言ってくれると、うれしいな・・・」 そういうと春彦は笑みを浮かべた。今までまなみに向けてきた愛想笑いとは違う、 心の底からといった風な笑いだった。 「実はね」 春彦は真顔になってまなみに語りかける。 「俺・・・失恋したんだ」 「・・・!」 まなみは口に手をやって驚いたしぐさをした。自分は触れてはいけない何かに触って しまったのではないか。 「ご、ごめんなさい!」 謝るまなみ。春彦はまなみの頭に手をやってなでなでしてやる。 「いいよ。事実なんだし」 一度話を切り、手を下ろすと春彦は話を続ける。 「本店ではね、幼馴染の女の子といっしょに働いてたんだ」 「幼馴染?」 「近所に住んでた子でね。小学生以来の付き合いさ・・・付き合い『だった』か」 そういうと春彦はため息を一度ついた。 「つまんないことで喧嘩しちまってね。それから口を利いてくれなくなって」 「えぇ・・・」 「こっちも頭にきて、つい応募しちまったんだ、島流しに・・・あ!」 そこまで言って春彦は自分が失言をしてしまったことに気がつく。まなみは地元採用の 女の子なのだ。 「ご、ごめん!!」 「いいですよ、これでおあいこですね、おにいさん♪」 まなみは笑みを浮かべると今度はまなみが春彦をなでなでする。 「あ、うん、ええと・・・そのあとね。さや・・・ああ、あいつの名前なんだけど、 俺が応募したのを見て、『よかったね♪』ていいやがって。見送りには来てくれたけど、 俺が電車に乗るとにっこり笑って手を振ってやがった・・・」 54 名前:(仮称)まなみ ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 41 08 ID dBF1t/59 「ひどいです!」 まなみは声を荒げて言った。 「いくらなんでも、お兄さんがかわいそうすぎます!」 「ありがとう」 春彦はもう一度まなみに向かって微笑んだ。 「よーし、今日はおにいさんにまなみがおごっちゃいます!・・・といってもこの店で ですけどね」 「おいおい、無茶しなくてもいいよ・・・」 「いーや!まなみもなんかむかついてきました!今日はおにいさんもまなみも早番です から、晩ご飯いっしょに食べましょう!」 「おーい、まなみさーん・・・」 「い・い・で・す・ね?!」 人差し指を立てて春彦に詰め寄るまなみ。 「は、はひ・・・」 「では!おしごとがんばりましょー!」 そう言うとまなみは倉庫を出て行った。 「まなみちゃん、か・・・」 春彦は一人残った倉庫の中でつぶやいた。 「すごい勢いの子だな・・・」 「え、ええと・・・、まなみさん?」 「はい?」 仕事が終わり、春彦とまなみは職場のファミレスに客として来ていた。 「その・・・えっと・・・頼みすぎじゃない?」 二人の座ったテーブルの上に料理が並んでいた。それだけならごく普通の光景。しかし、 その数が尋常ではなかった。 プレーン、チーズ、おろし。ロコ・モコ、照り焼き、包み焼き。キノコソース、カレー、 鉄板焼き。店においてあるハンバーグが全種類机の上に存在していた。 二人のテーブルを歩く人が見ては引きつったような笑みを浮かべて通り過ぎていく。 「いつもコレぐらい頼んじゃうんです♪あ、お金は大丈夫ですよ?」 「いや、そういう問題じゃなくて・・・あの・・・残すのはもったいな・・・」 「コレぐらい普通頼みませんか?」 「しないしない!!」 ていうか全部食う気かよ。春彦はまなみの発言が正気とは思えなかった。まなみの身長は 150CMもなく、どう考えてもその体の中にこれらのものが入るとは思えな・・・ 「んぐんぐ・・・やっぱり仕事した後はおなかすきますね。おにいさん食べないんですか?」 「・・・!」 気がついたらもうプレーンとおろしハンバーグが皿から姿を消しており、まなみは3つ目の 照り焼きに取り掛かるところだった。 「やっぱりまなみはハンバーグが一番好きだな♪お兄さんは何が好きですか?」 「あ、ああ・・・俺はから揚げかな・・・」 春彦が頼んだのは骨付きから揚げ定食というものだった。まぁ、中身は読んで字の如し。 「あ~おいしそうですね~♪いただきっ!」 「あ、こら、まなみちゃん!!」 まなみは3つ目を終えて4つ目のカレーに向けていた箸を春彦のから揚げに目標変更した。 ぱくっ。もぐもぐもぐもぐ。ばりばりばりばり。 あっという間にから揚げは姿を消した。・・・あれ?春彦はなんか違和感を覚えたが そのまま食事を続けることにした。 55 名前:(仮称)まなみ ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 43 19 ID dBF1t/59 「おにいさん♪」 まなみは5つ目の鉄板焼きに手をかけようとしていた。 「さっきのから揚げの件、ゴメンナサイ」 「あ・・・うん、いいよ」 「お・わ・び・に、まなみの鉄板焼きを半分、あげちゃいます♪」 「あ・・・いいよ、そこまでしなくても」 「いーや!あ・げ・ま・す!」 顔こそ笑っていたがまなみのすごい剣幕に春彦もうなずく。 「ではですね・・・おにいさん・・・目をつぶってくれますか?」 「あ・・・うん」 言われるままに目をつぶる春彦。・・・なんで目をつぶる必要があるんだろ? 「次にぃ・・・口をあけてください。はい、あーん♪」 「・・・あーん」 口をあける春彦。あ、そうか。箸で口に入れてくれるんだ。春彦はそう思った。 しかし次に来たのは予想の斜め上を行く事態だった。 ぶちゅ。もごもごもごもご、ぐにぐにぐにぐに・・・。 まなみは口移しでハンバーグを食べさせてきたのだ。しかし物は鉄板焼き。つまり。 「あぢあぢあぢあぢあぢあぢあぢあぢ!!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!おにいさんゴメンナサイ!」 口の中にハンバーグ半個分、それもアチアチを詰め込まれたのだ。 「みづみづみづみづ!!」 「はいっ!」 ごきゅごきゅごきゅごきゅ。 同僚に持ってきてもらった中ジョッキいっぱいの水を飲み干す春彦。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」 「ごめんなさい、おにいさん!まなみ、ドジっ子だから・・・」 そういう問題か?春彦はこの小さな同僚の頭の中を知りたかった。ていうか。 「まなみちゃん、コレ熱くなかったの?」 「まなみ、熱いの平気なんです。おうちがお肉屋さんだからかな?」 「・・・ソレ関係あるの?」 「余り物で焼肉したりとか。ほら、お肉って火を通さないと食べられないでしょう?」 「いやそりゃそうなんだけど」 そういってる間もまなみのフォークとナイフは止まらない。既に鉄板焼きは姿を消し、 6つめのチーズが既に半分になっていた。やがてチーズも姿を消し、包み焼きに手を 出そうとしたまなみだったが、少し考えて店員を呼ぶベルを押した。現れた店員に対し。 「あ、ごめんなさい。骨付きから揚げのおかずだけ追加~!」 「まだ食べるの?!」 既に店中の客から注目の的である。正直、春彦はもう店を出たかった。 骨付きから揚げが現れるころには最後のロコ・モコが姿を消そうとしていた。 「あ、早かったな~♪」 「は、ははははは・・・」 もう乾いた笑い声しか出ない春彦。まなみはロコモコの丼を空にするとから揚げに 取り掛かった。 ぱくっ。もぐもぐもぐもぐ。ばりばりばりばり。 相変わらずものすごい勢いで消えていくから揚げに春彦は呆れるばかりであった。そして、 春彦は先ほど抱いた違和感の正体に気がつく。 皿に、骨が、ないのだ。 56 名前:(仮称)まなみ ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 44 21 ID dBF1t/59 「ま、ま、ま、ま、まなみちゃん!!」 「はい?」 9個もあったから揚げを秒殺したまなみは紙ナプキンで口を拭いていた。その目の前にある 皿には何も残ってない。そう、何も。 「まなみちゃん・・・鳥の骨は?」 「普通食べちゃいませんか?」 まなみがあっけらかんといった言葉に春彦は言葉を失った。 「鳥の骨って歯ごたえあっておいしいんですよね♪」 「・・・・・・そ、そう・・・なの?」 「けどまなみは牛さんの骨のほうが好きかな?あの骨髄のゼラチンがすきなんですよ~♪」 とても人類の発言と思えない言葉を口にするまなみ。 「さっきも言ったんですけどぉ、まなみはおうちがお肉屋さんなんです。だから家の中に骨が 転がってて。暇なときカジカジしてたら食べられるようになったんですよ?」 「あ・・・ああ・・・」 「まなみ・・・変な子なのかな・・・?」 ちょっとしょげ返るまなみ。 その姿を見て春彦は言おうとした『アンタ絶対前世ティラノザウルスだよ』という突っ込みを 飲み込んでしまった。 「いいいいいいいい、いや!まなみちゃんはおかしくないよ!うん!普通の、かわいい、 女の子だよ!」 「本当ですか!」 先ほどの暗い顔から一転、満面の笑顔を浮かべるまなみ。 「おにいさん、だいすきです!」 その後。店を出た二人は同じ方向に向かっていた。 「今日は夜だというのに暑いですね~。汗かいちゃう・・・」 「ねぇ・・・まなみちゃん?」 「はい?」 「俺・・・これから帰るんだけど、まなみちゃん家こっちだっけ?」 「えへへへへ・・・実は・・・」 まなみは両手の指を組んでもじもじする。 「おにいさんのぉ・・・お部屋をのぞいてみたくてぇ・・・」 「え゛っ!?俺の、部屋?!」 正直言って、部屋には入れたくなかった。男の一人部屋、部屋は荷物が片付いてないし 女の子には見せられないもの(主にエロ本)もある。 「いや・・・ほら、男の部屋って汚いしさ・・・」 「汚い部屋なんて気にしません!男の人の部屋なんですから、その・・・え・・・、えっちな本とか あると思いますけど・・・まなみは気にしません!どんな本があってもおにいさんを軽蔑したり しません!」 男にとってはそのほうがショックなのだがまなみの不退転の決意に引いてしまい春彦はまなみを部屋に入れることにした。て言うか断ってもそのまま上がりこんできそうだ。 「わー、これがおにいさんの部屋なんだ~」 「荷物、まだ片付いてないんだけどね」 春彦の部屋は4畳半の部屋にキッチンとトイレ兼用バスルームがあるだけだった。 たぶん荷物が入ってるのだろうダンボールは封もとかれずに部屋の片隅に5~6個積んで ある。 「おにいさん、まなみ、汗かいちゃった。シャワー借りれますか?」 「汚いよ?」 「おにいさんが汚いはずありません!」 「・・・あ、ああ」 まなみの剣幕に押され春彦はまだ封を切られてなかったダンボールの箱をひとつ開け、 中からまだ使ってないバスタオルを取り出しまなみに放り投げた。 57 名前:(仮称)まなみ ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 45 07 ID dBF1t/59 「おろしたてだから綺麗だと思うよ」 「わぁ、ありがとうございます♪」 まなみはバスタオルを受け取ると大仰におじぎした。そしてまなみは服を脱ぎだす。 それを見て春彦はびっくりして後ろを向きテレビをつける。 衣擦れの音。扉を開ける音。閉める音。シャワーの水音。そしてまなみの鼻唄。 春彦はテレビを見ていたが、何の番組なのかすら全く頭に入ってなかった。振り向く寸前に 見た小さなブラ。パンティ。それらを思い出しエロティックな興奮状態だった。それと同時に、 『それは犯罪だろ!!』と心のどこかから突込みが入っていた。やがて。 「おにいさーん、でましたー」 「おーう・・・って、おわぁっ!!」 風呂から出てきたまなみの姿はバスタオルで体を隠しただけだった。 「ま、ま、ま、まなみちゃん!!」 「ん?どうしました?」 「かっこかっこかっこかっこ!!!!」 「え、あ、そっか!」 まなみは両手でひとつ拍手をうつ。 「だってぇ・・・あついんだもん・・・」 「だからって、まなみちゃん!」 さすがに怒った口調になる春彦。 「も、も、もし!おれ、俺がっ!へ、へ、変な気に、な、なったら、どうするんだ!!」 「へ・ん・な・き?」 まなみはじりじりとにじり寄ってくる。まなみに対し思わず後ずさりする春彦。 「お・に・い・さん?えーい!!」 まなみはいきなり眼前まで近づくと春彦をつきとばした。思わず万年床に転がる春彦。 「ま、まなみちゃん?!」 まなみはこれまでの女の子女の子した口調から一転、妖艶なそれに変わる。 「おにい、さん?」 まなみはそのまま春彦の上に四つんばいになる。片手を床に着き、春彦に向かい合う。 「まなみね、シャワー浴びてる間、ずっと、お兄さんのこと考えてたんだよ?」 まなみは手をついてないもうひとつの手で自分の体を覆っているバスタオルをはずした。 小さな、膨らみかけの胸。無毛の股間。恥丘は存在せずクレパスがそのまま姿を現していた。 そして股間から糸を引いた雫が。シャワーの拭き残りの水でも、汗でもない、雫。 「おにいさん・・・まなみを、いっぱい、いっぱい、食べていいんだよ?」 その後、まなみは春彦の部屋に入り浸り・・・を通り越し半同棲の状態になる。昼は一緒に働き、 夕方はまなみの健啖ぶりに驚愕し、夜はまなみを食らう。そんな生活が一週間ほど続いた。しかし そんな甘い生活は突如終わりを告げる。 ある日の夜、春彦にかかった電話。まなみのいる部屋を出て行き、廊下でひそひそと話す春彦。 部屋に帰ってきた春彦に告げたまなみの一言。 「おにいさん・・・うそでしょ?いまの、電話、どこの、雌豚、からなの?」 58 名前: ◆ph4kVdXQrE [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 02 46 12 ID dBF1t/59 投下終了。オチ読めたなんていわないでorz 59 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 31 11 ID vd74AtWu 49 58 GJです。 まなみ(;´Д`)ハァハァ 皆さんの力作の後で恐縮ですが 僕も 4- 10の続きを投稿させて頂きます。 60 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 33 31 ID vd74AtWu その日、事件が起きた。 俺のちっぽけな人生の中で、未だかつて経験したことのない大事件だった。 その日の朝。俺はいつものように朝寝坊をして由香里に叩き起こされ、夢うつつのまま学校へと向かった。 そしていつものように教室へ向かい、いつものように席に座り、いつものように授業を受けた。 しかしその日の昼休みだけは、いつものようではなかった。 さて、今日の昼も健やかに惰眠を貪ろう。 そう思って机に突っ伏そうと思った矢先、俺を呼ぶ声がした。 声の方を振り向くと、教室の入り口に見かけぬ女子生徒がいる。 「笹田先輩! ちょっといいですかー?」 元気よく俺を呼ぶ女子生徒。「先輩」ということは、この子は一年生か。 俺は戸惑いながら彼女の方へ歩くと、気弱な返事をした。 「えっと…。何かな?」 「先輩、ちょっとお時間いいですか?」 元気いっぱいに尋ねる一年生。その爛々とした目に押され、用を尋ねることも忘れて生返事をしてしまう。 「あ、うん。いいけど…」 「じゃあ、一緒に来て下さい」 その子はそれだけ言うと、俺の手を引っ張って歩き出した。 「え、ちょっと…。どこ行くの?」 「いいから、ついて来てください」 有無を言わさぬ押しの強さに、何もいえない俺。 下級生を相手に我ながら情けないものだと思いながら、そのまま引かれていった。 連れて行かれた場所は、体育館の裏だった。 「あの、こんなところに来てどうするの?」 何とも古典的且つベタなスポットへと来てしまい、俺は彼女に尋ねた。 すると彼女はくるっと俺の方へ振り返り、にこっと笑った。 「じゃあ、わたしはこれで」 そう言うと、なんと彼女はすたすたと立ち去ってしまったではないか。 「え、いやちょっと待って…」 俺の声は届かない。彼女は見る見るうちに遠くへ行ってしまう。 「…何なんだ、これ。嫌がらせ?」 この状況にどう対処してよいか分からず、呆然と立ち尽くす。 しかし、そうしているうちにあることに気づいた。 「……!!」 足音だ。そう遠くないところから、足音が聞こえたのだ。 足音はどんどんこちらに近づいてくる。 俺は心臓が高鳴るのを感じた。 何なんだ、一体。まさか校内で美人局…? いや、そんなはずはない。ていうか第一俺は何もしてないし…。 軽くパニックに陥った頭でそんなことを考えながら、俺は近づいてくる足音を待った。 しかし、そこに現われたのは、俺の予想外の生物だった。 「せ、先輩…」 ひょこっと俺の目の前に現われたのは、小柄な少女だった。 彼女はなぜか頬を赤く染め、俯きながら近づいてきた。 「え、えっと…。君も一年生?」 「は、はい…。一年の中島といいます」 「さっきの子は、君の友達?」 「はい。あの、わたしが頼んで、先輩を連れてきてもらったんです」 中島という女子生徒は、落ち着かない様子でそう言った。 61 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 34 39 ID vd74AtWu 「そう。それで…何かな?」 そう尋ねると、彼女はまた俯いて黙り込んでしまった。 「………」 …さて、どうしたものか。俺まで気まずくなってしまう。 しかしいつまでもこうしていても、らちがあかない。 第一、俺の貴重な睡眠時間を削ってここに来ているのだ。これでどうでもいいような用事なら困る。 俺は先を急かそうとして口を開きかけた。 「あのさ…」 「先輩、好きですっ!!」 俺が話そうとしたその瞬間、そんな言葉のピストルが俺の脳天を貫いた。 多分、時が止まった。 あまり覚えていないが、数秒の間、俺は呆然と立ち尽くしていたと思う。 やっとの思いで我に返ると、俺は慌てて喋りだした。 「え、あの、いや…。え? その、あーっと…。マジで?」 なんだかよく分からない出来事に混乱した俺は、なんだかよく分からない言葉を発した。 「本当です!! わ、わたしと付き合ってくださいっ!!」 彼女は先ほどまでとはうって違い、俺の目を真っ直ぐと見据えた。 そんな気迫に、思わずたじろいでしまう。 ただでさえ生まれて初めての体験に、脳が追いついていない。ここは一旦落ち着いて考えるべきだ。 そう自分に言い聞かせ、俺は小さく深呼吸を繰り返した。 数分が経っただろうか。 俺は冷静さを取り戻すと、じっくりと考えていた。 この場の空気に流されないように、一番良い答えを見つけれるように、いつになく真剣に考える。 そしてゆっくりと口を開いた。 「あのさ…、俺なんかのどこがいいの?」 「えっと。気の弱そうなところとか、ちょっと頼りないところとか…」 中島さんは照れたような表情で言った。 なんかあまり褒められた気はしないが、それでも彼女の気持ちは本当らしい。 俺はもう一度考えると、一つ息をついた。 「…ごめんね」 その言葉を聞くと、彼女の顔に絶望の色が広がった。 みるみるうちに瞳に涙が溜まっていく。 「…なんでですか?」 彼女は震えた声で尋ねる。 「俺は君のことよく知らないし、…やっぱり急には無理だよ」 適当なことを言って誤魔化しても仕方がない。俺は正直な気持ちを口にした。 それからまた数分が経って、彼女はか細い声で「分かりました」と言って、泣きながら走っていった。 「はぁ…」 緊張が切れて、大きなため息をつく。 初めてのことに何がなんだか分からなかったが、ひょっとして勿体無いことをしてしまったのかなと、未だ冷めない頭で思った。 教室に戻ろうと歩き始めた頃、昼休みの終わりを告げるチャイムが響いた。 62 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 35 11 ID vd74AtWu その日の先輩は、なぜか機嫌が悪かった。 放課後、珍しく部活に顔を出すことにした俺は美術室へと向かった。 また何か絡んでくるかと思いきや、俺を見た先輩は「あら、来たの」とそっけない態度をとる。 無愛想なのはさほど珍しくないのだが、いつもはもっと辛らつな感じで攻撃してくるはずなのだが…。気のせいだろうか。 まあ、それはさておき部活に集中だ。どうやら今日は人物画のデッサンをするらしい。 しばらくして顧問の若槻先生が来て指示があると、部屋の中心に置かれた台の上にモデルを立たせ、他の部員でそれを囲んだ。 俺はたまたま先輩の隣だった。いつもと違う様子が気にならないこともないが、とりあえず集中してデッサンを始めることにした。 静かな部屋の中、カリカリと鉛筆の擦れる音が響く。 少し疲れた俺は、手を止めて一息入れることにした。すると、隣にいる芳野先輩が俺を見ていることに気づいた。 「…あんた、一年生の子に告白されたんだって?」 「え…。な、なんで知ってるんですか?」 「みんな知ってるわよ。結構うわさになってたから」 カリカリと鉛筆を動かしながら、先輩は言った。 沈黙が流れるが、何秒かすると先輩はまた鉛筆を止めてこちらを向いた。 「で、どんな子だったの?」 「どんな、ですか?」 そう言って少し考え込む。 「うーん。割りと背の低い子だったかな。っていっても先輩とそんなに変わらないですけど。…まあ、なんていうか結構可愛かったと思います」 「そう」 先輩は自分で聞いておきながら、興味なさげにそう言った。 そしてまた鉛筆を動かし始める。…と思ったら、また止めて口を開いた。 「なんで、断ったの?」 核心を突く質問に一瞬驚くが、俺は素直に答えた。 「まあ、知らない子にいきなり付き合ってって言われても…。やっぱりそういうのは好きな相手じゃないと」 「…そう」 先輩はそう言うとまた鉛筆を動かし始めた。 今度は本当にデッサンに戻ったようで、時間が終わるまで何も話さなかった。 どのくらい経っただろうか。 かなり疲れが出始めた頃、若槻先生が手首の時計を見て「そろそろ休憩にしよう」と指示した。 みんな集中していたのだろう。かなり疲れた様子で、それぞれ休息を取りだした。 俺はふと先輩を見る。 先輩は心ここにあらずといった感じで、ただぼうっと自分の描いた絵を眺めていた。 さっきは色々と聞いてきたが、もしかして俺のことと何か関係があるのだろうか。 「……そんなわけないか」 ふと窓を見ると、外は暗くなり始めていた。 63 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 35 45 ID vd74AtWu 部活を終えた俺は、少し重い足取りで玄関へ歩いていた。 やはりたまにしか顔を出さない幽霊部員には、あの長時間の集中は厳しい。 今日は早く帰って、風呂でも入ってさっさと休もう。そう思いながら歩いていると、靴箱のあたりで見知った後姿を見つけた。 やや小柄で、細身の体の腰あたりまである自慢の黒髪が、さらさらと揺れている。 「委員長。今から帰り?」 俺が後ろから声をかけると、その背中はびくっと驚いた。 「さ、笹田くん。びっくりした…」 振り返った委員長は、胸に手を当ててそう言った。 「あ、ごめん」 そんなに驚くとは思わなかった俺は、反射的に謝る。 「あ、ううん。いいの。笹田くんも今から帰り? よかったら途中まで一緒に帰りましょう」 そう言って微笑む委員長に、ノーとは言えない。 俺たちは玄関を抜けて、薄暗くなった道を一緒に帰ることにした。 しばらく一緒に歩いていると、委員長もどこか様子がおかしいことに気づいた。 なにか落ち着かない様子で髪を触ったり、メガネをかけ直したり、とぎこちない。 「委員長。どうかしたの?」 そう尋ねるが、委員長は答えずに下を向いて何かを考え始めた。 しばらくすると、委員長は意を決したように重い口を開いた。 「あ、あのっ。笹田くん、一年生の子に、その…」 「…ああ、委員長も知ってたんだね」 「えっと、その…。振っちゃったの?」 委員長は腫れ物に触るように、恐る恐る尋ねた。 「ん、まあそうなるかな」 隠してもしょうがないので、俺はありのままを話した。 「やっぱり、全然知らない子とそういうのはダメかなって思って」 そう言うと、委員長は「そうなんだ」と小さく呟いた。 それにしても、こういう話に興味があるなんて委員長もやっぱり年頃の女の子なんだな、と俺は妙な感心をしていた。 いつも控えめで地味なところもあるけど、この子も誰か男を好きになったりするのだろうか。 「そういえばさ、『俺のどこがいいの』って聞いたら『気弱そうなところ』とか言うんだよ、その子」 どことなく静かな空気になってしまったので、俺は冗談交じりな口調でそう話した。 しかし、委員長の反応は俺の期待したものではなかった。 「分かるな、それ」 「え? ここ笑うとこなんだけど…」 「でも、なんとなく分かるの」 委員長は静かに笑いながらそう続ける。 「笹田くんって、何となくそんな感じ。母性本能をくすぐるっていうか…。ね」 優しく微笑んだ彼女を見て、俺は一瞬ドキっとした。 「どうしたの?」 「い、いや。なんでもない」 委員長もこんな顔をするのか…。 なんだか今日は、女性には色んな顔があるということを勉強したような気がした。 64 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 37 34 ID vd74AtWu 「ねえ、誠。由香里の帰りが遅いんだけど、知らない?」 家へ帰りテレビを見ながら食事をとっていると、キッチンから母の声がした。 「いや、知らないけど」 もぐもぐと飯を口に押し込みながら答える。 「あいつだってもうそんな子供じゃないんだし、ちょっと帰りが遅いくらい心配ないよ」 「そうだといいんだけどねぇ」 洗い物をしている母が背中を向けたまま答えた。 すると、リビングのドア越しに玄関の扉がガチャリと開く音が聞こえた。 「ただいまー」 「ほらね」 由香里が慌しく部屋の中へ入ってくる。…なにやら小さな体にたくさんの荷物を抱えて。 「遅かったじゃない、由香里」 心配していた母がそう言うと、由香里はふて腐れたように答える。 「だって買い物してたら荷物多くて大変だったんだもん」 そう言いながら荷物をどかっと下ろしていく。おそらく洋服や本、化粧品などの入った紙袋やバッグが幾つも転がった。 「この間お兄ちゃんに荷物持ち頼もうと思ったけど、ダメだったからさ。今日は一人で頑張ったよ」 「ん? それなら今日誘えばよかったのに」 おかずのハンバーグを頬張りながらそう言った俺を、由香里はなぜか冷ややかな目で見た。 「お兄ちゃんは今日は幸せの絶頂だろうから、そっとしてあげようと思ったの」 「幸せの絶頂…?」 一体なんの話だろう。そう思って記憶を辿ると、昼休みのことが思い当たった。 「…あぁ、お前も知ってたのか」 「当たり前じゃない。隣のクラスの子だもん」 そう話す由香里は、どこか機嫌が悪そうだ。 「本当に物好きよね。よりにもよって、なんでお兄ちゃんなのかしら」 「まあ、あれかな。俺の秘められたカリスマ性に引き寄せられたんじゃ…」 「バカじゃない?」 な、なんて可愛げのない…。 まったく、昔はあんなに可愛かったのに。思春期の娘は難しいものだ。 そんなことを考えながら、俺はテレビのリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。 この時間なら確かどこかの局で音楽番組があっただろう。 別に俺は見たい訳ではないが由香里が見たがるだろうと思い、チャンネルを回した。 その時だった。 『……先ほど入ってきたニュースです。河崎市内の高校生、中島伊織さん(16歳)が下校中、自宅近くの道路で 何者かによって腹部をナイフのような物で刺され、倒れているのを付近の住民によって発見されました。 中島さんはすぐに市内の病院に運ばれ、現在意識不明の重体です。現場では現在警察が捜査を行っています。 それでは現地のリポーターに様子を伝えてもらいましょう……』 その日、俺のちっぽけな人生の中で、未だかつて経験したことのない大事件が起きた。 そして、本当の事件が起こった。 65 名前:ヤンデレは誰だ/毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 38 13 ID vd74AtWu 「9/18 火曜日」 どうして。 どうしてみんな邪魔をするの。 わたしがあの人を愛しているのに。 わたしが一番、あの人を愛しているのに。 誰も近寄らせない。 わたしがあの人を守ってあげる。 あの人に近寄る女がいたら、わたしがあの人を守ってあげる。 そう。今日みたいに。 どうしてみんな、わたしたちの邪魔をするんだろう。 どうして。 66 名前:毒蛇 ◆i8W/K/qE6s [sage] 投稿日:2007/09/18(火) 03 40 49 ID vd74AtWu 以上、今回分終わりです。 なるべく早く完結させれるようにしたいと思います。 あ、できれば病んでるのが誰か分かっても内緒にしておいて下さい(^^; 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 04 16 56 ID UHO4LtJC 普通に意識せず読んだら全員犯人っぽく思えてしまった俺 二回目は伏線とかに気を付けて見てみるか… とにかく乙でした 68 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/18(火) 04 24 30 ID cFzzX8EN 乙でした 面白かったです 早く続き読みたい…… 俺的には妹がヤンデレかな~?と思ったり だけど全員ヤンデレってことも……? 続きにwktk 69 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 07 14 25 ID VPKS/nC3 58 GJでし Piaキャロ3思い出した 66 GJぃ 続きwktkして待ってます 70 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 11 39 44 ID PDj6owwD 投下ラッシュktkr 作者さん達乙です やはりヤンデレには刃傷が付き物なのか……ガクブルしつつもwktkが止まらないw 71 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 13 29 14 ID opxZqv1R 付き物ではないと思うけどなあ… あった方が面白いと言えば面白いがw 72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 17 34 57 ID RC6zwJ7t 鍋とバインダーでのし上がったお方もいるわけですし 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 17 59 33 ID opxZqv1R 彼女の場合は依存ぶりや献身ぶりだと思うよ 74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 19 07 43 ID xHd/bcCu 葵の方ごっすんでしたー 早めの宣言を心がけるといいと思います 咲夜のスペルはとても強いものがそろってるので 相手のライフ5割くらいなら2回攻めれば終わらせることもできたりします 75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 19 08 13 ID xHd/bcCu なんという誤爆orz 76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 21 40 52 ID Umdr7CBT 72 バインダーkwsk 77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 23 11 12 ID ZCBFypvy 76 死んじゃえばいいんだー! ↓ 死んじゃえバインダー! 空鍋様のありがたいお言葉ですよ 78 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 00 35 10 ID zx7wJDLP 高校生活のリズムにも慣れてきた五月、私はある悩みを抱えていた。 何故だか知らないが、私の所持品がすぐに消えてしまうのだ。 教科書、シャーペン、消しゴム、ボールペン……気がつくとそれらがあるべき場所から消えている。 「それさぁ、絶対ストーカーだよ」 理子がけらけらと笑いながら言う。本当にストーカーなら笑い事ではない。 「希美子は美人だからね、なんかそういうの連れてくるフェロモンとか出してるんじゃないの?」 玲が真面目そうな顔で、そんなことを言い出した。先ほどまで読んでいたブ厚い美術史の本を閉じて、私の顔をじぃっと見つめる。 「あー、希美子ってなんか女王蜂って感じよねー」 女王蜂ってどういう感じなのよ、とスナック菓子を頬張っているのぞみにツッコミをいれつつ、私はいつ失くしたのか、もしくは誰が盗んだのかを考えた。 しかしいざ考えようとしても、さっぱり答えは出ない。 いつ失くしたか憶えていないのだから、どこで失くしたのかもわからない。誰かが盗んだとしても心当たりはない、はず。 それに理子が言うようにストーカーだとしても、私にはそんなストーカーの気配など微塵も感じないのだ。 「これ、希美子」 「あてっ」 玲が、持っていたブ厚い美術史の本でチョップしてきた。 「あんたはあんまり難しいこと考えんな。あんたの心配はあたしたちがするから、あんたは自分の心配はしなくていいのよ」 無茶苦茶なセリフだけど、玲の表情はいたって真面目だった。 その真面目そうな顔があんまりおかしくて、私はついつい噴き出してしまった。 「ぷっ。あはははははははは!」 「何笑ってんのよ」 「いやごめん」 むくれてる玲の顔を見ていたら、ものが失くなったことなどどうでもよくなっていた。 玲ははげましたつもりだったんだろうけど、はげまし以上に心が満たされた。玲は、いい人だ。 「あ、そだそだ」 食べ尽くしたスナック菓子の袋を丁寧に折りたたみながら、のぞみが今思い出したらしい話題を語りだした。 「あの赤い髪のコ、なんだっけ名前、えーと……」 79 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 00 44 37 ID zx7wJDLP きみこちゃんと違うクラスになりました。 とても悲しいです。 やたらと私に他人たちが話しかけてきます。親友はきみこちゃんだけです。話しかけないでください。 私は悪魔ですから、あなたたちを食い殺しますよ? そんなことを言っていたら、いつの間にか誰も私に話しかけないようになっていました。ありがたいことです。 カールクリノラースくんはそんな私をじぃっと見て、何も言いません。 きみこちゃんが他人と話しているのを見かけました。 とても悲しいです。 きみこちゃんは私の親友です。私の親友はきみこちゃんだけです。 そんなきみこちゃんが知らない他人と話をしているのを見るたびに、私の喉と胸が、針を刺されたように痛みます。 この感情は一体なんでしょうか。 いらだった気持ちのまま家に帰り、無言の父と母の横を通り、自分の部屋に入って鍵をかけます。 物で溢れかえる鞄を勉強机に置き、学校の制服を脱いで放り投げます。放り投げた制服は私の足元に落ちて、ここは自分の領地であるかのように裾を広げていました。 下着も脱ぎ捨て、ベッドに倒れこみます。暗い部屋の中で冷えた毛布の感触が、私の肌に直に伝わります。 女性には性感帯というものがあるそうなのですが、私が感じるものはこの心地よい冷たさだけです。自ら裸体を晒すあの他人たちは、この心地よい冷たさを知っているのでしょうか。 きみこちゃんは、この冷たさを知っているのでしょうか。 何故でしょうか、きみこちゃんのことを考えるたびに、冷たさが消えていく気がします。けれどそれもまた心地よくて、私はきみこちゃんのことばかり考えているのです。 いつかきみこちゃんをこの部屋に連れてこよう。私はそう思いました。 この暗い部屋に。この暗がりで冷えた、ゆりかごに。 カールクリノラースくんと私だけの部屋に。 私は一糸も纏わない自分の身体を抱きしめて、何がおかしいのか自分でもわからないまま、ただただ笑い続けました。 80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 00 47 10 ID zx7wJDLP 羊と悪魔、続きです。遅筆で申し訳ありません。 そろそろ何か事件が起きそうな気がしないでもありません。 81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 01 23 32 ID IFgtOmNf 80 GJ!! いい雰囲気です 続きが気になる 82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 19 23 51 ID rAmeb4e4 77 なるほどな そろそろあれぐらいのヤンデレアニメを見たいものだ 80 GJ 続きを待ってるぜ 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 21 58 18 ID 4h8cVc6u 80 GJ! 84 名前:きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 09 44 ID STS2Dsze 前スレにあって『ヤンドジ』をそのまんまSSにしてみました。 少女は、ポケットから刃物を取り出した... そしてその刃を突き出しターゲット目掛けて突進した。 「えぇ~い、成敗!!」ポキッ 少女の刃物は、ポッキーのごとく折れた。 「痛っ!もぅ~またペーパーナイフも持ち歩きながらうろちょろして」 ターゲットは、そう言いながら彼女に近づきて来た。 (あわわ~こ・殺されるよぉ~助けて康介くん!!) 「言う事聞かない悪い子はこうだぁ」むぎゅっ 少女は、ターゲットに無理矢理、胸を押し付けられ窒息寸前。 (うぐぐぅ~助けて康介くん!このままじゃデカ乳オンナにおっぱいで殺されちゃうよぉ~) しかし、当の康介少年は、少女を羨ましそう見ていた (いいなぁ女の子は、ああいう事されてもお咎めがなくて………) 彼女の名前は、犬神萌(いぬがみもえ)。 同級生の山寺康介(やまでらこうすけ)に 思いを寄せる都立天領ノ酒中学校に通うごく普通の女の子。 これは、嫉妬深くてドジっ子な犬神萌のエキサイティングコンバットラブストーリーである 85 名前:『ヤンドジさん』 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 12 03 ID STS2Dsze うぅ~よくも康介くんの前であんな恥ずかしい事を…もう許さないんだから!! ようやく友人であり恋のライバル(と勝手に認識している)の牛飼くるみ(うしかいくるみ)の オッパイ圧殺攻撃から逃れる事のできた萌は、新たなる作戦を実行していた。 ここは、給食室。 今日のクラス分の給食はここに配置されているのだ... そう、萌の新たなる策略とは、くるみの給食に毒を入れ毒殺するという恐ろしい計画なのだ!! 「フフフ、あなたがいけないのよ」 萌はポケットから保健室から盗んできた薬をくるみの松茸ゴハンの中に入れた。 危うし!くるみの運命やいかに!! 「わぁ~今日は、松茸ゴハンだ!私、松茸ゴハン好きなんだ!」 くるみは、自分のどうでもいい情報をクラスメイトに公開すると松茸ゴハンを貪った。 (さようならくるみ、あなたの最後の言葉は『わぁ~今日は、松茸ゴハンだ!私、松茸ゴハン好きなんだ!』よ) しかし、放課後になっても死ぬどころか痙攣さえ起こさないくるみ。 萌は、なぜくるみが死なないか不思議でなりません 「…なんで死なないんだろう?」 そう言いながら萌は、毒薬のビンを眺めていました。 ・ ・ ・ ・ ・ 『カッパ印の正露丸』 86 名前:『ヤンドジさん』 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 13 01 ID STS2Dsze 萌は、なぜ数多くの作戦が失敗するのか考えました。 ―――そしてある事に気付きました。 刃物で刺しても毒薬を飲ませても死なないくるみ。 …そうかわかったぞ!実はくるみは地球外生命体なんだ!! だから昨日、高所恐怖症を我慢して学校の屋上に連れて行っても怖がらなかったんだ (ついでにその『屋上から突き落として自殺に見せかけよう作戦は失敗) などと脳内MMRを展開させる萌。 『宇宙人=人間の康介が好きになるわけがない』という構図から くるみはもう敵ではないと考えた萌は、今度は、どうやって康介を自分に振り向かせるかを考えた。 振り向かせるだけじゃ駄目!私だけを見て私だけを愛させる方法... 萌が脳内会議を白熱させていたその時!! 「えぇ~また某国が拉致をした疑いが浮上しました」 たまたま拉致事件のニュースが耳に入った萌は、恐ろしい策略を思いつくのであった。 そうだ!康介くんを拉致して私の部屋に監禁し、私の魅力に気付かせよう その後、愛し合う二人…そして康介くんと結婚。 『ヤンドジさん』第三部(も続いてないけど) 完!! しかし、相手は男の子、とても私みたいな女の子じゃ拉致監禁は無理… なので『拉致』の部分を『家に招いて美味しいご飯でもてなし』に変更。 『監禁』もママにバレたら怒られるので『帰りたくなくなるようにする』に変更。 …完璧だ これで康介くんの心は私の物――― 「あ、あは、あはは、あ~っはははははははははははは………」 果たして、康介少年の運命やいかに? To be continued... 87 名前: ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 19 45 ID STS2Dsze 投下終了です。もうちょっとだけ続きます。 とりあえず前回の指摘された句点や中点等を気を付けて書いてみました。 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 26 03 ID 1s9TIxpK 唐突に話す。 思い返したら、ヤンデレっていうジャンルから入ったんじゃなくて、すごくきたキャラが後で「ああ、あれはヤンデレだったのかな」って思ったのが はじまりだったな。俺の場合は水夏の透子さんだったが。 YOUたちのはじまりはなんだい? 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 01 33 04 ID tYiG86Sj 一行空けると読みづらい 90 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 11 21 ID gYbbEYsn 21話、投下します。 91 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 12 13 ID gYbbEYsn 第21話~拒絶~ 無言で廊下を突き進む。 香織とかなこさん、あの2人からとにかく離れたかった。離れなければならなかった。 2人を助けず置き去りにしたことの後ろめたさと、自分が何をしでかすかわからない、その2つの理由からだ。 薄情だが、香織はあのまま放っておいても大丈夫だったろう。うつぶせながらも喋っていたし、腕も動いていた。 香織以上に心配なのは、俺が殴ってしまったかなこさんだ。 きっと、窓ガラスの破片で怪我をしているだろう。 あれだけ強く殴ったのだから、もしかしたら肋骨を骨折しているかもしれない。 心配だが、今から引き返すわけにもいかない。俺がまた同じ事を繰り返さないとは言えないからだ。 室田さんが発見してくれるのが一番いい。 連絡がとれればいいのだが、昨日身につけていた通信機は知らないうちになくなっていた。 屋敷の中の電話を使おうにもどこに電話をかけたらいいかわからない。 「本当に他人任せだな……」 こういう場合には、他人や運に頼るよりも自分でなんとかするほうがいい。 いや、今は自分でなんとかすることができないから他人や運に頼るしかないのか。 だが、何もしないでいるつもりはない。他にやらなければいけないことがある。 俺がなぜ、香織やかなこさんを傷つけるようになったのか、その理由を突き止めなければならない。 そのために、今こうやって廊下を早足で歩きながら、ヒントのありそうなところへ向かっている。 目指すは、十本松が使用していた部屋。 あそこに行けばなにかがあるかもしれない。もしかしたら無いかもしれないが、何もしないよりマシだ。 通路の外側の壁には窓がある。窓からは芝生が見える。 緑色の芝生の向こうへ視線を移すと花壇があり、そのまた先には背の高い木々が壁をつくっていた。 屋敷の周囲は木で覆われているようで、長い廊下を歩く間はずっと同じ景色が続いていた。 廊下の突き当たりは右へと折れていた。 右に曲がってしばらく歩くと、廊下の突き当たりへとたどり着いた。今度はそこで行き止まりになっている。 代わりに、ドアがあった。これで見るのは3度目となる、十本松が住んでいた部屋のドアだ。 ノックなしでドアを開ける。 無駄に広大な空間に、本棚が倒れていたのが目に入った。 本棚で隠されていたと思しき壁には扉がある。昨日、華はあのドアから屋敷に侵入していた。 あのドアは外へと続いている。この屋敷を出るならあのドアを使えばいい。 だがまだあのドアのノブには手をかけない。この部屋を調べなければならないからだ。 ベッドの下。何もない。のぞき見た位置の反対側から光が漏れていて、絨毯が続いているだけだ。 クローゼットの中。高級そうなスーツや礼服、コートが大量に掛かっていた。どれも女物ではない。 机の上。本が二冊置かれている。それ以外に目につくようなものはなかった。 本を一冊、手に取る。こっちの本は以前図書館で借りた方の本で、武士と姫の話が綴ってある。 ぱらぱらとめくってみる。前に読んだ時と全く同じ内容で、どこも書き直してある様子はない。 そういえば、この本からいろいろ始まったような気がする。 本を返しに図書館へ行って、かなこさんに初めて会った。 しばらくして大学で再会した。その次に会ったのはこの屋敷だった。 パーティの夜、俺はかなこさんの部屋に連れ込まれ、ベッドに縛り付けられた。 そして、かなこさんに犯された。今でも思い出せるが、興奮よりも恐怖の記憶の方が勝っている。 翌朝には、首を絞められて殺されそうになった。 あの時華が来てくれなければ今頃俺はここにはいなかっただろう。 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 14 29 ID ZLmq5ztl 88 むしろ、それは埋めネタとして話すべきじゃないかと ちなみに自分はコ・コ・ロ…の久遠寺華澄(プレイしたのはVoice版) 93 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 14 46 ID gYbbEYsn そういえば、華は大丈夫だろうか。昨日この部屋でひどいことを言ってしまったが。 俺が、二度と会うな、言っただけでかなり落ち込んでいた。 きっと華にとっては、自分がやった行動は全て俺のためによかれと思ってやったことなのだろう。 その行動がかえって逆の効果をもたらしたと知ったならば、落ち込むのも無理はない。 「だからって、あの言い方はなかったかもな」 ひとりごちる。同時に後悔の念を覚える。 いくら頭に来たとはいえ、もう少し別の言い方があっただろうし、何も言わないで突き放すだけでもよかったのに。 今さら言ったところでどうにかなるものでもないが。 本を机の上に戻し、なんともなしに後ろを振り返る。 すると、部屋の入り口に人が立っているのが目に入った。 「華」 「……もう起きても大丈夫なんですか?」 「ああ」 いつもより伏し目がちに見つめてくる華を正面から見据える。 華に対して後ろめたいものを感じていたから、目を合わせながら喋りたくなってしまう。 「お前こそなんともないのか? どこか体が痛いとか」 「はい。一晩寝たらもう回復しました。それより、昨日はごめんなさい」 華は俺に向けて頭を下げた。なぜ華が謝る? 「私、昨日おにいさんを怒らせるようなことを言ってしまって……」 「気にするなよ。というより、俺の方が謝りたかった。 昨日は、悪かった。もう少し落ち着いてお前と話をしていればよかった」 「もう、怒ってないんですか?」 頷く。 すると、華は安堵したように微笑んだ。華のこういう表情は久しぶりに見る気がするな。 少しだけすっきりした。心にかかっていた靄が晴れたような気分だ。 「華は何をしにこの部屋に来たんだ?」 「おにいさんを探してました。おにいさんと一緒にここから出て家に帰るつもりでした。 なるべく人に見つからないように2階を歩いて部屋を開けて回っていたら、 いきなり1階の方からガラスの割れる音がしたので下りてきたんです。 どこで音がしたのかわからなかったから、とりあえず知っているところから廻ってみよう、 と思ってこの部屋に来てみたらおにいさんがいたんです」 「じゃあ、まだ1階の他のところには行っていないってことだな」 「はい。何か知っているんですか? あのガラスが割れた音のこと」 「……いいや」 ガラスの割れる音っていうのは、間違いなく俺がかなこさんを殴ったときに立てた音だろう。 俺がかなこさんを殴った、と華が聞いたらどう思うだろう。 女に手をあげるだなんて最低だ、と言って俺の頬を張るかもしれない。 そうであったらいい。今は誰かに殴られたい気分だ。 「なあ、華」 「なんですか?」 「ああ、いや、やっぱりなんでもない」 俺を殴ってくれなんて、やっぱり言えないな。 言えばおそらく殴ってくれるんだろうが、どうして殴らなければいけないのかと聞かれたら答えられない。 俺がかなこさんを殴ったからだ、とでも言えば、どうして殴ったんですかと問い質されかねない。 どうして殴ったのか、それは俺が一番知りたいところだ。 94 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 16 23 ID gYbbEYsn カッとなってやった、というのとは少し違う感じがした。そもそも十本松が死んで怒る理由というものがない。 あいつが死んだという事実を思い浮かべても怒りは沸いてこない。 少しばかりの悲しさはある。そして悲しさより少し多く、寂しさを感じる。 なんだか、胸の辺りに拳ほどの大きさのボールが入っているような気分だ。 寂しさでできた膜が、悲しさという感情の周りを覆ってできたボール。 ボールは現実感のないもので、胸のどの辺にあるのかはっきりとしていない。 けれど、胸の中に何かがある。拳大のボールの分だけスペースが割かれている。 じいさんが亡くなったときもこんな感じがした。 「華は、十本松が…………死んだって知っているのか?」 「気絶してましたから、はっきりとこの目で見たわけではないですけど、察してはいました。 私が気絶する前、十本松あすかは壁にもたれかかってましたから、たぶんその後で殺されたんでしょう」 「お前はなんで気絶してた?」 「地下室に飛び込んだとき、おにいさん十本松あすかに犯されてるのを見て、私が殴りかかったんです。 それからもみ合いになって、私が先に気絶してしまって」 「そっか。……あいつが死んで、悲しいとか」 思うのか、と聞こうとしたら先に答えを返された。 「思いません。せいせいしてます。あの女は、おにいさんに危害を加えた人間が受けるべき報いを受けたんですよ。 だから、おにいさんが十本松あすかが死んだことを悲しむことはないんです」 「別に悲しんじゃいない。ただ……」 「寂しいですか?」 「まあな。この間知り合ったばかりだったけど、それなりに話もしたし」 ここ最近は色々なことがありすぎたから、印象が強い。 おまけに十本松の服装や喋りや性格、全部がおかしかったせいで忘れようと思ってもなかなか頭の中から消えてくれない。 「そうですか……死んだくせに、あの女はまだおにいさんの心の中にいるんですね」 「そんなにおおげさなものではないけどな」 故人である十本松には失礼かもしれないが、あいつの残滓は風呂場のカビみたいなものだ。 消そうと思ってもなかなか消えてくれない。 「死ぬ直前におにいさんを好きに扱って、そのうえ記憶の中に居座り続けるなんて……図々しい」 「おい、華……?」 華の目が俺を見ていない。睨め付けるような目で、床を見下ろしている。 「どうしたら、おにいさんは十本松あすかを忘れてくれますか? この部屋が無くなったら? あの女の服を全部燃やしたら? あの女の痕跡を根こそぎ無くせば?」 華は顔を右へ、左へと向けた。まるで部屋を見回すような動きだった。 「それとも……あの女がしたみたいにおにいさんを犯せばいいんですか?」 「それはやめてくれ」 現時点で女二人に無理矢理犯されているされているというのに、 さらに従妹までが加わったら男としての自信がなくなってしまう。 それに華と肉体関係ができてしまったらどうなるかわかったもんじゃない。 親や親戚からの俺に対するただでさえ弱い信頼が、ゼロになる可能性もある。 なにより、ここ最近の華のことを考えるとそこから雪崩式に堕ちていってしまう気がする。 心が堕ちて、二度と逃げられなくなってしまう気がするのだ。 この話はしない方がいい。話をしているだけで思考が泥沼にはまっていく。 95 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 17 52 ID gYbbEYsn 「なあ、俺が十本松のことを覚えてたら不都合でもあるのか?」 「私が不愉快なんです。十本松あすかはおにいさんを穢したんですよ? それなのにいつまでもしつこくおにいさんの中に存在している。 私のことなんか、しばらく会わないだけで忘れてしまうくせに」 「いつ俺がお前のこと忘れた?」 「いつ? ……もう忘れちゃったんですか。やっぱり物覚えが悪いですね。 私がこの町に来て、おにいさんとばったり会ったときにすぐ思い出さなかったじゃないですか」 「あれは……お前も人のこと言えないだろ。俺が名乗るまでわからなかったくせに」 「私はおにいさんの顔を見てませんでしたから。道ばたでいきなり会った男性が優しくしてくれるなんて、 絶対に裏があると思ってましたので。しかもその相手がおにいさんだなんて露ほどにも思いませんでしたし。 それに……見知らぬ女性に対してはとっても優しくするとも、思ってませんでした」 窓から差し込む陽光が華の瞳に反射している。華の瞳が俺をまっすぐに見つめてくる。 なんだろう、話す度に泥沼に嵌っていくというか、追い詰められているというか、そんな感じがする。 別に悪いことをした自覚はない。あの時は偶然道ばたで会った人に手を貸しただけなのだから。 いや……華にとってはそれさえも不機嫌の理由になるのだろう。 たった今、俺との距離を手を伸ばせば届く位置にまで縮めているのが華が不機嫌であるという証拠だ。 「何を考えているんです?」 「別に」 今、お前の機嫌をどうやってよくしようかと考えていたよ。 「嘘ですね。おおかた、天野香織か菊川かなこのことでも考えていたんでしょう。 おにいさんにとっては、私よりあの2人の方が心配ですものね。 昨日、私を病院に置き去りにしてこの屋敷まで助けにくるぐらいなんですから」 「変に勘ぐって変な勘違いするな」 普段は鋭いくせに、どうしてこんな時に限って的外れな勘違いをするんだ。 「そんなに私じゃ不満ですか? そんなに私は魅力がないですか? おにいさんを助けるためならどんな危険だって冒しても構わないと思ってるのに。 何もしない、ただおにいさんを振り回すだけしか能がない女の方がいいんですか?」 「だから……」 「そりゃ、私は胸が小さいですよ。風呂場で鏡を見る度にそう思います。 だけど胸なんて無駄な部品じゃないですか。年を取ったら垂れてくるんですよ。肩がこりやすいんですよ。 将来のことを考えたら、絶対に私の方がいいに決まってます。間違いありません」 的外れな勘違いの次は、胸の話かよ。 ああもう、なんか返事するのが面倒くさくなってきた。 ただでさえ今はかなこさんをなんで殴ってしまったのかっていう疑問に悩まされているのに。 ――あれ。そういえば、今の俺って。 96 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 19 41 ID gYbbEYsn 「料理だって、いずれレパートリーが増えますし、上達もします。絶対におにいさんを唸らせて見せます。 だから、お願いです、私を――」 そう言って華が手を伸ばしてきた。手に触れないよう一歩後ろへ下がる。 華に触れられるのが嫌だったわけではない。下がらなければならなかったから下がったのだ。 「そんな……なんで、逃げるんですか……?」 「違う。逃げた訳じゃない。これには深い理由があって」 「どんな理由ですか。そんな深刻な顔して逃げるほどの理由なんですか?」 「ああ。頼むから、今の俺に近づかないでくれ」 「どんな理由ですか? 話してください」 「……話してもいいけど、たぶん信じないと思うぞ」 「いいから、話してください」 ごまかしは許さない、という感じの目で華が俺を見た。 かいつまんで華に事情を説明する。 今朝目を覚ましたとき、会う人を見る度に暴力を振るいたくなるということ。 なぜそうなったのかがわからないということ。 かなこさんを殴ってしまった、ということは伏せておいた。口にしたくなかったからだ。 「そういうことだったんですか」 「信じられないだろ、こんな話」 俺自身、華に説明していて本当かどうか疑わしい気分になったほどだ。 信じてもらえなくてもいい。今の話を聞いて、しばらくの間近づかないでもらえればいい――って。 「おい、華」 「なんでしょうか」 「今の話、聞いてなかったのか。近づいたら、怪我するかもしれないって言ってるだろ」 話が終わった途端、華が距離を詰めてきた。 一歩下がり、距離をとる。また華が近づいてきた。 「いいですよ、私は」 「……なにがいいんだ?」 「おにいさんに殴られるなら、それでもかまいません」 「はああっ?」 「殴られても、蹴られても、投げ飛ばされても構いません。おにいさんに触れるならば」 そう言うと、華は一気に距離を詰めて、懐に飛び込んできた。 次の瞬間、足を引っかけられ俺の体は床に押し倒されていた。 体の上には華が乗っている。華の両手は、俺の両肩に添えられていた。 体の痛みは無かった。だが腹が立った。なぜいきなり押し倒されなければいけない。 俺は誰かに、ましてや従妹に押し倒されるようなことはやっていないぞ。 華を真正面から睨み付ける。文句を言ってやろうとしたのだ。 しかし、すぐに口を開けなかった。華が不敵にも笑っていたからだ。 「手を出しませんでしたね」 「…………何?」 「私は今、ものすごくおおざっぱな動きで接近したんですよ。それなのに、押し倒すことができた」 どこがおおざっぱだ。 華が目の前に来た、と理解したらいきなり倒されていたぞ。 くそ、情けない。こうもあっさりと年下の女の子に組み伏せられるとは。 「まあ、そこはおにいさんが鈍かったということにするとして。その後ですよ。 今もそうですけど、攻撃する気配のようなものが感じられないんですよ、おにいさんから」 「攻撃しようとする気配?」 「はい。相手の呼吸とか体の反応とかで大体わかるものなんです。 ましてや、これだけ接近――密着をしていれば、嫌でも感じられます」 「今の俺からは、感じられないのか?」 「話を聞いていると、勝手に体が反応するように聞こえたんですけど。 ここまでして反応が見られないということは、どうやら私には攻撃しないみたいですね。ふふっ……よかった」 華が笑ったときに口から漏れた息が、頬にかかった。 気づく。華の顔がものすごく近い位置にある。20センチ、いや10センチも離れていない。 首を華の両腕で抑えられていて、思うように動かせない。 97 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 21 01 ID gYbbEYsn 「一つ、わかったことがあります」 「……なんだ」 努めて冷静に言う。これだけ間近に華に接近されたらどうしても落ち着かなくなる。 華も、香織やかなこさんに負けないくらい綺麗なのだ。 伊達眼鏡をかけていないせいでよりくっきりした輪郭を見ていると、改めてそう思える。 「おにいさんの無意識の暴力は、向けられる人と向けられない人がいるということです。 おにいさんが朝に出会った人は暴力を向けられる人。 対して私は暴力を向けられない人、に該当します。どういう基準で分けられているのかはわかりませんけど」 「なるほど」 つまり、香織とかなこさんには近づけない、華には問題なく近づける、ということだ。 一体どこでそんな区別がされているのだろう。 華と、香織とかなこさんの2人を比べてどこか違う点があるか? 年か、付き合いの長さか、それとも俺との関係か? 俺との関係の違い、ということで考えると、ただ1人違うのは彼女になった香織だ。しかしそれだと腑に落ちない。 香織1人だけが特別だとしよう。しかし、それではなぜ俺はかなこさんに対して香織と同じ反応をしたのか説明できない。 たぶん、何か別の理由があるはずだ。 「私は嬉しかったり残念だったりしてますけどね」 「何が?」 いきなりそう言われても何のことを言っているのかわからん。 俺の異状のことを言っているのか? 残念という言い方にも引っかかるし、それに嬉しがる要因がどこにあるというんだ。 「おにいさんが私を傷つけようとしないっていうのが嬉しいんです。 だって、知らないうちに私を傷つけてしまうとわかっていたら、離れていってしまうでしょう?」 「当たり前だ。俺はわけのわからない理由で傷つけたり……したくない」 今までにもいろいろな人を傷つけてきた。また反対に傷つけられることもあった。 肉体的に、精神的に。忘れようと思っても忘れられないことだってある。 けれど、それは感情や自分の意志があってやったことだ。 どの人だったらやる、あの人だったらやらないという条件反射的にやったことなど一度もない。 もし、自分が誰にでも暴力を振るうようになっていたのだとしたら、俺は誰にも会わない。 一人で誰も知らない場所に隠れ、いつ治るともしれない症状と向き合いながら過ごすだろう。 しかし、治ったかどうかを確認するためには人に会わなければいけない。 その時に治っていなければ、またしても望まない行動をとる。 そして、いずれ人に会うことすらしなくなる。それはさすがにまずい。 再就職どころか、ひきこもる方向へ一直線だ。 しかし、まだ望みはある。 俺は華に対して異常反応を示さなかった。他の人間に対して普通に接触できる可能性がある。 どんな基準で俺が妙な反応をするかわからないから、誰にでも、というわけにはいかないが。 98 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 22 25 ID gYbbEYsn 「ところでさっき、残念だって言ったよな」 「はい」 「あれはどういう意味だ?」 こういう時は、ショックだ、とかいう台詞の出番だろう。 なにを残念に思っているんだ。 「例えば、おにいさんがヤマアラシだとします。自分が人間サイズのヤマアラシだと思ってください」 「……ああ」 とりあえず、タヌキと同じ大きさのヤマアラシを想像してみる。 人間サイズのヤマアラシなんか想像できるか。 「街を歩いたら、誰にもぶつかることはできません。お店に入ることもできないから、買い物ができません。 働こうにも、職種は限られてきます。客商売は無理、誰かと組んで仕事をすることはできない。 あと残っているのは人を直接相手にしない職種しかないです」 「……だな。それで?」 「もしそうなった場合、おにいさんはどうやって生活しますか?」 「どうやって……? 人に会えない、働けない、外に出ることがなくなる。 もしそうなったら自動的に家に引きこもることになるな」 「誰かがお世話しないとおにいさんは、野垂れ死にしちゃいますね?」 「だろうな、多分。で、結局なにが言いたい」 「つまり、そんな時は私がおにいさんのお世話役を買って出てあげますよ、ってことです。 社会の底辺を生きるおにいさんを、私無しでは生きていけないようにできるじゃないですか。 そうならなくて惜しいな、という意味で残念と言ったんです」 「……ほう」 体の上に乗っている華の肩を掴んで引きはがし、横にどける。 即座に立ち上がり、華との距離をとる。 「……逃げないでくださいよ。なんで逃げるんですか」 立ち上がった華が不満そうな顔つきで言った。 なんでもなにもあるか。華の奴、とんでもないことを考えてやがった。 最近の華がおかしいとは思っていたが、まさか俺を目の前にしてこんなことを言うとは。 「本気にしてないですよね? 今のは冗談ですよ」 ……本当かよ。 「もし本気でやるつもりだったら私は口にしたりしませんよ?」 「そりゃそうだろうが……冗談でもあんなこと言うな」 「ごめんなさい。おにいさんを和ませようと思って、つい」 あんな会話で和むわけないだろうが。 「あら? この本」 華は机の上に置かれたままの本に目を留めると、二冊とも左右それぞれの手で持ち上げた。 「この部屋にあった本ですか、これ」 「ああ」 「タイトルが無いですけど、どんなことが書いてあるんですか?」 「簡単に言えば、ハッピーエンドで終わらない話」 「面白かったですか?」 数日前なら面白かったと俺は答えただろう。しかし、今ならこう言える。 「……いいや、実に不愉快で面白くない内容の本だった。読むだけ時間の無駄だった。 その本を手に取るだけで不幸が訪れるから触らない方がいいぞ」 「珍しく、ずいぶんな言い様ですね」 「それだけひどい本だってことだ。だからその本を読むのはやめとけ」 「へえ……」 本を裏返して背表紙まで眺めてから、華はこう言った。 「でもおにいさんが読んだ本なら私も読んでみたいです」 99 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 24 57 ID gYbbEYsn 華は手近にあった椅子を引くと、腰掛けて本を広げた。 青い背表紙。以前十本松から渡された方の本だ。 二冊の本が上下巻に分かれるとするなら、下巻の方になる。 俺がその事実を教えようか、それとも読ませないようにしようか、と考えていると。 「……ん?」 ふと、この場にいない人間の声が聞こえた。小さな声だった。 耳をすませていないと聞こえないような声量だったというのに、俺がその声を聞き取れたのは不思議でもある。 だが、時折こういうことはある。自分が望まない事態の場合、自分の聴覚が鋭くなることがある。理由はわからない。 そして、望まない事態というのは連鎖するようだ。華までが声の主に気づいた。 「天野香織の声ですね」 ああ、その通りだ。 よりによって今一番会いたくない相手が来た。ついでに言うとこの場に来て欲しくない相手だ。 俺が香織を目にした瞬間に襲いかかったりすることはないだろう。 だが、この場には華がいるのだ。 もし、俺が何かの間違いで香織に対して拳を振るおうするところを、華に見られたら。 いや、それよりもこの場で香織と華が顔を合わせたら。 そこから一体どんな展開になるのか、まったく予想がつかない。 ただでさえ最近は予想外の事態ばかり起こっているというのに。もう、これ以上は御免だ。 「華」 「はい?」 「今すぐにこの屋敷から出るぞ。家に帰る」 「え、でも……」 華は部屋のドアへと顔を向けた。 香織と顔を合わせたときの台詞を決めていたのかもしれない。 どんな台詞を口にするのかは想像できないが、それはこの場で破棄してもらおう。 「この部屋から外に出られる。前にも通ったことがあるだろ」 「そうですけど、私はあの女に話が」 「いいから、来い」 華の右手首を掴み、強引に立たせる。右手には青い背表紙の本が握られたままになっている。 もう一冊の本を手に取り、華の左手に渡す。 「その本を読みたいんなら家に帰ってから読め。香織が部屋に入ってくる前に出る」 「……あの、なんでそこまであの女から逃げようとしているんですか? もしかして、おにいさんが拒否反応を示す人って……」 気づかれたか。これだけ頑なに香織と会うことを避けようとすれば、聡い華は気づくに決まっている。 しかし、今はそんなことの後悔をしている場合でも、自分のうかつさを呪っている場合でもない。 香織の声は少しずつ大きくなってきている。この部屋にたどり着くのは時間の問題だ。 「あとでちゃんと話してやる。だから、今は言うことを聞いてくれ」 「……わかりました。そこまで言うんなら、言うことを聞きます」 部屋の裏口から、華と一緒に屋敷裏の空き地へ出る。 季節はまだ冬で、扉を開けた瞬間に冷たい空気が肌に触れた。 一瞬部屋に戻りたい気分になったが、意識して首を振り、家に帰るという本来の目的を思い出す。 裏口のドアを閉める。すると、さっきまで聞こえていた香織の声がかき消えた。 扉の存在が、俺が香織を拒絶した、という事実を証明しているような気分にさせてくれた。 100 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 27 13 ID gYbbEYsn 21話はここまで。次回へ続きます。 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 38 54 ID Pim/gzYS 一番槍GJ 102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 02 57 15 ID ZLmq5ztl 100 GJ、そして乙 …乱入スマソorz 103 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/09/20(木) 03 05 47 ID aPhhcrfM 保守 104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 07 22 33 ID 6V2fvanv 87 これは良いものだ 萌可愛いよ萌 100 個人的に華の好感度が上がりっぱなし。 嬉しいけど、でもかなこさんも香織もガンガレ! 105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 10 44 31 ID vE1Kp3Ea 87 グッド 106 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 11 11 36 ID TZ9rgYhA 87 ヤンドジというか…頭の弱い子? 好物なので美味しくいただきましたが。 人称の整理と出だしのタルささえなんとかすれば もっと良くなると思います。 偉そうにして申し訳ない。 107 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 46 02 ID 85365FQ6 大分遅くなりましたが”Versprechung”第1章その1投下します。 108 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 47 27 ID 85365FQ6 第1章 ―1― 「あぁ~だるい~」 N県警捜査一課にあるデスクの一角で背伸びをする女性が一人。 彼女以外の捜査員は現在外に出ている。故にこんなことを言っても誰にも聞かれないのでまったく問題はない。 つい最近あった市長銃撃事件の捜査に出かけてるのだ。ところが彼女だけは―否もう一人いるのだが、その捜査からははずされていた。 まず第一に彼女はまだ若かった。この課に配備されてからまだ二年目。しかし成果は誰よりも挙げていた。 彼女自身正義感がとても強く。、悪即逮捕の姿勢を貫いてるからだろう。 そのことが今回の外された件にも関わってることは否定は出来ないだろう。 女はでしゃばるな―そういった雰囲気になりつつあるのは彼女自身で感じ取っていた。 そういうわけで彼女にとって今回の件で捜査から外されたのまでは想定内であった。 名目としては、他の事件が起きたときへの対応する人員が必要だから、とのことだった。 「にしても、こんな大変なときにわざわざ事件起こすような馬鹿は居ないわよねぇ…」 明らかに他の捜査員より暇である。ここまでも想定内である。今までの資料整理できる暇があるかなぁなんてことも考えていたものである。 ところが大きく彼女の想定を逸脱することが起こった。他の刑事が捜査に出ている間に起こった事件に対応するためにコンビを組んでくれという申し出があったのだが、そしてそのコンビニなった刑事が… 「はぁ…」 思い出したくもないような人物であった。考えたくも無いような人物であった。 その人物は今席をはずしている。今までにあった事件の資料を読み漁るのが彼の日課らしい。そろそろその日課を終えて戻ってくる頃だろうか… 「どうして私がこんな人と…」 このことは彼女にとって大きな痛手である。いままで積み上げた実績が台無しになるかもしれない…彼女はそこまで考えていた。 彼女にそこまで考えさせるような人物とはいったいどのような人物なのか。 彼女がコンビを組めといわれた刑事―その刑事は課内では厄介者としてあまり好まれてはいない人物であった。 能力はたしかである。洞察力に優れ、行動力もある。だからこそ厄介なのである。 無駄に捜査をかき回す、自分とかかわりの無い事件まで首を突っ込む… しかも自分の担当の事件がつまらない事件だと判断したらとことん手を抜く。あげく 「俺は面白い事件にしか興味はねぇ」 とのたまう始末。今回の銃撃事件も犯人が挙がった時点で興味をなくしたらしく、課長に自ら外してくれといったらしい。課長としても無駄に動かれるよりは都合がいいらしい。しかし一人にしておくのは問題でもある。一人にしてなにやら変なことをされては元も子もない。 要するに彼女は監視役になったのだ。任命された日を思い出すと今でも忌々しいという気持ちで一杯になる。何でこんなことに… 彼女は今でも1時間ごとに心の中でそういってる。 そう、辞令を言い渡された昨日からずっと… 109 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 50 14 ID 85365FQ6 さかのぼること、N市長銃撃事件の翌日―つまり昨日の事。 「お呼びでしょうか、課長」 彼女、松代直子は他の刑事がばたばたとあわただしく動き回ってる中、課長に呼び出されて課長のデスクの下へといった。 「いやねぇ、今回の事件犯人が取り押さえられたといっても裏がまったくわからなくてねぇ…刑事を総動員しようと思うんだ。 何せ市長が銃撃されたんだからねぇ。でもそうなるとこの間に誰もいなくなってしまって他に何か起こったとき対処が出来ない。 だから君には捜査には加わらず、そういった事件の対応をしてもらおうと思ってね」 課長は何かを言いにくそうに彼女言った。裏で何か言いたいことがあるように彼女には見えた。 「わかりましたが、どうして私が?」 彼女は何事も無いかのよう無く聴いた。 その口調が何の感情も無く事務的なものであったのが、課長をさらに狼狽させた。もしや全てを見透かされてるのでは?という不安に駆らせるものだったからだ。 これに明確にむっとしたもの、いらっとしたものなら対処もしやすい。 なだめすかせばいいし、なにより一般的な反応であるという安心感がある。でも、彼女の反応は違う。 なにかわかっていたような反応…予定調和、でもとりあえず理由は聞いとくか…そんな反応だった 課長は、どう答えるべきか迷った。正直に言うべきか、別の理由で逃げるか。 どちらが波風がより立たないか。 なにより、彼女にとってベストなのか。 つまるところ言い換えれば彼にとて何がベストなのかで迷っていたのだが、そこには突っ込みを入れないでおこう。 結局彼が選択したのは正直には言わないことだった。彼女にはあえて言わないほうが良いだろうという判断だった。 「うん、ほら女性関係の事件があったりしたとき、女性刑事がいたほうが対応しやすいだろう? この課で、女性刑事は君だけだ。となるとね…君が優秀なのは知っている。だからこの判断は心苦しい。だが全体を見たときにベターな選択肢は君を残すということだったんだ。理解してくれないか?」 課長の言葉は一般の人からすると十分な言葉だ。彼女の事をフォローしながら理由を述べてる。しかし、彼女には違った。 彼女はもともと嗅覚のようなもの、身体的なものではなく、勘のようなものといった意味での嗅覚ではあるが、そのようなものが優れていた。 女だからとかいう議論はさておき、とにかく優れてた。外れることもままあるが、当たる確立は一般的なそれよりは高い。 そういったわけで課長の今の言葉には何か裏があるなと、彼女はまったく根拠はないものの瞬間的に思ってしまった。 そもそも彼女が見透かしたかのように発言したのも偶然である。 確かに彼女はここ最近課の男刑事の自分への視線がおかしいいなとは感じていた。だが確信があったわけではない。 それでもその疑念が発言に意図せずとも表れたのは事実である。そしてそれが、課長に対して図らずもプレッシャーを与えたことも。 彼女の次の言葉も、決して確信があって発言したわけではない。だが、他人からみれば十分驚くような言葉であった。 110 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 53 17 ID 85365FQ6 まぁいいですが。別に何かあるのならいいですが、そういった理由ならいいですよ。まったく問題はありません。そういった理由ならね。」 課の空気が少し冷たくなった。男どもの動きが一瞬止まった。顔が引きつったものもいた。思考が完全にストップしかけたものもいた。 だが一瞬は一瞬だ。寒気が走ったのは事実だが、直接的なことを彼女が言ったわけではない。彼らはすぐに冷静さを取り戻し仕事を再開した。ただ一人を除いて。 課長は冷静さを完全には取り戻せずにいた。別になんてこと無い一言である。そう普通の。 だが彼女の今までの言動、しぐさ、口調…今日だけじゃない。いままで嫌というほどプレッシャーを浴び続けてきた課長には、正直もう堪えられなかった。 さらにいうなら実言うと課長、彼女に言ってないことがもう一つある。それはもう一つの辞令。 このこともいわないといけないのか思うと、今すぐこの部屋の窓から飛び降りたい気分になってきていた。 それほど彼女のだすプレッシャーはすさまじかった。 彼女といえばそんな課長の様子の変化を敏感に嗅ぎ取っていた。 「これは何かあるわ…」 もはや彼女のなかで疑惑は確信にいたっていた。こんなこと考えたって、どうしようもないことは彼女にはわかっている。 辞令を淡々と受けて仕事を確実にこなせばいいだけの話。 だが課長の変化は明らかすぎた。何かを隠している。誰もがそう思うような急変だった。 うつむき加減で声は小さくなり、さっきの自分の言葉に対してなにか言っている。しかし聞き取れるのはあ~とかう~とか、 歯切れの悪い言葉というよりは、どうにかしてやり過ごすための言葉を考え中という感じの声だけだった。 「課長…」 「…何だね」 「何かおっしゃりたいことがあるのなら、言ってしまったほうがよろしいのでは?そのほうがすっきりなさいますし、後々楽になりますよ。後々ね」 彼女は思い切っり口調を丁寧にしかし冷たくしてみた。これは意図的なものである。 課長にさらなるプレッシャーをかけるための、意図的な口調の変化。 このことがとどめになったのか課長は観念したかのように「後で、話がある、誰もいないときに来なさい」とだけつぶやいた。 その姿は、警察の上のほうに立つ人間とは思えないほど、惨めで、小さいものだった。 このように彼女のプレッシャーは上司すらもひれ伏すほどすさまじい。 課の男供からは影でまだ新人なのに、将来はお局様なんていわれている。 刑事なのにお局様だなんて…彼女はこの呼称を一番嫌っている。仕事が出来ないのに偉ぶってる…そういう印象があるからだ。 さてこんな風に言われてるわけだが、実績を上げている以上、誰も文句は言えない。 このことが彼女が課のなかで疎まれている原因のひとつだと彼女は思っている。 課長は二人で会う場所に近くの喫茶店で指定してきた。少し歩いて川のほうに出るとある喫茶店。 警察内より、そっちのほうが彼にとって都合がいいのだろう。断る理由は無い。 彼女は「わかりました」と一言だけ告げて自分の席に戻った。 戻るときも姿勢は崩さず、綺麗に、優雅に歩く。歩くたびに彼女の長い髪が揺れる。華麗に、しかし威厳深く。 芝居をするなら徹底的に。彼女の課長落し作戦とも言うべき芝居はここに一つの結果を見た。彼女はそう確信して内心でガッツポーズをした。 111 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 57 06 ID 85365FQ6 仕事もひと段落した頃、課長に指定されていた時間が近づいてきたので彼女は喫茶店に向かうことにした。 横断歩道をわたり少しするともう川沿いだ。この川は石橋群で有名である。川沿いには観光客が休めるよう店も多い。 今回呼ばれた喫茶店もその中のひとつである。 とはいっても雑誌で取り上げられるような店ではなく、小さく、静かな、地元の店といった趣の店である。 珈琲がとても美味しい店でもある。彼女は別の警察署勤務からN県警の現在の課に所属になってからは、かなりの頻度でこの店に通っている。他の刑事には賛否両論の店だが、自分は少なくともN市1、いや日本でいちばん美味しい店だと思っている。 だいたい人の好みなんて違うんだから、自分がここは日本一だと思えばその時点で日本一の店なのよ、と彼女は思っているので、 否のほうの意見はまったく耳に入っていない。ただし、自分でこの店は美味しいと触れ込むことも無い。 ただただ通うだけであるし、世間には知られたくないとさえ思っている。彼女だけの専用の店になればいいのにとまでは思っていないようだが。 課長もこの店のファンの一人であるようだ。実際店で会うこともよくある。その時は、なるべくにこやかにすごすようにしている。 にこやかに、にこやかに。 逆にそれが課長には不気味に写ってるとも知らず、今日も喫茶店についったときからにこやかモードのスイッチを押していた。 しばらくすると課長が喫茶店に入ってきた。 課長は別にはげてるわけでもなく、中年太りが激しいわけでもなく、眼鏡かけてるわけでもなく、 そこらへんにいる人とは違い少し筋肉質な体をもつ刑事としては理想的な人であった。柔道の有段者であり、抜群の判断力も備えている。 だが彼女に押されてることからもわかるとおり人がよすぎるのが弱点である。 そのため、抜群の判断力も宝の持ち腐れとなっている。が、仕事で鬼になったときの指示出しは完璧である。 いつもそうであればと思う人は多いが課長の人の良さで得をしていることも多いので誰も口には出さない。 さてその鬼モードになったときの課長だが、判断にいっぺんの迷いも無く、それでいて的確な指示を出来る頼れる上司である。 しかしそれ以外となると、他人優先が強く出すぎてしまいうまく判断できなくなってしまう。 彼はそれゆえどうにも頼りない印象を他の課の刑事にもたれてしまっていた。彼女はそのことについて赴任当初かに気づいていた。 いや、気づいてたというより自然と感じていたというべきか。 彼女が今回強気に出たのもそんな感触を持っていた故であり、決して怒りからではなかった。 だがやはり半分は天然での行動であり、後付でこうすればうまく行くだろうと考えるのが彼女である。 今回も最初のほうには課長を軽く脅すなんてことは考えてなかった。あくまで後付である。 しかし彼女はそんなことはすっかり忘れている。最初から考えていたと思っている。 彼女は常に自信に満ち溢れているように見えるらしいが、このような思考体系が自信があるように見えるゆえんだろう。 実際のところはそこまで彼女は自信があるわけではない。むしろ強がりなほうだろう。 彼女は常に気を張っている。男だらけの職場で負けないように、職場で気を緩めることは無い。 服装にも気を使っている。他人に文句は言わせない。言われたくないから、言わせない。事実言われたことはない。 この点に置いては彼女は自信を持っている。 しばらくすると課長が店に入ってきた。小さな店だが場所を知らせるように手を振る。課長はすぐに気づきこっちに向かってきた。 「すまんね。こがんとこに呼び出して。」 112 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 58 52 ID 85365FQ6 課長は部下と二人だけになると方言がひどくなる。普段課にいるときはそんなことも無い。しかし課をはなれると、とたんに方言だらけになる。 他の同僚に聞いてもそうらしいので、普段は意識して使わないようにしているのだろう。 「それで、課長、お話と言うのは?」 「まぁまぁ、まずは落ち着かんね。コーヒーもまだたのんどらん。店員さーん。コーヒー、ホットで。」 彼女は気がはやっていた。課長がコーヒーを頼む時間さえもったいないような気がしていた。 辞令に不満があるわけではなかった。だが、何か不穏な空気を一度感じてしまった時点で、 彼女のなかの何かがうずき続けていた。この不穏な空気をどうにかしろと。早く、一刻も早く、と。 「うん、今回の件だが…結論から言ってしまえば、君をおろさざるを得なかった、というこ…」 「どういうことです!?」 「人の話ば落ち着いて聞かんね…うんまぁでもさえぎられたとはいえ結論はわかってくれたと思う」 「だからどういうことかと聞いてるんです!」 「落ち着かんね。ここは署じゃなかとやけん。周りのお客さんとかびっくりしとるたい」 彼女が課長に言われまわりを見渡すと周りのお客さんがびくびくしながら彼女達のほうを 見ていた。 彼女はかなり取り乱していた。自分でもらしくないなと感じていた。深呼吸。息を整え、落ち着きを取り戻す。 「それで、なぜ、私を外さざるを得なかったと?」 「このごろ休みとっとる?」 「え…と…」 彼女は考えてみた。そういえば、最近は課の管轄外であるような事件にも手を出していた。 主に女性警官が手がけてる物には積極的に手を貸していた。そのため毎日残業。休みなんて確かにここ最近とってなかったような気がする。 「取ってない気が…します」 「やろう?ここ最近よう働いとったけん、心配しとっとさ。いつか倒れんやろかと。」 「心配要りません。私はまだ20代。十分若いです。体力もみなぎっています。お心遣いはありがたいのですが…」 「本人は大丈夫って言っても実際はどうやろか?まぁここらで一度小休止してみんね。 この事件、市長が撃たれてる犯人が捕まってるとはいえ、背後関係をつかむのには結構な労力がかかるだろう 。そがんとの捜査入れたら、また疲れがたまってしまう。もしかしたら今までとは比にならないね。 やけん、上司としては絶対に入れられん。そういうことだ。」 課長の言葉一つ一つには重みがあり彼女は何も言い返せなくなった。 「そうですか…残念です」 「言いたいことはわかるさ。このごろ男にあんまりいい目で見られとらんけんその圧力の合ったと思っとるとやろ」 113 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 18 59 49 ID 85365FQ6 「!!」 「わからんとでも思うとったと?まぁあそこまで言ってると、言われてるほうもさすがに怒りたくはなると思うが…」 「課長は…課長はどう思ってるのですか?」 「何を?」 「その…私の事」 「優秀な部下さ。確実に仕事をこなしてくれる頼りになる、ね。いい部下をもってると思ってるよ。これでもまだ一年目で若い。 将来はうちの課のエースになってほしいって思ってる。他の連中も一緒さ」 「じゃぁ…」 「どうして影で何か言うのかって言いたかとやろうけど、まぁあれさ、敬意さ。」 「敬意?」 「そう、敬意。みんな驚いとっとさ。一年目でこがん結果ば出すとは思うとらんやったけん。 おいたちも頑張らんばって思って自分の事を奮い立たせよっとさ」 「わからないです…さっぱり」 「わからんやろうね。でもこれが男ってもんよ。そこは耐えてほしい」 「…でも」 「あぁもうわからんとね?課の連中はあんたの事は信頼しとる。もう、この話は終わり。よか?」 課長は厳しい口調で、でも顔は穏やかな笑顔で言った。彼女の完全に思い違いであり、負けである。そのことを彼女は自分自身で認めた。 「はい、ありがとうございます。」 まったくこの課長は頼りになるのかならないのかはっきりしてほしいと彼女は思った。でも今はため息ではなく笑みがこぼれる。 苦笑い気味の笑いが、自然と。 「何がおかしかと?」 「課長って方言すごいですよねぇ、課では普通に標準語なのに」 「あぁもう仕事中は方言はださんごと訓練しとるからね、でんとよ。 でも普段はこのとおり。本当は普段も標準語にしたかとやけど、どがんしようもなかとさね。」 課長も苦笑い気味に語った。 ふたりの少し抑え気味の笑い声が店内に響いた。 「課長!本日はすいませんでした。ここら辺で帰ることに…」 「あぁ~ちょっと待たんね」 彼女は席から立ち上がろうとしたところで課長に呼び止められた。 「何でしょうか?」 「実言うと君にはまだ言ってないことが…う~ん」 課長の署での何かあるような雰囲気が戻ってきていた。彼女は少し不安になった。 さっきの話題以外に何か言いにくいことがあるとは想定外だったからだ。彼女は課長に尋ねてみた。 「あの、はっきり言ってしまわれたほうが…こちらとしてもいいですし…」 課長は本当に重たそうな口を開き答えた。 「君にはパートナーがつくんだよ。正確に言うと今回の事件でもう一人刑事が外れる」 114 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 19 01 20 ID 85365FQ6 彼女はなぜ課長が重々しく言うのかわからなかった。ただだれかと組めというだけなのに。 「あら。そうなんですか。誰なんですか?私と組む人は」 「…怒らんよ」 「怒りませんよ。何をそんなにビクビクしているのですか?」 「じゃぁ言うよ。君は増田君と組んでもらう。2人で事件等が起きたら解決のために働いてもらうということだ。 期間はとりあえず市長銃撃事件の捜査がある程度落ち着くまでだ。もう一度言うけどこれは辞令ね。」 その名が、辞令が告げられた瞬間、彼女の中の時間が止まった。事態が飲み込めない。 「私が…組むのは…増田君…? へぇ…っていったいどういうことですか!!!!!!!!!!!!!!」 「…ほら怒った。だから言いとぉなかったっさ…」 課長がぼやく。しかし彼女ははぼやけない。いったいなんであんな奴と組む羽目になってるのか。 いったいどういうことなのか、彼女にはまったくわからなかった。増田君というのは署内一のトラブルメーカーで有名な男だった。 そんな彼を押し付けられた…そう考えると彼女のなかで怒りが生まれてきていた。 「お断りします!そのような辞令、受け取れません!」 机を叩きながら彼女は激しく抗議する。 「いやまぁそういわんで。貴重な体験だと思って…」 「何が貴重なんですか!あんなのと組んでプラスになることなんてあると思うんですか!?プラスになることなんて、何もないでしょう!?」 彼女の言葉は憤りと嫌悪にあふれていた。まるで、この世の終わりがきたかのような振る舞い。 静かな喫茶店の中では異質な空気が2人の間では流れていた。 「それはやってみないとわからんとじゃなかかなぁ。意外にうまく…」 「行きません。万に一つもそういう可能性はありません。」 彼女の拒否反応はすさまじいものだった。 課長のなだめるための言葉を言ってしまう前からさえぎってばっさりと否定するほど素早い反応で、抗議している。 まさにヒステリーとはこのことなのだろうかと課長は思った。だがどうしていいかはわからない。しかたなかうなんとかなだめようとすることにした。 「いやまぁね。決め付けはいかんよ。決め付けは。彼だって一人の刑事だよ。とても仕事熱心な」 「あれは仕事熱心とはいいません。ただ邪魔しているだけです。」 だが彼女はきっぱりと言い放つ。課長も負けずに反論するが、その口調は人柄が出てか、穏やかなものであった。 そのため彼女に圧倒されてるような印象になってしまう。 「まぁ確かに邪魔になることは多いが…彼は彼なりに頑張っているとじゃなかと?」 「無能な人間は動かないほうが有益です」 冷たい直子。暖かい課長。二人の出すオーラはあまりにも相対するものであった。 115 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 19 02 53 ID 85365FQ6 「彼は有能だとおもうけどなぁ…まぁ性格面に問題あるのは否定しないが。」 課長はあくまで穏やかな物言いである。まるでなだめるように、しかしうまくかわしながら反論する。 しかしわずかな隙も彼女は見逃そうとしない。そこにほころびがあるかも?と思ったら迷わずに突っ込むのが直子の持ち味だ。 だからこそ、他人が思いつかないような着想を得。事件の解決へと導くのだ。 また引くのも速い。ここまで問題がさほど発生していないのも、未然に防ぎきってるからだ。 彼女は流れを読むことを得意とするとも言われる。こと事件捜査においてはそうだ。 ここぞというときの判断は課長以上のものがあるとも評判である。 このときもそうだ。このまま課長を説得できる流れが来たと彼女は感づいた。 「問題がある時点で、もはや有能とはいえません。有能な人間とは完璧でなければなりません。」 この一言。意図は課長から譲歩を引き出すこと。そこを突いて一気に切り崩す。 もっとも、今言ったことはただの彼女の持論であり、特にあいての事を考えていたわけではないのだが。 だが課長も課長だ彼女の高圧的な言い方にもひるまずに課長は食いつく。 「でもさ、それじゃ社会はうまく動かんとじゃなかと?」 「なんでですか?」 「完璧な人間なんてそういるわけじゃなかやろ?」 「そうですが、なにか?」 「君の理論ならば有能な人間しか働くな、ということになる。そうなると働ける人はとても少ない人数になるとじゃなか?そうなったらどがんすると?」 「すこし意味が違います。私の理論ではそうなりません。」 「じゃぁどがんなるとね?おいにはそがん風にしか聞こえんやったとやけど」 課長の訛りはますます激しくなってきていた。 「無能な人間も働きます。ただし、彼らは、多くの事を出来ません。だから与えられ役割もそれ相応なものになります。」 ここまではまだ想定内。課長がここまで暗いついてくるとは思いもよらなかったが、だが反論は用意してある。 否、彼女にとって反論の中身云々は本当はどうでもいい。要は相手を圧倒し、こちらのほうが少しでも正しいと思わせればよいのだ。 その時点ですでに勝機は十分に見えている。あとは切り崩していくだけ。直子は課長の事だからこれで今回もうまく行くと思っていた。 「果たしてそうかな?」 ところが課長はなおも食いつく。まるで経験豊かな老人が若者に諭すように。実際彼女は若者であるのだが。課長は穏やかな口調で続ける。 「有能か無能か評価を下すの誰かな? 例えば仕事であれば上司、スポーツであれば監督、ファン…これはあくまで相手からみた視点での評価だろ? その人から見れば無能か有能かだけであり、その人の本質を表してるわけではない。」 訛りが消えた。直子にとって初めての経験である。 「えぇ、そうですわ。でもその人の一面を表すものではありますよね。」 直子は苦しくなっていた。正直すぐにどうにでもなると高をくくってしまったのが間違いであった。なにも考えていなかった。 このぐらいの質問、来ることぐらい想定できたはず。でも今回は…。ここから先はアドリブだ。 だがそのうち脳がフル回転してきて、そのアドリブでも十分なものになるだろう。彼女はいまだわれに勝機はあり、と信じていた。 116 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 19 06 27 ID 85365FQ6 「そう一面を表すもの。でもそこには評価を下す人の恣意が加わることも加味しなければならない。」 「しかし大多数から下された評価であれば?恣意などで大多数の意見を纏め上げることが出来るでしょうか?」 彼女はとにかく質問攻めをすることにした。いつかは相手が答えに行き詰る。そのときを待って。だが課長は行き詰らない。 まっすぐに、ぶれた形跡もみぜず、回答する。 「出来る。君は郵政選挙というものを見ただろう?あれがまさにいい例だ。あの選挙は争点意図的に作られた選挙だ。 そして見事に大衆はその争点のみを見てくれた。小泉純一郎の勝利でもあったが、あれはマスコミの勝利だ。 まだ利用価値があるとおもわせたマスコミのな。あの時、いわゆる郵政造反組は悪役にされ、そして敗北したものもいた。 悲劇のヒロインになり勝利したものもいた。マスコミが報じた姿がそのまま評価になる、そして結果に出る。 誘導されたとは知らずにな。ま、所詮大衆の評価なんてそんなもんだ。簡単に誘導できる。」 堂々とした立ち振る舞い。その姿は彼女を困惑させる。そのことを表すように、彼女の口調から徐々に威圧感がなくなってきている。 だが彼女はめげない。 「それは論点ずらしです。今自分が言いたいのは」 「結局彼と組みたくないってことだろ?」 図星だ。ここまでうまく論点ずらしをしていたのは彼女のほうだ。回りくどい口調で相手を困惑させる。 そうして撹乱しといてうまく結論を誘導する。そうして立ち回ってきた。が見破られた。 よりにもよって、普段は敏腕と称されるのが嘘に思えるほど昼行灯としていた課長にである。 「わかりました。努力します。」 彼女はあきらめた。これ以上何かをすることはもはや無意味であると考えたのだ。これ以上の悪あがきをする必要は無い。 人がいないといったって、結局その状況が一ヶ月以上続く尾は考えにくいし。彼女は楽観的に考えることにした。 どうせたいした事件も舞い込んでこないだろうし、とも思っていた。 しかしよくよく考えると今日は課長にやられっぱなしだ。頭が回ってないのかな、とでも言い訳したいほどに。 課長も普段からこんな風にしっかりしてればなと彼女は思う。でもそうだったらそうだったで課の雰囲気が変わってしまうだろうなとも。 今の課がうまく回ってるのは課長が表では昼行灯のような状態でありながら裏ではきちんと処理をする、仕事人であるから。 表ではそこまで厳しくないゆえ、課は非常にのんびりした雰囲気に普段は包まれる。 だが裏ではこうしてしっかりと話をする。軽率なミスは許さないし、指示通り動かず失敗しようものならとんでもないことになる。 成果を挙げれば別だが。それゆえ、のんびりとしているとはいえ事件になると空気が変わる。 九州では優秀なほうの部類に入るといわれるこの課はこの課長あってのものなのだ。今日負けたことも考えれば普通の事。 勝てると思った自分が甘すぎたのだ。 優秀とはいえその腕を発揮する機会にはあまり恵まれない。この市では確かに凶悪な事件も起こる。だが年に1回程度だ。 今回の事件が起こってすぐに、またとんでもない事件が来るとは思えない。今 回楽観的に見れたのも軽い事件なら自分ひとりでも何とかやれるという読みがあったからだ。 そう自分一人でやれる程度ならば、相棒なんていてもいなくても問題ない。 むしろいないほうが都合が良い現状、むしろ一人でやれる状況のほうが歓迎である。 市民の皆さんよ、ここぞとばかりに暴れないでくれと思うのは自分勝手だろうが、彼女は心からそう願った。だがしかし、 「そうか。まぁ留守の間よろしく頼むよ。特にちょっと厄介な案件がきていてな…でも君がいるなら安心だ。市長銃撃のほうに全力をまわせるよ。」 彼女の期待を打ち破るかのような声が喫茶店に響いた。 117 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 19 08 08 ID 85365FQ6 声を出したのは課長である。 課長は安堵しきった表情で彼女に伝えた。厄介な案件があると。 彼女の時間が一瞬凍りついた。課長は何かの変な力が使えるのかと一瞬考えたほどだ。 厄介な案件?なんですかそれは?彼女の頭の中は一気にクエスチョンマークに支配された。 「課長…なんですか?その厄介な案件だというのは…」 課長は彼女に尋ねられると、さっきまでの鮮烈な表情ではなく普段の少し弱気な、気のいい人の状態に戻り、少し言いにくそうに語った。 「いやな…うちではちょっと忙しいから扱えない!ってつっぱねたんだが… 向うは向うで、事件性がある、調べろってうるさいんだ。」 彼女はたかに厄介な案件なんだろうなと感じた。人のいい課長が嫌がるのだ。よほどの事件に違いないとまで思っていた。 「それで私達は何をすればいいのですか?」 課長はしばし沈黙した後、簡潔に言い放った。 「…人探しだ。」 再び彼女の時間が止まった。 「課長、いつから人探しがうちの仕事のなかに加えられたのですか?」 「知らん。なんかどこも暇じゃないからうちは何人か残すよって言ったら押し付けてきたんだよ 。まったくまだそれなりに若い子なんだからそのうち見つかると思うんだけどな。 ほら、あるだろ?急に旅に出たり。自分探しのたび~なんか言っちゃって。」 「ですよねぇ。で、どういう人なんですか?探すのは。」 「ほい資料」 課長に手渡されたのは捜索届けのコピーを含む数枚の資料だった。 「大事にしとけよ?落としたらしゃれにならんから。」 「…秀樹?」 彼女の表情が一瞬にして曇った。 「ん、知り合いか?」 「え、えぇ幼馴染でして…でもまさか…」 「ご近所さん?」 「はい、結構近いですね。小学校も一緒でしたし。」 「じゃぁなんで気づかんかったと?」 「彼は今は一人暮らししてますから…でも…」 彼女の言葉からは驚きと衝撃が混じった何かが感じられた。 「へぇ。同じ市にすんどっとに一人暮らしね。まぁ親御さんも裕福かごたんけんよかとやろうけどさ。 まぁとりあえずその彼、宮田秀樹が連絡もなしにいなくなったらしい。というわけで探してくれ」 「探してくれって何の手がかりもなしに?」 「手がかりはいつも用意されてるわけじゃないやろ。自分で探さなんばいかんとよ?言わんでもわかっとるやろうけど。 まぁこういうのをやってくれというのも心苦しいが、まぁ数日たったらひょっと出てくるとも思うし気楽にやってよかよ。 心情としては少し気楽にはなれんやろうけど。」 課長は当初はそこまで真面目にはやてくれなくてもいい、と思っていた。人探し程度、軽めにやってもらって、 本来やるべき課の仕事が空き次第、引き継いでもらえばいいや、と考えていた。 しかしここで一つ誤算。行方不明者は彼女の知り合い、しかも幼馴染的な存在のようだあるということ。これは驚きの事実である。 彼女の性格からしてこの事案、本気で取り掛かるだろう。 他に本来この課がやるべき事件がこの期間で起きた場合彼女はどうするのだろうか?また自分達が市長銃撃から戻った後は…? 本来やるべき課から引継ぎを求められた場合は…? 課長は少し迷った。この人探しをやることをいまから不許可にするかどうかで。 この事案は本来ならこの課がやることではない。ただ人がいるから頼んでみようか、と請け負っただけである。 こちらで不許可にして、その請け負った先の課には暇じゃなかったと報告すれば済む話である。しかし、探し人は… 「課長、やらせてください」 課長の思考を断つように彼女が言う。 「この馬鹿を、私が探して説教してやりますよ。どこ行ってたんだとね。人を心配させた代償はきっちり払ってもらいます。」 彼女の言葉にはもう驚きや困惑の色はなく力強さにみなぎっていた。 118 名前:Versprechung ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/09/20(木) 19 11 49 ID 85365FQ6 人物まとめ 松代 直子:N県警の刑事。幼馴染探しに駆られることに 増田君: 直子の相棒となった刑事。トラブルメーカー。 課長:いい人だけど仕事人。 宮田 秀樹:監禁されてる人。直子の幼馴染。 ?:監禁した人。約束がどうのこうのといっている。 今まで出てきた人物のまとめです。あと何人か人物が出ます。 今回はこれで投下終了です。 119 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 21 25 05 ID 6V2fvanv 118 普通に推理小説を読んでいるような気分になった。 と同時にここまで叩かれる増田君が非常に気になる。 どんな登場をするのやら 120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 22 28 31 ID 2j6YuFBn スレ題的にはまだなんとも言い難いな 刑事物語主体でおまけヤンデレにならないかが不安になった 121 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/20(木) 23 01 50 ID y8Pb8RoT 同感 でもGJ 122 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 02 36 32 ID 2YnSFZz4 「あの赤い髪のコ、なんだっけ名前、えーと……」 ……彼女の赤い髪のことは、そりゃあまぁすぐに広まるだろう。私のところまで来るのに、むしろ遅かったくらいだ。 「あきらのこと?」 「ああそう! あきらさん! ……うにゃ、知り合いなの?」 「うん、小学校からずっと同じクラスだったから」 正確には、小学校高学年から、だけど。 「へぇー! そーだったんだー!」 やけに大袈裟に驚くのぞみ。いつでもテンションが上がったまま下がらないから、彼女がいるだけでそのグループは賑やかになる。 「ああ、石橋さん。『悪魔』ね」 玲が呆れたような顔と声でそんなことを呟いた。 「『悪魔』?」 私は思わず聞き返した。あの大人しいあきらが悪魔などと呼ばれているなんて、一体彼女は何をしでかしたのか興味がある。 玲は言う。 「何考えてんのかわかんないけど、あの子自分のことを『悪魔だ』って言ってんのよ。『話しかけるな、私は悪魔だからあなたたちを食い殺すぞ』ってね」 「……どこの中二病よソレ」 かつてのいじめられっ子が高校デビューで電波少女と化していたらしい。 「でもでもあの容姿と合わせて話題性抜群だよっ。あの子かなり美人だしっ」 理子が興奮しながら言う。あきらが美人……そうなのだろうか? 赤い髪にばかり視線が向いていて、彼女の顔をまともに見たことがなかった気がする。 「お腹すいたー」 「……あんたさっきあれだけお菓子食べといて、まだ食べんの? 太るわよ」 「ダイエットするから大丈夫!」 「そういうこと言う人は大体ダイエットしないのよね」 「玲ー、ハッキリ言わないでよー」 「じゃあのぞみんっ、あたしと一緒にダイエットしよう!」 「理子はダイエットする必要無いわよ。ってか細すぎ! 何食べたらこんな風に細くなんの!?」 「えー? あたし細い?」 「細いわね」 「細いっていうか痩せすぎ。もうちょっと食べなさい」 雑談をしながら、学校の階段を降りていく。時刻はもう六時。下校時刻ギリギリだ。 窓の外はうすい藍色ともいうべき暗闇に覆われていて、車のランプやビルのあかりが、夜を迎える街を彩っている。 私は帰宅部だけど、理子と玲、のぞみの三人は美術部の仲間だ。今日は部活動が無いので一緒に下校できる。美術部の活動がある日は、私は他の友達と一緒に帰る。 最近は誘拐事件も多いらしいし、私はなるべく友達と一緒に帰るようにしているのだ。 「にゃ?」 いきなり、理子が変な声を出した。 というか、変な声を出さざるをえなかったのだろう。私が最初に気付いてたら、私が変な声を出していたと思う。 階段を降りたその先、生徒昇降口を目前にした廊下に、赤い髪の女の子が立っていた。 123 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 02 37 32 ID 2YnSFZz4 きみこちゃんのいるクラスは今、体育の時間です。この時間、この部屋にいるのは私とカールクリノラースくんだけです。 私が受けるべきだった授業は英語。けれど、そんなものは関係ありません。あの他人たちは私がいなくても困りはしないのです。 さあ、きみこちゃんの机を探しましょう。 座席表は教壇の上にありました。きみこちゃんの席は窓際の、前から二番目の机です。 ああ、ようやく私はきみこちゃんの親友になれるのです。とても嬉しいです。 カールクリノラースくんは何も言いません。 きみこちゃんの机から椅子を静かに引き出します。これがきみこちゃんがいつも座っている椅子。そう思うと身体が悦びで震えます。 やるべきことをやってしまいましょう。机の中から、筆箱を取り出します。 ずっときみこちゃんを見ていたからわかります。この筆箱は中学二年生の夏休み明けから使っているものです。さすがきみこちゃん、物を大切にする人です。 私は筆箱を開け、シャープペンシルを手に取り、制服の内ポケットに仕舞いました。筆箱を閉じ、元の場所に戻します。 これこそが、私の悲願。これでようやく、本当にきみこちゃんの親友になれるのです。 私が本当にきみこちゃんの親友になった日から少し経ってからのことです。 きみこちゃんが、知らない他人たちとおしゃべりをしています。 きみこちゃんはとても楽しそう。きっと本当に楽しいのでしょう。きみこちゃんが楽しいと、私も楽しくなります。 ! 眼鏡をかけた一人の他人が、分厚い本できみこちゃんの頭を叩きました。 きみこちゃんが痛そう。なんて酷いことをするのでしょうか。 けれど、私にはその明るい部屋の中に入ることはできません。 私が悪魔だから? いいえ、ただ勇気が無いだけなのです。ただ足を踏み入れて、きみこちゃんになんてことをするの、と言うだけのことができない臆病者です。 私はただ、教室の入り口からそっと、きみこちゃんの様子を見ることだけしかできないのです。 ──本当に、それだけ? 誰かが、そんなことを言った気がしました。 わかっています。カールクリノラースくんです。 カールクリノラースくんの言葉は、私の中から余計な感情を消し去ってくれました。 そうだ、勇気を出そう。勇気を出して、きみこちゃんに会おう。 結局私はその部屋の中に入ることができませんでした。 だから、待ちましょう。階段を降りたところできみこちゃんを待ちましょう。 とても楽しみです。ようやく、きみこちゃんに会える。 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 02 40 11 ID 2YnSFZz4 羊と悪魔、続きです。 きみことあきらの視点一つずつをワンセットで投稿するのは、読んでる人にもウザイだろうと思うので、 次からはまとめて書いたものをまとめて投稿します。 にしてもあきら、ヤン状態にしかなってねぇよ。どうやってデレさせよ。 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 09 08 55 ID 8cYvtwfD 124 GJ!! がんばってデレさせてください 126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 13 00 01 ID 6cUbTE45 個人的には結構デレてるように見えるんだけどなあ。 ただ、想っているだけでデレな行動に出ていないから その辺りが足りないって事かな。 127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 14 27 57 ID zvZ3s/iJ 124 GJ どういう行動に出るのか期待してます 128 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/09/23(日) 05 58 57 ID dbm6zqBe 保守 129 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 24 59 ID azTAyJyY 新参が処女作投下 130 名前:溶けない雪[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 28 28 ID azTAyJyY 「どうして私じゃ駄目なの?ねぇ、何で?どうして?教えてよ……………」 今僕の前に一人の女性がいる 夕方の学校の屋上で、目の前の女性は泣いていた。 いや、僕が泣かしたと言った方がいいだろう。 普通なら男が女を泣かせば大概は男は世間的に最低野郎になるのが普通。 しかし、今の状況の場合では違う 確かに僕が彼女を泣かせたのは事実だろう。でも僕は仕方ないと思う。 彼女に告白され、そして振ったのだから 1 彼女と初めて会った時は僕こと坂田 健二がめでたく高校に入学し、一年間自らの教室になる部屋に足を踏み入れた時だった。 教室に足を踏み入れた時、一人の女子に目がいった 彼女は窓際の席に座っていた。 この教室に在籍している生徒は37人、そのうちの20人が女子という事になっている。 なので、別に教室に入った瞬間に女子に目がいったとしても別に女子の方が人数が多いから別によくある事だし、別段大した事もなしに直ぐに視線を外すのが普通だろう。 それがなんとなしに目が入っただけという理由ならば 131 名前:溶けない雪[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 30 35 ID azTAyJyY 教室に足を踏み入れた時には彼女を含めて、14、5人程が視界に入った。 だが、彼女はその14、5人の一人に過ぎないのに即座に彼女に目がいった。 何故そうなったのかは、頭が彼女に目がいったと認識してから分かった 白、なのだ 肌もそうだが、視界に入る人間の事を忘れさせる程の美しく、長くて白い髪、それが彼女に目がいった理由なのだ。 まるで雪で作られたかのような純粋なる白き髪 正直、こんな何のへんてつもない場所に居るのは場違いだと思ったりした そんな彼女に目が行って見つめる事数秒、 「よう健二、お前も同じクラスだったんだな、まぁなにはともあれ……って何で入り口でつったってんだ?」 そう言いながら一人の男子が僕に近づいてきた。 はっと我に帰り、その一年前からの友人である雲海 良平に返事をした 「いや、なんでもないよ。少しボーッとしちゃってさ、まぁまたよろしくたのむわ」 そう言いながら黒板に書いてある席順を見て、自分の席にとりあえず鞄を置く事にした。よく考えれば初めて見るような人をまじまじと見つめるのはどうかという事に気付いて、少し自己嫌悪に陥ったりした。 132 名前:溶けない雪[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 31 50 ID azTAyJyY さて、自分の席について2つ気付いた事がある。 まずは先ほど見つめてしまっていた女子が自分の席の左斜め上に座っている事、そしてもう一つは、彼女の周りに人が居ないという事だった。 教室を見ると、入学したばかりという事もあり、皆は新しい友達作りに励んでいた。 いわばこの最初の友達作りをいかに上手くいくかによってこれからの学校生活が左右されると言っても過言ではない。 そのため、ほぼクラスの全員が教室のところどころに数人で集まって話ている。 だが彼女はその「ほぼ」に当てはまらなかった。 いや、彼女だけがと言うべきか 一人で何をするでもなく、彼女は窓の方を見てた。 恐らく何もする事がないから空でも見てるのだろう。 改めて彼女を見ると髪だけじゃなく、整った顔立ち、落ち着いた雰囲気、髪は白に対して黒であった。 彼女について感想を言うなら恐らく100人中100人がこう言うだろう。 美人と、 彼女は美人だからこそ何で周りに誰も居ないのかが気になった。 こんなに美人なら普通は彼女から声を掛けなくても美人だねとでも言いながら声を掛けられるものだと思う。 133 名前:溶けない雪[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 33 45 ID azTAyJyY でも、逆に美人すぎるからこそ声を掛けずらいというのもあるのかもしれない。 それでも彼女から声を掛ければ直ぐに打ち解けられる様に思える。ここまで考えて、はた、と気付いた、自分が声を掛ければいいじゃないかと。 別に友達になれないにしてもこんな美人と話して損をするなんて事はあり得ないだろう。丁度これから黒板横で輪を作ってる雲海のとこに向かうのでついでに声を掛けるのもいいだろう。 僕は席を立ち、窓の方に向いている彼女の後ろから 「綺麗な髪だな、こんなに綺麗な髪は初めて見たよ」 いきなりで何だが、言って後悔した。 いきなり挨拶もなしに背後から声を掛けて違和感を感じない方がおかしい。 何より自分に言われてると気付かれないでこっちに振り向かなかったらかなり虚しいじゃないかと しかしそんな考えはきゆうに終わり、彼女はややあっけに取られていたがこちらを向いてくれた。 「そう、ありがとう そんな事言われたのは初めてだよ」 ん?初めてだったのか……… 案外皆言わないものなのかな? 「そうなの?あまりの美しさに見惚れた位だよ」 思い返すとかなり恥ずかしい台詞だ 134 名前:溶けない雪[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 35 50 ID azTAyJyY しかし、もし友人が居なかったと仮定するなら、彼女程ではないにしろ、声を掛けるのが恐く感じただろう。 たとえそれが美点になるとしても、他の人とは違うという点を持っている彼女はさらに恐いのだろう 「大丈夫だよ 今日なんかは皆心をオープンにして友人を作ってるからね。 声を掛ければ大丈夫だから自信を持てばいいよ」 「…………うん、そうだね。 ありがとう、頑張って声掛けてみるよ」 少し悩みながらも彼女はそう答えた。 性格も悪いみたいじゃなさそうだし、きっと直ぐに友達が出来るだろう。 「じゃあ、頑張ってね」 そのままの流れで友人のとこに向かおうとして、 「あのさ、名前を聞いていいかな?」 まさか女子に名前を聞かれる日がくるとはな「坂田 健二だよ、君の名前は?」 「私は水無月 雪梨」例え、この後、HRでの王道、自己紹介で聞く事になるのだとしても、こんなに綺麗な人と名前の交換が出来るなど、充分幸先の良い始まりじゃないだろうか? 135 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/24(月) 23 37 06 ID azTAyJyY 投下終了 初投稿だが、しょうじきに乱文、テンポ悪い、面白いとこあった?の見事な三拍子感が否めない だが後悔はしてない 何かアドバイスとか貰えれば嬉しいです スレ汚し失礼しました 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 37 57 ID N2mXTG29 sage 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 53 05 ID hWuPVcBZ 135 GJ!! 初めての割りにかなり上手いと思うよ 続きが気になる 138 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/25(火) 00 03 54 ID azTAyJyY 見直したら修正点orz 髪は白に対し黒 ↑ 瞳の色は白の髪に対し黒だった です 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 00 07 39 ID 4RTA4Mqv 135 まだ始まったばかりだけど先が楽しみ、ガンガレ! 続きを待ってる。 あと、メール欄に半角でsageと書いてくり 140 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/25(火) 00 14 30 ID W8xw05QG 139 すまない 以後気をつける 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 00 47 58 ID h4iq1541 アルビノ 142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 02 25 43 ID GN5fG0qC 140 (°ω°)・・・ 143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 05 26 45 ID gOa3+DVV 142 (゚ω゚)ヾ(ω` ) 144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 05 45 50 ID gHpegXWP 135 良いねぇGJ! 続きが気になるよ 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 05 59 17 ID nYS35BTh アルビノの人の目は赤くなるはず 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 06 46 00 ID tBIywWZJ 135 GJ 結構良かったよ それと お・・・・・・・男に本気で萌え と思ったのは始めてだ・・・・・・・ ドヂマンセー 147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 08 21 53 ID 0OMTqsdK 135 gj 処女作でこれは全然上手い。 アドバイス欲しいとの事なので気付いたとこ一個挙げます。 130の前文と次の段落で文章の形が同じ。 しかもそれが話をぶった切る形なもんだから少しもたついた感じになるんじゃないかな。 自分でも言ってたテンポ悪いってのはこれで大分直るかも。 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 08 42 02 ID fW1angxg 145 まあそれを言い出したら…な 誰も声をかけないのも、髪が綺麗だと言われないのも疑問の余地がなくなるしな 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 10 20 46 ID W8xw05QG 145 アルビノググってきた 確かに狙ってはないにしろ目以外はアルビノだた 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 15 49 14 ID gbhWjLn1 135 GJ、そして乙。処女作とは思えない深みを感じた。 アルピノなんだけど黒いカラコンをつけたか、 偶然白変(↓参照)して生まれたからなのかが気になるところ。 ttp //ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E5%A4%89%E7%A8%AE
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651 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/08(土) 23 14 22 ID 2lKKbm48 バンホーテンココアフイタ 652 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 00 14 13 ID KM5y4rDc まさかのバンホーテンwww 653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 00 34 46 ID Sq8w59Qs 投下GJでした クソルアミバ自重wwwww 654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 48 53 ID 5RvSt8vX クソル VS QMZですねwwwww分かりますwwwww 655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 50 06 ID 4ArDNZ+S VIPじゃねーんだから草生やすなよ 656 名前: ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 54 18 ID Hb+DCbze 続きです。 超ロリ注意。エロ注意。 657 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 55 11 ID Hb+DCbze 「この馬鹿。ここにいたのか。千歳とさんざん探したんだぞ」 路地裏で泣いていたここあの背中に、ナギさんの声が投げかけられた。 「私に負けた程度でここまで落ち込むとはな。子供らしいとは思うが、あまり褒められたものじゃない」 ナギさんはここあの腕を掴み、引っ張る。 「放して!」 思わず、強引に振りほどいてしまった。 「……なにを怒っている。私が手加減してしまったから、プライドに傷がついたのか? なら、謝罪はするが……」 「そうじゃない……そうじゃなくて……」 「なら、なんなんだ」 「ちとせおにーちゃんを、取らないで……」 「……」 意味がわからない。なんでこんなこと、言っちゃってるんだろう。 ここあは、年齢の割りにはかしこい。なのに、なんでこんな、変なこと。 だって、ちとせおにーちゃんがナギさんのこと好きなのに……。 なんで、ここあはナギさんのこと、恨んでるの……? 「お前も、『そう』なのか……」 「え……」 「不幸だとは思う。だから、私はもう、擦り切れたよ。でも、お前は諦めていないんだな」 理解できない。 ナギさんが何を言っているのか。 「そんなんじゃ……そんなんじゃ、わかんないよ!!」 分からない。 ここあがこうして、ナギさんに殴りかかってく理由。 分からない。 658 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 55 41 ID Hb+DCbze 「っ!」 ナギさんは素早い身のこなしで初撃をかわし、距離を取った。 「逃げないでよ……ちとせおにーちゃんを奪って、逃げないで……!」 なんでだろう。 なんで、ここあはこんなにわがままなんだろう。 分からない。 だけど、ナギさんを殺してしまいたい。そんな気持ちが今は、何よりも重要だった。 ナギさんを倒しても、ちとせおにーちゃんが自分のものになるわけじゃない。 でも、負けたくなかった。 負けたままじゃ、ここあは前に進めない。 「蒼天院炎雷拳……瞬影烈脚!」 縮地法と攻撃技の同時使用。 加速から蹴りに繋げる、ここあの得意技。 常人では目視不可能の速度でナギさんに迫り、右斜め下から蹴り上げる。 「それがどうした」 ナギさんは全く動じずにかがみこみ、ひょいとかわす。 「遅すぎるぞ」 ナギさんの脚がここあの軸足である左足をちょいと蹴り、ここあはバランスを崩した。 「くっ!」 ここあはとっさに身体を後ろに逸らし、後方に空中回転してさがった。 着地して、体勢を整える。 「何を混乱している。私を倒しても、千歳を手に入れることはできない」 「でも……でも……!」 話が頭に入ってこない。 659 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 56 12 ID Hb+DCbze こいつは敵だ。そんな囁きがここあの頭のなかで渦巻いて、それ以外の声を全て掻き消していた。 「でも……ここで勝たなきゃ……前に進めない!」 構え。これは大技。 危険だから、理科子おねーちゃんも教えてくれなかった。だから勝手に見て覚えた。 「蒼天院炎雷拳奥義……」 再び高速で接近する。縮地法はあくまで移動技であり、攻撃技との併用はかなり限定される。 けど、ここあはほとんどの技を移動中に出すことができる。 これは、理科子おねーちゃんにもちとせおにーちゃんにもできない、自分だけの力。 付け焼き刃の大技でも、予備動作を高速移動でかき消せば当たる。 『攻撃を当てるスピード』。このことに関しては、ここあは誰にも負ける気は無い……! 「天翔……神雷覇!!!」 全身の闘気を凝縮し熱にまで転化されるほどの圧倒的な衝撃。 空気を一瞬で膨張させ、その爆音は『雷』にも似た力強さを感じさせる。 これが、『蒼天院炎雷拳奥義 天翔神雷覇』。 これが当たれば、人体くらい余裕でこなごなになる。 ナギさんはこのおそらく反応している。しかし、この技の性質までは見切っていない。 余裕の表情で、防御姿勢すらとっていない。 ――殺せる!! 見事に計算されたコースで、ここあの拳がナギさんの腹部にめり込んだ。 凄まじい爆音。ナギさんの華奢な身体は、一瞬で吹き飛んでしまうだろう。 660 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 56 42 ID Hb+DCbze ……? ナギさんは、顔をここあにむけ、さっきと同じ。 ――意地の悪い、笑み。 「これが、お前の本気か」 ……そんな。 「教えてやる。『一撃必殺』とは、こういうことだ」 ナギさんが拳を握りなおす。 まずい、防御しないと―― 「――ぇ?」 そう思考したときには既に、ナギさんの拳がここあの腹部を捉えていた。 人間の脳の伝達速度ではおよそ捉えられない、ここあの縮地法なんて比較対照にすらならない。 暴力的な速度。 「……負けちゃった」 十五メートルほどふっとばされて、水たまりに落ちた。 路地裏で、しかも舗装されていたから、少し前の降水が乾いていなかったのだろう。 冬だから、当然冷たい。 でも、今のここあのこころのほうが、ずっと冷たかった。 ――ここあ、負けたんだ。 661 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 57 13 ID Hb+DCbze 「おーい、ここあー!」 ちとせおにーちゃんの声。ここあを探しに来てくれたんだ。うれしい。 「千歳か。こっちだ」 ナギさんがちとせおにーちゃんを呼んだ。すぐに、ちとせおにーちゃんは路地裏に姿をあらわした。 「……ここあ! なんでこんな濡れて……!」 「それは私が……」 「えへっ、ちょっと転んじゃって、水たまりに……」 ナギさんの言葉を遮って、嘘をついた。 ナギさんに負けたなんて、知られたくなかった。 たぶん、真実を知ったら、ちとせおにーちゃんはナギさんの方を叱るだろう。 でも……だからこそ、言いたくなかった。 「そうか、すまん。俺がちゃんとしてれば……」 ちとせおにーちゃんは、全然悪くないのに謝った。 わからない。全然わからないよ。 悪いのはここあで、ちとせおにーちゃんは悪くない。 「……なんにしろ、そろそろ私は失礼する。まだ山田と戦っていないんでな」 ナギさんはそう言うと、さっさと歩いてシューティングスターに帰った。 ずぶぬれのここあと、おにーちゃんだけが残された。 662 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 58 00 ID Hb+DCbze 「……くちゅん!」 「あーあ。お前、風邪ひいたんじゃないのか?」 「そうかも……くちゅん!」 恥ずかしい。ちとせおにーちゃんにずぶぬれで風邪っぴきの、こんな惨めなとこを見せちゃった。 負け犬で、わがままで、最低だ。 自分では賢いと思ってたのに、ここあはとんだお馬鹿さん。 「ったく、しゃーない。家まで送ってやる。ほら、背中に乗れ」 「……でも」 「子供なんだから、わがままになれ」 「……うん」 ちとせおにーちゃんにおぶさると、ちとせおにーちゃんはいきなり全速力を出した。 ちとせおにーちゃんの縮地法。速い。ここあとは大違い。 すぐにここあのうちに着いた。 「おとーさん、おかーさん。……まだ、帰ってないの?」 鍵を開けると、電気がついていなくて、人の気配も無かった。 玄関の外で待っていたちとせおにーちゃんに、事情を説明する。 「……だから、ちとせおにーちゃん、ここあと一緒にいて……」 また、わがままを言った。 ここあは、駄目な奴だ。ちとせおにーちゃんのこと好きなのに、頼ってるだけ。 弱い。 何もできない。 「……わかったよ。俺は、保護者だからな」 ちとせおにーちゃんは、凄く優しい目をここあに向けながら言った。 その姿に、ここあの心臓はどきんと跳ねた。 663 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 58 31 ID Hb+DCbze 「こけちゃったから、身体、痛くてうごかないよぅ……。ちとせおにーちゃん、脱がせて」 濡れた服は脱ぎにくい。半分は本音だった。 でも、もう半分はただのわがままだった。 「脱がせろって、お前、俺に捕まれってか?」 「……くちゅん!」 「……」 震えるここあを見て、ちとせおにーちゃんは困った顔をしながらも、ここあの服に手をかけてくれた。 べったりと重くなって張り付く冬ものの上着を脱がし、洗濯籠に入れていく。 ひらひらした子供っぽいスカートも、今は脚に張り付いている。それもちとせおにーちゃんはゆっくりと脱がした。 上は肌着、下はぱんつ。まだブラをつけていないから、これで残り一枚ずつ。 ここで、またちとせおにーちゃんは躊躇した。 「……おにーちゃん……さむいよう」 震える声で言った。半分、演技だった。 ちとせおにーちゃんは、意を決した様子でここあの肌着に手をかける。 「ほら、ばんざいしろ」 ここあが両腕を上げると、一気に取り去った。 ここあの膨らみかけの胸が、今はかがんでいるちとせおに―ちゃんの眼前に晒しだされた。 ちとせおにーちゃんはそれをばっちりと見てしまったと自覚したあと、急に顔を赤くして目をそらした。 「ぱんつも……お願い」 ここあの懇願に、ちとせおにーちゃんはまたここあを見た。そうしないと脱がせられない。 664 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 59 01 ID Hb+DCbze ああ……ちとせおにーちゃんがここあの裸の胸をみてる。 なんだか、恥ずかしくて。むずがゆくて……。 でも、ちょこっとだけうれしくなった。 濡れて透け透けになって、しかも肌にしっかり張り付いた白いぱんつ。たぶん脱がすのは難しい。 いちいち引っ掛かるのを、ちとせおにーちゃんは強引にじゃなく、丁寧におろしていく。 ゆっくり、ゆっくりと、ここあのぱんつを脱がしていく。 ちとせおにーちゃんの視界には、もうここあの大事なところが見えているかもしれない。 恥ずかしい……。 「足上げろ」 「う、うん」 一番下までおろされたぱんつから、脚をひきぬく。脚を上げると、本当にちとせおにーちゃんの位置からここあの大切なところが丸見えだった。 むずがゆい。胸の奥になにかもやもやしたものが湧き上がってくる。 緊張感から介抱されたのか、ちとせおにーちゃんはふぅと息をつき、下着を洗濯籠に放り込んだ。 「全裸のままじゃこじらせるぞ。さっさとシャワー浴びてこい。そのあと寝ろ」 「うん」 一緒に入ろうって言おうとしたけど、それは無理だと思った。 それに、今のここあは変だ。ちとせおにーちゃんに近づきすぎたら、もしかしたら……。 おかしく、なっちゃうかも。 665 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 01 59 36 ID Hb+DCbze シャワー室。ぺたりと座り込み、シャワーを出す。 あったかいお湯が気持ちいい。 「……やっぱり、もやもやする」 ぽつりと呟く。お風呂場の中で響いて、ここあの耳の中で無意味に反響する。 「……おまた、あついよぉ」 分からない。 なぜこんなことになるのか。 さっき、ちとせおにーちゃんに服を脱がせてもらったとき。 たしかに、感じたもやもや。 それは今、ここあの女の子の部分に影響を及ぼしていた。 触って確認する。 じめっとしめっている。 さっきの水たまりのせいじゃない。指にからみつくこの液体。 「……これが、あいえきっていうのかな……?」 気持ちよかったらでるお汁。ここあはおませさんだから、知っていた。 「さっきちとせおにーちゃんに服脱がされて、おっぱい見られて……気持ち、良かったんだ……」 ここあは、変態さんなのかな。 不安になる。 でも、もう後戻りはできない。 指で、そこを撫でる。今まではほとんど触ったことが無い。 「はぅ!」 びくっと、新鮮な快感にここあの身体が跳ねた。 「ふぅ……ふぅ……」 だめだ。こんなの……。普通に、身体洗って、さっさと寝よう。 息が荒くなってきた。たぶん、風邪がこじれる前兆。興奮なんてしてないもん……! ここあは、えっちな娘じゃないもん。こんな、こんなこと……。 666 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 00 06 ID Hb+DCbze シャワーを再び当てる。 暖かくて、やっぱり気持ちいい。皮膚を撫でるそのお湯の感触が、たまらない。 ――これ、おまたにあてたら、どうなるかな……? 一瞬、邪悪な考えが脳裏を過ぎった。 なんでこんなこと考えてしまったんだろう。 シャワーはそんなことのために使うものじゃない。これは、悪いことだ。 でも……。その誘惑に、ここあは耐えられなかった。 脚をゆっくりと広げる。そんな背徳的な行動にも、自分で興奮してしまった。 そう、ここあは興奮しきってしまっている。 ちとせおにーちゃんに服を脱がされて、たぶん「えっちをこれからする気分」と錯覚しちゃったんだ。 恋人でもないちとせおにーちゃんで、勝手に変な妄想しちゃったんだ。 ……馬鹿だ、ここあは。 でも、やめることができない。 広げてあらわになった大切な場所に、シャワーを当てる。 「んあっ!!」 全身が大きく跳ねた。さっき指で触ったときよりも、何倍も大きな快感。 「うっ……ん、あぁ……ひっ……ぐぅ……うん……!」 今まで出したことの無いような声を漏らしてしまう。 肺から空気が押し出され、自然に声が出るんだ。それほど、気持ちいい。 「ひぁあん……!!」 浴槽内に寝そべってしまう。不潔だとはわかってる。変だって分かってる。 でも、とまんないよ。 「ちとせ……ちとせおにーちゃん……気持ち良いよぉ……ここあ、変態さんだよぉ……!」 腰が浮いて、脚を思いっきり広げてシャワーを近距離で当てていく。 その部分から全身につたわる、電気みたいな衝撃。 脳をとろけさせて、ここあを駄目な子にしていってしまう。 「だめぇ……こんな……ここあ、だめだよぉ……」 でも、勝手に身体が動く。片手でシャワーを押し付けながら、あいた手で胸を掴んだ。 乱暴に刺激する。乳首をつまみ、くりくりと弄りたおす。 ちとせおにーちゃんの視線の跡が、焼けるように快感を押し付けてくる。 腰も勝手に動き出した。行き場の無い欲望をどこかに求めるように、くねくねと前後運動を始める。 たぶん、男の人を――ちとせおにーちゃんを、もとめている。 667 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 00 36 ID Hb+DCbze 「ちとせおにーちゃん……みないでぇ……」 見せたくなかった。こんなここあの駄目なところ。 おまたをひらいて、シャワーで快感をむさぼって、ちとせおにーちゃんに見られた胸を弄って、腰を勝手に動かして。 まるで、動物みたいな、馬鹿みたいな光景。見せたくない。 でも、同時に見せたくもあった。 ちとせおにーちゃんに裸を見られて、ここあはその気持ちよさに気付いてしまった。 その快感が、今のここあの行動を導いてる。 何よりも気持ちが良かったのは、たぶん今のこの行動自体より、ちとせおにーちゃんに見られたという事実。 なら、今この瞬間の痴態を見られたら、どうなってしまうのだろうか。 想像しても足りない。 「……ふぅ……あ、ふあぁ……ん……なんか、きちゃううぅ……!」 何かが。 もやもやしたものが、全ておまたの中に集まってる。 子宮らしきところがきゅうきゅうと『何か』をもとめ収縮して、その中でここあの欲望も渦巻き始めた。 「ふぁ……あぁああぁ……ひぃあああああああああああああああん!!!」 とてつもない大声をだして、ここあはのけぞった。 浴槽のなかでのたうち回り、唾液を撒き散らしながら身体を痙攣させ、叫んだ。 「だめぇ……だめっ!!! あああああああああ!!!」 668 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 01 07 ID Hb+DCbze 長い、長い痙攣。頭の中が真っ白になって、冷静さを失う。 おまたが凄く熱くなって、そこからどろっとした液体が流れる。 ――汚い、流さないと……。 どうして、そんなことを考えてしまったのだろうか。 ここあは、シャワーをさらに押し付けた。 「――っ!? そんなぁ、だめえええええええええええ!!!」 第二波。 ここあは、まだ自慰に関する知識と、絶頂が連続してくる状態を知らなかった。 だから、異様に快感を長引かせてしまった。 「ふぐぅ……うあ、はっうぅ……ぅああああん……あああああああああああ!!!」 獣のように激しく、乱暴に自らの身体をむさぼった。 乳首を指ではさみ、ひっぱる。シャワーを放して、手で直接おまたを触る。 再び絶頂。 手がどろどろにぬらされていた。これは、シャワーのお湯じゃない。 でも、あつい液体。 ぐちゅぐちゅと乱暴に割れ目に指をねじ込む。若干痛かったけど、快感がそれに勝った。 「ひっ……ひぃあああああああん!!!」 四度目の絶頂。 「はぁ……はぁ……」 浴槽の中で倒れながら、ここあは働かない頭を必死で再起動しようと努力した。 結論から言って、とりあえず身体はあったまった。 そういうことにした。 もう、何も考えたくは無かった。 669 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 01 37 ID Hb+DCbze 「おい、なんか悲鳴がしたけど、大丈夫か? 浴槽の中でもこけたのか?」 脱衣所の扉を開き、ちとせおにーちゃんがここあに呼びかけた。 シルエットがみえる。 ここあはとっさに平静をとりつくろって、ちとせおにーちゃんに、そうではないと―― ――そうだ。嘘をつこう。 「えっと、やっぱり身体が動かなくて」 「おいおい、大丈夫かよ。マジで、医者とかつれてってやろうか?」 「う、ううん。ちょっとのぼせちゃっただけだから。大丈夫だよ。それよりちとせおにーちゃん……もう、あがるから、身体……拭いて」 お願い。 弱弱しい、病人らしい声で懇願する。 ちとせおにーちゃんの性格はよーくしってる。これでは断れない。 「……わかったよ」 脱衣所で、ちとせおにーちゃんはここあの身体をバスタオルで拭き始めた。 髪は、あまり長くないとはいえ、丁寧に拭かなければならないし時間がかかるから、少し水をとっただけで後回しにする。 まずは身体から。 首筋から丁寧に張り付いていた水滴を取っていく。 ちとせおにーちゃんには中のいい妹がいるらしい。たぶん、それで同じようなことをしてなれているんだろう。 気持ちがいい。ちとせおにーちゃんの手は丁寧で、優しい。 触られているだけで、おまたがしめってくる気がする。 ちとせおにーちゃんは、また目を逸らしながら胸を拭く。 今回は、どうしても触れなければならない。バスタオル越しとは言え、その感触は伝わる。 ここあの胸を拭く。ちとせおにーちゃん。 ここあのふくらみかけの胸を撫でるその手が、気持ちいい。 ふにふにと、柔らかいその部分が変形する。 バスタオルと乳首がすれて硬くなる。まだそこまで大きくないから、硬くなってきたのはばれなかった。 「――ぁっ」 すこし、ぴくんと震えてしまった。こえももれた。まずい。 670 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 02 08 ID Hb+DCbze 「っ! すまん、痛かったか!?」 ちとせおにーちゃんは慌てた様子でここあを気遣った。ほんとに、優しいんだね。 「ううん。大丈夫。続けて……」 「ああ……」 ちとせおに―ちゃんは、背中を拭き始めた。そのまま、下にすすみ、ここあのおしりに到達する。 ふにふにと、バスタオルで撫でる。ぴくぴくと、身体がまた震える。 今回は、隠しとおさないと。 おしりを撫でられて、おまたがまたじんじんする。 ちょっとずつ、また息が速くなってくる。でも、必死で隠しとおす。 ちとせおにーちゃんは後ろからここあの脚をさっと拭いて、やっと完了したと、立ち上がった。 「まだ……残ってるよ、ちとせおにーちゃん」 勇気。 これは、勇気だった。 でも、限りなく邪悪で、後ろ向きな勇気。 「ほら、ここあのおまた、拭いてないよ。ここ、おしっこするところなんだから、ちゃんとしないと」 ――色々大変なんだから。 わざと、何も知らない子供のように振る舞う。 しかし、ここあのそこは、もう子供らしい無邪気さなんてなかった。 ちとせおにーちゃんに触って欲しいって、ずっと泣いてる。 涙が、出てる。 涙は、おまたからとろとろと流れ落ちて、脚を伝って床にまで落ちていた。 今なら……全身まだ少しずつ湿っている今なら、拭いていない所の水滴が落ちたって言い逃れできる。 「……」 ちとせおにーちゃんは、顔を真っ赤にしながら従った。 たぶん、こう思ってる。 相手は純粋な子供なんだ。過剰に女扱いしてしまったら、逆にロリコンになってしまう。と。 それはただしいよ、ちとせおにーちゃん。 でも、ここあの思う壺だった。 671 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 02 38 ID Hb+DCbze バスタオルを持ち、手を、脚と脚の間に差し込む。 「――っ!」 ぴくん。身体が跳ねた。ちとせおにーちゃんは緊張のあまり気付いていない。助かった。 そっとおまたを撫でる。 愛液がバスタオルに絡み付いていく。でも、あとからあとから溢れてくる。 気持ちいい……。気持ち良いよぉ……。 ちとせおに―ちゃんは、なかなかとれない水気と格闘している。 ごめんね。これ、ここあの中からでてくるんだ。だから、とまんないよ。 ここあは、今、全裸でたっていて、大好きなちとせおにーちゃんにおまたを撫でられている。 ちとせおにーちゃんは気付いていない。けど、これはここあにとって、一番興奮する状況なんだ。 あんまり自信は無い、膨らみかけの胸が見られて、恥ずかしい。 幼稚な体系を見られて……ちょっとぽっこりしたおなかを見られて、恥ずかしい。 おまたを撫でられて、そこから愛液をとろとろに出して、恥ずかしい。 声出しちゃいそうで、聞かれたら恥ずかしい。 恥ずかしいだらけのこんなことが、こんなに気持ちが良いだなんて……! びくびくと、また絶頂に達した。 愛液が一気にかきだされ、これで打ち止めとなる。 ここあの愛液も無尽蔵じゃないし、たぶんこのまま隠しとおすのは困難。 ここらで切り上げよう。 「はぁ……はぁ……ありがと、ちとせおにーちゃん。あとは、パジャマ着せて。そうしたら、寝るよ」 ちとせおに―ちゃんは安堵して息をつき、下着をここあに穿かせた。 そのとき、また脚をあげたからおまたがちとせおにーちゃんに見られてしまったかもしれない。 愛液でぐちゃぐちゃになったおまた。 みられたら、頭が沸騰しちゃう。 でも、いやじゃない。それは、気持ちがいいことなんだ。 672 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 03 09 ID Hb+DCbze そうこうしているうちに、パジャマを全て着せられ、ベッドまで運ばれた。 「じゃあ、俺はもう帰るから、親が帰ってくるまでは少なくとも大人しくしとけ」 「うん、ばいばい、ちとせおにーちゃん。今日は、ありがとう」 ありがとう。 記憶では、ちとせおにーちゃんはこの言葉がとっても好きで、言われたらどんなことがあろうと許せる。 今日の我が侭も、これで許してくれるだろう。 「ああ、しばらくは無茶すんなよ。じゃあな」 ちとせおにーちゃんもうれしそうな顔をして、ついにここあの家から出て行ってしまった。 「……ちとせおにーちゃん」 呟く。あの人の名前。 愛しい。 全部。 ちとせおにーちゃんの全てが、いとおしい。 欲しい。 ナギさんには、渡したくない。 理科子おにーちゃんにも、渡したくない。 もしあの二人がちとせおにーちゃんを奪ってしまうようなことがあれば、ここあは……。 ここあは、たぶん殺してしまうかもしれない。 でも、まだその力が無い。 理科子おねーちゃんも、ナギさんも、ここあよりもずっと強い。 実力行使では、勝てない。 でも、ちとせおにーちゃんを普通に魅力で落とせるかといえば……。 そこまででもない。 今日、ここまでアピールしたんだ。たぶん、理科子おねーちゃんが同じことをしてたら……。 ――ちとせおにーちゃんは、おちちゃっただろう。 673 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 03 39 ID Hb+DCbze 「勝ちたいよ……」 いつの間にか、また手がおまたを撫でていた。 はしたない。馬鹿っぽい。そう自分を罵る。 でも、止まらなかった。 「ちとせおにーちゃん……欲しいよぉ……」 いつか。 いつか、強くなって。 ちとせおにーちゃんの周りにいる女全員を殺して。 たぶんちとせおにーちゃんはここあに振り向いてくれないけど。 その時はなにがなんでも……汚いことをいくらしてでも。監禁でも誘拐でも、なんでもしてやる。 ちとせおにーちゃんを手に入れたい。 永遠に、ここあのものにしたい。 いや、絶対にする。 この思いは、永遠なんだ。一緒にいなきゃ、壊れちゃうんだ。 ここあがここあでいるためには、もう、ちとせおにーちゃんは欠かせないんだ。 絶対に……他の女には渡さない。 誓う。 ちとせおにーちゃんは、この盤宝典ここあが手に入れる、と。 それがここあの、ただひとつ、生きていく方法だったから。 674 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 04 37 ID ieksx22V 支援 675 名前:わいやーどみにまむ2 後 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 02 06 04 ID Hb+DCbze 終了です。 北斗ネタに反応してくださる方がいて嬉しいのですが、 ここはヤンデレスレなので、あまり偏りすぎにならないよう、お願いします。 分からない方にはあまりよくない流れになってしまうと思いますから。 こんなこと僕がいうのもなんなのですが、お願いします。すみません。 では、また。 676 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 03 42 39 ID tSAU6jmY ワーイここあタソも病み始めたぞ でもロリから脱却する位まで成長する頃には全てが決着済みになってるよなぁ… 677 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 06 49 55 ID YQM+8/UP GJ 678 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/11/09(日) 10 59 59 ID vjLtT5fJ GJ!!としかいいようがない! 679 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 13 44 30 ID ieksx22V gj! しかし、今回は作品が多いな。もう450kbだぜ 680 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 31 39 ID ZLAFCsLQ 投下します。ワイヤード氏へのレスは僕をすっ飛ばしてお願いします。 681 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 32 39 ID ZLAFCsLQ 午後8時、結意と別れた俺は夕食の買い物をするために最寄りのスーパーを訪れていた。入り口付近から順当に歩き、目当ての品々をかごに入れてゆく。 さすがに時間が遅かったから、残っていた品揃えも微妙だが…。今日のメニューは…そうだな、明日香の好きなオムライスにでもしようか。 明日香は…まだふさぎこんでるだろうか?俺とて、明日香のことが嫌いなわけじゃない。むしろ、愛している。だが結局、あくまで家族としてのそれでしかない。 俺は…どうすればよかったんだろう。あのまま明日香の気持ちに応えればよかったか?それとも、もっと冷たく突き放せばよかったのか? 馬鹿な俺にだってわかる。このまま中途半端にずるずると引っ張ることがもっとも残酷であることぐらいは。 だから…いずれはっきりさせなければいけない。もう、答えは決まっているんだから。 ♪♪♪♪~♪♪~♪♪♪~ 焼き芋の機械に備えつけられたスピーカーから鳴る軽快な音楽によって俺の思考は現実に引き戻された。 そのまま、とりあえず会計を済ませることにした。今は早く家に帰ろう。その上ではっきりと言わなければならない。 俺は…家を出る。 夜の闇を薄暗い電灯が照らしている、人気の少ない道をひとり歩く。一歩踏みしめるたびに決意を反芻する。 今度こそ逃げちゃだめだ。明日香がどんなに悲しもうと、はっきり言う。それがきっとお互いのためだから。 明日香だってこれから先いくらでも出会いがあるだろう。俺よりもいいやつなんかごまんといる。 だから…きっといつか傷は癒えるはずだ。自分勝手な願望ではあるが、今の俺にはそうなってくれることを祈るしかできない。 そんなことを考えているうちに、とうとう家の前に着いた。一度深呼吸をし、ドアノブに手をかける。 「ただいま、明日香。」と、決まりの挨拶をする。が…当然返事はない。俺は靴を脱ぎ、中へと上がった。ふいに、あることに気付いた。 682 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 33 27 ID ZLAFCsLQ ―――明日香の靴がない。外出しているのか…こんな遅くに、一体どこへ? いろいろと思案してみる。まず昨日のこと…あんなことがあったからにはやはり家には居づらかったのだろうか? そこで、俺の思考はひとつの可能性にたどり着いた。…家出か? とにかく、明日香が心配だ。俺は再び靴をはき、外に出ようとした。 「待ちなさい、飛鳥。」 誰かに呼び止められた。俺は声がした方へ向き直る。そこにいたのは…明日香そっくりの少女だった。 もし髪がストレートではなくツインテールであれば、明日香にしか見えないだろう。けど、俺はこの少女を知っていた。 「亜朱架姉ちゃん…?なんでここに?」 俺が疑問に思ったのは当然だ。なぜなら姉ちゃんは父さんたちと一緒に海外へ行っていたはずだから。 「帰ってきたのよ…久しぶりね、飛鳥。」 亜朱架姉ちゃんは、神坂家の長女だ。今年でたしか20になる…が、どうみても幼女だ。最後に会ったのが四年前だけど、その時から全く変わってない。ただ、やはり言動は大人びいているが…。 「明日香を探すんでしょ?私わかるわよ、居場所。」 「どこにいるんだ!?姉ちゃん!」 「あんたの彼女のとこよ、間違いないわ。」 …おかしい。なんでついさっき再会したばっかなのに結意のことを知ってるんだ?それに、明日香の居場所も…だめだ、今はそれどころじゃない。 俺はすぐさま結意の家に向けて走り出した。 683 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 34 31 ID ZLAFCsLQ それから数分後、目的の場所へたどり着いた。ドアを引く。…鍵がかかっていた。俺は乱暴に呼び鈴を数回押し、怒鳴った。 「開けろ結意!俺だ、飛鳥だ!」 だが、いっこうに開かれる気配がない。 「どきなさい、飛鳥。」 あとを追ってきた姉ちゃんが俺を押し退け、ドアに正対する。すると、目を閉じて手をドアにかざした。 直後、閃光がまたたいた。いや、正確には光と言うより…闇。さしずめ黒い光、か?それからドアは、音もなく開いた。 「姉ちゃん…今のは?」 「鍵を破壊したのよ。緊急事態だし…。」 「そうじゃねえよ!今の光はなんなんだ!?」 「…後で話すわ。それより……」 そう言って姉ちゃんは部屋の中を指さす。俺は黙ってうなずき、部屋へと上がり込んだ。なにか声がする。…どうやら、明日香は本当に来ていたようだ。 「この泥棒猫!あんたなんかがいるから兄貴は…兄貴は私を見てくれないのよ!」 「あなたは飛鳥くんの妹なのよ?私がいなくても、飛鳥くんはあなたには振り向かないわ。」 「うるさい!あんたなんか…死んじゃえ!」 684 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 36 19 ID ZLAFCsLQ 明日香は激昂し、手にもったナイフを結意に差し向けた。俺はすかさず止めに入る。 「やめろ明日香!こんなことしてなんになる!」 「どいてよお兄ちゃん!そいつ殺してやるわ!」 結意に向けてナイフごと突貫せんとばかりの明日香。とりあえず、後ろから羽交い締めにした。 「離して!あの泥棒猫殺さなきゃいけないの!」 こんな小さな体のどこにそんな力があったのか、今にも振りほどかれそうだった。 ―――――そのとき、再び黒い光がまたたいた。その一瞬で、ナイフは失せていた。明日香も、気を失っていた。 「…間に合ったわね。」 肩で息をしながら姉ちゃんが近づいてきた。どうやらあの光を放つのは体力を消耗するみたいだ。そのまま明日香の額に手をかざし、三たび黒い光を放つ。 「飛鳥くん…この子は?」 いきなりの明日香に瓜二つな幼女(?)の登場に結意は戸惑っていたようだ。 「俺の姉ちゃんだよ。亜朱架ってんだ。」 「…また あすか ?」 「ああ…親父たちもなんたってこんな紛らわしい名前つけたんだろな?」と、少しでも場をなごませようとおどけて見せる。 「飛鳥、もう行きましょう。あ…結意さんでしたっけ。鍵、壊しちゃったから。明日すぐ業者をうちから手配するから今夜はチェーンロックで代用してね。 …ごめんなさいね?」 姉ちゃんは丁寧に謝り、軽くお辞儀をした。俺は、明日香を担いで結意の家を後にした。 685 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 37 40 ID ZLAFCsLQ 「なあ…さっき明日香になにをしたんだ?」俺は姉ちゃんへそう問いかけた。至極当然な質問だ。 「記憶を奪ったわ。正確には、明日香があんたに拒絶された日の記憶をね。」と、姉ちゃんは答えた。 「じゃあ、あの光はなんなんだ?鍵を壊したり、ナイフを消し去ったり…普通じゃないだろ、あれは!」 すると姉ちゃんは一考したあと、語りだした。 「私…人間じゃないのよね。」 「…はぁ?だって姉ちゃんは…」 「普通に見れば人間と変わりないわ。でも、厳密には違うの。あんた、生物の授業で習わなかった。2n=46って。」 「それなら習った。人間の染色体の数だよな。」 「そうよ。でも私は…49本あるの。」 「…多くねえか?なんでそんなにあるんだよ。」 普通に考えて意味が分からなかった。人間の染色体が49本なんて、聞いたことない。 「たぶん…いえ、絶対お父さんのせい。あんた、お父さんがなんの研究してか知ってる?」 「いや…興味なかったからな。」 「…私の遺伝子の研究よ。普通なら、こういうのは染色体異常の類として扱われるんだけど…ダウン症とかがそのいい例ね。でも私はなんの欠陥も今現在は見当たらないわ。そのかわり……」 はぁ、とため息をつき、姉ちゃんは続けた。 「年とらないのよ、私。それに、さっきの光。見たでしょ?あれは…そうね、 消去の光 ってとこかしら。」 「消去の光?なんだそりゃ。」 「任意のものを消し去れるのよ。さっきのナイフみたいに……。記憶だって、この光で奪えるわ。………こんなのって、人間じゃないでしょ?」 少し哀しそうな表情で微笑みながら姉ちゃんはそう言った。 686 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 38 59 ID ZLAFCsLQ 「お父さんたちの研究テーマは…そうね、 新人類 とでもいったところかしら。今も、日本のとある極秘の施設で研究してるはずよ。海外なんてのはたんなるカモフラージュ。それとね……」 そこで切り、俺…いや、俺たちへと向き直る姉ちゃん。 「あんたたちもそうなのよ。49本。」 「……俺たちも?でも…」 「なんの変化も見られない、でしょ?それもそうよ。それこそが私だけが研究材料として適任だった理由なんだから。でもね…一つ問題があるのよ。」 「…? 言ってみろよ。」 「………飛鳥、もう結意さんとはセックスした?」 ―――――な、なんてことを訊いてくるんだ姉ちゃん!あまりに突然だったため、どう答えたらいいかわっかんなくなってしまった! まあ…それだけで見抜かれたみたいだけど。 「…やっぱり。」 ほら、 やっぱり ! 「飛鳥……言っとくけどあんた、結意さんとのあいだに子供つくれないわよ。」 ……今度は、姉ちゃんの言ってることの意味がわからなくて沈黙してしまった。子供ができない?俺と結意の? 687 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 40 00 ID ZLAFCsLQ 「まだ授業で教わってないのね…ほんと、ゆとり教育ってダメね。いい?たとえば、犬とネコが交尾したとしても子供はできない。これはわかるでしょう?」 「ああ。」 「それと同じ。 種 が違うの。わかりやすくいうと…おたがいの染色体の本数が一致しないと子供はできないの。つまり、ヒトと猿が交配しても子供はできない。 だから……私たちは普通の人間とのあいだには子供はつくれない。わかった?」 「……なんとか。」実際頭のなかごっちゃだけど…言いたいことはわかった。 「一応、方法はあるわ。」再び姉ちゃん。「それはいったい?」とりあえず尋ねてみる。 「近親相姦なら子孫を残せるわ。あんたと明日香がくっつけばいいのよ。」 「…………!?あ、明日香と!?」 「そ、明日香とよ。私、べつに子供ほしくないし…でも明日香はその気満々みたいだし。はやいとこくっついちゃいなさい。うん、それがいいわ。」 なんかとんでもないことを言ってる気がするが………いや、言ってる! 「でも、俺たち兄妹だぞ!そんなこと―――――」 「あんた、明日香が嫌いなの?私はどうしてもあんたと明日香がくっついてもらわなくちゃ困るのよ!」 …なんで困るんだ?とは言い返せなかった。姉ちゃんの鬼気迫る表情に怖気ついてしまったからだ。 「どうしてもっていうなら…しかたないわね。」俺に手をかざす姉ちゃん。 瞬間、黒い光がまたたいた。対象は…どうやら俺みたいだ。 688 名前:天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 41 06 ID ZLAFCsLQ * * * * * 「…あれ、姉ちゃん。俺何してたんだ?」 「なんか、ぼーっと考え事してたわよ。しゃきっとしなさいしゃきっと!」 なんだ…?このもやもやした感覚。まるで、 「ねえ奥さん、こないだのアレお買い得だったわよねぇ!」「アレって?」「だから、アレよアレ!えっと…なんていったかしら?」みたいな感じだ。 まあ、いいか。明日になればまた結意特製の怪しさマックスの弁当箱が下駄箱に入っていることだろう。そして繰り返される日々、か。 そう思うと足取りが重く感じられたが…まあめげずにがんばろう、俺! 「飛鳥…ごめんなさいね?」突然謝りだした姉さん。 「何がだ?」と思わず聞き返す。理由がわからなかった。何を謝ってるんだ? 「ううん…なんでもないわ。ただいま、飛鳥(明日香)!」 689 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 43 53 ID ZLAFCsLQ 終了です。 染色体のくだりは…つつけばいくらでもボロが出てきそうなのでノータッチでお願いします。 675 GJ! 690 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 19 54 41 ID Hb+DCbze 今回も面白かったです。 でもネタかぶりました、ごめんなさいw これ以降ワイヤードでパクッてるっぽいとこが出ても見逃して欲しいです。 黒い光って、強いですね。もしかしてバトル展開になるのでしょうか。なら大好物です。 なんにしろ、続きが楽しみです。期待してます。がんばってください。 691 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 20 29 46 ID PkVWcNKA 今日も大漁、大漁。 おなかいっぱいだ、。 692 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 20 39 14 ID tSAU6jmY GJ。なんだが… この展開だとアレがああなってるから結意が可哀想すぎる… 報われる事を祈るしかない 693 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 21 15 11 ID s5GgjPPY GJ! 694 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 21 25 01 ID YQM+8/UP GJ 695 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 22 20 59 ID R2q+e33y GJ! ところでヤンデレ家族ずいぶん見てないと思うんだけど作者さん忙しいのかな 696 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 22 40 47 ID yqSsMytb 695 気長に待とうぜ 俺もその一人だ 697 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 23 04 13 ID ecGUupnG 心配ならブログ見に行けばいい 698 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 23 51 42 ID qmKrK4Qm なんでもブログによれば、展開に詰まってしまったんだそうな。 さあ、気長に待とうか。 699 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 23 51 57 ID vHuxCQOy 697そういえばブログもってる人他にもちらほらいたな 700 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 06 36 ID oji113CX 誰か代わりに書いてくれ とにかく続きが読みたいんだ! 701 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 09 08 ID h72ogn5B 700 作者さんを素直に応援しようぜ 702 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 10 02 ID vUHbK0iq 700 代わりに書けって、修羅場スレみたくなったらどうするんだよ お前少し自重しろ 703 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 12 33 ID UhrdKCoH おっと修羅場スレの話はそこまでだ 704 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 31 39 ID o+jOjcQZ ヤンデレに『付き合うかどうかをコイントスで決める』とか言ってみたい 705 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 31 39 ID CjTaLOsA 寒さも厳しくなってきたが全裸に正座で待機の心はまげないつもりだ さぁ、今日も待機だ… 706 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 39 52 ID Svu7qbUM 704 ヤンデレがサイコキネシスを会得します 707 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 48 22 ID ZmyGMAA/ 704 いつのまにか両方が表のコインとすり替えられてます 708 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 00 51 04 ID FKElutJp 704 ヤンデレなら運命までもあやつりそうだ 709 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 01 13 18 ID MsvpAtYZ 704 ヤンデレが刃物片手に「○○君、もちろんコインはオモテだよね?ね?ね?」 710 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 01 30 16 ID Yu9vWArA 707 ばれなきゃイカサマじゃない 711 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 02 07 20 ID ZsrE4n/b わんわん泣きながら好き好き言ってくるよ 712 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 02 14 39 ID mk758T1a 705 俺は最近寒いから裸に靴下とマフラーをつけて正座してる 713 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 02 33 30 ID RIWkHEIL 彼女の異常な愛情 ~または私は如何にして心配するのを止めて彼を愛するようになったか~ ストーリー ある都心のマッドな女子高校生が一人の少年を愛す。 彼は虐められており、怒った彼女は独断で相手を謀殺するが、彼に幼なじみが接近した。 幼なじみは彼女を爆殺しようと手作り爆弾を仕掛ける。 彼女はサリンを充填した皆殺し装置を町中に仕掛ける。 発動条件は彼女の死亡、スイッチ一押し。 少年は未曾有のサリン事件を防ぐ為彼女と幼なじみを説得しご機嫌を取ろうとするが… 元ネタ…今日借りた映画 714 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 03 03 24 ID Yw67nDpZ ところで男も女もヤンデレなカップルってどうなるんだ? 715 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 03 47 40 ID Jy7KsUFu 心中? 716 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 03 51 18 ID VQW4ZWtv 女「あなたさえいればそれでいい」 男「お前さえいればそれでいい」 幸せじゃね? 717 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 04 10 20 ID h72ogn5B ただの周りを巻き込む迷惑なバカップルになるかと 718 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 06 29 04 ID cCMMZPTE 716 しかし、人はそれだけでは生きていけないのだよ しかも男は合理的な生き物だ 女のためにしたことが裏目に…… 719 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 23 00 28 ID 8wQ3NxIf …修羅場スレが消えた? 720 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 23 04 12 ID xXPy3ME6 719 あるじゃん 721 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/10(月) 23 46 49 ID 7oBAd9Ph 源氏物語アニメ化か・・・ ヤンデレの始祖の登場だな 722 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 00 33 43 ID AMwX7wsr 721 幼女をさらってきてセクロスとな? つーか源氏物語はエロすぎて漫画化すら不可能だろ 723 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 00 41 45 ID 1CON9MLX 722 いや、六条の御息所のこと言ったつもりだったんだが 724 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 00 52 17 ID dEmuc9G5 722 津田塾の創始者が「ポルノ本読ませるんじゃない!!!」って切れたぐらいだしな 725 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 01 52 06 ID VFXbPmbT 722 漫画化は江川達也がやったが、たしかにセクロスしっぱなしだったな 726 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 08 46 50 ID X5OzDSas 722 「あさきゆめみし」って有名な漫画があってだな…… 727 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 13 18 16 ID 817ESDQM 726 そのアニメ化が中止になって源氏物語がアニメ化なんだよ 728 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 18 11 44 ID Jc2wLUvC ヒント:あさきゆめみし=マンガ版源氏物語 729 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 18 19 59 ID VA7OTHTa あさきゆめみし:アニメ化の企画が中止に 出崎監督オリジナルの「源氏物語」に変更 フジテレビで09年1月から木曜深夜のアニメ枠「ノイタミナ」で放送予定だった、「源氏物語」の世界を描くテレビアニメ「あさきゆめみし」のアニメ化が中止となり、 「源氏物語」を原作としたオリジナル作品「源氏物語千年紀 Genji」を制作することに変更されたことが10日、分かった。 宣伝のアスミック・エースによると、監督の出崎統さんの制作上の意向のためという。 アニメは当初、79~93年に講談社の月刊マンガ誌「mimi」などで連載された大和和紀さんのマンガ「あさきゆめみし」を原作とする作品を制作する予定だったが、 出崎監督の「『源氏物語』をきちんと描きたい」という意向から企画が変更されたという。 出崎監督は「誰もが魅入ってしまう『源氏物語』は魔物である。自分自身の手で新しい表現の境地に挑んでみたい」とのコメントを発表している。【渡辺圭】 730 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 19 32 56 ID e1POl/0z これでコケたら、アホだなこの監督 731 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 20 38 42 ID Jc2wLUvC なん…だと……っ! ようするににわかは俺なんですね。 吊ってくる…。 732 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 12 25 ID s8ichCn4 もちろん会話は古語なんだな もしくは普通に現代語か 下手に妙な間違いだらけのそれっぽいセリフを話させたら承知せんぞ 733 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 51 31 ID FSF+epur 734君、逃がさないよ? 734 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 54 04 ID OWR1wx77 \早くお兄ちゃんに見せたくて、急いで走ってきたんだよ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ⊂二 ̄⌒\ ハァハァ ノ) )\ ( ∧_∧ / \ /__ )*´Д`) _ / /^\) //// / ⌒ ̄_/ / / / // ̄\ | ̄ ̄ / / / (/ \ \___ ((/ ( _ ) / / ̄ ̄/ / / / / / / / ( / / / ) / / / し′ ( / ) / し 735 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 21 54 36 ID OWR1wx77 すいません誤爆です 736 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 22 05 20 ID bdGnlpRw ワロタww 737 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 22 07 28 ID FSF+epur キャッチアンドリリースするか・・・ 738 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 23 06 11 ID jliBBwk0 痛くて熱くて苦しくて悲しくて辛くて泣きたくて耐えられなくて逃げられなくて逆らえな くて終わらなくて背けたくて叫びたくてもがきたくて吐きたくて止めたくて抵抗したくて 刃向かいたくて抗いたくて逃げ出したくて ____ 隠れたくて避けたくて篭りたくて 拒絶したくて噛み付きたくて跳ね除けた /ノ ヽ、_\ くて振り払いたくて追い詰め られて捕らえられて引きずり出されて /( ○)}liil{(○)\ 攻め立てられて強制され て赦されなくて束縛されて締め付 / (__人__) \ けられて押し付けられ て引き千切られて投げつけられ | ヽ |!!il|!|!l| / | て虐げられて呻きたく て喚きたくて狂いたくて堪えられ .| |!!il|!|!l| | なくて掴まれて殴られて 裂かれて砕かれて蹴られて焼か | |!!il|!|!l| | れて刻まれて焦がされ て穢されて破られて荒らされて | |!!il|!|!l| | 壊されて嬲られて弄ば れて潰されて踏みにじられて飽 | |!!il|!|!l| | きられて放り出されて 打ち捨てられて気を失って痛み | |!!il|!|!l| | も麻痺して心が壊れて 涙も出なくてでもまた拾われてま \ |ェェェェ| / た掴まれてまた殴られ てまた穢されてまた破られてまた砕かれてまた切られてまた刻まれてまた焼き焦が されて嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌 なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに 嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに 739 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/11(火) 23 56 36 ID TY99UoT/ 角煮でやれ 740 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 00 27 57 ID 6NoLAE3/ スレストくらって落ちたもよう 741 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 20 14 44 ID RZ/Zb+t6 角煮って何? 742 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 20 26 24 ID YWdA4qPK 741 18歳未満は(・∀・)カエレ 743 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 21 36 58 ID FT4OW6fK 741 料理デスw 744 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 21 58 31 ID nAl5eVNp ・デス料理 ヤンデレが主人公の家に来た泥棒猫に出す料理のこと 745 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 23 08 52 ID 9+gQ9KMP ヤンデレに勝てるヤツはいるのか? 女「大層、自分に自身があるようだけど、あなたは『私を殺せる人がいる?』と三回言えるかな?」 ヤンデレ「そんなのは何万回でも」 ヤンデレ「私を殺せる人がいる?」 「私を殺せる人がいる?」 「私を殺せる人が――」 馬岱『ここにいるぞ!』 ヤンデレ「げぇっ、馬岱!」 746 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 23 24 29 ID Pmm5YSzy 先生!僕はデス料理を食べられますか!? 747 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/12(水) 23 59 57 ID 2XkBLaFi 745そこで馬岱はねえよwww 748 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/13(木) 00 07 54 ID w+PG5uBN ヤンデレ=魏延ですね 749 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/13(木) 06 50 33 ID SDiDKRZF それは反骨です 750 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/13(木) 17 13 01 ID yAKrSubE ヤンデレなら張春華だろ…常識的に考えて、司馬懿はいい嫁に恵まれたな 751 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 00 09 19 ID XlZkQgRP 中世の封建主義に刃向かう女、反逆のヤンデレ ヤンデレが公爵令嬢をメス猫呼ばわりしたとのことで訴えられた。 裁判長はヤンデレに言った。 「あなたには罰金を科す。二度と公爵令嬢のことをビッチなどと言うのではないぞ」 「わかりました裁判長様。二度と公爵令嬢のことをカントとはいいませんが、 娼婦のことを公爵令嬢と呼ぶのもいけないのでしょうか」 「それはあなたの勝手だ」 「わかりました。さようなら、公爵令嬢」 752 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 00 15 19 ID XlZkQgRP ヤンデレが、死の床につく友人の手を握っている。 ヤン友:「ヤンデレ、わたし・・・・わたし、お別れする前にどうしてもあなたに言っておきたいことがあるの」 ヤンデレ:「言いたまえ、どんなことをしたにせよ、わたしはもう怒ってはいない。 何も心配することはない」 ヤン友:「いいえ、ヤンデレ。わたしは長い間、この秘密を抱いて苦しんできたの。 でも、もう白状しなければならないわ。わたし・・・わたしずっとあなたを裏切っていたの。 あなたの彼氏の男くんと、あなたの目をしのんで何度もやってたの。 本当に、本当にごめんなさい」 ヤンデレ:「それは分かっていた。わたしがなぜあなたにポロニウムを盛ったと思う?」 753 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 00 44 46 ID paGb54vU 751が妙につぼにはまったw 754 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 02 11 40 ID rDqUy8Kl 751 ブラックジョークだな 755 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 04 37 54 ID YKYQWTw5 ってかブラックジョークのコピペ改変やん 756 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 11 58 56 ID 7lsx03sP ちょうど480KBか。 次スレ立てたほうがいいかな? 反対なかったら一時間後に立てる 757 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 12 58 55 ID 7lsx03sP 立てた ヤンデレの小説を書こう!Part20 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1226635080/l50 758 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 13 04 24 ID i8wvpIaU もつ煮込み 759 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 13 58 14 ID XlZkQgRP 特攻隊は陛下にヤンデレ 760 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 15 44 38 ID 7O0PiuKV っ♂×♂ 761 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 16 34 49 ID XlZkQgRP お国にヤンデレ 762 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 16 48 24 ID 5knKdxX9 FUKINSHIN 763 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/11/14(金) 17 28 03 ID KTERV6vH てかお前らの紳士度には脱帽するわ……。 ずっと裸なんだろ? 764 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 20 06 31 ID XlZkQgRP 男「ヤンデレの料理より美味ーい」 男「ヤンデレよりもかわいいよ」 男「いいなあ、ヤンデレより胸が大きいし」 男「ヤンデレよりはやーい」 ヤンデレと他の女を比べて、他の女を持ち上げることなかれ 765 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 20 46 08 ID tV/64shO 一番下… 彼女がエンディングにてナイフで刺されるのが確定したな 766 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/14(金) 20 52 41 ID N9lgGBbm ヨヨはトラウマ 767 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 00 18 44 ID MzquCprt 750 お前とはいいハンガーストライキができそうだ 768 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/15(土) 17 38 41 ID IOVHgHqD 757 乙 769 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 01 53 41 ID CHBpoi2H 最近のファイアーエムブレム風のヤンデレを妄想 男:ヤンデレと支援レベルA、女ユニットと支援レベルC ヤンデレ:男と支援レベルA 女ユニット:男と支援レベルC ↓ ヤンデレが女ユニットを撃破するのかな と思っていたら、マジであった。私怨レベルとは上手いことを言ったもんだ ttp //www.pegasusknight.com/cgi-bin/bbs/search.cgi?room=fe10_clear query=%BB%E4%B1%E5%A5%EC%A5%D9%A5%EB 770 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 02 37 08 ID /h3SvxHr 版権モノは専用スレでお願いします 771 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 02 41 48 ID Hu4icJ2P 769 自演乙 772 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10 18 08 ID V85YKKw0 お前も飽きないなー…とつられてみる 773 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 10 20 09 ID N9puVh4P ほトトギすを全裸で待ってるのだが… 最近夜さむいよ… 全裸の方々は風邪に気をつけてくださいね 774 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 12 41 55 ID GpG7/v8R ネクタイとくつ下で防寒対策ばっちりです 775 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 13 43 42 ID gEwLM05l かちかち山の続きを野球帽だけを被って待ってるんだ 776 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 17 07 38 ID g1Bglg8R よづりの続きを全裸で… 777 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 17 08 18 ID npdvOGuT 網タイツ・・・ゴクリ 778 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 17 19 18 ID sPcrH6oE お前らどんだけ服持ってないんだよw 俺はリッチに段ボール敷いてるから全裸でも暖かいしww 779 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 20 21 25 ID 8tFAtTzr 778 分かってないな。 全裸正座にネクタイと靴下は紳士の正装なんだよ。 780 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/16(日) 23 53 15 ID KXwGlHEt 俺はヤンデレを椅子にしてるよ 781 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 00 33 41 ID O1ds2/98 779 ネクタイは蝶ネクタイでもいいですか? 782 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 01 27 20 ID zTwt96Cp 分かってないな。 紳士の手袋にシルクハット。これだけだろ。 783 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 01 44 16 ID 9W6iecPa 流派の違いを云々しても詮無いこと それぞれの全裸道にしたがい、SSの投下をお待ち申し上げるのが よろしかろう 784 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 01 47 55 ID 7bgirFil 何だ…この全裸待機ネタの流れ… どうでも良いが、悩み相談に乗ってやってくれないか? 某県M.I君からのお便り。 僕の彼女は、鋸の扱いが異常に上手いです。木を一瞬で切り落とします。 この間、クラスのSさん(仮名)にキスされました。 Sさんと性行為に及んでしまい彼女にしました。 すると元カノになったKさん(仮名)は私の彼女だと言い張りました。 Kは周囲から孤立してなお主張し続けました。 ある朝、Sと二人で歩いているとKの得意技である鋸一文字がSに炸裂しました。 彼女と一緒に海外に高飛びするべきでしょうか? 785 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 01 56 57 ID PchDqWdS Sさんが照英で、Kさんがケインか 786 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 02 02 00 ID EgZWSKRO 785 それは俺もヤンデレにならざるを得ないな 787 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 18 27 13 ID A6jINbBe 催促するわけじゃない、催促するわけじゃないんだが傍観者の人はまだだろうか 788 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 21 32 10 ID ZbznvJrE 787 あの人は今までがハイペースすぎたんだ。じっくりと腰をすえて待つべし。 読み手のなかでも話がよくわからなくなってきてる人がいたが、作者氏も そうなってたのかもしれんね。 展開に詰まってしまったってことは。 とにかく、紳士ならじっくりと腰をすえて待つべし。 789 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 22 51 14 ID LYEhs4TK 傍観者の作者は生存確認ができるだけで安心できるしねえ。 790 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/18(火) 12 14 01 ID jYvTo3Kf 待つなんて事はとうに慣れたさ 毎週日曜日、今日は来るかな?来るかな?と待つ事さえ苦ではないとも 791 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/18(火) 22 59 21 ID RMcZLcJ1 ヤンデレの“待ち”に比べりゃ俺たちはまだまだだろうよ 「どうしてわたしのところに来てくれないの?ずっとずっと待ってるんだよ? 幼稚園からずうっと一緒だったのに、夫婦みたいだってからかわれるくらい仲良かったのに・・・ 大人になったらお嫁さんにしてくれるって約束、まさか忘れちゃったの? ねえ、いつまで待てばいいの? ・・・・そうか、大事な約束を忘れて道に迷っちゃったんだ・・・ なら、わたしが思い出させてあげるね そして迷子にならないようにずうっと手をつないであげるからね だからシラナイヒトとかホカノヒトについていっちゃダメだよ ソコにいて、イイコでまっていてね・・・」 792 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/18(火) 23 06 02 ID bIrZXnUt 「待ち」でも結局自分から会いに行くのね 793 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 02 13 06 ID B14DBDRr 痴漢と被害者から“強制”痴漢者と病んだ女という電波が… 少年最初の痴漢は、その少女だった。毎朝会うその娘はいつしか、彼に愛情を抱いた。 そして、出会いから数カ月後、彼は彼女専属の痴漢にさせられていた。 立場はストーカーと元痴漢に変わってしまった。 794 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 20 03 49 ID hitG+2it よし、その電波を受信して文にしてくる 795 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/11/21(金) 20 42 06 ID jhVxUc0C . 796 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 00 07 03 ID jteNKyO4 埋めヶ丘 797 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 10 24 00 ID jteNKyO4 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅 梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅 798 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 19 56 00 ID 3r/ZDq4I 梅? 799 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/11/22(土) 20 11 03 ID p6iiTmOv ヤンデレな子は梅が好きそう 800 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 20 41 08 ID azLRwfSS こういうのうざい 801 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 00 31 07 ID JEjPvlm5 うざいって言うヤツがうざい 802 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 01 45 41 ID wgkoTSJJ 794はまだか!! 803 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 09 42 41 ID a0NqhCmj 「お兄ちゃんどいて! ソイツ殺せない!!」 「そんなのダメだ!! それは駄目だケンシロウ……ラオウを倒すのは私の柔の拳!!」 「ぬはははははっ! 愚弟が揃っても、このラオウに勝つ事などできぬわ!!」 804 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 09 53 38 ID KHxkzEwD ワロタwww 805 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 17 35 06 ID ytm4ntKd ヤンデレ=クラウザー二世 「私は男くんに感謝している。男くんがいなかったら 猟奇殺人者になっていたから……」 曲目リスト 1. ヘルズ・ヤンデレルーム 2. KANKIN 3, マッド・ブッチャー 4, あの女を解体 5, デスガール 6, ビッチキラー 7, 暴力的シーンを含みます 8, 恋の恨みはらさでおくべきか 9, デスアックス 10, 病女王 11, メス豚葬送曲 12, 私の恋人 「ヤンデレさん…やめて下さい。その女とっくに…死んでますから!!」 806 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/23(日) 17 42 53 ID ytm4ntKd 私は学校のテロリスト 昨日は素クール殺したぜ 明日はツンデレ轢いてやる 殺せ殺せ殺せ ビッチなど冷やせ TENCHU下せよ TENCHU下せよ 教室を血で染めてやれー 次回には依存子大食いねぇ それは私が殺したから 次回には男と雌猫いねぇ それは私が殺したから TENCHU下せよ TENCHU下せよ 807 名前: ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 36 09 ID HOJieKTt 埋めネタ落としてみます 808 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 36 49 ID HOJieKTt 1.ヤンデレ茸カタログ ある日、鷹野百歌は非常に困っていた。 「今日のお夕飯、どうしよう……」 一大事である。 「お兄ちゃんにおしいいご飯を食べさせるのが私の存在意義なのに、これじゃあ、だめだよぉ……」 涙目になりながら、必死で打開策を考えた。 兄に、鷹野千歳に出すメニューが全く思いつかない。 この時期旬の食材などはひとしきり使い切ったし、もはや兄の舌を楽しませることができない。新鮮さがない。 もっとも、その考えは全くの思い込みであり、千歳は百歌の作った料理ならなんでも喜ぶのだが、百歌の認識は違った。 「お兄ちゃんに、つまんない女だって思われたら、百歌、死んじゃう……」 料理番組を見たり本を見たり、ネットでいろいろ探したりしても、ピンと来るものが無い。 新鮮というか、奇抜なメニューはあっても、兄の口に入るに足るようなレベルのレシピが見つからない。 今までは、百歌はその若い発想力でこのような苦境も乗り切ってきたのだが、今日ばかりは完全にお手上げだった。 「せめて、何かおもしろい食材でも……」 ガコン。 そのとき、郵便受けに何かが入る音がした。 「ん、夕刊かな?」 気分転換にもなるだろうと、郵便受けに向かう。しかし、中にあったのは新聞ではなく、チラシだった。 「なんだろう、これ……。きのこ……?」 いくつかの茸の写真が並んでいる。見たことの無い色と形。 「ヤンデレ……茸?」 チラシによると、ヤンデレ茸などという高級食材を近くのスーパーが入荷したらしい。 しかも、国産なのに値段は手ごろだという。 ピンときた。 「そうだ、これを買いに行って、今日のお夕飯にしよう!」 809 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 37 24 ID HOJieKTt 2.ヤンデレ茸・媚薬型 「たくさん種類があったけど、全部買っちゃった♪」 買い物袋に、色とりどりの怪しい茸を入れて、百歌はるんるん気分で家のキッチンに立った。 「やっぱり、色々あるけど、これがおいしそうかな」 ひとつを拾い上げ、見つめる。ごつごつとして、卑猥な形状をしている。 くんくんと匂いをかぐ。独特の匂い。人間の体臭――いや、兄の体臭と似ている。 思わず目がうっとりとなり、百歌は顔を赤くしてぶんぶんと振った。 「だめだめ! いきなりしゃぶりつきそうになっちゃった!」 茸にフェラをしようとしていた自分に気付く。 「お兄ちゃんの匂いににてたからって、やりすぎだよぉ……」 しかし、その魅力的な形状と匂いに、心を惹かれてしまうのも事実。 「ちょこっと……ちょこっとだけなら、いいよね」 その誘惑に耐え切れず、端のほうにかじりつき、少しだけ飲み込んだ。 「ん……お兄ちゃんのせーえきの味だぁ……」 また、うっとりとして身体が熱くなる。 「あはっ、あはははは……! お兄ちゃんが身体の中に広がって……気持ちいい!!」 その場にしゃがみ込み、自分の腕で自分自身を抱きしめる。 「あははははははは!! 気持ちいいよぉ!!」 いつの間にか手が股間をまさぐっていた。もはや止める術は無かった。 「……」 賢者タイム。 「……ま、まあ、この茸はお兄ちゃんに後で食べさせるとして」 ――性欲が増強されて、百歌を襲ってくれるかもしれないし。 「とにかく、今のことは忘れよう。うん、そうしよう!」 自分の秘所に出し入れした茸など、自分自身で食べる気にはなれなかった。 810 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 37 54 ID HOJieKTt 3.ヤンデレ茸・病み型 「とにかく、他のもお兄ちゃんに食べさせる前に『毒見』しないと……」 適当に袋から出す。 地味な色と地味な形状のものがあったので、それを手に取った。 「こういうのがむしろ安全なんだよね。マツタケみたいでおいしそうだし」 端をちょっと切って口に放り込む。 「うん、味はなかなか。香りもいいし。これならお兄ちゃんも喜んで……。っ!?」 がくがくと身体が震えだす。 ――まさか、毒……!? 身体の力が抜けて、百歌は崩れ落ちた。 しかし、すぐに立ち上がった。 「ふふ……ふふふ……」 明らかに尋常な様子ではない。 「お料理なんてまどろっこしいことをするのは、もうやめよう。うん、そうしよう……ふふっ」 ニヤニヤと笑いながら、包丁を持ち、ぶんぶんとい振り回す。 「お兄ちゃんがいつか私を愛してくれるなんて、幻想なんだよ。私は妹。所詮、妹なんだから……。ちょっとくらい強引じゃないとガンダムは口説けないって、私の心の師匠も言ってたもん」 冷蔵庫から生肉を取り出し、包丁を突き立てる。 「ふふふっ……やっぱり、お兄ちゃんに近づく雌猫を全員ぶっ殺して、そのあとお兄ちゃんを監禁して調教しちゃえば一番早いんだよ……」 ざくっ、ざくっ。小気味のいい音を立てて、生肉が穴だらけになる。 「そうだよ、お兄ちゃんは世界一かっこよくて優しいから、勘違いした雌どもが擦り寄ってきちゃうんだ……。お兄ちゃんがそんな輩に騙されちゃう前に、消さないと……」 くっくっと笑い、百歌は包丁を持ったまま身支度をする。 「早速、お兄ちゃんとの仲を取り持ってなんて私に頼んじゃったあのお馬鹿さんから殺しに行っちゃおうかな♪」 靴を履く。が、なんだか上手く履けない。目の焦点が合わない。靴が三つに見える。 「んっ……頭が……」 くらくらする。そのまま力が抜けて倒れた。しかし、またすぐ立ち上がった。 「あれ、私何を……。そうだ、夕飯作らないと、お兄ちゃんが帰ってきちゃう」 811 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 38 25 ID HOJieKTt 4.ヤンデレ茸・自律型 「他にはどんなのがあるかなー」 がさがさと、なにかのゲーム感覚で買い物袋をあさる。 「これだっ!」 取り出したのは、これまた奇妙な茸だった。某ドコモのマスコットのように、人間的なデフォルメを加えられている。 人間っぽい手足がついていたり、目のような部分があったりする。 「なに、これ……」 『ふふふっ、やっと私に気付いてくれたのね』 「喋った!?」 『驚くことないじゃない。私、あなたとスーパーで目が合ってから、ずっと好きだったのよ。だから、あなたに食べられるためにあなたの手にしがみついたの』 「私に、食べられるため……?」 『くくくっ、やっと、茸としての本懐を遂げられるわ……。愛するあなたに食べられることで、あなたの血となり、肉となる……あはははは!! 最高の死に様だわ!!』 「……」 『さあ、早く私を食べて! その可憐な唇でむしゃぶりつき、その白い歯で噛み千切り、蹂躙しなさい! そうして私はあなたと永遠に同化する……そう、私達の愛が永遠になるのよ!』 「……気持ちわるーい」 百歌は、茸をぽいとゴミ箱に投げ捨てた。 『ちょっと、出しなさい! 私とあなたの愛は……!』 「気持ち悪いよぉ……まさか、喋る茸があるなんて」 『出せー! ちょ、マジで出してください! 生ゴミとして朽ち果てるのは嫌なのよ! 後生ですから!』 「しかたないなぁ、近所の猫の餌にするけど、それでもいいよね」 ゴミ箱から救出する。すると、茸は再び高飛車になった。 『ふふふ……やはり、口では生意気でも、心の奥底では私を愛しているのよね。分かっているわ。さあ、私を喰らいなさい……!』 「気持ちわるーい」 ぽいっ。 『きゃー!』 812 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 38 55 ID HOJieKTt 5.ヤンデレ茸・幻覚型 「もう、ろくなのが無いよ……。最後のこれは、どうなんだろう」 端を少し切り取り、口の中で咀嚼する。 「うん。これは今までで一番おいしい。マツタケ以上かも……」 百歌は笑顔になり、料理を始めた。 「じゃあ、これと、最初のあの媚薬みたいなやつで今日は炊き込み御飯とお吸い物でもつくろうっと♪」 「お帰りお兄ちゃん。ご飯できてるよ」 「おお、じゃあ早速食うか。……今日のは美味いな」 「今日は変わった食材を使ったから(ふふっ、それは媚薬茸入りのお吸い物……さあ、私の身体を求めて、お兄ちゃん!)」 「ん、なんだか、俺……身体が熱くなって……」 「お兄ちゃん、大丈夫?(きたきたきたー!!)」 「百歌……お前、可愛いな」 「え、急にどうしたの、お兄ちゃん?(もしかして、これは非常に美味しい展開!?)」 「百歌、俺もう、我慢できない!」 がばっ。 「きゃ、お兄ちゃん、私達兄妹だよっ!(あくまでお兄ちゃんから襲ったという形にすれば、これ以降もお兄ちゃんに責任を取ってもらえる……♪)」 「悪い兄貴ですまん! でも、お前が可愛すぎて、もう我慢できない! 入れるぞ!」 「お、おにいちゃん、そんな、いきなり……いたいよぅ……」 「動くぞ、百歌!」 「ああ、お兄ちゃんに無理矢理犯されてる……♪」 「百歌……俺、もう、出る……!」 「だめ……だめだよぉ……(くく……くははははは!!! 計画どおり! 思い通り! ここまで上手くいくなんて!)」 「うおぉ!!!」 「お、お兄ちゃんに無理矢理中だしされてるよぉ……!!! ……責任、取ってよね」 「ああ、百歌とちゃんと結婚して、子供を産むよ。愛する百歌と一緒に生きていく」 「お兄ちゃん……! 私も愛してる!!」 「……って、ドリームか!!!」 はっと意識が戻ると、さっきから全然時間がたっていなかった。 「早くお料理作らないと……! でも、今の夢いいなぁ……げへへ」 思わず、変な笑い声が出てしまった。非常に下品である。いけない、よだれも出ている。 813 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 39 28 ID HOJieKTt 6.平和が一番 「ただいまー」 「お帰りお兄ちゃん。ご飯できてるよー」 「そうか。ならすぐ食わないとな」 兄はそう言うと、荷物を降ろして手を洗い、すぐに食卓に座った。 「いただきまーす」 「いただいてくださーい♪」 炊き込み御飯に箸をつける千歳と、それを見つめる百歌。 「ん、どうした? 食わないのか?」 「うん。味見して、おなか一杯になっちゃった」 ――お兄ちゃんの顔を見てて、おなか一杯になっちゃった。 とは、照れるのでいえなかった。 「ど、どうかな。今日のお夕飯」 「ん、美味い。いつもより手間がかかっている感じだ。それに茸も変わってるな」 「そ、そうかな……えへっ」 そのとき――千歳の手が百歌の頭に触れた。 「お兄ちゃん……?」 「いつも、ありがとな。家事が全然できないから、俺は。役立たずな兄貴のために……。感謝してるぞ、百歌」 「お兄ちゃん……そんな、私がしたくてしてることだし」 「でも、お前はえらいよ。早くに母さんが死んで、家族の皆は……ほら、あんなだったし……。そんな中で、お前は良い子になった。俺は、嬉しいんだ」 「なら……ごほーび、ちょうだい」 「なんだ? バイト代も入ったし、なんでも買ってやるぞ」 「百歌に、『好き』って、言って」 「なんだ、そんなことか」 勇気をもって提案したのに、千歳は簡単に承諾してしまった。 「百歌、俺はお前が大好きだぞ」 にっこりとして言う千歳。 「お兄ちゃん……! 私も好き!!」 そんな兄に、百歌は飛びついた。 なにもかもが、平和だった。 めでたしめでたし 814 名前:埋めネタ ヤンデレ茸にご注意 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 40 03 ID HOJieKTt 終了です。元ネタは、言うまでもなくこのスレの上のほうにある話題です。 815 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/24(月) 21 55 16 ID PAUjoIRi 面白すぎる…まともな人でも食ったら(思考が)イッてしまいそうだな。 816 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/24(月) 22 09 57 ID PFjMM0vu 百歌の心の師匠と俺の心の師匠同じだ!! 817 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/24(月) 22 33 39 ID oNp1k0iO 君の存在に心奪われたものだ!アッ――――!! 818 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/11/24(月) 23 54 13 ID OUz7LRZ4 こいつが書く『ヤンデレ』ってメンヘラじゃん。愛が無い
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1080.html
501 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 10 59 54 ID OR8TQB1d ヤンデレ大全の影響か、月姫の秋葉と琥珀がヤンデレだっていってる奴がいて驚愕した 502 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11 21 23 ID huVwzGsP 型月にヤンデレはないだろ 503 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11 37 41 ID +W669WOK というか、ヤンデレ大全がないだろ 504 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11 38 27 ID ZjK1imvW 型月(笑) 505 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 12 59 49 ID xt9XoEn+ ん?琥珀√の秋葉も違うか? 志貴を監禁しようとしたり、琥珀とくっついたら琥珀もろとも殺す みたいなこといってなかったっけ?……あれ、俺、地雷? 506 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 13 21 43 ID Z409B1tR そーいや前に角煮で叩かれるかなあと思いつつ ハマーンがヤンデレに見えるって書いたら 賛同してくれる人がいてちょっと嬉しかったなw 507 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 15 34 34 ID n+Tu4O+q 若干、古い作品だがエデンズボゥイのパレラはどうだ? 弟に依存しすぎて弟の恋人と殺しあってるし 508 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 18 11 54 ID cD2n4qjc 桜はヤンデレじゃね? 主人公が大怪我したときは、もっと動けなくなるくらいの怪我をすれば……なんて妄想するし。 アンリに毒されてからは邪悪ヒロインだけれど。 509 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 22 50 14 ID 5x0/fYDk この流れなら言える ガクトの『Doomsday』は良ヤン曲 510 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 23 29 49 ID UM0aiNSj 狂った果実の美夏はどうだろう 511 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 23 30 54 ID 4jEBPYx4 簸川樹里に一票。 512 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01 06 57 ID U1PwwjuG A君とA君にベタ惚れなBさんがいたとして、Cさんのちょっとした悪戯心でA君が女性恐怖症になってBさんすら拒むようになったら、Cさんはどうなると思う? また、Cさんが作ったトラウマによる恐怖症は同世代の女性にしか発症しなくて、 それが原因で年上/年下のDさんとA君がくっつくようになってしまったらCさんの罪はどのくらいになる? 513 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01 17 59 ID jxk2gvCK Cまでもヤンデレに目覚める 514 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01 29 34 ID rGq4XPWH Cさんを唆して悪戯をさせた黒幕は、Dさん 515 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/03(木) 01 47 19 ID czSojKlw Cの罪は特にないが、Dの罪は重い そしてBの虐殺の時間が・・・ 516 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 05 17 02 ID TEUbWpgk 実はE君(6歳)がA君と突きあいたくてCさんを唆し さらにBさんにDさんを消させる算段を取って共倒れ狙い 517 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 08 03 33 ID ZIWza5ra お前達の妄想力レベルの高さに吹いたw 518 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 10 48 22 ID 1jtKdRoK 473 これニコ動で聴いたぞww おまえらなら興奮するんじゃないか? ヤンデレ大好きな俺でもかなり行き過ぎてると思ったwww 519 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 11 01 16 ID qeMYfttV ヤンデレCD怖い… ゆりしーのだけはよかった 520 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 13 15 57 ID tCZ5QvOS ガチメンヘラがヤンデレキャラやるのか 521 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 14 27 14 ID 7k0oehCA 510 遅レスだが、よう俺 ノシ ヤンデレ大全は美夏が入っていなかった事が一番残念だったなw 522 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 14 53 19 ID mJywhZWP 518 これ全部聞いたけどさ、ヤンデレとは微妙に違う気がするんだが 523 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 16 37 55 ID my1UvAA7 それにしてもこの鬱声優、ノリノリである 524 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 35 01 ID QqWcpa2G 418 やってみます 525 名前:病み妻1/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 35 57 ID QqWcpa2G え、出張、ですか? 突然に? あさってから? そうですか……。一週間。長いですね。 たしかあそこの支店には○○さんが行かれる事になっていたのではありませんか? ええ。この間、総務の××さんから色々お話聞かせていただきました。 私、今でもあの辺のお局さまと仲がいいのですよ。あなたの社内情報は、とてもよくわかります。 あの娘、最近女子寮出て、マンション借りたそうですね。 ……さっそく、いい人と同棲ごっこしてみたいのでしょうか? ……ねえ、あなた。 浮気相手の女の子が可愛いのはわかります。 いいえ、否定してもダメです。私、全部、知ってますから……。 でも、あなたは私ともっと仲良くしておいたほうが、……色々と都合がいいと思いますわ。 そうでないと、あなたも、私も、娘も、あなたのご両親も、 きっとみんな困ったことになる……と、思います。 あなたの可愛い娘に、おいしいご飯をたくさん食べさせてあげられる女は誰でしょう? あなたの大切なご両親が、不自由なく暮らせるようにできる女は誰でしょう? ……浮気相手の、あの娘ではないですよね? ひょっとしたら、あなたが「出張」から帰ってきたら、 娘が何日もご飯食べられなくて餓死していた……なんてことが起こってるかも……。 ひょっとしたら、あなたが「出張」から戻ってきたら、 田舎のご両親が救急車の呼び遅れで植物人間に……なんてことも起こってるかも……。 そんなこと、困りますね? ええ、そんなことになったら、私もとても不幸ですわ。 でも、あなたの奥さんって、あなたがいなければ、それだけで一番不幸になってしまうです。 そうなったら、多分、他の不幸なんてどうでもいいって考えてしまう……かも……。 うふふ、覚えておいてくださいね。 ……あなたの人生、私が一番幸せにできるんです。 でも、一番不幸にすることもできるかも……知れませんね。 526 名前:病み妻2/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 36 40 ID QqWcpa2G あら、あなた。 どうしたのですか、急にお倒れてなってしまって。 お布団、すぐに敷きますから、そこに横になってください。 え? 身体が動かない? 大丈夫ですよ。 ――後遺症は残らないくらいの量ですから。 さっきの、煮物、美味しかったでしょう? あなたの大好物。 お義母さんから習った、味付け。 でも、お義母さんのよりも美味しいでしょう? 私のオリジナルレシピですもの。 隠し味はたっぷりの愛情と、素直になるお薬をほんのちょこっと。 ああ、お水、欲しいのですか? はい、口移しで飲ませてあげますね。 あらあら、しっかりキスしないと、こぼれちゃいますよ。 そうそう、そうやれば、美味しいお水、飲めます。 ふふ、そろそろ「素直」になってきましたね。 あら、何をおびえてるのですか? これから何をされるのか、わかりませんか? ……ねえ、あなた、知ってます? あなたの奥さんが、あなたのこと、どれだけ好きか、って? わからないのなら、これからたっぷり教えてあげます。 うふふ、おち×ちんは正直ですね。 よく飼いならした犬と一緒。 頭のいい犬は、誰がごはんをくれる相手かちゃんとわかって素直に甘えてくれます。 あなたのおち×ちんも、とっても素直で、とっても素敵。 誰がこのおち×ちんを何年も何年も可愛がってあげてるのか、 ちゃあんと分かってくれてます。 誰とセックスしたら自分が一番気持ちいいか、知ってるんです。 ほら、あなたのおちんちん、 「あんな女のより、奥さんの中に精子いっぱい出して気持ちよくなりたい!」 って、言ってますよ? こんなにおツユまでたらして。 あらあら、どうしたのですか、そんな泣きそうな顔して。 こわい? 私が? まあ。 あなたの奥さんは、全然こわくなんかありませんよ。 あなたに対して世界で一番優しい女ですわ。 そうですとも。 わたしは、 ねえ、あなた。 よぉく、考えてください。 つまらない「出張」に行って、帰ってきたら何もかも失っているのと、 愛する奥さんと気持ちいい一晩過ごして、幸せな家庭がずうっと続くのと、 あなたにとって、どっちがいいでしょう? うふふ、考えるまでもないですわね? 愛してますわ、あなた。 ──たぶん、あなたが思っているよりも、ずっと、ずっと。 527 名前:病み妻3/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 37 11 ID QqWcpa2G はい。ハンカチです。 あ、ネクタイ曲がってますね。 「出張」、とりやめにしてもらうですって? 急に大変ですね。 では、今日ははやく帰ってこられるんですね? お夕飯……家で食べますよね? 何にしましょうか。 今決まらなかったら、お昼頃にメールください。 じゃあ、いってらっしゃい。 あ、昨日は、「仲良く」して、ありがとう。 私、今朝はとっても幸せですわ。 うふふ、はい。 ちゅう。 それじゃ、いってらっしゃい。 ……いってらっしゃい……。 ……お出かけのキスは、あなたからはしてくれないんですね。 やっぱりあの女と……。 ……ああ、どうしたら、あの人に私の想いが伝わるのでしょう。 恋人になっても。 妻の座に付いても。 子供を産んで、あなたの家を守ってあげても。 あなたは、全然、私だけのものになってくれない。 外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、 時間をかけて、全部、私が埋め尽くして占領したのに、 肝心なあなたの本丸だけが手に入らない。 どうしたらいいのでしょう。 いっそ、全部壊してしまったら……。 外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、全部……。 そうですね。 それが……いいのかも……。 そうすれば、本丸も、きっと無駄な抵抗を止めるでしょう。 そろそろ娘が起きる時間だわ……。 私の可愛い娘。 半分が、あの人でできている、私の二番目の宝物。 でも、一番の宝物が手に入るのなら……手に入るのなら……。 528 名前:病み妻4/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 37 45 ID QqWcpa2G すみません、例の出張の件、どうにかなりませんか。 ええ、……はい、妻が……。 あいつ、まだ、病気治ってないみたいで、 まだあの娘が会社にいて、俺のこと狙っているって思い込んでるんです。 ええ、昨日は、相当やばかったです。 なんでも、××さんから直接聞いたって言い張って。 ええ、ええ、わかってます。 あいつの妄想だって。 今回の件、○○に変わって貰えますか。 ええ、すみません。 仲人してくださった部長には、申し訳なく思ってます。 もう少し、時間を下さい。 必ず、なんとかしますから。 あんないい娘、こんなにしちゃったのは俺のせいですから。 あいつのこと、完璧超人だって、甘え過ぎてたんです。 いや、甘えなさ過ぎだったのか。 あいつが、俺の愛情に不安を感じるようになったのは、俺の責任です。 もっとはやく気がついていれば……。 ──え、俺に電話、ですか? 幼稚園から? なんだろう……。 fin 529 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 41 38 ID QqWcpa2G ヤンデレ奥さんに挑戦してみました。 病み方はライトです。 女の配偶者が本気でヤンデレになったら 社会的にも司法的にも男は逃げようがないですねw 530 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 48 49 ID jxk2gvCK 473 今気が付いたがシャーリィがいるじゃないか! 531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 51 56 ID KWN+caou 522 しょうがないさ ブームになれば誤解と誤用で言葉なんていくらでも変わっていくんだから それを乗り越えてジャンルとして定着する日を待とうぜ 532 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 54 55 ID 77zblm7a 529 勃起するほどGJ! 結婚願望ないがヤンデレならありかな、と思っちまったじゃねーか! 533 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18 57 00 ID 7k0oehCA 529 エロくて怖くてテラGJ ゲーパロ専用氏このスレでは初だっけ? 534 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 19 19 49 ID 1IR0CeCR 529 萌え死にそうだ!! そう言う妻と結婚してぇぇぇぇsぇwふぁwkぇg 535 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 20 05 54 ID YEf+ryt0 ゲーパロ氏 乙 貴方が書く妻達はいつも俺のド真ん中ストライクだぜ! 536 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 20 59 39 ID qeMYfttV 子供に手をかけるのはちょっと… あまりにも酷いような…自分がお腹痛めて産んだ子だというのに… それ以外はいいなぁ…こんな嫁さん欲しい 537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 23 01 13 ID y9AgtAZG 536 ヤンデレではよくあること 538 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 23 43 29 ID LeicVXDj ゲーパロ氏GJ!!俺のツボにグッと来たぜ!! ところで最近ヤンデレ曲に凝ってるんだが、何かおすすめない? 539 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 00 10 ID C7yN/DGk 歌ならあるが曲は難しい 540 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 19 44 ID 6S3thTIb リアルヤンデレはやめとけ。洒落にならないから。 友人の奥さんがヤンデレで、友人から話聞いてるだけで唖然とする。 私は、世界と言葉を足して2で割ったようなかんじと評している。 それに対して別の友人は「他人の奥さんに対して失礼だろ」といったが。 536 自分がお腹痛めて産んだ子だというのに… そんなの関係ないから。 友人初婚、奥さん再婚で子供は奥さんの連れ子三人なのだが、 昨年、離婚騒動になったとき、 「子供捨てたら別れないでいてくれる?」と言われたといっていた。 そもそも、子供が離婚の争点ではなかったのに、だ。 とりあえず元鞘になったが、友人が離婚することにしたと話に来たときに、 ストーカーになるだろうから、そのための身を隠す対策まで話していったよ。 こんなのはまだまだほんのひとつの話にすぎない。 ヤンデレは架空の中だけにしとけ。 541 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 26 20 ID dkTgBgPM 540 リアルヤンデレ奥さんの体験談を聞いてみたいので続きをお願いします リアルの情報はなかなか手に入らないから貴重だしw 542 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 28 59 ID l4+6UsaK 539 すまん、言い方が悪かったな。歌でも曲でもオケなんだぜ 543 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 33 44 ID QNHBgmFW 特に連れ子に関しては、ヤンデレじゃなくたって 新夫に気に入られるために、連れ子を苛めるなんてよくある話なわけで 虐待事件で夫が捕まって妻が共犯になるような話も年中でてくるしな。 三次は、生活維持のための寄生や 相手への愛情というより自己愛・自分のプライドといった理由が実はほとんどなのもなー。 544 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00 48 10 ID Ki32tPd0 540 むしろバッチコーイだ。 545 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 01 18 35 ID Lpx1AdBl リアル話はスレ違いだろ…… しかも友人夫婦の話を2chのスレなんかで 住人の娯楽のために吹聴するなんて人としてどうかと思うぞ 546 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02 12 49 ID NmrwwU0V だよな…そんな真面目に深刻なリアル話聞きたくないし しかも、友人の家庭事情を得意気に吹聴してるようにすら見えてむしろ不快 547 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02 27 06 ID Ki32tPd0 だが私はリアルも大歓迎だ 548 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02 30 56 ID OMYK91yp 俺は勘弁だな そういう事語りたいならVIPでやれってな 549 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03 02 00 ID +47kvmc4 525 GJすぐる!! ゲーパロ氏の書くヒロインはみんな可愛いから困る 528 GO!GO!7188の「赤いソファー」とかは? いいヤンデレだと思うんだが… 550 名前:549 [sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03 04 34 ID +47kvmc4 レス間違えた 528じゃなくて 538だな 551 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03 08 03 ID eABMZsD9 525-528 学校であった怖い話のSS版攻略本に岩下嬢と主人公が孫まで作ってる小説思い出したわ 552 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 06 11 33 ID iswosaot ニコニコにヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDがうpされてた これは良すぎる http //www.nicovideo.jp/watch/sm1943511 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1943188 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1942961 553 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/04(金) 06 18 20 ID /zZUav0N 病み妻さんは、いちおう、娘を前にあやしい行動を取っているところを 迎えに来た幼稚園のおねいさんから父親に連絡……という程度でw 本当に手をかけちゃったら連絡は警察から来るでしょうし。 551 どのようなお話ですか? ま、まさか、 旦那を亡くしたヤンデレ妻が、息子と娘を監禁、 「あなたたちは半分ずつ旦那でできてるのだから、 二人で子供を作ったら、100%の旦那が生まれ直ってくれる」と、 姉弟相姦を迫るようなガクブルなお話ですか? 554 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 07 20 23 ID jeEPf23l おねいさんに死亡フラグが(´;ω;`) と瞬時に思ってしまった俺ガイル 555 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 08 59 23 ID 5Mwfr71S 553 ちょっwそれ病み妻ちと狂いすぎww それで息子じゃなく娘が産まれたらどーなることやら… 556 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 11 00 49 ID 1uAm87oV 552 それ、まだ発売されてないはずなのにな そのうち消されるんじゃね? 557 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 11 44 50 ID ujIuh2tb ヒント コミケ 558 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 15 35 29 ID O9G7c3UM 536 ヤンデレが母親になると超DQNになるんだよな。 559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 17 51 16 ID rO+KX9gd そういえば話変わるがガンダムWのノインって隠れてヤンデレっぽくないか? エンドレスワルツの再会シーンで会ってなかった日数を言うんだぞ 最後に会ってから一年ほど経ってたというのに… 本編ではゼクスにノイン以外女の影がなかったからか、覚醒はしてないが 560 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 18 11 37 ID mtzwjC0R 本保管庫の更新ないなと思ってたら臨時が立ってたのか 561 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 19 50 17 ID 8xmsrkOy 報われない思いが熟して熟して熟し過ぎてドロドロになって、監禁とか調教とか たまには暴力になるのがたまらんのです。 で、何が言いたいってヤンデレに監禁されたいってことですよ 562 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 20 07 36 ID 1uAm87oV 俺は殺人とかまで至らない、行き過ぎてないヤンデレが好きだな。 563 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 20 38 51 ID +vHc/2e8 やあ、俺 564 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 21 03 19 ID 5Mwfr71S 新年早々荒々しいなお前ら… 565 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 21 50 55 ID g4s0dDZ2 562 俺もそっちの方が好みだな 首切りとかあるとウヘァッ( A`)って思うw 566 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 22 36 28 ID fXrKvZ+t 553 なんという可愛い奥さん 567 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 22 40 33 ID C8Hmh2GR 562 グロはおれもちょっと苦手だな 独占欲が強すぎて心中とかいや 568 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23 00 49 ID b+xIHtIM 個人的には「見捨てないで!」的なヤンデレが一番ストライク 569 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23 21 37 ID j8EpDJU4 俺的には「これでずっと一緒だね・・・」とか言って監禁しちゃうヤンデレがストライク 570 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23 27 21 ID +47kvmc4 話豚切って悪いんだけど、ヤンデレの女の子を受け入れる主人公の話みたいので何かおススメない? 「あなたと握手を」読んでどストライクだったもんで… 571 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23 31 04 ID PXof3Tr5 569 あれ、俺いつ書き込んだっけ…? 572 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 00 34 39 ID Urlgqy0G 570 最近のだと リッサ氏の短編作品や『ヤンデレ家族と傍観者の兄』かな? 後者は、連載物だから展開によっては、ヒロインを拒否する可能性があるけど 573 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 01 20 00 ID r7beKh48 568 「おねがい、見捨てないでっ!○○さんの次でいいの…。 私は□の側にいられるだけで十分だから」 とか言ってた女の子に 「二番目はもう嫌だよぉ…。□の一番になりたいよぉ…」 なんて言われる展開が好き。 これだけでご飯三杯は食える。 574 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 01 23 15 ID IgllYQNd なんという俺 575 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 03 46 ID wi0YCo1E (おなかいたいよう……あたまもいたい……) 女子トイレの個室に閉じこもり、倉井透歌は一人腹を抑えて苦痛に顔を歪めていた。 トイレの窓から、校庭で生徒たちが騒ぐ賑やかな喧騒が聞こえてくる。その楽しげな響きとは対照 的に、透歌の気分はいつも通り最悪だった。 胃の辺りがずきずきと痛む。頭の奥で誰かが鐘でも鳴らしているかのように、周期的な頭痛が襲っ てくる。手は小刻みに震え目は霞み足は痺れ、吐き気も止まなかった。こみ上げる嘔吐感は、吐瀉物 が喉から出る寸前のところまで上ってきているような錯覚を覚えさせる。 (おくすり、のまないと) 混濁する意識の中、膝の上に置いた鞄に手を伸ばし、中を探る。たくさんの薬が入った専用のプラ ケースと水の入った水筒を取り出すと、それと一緒にたくさんの小さな物体が飛び出してきて、透歌 の体にまとわりつき始めた。 (ああ、妖精さんだ) その物体は、七色に輝く薄い虫の羽を生やした、拳ぐらいの大きさの人間だった。妖精である。 各々が妖しげな、あるいはからかうような笑みを浮かべて、透歌の周囲を好き勝手に飛び回る。 透歌は自分の耳を引っ張り、目に張り付いて視界を塞ごうとする妖精たちを無視して、様々な形の 錠剤十数個を、水で一気に流し込んだ。 しばらく目を瞑ったまま身じろぎもせずに待ち、おそるおそる目を開ける。あれほどたくさん飛び 回っていた妖精たちが、影も形もなくなっていた。頭痛や腹痛や吐き気も、かなり和らいだようだ。 (よかった、おくすり、まだちゃんと効いてるみたい) ほっと息を吐き、薬と水筒をバッグの中にしまいこむ。 先程の妖精は、もちろん現実のものではない。全て幻覚である。 幻覚を見るというのは、大体にして麻薬に手を出しているか精神的な病を患っているかのどちらか であり、透歌の場合は後者だった。原因もよく分かっている。 (赤塚君……) 閉ざされた視界の中に、一人の少年の顔が浮かび上がる。意志の強そうな瞳と穏やかな微笑を作る 唇が印象的な、優しい風貌の少年である。 彼の名は赤塚幸樹と言い、透歌のクラスメイトである。彼のことを思うだけで、普段は今にも止ま りそうなほど静かな透歌の心臓は、まるで火がついたように激しく鼓動を打ち始めるのだ。 (冗談を言って笑っている顔が好き。 友達と話してるときの楽しそうな声が好き。 野球のボールを追いかけるときの、真剣な瞳が好き。 部活が終わったあと、夕陽を眺める横顔が好き。 女の子と話すときの、照れくさそうだけど優しい仕草が好き) 闇の中で、赤塚の顔が次々と移り変わる。 彼の多彩な表情や、繊細な仕草の細かいところまで、透歌は全て覚えていた。ほとんど会話すらし たことがないような仲だが、彼のことをずっと遠くから見つめてきた。 元々、透歌は病気がちな少女だった。小学校中学校と、ほとんどの時間を家で過ごし、同年代の子 供とまともに話した経験など数えるほどしかなかった。 そんな彼女が、今薬を飲みながらにしても公立の高校に通っているのは、間違いなく赤塚のおかげだった。 窓際のベッドに身を横たえる彼女の眼下を、毎日のように駆けていく少年がいた。いつもじっと彼 の姿を追い続けている内に、いつしか透歌はその少年の隣に立ってみたいと思うようになっていたのだ。 幼いころから自分の人生に何の希望も見出せなかった彼女の胸に、生まれて初めて小さな炎が宿っ たのである。その炎は少しも勢いを衰えさせず、それどころか彼の姿を見るたびにますます激しく燃 え盛った。 そうして生まれた狂おしいほどの情熱を糧に死に物狂いの努力を重ねた結果、透歌は気がつけば彼 と同じ高校に通っていたのだった。 入学してすぐに運良く彼と同じクラスになれたこともあり、透歌の体は以前とは比べ物にならない ほど健康になっていた。 毎日ちゃんと登校して、彼の姿を遠くから眺めているだけで、世界全体が眩しく輝いているような 錯覚すら覚えたほどである。 無論、ある程度健康になったとは言え体が弱いのには変わりなかったし、元来内気で引っ込み思案 な上に今までまともに人と話したことがなかったせいで友達も出来なかったが、彼女自身は赤塚を見 つめることさえ出来ればそれで十分に幸せだったのである。 そんな幸せな日々も、長くは続かなかった。 576 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 04 36 ID wi0YCo1E 破局の兆候はいくつかあった。 まず、透歌の赤塚への思いが、抑えようもないほどに膨らんできていたこと。 以前も、彼のことを夢に見たり、ふと「今なにをしているだろう」と想像したりすることはあった。 それが入学して三ヶ月もする頃には、透歌の頭の中はほとんど全て赤塚だけで占められるように なっていたのである。 毎晩夢に見るのはもちろんのこと、路傍の小石から自分とは何の関わりもない海外のニュースに至 るまで、何を見ても彼と関連付けずにはいられないほどである。 また、赤塚の周囲に多数の少女が存在することも、あまり好ましい要素ではなかった。 赤塚の穏やかで温かい雰囲気に惹かれているのは透歌だけではなかったようで、彼の周囲はいつも 華やかな少女たちの声に溢れていたのである。 彼女らはそれぞれ、空っぽの人生を送ってきた透歌とは比べ物にならないほどに魅力的だった。 愛しい彼の恋人としてその隣に立てたら、という透歌の淡い願いは、最初から叶わぬ夢物語に過ぎ なかったのだ。 とは言え、それらが透歌の心に及ぼした影響は、さほど強いものではなかった。 叶わぬ恋であることなど、初めから頭では理解できていたのだ。 だから、激しい思いを胸の内だけに仕舞っておくことも、彼の恋人になるのを諦めることも、それ ほど辛いものではなかった。 (そう、それでいいの。わたしはただ、せめてこの三年間の高校生活の間、ずっと赤塚君を見つめて いられれば、それで) 自分の恋慕の情が届かないことを心の底から悟った後も、透歌のその姿勢はほとんど揺るがなかった。 しかし、それすらも崩れてしまう出来事が起きてしまった。 彼女がその会話を偶然耳にしたのは、一ヶ月ほども前のことである。 いつものように校舎の片隅の窓辺から、校庭で練習する野球部(性格に言えばそれに参加する赤 塚)を見つめた後、下校すべく自分の教室の前を通りかかったとき。 「キモいよなー、倉井」 という、クラスメイトの女子の声が、教室の中から聞こえてきたのである。 どうやら自分の陰口を耳にしてしまったらしいと気付いて、透歌は身を硬くした。立ち去るべきか と迷っている間にも、教室から次々と自分の悪口が飛び出してくる。 「あー、キモいね、確かにキモい」 「なんかさー、倉井の席の周りだけやけにじめっとしてるんだよね」 「カビ生えそうだよね、あれ」 「何も喋んねーし、休み時間も石みたいに動かないしさ」 「不気味っつーの? 何考えてんだかさっぱり分かんないよね」 「なんかビョーキっぽいよね。近づいたら感染しそう」 「ちょっとやめてよー、あたしあいつと席近いんだからさー」 「あいつ一人だけ隔離してもらえばいいんじゃね?」 そんな会話が、下品な笑いと共に耳に飛び込んでくる。かすかに痛む胸を、透歌はぎゅっと押さえた。 (キモい……きもちわるいのかな、わたし) 今まで、自分のことをそんな風に考えたことはなかったが、人から見ればそうなのかもしれない。 (でも、大丈夫。わたし、きもちわるくてもいい。赤塚君を見つめてさえいられれば、それで) そう思いなおして、透歌がその場から立ち去ろうとしたとき。 「幸樹もキモがってんじゃないの、あれ?」 (幸樹……赤塚君!?) 突然出てきた思い人の名前に、透歌の心臓が激しく脈打ち始める。 先程とは比べ物にならないほど、教室の中の会話に集中する。 「え、なに、幸樹がどうしたの?」 「あんた気付いてないの? 倉井さー、なんか、いっつも幸樹のこと見てんじゃん」 「うっそ、マジで!? じゃーなに、倉井、幸樹ラブってこと?」 「うっわ、ありえねー! キモすぎだって。マジなんそれ?」 「マジマジ。あの女前髪長くて半分目ぇ隠れてっから分かりにくいけどさー、よーく見ると、いっつ も幸樹のこと見てんのよ」 「ぎゃー、やめて、マジやめて! なんかあいつの視線ってスゲーねっとりしてそーっ!」 「幸樹かわいそー、呪われてんじゃない?」 「そういう想像しか出来ないよねー。わたしが男だったら、あんなのに好かれてるって知ったら ショックで自殺するわ」 「だよねー。倉井だよ倉井。マジありえねー」 透歌はゆっくりとその場から立ち去った。 577 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 05 17 ID wi0YCo1E 転げ落ちるように階段を駆け下り、朦朧とした意識のまま歩き続けて、気がつけば家に帰り着いていた。 真っ暗な自室の中、電気もつけずに隅っこにしゃがみこみ、先程聞いた会話を何度も何度も頭の中 で繰り返す。 (きもちわるい。わたしはきもちわるい。赤塚君、わたしを見たら嫌な気分になるんだ) 頭が殴られたように痛み、腹の辺りがずきずきと痛み出す。背中から嫌な汗が滲み出し、全身を悪 寒が襲った。 (どうしよう。赤塚君、わたしが見てたら嫌な気分になるって。ショックで自殺するぐらい嫌だって。 赤塚君が嫌な気分になるのはいやだ。でもわたし、赤塚君をずっと見ていたい。だけどそうすると赤 塚君が嫌な気分になる。赤塚君が嫌な気分になるのは嫌。でもわたし、赤塚君のこと見られない人生 なんて考えられない。だけどわたしに見られると赤塚君が嫌な気分に……ああ、どうしようどうしよ うどうしようどうしよう) 思考が堂々巡りし、どんなに努力しても答えが出ない。腹痛と頭痛に加えて吐き気もこみ上げてく る。気がつくと、混濁する意識の中、視界を覆いつくさんばかりに見たこともない生き物が部屋を飛 び回っている。 翌日、透歌はベッドから出ることが出来ずに、結局学校を休んでしまった。 (だけど、わたしはここにいる。わたしに見られると、赤塚君が嫌な気分になると知りながら) 女子トイレの個室の中で、透歌はため息を吐く。 結局のところ、彼女は進むことも戻ることも出来ずに日々を過ごしている。 病院で診てもらったところ、頭痛や腹痛、幻覚等の症状は、全て心因性のものと診断された。透歌 にとっては、いちいち言われなくても分かっていたことだったが。 両親はイジメに遭っているのではないかと勘ぐり、もう学校へは行かなくてもいいと透歌を説得し た。しかし彼女は絶対に聞き入れなかった。 「わたし、どうしても学校へ行きたいの。こんな風になってしまった理由は言えないけど、またベッ ドの中で寝るだけの生活に戻るのは絶対に嫌」 そんな風に強く主張したのは、生まれて初めてのことだった。両親にとってもそれは同様だったよ うで、とりあえずは透歌の意志を汲んでくれた。服薬しながらの通学を認めてくれたのである。 だが、頑張れたのはそこまでだった。苦しみに耐えて学校に通いながら、透歌は状況を何も変える ことが出来ずにいる。 自分に見つめられると赤塚が嫌な思いをするのなら、せめて近くにいられるだけで満足しよう…… そんな風に思い込もうとするのだが、気がつくと彼の姿を目で追っている自分がいる。 (これじゃダメだ。赤塚君に嫌な思いをさせてしまう) 透歌は必死に自分を抑えようとしたが、赤塚が近くにいるだけで、理性など簡単に吹き飛んでしまう。 (赤塚君が嫌がるって分かってるのに、自分勝手な感情を抑えられないなんて。わたしはなんて汚い 人間なんだろう) 自己嫌悪と絶望感は心の病をさらに加速させ、先週更に三錠ほど薬が増えた。 それでも、透歌は自分の病気の原因を、他人には一言も喋っていない。誰かに話して、それが赤塚 に伝わってしまったらと思うと、怖くてたまらなかった。 (わたしはどうしたらいいんだろう) バッグを持って個室のドアを開けながら、透歌はぼんやりと考える。 (近くにいると赤塚君に嫌な思いをさせてしまうのに、彼から離れるのには耐えられないなんて) 女子トイレから出る直前、壁にかかった鏡の中に自分の姿を見る。 青白い肌、長い前髪に隠された目元、色素の薄い唇、痩せこけた頬。 (ああ、本当だ、きもちわるい。わたし、墓場から出てきた幽霊みたいだ) そんなことを考えて、透歌はふと微笑んだ。 幽霊。もしも自分が幽霊だったら、どれだけいいだろう。 そうすれば、誰かに気付かれることなく、本人に悟られて嫌な思いをさせることもなく、ただただ 彼のことを見つめていられるのに。 (幽霊、か。死んだら、幽霊になれるのかな) 異常な考えだと、理性が警告する。だが、自分でもそうだと理解できるほどに異常な思考は、闇に 差した一筋の光のように、ゆっくりと透歌の心に広がっていく。 (そうだ。死んで幽霊になればいいんだ。大丈夫、わたし、こんなに赤塚君のことが好きなんだもの。 きっと、出来るはず。そうだ、死のう、死のう。今日死のう、今すぐ死のう。屋上から飛び降りれば、すぐだ) 決心した透歌は、女子トイレの扉を開けて外に出た。 すぐに屋上に向かおうと踵を返したとき、不意に後ろから声をかけられる。 「倉井さん」 心臓が大きく脈打った。 578 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 06 33 ID wi0YCo1E (この声……! え、でも、そんなはず……) かき乱された思考がぐるぐると渦を巻き、透歌は深い混乱の中に叩き落される。 それでも、体はゆっくりと後ろを向いていた。前髪で半ば塞がれた視界の中に、彼の姿が見える。 (赤塚君……!) 透歌は目を見開いた。あり得ない事態に、呼吸をすることすら忘れてしまう。 (なに、なんなの、何が起こってるの? ああ、これも幻覚? おくすり、効かなかったのかな?) 混乱と緊張に身を震わせる透歌に、赤塚は優しく穏やかな微笑を浮かべてみせた。 「ごめんごめん、特に、用があったわけじゃないんだけどさ。あれ、ひょっとして急いでた?」 近づいてくる赤塚に、必死で首を横に振る。彼は「そっか、よかった」とほっとしたように言いな がら、透歌から二歩ほどの距離を空けて立ち止まった。 「大丈夫? なんか、いつもより具合が悪そうだけど」 心配そうな顔でそんなことを言われて、透歌はますます混乱した。 (ああ……わたし、赤塚君にこんな顔させて……あれ? でも、赤塚君、わたしを心配……? うう ん、そんなはず……でも……) とにかく何か言わなければと思い、透歌は必死で口を開く。 「……あの……だ、だいじょぶ、です……」 小さくか細い声だった。ちっとも大丈夫そうに聞こえない。透歌は心の中で自分を呪う。 赤塚の方は特に気にした風でもなく、「それならいいんだけど」と困ったように笑った。 「なんか、倉井さんっていっつも元気なさげだからさ」 「……い、いつも……?」 「そうそう。ほらなんか、凄い痩せてるし、今にも倒れそうな感じでさ……やっぱ、気になるんだよね」 「……気に、なる……?」 透歌の体が、冷水を浴びせられたかのように冷たくなった。 (気になる……! 気になるんだ、やっぱり気になるんだ……! きもちわるいぐらいに痩せてて、 今にも倒れそうな不気味な女がいつも自分のことを見つめてるから気になって、赤塚君いつもわたし のせいで嫌な気分になってるんだ、わたし、やっぱり赤塚君に嫌な思いを……!) そうに違いないと覚悟していたことではあったが、本人から直接事実を突きつけられたときの衝撃 は想像以上のものだった。 「……? 倉井さん?」 怪訝そうな赤塚の声が、やけに遠くに聞こえる。遠のく意識を、透歌は必死に繋ぎとめた。 (ああ……せめて、せめて、謝らなくちゃ……! 嫌な思いをさせてごめんなさいって、もう二度と しませんってちゃんと言わないと……!) その思いを伝えようと、透歌は必死に口を開く。声の代わりに、涙が出た。 「倉井さん!?」 「……っ……ごめ、ごめんな、さいっ……!」 「お、落ち着いてよ、なんで急に泣いて……っていうか、なに、なんで謝るの? お、俺に謝ってるの?」 「……わ、わたし、赤塚君に嫌な思いを……」 「は? え、俺?」 困惑したように自分を指差す赤塚に、透歌は無言で頷いた。彼は頭をかきながら、なだめるように言う。 「……よく分からないけど、とりあえず、落ち着いて、話してくれないかな?」 「……は、はい……」 まだ混乱の渦中にあったが、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いてきた。透歌はしゃくり上げながら、 謝罪の続きを口にする。 「……あの、わ、わたし、こんな青白くて骸骨みたいに痩せててきもちわるくて……な、なのに、い つも赤塚君のこと見てるから……それで、嫌な思いをさせて……」 人と話すのは苦手だったが、とにかく何とかして謝罪の意志を伝えようと、透歌は思いつくままに 一生懸命喋った。だが案の定上手く伝わらなかったようで、赤塚は眉間に皺を寄せてしきりに首を 捻っている。 「……えーと、まだ、ちょっとよく分からないんだけど……つまり、倉井さんは俺に嫌な思いをさせ たと思ってて、そのことを謝りたいと思ってる……ってことで、いいんだよね?」 「……は、はい……」 自分の意志が伝わったことにほっとする透歌の前で、赤塚はまだ首を捻っている。 「……あのさ、なんか、誤解してるみたいなんだけど……」 「……ご、誤解、ですか……?」 「ああ。いや、俺、倉井さんのせいで嫌な思いをしたことなんか、一度もないんだけど……?」 「……え……?」 今度は透歌が困惑する番だった。 (どうして……? 赤塚君、嫌な思いをしてないって……でも、わたしのせいで……) 戸惑う彼女をじっと見つめていた赤塚が、不意に声の調子を変えて切り出した。 579 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 08 08 ID wi0YCo1E 「それより、聞きたいことがあるんだけど……」 真剣な声音に驚いて顔を上げると、視界の真ん中に赤塚の瞳があった。透歌が憧れていた、あの 真っ直ぐで意志の強そうな瞳だ。瞬間的に顔が熱くなり、透歌は思わず顔を背けてしまう。だが、赤 塚はそんなことなど気にも留めないかのように言った。 「倉井さんさ。さっき、自分のこと気持ち悪いって言ったよね?」 「……ええと……」 透歌は思い出そうとしたが、必死過ぎたせいか、先程まで喋っていた内容をほとんど思い出せなかった。 「……誰かに、そう言われたの?」 どきりとした。おそるおそる顔を前に戻すと、赤塚は相変わらず、馬鹿正直なほどに真っ直ぐな視 線を透歌に注いでいる。 (ああ……赤塚君の顔が、こんなに近くに……!) 先程とはまた違った意味で、透歌は身動き出来なくなってしまう。 その肩を、不意に赤塚の両腕がつかんだ。呼吸が止まりそうになる。少年らしい細さを残しながら もしなやかに鍛え上げられた赤塚の両腕が、自分の肩をつかんでいる。彼の手の平の温もりが制服の 布地越しに感じられて、冗談抜きで失神しそうだった。 そんな透歌に、赤塚は力強い声で言った。 「俺は、そんなこと思ってないから」 その声が、透歌の意識を現実に引き戻した。 「確かに倉井さんはちっちゃいし、今にも倒れるんじゃないかって心配になるぐらい痩せてて、いっ つも元気なく見えるぐらいに青白いけど……」 透歌の肩を握る手に、力が篭った。 「倉井さんは、気持ち悪くなんかない。絶対に。少なくとも、俺はそう思ってるから」 強い感情が込められた言葉だった。その一語一語を、透歌は全身で受け止めた。言葉は血潮に宿っ て透歌の体内を駆け巡り、まるで魔法のように、彼女の冷たい体を温めた。 (お日さまに抱きしめられたみたい) 心臓が力強く脈打つ音を、透歌は確かに聞いた。赤塚の温もりに、汚い体が浄化されていくのを感 じる。気がつけば、透歌はまた涙を流していた。苦しさや悲しさ以外の理由で涙を流すのは久しぶりだった。 「く、倉井さん? ご、ごめん、俺、なんか変なこと……」 赤塚が慌てて透歌の肩から手を離す。透歌は頬を伝う涙の温かさを感じながら、ゆっくりと口を開いた。 「……ありがとうございます、赤塚君」 「え?」 「……わたし、赤塚君の言うとおり、あまり元気じゃなかったんですけど……赤塚君のおかげで、す ごく元気になりました」 「そ、そう……?」 「はい……だから、あの……もう、大丈夫ですから……あ、ありがとうございました!」 これが本当に自分のものかと疑うほど、自然に大きな声が出た。目の前の赤塚もこれは予想外だっ たようで、驚いたように目を瞬いている。気のせいか、頬も若干赤くなっている。 途端に恥ずかしくなってきた。体の熱が顔まで上ってくるのを感じる。 「あ、あの……あの、あの……えええ、えーと……し、失礼しますっ!」 何を言うべきか分からないまま、透歌は踵を返してその場から逃げ出した。 昼休みも終わりに近づき、廊下には徐々に人が増え始めている。普段の倉井透歌を知るわずかな生 徒たちが、我が目を疑うような表情を浮かべる中を、透歌は小走りに走り抜ける。もはや、誰に何を 言われようが、どんな目で見られようが、全く気にならない。心の代わりに体が馬鹿になってしまっ たようで、空も飛べるのではないかと錯覚するほどに、腹の底から訳の分からない力があふれ出してくる。 (そうだ、もう何も気にならない。あの瞬間の思い出があれば、わたしはこれから一生生きていける!) 確信を抱いて走る透歌のバッグから、薬の入ったプラケースが飛び出し、床に落ちて軽やかな音を立てた。 こうした次第で、倉井透歌は再び元気を取り戻した。 とは言え、基本的に内気な彼女のこと、愛しい赤塚との仲は以前とそれほど変わらなかったようで ある。この後も透歌は周囲にキモいと陰口を叩かれながらも、それを全く意に介さず、幸せな気分で 赤塚のことを見つめ続けた。 ただ、見つめられる側には若干気持ちの変化があったようで、今度は逆に赤塚の方から透歌を見つ めることが多くなったらしい。 互いに「相手の気を散らさないように」と過剰なほど気を遣うせいで、目が合うことは滅多にな かったそうだが、 「こっちのちょっとした仕草が原因で大袈裟に悩む倉井さんが相手なんだから、これぐらいがちょうど いいのかもしれないなあ」 赤塚は、半ば諦め半分にそんなことを考えたりするそうである。 580 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 11 43 ID wi0YCo1E 刺したり斬ったり殺したりしないヤンデレを目指しつつ、 「自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと気に病みすぎる、とかでもヤンデレになんのかなあ」 だのといろいろ考えた結果、なんだかよく分からんものが出来たのでとりあえず投下してみた。 愛されてもまともにならないのがヤンデレなんだろうか。 ヤンデレでも愛されればまともになるんだろうか。 個人的には病んでた人が浄化されて健康になったときのギャップに萌えるんだが、 そういうのはヤンデレに含んでいいものなのかどうかと(ry 悩みはつきませんなあ。 581 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 24 38 ID CU/sUzFr 580 good job. 赤塚くんの優しさに感動。 もし赤塚くんがここまで優しくなかったり、励ましたりしなければ 倉井さんはずるずると病んでいってしまったんだろうなあ、と考える。 事前で食い止めるという展開はこのスレでは貴重な存在だから、参考になったッス。 582 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 41 06 ID hPVfcmeS 580良い物が見れた。 例えるなら、キモ姉とキモウトのレズプレイ並に珍しい物だな。 GOD JOB。またこういう暖かいSS書いてくれる事を期待してる。 583 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03 41 41 ID snBO2NzB 580 なかなか新鮮みがあってヤンデレに対する新たな視点も持てるようになったし実にGJッス 584 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 04 35 07 ID 4wO/f3Hx コメント読むまで病気だからヤンデレとかいう洒落かと思ってた 585 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 09 56 21 ID roRhHr26 580 GJ こういうの好きだなあ 586 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 10 43 26 ID i++E2zMv 580 GJ 自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと~ ヤンデレの代名詞みたいに使われてる楓だって「自分は相手にふさわしくない」から病んでったようなもんだし 十分それもヤンデレだと思う 587 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 10 51 48 ID hJ6KMA+X うむ、いい仕事。 でもやっぱり物足りないと思ってしまったりもする。 588 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 12 59 13 ID UdtzBt2Z ならその足りない部分をあんたが書いて補完すればいいじゃない 589 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 14 52 10 ID IgllYQNd 580 GJです、続きはくるのかな? 590 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 17 33 38 ID zD98KsMj 超グッジョブ! 続編期待 591 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 18 06 26 ID A7NuXFuT 新鮮だなぁと思った GJ 592 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 22 56 45 ID nlIZiIOY ドラマ見てて思った。 のだめってヤンデレじゃね? 593 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 22 59 18 ID 1S8RRNk8 は? 594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23 34 30 ID nKxuZuzq お前は何を言っているんだ 595 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23 40 01 ID J9Mqxn7w まあ確かにちょっと情緒不安定なところはあるが。 596 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23 56 38 ID IgllYQNd 芸術家なんてそんなもんだろ 597 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 00 55 09 ID 6sQOg6j8 ヤンデレとメンヘラが区別つかないときはあるよな 散々議論されてると思うがどうなんだろ 暗いメンヘラが恋した場合もヤンデレ扱いになるのかね? 598 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 02 17 31 ID dB+IXdzk 全然違うだろ メンヘラ→頭の中がお花畑 ヤンデレ→頭の中が意中の人だけ 599 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 07 23 09 ID 6sQOg6j8 メンヘラ→のだめ→ぎゃぼー ヤンデレ→未来日記→ゆっきーゆっきー つまりこうだな? 600 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 07 26 15 ID i9Uu0K44 少なくとも言えるのは、三次元にヤンデレはいないということだ 601 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 10 02 11 ID l95zkhPw 異常に嫉妬深い女とかはたまにいるけどな 602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15 22 24 ID t/Y3dtrL 「○○君が半身不随になればいいのに」 「そうすれば私が一生面倒見てあげられるのに」 とリアルで言った女の子ならいるぞ。 603 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15 43 40 ID OeCUS3QL 「お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!!」を忘れるわけにはいくまい 604 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15 56 52 ID t/Y3dtrL あ、よく考えたら本保管庫の「彼が望むなら死んでもいい」 あれの元ネタがまさに三次ヤンデレだったな 605 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19 01 38 ID bNewDtk5 603 作り話で落ち着いたんじゃなかったか?あれは 606 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 05 22 ID MdISYtqU 流れを切りますが投下 かなり今更だけど トリつけないでの投下すみませぬ 607 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 06 13 ID MdISYtqU 9 「そういう水無月さんだって、20分前行動じゃないか」 そう言いながら、振り向く。 視界を変えた先に立っていたのは、水無月さん。 「確かにそうだね」 そう言い、水無月さんは軽く微笑む。 そんな表情に一瞬ドキリとしたが、直ぐにいつも通りに戻る。 「まぁ、二人共しっかりしてるという事でいいか。 それで、何を買いにいくの? さすがに荷物持ちと言っても、数十キロとかの荷物は持てないからね」 少し冗談を言い、水無月さんの反応を伺う。 さすがに、只の買い物で数十キロなどいくわけがない。 そんな事を聞いた水無月さんは、少し考える様な仕草をして、 「分かった、9キロ位に抑えるね」 「え?」 返ってきた水無月さんの言葉に、思わず驚いてしまった。 「冗談だよ。今日は、少し雑貨屋にでも行こうかと」 冗談か… 力にはそこまで自信がなかったという理由から、 安心してしまった自分が少し情けない。 「うわぁ……案外面白い所だね、ここは」 雑貨屋に入った時、思わずそう言ってしまったのは無理もない。 入った瞬間に視界に写る、見渡す限りの物、物、物。 数えきれない程の物が置いてありながら、 ぬいぐるみ、コップ、お菓子、香水、椅子、etc……と、種類もかなりある。 少し遠くから、音量が高い歌も流れてきて、耳に届いてきている。 少し前に流行った曲で、僕は今でも聞いている。 人の姿も、それなりに居る事も分かる位、入り口からでも人が視界に入る。 雰囲気や、中の様子が想像とはかなり違った。 何故かは分からないが、質素なイメージで、 あまり人がいない様なイメージが自分の中で勝手に定着していたのだ。 「あまりこういった所には来た事ないの?」 「いや、来た事はあるかもしれない。 だけど来た憶えが全然ないかな」 来た事があったとしても、その事を全く憶えていなければ来た事がないのと同義だ。 「へぇ…… やっぱり男の人はこういった物にあまり興味がないのかな?」 そう言いながら、水無月さんは目の前の棚に置いてある少し大きめの、 丸い形の豚のぬいぐるみを手にとり、こちらに差し出す。 「多分そうだと思う……かな?でも僕としては、 とりあえずこの店には興味があるよ」 目の前に差し出された、豚のぬいぐるみを手に取る。 「うわぁ………これで2000円もするものなのか」 608 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 08 09 ID MdISYtqU 「結構ぬいぐるみは高いよ。 だから私は買うとしたら、いつも手の平サイズ位の大きさにしてるよ」 「という事は、これは大体サッカーボール位の大きさだから買わないというのか」 手にあるぬいぐるみを元の棚に戻す。 僕の手によって棚に戻ったぬいぐるみは、 寂しげな目でこちらを見ている気がした。 「残念ながら、ね。 もう少し安かったら買っていたと思うんだけど……」 そういうわけだってさ、と、豚のぬいぐるみに視線を送る。 「なるほどね…… ところで、いつまでも同じ棚の前に居るのもなんだから、奥に進もうか」 「じゃあ、あっちからでいいかな?先に見たい物があったから」 水無月さんは右側を指差した。 指差した方向を見ると、どうやらあっちの方には食器類を主に置いているようだ。 「元々僕は付き添いだから、水無月さんの行く方向についていくよ」 「………うん、そうだね。じゃあ、行こうか」 今の間が少し気になったが、 水無月さんが、先程指差した方向に既に歩きだしていたので、足早に追いかけた。 水無月さんの目的の場所に着いて周りを見ると、 さっきは基本的にぬいぐるみをメインに置いてあったのだが、 ここは食器をメインに置いてあるようだ。 目の前の棚で見かける食器としては、コップやご飯茶碗が一見して多い。 「コップでも買うの?」 そんな棚の前でしきりに品を見ている水無月さんを見て、 疑問に思った事をそのまま口にする。 「うん、その通りだよ。と言っても、なかなかいいのが見つからないんだけどね」 「どんなコップが欲しいの?」 「うーん………マグカップが欲しいかな?」「マグカップねぇ…………」 そう呟きながら、周りの棚を法則性なく見回す。 ふと、棚の一番右、上から3段目の棚にある白いマグカップと、 その右隣に配置されている黒いマグカップに目が止まった。 見ると、そのマグカップの表明には色しか目に写らない。 棚に向いている方に模様があるのかと思い、白いマグカップを手に取ってみる。 手に取ってマグカップを右に回しながら見るが、続くのはただひたすらの白。 何も無い事が分かったので、白いマグカップを元の位置に戻し、 今度は右隣に置いてある黒いマグカップを手に取る。 先程の白いマグカップと同様に、右に回しながら見るが、 今度は白と対象的とされり、黒が続くだけ。 模様があるかもしれない、という事に期待していたわけではない。 なので、何もないと分かると同時に、何の未練もなく、マグカップを元の位置に戻す。 そんな今までの僕の様子を、隣で見ていたらしい水無月さんが、 棚に戻したマグカップに手を伸ばし、白と黒、両方を手に取る。 しばらくそれらをじっと、見つめていた後、「これにしよう」 「ん?それでいいの?」 609 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 08 50 ID MdISYtqU 水無月さんは手に持っているマグカップに視線を落とし、 「うん、私はシンプルな物が結構好きだからね」 そう言いながら、マグカップを手にレジに向かい歩き出す水無月さん。 水無月さんの後に付かず離れずの距離を保ち、後ろからついていく。 後ろから付いていくと、先程の真っ白なマグカップを思わず思い出した。 改めて認識させられるが、水無月さんの髪はそれ位に、真っ白でいて、綺麗だった。 後ろ姿を見ると分かる、雪のような純白。 正面から見ると目立ちすぎない程度に見栄えを飾る髪質。 そんな髪からは、 純粋という雰囲気さえ醸し出している気がする。 と、また人の事をじろじろ見てしまっていた。 失礼極まりない。 「買ってきたよ~」 僕に見せる様に、水無月さんは、 ビニール袋を持った手を顔の高さ位まで上げて軽く揺らした。 「マグカップなのにビニール袋なの?」 「あぁー……それはね」 結構耳に残る音を発しながら、 ビニール袋の中から薄い黒の箱を取り出した。 「ちゃんと箱に入ってるよ。 でも、箱に入っているからといってビニール袋に入れるのも、 確かに変な感じだね」 割れ物がビニール袋というのは、 どこかにぶつけただけで直ぐに割れてしまう、という不安が生まれる気がする。 「箱が黒いって事は、それは黒いマグカップ?」 「正解~ 正解者には景品としてこのマグカップを贈呈」 僕の両手を掴み、おもむろに水無月さんが手に持っていた箱を、その両手に置く。 「ん? 水無月さんが欲しいから買ったんじゃないの?」 「この黒いやつは違うよ。 これは今日の買い物に付き合ってくれたお礼だよ。 大体、女の子に黒いマグカップは似合わないって」 確かに 「そういうわけだから、遠慮なく貰ってくれると助かるなぁ…」 断られるのを心配しているのか、しきりに貰うように催促してくる。 僕としても、お礼というからには、もらわない方が逆に悪い気がした。 「分かったよ。遠慮なく貰ってく」 610 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 10 15 ID MdISYtqU 「それじゃあ、今日はお開きにしましょうか」 雑貨屋を出た後、直ぐに帰る事になった。 どうやら水無月さんはこれからやる事があるらしい。 しばらく繁華街の街並みをぼんやりと眺めながら、 水無月さんと肩を並べて歩く。 これといった事はなかったと思うが、何故か奇妙な沈黙が生まれていた。 前述した通り、理由は勿論分からない よく分からない沈黙だった為か 「じゃあ、私はこっちだから」 待ち合わせ場所にいつのまにか着いていた、という事に気付いたのは 僕が帰る方向と違う方向を指さしながら、 僕に話かけた水無月さんの声を聞いてからだった。 「分かった。じゃあまた明後日、学校でね」 「うん、じゃあね」 二人で言うと同時に、各々の帰路に進む。 それにしても、買い物といってもあまり時間がかからなかった。 携帯を開いて時刻を見ると、約3時30分。 水無月さんに会ってから1時間30分位しか経っていない。 用事があったようなので、仕方がないといえば、仕方がないが。 お詫びの様な感じで付き合ったわけでもあるし、同時に親交も深められたと思う。 更に言えば、結構楽しかった。 最後の奇妙な沈黙が気になったけれど。 水無月 雪梨視点より 今日は本当に楽しかった。 隣には健二さんが居て、他愛もない物を二人で探して、 雑貨屋で買った色が違うだけのマグカップを二人で分けて…… これはデートと呼んでも差し支えないと思える。 健二さんはそんな気がなかったみたいだったのが、 残念だったけれど。 本当は、これから喫茶店にでも入って、健二さんと談笑をして、 しばらくしたら景色が綺麗な所にでも行って、 良い雰囲気を作る…………筈だったのに!? 全てがぶち壊された。 楽しくなる、至福の時だっただけに、 それが壊された時に感じる怒りは、相当なものだった。 相当というか、ここまで怒りの感情を持ったのは、 初めての事かもしれない。 611 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19 12 10 ID MdISYtqU でもそんな怒りも今は抑えなければ駄目。 これから壊れた元凶……… ううん、壊してくれた人に会うんだから、怒りの感情のままに アレに会っては駄目だ。 少し冷静になろう。 今日の事は、近いうちにお礼をすればいいだけだ。 私は待つ、あの―――― 「ちょっと待ってくれないかなぁ?」 女が話掛けてくる事を――――― 投下終了 書けてはいたけど、色々あって結局こんなに遅くなったorz 次はもう少し早く時間を見つけて投下します 612 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/06(日) 19 31 29 ID yGhd3AuV GJ 613 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19 48 43 ID l95zkhPw 投下待ってたよ!GJ! 614 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19 48 44 ID w6euMmyH 続きにも期待 GJ! 615 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 20 40 50 ID cB2YyUiR 海外ドラマ[CSI・科学捜査班シーズン3]の話で、父親を愛する余り、自分の母親を殺し、「私はパパを愛しています」と断言し、なおかつ想像妊娠で母乳を垂らし、お腹を膨らました娘にヤンデレを見て萌えた俺に後悔は無い! 616 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 21 23 27 ID t/Y3dtrL 611 久しぶりの水無月さん、ほのぼのデート…… と思いきや次回が楽しみになって参りました。 あと、次回の投下ではsageてクリ 617 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 21 24 34 ID dB+IXdzk 615 二次でやってくれたらネ申だったなw 618 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 22 11 45 ID 15I4eDD/ 615 なつかしい! 去年、その回を元にして一つ書こうって思ったのに結局へたれ根性の俺には書けなかったのを思い出した あの娘役の女の子は外人の中でも相当な美少女でした 619 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 22 40 08 ID cB2YyUiR 618 おお!知ってる人がいた 再放送を寝坊して慌てて見たら丁度、娘が母乳を垂らすシーンだったww ホント、美少女だし良い娘役だった 事情聴取のやり取りはゾクゾクしたww あの「お腹には赤ちゃんがいるの!」なんかの演技はサイコーだった これを気に、書いてみない? 620 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23 05 58 ID +gi+WNmh 親子モノは気持ち悪い。 621 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23 20 31 ID KgwAyo8e 620 許せない! あたしとパパを引き裂こうとするなんて! 622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23 30 47 ID 9z5CGot7 娘を狂わせるほど良い親父を目指… さなくていいよな… 623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23 33 54 ID xwzgwDtW ちょっとTSUTAYA行ってくる 624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23 35 19 ID HV+Auqu4 611 スゲェ楽しみにしてたんだ!! GJ!!! 625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 01 43 24 ID TRn5NQTL なによ #8230; #8230; 620 #8230; #8230;ヤンデレまにあじゃ無かったの? どうしてこんな所でお父さんとふたりで居る邪魔をするの? お父さんはわたしだけを愛しているの。 わたしだけがお父さんを愛せるし、わたしだけがお父さんに本当の夢を見させてあげられるの。 だって 620はお父さんのことを愛する資格なんて無かったもの!! だからわたしがあのとき #8230; #8230;あのとき #8230; #8230;! 620を #8230; #8230; 620の背中を #8230; #8230;!! 626 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 02 47 18 ID qQgGRSWP 615のは何話目? その巻を借りようと思って調べてみたんだが、わからないので教えて ください。 627 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 04 24 ID dZn94GdP 620 モルダー…あなた疲れてるのよ…… 親子だから良いんじゃないか!! 628 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 09 13 ID Dwn9Nfj7 流れを切ってすいません。投下します。 629 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 10 08 ID Dwn9Nfj7 第二十三話~令嬢の誤解~ 食事を済ませたあと、俺と華はこの町が建てた図書館へと足を運んだ。 移動手段は徒歩。実はさっきまで食事をしていたファミレスと自宅、あと自宅から図書館までの距離は そう遠くはない。自転車に乗らなくても二十分少々歩けば到着する。 女性に長く歩かせるのは良くないということは経験上知っているのだが、華はどうやら例外であるらしく、 図書館に着くまで疲労を訴えたりすることはなかった。 それどころか上機嫌ですらあった。弾んだ声音で何度実家の素晴らしさを語られたことか。 実家に帰りたくない、というわけではない。だが帰りたいわけでもない。ちょうど中間ぐらいだ。 フリーターとなった今の状況では一旦実家へ戻り態勢を立て直すべきなのだが、退職してからすぐに 実家へ戻らなかったため、すでに悪い方向へ向かってしまっている。 下手をすればこのままずるずるとフリーターのまま、数年間過ごすことになってしまう。 切り詰めた生活を送っていくよりは、就職してそれなりの暮らしのほうがずっといい。 早いところなんとかしなければならない問題だ。 もっとも、今抱えている問題の方がずっと深刻で、恐ろしく解決困難なのだが。 平日らしく、図書館の駐車場には軽自動車が二台駐まっているだけだった。 来館している人間はかなり少ないと見ていいだろう。理想的な状況だ。 華は、俺の隣で周囲を鋭い目つきで見回していた。 「駐車場、ここだけですか? 近くに車が駐められそうな場所なんかありましたか?」 「ここだけだ。他には……駐めようとすればどこでも駐められる」 人が居ないわけではないが、かといって昼に散歩しても誰ともすれ違わない程度の大きさの町ではそんなものだ。 事実、ここに来るまですれ違ったのは車だけだった。 「何でそんなこと聞くんだ?」 「いえ。あの女が来るんなら、車のはずだと思ったので」 「あの女……って、かなこさんか」 「前、一度だけ大学に高級車でやってきたことがあったんですよ。運転手付きでした」 「ああ。あの車ね」 覚えている。やけに丈が長くて、かすり傷一つ付いていなさそうな程に滑らかなボディをした黒塗りの高級車が この駐車場に駐まっていた。その時はともかく、今はあれが菊川家のものだとわかる。 あの車を見た後で俺は首を絞められて意識を失い、かなこさんとの会食の場へ連れて行かれたのだから。 「あれだけでかい車なら、ここに歩いてくるまで嫌でも目に入ってくるだろ。 それに、このタイミングでかなこさんが図書館に来るはずがない」 無事なのかどうかも怪しいし。大して筋トレもしていない俺が、どうしてそうすることができたか不明だが、 腹に拳を打ち込んで窓の外に飛ばしてしまった。無事かどうかは確認していない。 無事だったとしても、俺が図書館にやってきたタイミングで鉢合わせするとも考えにくい。 俺の身の回りでは考えられないことばかり起こっているが、今だけはそう信じたい。 「来ていたとしても、どうだっていいことですし、ね。私が付いているからには安心ですよ、おにいさん」 「ありがとよ」 四つ歳の離れた従妹に勇ましく頼り甲斐のある台詞を言われたが、俺は平静を装った。 図書館では騒がないでほしいが、いざという事態になったら華は約束なんか忘れてしまうだろうから、 注意することもしなかった。 630 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 12 37 ID Dwn9Nfj7 自動になっていないドアをくぐり抜け、館内へ足を踏み入れる。土足でもオーケーなのはありがたい。 中にいる人間はカウンターの向こうで黙々と仕事を進めている職員だけで、 フロアに用意されている席に座って本を読む人間は誰一人としていなかった。 「あの女の姿も見当たりませんね。よっぽどおにいさんのボディブローが効いたみたいです」 「単に来てなかっただけだろ」 あと、わざと殴ったみたいな言い方をするな。殴ったのは事実だけど、殴るつもりはなかったんだ。 「そうと分かってもゆっくりしてる場合じゃありません。早いところ用事を済ませてきてください」 「お前は? 一緒に行かないのか?」 「私は誰か来ないか警戒しておきます。もしかしたら今から、ってことも考えられますしね」 「わかった。じゃ、行ってくる」 「はい」 華と別れ、カウンターの前へ。向こう側では女性職員がコンピューターに入力作業を行っていた。 遠慮するような静けさのタイプ音が止んでから、職員は立ち上がった。 「返却ですか?」 「いえ、ちょっと聞きたいことがあって。今、いいですかね」 一応確認をとっておく。 職員は一度パソコンの方へ目をやって、また俺へと戻した。 「構いませんよ。答えられることなら」 期待通りの返事をもらえた。左手に持っていた二冊の本をカウンターの上に置く。 「この間、だいたい二週間ぐらい前ですけど、このタイトルが無い本のことを聞きに来た女性がいませんでした?」 「んー……ああ! あの長い黒髪の美人さんですか。覚えてますよ。 いきなりやってきて、これこれこういう本がありませんか、って聞いてきたんです。 その本は以前さらっと読んでいたので内容は知ってましたから。ありますよ、って答えました」 「それから、この本を借りるんじゃなくて」 「ええ。わたくしにこれをくださいませんか、って言ってきました。 くださいと言われても、一応町のものだからあげられないですよ、こっちとしては。 で、何度か問答しているうちに館の責任者が出てきたんで、今度はそっちに聞きに行ったんです。 断るんだろうなと思って見てたら、二三会話するだけで責任者が頷いて、その女の人は本を持って出ていきました」 「どんな話をしていたかは?」 「名前を聞かれて、それに女の人が答えて。で……いきなり態度が変わったんですよね。 女の人じゃなくてこっちの人間が。急にぺこぺこ頭を下げて、なんでもお申し付けください、とか言って。 それから、この本をください、はいどうぞ持っていってください、って感じでした」 「へえ……」 さすが有力者の娘。図書館の館長クラスにまで名前まで知れ渡っているのか。 「その後は本を持って帰っていきました。私が知っているのはそれぐらいです」 で、かなこさんは外に出て行って、帰ろうとしている俺を発見して捕まえたわけだ。 こっち側の本――『無題』をかなこさんが所有することになったのはそこからか。 631 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 14 01 ID Dwn9Nfj7 「他には何か?」 「その本なんですけど、昔からここの図書館にあったものなんですか?」 「んー……どうでしょうね。ずっと昔からここに勤めていたわけじゃないですし。 引き渡した後、関係する書類を見たら館で所有していた期間は不明、って書いてありましたね。 というか、書類そのものが曖昧で。タイトルの無い本なんか普通こんな場所では扱いませんよ」 「誰が寄贈したかとかも、やっぱり?」 「わからないですね。あ、でも…………」 ここで、女性職員が背後を振り返り、次いでフロア全体を見回すように視線を泳がせた。 「どうかしました?」 「……上の人に見つかったらちょっとまずいんです。内緒にしてくださいね?」 そう言って、身を乗り出してきた。俺も少しカウンターへ体を寄せ、耳打ちを聞く態勢を取る。 自然に、俺の視線は横に向くことになる。視線の先には、入り口付近に立つ華の姿があった。 そして、不機嫌な効果音を出しそうな顔に貼り付いている瞳と正面からぶつかった。 なぜ、華の視線が俺に集中しているのだろう。 警戒しているのはかなこさんに対してではなく、俺の動きに対してなのだろうか。 女性職員とはしょっちゅうこの図書館に来ているせいで顔見知りではあったが、お互い名前も知らない。 俺自身、この人と何らかの関わり合いを持とうとは思っていない。華に注意されるようなことはしていないのだ。 入り口から目を逸らす。見えない重圧がかかっているような気がしたが、気のせいにしておく。 「なんか最近、館の責任者の羽振りがいいんですよね。いっつも上機嫌で。 車も買い換えてました。役場に行くとか言って今日も出ていったんですけど、たぶん昨日みたいに 夕方になった頃に帰ってくるはずですよ」 「そりゃ……また、どうしてですか?」 「予想ですけど、さっき話していた女性が来て数日が過ぎた頃からそんなふうなんで、 女の人からお金をもらったんじゃないかな、って。本を渡したお礼みたいな感じで。 きっとその本は特別なもので、あの女性はすごい大金持ちだったりして、とか!」 耳のすぐ傍から弾んだ声音で話しかけられる。顔は見えないが、笑っているような気がした。 入り口の方から床を踏みならすような音が聞こえてきた。が、無視する。 今はそれなりに大事な話をしている最中なのだ。 「あの時の美人さん、知り合いですか?」 女性職員は耳打ちを止め、いつもの貸し出し業務をするときの場所に戻ってそう言った。 「知り合いというか……なんというか。まあ、知り合ってはいるんですけどね」 かなこさんとの関係は、どう言い表したらいいのかわからない。 前世からの恋人だったということはない。それだけは認めたくない。 俺の方は二度と会いたくないと思っているが、かなこさんはその真逆で俺に会いたがっているはず。 金持ちでそのうえ美人の女性から言い寄られている状況だが、生憎俺に受け入れる気はない。 俺はもっと平穏な、金はそこまで持っていなくても生活に困ることのない生き方をできればいい。 欲が深すぎるとろくでもないことになる、ほどほどが一番だ、というのが今まで学んだことだ。 「そうですか。じゃあ、もし今度会うことがあったら私にもちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから、 本のお礼をください、って言っておいてください」 だが、演技でもこの女性みたいに欲深い方が大胆になれていいのかも。 こんなだから俺は社会的には無職に見える地位にいても平気なんだろうな。 632 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 15 45 ID Dwn9Nfj7 職員に礼を言い、カウンターを離れる。 入り口に向かうと、腕を組んで備え付けの木製の椅子に座っている華がいた。 左足のつま先がいらいらを物語るかのように床を叩いている。そのたびに、破裂音に似た小さな音が鳴る。 「おにいさん、図書館は静かにしなきゃ駄目ですよ。 誰もいないからって、仲良くぺちゃくちゃ喋るのはいただけませんね」 「うるさいのはお前だって同じだろうが。バンバン床を鳴らすんじゃない」 「誰のせいだと思っているんですか」 俺のせいだとお前は思っているんだろう。だがそれは誤解だ。曲解だ。 女性に話を聞きに行っただけでそこまで怒るお前がおかしい。 「もういいです。何にも無かったみたいだし、許してあげます。……それで、なにかいい話を聞けましたか?」 「あんまり。確信が深くなったのは、この本を作ったのも、図書館に預けたのもかなこさんじゃないってことぐらいか」 「ふうん……そんなところだろうとは思ってましたけど」 「どうしたもんかな、ここから」 これ以上話を聞きに行っても大した話は聞けそうにない。 図書館の責任者が戻ってくるのを待ってから話を聞くか? 「帰りましょうおにいさん、実家に」 そうだな。一旦実家に帰って調べ…………待て。 「いきなり何を言い出すんだ。まだ何にもわかってないんだぞ」 「そろそろ気が済んだかな、と思って提案してみたんですけど。まだ、納得できませんか?」 「ちっとも、だ」 華が肩をすくめ、こっちに聞こえる大きさのため息をわざとらしく吐いた。 さらに、指で自分のこめかみを押さえる。 「そんなこと調べたって何にもなりませんよ。今こうしている時間も惜しいぐらいです。 早くおじさんおばさんの居る家に帰って、就職活動に取り組んだ方がよっぽど今後のためになりますよ」 「だから、なんで香織とかなこさんを殴りたくなるのか、って理由がわかって治るまで実家には帰れないだろ」 「その症状が治るという保証はあるんですか?」 「そりゃ…………」 反論するのをつい躊躇った。 治るのか、治らないのか。動くにあたって確認するべきだった要素。 今の今まで、俺は治すことだけを考えていた。だが、治せるという保証はどこにもない。 症状のかかり方からして普通じゃなかった。 今後本に操られないようにする方法なんて、どの医者でもわからないだろう。 こっちの頭を疑われるのがオチだ。 だから、自分の力でなんとかしなければならない。 なにより、俺自身がこんな状態でいるのは嫌だ。これから香織に会えなくなるなんて御免だ。 「治ると信じて動くしかないだろ。治せないという保証はどこにもない」 「その逆の、治せる保証もないですよね」 「確かにそうだが、治せなきゃ俺が困る。お前は困らないんだろうが」 即、華が無言で頷く。本人以外の反応なんてこんなものだ。 もっとも、華の場合はこいつなりの特別な理由があるのだろうが。 633 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 17 39 ID Dwn9Nfj7 「とにかく、俺はまだ調べる。お前、手伝う気がないんなら帰っていいぞ」 「手伝ってるつもりはありません。私はただ、おにいさんの身に危険が及ばないように動いているだけです。 あと、実家に帰るよう促すことも、こうしている目的のひとつです」 なんて不要な存在なんだ。邪魔者兼ボディガードなんて要らん。 「俺の気が変わることはない。そうしているだけ無駄だぞ。今からでも大学に行ってきたらどうだ」 「いえ、大学に通う目的はもう達成しています。 私があの大学を選んだのは、所在地がおにいさんが住んでいる町にあるから、それだけです。 おにいさんの近くに居を構えた今となっては、これ以上通う意味なんかありませんね」 「……あっそう」 そんな調子でいいのか、大学生。 「お前、将来の就きたい仕事とかないのかよ。大学は最後まで通った方がいいぞ。 高卒の俺が言っても説得力ないだろうけど」 「理想はおにいさんの隣に永久就職することです」 ……おい。恥ずかしげもなく、しかもこんなときにそういうことを言うな。反応に困る。 「強引な手段をとることも前は考えていましたけど、今となってはその必要もなくなりました。 だって、このままいけばおにいさんは香織さんのところにも菊川かなこのところにも行けないでしょう」 「……俺がこうなったことを喜んでいるのか」 「いいえ。そこまでは考えてないです。おにいさんが危険にさらされることはまったく望んでいません。 でもまあ、結果的におにいさんはまだ無事ですし。それにこのまま行けば…………」 突然そこで言葉を切って、華は固まった。 目は俺ではなく、俺の右斜め後ろ辺りに向けられている。 華が立ち上がる。表情は険しく、怒っていることを露骨に表現している。 その視線を追い、俺も振り返った。 まず、総毛立った。 まさかこんな、俺が図書館に来たタイミングでこの人までが来ることはないと、安心していた。 そう、安心しきっていたのだ。 だから、振り返ったとき、最初に目にした人物がかなこさんだとわかったとき、いきなり袋小路に追い詰められたような気分になった。 「ようやく、見つけましたわ。雄志様」 最初に、かなこさんはそう切り出した。 「見つけた、って」 「ずっと探していたのですよ。気がついたら屋敷から居なくなっていて、それに……そこの女も居なくなっておりました。 これはもう、雄志様が拐かされたのだとすぐに察しましたわ。そして、こうして発見することが叶いました。 ……現大園華」 俺の後ろにいる人物に狙いを定め、言う。 「よくもやってくれましたわね。本当に邪魔な存在ですわ、あなたは。いつもいつも邪魔をして」 「それはこっちの台詞です。いつまでもいつまでも、妄想を垂れ流しておにいさんに近づいているくせに」 「妄想、とは?」 「あなたが前世でどこぞのお姫様だった、とかいう虚言ですよ。勝手に思いこむのは構わないんですけど、 それにおにいさんを巻き込むのはやめてもらえ――いえ、やめなさい」 「……ふふっ」 かなこさんが目を細め、口元に手を当てて、上品に笑う。 極上の冗談を言われたときのように、肩まで震わせている。 嘲るようなその笑みは、止めなければいつまでも続きそうだった。 634 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 19 36 ID Dwn9Nfj7 華の大声が後ろから飛んでくる。 「何がおかしい!」 背にしているから表情はわからないが、怒っているということだけはわかった。 振り向いて確認する気はない。かなこさんを前にして、その姿を視界から外してしまうのは躊躇われた。 「いえ。予想が大体当たってしまったもので、ついおかしくなってしまいました。失礼を。 やはり、あなたもそう言うのですね。天野の娘も同じ事を言っておりましたわ。 前世などあるはずがない、の一点張りでした」 「あなた以外の人間は皆同じ意見ですよ。現に、おにいさんだって信じていませんしね」 どちらかと言えばな。もしかしたら違うかも、程度には疑いを持っているが。 「そうでございましょうね。雄志様は昔から、正直になれないお方でした」 「ふん……おにいさんの一番古い過去を知っているのは私だけですよ」 「わたくしが言っているのは、その時のことではありませんわ。 雄志様がわたくしの心と体の両方を守ってくださっていたときのことを言っているのです」 小さな舌打ちの音が背後から聞こえた。 「あなたに話は通じませんね。いつも平行線です」 「前提が違うのでしょう。前世のことを信じているわたくしと、信じない者とで話が通じるはずがありませんもの」 「ですね。はっきり言って、いくら話したって無意味ですね」 「ええ、無意味です。もともと、わたくしはあなたたちのような人間との会話に意味など見いだしてはおりません。 雄志様と話をするときだけ、会話が成り立っていれば構いませんでした」 「……とんだお嬢様もいたもんですね」 華のつぶやきに返事せず、かなこさんは俺に向き直った。 その穏やかな笑みには狂気が隠されている、と心に言い聞かせなければ、こちらまで流されて頬を弛めてしまいそうだ。 「申し訳ありませんでした」 ……え。 謝られるようなことをされた覚えもないのに、頭を下げられた? 心構えが弛緩した。置いてきぼりをくらったような気分だ。 「わたくしは、今まで誤解しておりました」 そうでしょうね、とつい言いたくなったが、口には出さない。かなこさんが言葉を繋ぐまで待つ。 「雄志様が望んでおられることを、わたくしは理解していないどころか、今まであのようなことをしてしまって。 本当に、過去のわたくしに折檻してやりたいところですわ」 理解しがたいことを言われ、思考が止まった。俺が望んでいることを、かなこさんは知っている? 望みなんか、俺には特にない。全くないわけではないが、どれも小さな事柄ばかりだ。 日常で、いいニュースが流れて欲しいとか、夕方スーパーに行ったとき安売りされている総菜が残っていたらいいなとか。 まさかそんなことをかなこさんが察するはずもない。話題を持ちかけられたことすらないんだ。 なのに、俺が望んでいることがかなこさんにはわかるっていうのか? 635 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 24 00 ID Dwn9Nfj7 「凡なる人間と同じように、平穏に、ただ天寿を全うするまで過ごすことが雄志様の望むことである、と誤解していたのです。 だからわたくしもそれに合わせ、雄志様の伴侶となり歩む道を進んでいこうと考えておりました」 それこそが俺の望む人生なんですけど。 好きな女性と結婚して家庭を持ち、平凡に一生を暮らせたら最高じゃないか。 先行きの不透明な今の状態、そして現代社会では、そんな人生すら危ういというのに。 「ですが、それは違ったのですね。わたくしの見立て通り、雄志様は愛に生きるお方でした」 愛って。俺のどこをどう見たらそういう見解に至るんだろう。それこそ誤解だ。 これは駄目だ。なにか、違う方向にかなこさんは物事を考えている。止めなければ。 「あの、俺は普通の生き方が好きなんですよ。特に夢がなくても、絶望しないで、小さな幸せを感じられるような生き方がいいんです」 「正直ではありませんね。わたくしはそんなところも好きですわ」 不意に、満面の笑みを浮かべられた。こんな台詞を言われたら胸が熱くなって、言葉が詰まるのは必然だ。 「ですが、もう言葉は要りません。雄志様のお言葉と、行動に矛盾があることに気づきました。 この時代でのわたくしの父、菊川桂造の誕生日パーティーの翌日、雄志様はわたくしを拒絶しました」 「当たり前じゃないですか」 と、華が割り込んできた。 「ベッドに体を固定するような女を受け入れるような男じゃないんですよ、おにいさんは」 「黙りなさい。あなたの出る幕は既にありません。 ……それで、なぜ拒絶されたのか、わたくしには理解できませんでした。雄志様はわたくしを求めているはず。 体を重ねれば、雄志様は満足してくださると、そう考えていたのです。浅はかな考えでしたわ」 確かにあの行動は浅はかではあった。その後に首を絞められたこともそう。 「その上、雄志様のお命まで奪おうとしました。あれが、あれこそが、最大の過ちでした。 雄志様は、わたくしに命を奪われることを望んでなどおりませんものね」 「そりゃあ……だいたいの人間はそうですよ」 口を開いてわかった。喉の奥が乾いている。なにか飲み物が欲しかった。 だが、状況は安らぐ暇など与えていない。緩やかな緊張感が俺を縛り続けている。 かなこさんは目を閉じて可愛らしい笑みを浮かべた。 次の瞬間に、目を開けて俺に告げる。俺の望みがいったいなんであるかということを。 「命を奪うべきなのはわたくしではなく、雄志様の方ですものね。 以前、この場所で初めて――いえ、久しぶりに再会したときにわたくしが言った、本のお話に出てくる姫が真に願っていたこと。 それに応えるように、雄志様も願っておられたのでございましょう?」 「……あなた、何を……?」 口を開いたのは華だった。 俺は何も言わない。喉が渇いていたから。 「今朝、雄志様の拳を受けたときに悟りました。わたくしを殺したいと、望んでおられることを。 命を奪い、最期を看取り、存在の全てをその心に刻みたい。 ああ、迂闊でしたわ、わたくしは。愛するお方に殺されることこそが望みだったことを忘れ、幸せを押しつけようとして。 殺されることに怯えていたのかもしれません。許してくださいまし。 ……さあ、雄志様。あとは望むままになさいませ」 あと、それよりもなによりも、かなこさんの言っていることが、 「わたくしを、どうぞお好きなように、存分に、望むままに殺し、心に刻み、そして――愛してくださいませ」 最大の誤解だったから。 636 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03 28 31 ID Dwn9Nfj7 23話はここで終わりです。続きは、当たり前ですが24話になります。 ここからは、選択肢でAの『図書館に行って本を作り直した人物を明らかにすることだ。』を選んだ場合の、かなこルートです。 伝え忘れていましたが、かなこルート完結の後、残りの華ルートも香織ルートも投下します。 637 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 04 09 14 ID rEp8F165 636 テラGJ! 華もかなこさんもどちらもカワユスw 638 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 12 35 22 ID 3tLy+esm かなこルートなのに華に萌えてしまった俺ガイル。 でもこれで全ての謎が解かれる……のか? 639 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 13 06 02 ID rvmp/0bD まとめの「ことのはぐるま」、俺のケータイからだとエラーが出る… 寝る前にベッドで読みたいのに…ちきしょー 640 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 13 54 25 ID /M+IVLFZ 639 ファイルシークで見ろよ 641 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 14 28 12 ID rvmp/0bD 640 あんた最高 642 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 16 30 39 ID dZn94GdP 640に漢をみた 643 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17 35 37 ID IXqbQoMX 640 前から好きでした 644 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17 50 16 ID v/AqTOSs 580 気に病む透歌さんを今日読んで描いてしまった。 http //a.pic.to/r4hna 今は後悔してる。 645 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17 53 00 ID v/AqTOSs 流れをぶったぎって申し訳ないorz 646 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18 00 11 ID U+JOTtaU 645 とりあえずPC許可を 話はそれからだ 647 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18 00 43 ID rEp8F165 645 とてもGJだから許してあげよう。 648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18 07 51 ID /M+IVLFZ 645 グッジョブ 字が怖くて良いね 649 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18 08 01 ID v/AqTOSs 許可しました おっちょこちょいですいませんorz 650 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 19 06 13 ID IXqbQoMX 649 ずっと前から好きでした しかし、後ろから抱き付いて愛を囁いた後、半年くらい放置したくなるくらいのオーラが出てますなァ 651 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 20 34 29 ID OZzSQoe1 639 PCサイトビューアー使えよ。 652 名前:580[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 21 32 07 ID ILHRPBHr 644 ちょ、おま……今までいくらかSS書いてきたがイラストとかつけてもらったの初めてでしかもこんな可愛いとかどういうこと(ry リアルで目汁出そうなんですけどw マジでありがとうございました! やっぱ、目隠れっ娘の前髪の間からぼんやりした(あるいは眠たげな)瞳が垣間見える瞬間が一番可愛いな! 653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 22 33 34 ID dZn94GdP 652 うらやましいなぁちくしょう…… そりゃそうとCoccoってアーティストの曲なんだがな なんつーか女の負の情念みたいなのをよく歌うアーティストなのよ なんかヤンデレ風味のある詞も多いし曲も良いからかなりおすすめ 「首。」って曲があるんだがスクデイ知ってる人にはおすすめ 「けもの道」と「白い狂気」とかヤンデレ風味 654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 02 31 03 ID 2nPz589u あれ、俺いつの間に書き込みしたんだろ でも個人的には、「My Dear Pig」が最強だと思う ヤンデレというより気狂い女な気もするけど、その辺はエピソードを脳内補完で あとは「あなたへの月」あたりもかなぁ 655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 21 29 44 ID ncnc6mr4 みんなは、ヤンデレと聞くとどんなイメージをする? スクールデイズみたいなniceboat展開とかカニバリズム? それとも愛していたけど結局は結ばれなかった、みたいな悲しい恋? ググると前者みたいなイメージを持ったサイトが結構ひっかかるけど、このスレの人はどうなのかな? 656 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 00 10 ID v+ZR/qAM niceboatなあ。俺「こいつを殺せば自分がこの人の一番になれる」という感じの病み具合好きじゃない。 殺しは要素かもしれんけど正直決め手にはならないと思う。除外工作なら大いにアリだが。 自分の中では妄質的なまでの愛情かね。「この人を物にするためなら・・・」というのにゾクゾク来る。 意地汚さ、もしくははかなさがあれば良し。有る程度の理性が残ってるとなお良し。 657 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 02 53 ID EvRRD9+g 猟奇的とかサイコ的なヤンデレよりも、 淫らでエッロエロのヤンデレちゃんの方が好きなんじゃああああ 658 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/08(火) 22 06 45 ID +ytqCXIi ・すごく好きだから不安で仕方ない ・主人公(男)が結構裏切る ・理性が負けて、ひどいことをしてしまう でも我に返るとすごく後悔する・落ち込む こんなヤンデレが好き 659 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 13 48 ID CdSmibd5 某楓状態が一番好き nice boatはあんまり好きじゃないな 660 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 31 46 ID MZQrxVya エロス忘れてた。確かにエロスは大事だ。あ、上で殺しについて挙げたがちょっと補足。 殺してくれるならそれはそれで構わない。だがどうせ殺すなら自分だけ殺して欲しいな。 個人的には女が病み男が狂った状態での心中とか最高。 661 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 35 47 ID s89l7rAH 血はなくてもいいから、主人公が世界の全てという依存ぷりがあればそれで 662 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 46 32 ID 4anah/+A 好みとか聞くなよ荒れるだろ 663 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 46 59 ID EqHZPm53 目が濁るのはデフォ? 664 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22 57 07 ID f52d2UQm 依存してくるけど嫉妬しない奴いないの? 主人公の男の子が他の女犯してたら見張りとかしてくれる奴。 調教の助手とかな。 ただし、捨てられそうになると涙目ですがってくるのがいい。 665 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23 07 27 ID y2y26D14 それ、そのまんまシィルじゃないか。 666 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23 07 56 ID 7TgDXzJG 最近、あからさまに病んでるキャラよりも 主人公からは少し優しすぎるけど普通かな、程度に見えて、実は見えないところで主人公のおパンテュくんかくんかしてた、みたいなキャラの方がいい気がしてきた。 物騒な女の子はねーちんとゆのっちだけで十分だよ…… 667 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23 24 28 ID x9nYl5Fs レイプ目 668 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23 56 55 ID 7TgDXzJG 亀もいいとこだが 61-69 今日初めて読んだがかなり引き込まれた。 玩具販促漫画家って視点が素晴らしい。 おもちゃという巣に引っかかった無垢な子供を、原作者権限でいいようにするってのが悶絶ものだ。手のひらの上で操られてた、ってシチュが好きなもので……。 こういうノリのをまた読んでみたい 669 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 03 07 15 ID lbQyfeL2 「ちょろいっ!」と操られてるだけの一般人の頭を鉈で一刀両断する娘は物騒と申すか 670 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 03 36 51 ID 9yygRAnR 物騒極まりないだろ 671 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 07 23 03 ID ESMHJRRx 物騒だろwwww 672 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 16 48 15 ID AujfBuw/ ゆっきー… 673 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 17 21 54 ID CTOgR6cS 665主人公の絶対的な肯定者(善も悪も)キャラは居らんかね? 堕花雨とか桐生メイとかしか思い浮かばん。 674 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 23 52 01 ID g+OZG08r 電波的な彼女ってキチガイデレに見せかけたヤンデレだよな 雨も元から電波かと思えば小さい時のジュウ様の影響が原因だったり 美夜もあれ狂ってるけど、人を寄せつけないジュウ様の側に簡単に居続ける雨に焦ったからあんな行動に出たんだろうし 最後の本音っぽいセリフで、やっぱり純粋にジュウ様が好きなんだろうな。って分かるし 675 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 01 06 51 ID QXkFugVF 流れに乗っかるがオレは『電波的な彼女』みたいな感じ結構好きだな 674 わかる。美夜が純粋にジュウ様のコト好きだってわかるから二回目以降読む時は何かスゴく悲しくて泣きたくなる。 676 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 37 00 ID uJlu1Z3v Coccoは大好きだ…。 合わせ鏡、続きを投下します。 118が疑問に思うのはもっともなんですが…瑞希は前科者にはなっていないという ことでお願いします。 専門家でないのでわからないのですが、ちょろっと耳にしたところによると、大した 事件でなくて、家族間のゴタゴタと見られたり、初犯だったりすると、警察 (検察)?の裁量で逮捕しなかったり、逮捕されても起訴されなかったりする らしいと聞いたことがあるので。 被害届や告訴しないと、あまり警察も動きたくないとか。 ほんとかは知りませんが、そんな感じで。 677 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 37 44 ID uJlu1Z3v お母さんは私にいつも言った。ヒトサマにメイワクをかけてはいけません。 お母さんは私にいつも言った。ヒトサマに恥ずかしいことをしてはいけません。 父親がいなくて、祖母に負けて高崎家から追い出された母は、せめて世間に恥ずかしくない ようにと、私にいつもそう言った。 多分私のためではなく、世間体のため。 でも、考えてみれば、他人に認められるということは、私を守ることでもあった。 親が一人しかいないと言って、とやかく言う輩はどこにでもいるのだ。 私は、いつもいい子でいた。人様に迷惑をかけることもなく、人様に顔向けできないことを することもない。そして、誰にも感心される優秀な子供。 他人の目にうつる自分こそが全て。その自分は愛される人間でなければならない、排除される 人間であってはならない。 自分の心など、感情などどうでもよいのだ。他人にとって私が何を考えているかなど、何の意味 も持たないのだから。 だから、弟に恋する変態であってはならない。それは、世間に対し、顔向けのできない恥ずか しいことだから。 でも、瑞希は、そんな私の迷いを一足飛びに飛び越えてきた。 それが例え、無知に基づく誤謬で、完全に間違った行動であっても……羨ましかった。 それは、私がしたいことで、できないことだったから。 そう、鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と違う行動をする。 鏡の右は私の左。鏡の左は私の右。私達は鏡像でしかない。同じように見えても、私と瑞希は 真逆だ。 育ってきた環境も、望むものも、見ているものも、真逆なのだ…。 678 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 38 19 ID uJlu1Z3v 自分一人で決めることはできないと、こーたは言った。 話し合って了解をとりたい、両親も、何も言わずにこーたが決めるより、相談して欲しい と望むだろう、と。 伯父と伯母は、生さぬ仲とはいえ、こーたにとってはかけがえのない、本当の親なのだ。 こーたが望むなら、私が何を言えるだろう。 それに、瑞希がこーたの姉であると、瑞希に知らせるのは、私も望んだことだったのだ。 こーたは、謝ってくれた。水樹が忠告してくれた時に、それを聞いていれば、水樹をあんな 目に合わせることはなかったのに、と。 そんなことを気に病む必要なんてないのに。私に心配される価値なんて、ないのに。 こーたを高崎家の婿にという申し出自体は、もちろん、断るとしても、きっと瑞希は いろいろな手をこれからもうってくるだろう。 前回の事件で、私もこーたも、瑞希を告訴しなかった。警察も、私と瑞希が姉妹であるという ことから、穏便な処置をとった。 それは、実の姉を、妹を、犯罪者にしたくないという私達の思いと、高崎家の無言の圧力の 結果だった。 でも、次はあってはならない。それは、私だけの思いではなく、伯父と伯母も同じようだった。 話を聞いた二人は、土日を利用して、すぐに飛んできた。 こーたが本当は「高崎の父」の息子であると、高崎家自体に知らせることは、誰しも 反対だった。 でも、これ以上の彼女の空回りを防ぐためにも、瑞希にだけは伝えるべきではないか。 その思いもまた、誰しも同じだった。 伯父と伯母と瑞希は話し合いの場を持った。 真実を聞かされた瑞希は、想像を裏切り、非常に静かに、現実を受け入れたという。 「水樹、こーたのせいで、いろいろと迷惑をかけたわね」 「…そんな、私はなにもできなかったし、むしろこーたに迷惑をかけたと思う」 伯母さんの料理を久しぶりに堪能した後、私は皿洗いを手伝っていた。伯父さんとこーたは 居間でテレビを見ている。 「そんなこと気にすることないのよ」 伯母さんは、私を元気付けるように笑った。 無力な私。思い出すたびに、胸がちりちりして、黙ってうつむく。 「水樹は女の子だし、なにもなくて良かったわ。こーたのためにも、本当に良かった」 「こーたの、ため?」 「ええ」 伯母さんは意味ありげに笑った。 「こーたは本当に昔から水樹が好きだからね。自分が瑞希ちゃんに付きまとわれるのは 全然構わなかったくせに、水樹が危ない目にあったら、すぐに行動だもの。あのスカした 息子が取り乱す様、見せてあげたかったわ」 「…伯母さん」 いたずらっぽくとんでもないことを言い出す伯母さんの言葉に、私は思わず笑った。 伯母さんは、私が笑ってほっとしたのだろう。さらに軽い口調で言葉を続けた。 「なにしろ、こーたにとって、水樹は、初恋の人だったりするんだから」 679 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 43 10 ID uJlu1Z3v 以上です。 680 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 48 54 ID uJlu1Z3v 「え?」 私は何か聞き間違えたのだろうか。口を薄くあけたまま、呆けたようにかたまる私の心の裡など 伯母は何も気づかないだろう。私の驚きの意味合いを取り違えたまま、冗談のように言葉を紡ぐ。 「まだあの子が中学の時よ。水樹を絶対お嫁さんにするんだって言いだしてね。子供の言うこと だし、初恋を無残に摘み取るのもかわいそうだったんだけど……」 まず心配したのは伯父だったのだと。二人で悩んだ上、こーたに私を姉だと告げたのだと、 伯母は言った。 「最初は信じようとしなかったし、あの子、すっかり落ち込んじゃってね。あの大食いの子が 夜ご飯も食べずに部屋にひきこもっちゃったの。でも、次の日の朝、勢い込んで下に降りて きてね、笑顔で言ったのよ」 『お母さん、水樹がお姉さんってことは、俺と水樹は一生家族なんだね。ずっと、一緒に いられるんだね!』 その、こーたの笑顔を、私はまざまざと思い描くことができる。 きっと、お母さんが死んだ時に一緒に暮らそうと言ってくれて私が頷いた時の、東京に来る前に 私と一緒に暮らせると知った時の、あの顔に違いないのだ。 私を女としてでなく、一人の家族として案じ、愛し、労わる笑顔。 私を傷つけ、奈落に落とし込む、絶望の笑顔。 681 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 49 47 ID uJlu1Z3v それから後、伯母さんと何を話したかは覚えていない。 でも、きっと上手く切り抜けたのだろう。自分の感情を見せず、他人に不快を与えず、相手に 合わせて話し続けるのは……我を忘れても機能する、私の得意技なのだから。 部屋に入り、電気を消す。ベッドに座る。眠る用意は全て終えたが、床に臥す気にはなれな かった。 心の中で、今まで感じたことのない暴風が、全てを吹き飛ばし、荒れ狂っている。 伯母さん。どうして、言ったのですか。 いや、どうしても何もない。私とこーたは姉弟で、決して結ばれることなどない。 年上の従姉に対する少年の憧れはそのまま消える可能性は高いけれども、まかり間違って 恋としての形をとってしまえば、どんなに足掻いても待つのは苦しみだけだ。 そんなことは自分が一番よくわかっている。 伯母さんの行動は正しい。私が伯母さんでもそうするだろう。そうしない理由などない。 けれども。 考えてはならないifを私の脳は紡ぎだそうとしている。 もし、こーたが真実を知らず、私への憧れが恋へと変わっていたならば、私はこーたに抱かれて 眠ることができたかもしれない。その先に待っているものがどんな悲劇であろうとも、他人に 顔向けできない禁忌であったとしても……例えこの身が破滅しても、私が本当に望んでいるものが そこにはあったのではないか。 私は姉でなければならない。弟の幸せを姉として見守ることしか許されない。 それは、半分は私の望みである。誰よりも大切な男性に幸せになって欲しいというのは、誰もが 抱く美しい夢だ。 でも、もう半分は血反吐を吐くような思いで自分につき続ける嘘である。この汚らわしい嘘が 存在する限り、私は決して幸せになどなれない。でも、私がこの世界でまっとうな人間として 生き続けるためには、嘘をつき続けなければならない。 682 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 50 36 ID uJlu1Z3v ああ、そして。 伯母さん、どうして、私にこの話をしたのですか。 選択の余地がないからこそ、何も疑わずに済んだのに。ありもしない希望の光を、夢見ずに すんだのに。 この大地が針山だと知らなければ、ここが地獄だと知ることはなかっただろうに。 私はその瞬間、伯父を、伯母を、憎んでしまった。 ただ、自分の汚らわしい欲望のために、誰よりも私によくしてくれた恩人の正しい行動を厭って しまった。 握り締めた右手に、殺意があった。 たとえ、その心を打ち消しても、魂に私の罪は刻まれてしまった。 683 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 51 32 ID uJlu1Z3v マタイ5章 しかし、わたしは言っておく。 みだらな思いで他人の妻を見る者はだれでも、既に心の中でその女を犯したのである。 もし、右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。 体の一部がなくなっても、全身が地獄に投げ込まれない方がましである。 もし、右の手があなたをつまずかせるなら、切り取って捨ててしまいなさい。 体の一部がなくなっても、全身が地獄に落ちない方がましである。 聖書は言う。心の中で姦淫しても罪であると。 大学の授業で聖書を読んだときに、私はうちのめされた。この罪人は私だ。実の弟をみだらな思いで 見ている、許されない罪人。 私は別にキリスト教徒ではない。でも、それいらいこの言葉は私の心に食い込んで離れようとしない。 もう、すっかり覚えてしまった。 そして、今、私は誰よりも恩を受けた人たちを心の中で殺してしまった。 私はどこをえぐり出して捨ててしまえばよいのだろう。 目を?口を?手を?足を?いや、そんなことで私は許されはしない。 私はもう地獄に落ちている。この体の全て、細胞の全て、DNAの螺旋にいたるまでが罪人なのだ。 それからほどなくして、私はそれを、思い知ることになる。 684 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03 53 55 ID uJlu1Z3v 途中で間違えてしまいました。 水樹の設定=理屈っぽいヤンデレ。常識寄り。 カタいお姉さんが崩れていくのを書きたいです。 685 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 04 25 15 ID 1bEeow00 684 水樹( ´・ω・)カワイソス でもこれはハラハラドキドキして来た、GJ! こういう葛藤の描写ってイイね 686 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 07 49 19 ID 1Il9G+q5 684 GJ 次回も楽しみにしています 687 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 13 34 06 ID Xx7H6fdy 水樹には幸せになってほしいと思いつつ、 この先どんな病みが来るのかとwktkしてしまう…… ところでもう474 KBなんだな、次スレ立ててきます 688 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 13 42 14 ID Xx7H6fdy 立てました ヤンデレの小説を書こう!Part13 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199940017/ 689 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 19 55 43 ID ejogiSB2 688 乙 690 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21 32 39 ID 0jW5/URE 「みーつけた」 俺はその声を聞いた。2日ぶりだろうか。なんでこんな早く。なんでなんでなんで。 かくれんぼは完敗だ。逃げ切れるどころの話ではなかった。 俺が逃げ始めて2日。彼女が探しはじめて1日だ。有り得ない。 自分の認識が甘かったことを悟ると同時に未来が真っ黒になっていくのが分かった。 「修くんの行くところぐらい分かるよぉ」 後ろの女はころころと笑っている。1日で、東京から長崎に逃げた人間が見つかるか? そんなバカな。赤い糸ってやつか?もしその馬鹿馬鹿しい話が本当だったとしても 俺とこいつを結んでいるワケがない。そんな筈はない。そんなのは認めない。 「お父様も意地が悪いわ。こんな風に私を試すなんて」 後ろにいる女にストーカー行為を受けていた。ストーカーなんてもんじゃない。 つきまとい、毎日来るメール、電話、部屋にあった盗聴器とカメラ。それだけではない。 俺と接触した女――たかが挨拶でも2、3日は学校に来られないような制裁を与えていた。 ある子は殴られ、ある子はレイプされ、ある子は腕を折られ、ある子は監禁放置された。 そして彼女の父親に呼び出された。 白髪のまじった思ったより年齢を重ねた紳士だった。 娘とかくれんぼをしろ、と。 渡されたアタッシュケースには500万円が入っていた。 5日間逃げ切れば娘は君に二度と接触はさせない。 だが捕まった場合は諦めてくれ。 そう俯きがちの壮年の男性に言われ俺はアタッシュケースをひっつかんでその屋敷飛び出した。 そしてその2日後。 彼女の指が俺の肩にかかる。 「ねえ修くん、これからは幸せに暮らそうね」 実に嬉しそうだ。本当に嬉しそうだ。この上なく嬉しそうだ。 俺は後ろを振り向けないまま、しばらくこの絶望を味わうことにした。 691 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21 33 11 ID 0jW5/URE 勢いで書いた 後悔はしている 692 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21 56 13 ID 3eBdgjbD さあ、修くんを捕まえるまでの彼女の行動過程を次スレに書き込む準備に戻るんだ 693 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 07 20 ID gXF8+qHR 新感覚かくれんぼ そそられる 694 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 14 00 ID leGMajbU 現金のケースに盗聴器か? 695 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 19 40 ID 0jW5/URE 694 惜しい 事前に誘拐して発信機が体内に 696 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 33 35 ID l+AJErr1 むしろ超ヤンデレに不可能などない 穏やかな病みを持ちながら修くんへの烈しい愛に目覚めた彼女にとって 697 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 53 52 ID 3eBdgjbD 10 00 彼女(仮に空子様と名付ける)、行動を解禁される 10 30 昨日、旅立つ修君と偶然会い、公園で2、3言話していた少女を捕獲 11 30 5歳だったが気にせず都内某電車内の吊革に全裸で緊縛して放置 12 00 家でランチ。海鮮ドリアを作る 13 30 学校に到着 14 00 一昨日修君に相談を受けていた同級生に内容を尋問。しかし修君の行き先は聞かず 14 10 箒で性的暴行を加え、屋上に閉め出す 15 00 午後の間食。昨日焼いたクッキー 16 00 偏西風に乗ってくる修君の匂いの方向の変化から、修君の居場所を長崎と特定 18 00 成田空港 20 00 長崎到着 ここまでくれば濃厚な匂いが場所を知らせてくれる ノリで書いた。反省はしていない 698 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23 57 26 ID 0jW5/URE 697 すげええええええ 幼女にも容赦ないとは。というかこーいう緻密なこと俺出来ない。 699 名前:16 00修くんを探す空子[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 01 19 00 ID bwshePJs 空子は髪をほどいてテラスに出た。緩くウェーブのかかった髪が風に靡く。 白い膝丈のスカートがフワッと舞い上がってまるで一枚絵のようだった。 目をつむって神経を研ぎ澄ませる。どんなに遠く離れていても必ず分かる。 修くんの明るい、こちらまで笑顔になるような気配。 風が運んでくれる筈だ。国内にいるなら分かる自信が空子にはあった。 修くんのことを思い浮かべながら風を探る。 捨てられた猫に憐れみの視線を向ける優しさ、底抜けに明るい笑顔、意外にしっかりとついた筋肉、そしてそこに弾ける水…… 「いけないわ」 シャワーシーンを思い出して空子は1人顔を赤らめた。心なしか動悸がする。 乱れてしまっては探すことが出来ない。 深呼吸をして気持ちを落ち着けてからもう一度目をつむりなおし、気配を探すことに集中した。 一瞬風の中にはしる愛しい気配。 空子は見逃さなかった。 「見つけたわ、後藤。この方向は九州……長崎ね。すぐ飛行機を手配して頂戴」 「かしこまりました空子御嬢様」 忠実な執事に指示を飛ばすと空子は愛しい気配の方を向いて微笑んだ。 「待っててね、修くん」 ―――――――――――――――――― 反省はしていない 700 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 08 05 20 ID elJgP89e いいね~ 701 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 11 30 38 ID vIdlfV5X 697-699 空子様スゴ過ぎだwwww 702 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 09 16 ID nfUVOaeB ドラゴンボールを思い出した 続きキボン 703 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 37 05 ID oxt0kF95 彼は日々、ブログに日記を書きつづることを習慣にしていた。 何が楽しいのか、と問われるとなんとも答えがたい。 それでも、彼は自分の日記をウェブに公開することが楽しかった。 ブログを書き始めてから数日が経った頃、彼は日記を入力する際に変換ミスをよくすることに気づいた。 そして、パソコンに最初からインストールされている日本語入力ソフトではなく、市販の入力ソフトを 使えば日記を書くのが楽になるのではないか、と思いついた。 思い立ったが吉日という格言にならい、彼は市販の日本語入力ソフトを購入した。 財布の中身がすっと軽くなる錯覚がするほどの金額ではあったが、彼は満足だった。 そのような感じでブログにこり始めた彼は、次第に日記を書かなくなった。 日記ではなく、自分の妄想をブログに載せ始めたのだ。 いわゆる、SSというものだ。 既存の商業作品の二次創作ではなく、自分の頭の中で一から構築した話だ。 SSを書き始めてみると、実は日記よりも楽しいことに気づいた。 日記は、書くに値するネタがなければ書かない、ということを彼は決めていた。 例えば、朝起きて、学校に出かけて、帰ってきて眠る、という一日では日記を書けない。 しかし、SSであれば別だ。 頭の中にふっと思いついた話を書けば、毎日ブログを更新することができた。 SSの内容は、一話完結の短編作品。いや、短編と呼ぶことすらふさわしくない、掌編だった。 一編書くにあたって浪費する時間は三十分から一時間程度。 初日は一時間で二十行程度しか書くことはできなかった。だから、二時間かけてようやく完成させた。 日を重ねていくうちにSSを書くコツをつかみ始めた彼は、早ければ三十分で書き上げられるようになった。 そのことを自覚した時は、友人に自慢したくなった。 しかし、彼がそうすることはなかった。 自分の書いた文章なんて知り合いには見せたくない、見せられない、という思いがあったのだ。 話は離れるが、彼には姉がいた。 一つ年の離れた姉で、自分と同じ大学に通っている。 姉であるが、初めて彼と彼の姉を見る人々は、彼女の方が年下だと勘違いした。 それもそのはず、彼の姉の身長は150cmを下回っていたのだ。 その上、容姿は中学生のように幼かった。 髪の毛は黒く艶々で、鼻は小振りな大きさで、目はぱっちりと開いていた。 加えて、姉の声は小学生かと聞き間違うほどにキーが高く、舌足らずだった。 彼と姉が並んで歩いていると、兄妹というより親子が一緒にいるようだった。 彼ら二人を見る者は、仲のいい親子が並んで歩いている、と微笑ましく思った。 それは、彼の容姿が姉とは対照的に大人びていることも一つの要因だっただろう。 もっとも、当事者である彼と姉は特に気にもしなかった。 彼にとって姉は姉でしかなく、姉にとっても彼は弟でしかなかった。 だが、姉の方には少しだけ問題があった。 見た目は幼いとはいえ、実年齢は二十歳である。とっくに弟離れをしている年齢だ。 なのに、姉は弟にべったりくっついて離れなかった。 まるで、肉体が彼女の精神までも幼くしてしまったように、姉の行動は無邪気だった。 例えば、毎日一緒にお風呂に入ることを弟に要求したり、夜起きた時は一緒にトイレへ行ってくれと頼んできたり。 まるで妹であるかのような甘えっぷり、頼りっぷりだった。 彼はというと、そんな姉を微笑ましく思っているだけだった。 これから先、自分が就職してからも姉がこんな調子では困る、もっとしっかりしてほしい、 と思ってはいたが、それもまだまだ先のことであると気楽に考えていた。 704 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 41 04 ID oxt0kF95 話を戻して、彼が管理しているブログについて語ろう。 彼はSSを書いていたが、次第にネタに詰まるようになってきた。 書き始めて三ヶ月以上過ぎれば、さすがに彼の妄想も底をつき始める。 彼の書いている話は、ちょっと心が温まるような小話が多かった。 だが、そればかり書いていては上手くいかないようになってきた。 日によってはブログを更新できないこともあった。 いくらパソコンの前に居ても、今まで書いてきた話ばかりが浮かんできて、一向にキーボードを打てないのだ。 そんな日は諦めて、話の構成を考えながら布団の中に入る。悔しい思いをしながら。 今回の話は、そんな人並みの悩みを抱える若者が体験した奇妙な出来事だ。 ブログを更新できなかった日の翌日、彼が朝食をとるためリビングへ向かうと、香しい匂いが嗅覚をついた。 テーブルの上には、いつもの朝食よりバリエーションに富んだ料理たちが並んでいた。 白米、味噌汁、卵焼き、焼き魚、漬け物、それとお茶の入った急須が置かれている。 彼の家では姉が料理を作っている。おそらく、今日も姉が作ったはずだ。 だが、いつもならもっと軽めの朝食がテーブルの上にあるはず。 今日は何かの記念日というわけではない。昨日何かいいことがあったわけでもない。 ではなぜ? と思い、彼はキッチンに立つ小さな姉に問うた。 「おはよ! え、なんで今日の朝食が豪華なのかって? それはね、弟君がなんだか元気なさげに起きてくるんじゃないかな、と思ったからよ」 彼は特に元気がないわけではない。朝の生理現象も体にあらわれていた。 自分が元気だと言うことを伝えると、姉は少し首を傾げた。 「ありゃ、そうなの? んー……ま、私の勘も外れることだってあるってことで。 さ、ご飯食べよ。今日は腕によりをかけて作ったんだから」 姉に背中を押されて椅子に座る。姉は彼の左隣の椅子に腰掛ける。 椅子のサイズは同じだが、二人の間に身長差があるせいで、彼の方が頭一つ飛び抜けて高い。 それでも、姉は彼に向けて箸を差し出して、食べさせようとする。 彼はいつもやめてくれ、と言っているのだが、姉はどうしても聞かない。 「弟君は、私が面倒を見るの。それがお姉さんのつとめなんだから。 その見返りに、お姉さんをハグしてくれればいいよ。こう、ぎゅー……って」 手本を見せるように、自分の腕で体を抱きながら実演する。 姉の言葉を耳に入れながらも、彼は朝食をつつく手を休めない。 姉にそんなことをするような年齢ではない。それに、彼はシスコンでもない。 こんな幼く見える姉に抱きついている様を人に見られたら、彼の評判が下がる。 ただでさえ、友人の間では彼と姉の仲を疑われているというのに、これ以上悪化させるわけにはいかないのだ。 彼が味噌汁を飲む。すると姉が彼の脇腹を突いた。脇が敏感な彼は激しくむせる。 「そうやって無視するのはお姉ちゃんどうかと思うな。自分で自分が冷たい人間だと思わない? 最近は手を繋いでくれないし……私が高校生のころまでは繋いでくれたのに……」 姉の言っているとおり、姉が高校を卒業するまで、彼は姉と手を繋いで登下校していた。 しかしそれは、最大限譲歩した結果だ。 この姉と手を繋いで歩いていても、すでに彼と姉の存在は生徒に知れ渡っているので見られても構わなかった。 高校生活こそ、そうやっていられたが、大学に通うようになってからはそうはいかない。 大学という場所はオープンな場所なので、いろんな人間が出入りする。 そんな場所で、身長差が30cm以上はあろうかという彼と姉が手を繋いで歩いていたら、どんな目で見られるのか。 さしずめ、大学に妹を連れて行って案内している最中、というところだろう。 それならまだいい。通学途中で警官に職務質問される可能性も無いとは言えない。 身分証明書を持っていなかった時、果たして口頭で説明して自分達が姉弟であるということを信じてもらえるのか、 彼には不安でならないのだ。 705 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 42 28 ID oxt0kF95 彼は朝食を食べ終わると、両手を合掌させてごちそうさまをした。 まだ食べ終わっていない姉を置いて、茶碗をひとまとめにしてキッチンの流し台に持って行く。 水を浸した流し台にお椀を入れていると、後ろから姉のすすり泣く声が聞こえてきた。 「うう……弟君が冷たいよぅ……昔はお姉ちゃん大好き、僕将来お姉ちゃんと結婚する、とか言っていたのに……。 どうしてこんな子に育っちゃったのかしら。いつのまにか不良さんと付き合ってたりしていたんだわ……」 姉の言っていることはすべて捏造だと、彼は知っている。 彼は昔、姉のことをお姉ちゃんと呼んだことがなかった。むしろ、妹扱いしていたぐらいだった。 そして、大好きとか、結婚するとか言っていたのは姉の方だった。 彼は小さなころ、お母さんと結婚する、と言っているような人間だった。 今ではもちろんそんなことは言わない。 母とは、困ったときに姉よりも先に相談する程度に親しい。 余談ではあるが、母も弟に色々と相談する。内容は、娘のことに関して。 娘の弟離れを促すため、彼によく協力を持ちかけるのだ。 今までやってきた対策は、彼に恋人ができたと伝えることと、一人暮らしをすると伝えること。 前者に関しては親しい女友達にも協力してもらった。だが、結果は逆効果で、四六時中くっつくようになってしまった。 後者の場合、姉はむしろ喜んだ。なぜかというと、実家を離れて二人暮らしができると思ったから。 このように、彼と彼の母の苦労は水泡となってかき消えてしまった。 今では、母はこの一件に関してあまり触れなくなった。彼はあるがままを受け入れるようになった。 これから先彼ら姉弟がどうなるかは、ひとえに姉の成長にかかっているのだ。 706 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 45 32 ID oxt0kF95 大学から帰ってきて、彼は姉をひっぺがして自室に籠もった。 何をするかというと、自分のブログの更新作業だ。 大学で授業を受けている最中に思いついたネタを、まだ暖かいうちに書き記すつもりだったのだ。 思いついたネタは、今までとは趣を異にするものだった。 彼が今まで自分自身に課してきた、禁忌とも言えるもの。 それは、『妹』に関する妄想だった。 なぜ妹のネタが禁忌であるのかは、言うまでもあるまい、姉のことを思い浮かべてしまうからだ。 だが彼は今日、その禁忌を破る。全ては、SSを書くため、ブログを更新するため。 推敲もほどほどにしながら、手慣れた手つきでタイピングしていく。 帰宅してから二時間ほど経った、午後七時過ぎ。ようやく禁断の妹SSが完成した。 内容は以下の通り。 『僕の妹はとても背が高い。 僕の身長は友人と比べても遜色のない高さだ。だけど、妹はそんな僕よりも背が高い。 正直、自分は同じ家に住んでいる両親から生まれた子供じゃないんじゃないか、とまで思っている。 戸籍謄本はもちろん確認済み。今の両親は僕の実の親だ。 それでも、どうしても疑いが晴れない。きっと、僕が妹に対してコンプレックスを持っているからだ。 弁解しておくと、僕は一般的にイメージの強い、妹を溺愛しているという意味でのシスコンではない。 劣等感を持っているという意味でのシスターコンプレックスだ。 妹のことをどう思っているか、と聞かれたら、僕は返答に困る。 劣等感を持っていますとも、コンプレックスを持っていますとも言えない。 妹のことは大事に思っています、と答えると妹好きのシスコンと思われそうで嫌だ。 妹はいつだって僕を悩ませる。今日だって、そうだ。 「アニキ。そろそろ手ぇ繋いで歩こうよ」 妹様は今日もそうやって僕を困らせることを口にする。 手を繋ぐのは好きじゃない。 だって、10cm以上身長差があるということは、手の位置ももちろん違うわけだから、 僕が妹の手を握ろうとしたら少し肘を折り曲げなければならない。 なんだか、親と手を繋ぐ子供みたいで屈辱なのだ。 僕が妹を無視しててくてく歩いていると、妹が後ろでぼそっ、と呟いた。 「そんなこと言うんなら、また今日も抱きつくからね。……覚悟しといてよ」 この台詞だけを聞くと、世の妹好きの男性に羨ましがられそうだが、僕は嬉しくない。落胆する。 抱きつく、と妹が言った場合、柔道の寝技のような動きでの押さえ込みをするぞ、という意味になる。 この妹は身長に見合ったのか、運動能力に優れている。僕なんかあっという間に取り押さえてしまう。 男なのに、兄なのに、妹に負ける。それはかなりの屈辱だ。肘を折り曲げて妹と手を繋ぐ行為以上の屈辱。 だから、僕は傷の浅い方を選ぶ。その方が、一晩越した翌朝の寝覚めがいいと経験で知っているから。 妹の右手と、僕の左手を繋ぐ。妹の指が、僕の指の間に入り込む。いわゆる恋人繋ぎだ。 「アニキって、私より手が大きいよね。やっぱ、握り心地がいいよ。最高。ご機嫌だね!」 僕はご機嫌じゃない。 ため息を吐いて、学校からの帰り道、同じ方向に向かって歩く人たちに合わせて歩く。 こんな様子を見て、僕と恋人になろうとする人なんかいないよな。 だから僕、妹以外の女の子と手を繋いだことがないんだ。 ブラコンの妹を持つと、本当に苦労する。 』 彼は恥ずかしい想いをしながらSSを書き上げた。 途中、姉の顔が思い浮かんで来てどうしても上手くいかなかったのだが、奥歯を噛みしめて踏ん張った。 ブログにSSをアップして、誤字脱字のチェックをする。その後、リビングへ夕食を食べに行く。 リビングでは、姉が先に夕食をとっていた。 しかし、いつもなら用意してくれるはずの彼の分の夕食がなかった。 疑問を顔に出していると、姉が不機嫌そうに口を開いた。 「たまには、自分で夕食を準備したらどう? ……ふん。どうせ、運動オンチで、チビですよ」 707 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 48 10 ID oxt0kF95 翌日も、彼は学校から帰って来るなりパソコンの前に腰を下ろした。 一度妹ネタを書くと、堰を切ったようにネタがあふれ出してくる。 今日は、そのうちでもっとも危険なものを書こうと決めていた。 どれほど危険かというと、それこそ、姉への見方が変わってしまうようなものだ。 彼は、部屋の電気を消してからSSを書き始めた。 灯りがない方が書きやすいと思ったのだ。これから書くものは。 『小柄な妹の体を抱きしめると、腕の中で軽く抵抗されるのを感じた。 けれど、僕は抱く力を弱めない。強く、しかし壊してしまわないように、抱きしめる。 「お兄ちゃん、駄目だよ……私たち、兄妹なんだよ? 兄妹でこんなことしちゃいけないよ……」 もちろん僕だってそれは知っている。だけど、今日はどうしても妹を抱きしめずには居られなかった。 頭の中が沸騰したみたいに熱い。ジーンズの中にあるペニスが痛いくらいに膨張している。 夕食を食べ終わってから、ずっとそんな感じだ。 いつも通りのメニューだったのに、どうしてここまでおかしくなってしまったんだろう。 妹が風呂上がりにバスタオル一枚で歩いている姿なんて、見飽きているのに。 今の僕は、小さな妹の体を壊してしまいたくなるほど、妹に興奮している。 妹に口づける。風呂上がりらしく、唇まで熱っぽかった。 「ぅん、ん……舌、だ、め…………おに、ぃちゃん……んん……ん、ちゅ……」 身をよじりながら、唇を懸命に離そうとしてくる。だけど、もちろん僕は放さない。逃がさない。 「こんなことしちゃ、私、わたしぃ……、我慢できなくなっちゃうよ。あそこが、もう……濡れ、て……」 妹の太ももを撫でる。汗で少し湿っているけど、滑らかな感触なのは変わらない。 手を少しずつ妹の体へと動かしていく。タオルに包まれた体は、風呂上がりだという条件を除いても熱すぎるように思えた。 僕の手が、妹の股間へとたどり着いた。 』 ここで、彼の手は止まった。 無理もない。なにせ、彼は女性経験もなく、官能小説を書いたことさえないのだから。 時刻を確認すると、七時をとうに過ぎていた。 昨日よりも書いた量は少なかったが、書いてしまった以上アップしないのももったいない。 彼はブログに注意書きをしてから、SSを載せた。 リビングへ向かおうとしたら、携帯電話にメールが着信した。 送り主は同じ大学に通う友人。内容はこれからボーリングに行こう、というもの。 断る理由もなかったので、彼はOKだという旨をメールに記し、返信した。 リビングに顔を出すと、姉といきなり目が合った。 姉は昨日とうってかわって上機嫌な様子で、すでに夕食を用意して待っていた。 罪悪感を覚えつつ、夕食はいらない、ということを姉に告げた。 すると姉は、座っていた椅子を飛び越えて彼の元へやってきた。 「そんな! 今日のはとってもイイものが入っているんだよ! この日がくることを一日千秋の思いで待っていたんだから、食べなきゃ駄目! え、なんで必死なのか? ……それは、その、ね。あー……変なものは入ってないよ。安心して」 首を傾けつつ可愛らしい笑みを浮かべる姉を見て、彼の第六感とも言うべき感覚が閃いた。 今、姉の誘いを断らなければまずいことになるぞ、という警告が脳内に響き渡った。 それは、今日書いたSSの内容――夕食に媚薬を混入された兄が妹を犯してしまう――が浮かんだせいかもしれない。 姉を無理矢理引きはがし、愛用の靴の踵を踏みつぶしながら外へと飛び出す。 門から出ても、姉の引き留める声が聞こえてきた。 彼がその日に戻らなかったのは、言うまでもない。 708 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21 58 56 ID oxt0kF95 翌日、彼は朝帰りをしてから大学へ通い、半ば眠りつつ授業を受けきった。 いつも通りに自宅へ帰り、パソコンの電源を入れる。テキストエディタを前にしながら、彼は腕組みをした。 最近、姉の行動がおかしい。おかしいのは元からだが、情緒が不安定すぎる。 そう、一昨日に妹が登場するSSをブログに載せ始めてからこうなった。 まさか姉がブログを見ているのか、とも思ったが、姉はパソコンを持っていない。ブログを見ているはずがない。 やはり気のせいだと結論づけ、彼は今日も妹SSを書き始めた。 ――彼は常識的なことを忘れていた。携帯電話でブログを見ることが可能だということを。 そして、一番大事なことも忘れていた。姉が、彼のことをどれほど想っているのか。 彼への依存心が、姉の心にどれだけ強く根付いているのか。 知ってさえいれば、こんなSSを書くことなどなかったかもしれない。 『 「私、言ったよね、お兄ちゃん。ずっと私だけを見ていてね、って。 頷いた? 頷いたよね? ……じゃあ、どうしていきなり転校してきた女と仲良く話していたの? いくら昔から知り合いだったって言っても、そんなこと関係ないんだよ?」 右手の人差し指の爪に、針がさし込まれていく。 まだ先端が入り込んだだけなんだろうけど、これだけで指先から肘までの神経を傷つけられたように痛む。 事の発端は、今日、学校に転校生がやってきたことから始まった。 原田と名乗る女の子は、元気な声で自己紹介をしていた。 僕はその時、窓の外をずっと見つめていた。だから、転校生の女の子を見ていなかった。 それがどうやら転校生の目に留まったらしい。 いきなり僕は抱きつかれた。驚く僕を、転校生は涙目で見つめていた。その顔を、僕は見たことがあった。 小学校四年生の時に、親の都合で引っ越していった女の子がいた。 その子と僕は幼なじみで、ほぼ毎日一緒に遊んだ。時には同じ家で寝泊まりすることもあった。 過去の記憶を思い出してから、僕が彼女のあだ名を呼ぶと、彼女も僕をあだ名で呼んだ。 それから、僕と転校生はすぐに打ち解け、積もる話に花を咲かせた。 僕は突然の再会のせいで浮かれて、油断していたのだろう。 廊下に立って、僕を見つめている妹がいたことに気づけていなかった。 気づけてさえいれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。いや――ならなかった。 帰宅している途中、僕と一緒に歩いていた転校生は車道に突き出され、ダンプにはねられた。 呆然とする僕の後ろにいたのは、妹だった。 僕が誰よりも恐れなければならず、誰よりも優先して相手をしなければならない人間。 小学校に入る前から拷問と調教をされてきた僕は、妹に逆らえない。 どうしようもないのだ。妹を前にすると、腰が引けて、脚がすくむ。 僕は、幼なじみのことを思うならば、彼女を突き放すべきだった。 そうしていれば、彼女は命を落とすことなどなかった。 「今日はどうしよっか。尿道にロートを差し込んでぇ、ロウを入れてあげようか? あは。そんなに怯えなくってもいいよ。痛みをゆっくりじっくり味わわせながらしてあげるから。 もちろん、あとでちゃんと吸い出してあげる。お兄ちゃんの大好きな、私の口で、ね」 口、と聞いただけで僕の股間は固くなってしまう。全て、妹の調教によるものだ。 死にたくなるほどの屈辱と苦痛を与えた後で、慈愛と癒しの心をもって快感を与える。 それが、妹の調教法。僕をのめり込ませ、抜け出せなくさせた狡猾な罠。 今夜もまた、僕の口から猿ぐつわは外れない――――。 』 709 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22 01 10 ID oxt0kF95 妹が出ている意味のない、特殊なSSを彼は書き上げてしまった。 自分の姉がやりそうのないことを思い浮かべていると、こんなネタが思い浮かんだのだ。 ブログにアップして、十分が経った頃、部屋のドアがノックされた。 「……弟君、開けてくれるかな……」 ドアをノックしたのは、彼の姉だった。 すでに時刻は八時近く。いつまでもリビングに来ないから呼びに来たのだろう。 パソコンの電源を入れたままにして立ち上がり、こった背中を伸ばす。 ドアの前にたどり着いた彼は、無防備に開いた。 翌日、彼のブログは更新されなかった。 定期的にブログを訪れていた人たちは、たまにはこんな日もあるだろう、とだけ感想を持った。 管理している彼本人の身を案じている人間など、誰一人としていなかった。 これにて終わり 埋め! 710 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22 23 32 ID s3HfeAZb 709 GJ! お姉ちゃんkeeeeee! 弟くんのその後が気になるぅぅぅ! 711 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22 39 46 ID pDZMFXVA これで500KBかな? ちび姉やっちまったあwww ナイス埋めネタ! 712 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22 51 05 ID auji+D04 ちょwwwおまwww メチャクチャ萌えた! 埋めネタには惜しすぎる! GJ! では埋めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
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750 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 04 41 ID clWZ+s3E 藤堂優奈。隣のクラスの女子。 残念なことに、彼女に関する確かな情報はあまり持っていない。趣味も好みも不明。 とりあえず、外見は良い。というか、めちゃくちゃ可愛い。人気のアイドルも彼女を前にしたら裸足で逃げ出すのではないであろうか? 思わず撫でたい衝動に駆られる茶味がかかった黒髪。 完璧以上に完璧な整った顔立ち。 繊細な指や足。 唯一、胸はあまりないが、全体的に細いそのスタイルは彼女のか弱いイメージとマッチしていて、それすらも計算されているのではと思わされる。 杉下曰く、「仁衣高校三大美女」と呼ばれるうちの一人であるらしい。 余談だが、その「仁衣高校三大美女」には姉さんも入っているらしい。本人は知っているのだろうか?今度聞いてみよう。 そして彼女は独特の雰囲気を持っている。実際、俺は外見よりそちらに惹かれたのかもしれない。 上手く説明は出来ないが、何というか、彼女は自分の人生を客観的に生きていた。おそらく彼女は、人が喜びそうなことをしたら喜び、悲しみそうなことをしたら悲しむであろう。しかも演じているような不自然さとは無縁に。 彼女の主観は客観であるというのが言い得ているであろうか。人間らしい人間。それが藤堂優奈であった。 751 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 08 10 ID clWZ+s3E 昼休み前の前の四時間目。俺は数学の授業を華麗に聞き流しながら、必死に告白のセリフを考えていた。 「もう俺は君無しでは生きていけない。俺と付き合ってくれ!」 「どうしようもなく君が欲しい。高校生活を俺と共に歩いてくれないか?」 …。駄目だ。俺にはこういったセンスはないらしい。 俺は、二時間目終了後に、藤堂優奈の机に手紙を入れてきていた。 「話したい事があります。昼休みの空いている時間、屋上に来てください」 と。 しかし、呼び出して、どういう風に告白するか。それをまったく考えていなかった。 「まぁ適当に挨拶した後、ストレートに、好きです!付き合ってください!でいいだろう」 どうせ撃退だろうし…。 彼女にまだ彼氏が居ないことは確かである。なので、可能性が0というわけではない。 しかし彼女はかなり頻繁に男子の告白を受けているが、それを全て断っているらしい。 理由は不明。杉下によると、撃沈者の数は、まだ入学から一ヶ月しか経っていないというのに、十人を軽く越しているとか。 そんな事を考えていると逆に緊張感は薄れてきた。 藤堂優奈のことは本気で好きである。おそらく杉下達の罰ゲームがなくても、いつかは告白していた。 もし自分の彼女に出来たら、とてつもなく嬉しい。そして、振られたら、もちろん悲しいであろう。 しかし例え振られても、俺には現在の充分に充実した生活があった。 「失う物は何もない」 自らに言い聞かすように小声で呟いた。 丁度、俺の覚悟をしたのを見計らったかのように授業終了のチャイムが鳴った。 「さて行くか!」 俺は授業終了の号令と同時に教室を出た。 仁衣高校は屋上が開放されている。ただ風が強いのと季節によっては寒いのとで、昼休みにここで弁当を食べる習慣の生徒は居ない。(もっとも、たまには居るのだが) なので、教室とは違った話場として使われていた。しっかりとベンチもあったりする。 告白にはよく使われているらしい。 普段は人がいないのに加え、例え自分のような人間が複数居ようと、仁衣高校の屋上はなかなか広いため、あまり気にならないためであった。 今日は俺しか居ないようだ。もっとも、まだ昼休み開始すぐなので、これから人が増える可能性はあるが。 752 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 11 18 ID clWZ+s3E ガチャリ… 入り口のドアが開く音がした。まさかもう来たのであろうか? ドアが完全に開くとそこには可憐な少女が居た。藤堂優奈だ。 俺は一度小さく深呼吸をし、藤堂優奈に話しかけた。 「こんにちは。来てくれてありがとう。俺は1-Cの赤坂映太。よろしく」 「え…」 いきなり、驚いたような顔をされた。少し馴れ馴れしかっただろうか?さっそくミスをしてしまったか? 俺はとても焦った。 「好きです、付き合ってください!」 気づくと俺は既に告白のセリフ言ってしまっていた。 藤堂優奈が屋上に来てから三十秒も経っていないうちの告白。挨拶だけして、前置きも無しに叫んでいた。 相手からすれば俺は今初めて知った人間なのに。 しかも顔は下げたまま。まともに藤堂優奈の顔を一度も見ていない。 やってしまった…。駄目な告白の典型例だろう、きっと。 とりあえず、俺はおそらく真っ赤になっているであろう顔を上げ、返事を待った。 「兄さん…」 「は?」 様々な返事を想定はしていた。断りの返事はもちろん、希望を込めてのOKの返事も。 が、こんな返事は予測していなかった。俺の口から間抜けに疑問符がこぼれる。 「兄さんーー!」 藤堂優奈はもう一度そういうと、勢いよく俺の胸に飛び込み、そして抱きついてきた。 兄さん?藤堂優奈に抱きつかれた?好きな女の子にいきなりの行動に俺の頭はパニックに陥っていた。 顔を見ると、目に涙が溜まっている。 「兄さん!兄さん!寂しかったよぅー」 何が何だか分からない。 俺はしばらく抱きつかれたまま、その場で立ちすくんでいた。 753 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 14 02 ID clWZ+s3E 投下終了です。不評でなければ続き投下していきます。 では裸にネクタイの態勢に戻ります。 754 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 15 37 ID clWZ+s3E 追記 昼休み前の前の四時間目→昼休みの前の四時間目 普通にミスです。すみません。 755 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 06 36 51 ID qmFjoBpY GJ! 756 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 06 43 19 ID jexV9bZ+ 続きが楽しみだ。GJ!! 757 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 11 39 11 ID snLHAzVP 続き~楽しみに決まってます!!! 758 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 18 19 14 ID dLSzsSSq GJ!続きがきになる!!全裸で待機してます! 759 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/03(土) 18 27 48 ID KWXh7ImH GJ!この後のどうなっていくのか気になる(>< 760 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 00 58 05 ID OknPVrM0 良作ホイホイだな 761 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 05 02 00 ID ikCddwhD GJ!! これは、神の予感・・・ 762 名前:名無しさん@ピンキー[な] 投稿日:2009/01/04(日) 07 22 37 ID SUfb/mYA GJ!! 続きキボン 763 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 03 16 39 ID /qiCKxV6 こんなにGJと言って頂けるとは!嬉しいのでさっそく2話目投下しちゃいます! ってなる予定だったんですが… 2話以降、全部消えました。気分良くなって保存もせずにログオフとか… 優奈「雨音ちゃんは俺の妹!とかはしゃいで、私の事を忘れる兄さんが悪いんですよ」 はい…、その通りです。 スミマセン、それだけです。そういう報告は要らねーよって思うかもですが、あまりに悲しかったので… 764 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 04 39 50 ID VvMor0kP 763 楽しみにしてるので、諦めずまた投下されることを祈ってます。 765 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 06 47 29 ID f2xhAhK4 763 字が消えたら物語が消えるって訳でもなし 脳内に残ってるならまた書けばいいさ 気長に待ってるよ 766 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 11 24 55 ID xPTBIbP8 SSって書き始めたとしても、なかなか書ききれないよね 767 名前:ワイヤード ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 28 20 ID TDyDTYz3 久々に投下します。二話連続ですが、今回あまり面白い部分はないと思います。 これからへのつなぎみたいな話です。 768 名前:ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 28 50 ID TDyDTYz3 幕間『少女の祈り』 神様――。 月夜。 光がステンドグラスを超えて差し込み、少女を照らしていた。天使のごとき輝き。 翼のないその姿が、むしろ神秘だった。 闇の中の教会で唯一輝ける少女は、独り神に祈りをささげていた。 「神様」 目を閉じる。 少女はその瞼の裏に、世界でたった一人、愛し、全てをささげるべき存在を想い浮かべる。 そして、それは神ではない。ただの、一人の少年の姿だった。 「神様、どうか……」 少女は、神など信じてはいなかった。信じているのは、ひとつだけ。 未来。 少女と、少年の、二人の未来。たったひとつ、それだけがあれば、それは彼女の幸せだった。 「どうか、ちーちゃんと私の生きる、未来を……!」 ただひたすらに、純粋で、しかし利己的な願い。 信じてなどいない神にまですがる。 それは、彼女がプライドよりも大切なもののために生きているという証拠だった。 それほどまでに、少女はあの少年を愛していた。 「神様……」 教会の奥にひっそりと佇む、神を模した像は、ただ、少女を見つめるだけだった。 ――この世界に、神なんていない。 少女には、そんなことは既に分かっていた。 神なんていない。人は、狂おしいまでに平等だ。 だから、強いものが勝ち、弱いものが負ける。平等だからこそ、違いがある。 だから、少女は力を願った。 769 名前:ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 30 28 ID TDyDTYz3 かたん。 突然後ろから聞こえたその音に、少女は振り向く。 教会の扉が開いていた。差し込む光に、浮かび上がる影。 人影。 「待ってたよ、アリエス」 少女は、確信をもって人影に声をかけた。 アリエスと呼ばれた少女も、落ち着いた声で返答する。――まるで、こうなるのがはじめからわかっていたかのように。 「逃げないとは、たいした自信だな」 「けじめをつけるためだよ。一人でも逃がしたら、ちーちゃんに迷惑がかかっちゃうから」 「お前は……!」 アリエスが激昂する。 「お前は、悪魔だ。神に祈る資格など、ない!」 「……そう」 少女は神にひざまずいていた姿勢から、立ち上がり、アリエスと向かい合う。 「自らの目的のために、何人を義性にした! 何人を殺してきた! お前の殺した者には、帰りを待つ家族がいて、恋人がいて、友がいて……ともに、笑い、泣き、怒り……。全て同じ、人間だ! それを、お前は簡単に……! そして、遂には、お前はおまえ自身の両親までも……!」 「なら、逆に聞かせてもらうよ」 「……何だ」 「あなたたち統合教団は、私にどういう仕打ちをした? 度重なる、過酷な能力テスト。人体実験。兵器開発。薬物投与。攻撃力の調査のために、大型動物と素手で戦わされたこともあったよ。 そして、死刑囚を連れてこられて、人体への攻撃を試すとか言って、私にその人を殺させたのも、あなたたち統合教団」 「……っ」 「もともと人間扱いされなかった私に、私の両親は何をしてくれた? もともと統合教団に私を売ったのもお父さんとお母さんだよ。そして、そのためにちーちゃんと私を引き離したのもあの二人。あの二人だって……あいつらだって! 私を人間扱いしてくれなかった!」 「それでもっ」 「それでも、何だっていうの!? 私を助けてくれたのは、心の中にあったちーちゃんとの記憶だけなんたよ……? あの人と結ばれる未来だけが。その夢だけが、私を守ってくれたんだよ? そんな、小さいけど幸せな未来への願いさえ、統合教団は許さなかった」 「だから、全て破壊したというのか!」 「そうだよ! それのどこが間違ってるって言うの? アリエス、あなたに私が裁ける? ちーちゃんが好きだっていうだけで、それだけで良かった私を、ここまで変えてしまったのは、あなたたちなんだよ……?」 「違う……。お前は、お前のエゴを押し通しているだけだ! お前一人の願いのために、多くの――お前と同じ、小さな願いを持った人間を、何人も殺したんだ。それは、許されるものではない」 770 名前:ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 31 03 ID TDyDTYz3 「……なら、その力は誰が私に与えたものなの?」 少女は、手にもった剣を握り締めた。 「それは、お前が元から持っていた力だろう。だから我々統合教団は、お前を保護し……」 「違う! 私は、ちーちゃんと一緒にいたいだけなの! 本当は、こんなちから、いらない!」 「血塗られたお前が言うことか……!」 暗闇で隠されていたが、徐々に光で浮き上がる少女の姿。 アリエスには、しっかりと見えていた。少女の、血塗られた身体。 少女のものではない。返り血。少女が虐殺した、統合教団の構成員達のものだ。 そして、それだけではない。少女は、奇怪な鎧を身に着けていた。 やけに近未来的な――今は血塗られて赤いが――白い鎧である。手には、長剣が握られている。 「その剣は、確かに我々が与えたものだ。だが、お前の剣を振るうのはお前自身だ。お前の心だ」 「……そう、そうなんだ。アリエス、あなたは、分かってくれないんだね……」 「別の形で出会っていれば、お前とは友でいられただろう。だが、私は全てを奪われた。だから、もう戻れない。戦うことでしか、私たちは分かり合えない」 アリエスは、マントに隠していた武器を取り出した。 「『ヴァイスクロイツ』。エクスターミネート」 十字架のような形をした武器。『ヴァイスクロイツ』。中心にある宝石がアリエスの闘気に反応するように光る。 「本当に、やるんだ。さっき、私の力は見たでしょう? この『ネクサス』がある限り、私は無敵だよ。そして……」 少女は、剣を構え、突進した。真っ直ぐ、アリエスに向かって。 「この剣を振るわせるのは、あなた!」 「だとしても!」 全くゆがみのない攻撃。ひたすら真っ直ぐに、迷いなく、最速で剣を振り下ろす少女。その一撃を、アリエスは『ヴァイスクロイツ』で正面から受け止める。 互いの強大なエネルギーの衝突に爆音が轟き、教会全体が強く揺れる。ステンドグラスが吹き飛ぶほどの衝撃。 「『ネクサス』! ブーストアップ!」 ブースト・アップ 。少女が身に付けている鎧のベルト部分から、機械音声が発せられる。 同時に、少女の持つ剣が強い光に包まれる。 「っ!?」 アリエスはとっさに少女とのつばぜり合いを中断して、ヴァイスクロイツを引き、少女の左隣に飛び込み、床を転がって距離をとった。 次の瞬間、少女の剣から発せられた強い光が剣から一気に溢れ出し、少女の前方の物体全てを切り裂いていた。 教会にあった椅子、カーペットはもちろん、教会の壁、地面でさえも、少女の前方のものは、全て。 「……」 アリエスは驚愕する。これほどの威力の攻撃は、かつて見たことがなかった。 少女が、本気だということだ。アリエスが見たことのない領域の力を行使するまでに。 771 名前:ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 31 33 ID TDyDTYz3 「どう? これが、あなたたち統合教団が恐れ、制御しようとした『ワイヤード』の力。『WE粒子』のもたらす、世界を変える力」 「……この力は、人が手に入れていいものではない」 「あはっ! 同意見だよ、私もね。でも、末端のアリエスは知らなかったかもしれないけど、本当にこれを手に入れたがっていたのは、統合教団……つまり、人なんだよ」 「そんな、ばかな……」 「いいよ、今なら許すよ、アリエスのこと。だって、知らなかったんだもんね。アリエスは、ワイヤードに家族を殺された恨みを晴らすために、統合教団に協力してたんでしょう?」 「……」 確かに、その言葉は正しい。 アリエスは、ワイヤードという存在に教われ、全てを失った。自身も、一生消えない傷を負った。 そして、ワイヤードたちと闘っている組織、統合教団に拾われ、その中でずっと戦ってきた。 知らなかった。 アリエスは、統合教団の行動は、全てワイヤードの殲滅のために行われていると、信じていた。 「統合教団は、人類のためにワイヤードを滅ぼすなんていう、正義の組織じゃなかったんだよ。教団の目的は、『WE粒子』の軍事転用。それをもって世界を統一する。つまり、本当のエゴの塊は、統合教団のほうなんだよ。私じゃない。あんなやつら、殺されてとうぜんでしょ?」 「そんな……そんなことが……」 「アリエス、今なら、私の仲間になれるよ。一緒に行こう、アリエス」 「……それでも」 「?」 「それでも、私は、神を信じている」 「……あきれた。どうしてそんなに頑固なの?」 「統合教団の神ではない。お前の神でもない。私の神は、ここにいる」 アリエスは、勢いよく立ち上がり、自らの胸を強く叩く。 まるで、心臓の――命の存在を確かめるように。魂を確かめるように。 「この魂が、叫んでいる。お前は歪んでいると! 私は、私の信じる全てを――神への祈りを、全て……!」 ヴァイスクロイツを強く握り締めるアリエス。 その腕には、瞳には、もはや何の迷いもない。 「……分かった。私がちーちゃんを想うのと同じ。アリエスも、本当に大切なものがあるんだね」 「その通りだ。もはや、どちらが善、どちらが悪なのか。そんな問題は超越した。私とお前の、運命は。……全て、神の導くままに。そして、私自身の意思で、ここで断ち切る。この祈りを、全て、この一撃に懸ける……!」 「いいね。一撃、たった一撃の勝負……」 少女も、剣を握り締める。ベルトが エクステンション・ドライブ とコールしたと同時に、少女の剣が強い光に包まれる。 「もう、言葉はいらない! いくよ、アリエス!!」 「西又イロリ……いや、ワイヤード! 私が、お前の運命を断つ!!!」 二人が同時に駆け出す。 「いっけええええええええええええええ!!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 772 名前:ワイヤード 幕間 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 32 04 ID TDyDTYz3 ある朝、京都近郊の、町外れの教会が、全焼、倒壊状態で見つかった。 近隣住民に寄れば、その前の晩、なにか大きなゆれと、音と、そして、天まで届く光が教会から発声していたらしい。 調査隊の活動虚しく、焼け跡からは死骸もなにも見つかっておらず、おそらく被害者はゼロと思われる。 警察は原因究明に乗り出したが、結局全てが不明であり、調査はすぐに打ち切られた。 西又イロリが東京に現れる、数週間前の出来事である。 773 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 32 38 ID TDyDTYz3 第十四話『存在に心奪われる時』 「(どこだ……どこから撃ってきている……)」 第二射。 千歳は即座に反応して手のひらで矢を受ける。 千歳の手のひらを貫くかと思われた矢は、逆にひしゃげて地面に落ちた。 そして、千歳は分析を終了した。 今の一撃で。矢の方向や速度、角度によって、狙撃者のいる位置を特定したのだ。 「(ありえないことだが、3000メートルほど離れた地点から撃っている。そして、恐らく高くて、俺が見える場所……)」 ――学校、だ。 「っ!?」 思考している間に、三発目が迫っていた。 「蒼天院清水拳、流転投槍!」 両手を円状に回転させて、その中心で作った空気の壁により、触れずに受け止める。 矢にこもったエネルギーを保ちながら腕をさらに回転し、矢を方向転換する。 「受け取りな、こいつは警告だ!」 両腕を押し出すと、空中で静止し、方向転換した矢が、まさに飛んできた方向をめがけて校則で飛んでいった。 清水拳による反射。 「……とどくか?」 774 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 33 08 ID TDyDTYz3 「くっ……ボクが二発も外した……!?」 メアは動揺する。彼女の腕を持ってすれば、暗殺など一撃で十分なのだ。本来なら、もうとっくに終わっている。 焦りながら、第三射を放つ。 「あいつ、受け止めて……!」 そして、こちらに向かってくる。 「ちっ!」 高速で迫ってきた矢を寸前で掴み取り、メアは防御した。 「まさか倍化して反射するなんて……。鷹野千歳、思ったよりやるな」 こうなれば、暗殺は無理だろう。メアはさっさと見切りをつけ、ずらかろうとする。 「まさか、本当にこのまま逃げられるとでも思っているんですか?」 「!?」 突如背中に投げかけられた声に、メアは飛びのいて距離をとった。 「何者だ!」 「何者って、あなたのほうこそ何者なんですか? そうでしょう、だってあなた、高校生には見えませんよ」 「……」 メアの背後に立っていたのは、この高校の女子生徒のようだった。 黒のショートヘアに眼鏡の、一見地味な風貌だ。 だが、メアには一瞬でわかった。 こいつは――野獣だ。 「まあ、相手に素性を聞く時は自分からっていいますしね。私は井上深紅。この高校の風紀委員です。以後、お見知りおきを」 「……なぜ、ここにいる」 「なぜって、確かに今日は休日ですが、生徒会活動やらなんやらも大変なんですよ。委員長っていうのは。それに、その質問はあなたに対して為されるべきでは? あなた、他人の学校の屋上で、人を狙撃してましたよね?」 「くっ……」 メアは動揺する。 目の前にいるこのミクという女は、一体何者なのか。 表面上はなんて事のない、丁寧語を喋る優等生然とした少女だ。だが、どう見ても、それ以上の何かが秘められている。 「いえ、そんな目で見ないで下さい。別に怒ってるわけじゃないんです。狙撃はかまいませんよ。たまにはしたくなりますよね、狙撃」 こいつは何を言っているんだ。ミクの異常性に、メアはついていくことができない。 「ただ、狙撃している対象に問題があるんですよ」 ミクは笑い始める。無気味に、ひたすら不気味に。 くすくす。 くすくす。 くすくす。 775 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 33 55 ID TDyDTYz3 「(こ、こいつは……!)」 メアは、ここでやっと確信を得る。 「(こいつも、ワイヤードだ!)」 そうと分かれば行動は早かった。 メアはアルバレストをミクに向ける。 「お前、ワイヤードだな……」 「さあ、何を言っているのやら、わかりませんね」 「随分余裕だな。ボクがここで引き金を引けば、お前は死ぬ」 「くすくす。本当に、やんちゃなんですね。『ボク』ですか。可愛い女の子が……」 「何がおかしい」 「いえ、失礼。だってあなた『タチ』ですもんね。そして、可愛い子猫ちゃんを欲しがってます。『百歌』ちゃんという、可愛い子猫ちゃんをね。だから、男の子を演じている」 「……!! お前、一体……!」 「知ってますか? 情報というのは、時に銃よりも強い武器になるんですよ? メア・N・アーデルハイドさん」 「お前……」 「そして、私は今、怒っているんです。あなたの愛がどこへ向かおうと勝手ですが、その怒りの矛先を千歳君に向けた事実に」 「……!」 井上ミクは、どう見ても弱い。ひょろりと細いし、身長もあまり高くない。メアより若干上な程度だ。 どう見ても、勝てる相手。 なのに……。 「(なぜ、ボクの脚が動かない……!?)」 ミクはくすくすと笑いながら、少しずつ近づいてくる。 ――そんな姿に、メアはどうしようもない恐怖を抱いていた。 「千歳君を……。私の千歳君を……。あなたに、彼の何がわかるって言うんですか? あなたに、彼を裁く権利はあるんですか?」 「(動け……動け……!)」 已然、メアは硬直している。 ミクの指がメアの首に触れる。 「あなたも、戦闘では強いみたいですが、もうすこし身の程を知ったほうが良いんじゃないですか? 世の中には、触れてはいけない尊いものがあるんですよ? 千歳君を殺そうだなんて、イスラム圏でマホメットを馬鹿にするようなものです。この世界全てから、あなたが殺されることになるんですよ?」 すべすべの、優しい指がメアを撫でる。 「(殺される……)」 「私の『幸せ家族計画』にも支障をきたしちゃうじゃないですか。千歳君無しには、何もかも台無しなんですよ。……だから」 「ぐっ……!」 ミクがメアの首を締め上げ、その身体を軽々と持ち上げた。 776 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 34 26 ID TDyDTYz3 「(こいつ……なんという力だ……!)」 「暴力沙汰は苦手なんですけどね。それでも、私にはものの価値判断というものができますから。ねぇ、メアさん。この世界のなかの、大切なものって、分かりますか?」 「(な……なにを……言っている……)」 「人間も、何もかも。この世界に平等なんてないんですよ。どんなものにも優先順位があります。それはまず第一に、『自己』が尊重されるべきであり。しかし、その前提に成り立つ、最も上位の存在があります……。それが、千歳君なんですよ」 「(こいつ……)」 「あなたと、あなたの大切にしている世界は、あなた自身が思うほど特別じゃないんですよ。本当に特別なものが世界にあるとしたら、私の観測した、私と千歳君の生きる世界です。これは本当に簡単な理屈なんですけど、なぜ誰もそれに気付こうとしないんでしょうね?」 くすくす。 「(狂人だ……!)」 「さて、そろそろ良いでしょう」 ミクはメアを掴んだまま、屋上の端に移動する。 「お別れです」 そして、足場のない場所にメアを持っていき、その手を放した。 「……ちぃ!」 メアは空中でくるりと身軽に回転し、見事に着地。 五階建てのこの学校校舎の屋上からの落下を、全く苦にしなかったのだ。 「あいつ……なんなんだ……」 焦燥。 ここはとにかく一旦退くしかなかった。 777 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 35 36 ID TDyDTYz3 「やはり、この程度では傷ひとつつきませんか」 ミクは、退散していくメアの姿を、屋上から悠々と見下ろしていた。 「あんな化け物とまともに戦ったら、私なんか肉片も残らないでしょうね」 そう言いつつも、ポケットから小さなビンを取り出し、ぷらぷらと目の前で振った。 「この『硬直香』の効果範囲の狭さも、改善の余地ありですね」 ビンの中には鮮やかな赤色の粉末が入っており、小さく火がついている。ビンの口からは、甘い匂いが漏れ出している。 これは硬直香とミクが呼んでいる特殊ガスであり、その効果はその名のとおり、かいだものの筋肉を硬直させる。 匂いは強くなく、効果も即効性があるため、非常に高性能だが、欠点は、その効果範囲の狭さだった。最低でも5メートル以内に近づかなければ、全く意味がない。 「自慰行為をするというのは、主義に反するのですが、まあいいでしょう」 実の所、これは自身の体臭がもつ幻惑作用を取り出して物質化したものである。それに必要だった愛液は、もちろん自家発電した。 ミクはそれまで自慰行為をしたことがなかったが、千歳に対して行った数々の性的暴行を思い出すと、非常に簡単に濡れることができた。 「ふふっ、千歳君に試す時は、もう少しちゃんとしたものを作らないといけませんからね。副作用なんてあったら大変です」 そこまで言うと、ミクは満足げにビンをしまった。 「さて、メアさん。この警告を真摯に受け取ってくれれば幸いなんですけどね」 「さて、狙撃手があの警告を真摯に受け取ってくれると幸いなんだがな」 狙撃がやみ、千歳は家についていた。 「ん、どうしたのお兄ちゃん?」 「いや、なんでもない」 百歌は相変わらず何も知らず、無邪気だ。だが、それがいい。一番いい。 千歳は、百歌をわけのわからない命の取りあいなどに関わらせる気は全くなかった。 目的もなにもわからない狙撃手だが、野放しにしておくと百歌まで危険に晒すことになるかもしれない。 「(次はない。次に俺や百歌を狙ってきたら、容赦なく消す……。そのための、俺の清水拳だ)」 778 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 36 37 ID TDyDTYz3 数日後。 狙撃手も現れず、その日も平和に千歳とナギ(と、家の方向が違うのにいつの間にか合流しているイロリ)は、元気に登校していた。 「いや、北斗はやはりトキだろう。家族を想うあの生き様は見習わなければな」 ナギが熱くトキの人生を語る。 「まてまて。サウザ―を忘れるな。やはり拳法家としては、ケンシロウももちろんだが、ああいうサウザ―のストイックな所にも憧れるだよ」 千歳も負けじと熱く語る。 そして。 「二人とも、あまーい!!!」 「な、なんだよ、いきなり大声出して」 イロリは、千歳に槍訊き返されたとたん、まるでダムが決壊したかの如く言葉を垂れ流し始めた。 「確かにトキの家族愛やケンシロウの隣人愛はすごいとは思うけど、最高はシンだよ! 北斗はもともとシンとケンシロウの闘いの物語だったんだし、それにやっぱり愛に生き、愛に死ぬあのシンの生き様には現代人が見習わなければならない部分がいっぱいあるよ! 言うなれば、『さふいふものに、わたしはなりたい』だよ!」 「そ……そうか……?」 「そうだよ! それに、ちーちゃん。サウザ―なんて駄目駄目! あんな『愛などいらぬ!』なんていう人、全然わかってない!」 「いや、それは違うぞ、イロリ」 ナギが口をはさむ。 「サウザ―が愛を失ったのは、やつ自身の持つ愛が、誰より深かったからだ。愛を持つ苦しみを知ったが故に、悪によってそれを塗りつぶしてしまおうと思ったんだ。 愛と憎しみの重さとは、常に均一なんだよ。愛を守るためにせよ、壊すためにせよ、それに対応した憎しみが存在する」 「……た、確かに」 「サウザ―の場合は、生まれた憎しみが愛そのものに向き、シンはユリアへの執念ゆえにケンシロウを傷つけたという、そういう方向の違いが二者にはあったが。 ともかく、他の北斗の拳の登場人物も、どんな形であれ、愛と憎しみを持っている。ユダですらそうだし、ケンだって悪を憎む心は愛から生まれている。奴らは皆、同じ人間だからな」 「な……なるほど。勉強になるよ」 千歳にはそこまでわからなかったが、イロリはなんとか納得できたみたいだった。 「やっぱり、ナギちゃんは凄いね!」 「まあ、それほどでもないがな。それに、お前がシンを尊敬する気持ちも、分からんでもない。結局、歪んだ愛をもった人間が多いのにたいし、シンの愛は方向性はどうあれ真っ直ぐだった。正しい形をとっていなかったとしても、あそこまで一途なやつも、そうそういないな」 そうこうして無駄話をしているうちに、校門までたどり着く。 見ると、なにやらいつも通りの風景ではない。 生徒たちはざわざわと野次馬のように外に出てきていて、その中心には大きくスペースが開いている。 黒服の男達が何人か断っていて、野次馬達を押しのけているのだ。 さらに、開いたそのスペースの中心に、誰かが立っていた。 「なんだ、こりゃあ」 千歳が小さく呟く。とにかく学校に入らなければ。と、踏み込む。ナギとイロリも追従する。 真っ直ぐ歩いていくと、見るからに怪しい誰かさんにぶち当たることになる。迂回していくか、と、千歳は方向転換―― ――しようとした矢先、怪しい人物が走り出した。 その手には、槍が握られている。 779 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 37 08 ID TDyDTYz3 「なんだ……!」 超スピードで接近し、不審者は槍による打突を繰り出す。 反射的にそれを清水拳で受け止めようとする。 「――っ!?」 が、清水拳の生み出す闘気の障壁を、その槍は貫いた。とっさに身体をひねり、ギリギリで回避。 「(こいつ、まさか『狙撃手』……!)」 体勢をくずしたのを逆に利用して、地面に手をつき、脚を突き出して脚払いを仕掛ける。 不審者はそれを身軽に跳んで避け、距離をとって着地した。 その間に千歳は立ち上がり、不審者と対峙する。 不審者の風貌は本当に不審だった。鬼のような面に陣羽織。そして手には槍。どこかのアニメキャラと、気のせいか似ていた。 「てめー。何者だ」 答えてくれるとは思わないが、一応そう訊いてみる。 「……わたくしは」 「!?」 意外なことに、その不審者は返答した。しかも、その声は女。 女が、清水拳をたやすく貫くほどの貫通性を生み出したというのか? そして、その不審な女が続けた言葉は、さらなる驚愕に値するものだった。 「わたくしはミス・キシドー! あなた様の存在に心奪われたものです!!」 780 名前:ワイヤード 第十四話 ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 38 22 ID TDyDTYz3 終了です。 753 確かに、良作のヨカン……! 頑張ってください。 781 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 13 46 13 ID yoqBzRV6 リアルタイムGJ! 抱きしめたいな とか言ってきそう 782 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 14 01 55 ID on/kLpK9 780 GJ!! とりあえず◆.DrVLAlxBIは絶対00見ててグラハムファンってわかった。 俺もです。 783 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 14 48 12 ID +7dvXH7S gj! 780もまた乙女座なんだろう。 784 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 16 46 09 ID fDvfUoLI GJ でもキシドー名乗るなら陣羽織じゃダメだろww 785 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/05(月) 17 01 02 ID F9xeZuRa つまんね。死ねよ 786 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/05(月) 18 34 47 ID ngfiz04p ワイヤードキターーーーGJ!!続き楽しみです 787 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/05(月) 23 19 17 ID VvMor0kP GJ!! やっときましたか! 788 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 00 00 37 ID rie1UnEh 『闘うことでしか、わかりあえない』 で(0w0)と( V )を思い出したのは俺だけで良い…後Mr.ブシドー思い出したww 789 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 00 23 14 ID IzXHMM7Y 788 うぜえ 790 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/06(火) 00 50 00 ID +nH+kb12 いい感じの厨二病タイトル 791 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 17 40 15 ID tHlj3s68 新ジャンル考えた! ヤンデレスイーツ(笑) あたし病んでる、みたいな? いま流行のヤンデレってやつ? 彼氏はいる、ていうか いない訳ないじゃん あたしは彼氏がいないと生きていけない、みたいな? 自分で書いててムカついてきた 792 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 17 42 45 ID 5KbOcXkF そもそもヤンデレとスイーツは結構相反するものじゃね? 793 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 18 18 08 ID C4MQ0r68 その人間が本質的にスイーツ(笑)じゃなければいけそうだが、本当にスイーツ(笑)なら「これが真実の恋(笑)」になっちゃうから無理だろ。どこまで行っても利己的じゃあ 794 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 18 35 25 ID /AGIfe5V スイーツは我儘で悲劇主義者?だからな ヤンデレとの決定的な違いは尻軽で無い点と彼氏に忠実である点だろ スイーツはカッコイイオトコを発見すると乗り換えするけどヤンデレにはそれがない 795 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 18 50 21 ID 5KbOcXkF まぁある出来事をきっかけにスイーツが更正?したと同時に 更正させてくれた男への愛情が溢れてヤンデレになるのはありだとおもう まぁ独占厨もいるからそういうやつには微妙かも知れないが そういうSSもあるとこにはあるしな 796 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 28 04 ID nM93YJCi では投下致します 797 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 30 40 ID nM93YJCi 第3話『絶対監視領域』 そんなわけでいつもの朝がやってきた。季節は暑苦しい夏が終わり、 ゆっくりと秋に移行しているせいか、朝方は少し冷える。こんな季節に布団を被らずに寝ると 風邪の一つや二つぐらいひいてもおかしくはない。 隣で寝ているであろう彩さんは起床しているのか、すでにいなかった。 台所の方から美味しそうな匂いがしてきた。独り暮らしの俺以外に誰も住んでいないこの家に料理を作れる人間は 彼女しかいないだろう。自慢ではないが、独り暮らしをしているくせに俺は料理の方はさほど上手ではない。 自炊すると言っても、コンビニから買ってきた弁当の中身を開けたり、インスタント食品にポットのお湯を注ぐことしかできない。 だって、男の子だもん。 「あっ。起きたんですね。周防さん」 フリルの付いたピンク色のエプロンを身に纏った彩さんが天使の微笑みを浮かべて、こっちにやってきた。 片手には長年使っていなかったフライパンを持っており、テーブルの上に置かれた皿に目玉焼きなどと言ったおかずを盛り付けていた。 「これは桜井さんが作ったの」 「泊めてもらったお礼ですよ。これぐらいのことをさせてください」 「俺はロクに料理ができないから、人が作った朝食を食べるなんて久しぶりだな」 「周防さんは普段料理とか作らないんですか?」 「うんうん。全然、ダメなんだよ。せっかく、調理器具を買い揃えてもあんまり使う機会もないし、 料理のレシピを見てもさっぱりとわからん。みじん斬りなんてどうやって斬るのってレベルだし」 「神話級の不器用ですよ。料理に絶望したと言って、大根を持ちながら銀行強盗に走り出してもおかしくないレベルです」」 「うん?」 「な、な、な、なんでもないですからね。さあ、冷めない内に食べましょう」 久しぶりに一人ではない朝食を彩さんと過ごす時間は快適であった。 作ってくれた料理も旨いを通り越して、美味の領域に達していた。 心から涙を流せるような美味しい料理を作れるのは日本でも彼女しかいない。と大袈裟に言えるぐらいに素晴らしかった。 「えへへ。私の料理をたくさん食べてくれて嬉しいですよ」 「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした」 食べ終えた食器を台所に運んで、軽く汚れを水で落とす。 朝はのんびりしている時間が作れないため、そんなもんは適当でいい。 彩さんは小さな口でゆっくりと朝食を食べているのだが、今日はちょっと起床時間が遅かったせいか、 すぐにバイトへ行く時間を迎えていた。 「あの桜井さん。俺はバイトに行かなきゃいかないんで。 これ俺のアパートの鍵を渡しておくからさ、部屋を閉めたらポストの方に入れておいてください」 「は、はい、わかりました」 「それじゃあ、バイトがあるんで先に失礼させて頂きます」 「周防さん。お仕事頑張ってくださいね!!」 「ガッテンだ」 意味不明の掛け声を発すると俺はさっさと自分の家を後にした。 798 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 32 55 ID nM93YJCi 一人残された私は未だに自分の作った朝食と対決していた。 忍さんのために作った朝食は一人で食べる時よりも何倍も何倍も美味しかった。 昨日、私の我侭で泊めてくれた恩返しのために朝食を作ったけど。 これからも何かと理由を作って、忍さんに私が作った料理をたくさんたくさん食べて欲しいな。 ふと、私は忍さんの部屋に一人でいることに気付いた。 そう、一人なのだ。 えへへ。 忍さんは将来のお嫁さんのことを信用しすぎているようですね。 恋する女の子にこんな危険な自宅の鍵を渡すなんて。私に犯してくれと言っているようなもんですよ。 うにゃ。 自宅の鍵さえあれば、鍵屋で簡単に合鍵の10個や20個も作れるし。 いつでも、忍さんの家に不法侵入しまくりですよ。忍さんの趣味とか好みとか たくさん情報をたっぷりと仕入れて、忍さん好みの女の子になれます。 ううん。 私がこういう行動を取ると予想して渡してくれたのかな? だったら、私だって全身全霊で忍さんを口説き落とします。夜這い、誘惑、悩殺、なんでもやりますからね。 さてと、忍さんがアルバイトに行っている間になんでもやれます!! 合鍵を作って貰っている間に盗聴器と盗撮カメラを買って来て設置しましょう。 リアルタイムで忍さんを監視するんです。私以外の女の子と接点があるのか調べなくちゃならないし、 それに24時間ずっと忍さんを見続けたいですから。 この際だから、将来のために貯蓄していたお金を銀行から引き出して買おう。 生活はちょっと苦しくなるかもしれないけど、愛する人を手に入れるためなら。 私はなんでもやる。 なんだってやります。 だって、私が初めて好きになった人だもん。 昨日の出来事だけで私は人生で初めて人として、一人の女の子として優しく接してもらえた。 その思い出だけで永遠に生き抜くことができる。 忍さん。 あなたのほんの些細な優しさだけで私は救われました。 それと、人を初めて好きになりました。 一緒に泊めてもらったことで、それを何よりも確信しましたよ。 あなたの体温はとても温かくて、私はとても安心できました。それにちょっとだけ興奮して鼻血とか出したけど。 忍さんは私が鼻血を流しても、嫌な顔を一つもせずにティッシュで拭いてくれましたよね。 他の人なら私を汚いと罵り、面白そうに暴力を振るんですよ。私が気を失うまで。 孤児院、学園、私が辿って来た人生がそうだった。 だから、周防さんの優しさが本当に有難かった。彼の気持ちに偽りや下心がなかった。 彼自身も気付いてない優しさに心を惹かれていく。 私が乙女座だった事をこれほど嬉しく思った事はないです!! 桜井彩はここに宣言致します!! 忍さんを絶対に自分の彼氏にすると。 これは私の最優先事項であり、修羅を凌駕する苦難の道。 この手が真っ赤に汚れようが、ちょっとした犯罪行為すらもためらいません。 乙女の意地です。 懲役刑なんてクソ喰らえです。 私は拳を硬く握り締めてそう決意すると自分の計画のために走り出した。 忍さんの部屋に盗聴器と盗撮カメラを仕掛けるために。 799 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 34 36 ID 0cXLMqL6 (・∀・)支援 800 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 36 07 ID nM93YJCi 今日もそれなりに働いたと自負しているが、バイト先の店長に5回も叱られた。理由は簡単だ。 バイト先の女の子(店長のお気に入りの子)と仲良く話しているところを見られたからである。 バイトごとき奴隷が俺の女になる(予定)に気安く話しかけるなと軽く脅されたが、俺的にはどうでもいいことだった。 その女の子と仲良くなるつもりもないし、給料さえ払ってもらえば、それなりに労働力を提供する。人間関係なんて知ったことか。 ともあれ、仕事の疲れを癒すために家路を目指していた。 バイト先から家までは徒歩で通勤しているので、およその時間で15分ぐらい。すでに陽が沈むのに早い季節だ。 女性の変質者に襲われやすい季節になってきた。ヤンデレ症候群の影響で女性が病んでいる割合が大きくなった。 病んでいる女性に狙われると、非力な男性は何も抵抗できずにひたすら襲われるだけである。 彼女たちの戦闘能力は軽く警察官や特殊部隊をも凌ぐ。 俺の友人もヤンデレに襲われて、そのまま監禁されてそれ以降は音信不通になっている。 全く、恐ろしいことだ。 病んでしまった女の子と生涯を共にするなんて。 破滅的な結末しか思い浮かべない。 ともあれ、俺も用心しておこう。いつ、俺のことが密かに好きでたまらない女の子の心が病んで、 知らない内に監禁されるってことが起きるかもしれないからな。 監禁されるなんてとんでもないな。 と、何か考えながら歩いているとアパートの外壁が見えてきた。 あの刑務所に匹敵する程の外壁の高さは一体なんのためにあるのかと首を傾げたくなる。 アパートの敷地の入り口から見知った人物が出てきた。 801 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 37 05 ID nM93YJCi 「おや、周防のクソガキじゃないか」 「ババア」 このアパートの所有者である老女。通称、ババアと俺が呼んでいる。 「バイトの帰りか?」 「そうだよ」 「若いもんが定職に就いてねぇのは情けないとしか言いようがない。もう、樹海で練炭自殺してきたらどうじゃ」 「いやぁ、さすがにそこまで人生に絶望してませんので」 「フン。くだらないね。お酒の肴すらもなりゃしない」 人様の人生をなんだと思っているんだ。 「そういえば、昨日お前の隣に引っ越してきた奴がいたな。もう、会ったのか?」 「ええ。会いましたよ。引越ししている最中だったから、少しだけ手伝ったんだけど」 「ほう、好感度を上げるために必死すぎるわぃ。隣に若い女の子が住んでいるからと言って、狼に変貌して襲うなよ。 ワシに全ての管理責任がかかってくるから」 「そんなどこぞの変態と一緒にしないでくれ」 「周防のクソガキならやりかねん」 すでに会った初日で一緒に一夜を過ごしてましたと言えば、目の前の妖怪ババアに斧で惨殺されそうだ。 性に飢えた狼だって相手を選ぶ。昨日、出会ったばかりの女の子を襲う卑劣な真似なんて 一般的な倫理観さえあれば、絶対にやるはずがない。 「で、ババアさ。なんで、あのアパートは無意味に外壁が高いんだ? あれじゃあ、外からも内からも侵入することができないじゃん」 「あれはな」 ババアが過去を懐かしそうに思い出すような遠い目をして言った。 「ワシのひいひいお婆ちゃんが建てた家だ。当時は愛しい人を閉じ込めて監禁するために設計された家らしくて、 その名残が今にも残っているんだろうな。敷地も家もワシは特にいじってないから当時とそう変わらない」 「監禁されるって……おいおい」 「過去にあのアパートを貸した住人で男と女が住み着いた時に限って、監禁事件が起きたことがある。 というか、アパートを借りた住人全てに監禁事件が起きたな」 「えっ?」 「このアパートで監禁するには快適な環境じゃ。外部の接触を遮断する高く覆われた外壁に、 周囲に悲鳴を漏らすことができない完璧な防音施設。出入り口は一つしかないので、監禁された男はそう簡単に逃げられぬ。 これこそが我が家代々に伝わる監禁システムなのじゃ」 「そんな監禁システムなんて作るな。燃やせ」 「ほう、びびっているな。だが、安心せい。周防のクソガキを監禁するような女性がこの世にいないからのぅ。ほぉほぉほぉほぉ」 と、ババアは変な笑い声と共にスキップしてさっさと過ぎ去った。 もう、家に帰って。寝よう。 802 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 37 52 ID nM93YJCi ■監視領域 『現在の時間は20時頃です。忍さんが帰宅してきました!!』 と、私は電気代の節約のために電気を消して、部屋を暗くしていた。唯一の光は忍さんを監視用モニターだけであった。 『忍さん。帰ってきたばかりなのに、着替えるなんて。私のことを誘っているんですか? きゃは』 当然、この映像は全て録画している。後でこの場面を何度も見直して見直してやろうと思います。 昼頃に設置した盗聴器と監視カメラは全部で64個。 これを付けた奴は見つかるの覚悟で付けたに違いない程に付けまくった。 おかげで忍さんをあらゆる角度から見れるし、死角なんてあの部屋には存在しません。 でも、お風呂とかトイレとかは最低限のプライベートに関しては何にもしてません。 だって、覗く楽しみがなくなるじゃないですか。 『今晩の夕食は……コンビニ弁当ですか』 近くにあるコンビニからお弁当を買ったんですね。そういえば、ロクに料理が出来ないって言ってましたね。 うふふふ。 難攻不落の要塞の弱点を見つけちゃいました。 803 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 39 28 ID nM93YJCi 以上で投下終了です 今年もよろしくお願いします。 それでは。 804 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 57 25 ID iscNud29 803 GJ!なんかババアのキャラが濃くて笑えた 805 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/06(火) 23 59 02 ID Y6Xax9h4 803 乙 今年もよろしくおねがいします。 そしてまた某乙女座ww 806 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 20 32 ID Jr+YRxOy 何でこんなに人気なんだwww俺も好きだけどさww 807 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 32 34 ID J+afXyNs 780 803 GJです! そして二話目投下します。 808 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 33 57 ID rSonQmCB 807 待て、ちょっと待て。 せめて少し間を開けてやれ。 それがマナーだ。 809 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 36 09 ID J+afXyNs 第二話 ~偽りの兄~ 嘘も方便である。 嘘が御方便になることもある。 嘘が方便になるような状況。 これはけっして御方便でない。 「た、頼むから落ち着いてくれ!」 俺は落ち着かない口調でなんとか言った。 「兄さん?」 藤堂優奈の抱きつく手は緩まない。 とりあえず体を離して話をしないと。 そう思い、名残惜しい気持ちを抑え、彼女の体を遠ざけた。 「えーと、俺は君の兄さんじゃないんだけど…」 「え?」 「俺の名前は赤坂映太。クラスは1-C。陸上部所属。君の兄さんじゃないだろ?」 彼女がきょとんと俺の話を聞いていく。 徐々に彼女の顔から、涙も笑顔も引いていった。 どうやら勘違いを悟ってくれたようだ。 最初の自己紹介から聞いていなかったとなると、告白も最初からやり直しかな? 「あ…、あ…」 一瞬、彼女の嗚咽が漏れた。 しかしすぐにいつも通りの藤堂優奈に戻る。 「ごめんなさい、あまりに、本当に驚くほどに、私の兄に似ていたもので…、つい取り乱してしまいました。本当にすみません」 「いやそれはいいんだけど…」 「本当にすみません」 本当に申し訳なさそうな顔だった。 いつも通りの人間らしい表情。その表情には謝罪の意がしっかりとこもっている。 さっきの表情とはまるで逆。今の彼女の顔にあるのは、単色の純粋な意思だけだ。 「藤堂さんには兄さんがいるの?」 「はい、いました。一年前に死にましたが…」 「だから…、ごめん…」 藤堂優奈には兄がいて、仲が良くて、でも死んでしまって…。 そして、その兄に俺が似ていた。彼女はいきなり現れた俺に兄の面影を重ね、兄に対しての藤堂優奈になった。 だいたいこんな感じであろう。 「いえ、謝らなければいけないのはこちらの方です。赤坂くん、ですよね?すみませんでした」 「あ、うん…」 ここまで謝られると引かざるをえない。 「えーと、それで、私に用があったんですよね?なんでしょうか?」 「うん、俺、藤堂さんが…」 俺は口を止めた。 兄を失う悲しみ、か…。 俺が妹を失った時、どれだけ悲しかったっけ? ずっとずっと泣いて。 妹が生き返るように祈って。毎日、神社にお賽銭を捧げて。 しばらく学校もズル休みして。 姉さんがずっと側にいてくれて、慰めてくれて。 でもすぐには立ち直れなくて。 たまに妹が生き返る夢を見て。でも朝起きると、どこにも居なくて。 810 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 39 30 ID J+afXyNs 死んだ人間は生き返らない。 死んだ人間のコピーは居ない。 では偽者は? 彼女が今、一番必要としている存在は? 今の彼女の顔には、用件が何なのか?告白かもしれない、そうしたらどうしよう、そんな事を気にする表情しか浮かんでいない。 この状況なら誰もが浮かべるであろう表情。そして誰もが思うであろう気持ち。 とても人間らしい姿。 人間らしすぎる姿。 俺が知る藤堂優奈らしい姿。 でもさっきの俺を「兄さん」と言い、抱きついてきた時の彼女の表情は違った。 全く人間らしくない、俺の知っている藤堂優奈らしくない。 これ以上の表情があるのであろうか?というほどの感情が溢れ出ている表情。 普通の人間が表現できる感情のキャパシティを越えた表情。 彼女を、藤堂さんをそんな顔に出来るのは誰? それになにより… 俺自身が藤堂さんの最高の笑顔が見たかった。 人間らしくない、この世で最高の。 ここで告白して、振られて、他人になってしまうくらいなら、いっそ… 「俺、藤堂さんの兄になっちゃ駄目かな?」 「え?」 「嫌ならいいんだ。おこがましいことを言っているのは分かっている」 「…」 「藤堂さんの兄さんの偽者になれないかな。君のこと支えるから、出来るだけだけど…」 少しの空白の時間が流れる。 「出来るだけ…、ですか?」 「え、あーいや、出来る以上に頑張るよ」 「そんな言い回しまで兄さんにそっくりです」 「あ、そうだった?」 彼女は笑っていた。今まで俺が知っていた藤堂優奈らしくない笑顔で。 「本当にいいんですか?」 「もちろん!俺は藤堂さんのこと好きだから!」 今日、二度目の告白だった。また顔が赤くなる。 「嫌です」 「え?」 「兄さんは私の事を、藤堂さん、なんて呼びませんよね」 くすっ。そう本当に聞こえてきそうなほどの無邪気な顔だ。 「もう一度聞きますね?本当に私の兄になっていただけるんですか?」 そう言う、彼女は本当に可愛くて… 「もちろんだよ。俺は優奈のことが好きだから」 俺は藤堂さん、いや、優奈の頭を優しく撫でながら言った。 「私も兄さんのことが好きです」 俺は優奈と生きていく。兄として。 この笑顔をずっと見ていたい、そう思った。 「じゃよろしくな!優奈!」 「うん、今日はありがとう兄さん」 校舎の時計をみると、もう五時間目開始の三分前になっていた。 「悪い、俺、次の授業の教室遠いんだ。先行くな。授業頑張ろう」 「はい、頑張りましょう」 俺は幸せな気分で屋上を後にした。教室へと走る途中、笑みが浮かぶのを止められなかった。 「また、よろしくお願いします、兄さん。もう二度と兄さんを失いません…」 そう一人呟き、優奈も屋上を後にした。 811 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 41 32 ID J+afXyNs 808 すみません、投下時間見ていませんでした。 803 本当に申し訳ないです。以後気をつけます。 812 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 00 47 38 ID J+afXyNs 申し訳ないことをしてしまいましたが、一応、二話は終了です。 シーン構成の都合上、二話はかなり短めになりました。そちらもすみません。 トライデントさん、本当にごめんなさいです。 813 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 01 02 05 ID l5ULb2lV GJ! 投下間隔は俺はあまり気にしない派だけど気にする人もいるから気をつけた方がいいかもね。 でもGJだ! 814 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 01 53 26 ID rcZoaXcW GJ!なんかブレス4のED曲思い出したぜ…。 815 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 05 06 46 ID DnRtzEIC 中国人の女性は世界一独占欲が強いんだって聞いたんたが 816 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 07 17 49 ID qjinwb5I ブータン人を見習うべきだな 817 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 15 13 09 ID G9mJ0OxM 796 807 GJ!!どちらとも続きが楽しみです。 818 名前:【楔】[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 17 56 16 ID rx8mu9nu 初めて覗いてみたがなんとGJなスレw ヤンデレスキーな自分にはクリティカルなスレっすw なので自分も初めて小説を書きましたが投下します 819 名前:【楔】 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 00 39 ID rx8mu9nu 私… もう我慢できない… あの醜い淫売に… 好きな人を汚されるのが…!!! 【楔】 俺は山芳高等学校に通う2年の七瀬由岐(ななせ ゆき)だ。 今日もいつも通り学校に向かう為にいつも通りの道を歩いている。…ん?あの後ろ姿は? 「よぉ!茉莉華!」 「…あ!由岐くん!おはよ♪」 こいつは俺と同じクラスの綾橋茉莉華(あやはし まりか)で、まぁ幼馴染みの間柄だな。 「ねえ♪由岐くんは昨日のあの番組は観た?」 「観た観たw俺的にはぐっ〇ん〇ーンが面白かったなw」 「あれは笑っちゃダメだけど笑っちゃうよね~♪」 そんな感じで昨日観た番組だとかの話しをしながら、いつも通りの時間が流れていく。 まさか…あんな事が起こるとも知らずに…。 学校に着き上履きに履き替えて教室に着き机に向かう途中である女子生徒に話しかけられた。 「あら…今日も冴えない顔してるわねぇ」 「おいおいw朝の挨拶がそれかよw」 こいつは櫛山早苗(くしやま さなえ)で、このクラスの学級委員長をしている毒舌家だ。(何故か俺にだけ毒舌…orz) 「あ!早苗おっはよー♪」 「おはよう、茉莉華さん今日も元気ね」 820 名前:【楔】 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 02 31 ID rx8mu9nu 「うん!今日も元気にがんばってこぉー♪」 「…なんで俺には普通に挨拶してくれないんだよ」 坊やだからさ…。 …は!?なんだ!今の電波は!…まぁ、いっか。 「由岐ったら独り言?気持ち悪いわねぇ…。あ、そうそう話したい事が有るから由岐1人でお昼休みに屋上に来てくれる?」 「ん?今、話せない事なのか?」 「なになに?茉莉華も知りたいな~♪」 「今は話せないわねぇ。あと由岐とだけ話したいから茉莉華ごめんね」 「わかったよ。昼休みだな」 「…ざんね~ん」 そこで担任が来てHRが始まり授業も寝ながら過ごして、あっとゆう間に昼休み。 弁当を食べてから屋上に行こうと思ったら早苗は弁当も食べずに屋上へ。 仕方ないので俺も弁当を食べずに廊下を小走りで歩き屋上に続く階段を登り屋上のドアを開けて早苗を探すと奥のフェンスに寄り掛ったまま空を見上げてた。 「よう、なんだ話しって」 「あら…早かったわね」 「あぁ早苗が昼休みが始まってすぐに教室を出ていったから俺もな」 「…そう」 なんだ…?いつもだったら毒舌の1つでも飛んでくる筈なのに調子が狂うなぁ。 821 名前:【楔】 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 04 04 ID rx8mu9nu 「…私達って出逢ってから約2年よねぇ」 「ん?そうだな~確か入学式の日に早苗から話しかけて来たと思ったらいきなり「貴方、冴えない顔ねぇ」だもんな~あれはマジで驚いたぜw」 「その後の約2年間は早苗と茉莉華と俺でいろんな事して遊んだよな~」 「…そうだったわねぇ。あれが由岐との出逢いで、そして私が由岐に一目惚れした瞬間」 「………え?今なんて?」 早苗は何度か深呼吸をして… 「私は由岐が大好きです。付き合って下さい」 驚天動地とは正にこの事…まさかあの早苗から告白されるとは…オラ、ビックリしてドキドキが止まらねえぞ~ …は!?また電波が!! そんな事より早く告白の返事をしなければ…でも今まで早苗はそんな仕草やら態度やらをしてなかったし俺も早苗の事は密かに好きだったし…ああ!もう!いっちまえ!! 「俺も早苗の事が大好きだ!付き合ってくれ!」 「…本当に?…由岐は茉莉華の事が…好きだと思っ…てたからダメだと…ありがとう…」 俺は何も言わずに泣いてる早苗を抱きしめて泣き止むまで頭を撫でてあげた… その時の俺は気がついてなかった…茉莉華がこの告白を見ていた事を…その顔が歪んでいた事も… 822 名前:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 13 07 ID rx8mu9nu 取りあえずここまでの投下です 続きは書く気でいますが、こんな稚拙な文で良いのだろうか? この後からヤンデレが出まくりな感じでwww 823 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 19 49 ID +0pIIwe+ ヤンデレってなんだ? 824 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 18 23 32 ID Tlw4vitc 823 お前は何だ?消防か? 825 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 19 05 00 ID 4f+iCH5U 投下が多くて嬉しいな 815 しかし家事を全くしないと聞いたが? 826 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 19 21 14 ID 6A69CEIT 822 女の子二人とも可愛いので病みまくるまでガンガってくれ 827 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 19 24 01 ID k0OX2cf+ 822 ガンガンいこうぜ! 828 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 20 36 54 ID 46lVGE24 wktk 強いて言えば、台詞に草はないほうがいいと思われ 829 名前:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/07(水) 23 28 47 ID rx8mu9nu 今、ヤンデレ漬けにしてる最中です。裸に靴下でお待ち下さいw 826 ありがとう。俺的に好きなタイプのキャラを出しました。 827 ヤンデレをたいせつにw 828 貴重な意見ありがとう~草は無しですね。 830 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 23 42 05 ID ii+yxXUT 829 GJだ ただ作者は感想等にレス返すのは控えた方がいい 831 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 00 46 36 ID vfxmVwcm 829 VIPに帰れ 832 名前:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/08(木) 01 23 30 ID NYsbUkXr 【楔】の続きを投下します。ここからは… ちょい甘、シリアス、ちょい過激な表現を使いますのでヤンデレスキー、全裸で紳士じゃない人はご注意を。 833 名前:【楔】 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/08(木) 01 25 21 ID NYsbUkXr 放課後になってようやく早苗も落ち着きを取り戻したが (結局午後の授業サボッちまったぜ…) 教室に戻った俺達は茉莉華に俺と早苗が付き合う事を告げると… 「ええ!?由岐くんと早苗ちゃんが付き合うの!?2人して中々帰って来ないから心配してたんだけど…」 「…うん?おめ…でとう…?ごめん!私、先に帰るね!」 この突然の出来事に茉莉華も素直に祝福してくれると思ったのに微妙な表情のまま走って帰ってしまった…。 俺達は茉莉華の様子が気になりながらも下校時間ギリギリまで教室で初デートは何処に行くかなど話し合いながら帰宅する事とした。 その帰宅の途中… 「ねぇ…手を繋ぎながら帰らない?」 早苗が顔を赤くしながら、そんな事を言うもんだから俺も顔を赤くしながら… 「…おう!じゃあ手繋ぐぞ?」 俗に言う恋人繋ぎで手を繋いだ。幸い周りに人の気配も無さそうだし、この時季は日が落ちるのも早く暗かったので気にせず手を繋いだ その瞬間…!!!!! 闇夜から憎悪と殺意を含んだ鋭い視線を俺は感じた!!!! 「…誰かいるのか?」 「どうしたの?由岐?」 その時、俺の声に反応して足音が近づいて来た…あれは…? 834 名前:【楔】 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/08(木) 01 27 04 ID NYsbUkXr 「…由岐く~ん…早苗ちゃ~ん」 「ふぅ…なんだ!茉莉華か!どうし…た…?」 闇夜を切り裂いて現れた茉莉華はその小さな手に刃渡り24cmはある和牛刀を持っていた… 「…私ね~…気づいたんだ~…私も由岐くんが~…大好きだって~…」 「「…え!?」」 その告白に俺達は驚いた…だが、そんな事より普段の茉莉華に無い異様な雰囲気に俺達は恐怖と狂気を感じた… 「…だからね~…私は~…大好きな由岐くんを~…奪った~…早苗がね~…」 「許せないんだよ!!!!!!」 その瞬間、茉莉華は手に持った和牛刀で早苗を切りつけてきた!! だが、とっさに俺が早苗を自分の方に引き寄せたお陰で早苗の髪が数本切られただけで済んだ。 「や、やめろよ!!茉莉華!!冗談じゃ済まないぞ!!」 「冗談じゃないんだよ!!!その女が!!その女が!!なんで…?なんで由岐くんはそんな女の事をかばうの!?」 茉莉華の狂気を纏った殺気に早苗は声も出せずに俺の腕の中で震えてる…。 「…そんな乳がデカイだけの牛女は…由岐くんに…ふさわしくない…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…」 835 名前:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc [sage] 投稿日:2009/01/08(木) 01 34 56 ID NYsbUkXr 今回はこんな感じで。まぁ生あたたかい目で読んで頂ければうれしいです。 830 831 失礼しました今度からは気をつけます。 836 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 02 03 00 ID TYqz13vY ちょっとした独白みたいなのはいいとおもうが あんまり作者が意見を出しすぎると叩かれやすい だから良い意味でも悪い意味でも作者自信はできれば無個性であったほうがいい 作者が個性をだしたいとおもうのならSSの中でやるべきだな 837 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 06 14 59 ID dIe5i2kq 823 ヤンデレにやられて記憶を失ってるんだ 触れてやるな 838 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 09 02 22 ID i/ehMMzS GJ!! 839 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 17 43 48 ID 8pa8XMyK 823 こんなところに居たのね?さあ早くおうちに帰りましょ 840 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/08(木) 20 58 47 ID BBHtzqf8 GJでした。 ところで「お隣の彩さん」でも「ヤンデレ症候群」ってでてくるけど なんか、SS同士の世界観が共通してるみたいでいいですね。 841 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 21 00 07 ID nT76MTsX ぽけ黒マダー? 842 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 22 08 06 ID D2VxDKGK 840 人気そうなSSのキャラを沢山出したオールスターSSとかいいんじゃね? それぞれの作者さん達にキャラの使用許可さえ取れればだけど。 843 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 22 13 35 ID aFi52E2i それはたいへんきけんなかんがえです 844 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 22 45 32 ID D5mCQieB ああ、とっても危険だ。 どのくらい危険かというと嫉妬に狂ったヤンデレに銃火器を与えるくらい危険だ。 845 名前:唐突ですが[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 13 40 ID 6Zq1yCz6 処女作です。 自分は小中高と国語の先生に 文章力に難あり と言われ続けてました。 かなり言い訳がましいですが結末だけを考えて作り始めたので最初から理解不能です。 歴代SSの中でも随一、並ぶ物のないほどの下手さです。 その事をふまえた上で時間に余裕がある方はご覧ください。 ジャンル:微妙なヤンデレ? (年齢、名前、容姿、一人称などはご想像下さい) 846 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 14 27 ID 6Zq1yCz6 腐った親に存在を否定され必要最低限の金を置いていくだけだった 学校では問題夫婦の一人息子として、危険人物として存在を無視されていた だが成長するにつれ、1人で我関せずと何も興味なく、飄々といる事は 年上からみれば粋がってるように見えたようだ。 下校中にいきなり後ろから殴られた 最初は2,3発殴られれば興味を無くすと思い好きなようにさせた だが彼らには無抵抗の人間を殴る事が好きだったようだ 5,6発殴られ、これ以上我慢する必要が無いと感じて反撃をした 体は生まれ持った才能のおかげで特にスポーツもせずに強い部類に入るほうだった その時にいた人数は4人だったが難なく叩きのめす事ができた。 彼らはアウトローを気取りタバコ、飲酒などをして運動をしなかったおかげだったかも しれない。また学年下のガキが1人で反撃などしてこないと思ったのかもしれない。 学校での地位しか知らない彼らは学年というものが大きな壁だと思ったのかもしれない。 これ以後殴られる事は無くなったが、ますますクラスから、学校から孤立していくのが 感じられた。 後悔はしてない、、と脳内で言う でも、、どこか苦しくて、、 847 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/08(木) 23 14 50 ID BBHtzqf8 842 オールスターよりも、ゲストで少しだけ出てくるぐらいでいいと思います。 848 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 15 15 ID 6Zq1yCz6 自分が崩れないように、壊れないようにするため感情の起伏を減らし 笑う事も悲しむ事も怒りも忘れた、、 だけどそれは彼女に付き合わされる内に嘘だった事を実感した。 何も忘れてない、、 彼女と会ったのは広い森林公園だった 休日の時間つぶしで民間図書館で借りた本を簡素な部屋で読むよりは 森林に囲まれた静かな場所で読むほうが頭に入ると思い、公園に来ただけだった。 だが休日の事もあり中央地の広場は家族連れが多くおり、静かとは言えないようだった 静かな場所を探し、端の方を歩き回ってると女性がしゃがんで子犬に話しかけていた 話しかけると言っても「ワン、ワン」と擬音語でしか話しかけてなかったので 意味はわからなかった。 横を通り過ぎようと近づくと足音で気づいたようで大仰な仕草で振り返った。 その顔は真っ赤だった。 どうやらここには人があまり寄りつかないと思ったのかもしれない。 たしかにこの場所は背の高い木に挟まれ陽ざし悪く、場所も中央地と違い広くなく、 それに背の高い木のおかげで閉塞感があった。 わざわざ公園に来てまで来るような場所ではないだろう。 自分も静かな場所を探していなければ確実に来ない場所だろう。 どうでもいい と思い無視して通り過ぎようとした。 通り過ぎようとした時彼女から自分の名前を呼んだ。 怪訝な顔をしていると少し怒ったような、だけど羞恥が残る赤顔で 同じクラス と言った。 同じクラスと言ってもまだ学年が変わって一ヶ月も経ってない。 人に興味がない自分にはまだ名前も顔も覚えていないクラスメイトが9割以上だ。 そうか と一言だけ言って目的の場所を探そうとまた歩き続けようた。 849 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 16 03 ID 6Zq1yCz6 5歩ぐらい歩いただろうか、パーカーに付いてるフードを下に引っ張られた。 何か用があるのか と無感情の声をかけながら、後ろを振り向くと犬の顔が間近にあった。 何の用だ とさっきと変わらない声質で言う。 彼女は この子犬可愛いでしょ飼いたいでしょ、そうでしょ と言ってきた つまりは彼女はこの子犬の面倒を見てくれないかと言ってきてるのだ、、 自分に 話にならないと 無視してまた歩き続けた。 彼女はそれが気に入らないらしく足を思いっきり引っ掛けた、、 、、、、こけた、、、、 彼女は馬乗りになって子犬を顔に近づけて この子犬飼いたいでしょ、 とまた言った 自分は 家がペット禁止のマンションだから飼えない と適当に嘘を言った。 その言葉を聞いた彼女はいきなり財布を取り住所の書いてあるカードを見た。 彼女は勝ち誇った顔で 部屋番号書いてないけど と言った どうやら彼女は常識というものを知らないらしい。 自分はこれならと ペット類はすぐに殺してしまうから飼えない 引かれるかもしれないが特に問題はない、彼女に嫌われようがこれから 自分には実害がないと思い言った 嘘だね と彼女が言った いきなりな言葉に怪訝な顔で なんでだ と聞くと彼女は 君が持ってる本は動物好きがよく読む本だから と言った 確かにこの本には人と動物との暖かい交流を眠くなる文体で書く如何にも動物好き が読むような本だった。 色々と訂正するのもめんどくさくなり 偶然だ、飼うのがめんどい、どけ と率直に言った。 彼女も押し問答がめんどくさくなったようで ああもう、とにかくこの子犬お願い と言い、犬を体の上に乗せられ、 彼女は走って逃げた、、、 1人犬を抱いて地面から起きる。 子犬をあらためて見ると少し痩せていて親犬もいないこの状況なら死ぬかもしれない。 子犬が自分を見て鳴いた。 850 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 16 40 ID 6Zq1yCz6 ただ、、、、ただ何となく、、、、家に連れて帰った。 そこには特に同情やら何やらが有ったわけでも無いと思う。 そんな感情があるはずは無いと、、残ってるはずがないと思う。 ただの気まぐれ、なんとなく。 明日にでも彼女に押し付ければいい まずは犬を風呂に入れる。 入れた後、底が深く倒れないように固定した大きなバケツに入れ、これからの事を考えた。 動物を飼うにはまず餌を買わなければならない。 餌を買うには金がいる。 親は高校に入ると同時に金をくれなくなった。 だけど親も知らない隠し地下倉庫を見つけ、先祖代々から続くような調度品を怪しい骨董屋に 売って、大学を出ても当分は生活に困らないぐらいの金はある。 それを使い餌を買ってくる。 だけどその前に図書館から犬の飼育本を借りて調べる。 最後に弁当屋で自分の飯も買う。 決まったら行動する。 まず図書館に行って犬の飼育本を読む。 犬の餌が決まったら本を借りに受付に行き図書館を出て、 人の餌も犬の餌も買える大型スーパーに行った。 買い物を終え家に帰り、まず犬に餌をやった。 その後自分の飯を食い、一服をついた処で飼育本を読む この日の就寝の時、かなり変わった休日だったと1日を振り返った。 翌日の登校日クラスに行くと昨日犬を預けて無責任に逃げた女が話しかけてきた。 昨日はごめんなさい、恥ずかしい処を見られて少し錯乱してた、犬はどうしてる? と言った 自分はめんどくさい事にならないように 捨てた と一言言った 彼女はうれしそうな笑顔で 嘘、服に犬の毛が付いてるよ。私も昔飼ってたからわかるよ と言った どうやら室内での放し飼いのせいで、服に何本か付いてたらしい。 彼女は 飼っていた と言った。それにあの犬を自分で飼わず無理矢理押し付けてきた。 昔は飼えて今は飼えない状況にでもあるのだろう。 あの犬を押し付ける事は出来なさそうだ。 彼女に話は無いと言う態度で興味なく自分の席に向かった。 その時視界に入るクラスメイトは大抵こちら側を見ていた。 顔を向けた瞬間目をそらされた。 いかにも興味ありませんという白々しい態度で友人同士話をしる。 どうでもいい 何も感じずに席へ向かった。 その後ろで彼女が 今日の放課後、あなたの家に犬を見に行くね と言った 彼女の方へ向き、拒絶の言葉を言おうとしたら彼女は親しい女友達のもとへ行っていた。 1人で勝手に帰ればいい、そう思い話しかけるのをやめた。 851 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 17 12 ID 6Zq1yCz6 いつもと変わらない授業が終わり、放課後になった。 いつもと同じように帰宅する。 学校から出て100Mぐらい歩いた所で彼女に止められた。 さぁ、行きましょ と、先に帰宅した事を咎めることもなく、横に並んだ。 追い返すのも無理という事を感じ無視して歩き続ける。 学校から自分の家まで歩いて20分近くの所にある。 一言も話さず20分歩き家に着いた。 家の中に入ると犬が飛びついてきた。 はたいた。 彼女は なかなか過激な愛情表現ね と言った 何事も無かったように自分の部屋に向う。 私服に着替え、腹を満たそうとリビングに行くと犬が彼女にじゃれ合っている。 その横を通り過ぎようとしたら彼女に そういえばこの子犬の名前は? と聞かれた ワサオ と答えた。 時間が経ち彼女がそろそろ帰ると部屋に言いに来た。自分は特に返事もせず本を読む。 彼女が 明日も来るから と言った。 自分は拒絶の言葉を言おうとしたら彼女はもういなかった。 次の日の放課後、宣言道理に彼女が家に来る。 この日の帰る時も 今度は明後日、来るから と言った もう自分は何を言っても無駄という事を悟り特に何の反応もみせなかった。 犬を見に彼女が家に来る。そんな日が半年以上続いた。 犬の話題だけだったのが少しずつ他の話題の話もするようになった。 最初は彼女の言葉を相づちだけですましていたが、今は聞かれればそれなりに 話すようになった。 日に日に変わっていく自分、、、 852 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 17 43 ID 6Zq1yCz6 いつの間にか少し笑っている自分がいた。 愛など知らなかったのに彼女を見るだけで知らずと愛というものが 少しずつ実感できるようになった。 表情が豊かになるに連れ、クラスの面々も一言二言話しかけるようになった。 昔の自分なら考えられないような日々を送っている。 幸せ・・・・だと思う。 ある日彼女に遊びに行かないかと話しかけられた。 自分は嬉しさを心の中で感じ、まだ少し無表情ながら 行く と即答した。 彼女が先に歩む場所は誰もいない森の奥地だった。 普通の人なら家族だろうと誘われたら不振に思い行かないような場所である。 だけど自分は何も考えず彼女の後を追った。 何十分、何時間歩いただろうか、、いきなり森が切れ、円状に開いた 小さな白い花の咲く場所に着いた。とても幻想的だった。 その中央に彼女の後を追って行くと、いきなり振り返って抱きついてきた。 抱きつく力が強く、体が倒れる。 彼女は自分を覆い被さった状態になった。 訳が分からず彼女の顔を見ていると唐突に彼女が涙を流した。 好きなの と言う。 「私はあなたを見ていた・・・・・・ #160; 私もあなたと同じように何も興味がない。家でも学校でも作った表情。 #160; 仲間意識があった。だからあの日私はあなたに近付きたくて犬という接点を作った。 #160; ・・・・・だけどあなたはどんどん変わっていった。 #160; 言葉を返してくれるようになった、微笑むようになった。 #160; #160; ・・・・クラスであなたは少しずつ人気が上がってきた。 #160; 知ってる?あなたの事が気になるって女子結構いるんだよ。 #160; ・・・・・・・あなたが変わって、周りが変わって自分の気持ちに気がついた #160; ・・・・・・・・あなたの事が好き、愛してる・・ずっと前から #160; だけどあなたは変わって、格好良くなって、 #160; いつの日か他の女性が出てきて私なんか興味なくなる。話もしなくなる。 #160; だから・・・だから今あなたと共に終わらせたい。 #160; あなたの人生を私で終わらせたい」 853 名前:ハッピーエンド[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 18 09 ID 6Zq1yCz6 彼女は言う。好きだと、愛してると 彼女は俺を愛してくれてる・・・ 今まで誰にも愛されたことのない自分が愛しい彼女に愛されている 嬉しかった だから彼女の手が首を締め付けようとも抵抗はしなかった。 手を伸ばし彼女の髪をかきあげ頬に触れる。 首が絞まり言葉を出す事ができない。 だから口の動きだけで伝える 「愛してる」 自分が笑うと彼女が微笑んでくれた。 意識が堕ちる。 もう目覚める事のない眠りにつく。 怖くはない。 自分の人生は幸せだった。 おやすみ。 #160; #160; #160; この日この場所で2つの命が消えた #160; #160; #160; #160; #160; #160; #160;END 854 名前:あとがき[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 18 37 ID 6Zq1yCz6 この物語はカルタグラの由良にインスパイアを受けました。 最初は3スレぐらいの綺麗な作品を作ろうと目指したのですが、、、 ヒロインも出ない所で思った以上に長引いてしまって 出たら出たでどのように絡ませればいいのか分からず グタグタになってしまいました。 連鎖的に中盤~終盤とかなり雑になってしまいました。 そのおかげでヤンデレという物語の核もボロボロです。 もしも見捨てずにいて下さるのならば、 この様にした方がいいなどのアドバイスを チキンなハートを持つ自分に言葉が丸くなるよう 語尾に「だっちゃ」でも付けて、ご教授下さい。 誤字脱字もありましたら教えて下さい。 もしも、もうこれ以上見たくないという方がおられれば スレを汚さないようメル欄にでもBadとでもお入れ下さい。 空気を読み投稿を控えさせていただきます。 最後になりますが、もしも最後までこの様な不出来な作品を 見て下さる方がいたならばお礼を申し上げます。 ヤンデレに栄光あれーーーー 855 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/08(木) 23 19 54 ID BBHtzqf8 GJです。 普通に面白かったですよ。自信を持ってください。 あと、途中に書き込んで申し訳ありませんでした。 謝罪いたします。 856 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 26 36 ID cXRZkJQx なかなか良かったんじゃないかな?いろんな趣向の作品がある方が楽しいし。 857 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 29 56 ID XYiRIWTj 854 結構面白かった、変に自信喪失して投げ出さないようにすればいいんじゃないのかな。 後、ここは妄想や小説を書くスレで文章力を上げるスレじゃないから 小説の書き方とかを紹介しているサイトで勉強したほうがいいと思われ。 858 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 33 23 ID OZcYGVo3 842 ヤンデレってのはバランスブレイカーだから、一つの作品にいくつものヤンデレを同居させることは不可能だろう。それこそ 844の言うとおりだ せいぜい世界観の共有くらいが限界だろ。ただ、それはスレチになってしまうという危険性を孕んでいる 854 謙虚と卑屈は違うんだぜ いくら自信がなくても、あんまり自虐してるとたとえ作品がよかったとしても逆に非難を買うぜ ……まあ逆もしかりなんだが 859 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 34 25 ID A2uwStz6 なかなかよかったと思います。 たとえ不出来な作品だったとしても、回数を重ねればいい作品が 自然と思いつくようになると自分は思います。失敗は成功の素! 860 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 34 31 ID wXTfXAyg そろそろ次スレだな。 854 GJだ。そこまで謙虚にならなくても大丈夫でしょ。 良かったよ。 861 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 38 34 ID XYiRIWTj 次スレか じゃあ立ててくる 862 名前:次スレ[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 43 50 ID XYiRIWTj ヤンデレの小説を書こう!Part21 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1231425727/ 863 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 45 19 ID be9wfhq9 854 GJ! 接続語のミスが目立ってたと思うっちゃ 864 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 53 54 ID jgkT9eju 誤字とはわかっているんだが、3000レス分約180000行の超長編SSを読んでみたくなってしまったぜ 865 名前:854[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23 55 49 ID 6Zq1yCz6 書き込んだ後色々と不安になり風呂に行ってました。 高校の時に10時間かけた大作(読書感想文)を国語の先生に「なにこれ?もっとまじめにやれよ」 と言われ少しトラウマになってました。 これからは必要以上に謝らず、お礼だけを申し上げるようにします。 読んでくれた方ありがとうございます。 866 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 01 16 03 ID MnQ6AogT そんなトラウマがありながらヤンデレSSを仕上げたお前に乾杯 867 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 01 36 25 ID Gt/dENHx 俺なんて、見向きもされなかったぜ…。 868 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 04 39 32 ID RG/iqOx8 867さんには私がいるじゃない… とでも言うと思った? 私には 865君がいるの さぁ、ふたりっきりで勉強しましょ…ウフフフ 869 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 09 41 48 ID 3QRlJNQG 二人がいなくなった後 たった一匹で部屋に閉じ込められて餓死を待つだけの犬が気になって ひたりきれなかったorz それとも犬は連れてきてたのかな? 870 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/09(金) 20 25 05 ID 5AF1n0As 若くして社長になってしまった男を、ヤンデレの女秘書が立派な社長にするために教育するって話が読みたいな 誰か書いてくださいお願いします 871 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 20 26 22 ID 5AF1n0As すいません、sage入れ忘れました… 872 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 21 25 43 ID PlcTQN2t ヤンデレに刺されてみたい。 頼んだら包丁とかで刺し殺してくれる恋人(or妻)って実際どれぐらいいるんだろうね? いや、頼めば刺殺してくれるくらい(相手を)愛してる人ってどれくらいいるのだろう? あー、刺されたい。 873 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 21 30 55 ID avrvRS2m 854 宣言道理じゃなくて宣言通りだっちゃ。 874 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 21 35 23 ID 0WBWwjT1 870 ヤンデレスレに投稿された、病み妻の作者さんは、そんなやつを書いていたはず。 875 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/09(金) 22 28 07 ID szVqyozl 完全なオリジナルを作るのは難しいから、二次創作にするのってどう? スクイズ+君のぞで 妊娠したと聞かされて世界になびく誠。 言葉は取り返して独り占めにしようと、 マナマナみたいに誠を監禁して、妊娠するまで連日連夜の逆レイプ。 しかも持ち前の勉強上手と淫乱な体のせいで、回数を重ねるごとにエグいSEXに。 それでも世界と産まれてくる子供の事を思い、何とか正気を保つ誠、 だが食べさせられていた媚薬入りの肉料理は言葉に殺されて調理された 世界と自分の子供である事を告げられ、証拠に顔以外の肉を削ぎ落とされた 世界と胎児の遺体を見せ付けられ、ついに自我が崩壊し幼児退行。 言葉は妊娠→出産でさらに巨大になった乳房を赤子同然にした誠にしゃぶらせ、 母乳を飲ませながらSEX。 トゥルーエンド「母性愛」 アリかな? 876 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 22 31 41 ID cMZ9eunY 作品スレがある場合はそっちでって話だったと思う SchoolDaysのスレはないからここでいいだろうけど 877 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 22 58 31 ID ykl9n0F2 スクイズの分岐√を考えるスレならあるからそっちで 878 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 23 02 28 ID zlNRAngo 875 おまえ、すげえよ・・・ 879 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/09(金) 23 29 46 ID GqB01ykD 書いてみたくなった 880 名前:875[] 投稿日:2009/01/09(金) 23 49 51 ID szVqyozl 879 書いてください。同志職人の皆様。 881 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 23 51 34 ID JjYUnpTw 二次創作はちょっとなぁ… 荒れる元だしやんないほうがいいと思うんだが… 882 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 00 22 22 ID a3Jx0oVZ エロゲ系の板とかでやれ 883 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 00 23 57 ID tB5qcMmz それは板違い 884 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/10(土) 00 24 14 ID eka351fP saga進行とかよう分かりません。普通にやればいいのかな? 885 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 00 29 59 ID YuhLe9z4 884 メール欄にsageと入れるだけ 886 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 00 54 03 ID eka351fP 885の人ありがとうございます。初めてなので。 Eメールのところにsageですね。 887 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/10(土) 02 06 44 ID 1Uk0J2dZ バランスブレイカーで、ルールブレイカー。 時には、作品すらぶち壊す。 ヤンデレとは、げに恐ろしきものなり。 888 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 13 53 ID a3Jx0oVZ 死ね 889 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 17 30 ID SGFAjOh/ 723にささぐ 朝、憂鬱な気分から僕の朝は始まる。 あぁ~起きてしまった、ずっとずっと冬休みだったら良かったのにと、温かい毛布の中、僕は体を丸くしていた。 行きたくない行きたくない行きたくない、 頭を駆け巡るのは学校への拒絶の言葉。 僅かな希望を胸に、携帯のディスプレイを開いてみた。 『6時55分、現在大雨、大雪注意報はありません。』 神は我を見捨てたか! 僕はため息をつきながら携帯を収め、そこで妙案を思い付く。 インフルエンザって嘘吐いちゃえばいいんじゃないか? そこで再び携帯を開き電話かけようとした、その時。 「チェーストー!」 毛布の上、丁度脇腹辺りに重たい一撃、この感触は!遅かったか!「おれ~!七条(ナナシ)起きれ~!」 ソプラノの声と共に揺さぶられる毛布と体、そしてずっしりと重いこの感じは。 「睦美(ムツミ)、どいてよ」 「七条が起きればどいてあげるよ?」 まるで悪戯をする子供の様に楽しげに言うこいつは本当に同じ17歳なのか?と本気で考えることがある。 「ってか、重い。太ったろ?睦美」 この一言により僕の固有決壊は完全に剥がされ、ニーソックスによる顔への攻撃を受けるはめにあう。 僕、七書七条(ナナフミ 890 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 22 16 ID SGFAjOh/ 僕、七書七条(ナナフミ ナナシ)の朝はこの騒がしい隣人、杉野睦美(スギノ ムツミ)によって毛布をひっぺがされる所からはじまるのである。 僕らは子供の頃からこのマンションで一緒に過ごしてきた。 僕と睦美は幼稚園、小学校、中学、今までずっと一緒、言わば幼馴染み。 家族構成も同じ、三人家族。ただ家は父さんが海外出張、睦美の両親は共働きで朝から晩まで家を空けているのが殆どだった。だから何時も僕と睦美、母さんの三人で家の部屋で過ごしてきた。 その頃の睦美は人見知りが激しくて僕の後ろで袖をずっと握って隠れているくらいで、僕の後ろをずっとくっ付いていて。 その頃の僕は今よりも活発で、元気があって、明るくて、何より毎日が楽しかったはずだったんだ。 891 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 27 43 ID SGFAjOh/ 僕らが高校の受験を終えた日。何時も道理睦美と僕の部屋で母さんの料理を食べようと帰った時には母さんがいなくて。代わりに留守番電話のメッセージが点滅していた。メッセージは警察からで交通事故で病院に搬送されたと。 気づいた時には制服のまま走ってて、足は血だらけで。 「七条!七条!」 後ろから睦美が肩を掴むまで俺は気付かなかった。 睦美は自転車の篭に靴を入れ僕を追いかけて来てくれた。 「七条足!靴履いて!この自転車使って!」 これが僕の初めて見る睦美の大声だった。 「悪い睦美!借りるわ!」 それから自転車に飛び乗っ病院に向かっていった。 でもその時にはもう遅くて、病院で血だらけの母さんが待ってたんだ。 葬儀の時の事は全く覚えてない、ずっとずっと母さんの遺影を見ていて、気付いたら睦美が泣きながら抱き締めてて。 「絶対絶対私が守るから!お母さんの代わりに私がずっとずっと一緒にいるから!」 気付いたら二人して、大の大人が二人してワンワン泣いてたんだわ。ぎゅっとお互い痛いくらい抱き締め合って、誰もいない葬儀所で二人でワンワン泣いてた。 892 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 29 41 ID SGFAjOh/ 携帯から突然の投下失礼しました。 お見苦しい点、多々あるとございますがご了承下さい。 893 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 03 40 40 ID a3Jx0oVZ つまんね。もう来なくていいよ 894 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 04 03 29 ID ZV1VV9Uq 893 萌えられそうで良い感じなんだが、続きは……? 895 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 04 03 59 ID yUkrQ/wO 892 展開的にまだ何も起こってないからGJとは言えないけど、次回に期待。 896 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 04 04 50 ID ZV1VV9Uq 安価ミスったw 892へのレスな 897 名前:892続き[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 05 00 47 ID SGFAjOh/ 僕は冷水で顔を洗いながら、過去を振り替えってみた。 あの後の睦美の激変と僕の没落。 睦美は元々成績が優秀な部類の人間ではあったが人付き合いや運動の面は苦手であった。 しかし高校に上がってからテニス部に入り、一年でレギュラー入り、お洒落に磨きをかけ、交友関係を広げ今では学年で中心的な人物にまでなった。 僕に至っては最初溶け込めず、今はイジメのいい対象である。それが原因で引きこもりがちになり、今は留年ギリギリまで学力が低下し、イジメを加速させる要因となっている。 898 名前:892の続き[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 05 03 49 ID SGFAjOh/ 「ダメダメだな」 鏡に映るのは気力のない目のボサボサ頭。 「七条!ご飯!」 そんな時、睦美の元気な声、 「今行く」 そこには玉子焼きにほうれん草のゴマ和え、ミートボールに味噌汁。僕はつくづく本当に睦美は昔の睦美ではないんだと感じていた。 そんな事を考えていると睦美はいそいそと支度を始める。 「朝練?」 「まぁね?一応レギュラーだし」 「ごくろうさんで」 「お弁当、冷蔵庫の中にあるから忘れないでね?」 そう行ってからラケットの入ったカバンを持ち睦美は玄関を後にしてた。 899 名前:892の続き[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 05 06 43 ID SGFAjOh/ 私は何時も道理に携帯を開くと複数のアドレスにメールを送信する。 『七書出るから何時も道理可愛がってね♪』 彼はずっとずっとお母さんに依存してた。 テストでいい点をとった時も、スポーツもお母さんの薦めで入ってお母さんの為だけに全力を尽くしてた。 「約束したくせに」 寒い寒い冬の空の下、彼との過去を思い出す。 人見知りが激しかった私に優しくしてくれた、幼稚園でイジメられた時助けてくれた、小学生の時、下駄の靴を隠された時は泣いてる私の為に七条はずっと探してくれた。 でも、それは全部全部お母さんに褒めてもらう為で私だけの為に向けられた物じゃなかった。 900 名前:892の続き[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 05 12 13 ID SGFAjOh/ 七条、私さずっとずっと好きだったんだよ?七条はずっとずっと私だけのヒーローだったんだよ? でもずっと私を見てくれなかったよね?私を通してお母さんに褒めて貰いたかったんだよね? そんな私がどれだけ好きになったか、そんな私がどれだけ貴方を見てたか分かる? もうね、待つだけは嫌なの。私だけを見て貰いたいの、私だけと接して欲しいの、私だけと楽しそうに話してほしいの。 気付けば携帯がみしみし言う程握り締めてメールを紡いでいた。 『アイツの机壊していいよ?アイツの弁当ぶちまけて?アイツが教室入ったらシカトして?』 それを七条のクラスの奴等に送っていた。 七条はどんな顔をするかな?今度こそお母さんの代わりに依存してくれるかな? 「約束だよ?七条守ってあげるから、死んだお母さんの代わりになって守ってあげるからね?」 今日は泣いてる七条のためにお弁当半分こしよう、泣いてるアイツを優しき抱き締めて頭を撫でてあげよう。私は毎日が、七条を独り占め出来る毎日が楽しくて楽しくて仕方なかった。 901 名前:892[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 05 14 22 ID SGFAjOh/ 急拵えで続きを投下。 GJ貰えるよう頑張ります。 902 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 06 37 55 ID yUkrQ/wO GJ!! いい感じに病んでるね 903 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 10 05 25 ID yUkrQ/wO てか、ここじゃなくて新スレで書かないとGJ所か 見てすらくれないかもよ・・・ 904 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 11 43 38 ID MUWEjrMa 901 GJだ 全裸で続きを待ちますかな 905 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 15 13 32 ID 8f7kkaxl 何時も道理がいつも通りの誤字だと気付くまで1分ほど考えこんでしまった 906 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21 18 55 ID X7xqEkaQ 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん ってヤンデレ? 907 名前:ハッピーエンドの作者ですが[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 23 35 58 ID cypbWh8p 873の方が教えてた通り 『宣告通り』を『宣告道理』と間違えてしまいました。 それで今回wikiの方に載りましてかなり気になり、直したいと思いました。 お聞きしたいのですが自分で直すものなのでしょうか それとも管理人にご報告すればよろしいのでしょうか? 908 名前:907[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 23 43 53 ID cypbWh8p ごめんなさい。 『教えてた通り』じゃなく『教えてくれた通り』でした。 もうATOKの予測変換は信じません。。。 909 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 23 47 41 ID 2a1xnsXz >誰でも編集できるようにしてるので修正とかありましたらご自由にどぞー -- 中の人 (2008-12-08 22 02 17) 中の人もこう言ってるので自分で修正してもいいんじゃないかな。 ウィキの扱いに自信がないなら中の人にそうだんするとか、どうでしょう 910 名前:907[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 23 52 26 ID cypbWh8p 909 ありがとうございます。自分で編集しました。 それと 873の方教えてくれてありがとうございました。 911 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21 10 06 ID IU61r500 ume 912 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21 40 58 ID ttLQ0peD ヤンデレの娘が泥棒猫の死体をを土に埋めるんですね、わかります。 913 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 22 07 17 ID GVj0wkVP そろそろこのスレともお別れかな 914 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 22 17 03 ID K8XMOZqQ part20「 913君だけはpart21なんかには渡さないんだから……!」 915 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 00 06 08 ID gzaQ0t+t なに言ってんだよ? 俺達ただの友達だろ? 916 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 02 18 24 ID ZuP7XTsy 埋め 917 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 16 00 06 ID E51P9+xJ 生め 918 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 16 39 14 ID kvp7dWQO ヤンデル梅 919 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20 37 05 ID 3a0B17J/ 梅 920 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 21 46 08 ID IszAmqwC 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 921 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 21 46 46 ID IszAmqwC 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め 埋め埋め埋め埋め埋め
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/477.html
1 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 00 49 58 ID S4t41Ekl ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part3 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171290223/ ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 00 58 03 ID 0X29IBbE 1乙。そして2ゲット。 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 01 00 33 ID y9F5nFc4 1乙。 関連スレ 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ この29●●! http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171699507/l50 4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 01 16 29 ID 1GScpdDl 1 乙 5 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 01 42 13 ID MlyMp9a6 1 慎氏、乙です。 後、前スレに上書きの7話投下しましたんで。 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 02 16 37 ID QkuHneqi 1乙 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 12 35 02 ID 270zdDsb これはヤンデレでおk? ttp //www.youtube.com/watch?v=qFA19tfP75A 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 16 33 01 ID mBPeoP3h これは微妙だな。途中経過がないから只のき○がいにも見える。 9 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 34 47 ID h1BEVMqk 遅まきながらこちらに投下させていただきます。 10 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 36 16 ID h1BEVMqk 学校から1キロほど離れたところにある木造アパート。通称『まるわハイツ』 築13年で二階建て部屋数は六つ。トイレ共同、風呂は一応あり、六畳一間で日当たりは若干悪い。俺はそんなアパートの二階の奥部屋に住んでいた。 錆びた鉄製の階段を一歩一歩昇ると、ぎしぎしと鳴る木の廊下を歩く。外に剥き出した廊下は外側にすこしだけ傾いてて、バランスを崩すと柵を乗り越えて下へ落ちそうだ。 母親が一人暮らしになる俺に当ててくれた部屋だが、もうすこしいい部屋にしてくれよと思う。いつ崩れるかと思うと、怖くて眠れん。家賃を払ってもらっている手前、贅沢もいえないがね。 部屋の前までやってくると、ドアノブにビニール袋が引っかかっていた。中を見ると、俺のチェック柄の服とエドウィンのジーパンが入っていた。あれ、なんでこんなところに俺の服が……。 って思い出した。たしかお隣の藤枝さんに「ちょっと、和人くん! き、君、地肌が見えてるじゃないですか! 貸しなさいっ」と、着ていたところを強引に脱がされた服だ。 部屋の前で脱がされたから良かったものの、外で脱がされてたら俺はパンツ一丁になるところだった。おいはぎにあった人間か、俺は。 ビニール袋から取り出して確認してみると、ほつれていた脇の部分が破れた後も見えない程丁寧に塞がっていた。やっぱり藤枝さんの腕はすごい。手芸の先生だというだけある。 ジーパンも取り出す。確かこれは右ひざの部分が摺れて穴が開いてんだったっけ……。俺は畳まれていたジーパンを開く。紺が強いジーパンの右ひざには可愛いミッフィーのアップリケが縫われていた。 「………」 藤枝さんのミッフィーブームはまだ終わっていないらしい。俺は通算三枚目となったミッフィージーパンを畳むと、ビニール袋に押し込んだ。それを掴むと。学生ズボンの後ポケットから鍵を取り出す。 それを自分の部屋の木造ドアのノブの鍵穴につっこんだ。鍵がちょっと曲がっているため、途中まで入ったところでつっかえる。 「くそっ」 いつものことだが、毎度毎度イラつく。俺は力任せに押し込むと、鍵をねじりこんだ。 がきこんっと金属音がして全て飲み込まれた。かっちりとはめ込むと音を立てながら戸が開く。 「ふぅ。ただいまー」 入り口脇に合ったサボテンにそう言うと、靴を脱いで部屋に上がる。 俺の部屋は狭い上にボロっちいので、ほとんどモノがない。実家に居た頃はそれこそゲームや雑誌の束かなんかがいっぱい積み上げられた部屋で過ごしてたが、ここに引っ越してくるときにほとんど置いてきてしまった。 この部屋に実家並みのモノを置くとなるとスペースがいくらあっても足りないし、あんまり重いものを置きすぎると床が抜ける可能性もある。 そんなこんなで俺の部屋にあるものといえば備え付けの水道と流し台とコンロを除くと、ちっちゃい冷蔵庫と14インチの古いテレビ(リモコン無しの奴。地デジにはもちろん非対応)、それに本棚とクローゼットと勉強兼食卓用のちゃぶ台だけだ。 さらに部屋が小さいため、掃除も楽だから必然的に俺の部屋は綺麗だった。 本当にモノがねぇな。だがこの生活初めて二年になるが、あんまり不便だとは感じていなかった。 俺は藤枝さんに縫ってもらった服をクローゼットの箪笥にしまう。ミッフィーブランドになっていないジーパンはあと二枚。そろそろ買いに行かないとな。 俺は部屋の真ん中に置いてあったちゃぶ台を端に寄せると、学生服のまま畳の上にごろりと寝っころがった。ふうと一息つく。夕方過ぎて外は暗くなり始めていたが、部屋の中はもっと暗く見上げた天井は黒く見えた。 俺は腕を伸ばして蛍光灯の電気コード(糸をつないで延長したヤツ)を掴むと、軽く引っ張った。ぱちんと音を立てて蛍光灯が二・三度点滅するとグレー色の蛍光灯が白くなり俺の部屋を明るく照らした。 白くて丸い光の束を俺はしばらくぼぅっと眺めていた。 「しっかしなぁ……」 気分は憂鬱だった。原因はもちろん、過去最高なファーストコンタクトとなった二十八歳の元引きこもり高校生こと、榛原よづりのことだ。 「俺、あいつといい関係築いていく自信が無いぞ……」 今日の榛原よづりの行動が脳の奥につらつらと再生される。 いきなり、尋ねてきた俺を家に招きいれた彼女。コーヒーをつくって俺の横にぴっとりと寄り添うように座った彼女。 「まさか、あのコーヒーも何か入ってないだろうなっ!?」 俺は起き上がって体をまさぐってみるが、今のところ異常はない。まぁ、唾液ぐらいならまだ生死の危機はないが。 俺は半信半疑ながら、もう一度寝転がる。あのあとあの女は……。俺にヘッドロックをかましてきたな。胸の感触はよだれものだったが、あのヘッドロックの意味はなんなのだろうか。 11 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 37 16 ID h1BEVMqk ただ抱きしめていただけか? それともマジで息の根を止めるつもりだったのか。 で、彼女は俺のために料理を作ると言い出して……自分の前髪を切り落とした。ばっさりと、一遍の躊躇も無く。 「アレには突然すぎてビビッたなぁ……」 彼女はまるで当然というような顔で切り落としたのだ。いや、確かに料理をするときに前髪は不要だがあんなに長く伸びた髪を女の子はすぐに躊躇無く斬ってしまうものなのか? 普通バンダナつけるとかするだろ? 髪を切るほうが面倒くさいだろ? そして極めつけは。 べとべとべとべとべとべとべと。 「……」 いいのか。アレは。 あいつ自分の唾液を混ぜながら笑っていたぞ? 俺はどうやらあいつに気に入られたようだが……、いくら副委員長とはいえあんな女の相手はまっぴらごめんだ。 だいいち、無理があるんだよ! カウンセラーでも保健の先生でも無い俺が元引きこもり高校生二十八歳という攻略高難易度キャラを相手にするなんて! あんなのが隣にいたら俺の心休まる日が無い。さすがに無理だ。 「……しゃあねぇ。今回も委員長頼みか」 俺はズボンから携帯電話を取り出すと、いつものように短縮フォンを押す。見慣れた番号と名前がディスプレイに表示される。スピーカーを耳を近づけると、りぃん……ではなくとぅるるるといつもの発信音が鳴る。 しかし何度も鳴らせるが一向に出ない。三十秒ほど鳴らしてようやく委員長が出た。 『なに? 森本くん』 「おう、委員長」 『珍しいわね、あなたから電話してくるなんて』 そういえば、委員長から俺に学校連絡として電話してくることはあっても俺が電話したことは無かったな。面倒くさくて摺る必要も無かったんだが。 「んだな」 『で、どうしたの?』 「ちょっと話があってな」 『ごめん、後にしてくれないかしら? 今お風呂はいってたところなのよ』 え、ちゅーことは今は風呂上り? 「委員長。もしかして今バスタオル一枚か?」 『それが話? 切るわよ』 ああっ! 待て待て。ちょっと気になっただけなんだって。だってバスタオル一枚で電話に出るなんて、90年代のドラマでは屈指の名シーンじゃないか! 90年代ドラマ好きの俺としては萌え萌えなわけで……とととそんなこと言えねぇか。 「違う違う。すぐすむから」 『なぁに?』 さすが委員長。バスタオル一枚(たぶん)でもちゃんと話は聞いてくれるようだ。 俺は手短に今日のことの詳細を語ろうとしたが……、風呂上りでバスタオル一枚(たぶん)の委員長のことを考えると一分でも長いくらいだ。ここは結論から先に言うべきと判断する。すなわち。 「ごめん、俺明日無理だわ」 『どういうこと?』 「だから、明日急用ができて、榛原さんを迎えに行くのは無理になったんだ。悪いけど委員長が行ってくれないか?」 俺がそう言うと委員長ははぁ? と聞き返す。あまり聞きたくないイラついた声だ。 『またサボり? いい加減にしてよっ。毎回毎回あたしに押し付けてばかりじゃない』 「違うって、本当に急用ができたんだって」 『なによ。急用って』 え、えっと。俺はなにかいい言い訳を考えようとして、思いついたことを出任せに言った。 「明日な妹を幼稚園に連れて行かなきゃならなくなったんだよ。いつもは親が送ってるんだけど、明日はたまたま朝から仕事でさっ!」 俺は一人暮らしだし実家にも妹なんて居ないが、居ることにした。 『あなた一人暮らしだし、一人っ子だって言ってたじゃない』 あ、やべぇ。知ってたか。そういやいろいろサボる口実に「一人暮らしで忙しい」とか言った気がする。俺は冷や汗を流してなんとか言い訳を考える。 「ちげぇよ! 俺の妹じゃねぇよ。 藤枝さんだよ!」 とっさに俺は藤枝さんに妹が居るという設定を作った。もちろん藤枝さんからそんな話は聞いていない。 『藤枝さんの?』 「俺のお隣の藤枝さん。あのひとには幼稚園の妹さんがいてさ、ほら、いつもお世話になってるし、その、な?」 藤枝さんのことは委員長は多少なりとも知っている。何度か俺が話したこともあるし、たまに道で会ったりもしていた。 『藤枝さんに妹さんがいたんだ?』 「あ、うん。藤枝さんは一人暮らしだけど、実家に居るんだって。で、水・金は藤枝さんが送り迎えするんだけどさ。ちょうど明日は藤枝さんも用ができちゃったらしくて……で、俺が負かされたってわけ」 嘘を重ねぬりするのはなかなか心苦しい。 12 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 37 57 ID h1BEVMqk 『ふぅーん……』 委員長はあまり納得して無いようだった。 「だから明日は無理! お願いだよ、代わりに行ってくれよ」 『……へっくしっ』 「大丈夫か? やっぱりバスタオル一枚なんだろ。無理するなよ」 『うっさいわ! ……わかったわよ、じゃあ明日はあたしが迎えに行くわ。あなたも藤枝さんの妹さんの送り迎え頑張りなさいよ。じゃあねまた明日っ!』 どうやら、委員長はバスタオル一枚だったようだ。寒くて早く電話を終わりたかったらしく、最後のほうは早口でいいまとめるとこちらの返事も聞かずに切った。 つーつーつーと耳から流れる音を聞きながら、俺は初めて委員長の関西弁が聞けたことに感動していた。 うっさいわ! うっさいわ! うっさいわ……(エコー)。ああー、もうちょっと長く関西弁を喋って欲しかったなぁ。できれば『うっさいわ!』より『なんでやねん!』の方がいいな。 なんつーか、ああいう普段は方言を使わない子がある特定のときに方言丸出しになるってなんかいいよなぁ。普段から方言だとうざいことこの上ないけど、たまに喋ったりするとなぁ……。 いやいや、それはともかく。 なんとか、明日は榛原よづりを迎えに行くことはならなさそうだ。 俺は安堵の息を吐いた。やっぱりややこしいことは委員長に任せるに限るなと、本人が聞いたら激怒しそうな独り言を呟いて、俺は目をつぶった。 まだ夕方だというのに俺は暗い部屋のせいで眠気に襲われていった。落ちてゆく意識の中で、一瞬だけ俺のまぶたの裏に髪の毛を切って俺に笑った榛原よづりの顔が浮かんだが、俺は特に何も思わず学生服のまま眠りについた。 翌日。 「おいっす」 俺はいつもの登校時間に普通に教室に入った。 「おはよっ!」 「おー、おはようっ」 ちょうど通りかかったロリ姉が挨拶を返してくれたので、俺はロリ姉のポニーテールをぐりぐりと撫でてやった。ロリ姉は憮然とした顔で「もう~」といいながら教室を出て行った。かわゆいやつ。 教室を見渡すと、委員長はまた来てないようだ。委員長の席は空席でカバンも何も置いていない。 ちゃんと俺のお願いを聞いて迎えに言ってくれたんだな。結構結構、でも少し罪悪感が湧く。今度メロンパンでも奢ってやろう。 そういえば無理矢理理由くっつけて委員長に行ってもらったが、あの後藤枝さんから「私にあることないこと付けて理由にするなです」としこたま怒られたんだよなぁ。壁が薄いから全部きこえてたようだ。あの人も美人なくせに怒ると怖いんだよ。 そのくせ面倒見がいいから将来いいお母さんになれるよな。うんうん。ダンナは苦労しそうだが。 俺は一人で納得しながら席に着いた。俺の席は窓側の中間ぐらい。冬場は日当たりが良くて古文の時間とかには昼寝のいいポジションだ。俺の籤運は素晴らしいな。 教室は寒かったが、俺の席は暖かかった。朝の太陽の光を浴びながら俺は大きくあくびをする。こりゃ一時間目から寝てしまうなぁと考えながら。 「んっ」 ぶるりとポケットが揺れる感覚。うぃーんうぃーんと振動音。マナーモードにしていた俺の携帯電話だ。 出してみるとメール受信ではなく、音声着信。LEDライトが赤く点滅していた。光るサブウィンドウを見るとそこには榛原よづりを迎えに行った委員長の文字が躍っていた。 どうしたんだ? まだ朝のHRまで10分ある。基本的に校内での携帯電話の利用は禁止だが、授業時間以外の使用は一応は黙認されている。まぁ、隣のクラスでは携帯電話で株取引やってるヤツもいるし、こんなに携帯電話が普及している時代、すべてを禁止するのは無理あるしな。 しかし委員長がこの時間に電話してくるのは珍しいな。あいつも携帯電話は持っているが、校内や登下校の時は完全に電源を切っていてほとんど使うことは無かったのに……。 俺は二つ折りの携帯を開くと緑色のボタンをおした。 「おっす。なんだ委員長」 『あ! 森本くん!? いまどこ!?』 かけてきた委員長は声を荒げていて、切羽詰っていた。まるで俺を責めるときのような荒げ方。俺は一瞬、無視すればよかったかもと思った。 「ど、どうした? 今どこって……学校だよ」 『学校!? あなた藤枝さんの妹さんの迎えは?』 「え、ええっと。早く終わったから、学校にはいつもより早く着いたんだよ。妹さん意外と早起きで……」 『そんなことはどうでもいいわっ! ちょ、やめいっ! こら! やめんかワレ!!』 電話越しの委員長は誰かと揉めているようだ。委員長の切羽詰った声となにかごとりごとりというワケのわからない擬音。ついには委員長が関西弁になっていた。 俺は急激に嫌な予感が体の中に駆け上がる。 13 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 38 53 ID h1BEVMqk 「お、オイ! オマエ今どこだ!? おい!!」 今度はこっちが声を荒げて質問を返した。俺の様子に俺の前の席で談笑していた鞠田早百合と兼森良樹が何事かと振り返る。 『榛原さん家や! 迎えに行ったらいきなり暴れだし……きゃぁっ な、なに持ってんねや! ちょっ!』 サーと俺の頭から血の気が引いていく。修羅場中の修羅場。俺の頭の中に榛原よづりの姿が思い出された。 あの依存的な瞳、壊れそうな体躯、そして、俺に対する歪んだ…… べとべとべとべと。 なにか。 まてまてまてまて! やべぇ、やべぇよ! もしかして、俺はとんでもないことをしてしまったんじゃないか!? とんでもないところに委員長を送り込んでしまったんじゃないか!? 「お、おい! 逃げろ! どこでもいいから逃げろ!!」 俺は慌てて電話越しの委員長に叫ぶ。俺の怒号に教室に居た全員が俺に注目していた。だが、俺は溢れる冷や汗にまみれながら携帯の向こうに居る委員長の状態が気がかりで、まったく気にしていなかった。 『に、逃げるゆーたって……どこに……』 刹那。 ガシャーンッッ!! 電話越しからきこえる、大きな音。皿が割れたような、ガラス瓶が割れたような、鈍器が割れたような。 『キャァァ!』 ぶちっ。 つーつーつー。 悲鳴とともに突然電話が切れた。 「……ホ、ホラー映画かよ……」 カミングスーンってか? 俺は額から冷や汗が止まらなかった。 「どうしたんだ、森本?」 俺の前に居た兼森良樹が怪訝そうな顔で聞く。あんだけ電話越しに大声を出していたのだ。そりゃ聞いてくる。横に居た鞠田早百合も眼光鋭くこちらを見ていた。 「……今日の一時間目ってなんだったっけな……」 目の前の二人に絞り出すような声で聞く。 「はぁ、古文だけど」 よっしゃっ。俺は右手でガッツポーズを作った。古文ならいてもいなくても大した勉強にならんっ。ちょうどいい! 「わりぃ、俺サボるわ! 兼森、俺の名前が呼ばれたら返事しといて!」 「え、ちょっとそんな無茶なっ」 俺は席から立ち上がり、カバンを置いたまま教室を飛び出す。俺の突然の行動にクラスメイトの何人かがぽかんとした顔で見ていたのが見えた。 委員長を、助けに行かなければ。 考えれば分かることじゃないか! あんな精神が不安定な元引きこもりがたまたま俺に懐いたからって、委員長に懐くわけねぇ。だいいち、料理がしづらいから自分の髪の毛を躊躇無く切り落とすヤツだぞ? 普通ではない! 廊下へ飛び出ると教室に入ろうとした京太にぶつかる。京太は尻餅をついて倒れた。俺は「すまん」と一言だけ言うと、わき目も降らず昇降口に向かって走り出した。 委員長を自分の怠惰で危険な目に合わせた自分に対する罪悪感と情けなさで俺は泣きそうだった。 俺は溢れそうな涙をこらえ、その感情全ての力を両足に込めて走った。廊下を走り抜け、上靴のまま昇降口から外に飛び出し疾走する。 「おい、上靴のまま外に出るな」 昇降口に飛び出した途端、教師としてはめちゃくちゃ遅めに登校してきた遅刻常習犯の養護教授の時ノ瀬が顔をしかめて注意してくる。 うるせぇ、今は緊急事態なんだ。冬でもTシャツ白衣に裸足にサンダルで登校してくるお前に言われたくねぇ! 俺は無視して走り続けた。 たぶん、体育祭の徒競走でもこんなに全速力で走ったこと無いだろう。委員長の最後の悲鳴が頭から離れない。 「頼むっ。無事で居てくれっ!」 14 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 39 57 ID h1BEVMqk ぜぇぜぇと俺は荒げる息をついて、榛原よづりの家の前までやってきた。 門はきっちりと閉じられている。まるで魔王の城へ攻略する勇者になった気分だった。いや、勇者でも一度逃げたヘタレ勇者か。 きぃと俺は門を開けて敷地内へと入った。植えられたパンジーの毒々しい色が俺の恐怖をいっそうに煽っている……気がする。 玄関ドアの前までやってきた俺は、耳をドアに付けて中の様子を確認してみる。まだどかんどかんと音がしてたら何か鎮圧するための武器が必要になるかもしれない。 「……無音だな」 恐ろしいくらいなにも聞こえない。休憩か? まぁ榛原よづりはスタミナ無さそうだしなぁ。 俺はドアノブを掴むとゆっくりと回す。がちゃりと音を立ててドアが開いた。おそるおそる俺は中を覗く。 そこには……。 「な、なんだこりゃ……」 俺は玄関で立ち尽くしてしまった。 様子は酷いものだった。昨日お邪魔したときにはあんなに清潔に保たれていた玄関や廊下。見るも無残な状態だ。 玄関で飾られていたはずの花瓶や飾り皿はそこになく、床に叩きつけられたのか無残にも砕け散って散乱している。花瓶の中身なのか、足元にはばらばらと多種多様な花が散らばり、中の水があたりに飛び散っている。 醤油指しやソース、砂糖、塩のケースもひっくり返って、辺りに転がっている。辺りに散乱している見るも無残な料理に一部が溶け出して、不気味な色をかもし出していた。 電気ポットはコードごと引きちぎられ、ふたがへし折られて転がっている。沸騰したお湯があたりに広がり座り込むよづりの足元まで届いていた。 倒れたこけしの首がもげてひびが入った水槽に沈んでいてまるで死体のようだ。 高級そうな壁紙の一部は、何か硬い物がぶつかったのか見事に剥げ落ちていて、あちこちに赤い液体が飛び散っている。……まさか、血か? しかし、ちかづいてよく見るとただのケチャップだった。下にチューブが落ちている。 うわぁ、ビビった。ここらへんがライトなのか? 俺は恐る恐る廊下を歩く。委員長の安否が心配だ。靴を脱いで破片をよけて廊下を渡っていった。 委員長はどこに居るんだ? ちゃんと逃げたのだろうか。門が閉まっていたから外には出てないかもしれない。どこかに隠れているのかも……。 何故か自分で音を立てないように歩く。廊下を抜けて、台所を覗こうとした瞬間。 「しくしくしく……」 硬直した。女のすすり泣くような声。俺はサーっと血の気が引く。 すすり泣く声。この声は確実に……。榛原よづり。なんでお前が泣いてんだよ。 俺は台所をゆっくりと顔だけ出して覗く。すだれの間から女の後姿が見えた。 「しくしくしく……」 黒いセーターに長い髪の毛。そして右手には『秋穂』と筆文字でかかれた日本酒のビン。 「しくしく……ぐびりっ」 後姿の榛原よづりはすすり泣きながら、時折持っていた日本酒ビンの注ぎ口を口元にあてると、顔を上にあげてラッパ呑みをしていた。ごきゅりごきゅりと液体が喉を通っていく音がここまで聞こえる。 明らかにやけ酒だ。あんな度の強そうな日本酒を一気飲みすると急性アルコール中毒になってしまう。 「ぐびりぅぐびりっ。ぷはぁ………ううう、かずくぅん……」 うわぁ! 明らかに俺が原因かよ! 「お、おい! 榛原っ」 「んふうぇ?」 俺は慌てて台所に入った。後姿の榛原よづりの肩を掴んで、日本酒を取り上げる。奪い取った日本酒は一本カラだった。全部飲んだのかコイツは。 突然肩を掴まれた榛原よづりはびくりと体を震わせた。ぐるりとマネキン人形のように顔の向きだけぎこちなく振り向く。 目が死んでいた。 長い髪の毛はくしゃくしゃに汚れていて、前髪の下に浮かんだ瞳は暗色の水彩絵の具を水で溶かしたように淀んだ色をしている。同じく、俺は台所の惨状にも驚いた。 台所の床にはぐちゃぐちゃになった料理が無残に散らばっていた。豚の角煮、牛ステーキ、アジの開き、焼いたホタテ……その盛り付けられていたはずの、どれもよだれもののうまそうな料理が、テーブルではなく床に散乱し、 砕け散った皿と区別が柄なった醤油指しやソース、砂糖、塩のケースもひっくり返って、辺りに転がっている。辺りに散乱している見るも無残な料理に一部が溶け出して、不気味な色をかもし出していた。 電気ポットはコードごと引きちぎられ、ふたがへし折られて転がっている。 沸騰したお湯があたりに広がりそのお湯と湯気、そして料理の臭いが台所に充満し、吐き気を覚えるにおいが立ち込めていた。幸いなのは、ガスコンロのガス栓が抜けていなかったことだろう。もしそうなら、それこそ大惨事になりかねない。 15 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 40 59 ID h1BEVMqk コップの取っ手は中ほどでへし折れ、見事に真っ二つに割れていた。ナイフは真ん中でへし曲がったり、フォークは一体同やたらこうなるのか、刃があらぬ方向にねじれていた。 そのあちこちには、盛り付けて合ったはずの新鮮なトマトが中身をぶちまけてへしゃげ、散らばっている。みようによってはそれは、えぐられた人肉にも見えて、こみ上げ来るものを何とかこらえた。 冷蔵庫は半開きになり、薄明かりを漏らしている。あとで出そうとしていたのか、そこにはケーキらしきものやら、プリンらしきもの、どれもうまそうだったはずのデザートが、奥のほうでつぶれていた。 もとは、テーブルに並んでいたのだろう。全てが台無しになってしまっている。 榛原よづりの目が俺の顔に定まる。しばらくの間固まっていた。しかし数刻、肩を掴んだのが俺だとわかると。 「か、か、か、か………」 淀んでいた瞳に急に生気が蘇ってきた。アルコールで赤くなった顔もさらに赤みを増して、口元もわなわなと喜びに震える。そして、 「かずくぅぅんっっ!!」 まるで飛びつくように抱きつかれた。俺は食い物が散乱した床に背中から押し倒される。 「かずくんかずくんかずくんかずきゅぅぅぅんっ!」 まるで甘えん盛りの猫のようにぐりぐりと俺の胸に頭を押し付ける榛原よづり。ソプラノ調の高い泣き声で何度も俺の名前を叫び続けていた。 セーターで押し上げられた二十八歳の豊満な巨乳が臍あたりにぐりぐりと押し付けられた俺は思わず反応しそうになるが、さすがに状況が状況なのでなんとか自分を押し留める。 「おいおい、落ち着け!」 「なんで、なんで来てくれなかったのよぅ! なんでよぅ!!」 榛原よづりは頭を押し付けながら俺を責めたてる言葉を吐いた。 「なんでよぅ! やっとわたしに会いに来てくれる人が居たと思ったのに! やっと、わたしを支えてくれる人だと思ったのにぃ! どうして、どうして、裏切ったのよう!! 裏切りものぉ! かずきゅぅん!」 支離滅裂だ。俺はワケがわからないがなんとか落ち着かそうと開いた手で榛原よづりの頭を撫でていた。 「よろしくねって言ったじゃない。迎えにくるって行ったじゃない! だぁかぁらぁ、わたしかずくんの好きなもの考えていっぱい用意して待っていたのに……。 そうしたら、そうしたら、なんか変な女の子がきてぇ、かずくんは来ないってうそついてぇ、嘘、嘘、嘘、嘘ついたの! あの女の子があ」 委員長のことだ。そういえば委員長はどこ行ったんだ? 俺は榛原よづりの頭を撫でながらそちらも気になっていた。 「あの女の子が嘘ついてるとおもってぇ、あの女の子、あの女、私とかずくんの間を邪魔してるのよぉ! 邪魔してるのぉ! だぁかぁら、あたし言ったのぉ、かずくんは来るって、絶対来るって! だけど、あの女は来ないって言い張ってて……だからぁ……」 やめてくれ、それから先は言わないでくれ。頼むから。お前が何か言うたびに俺は委員長を危険な目にあわせたという罪悪感が湧いて来るんだよ! 俺は押し倒されたまま榛原よづりの頭を両手で抱きしめた。 「落ち着けっ。榛原! 榛原! よづり! よづりっ!」 俺は、初めてこの女を名前で呼んだ。俺の声に反応したのか、よづりが言葉を止めた。押し付けられる頭を抱きしめて、さとすように俺はゆっくりとよづりに語りかける。 「この料理は俺のために作ってくれたのか?」 「う、うぅん。好きなもの知らないからぁ。冷蔵庫にあるもの使って、全部ぜぇんぶ……。でもぉ、あの女の子のせいで、あたぁしムカッとなって……」 「全部おシャカにしちゃったのか」 「うん……、気がついたらテェブルの全てを投げてた……」 「……そうか」 俺は抱きしめながら、手のひらでよづりの頭を撫で続ける。 そのたびに、よづりは気持ちよさそうに体を震わして吐き続ける嗚咽をなんとか収めていった。 「ありがとうな」 「ふえぇ?」 「料理だよ、料理。作ってくれてさ」 「う、うん……」 16 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 42 05 ID h1BEVMqk もぞりもぞりと抱きしめていたよづりが動き出す。俺が腕を放すと彼女は右手で体を支え起き上がった。 ざんばらとなった髪の毛が顔の前まで垂れかかって、まるで昨日の前髪を切る前の姿のようだった。髪の毛の間から覗く顔つきはお酒のせいか、ほほが赤くとてつもなく緩んでいた。しかし、受け答えはなんとかはっきりしている。酒には強いのか。 俺はそんなよづりを見上げながら、あることを心に決めた。 「台所がぐちゃぐちゃ……ごめんなさい……暴れちゃった……」 「オイオイ、俺に謝るなよ」 「だってぇ、来ないって聞いてぇ……。私、私……」 大の大人がぽろぽろ泣く姿はとてもじゃないが正視できない。俺はよづりの寂しさがいたいほど伝わってくる。 「俺は来たじゃないか。だからもう自分を責めるなよ」 俺は、ぽんぽんとよづりの頭を撫でるように叩くと、上半身を起き上がらせた。見上げていたよづりの顔が目の前までやってくる。 さぁ、ここから俺の舞台だ。こんなことになってしまったのは俺の責任だ。さすがに、ここまでのことをして、ただ反省しただけではすまない。 副委員長として、男として、けじめをつけないとならない。 「暴れなくてもお前のためなら俺はいつでも駆けつけるよ」 恥ずかしいセリフだ。しかし、俺は真剣だった。 「ふぇ……?」 「これから、お前のために俺がついてってやる。だからさ、もう暴れんな。もう泣くな。もう……自分を責めるな」 そう言って、俺はもう一度。今度は正面から、よづりの華奢で弱弱しい体躯を抱きしめた。ふにゅりと俺の胸で形を変えて圧縮される彼女の胸。しかし、それはもう気にならなかった。 「ふぅえ……」 よづりはまるで何が分からないといったように体を硬くする。が、自分が俺に抱きしめられていると分かると、 「えへ、えへへへへへへへ……」 よづりはいつもの笑い声をあげて、俺にもたれかかる様に背中に腕を回して、体を押し付けた。 「えへへへ、えへへへへへへ………だぁいすきぃ……かずくん」 散乱した台所、床には脂や陶器の皿の破片、そんな異空間で抱き合う二人。なんじゃこりゃ。 肩に乗せられたよづりの顔から呟かれる言葉を聞きながら俺はこう思っていた。 こいつを、かならず、普通の女に戻してやる。 これまでなにもしてこなかった俺。副委員長という仕事を与えられながら何一つ満足にやろうとしなかった自分。この散乱した台所と泣きながら自暴自棄へ陥るよづり。これらはそんな自分が起こした悲劇の結果。 俺は自分の怠惰やその場しのぎの感情で他人を傷つけることを今始めて実感したのだ。だからこそ、俺はこのすべてをリカバリーしたかったのだ。 そうして生まれた決意。それがこのよづりを真人間に戻してやること。 しかし、それはただの責任感や罪悪感から出てきた偽善じゃないのか? スカした自分が俺の脳内へ語りかける。 いや、偽善でもいい。 俺はスカしたいままでの自分、いままで何でも斜めに見ているだけで何もしようとしなかった自分を一喝した。偽善でもいい! それで、こいつを救うことができるなら。俺は偽善でも何でもやってやるさ! 抱きしめたよづりの体は温かかった。 そうだ、こいつは人間だ。ちゃんと血の通った人間なんだ! 俺は自分にそう言いきかせるともういちど強くよづりを抱きしめた。強く、強く。 (続く) 17 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 17 43 12 ID h1BEVMqk 4スレに間に合いませんでした。真夜中のよづり第4話でした。 これで一応は第一章の終わりとなります。ここで一区切りです。なんだか28歳という年齢が議論になるようですが、まぁ新たな萌え要素としてお願いします。 これ、痛女か? とか不安な部分ありますがまだまだよろしくお願いします。次回はまたいつになるか分かりませんが、絶対続けますので。 保管庫BBSにて素晴らしくやらしいイラストを描いて下さった屍氏さんには感謝の嵐です。 (訂正) 藤枝さんを仮名のまま出してしまいました。 藤枝→鈴森に脳内変更してください。 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18 04 50 ID AMJCUY6P 1乙! よづりキタ━━(゚∀゚)━━ヨ! これからの展開にwktk いやいや28歳は全然おkですよー よづり可愛いよよづり(*´Д`) …ところで委員長は? 19 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 19 53 26 ID h1BEVMqk 18 委員長の安否は次回参照です。 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 20 50 58 ID tDVc7h/F 鈴森さんがFAってことでおk? 21 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/25(日) 21 20 30 ID n7hWN+Wo よづりタソめっさ楽しみにしてます (*´Д`) 22 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/26(月) 00 12 09 ID BHLj2vtS 委員長フォーエバー 23 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 49 09 ID 7vA5fpNJ 17 赤いパパ氏、GJです! よづりの可愛さに嫉妬ww では上書き本ルート8話投下します。 24 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 49 51 ID 7vA5fpNJ 「だから、加奈とは小二の頃から付き合い始めたんだよ!」 「”加奈”だって!名前で呼んじゃって、いやらしいんだ!」 「今までだってそう呼んでただろ…」 クラスの生徒のほとんどが一ヶ所に集まり円形に取り囲んだ中心の席に座りながら俺は皆から視線をそらそうとした。 勿論360度包囲されているから嫌でも誰かとは視線が合ってしまう。 上を向くのは格好的に間抜けだし、下を向いていると落ち込んでいるように思われそうだから必然的に正面を向かなければならない。 加奈と体育館裏に行く前「後で」と言ってしまった手前、この質問攻めには応じる他ない。 軽はずみな言動は避けようと肝に命じながら、腕時計の時間を目線だけで確認する、早く授業が始まって欲しいと思ったのは初めてかもしれない。 加奈とのやり取りの後、去って行こうとした加奈と俺は放送で校長室に呼ばれた。 当然”あの紙”について知っている事を少しでも聞く為だ。 事実は知っているが口が裂けても言えないし、加奈が不利な状況に陥るような事を言う気もなかったので終始口篭っていただけだった。 加奈はと言うと笑顔で”はっきりと”「知りません」と言ってのけた、罪悪感なんて欠片も感じてない様子だった。 その事に意識が集中してしまいほとんど話を聞いていない俺の態度に気付いたのか、校長は”校内での異性交遊”について口を酸っぱくしてきた。 何で学校に個人的な恋愛沙汰に首を突っ込まれなきゃならないのかと腹が立ったが反論をする気はなかった。 校長の言い分、”恋にうつつをぬかしているだけでは将来後悔する”、というのは俺の意見と一致しているからだ。 この事を言われた時だけ加奈がかなり険しい表情になっていたのを今でも覚えている。 破れる直前の風船のような殺気漂わす加奈に背筋にミミズが這うような寒気を感じた俺は、ペコペコ頭を下げ早急に加奈と校長室を出た。 緊迫感に押し潰されそうな空間からの解放に喜んでいる俺は勿論、加奈も元通りの笑顔になったので一安心して教室に戻った。 そこからだ、今のように質問の嵐に巻き込まれるようになったのは。 待ち構えていたようにドア付近に固まっいたクラスメイトたちは、俺が教室に入ると一斉に俺の前に群がってきた。 クラスメイトの間をくぐり何とか席に着かせてもらえた俺は、その後皆からの好奇的な視線と似たような質問を浴びているという訳だ。 その質問の内容に”あの紙”に関連する事はほとんどなく、俺と加奈の関係についてひたすら聞かれた。 他人の恋愛話程聞いて面白いものはそうないし、俺は加奈との関係については黙秘していたから、当然といえば当然な事だ。 俺はそれが煩わしかった、プライベートな話題は加奈とだけしたいし、加奈以外の人間にそういう事を言うのは面倒というか正直嫌だった。 何だか俺と加奈とだけの間の”秘密の共有空間”に土足で踏み入れられた感じがするのだ。 加奈に学校内で極力付き合いをしないように促すのは勿論加奈の将来を思ってというのが第一だが、それと同じ位俺が加奈を独占したいというのもあるんだと今更思う。 加奈は俺を独占したくて皆に俺たちの関係を知らせた、俺も加奈を独占したいが皆に俺たちの関係を知らせたくはない、同じ目的のはずなのにその二つが交わる事はない、今日何度目か分からないがこれも”おかしな事”だなと思った。 『キーン・コーン・カーン・コーン』 きっと…俺がこうして苦悩している事なんて”運命”の壮大な輪廻に比べれば他愛ない事なんだろうなと柄にもない事を考えていると、学生生活11年目でもうお馴染の始業の鐘が鳴った。 俺の視界を塞いでいた生徒の壁が名残惜しそうに崩れていく。 とりあえずこれで助かった、安堵する暇もなくHRが始まった。 25 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 50 30 ID 7vA5fpNJ 「まだかなぁ…」 腕時計の時間を見て思わず呟いてしまった声は周りのざわめきにかき消される。 いつものように数分の連絡事項だけで幕を閉じたHRの後は自習時間…という名目の自由時間になる。 担任も終業時間になるまでは職員室に戻ってしまうから、喋り場と大して変わらない。 当然勉強している奴なんかほぼ皆無で、皆周りの人間との会話に忙しそうだ。 さっきの質問攻めで今日一日分喋ってしまったような気がして、そして何より考え事をしたくなかったので俺は腕枕を作り机に突っ伏した。 疲れているが寝つけない、幾ら目を閉じても全然眠気は襲ってこない。 こういう時だけ都合の良いものだと観念した俺は寝る事を諦め肘をついた。 そして加奈の事を考える…加奈についての事はあり過ぎて頭が爆発しそうだ。 その無駄に多過ぎる事柄に共通する一つのキーワード…”何故加奈がそこまでするのか?”ていう疑問にぶち当たりすぐにそれは壊れさる。 奢りでも何でもなくその理由はただ一つ、”加奈が俺を好きだから”だ。 そんな事は分かっている、加奈と俺が相思相愛な事も、加奈が俺を好き過ぎる故に”今日のような事”をしたのだって分かっている。 分かっているから心配なのだ、加奈が確実に昔の純粋な面影をなくしていき、やがて更に純粋に”なり過ぎる”のが心配なんだ。 今の加奈を見る限り、明らかに加奈は冷静でない、いや冷静過ぎる気がする。 物事を深く考え過ぎて目の前の簡単な事を取り溢すのではないかと思う。 もしそうなれば…具体的な想像は出来ないが、”ヤバイ事になる”のは間違いないと思う。 そうなる前に加奈を正気にしないと……… 『キーン・コーン・カーン・コーン』 そんな俺の決意を後押しするように終業のチャイムが鳴った。 担任が適当に教室に戻ってきて適当に挨拶を済ませ適当に教室を出て行く。 いつもの日常のリズムに微妙な満足感を覚えながら俺はトイレに行こうとして廊下を見た…そして驚いた。 「誠人くんっ、ヤッホー!」 本来なら別に驚くべき場面じゃない。 しかし普段学校内では極力会わないようにと言っているはずだから驚いてしまった、そこにいたのは加奈だ。 廊下から手を振りながら教室にあたかもそこの住人のように当たり前に入って来た。 突然の来訪者に俺だけでなく他のクラスメイトも加奈に注目する、その中にはニヤニヤしながら俺を見てくる奴もいた。 その存在を気にしないで椅子から立ち上がり、歩いてくる加奈に歩み寄る。 「どうしたの、怖い顔して?」 頭を45度傾ける加奈の眼前に立つ。 少々険しい顔を作り、本当に心苦しいが結構キツ目に問い掛ける。 「どうしてここに来てんだよ?」 「え?”彼氏と彼女”が一緒にいるのは当然じゃない?」 俺からの強めの口調での問いにあくまで淡々と答える加奈。 いつもならすぐに謝ってくるのに、全く動揺した様子のない”静かな返答”が俺の背筋を冷たく貫いた。 「学校内では極力会わないって決めてたはずだろ?」 「誠人くん、そんなのおかしいと思う。過ごした時間だけ仲も深まっていくものでしょ?」 「それは…」 何とか言い返したかったが、今の加奈には何を言っても勝てない気がする。 加奈の言っている事は間違っていない、寧ろ俺がしている事の方が間違っているのではないか? 誰がおかしいのか分からなくなり混乱する俺をよそに、周りは急に賑やかになっていくのを感じる。 「沢崎、加奈ちゃんの言っている事は間違ってないぞ」、「お熱いねぇ!」、俺たちに野次が飛ぶ。 こういう時だけは本当にお節介だなと言いかけたところを何とか堪える。 他のクラスメイトが加奈を姫を扱うように丁寧に俺の席に座らせても、文句は言わなかった、言えなかった。 「加奈ちゃん、あたしたち応援してるからね!あんな”姑息な事”する奴なんかに負けないでね」 女生徒の一人が試合前のボクシング選手に喝を入れるセコンドのように拳を力一杯握り締めている。 それに笑顔で応える加奈。 その女生徒が言った”姑息な事”とは今朝の”あの紙”の事を言っているのだろう…その事が分かった時俺は加奈の顔を反射的に見てしまった。 周りからの冷やかしに困ったような笑顔を浮かべる加奈…この顔を見て限りなく確信に近い推測をした。 加奈が”あの紙”の文面を他者がやったように見せたのには、周りからの同情や応援を受けるという付加目的もあったという推測を。 果たして俺の目の前にいるのは、”本当に”加奈なのか…? 教室内のざわめきに反し、俺は一人沈黙を守っていた。 26 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 51 04 ID 7vA5fpNJ 「ふぅ…終わったか…」 終業の鐘の音を聞き俺は溜め息をついた。 結局あの後加奈は休み時間毎に俺の下へ訪れた。 昼飯まで周りから冷やかしを受けながら一緒に食べた。 生徒がどんどん俺と加奈をセットのように認識していく…俺にとっては悪い流れだ。 このままではプライベートと学校生活が同化してしまう、最も避けたかった状況へと事態は進んでいっている。 しかし、止める術は俺には見付けられない。 加奈が笑顔だからそれでいいじゃないかと甘い考えにも逃げようとしたがそれは断じて認められない。 今幸せなだけでは駄目なのだ、加奈には”ずっと”幸せでいて欲しい。 だからこそここで俺が諦める訳にはいかない、決心だけは一人前の俺、その背中を誰かに叩かれる。 振り向くとそこには島村がいた。 相変わらずの大きな眼鏡の位置を慣れた手付きで直している。 「何だよ、島村?」 「不機嫌なのは分かりますが、私にやつ当たりというのは酷いと思いますよ」 この女はやはり侮れない…。 島村と昨日”あんな所”で会いさえしなければ…そんな筋違いな苛立ちをさりげなくぶつけたのを完璧に見抜かれてしまった。 何も言えなくなる俺をよそに、島村は鞄を持ったまま腕を組み、俺の耳に向かって小声で話し掛けてくる。 「”昨日の場所”に一緒に来て下さい」 「”昨日”の場所?」 俺が若干大きめの声で言うと、島村は顔を軽く赤くしながら口元に指を立てた、”昨日の命令”の時のように。 しかしあの時と違って今の島村の指は震えている、実に女の子らしい反応だなと親父くさい事を考えてしまう。 周りを心配そうに見渡す仕草から推測するに、どうやらクラスの他の奴には”本性”を見せたくないようだ。 やけに可愛らしいところもあるじゃないかと思いながら重い腰を上げる。 それを了承のサインと受け取ったのか、島村は踵を返し教室から出て行った、まぁ今は島村に服従している立場だから無理矢理にでも行かされていたんだろうけど。 少々情けなく思いながら島村の後ろ姿を眺めていると、髪から僅かに覗く耳がまだ真っ赤になっていた。 笑いそうになるのを堪えながら、俺は島村の後を追って行った。 ”ここ”、体育館裏に女の子と来るのはこれで三度目だ。 何も変わっていない、昨日島村の本性を垣間見た時と何も変わらない。 「ここは静かで落ち着きますね」 「そうだな」 音はないが殺風景という訳ではないこの広々とした空間に浸っている島村。 時折吹く風でなびく短髪を押さえる仕草はやはり”女の子らしい”。 これで性格さえ治せばきっと彼氏の一人や二人幾らでも出来るんだろうな…って俺島村に彼氏がいるかなんて知らないな。 興味はあるが聞く程の事じゃないし、万が一聞いて機嫌を損ねられたらまた面倒な事になるんで押し黙る。 「短刀直入に言います、”あの紙”の犯人は城井さんなんじゃないでしょうか?」 「なっ!?」 しまった、そう思った。 島村の不意打ちに反応してしまった自分が憎らしい。 今笑ってとぼければ全てが丸く収まっただろうに、こんな露骨な反応をしてしまっては肯定しているようなものだ。 「そうなんですね?」 「あっ…その…」 「やっぱりそうでしたか、沢崎くんと違って城井さんが大して驚いていなかったんでもしやと思ったんですが…」 どこで俺たちを見てたんだというどうでもいい疑問を頭の奥底に封じ込める。 俺の様子を一瞬見た島村が納得したような表情を浮かべる。 島村に…他人に、加奈が”やってしまった事”がバレてしまった。 もしバラされたら…いつもならもっと考えて行動するのに、俺はひどく慌てていてすぐに島村の両肩を掴んだ。 「頼むっ!島村、この事は誰にも言わないでくれ!」 「え?」 27 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 52 16 ID 7vA5fpNJ 島村を何とか言いくるめなければ、そうしないと加奈が…。 俺は必死に島村を説得した。 「加奈に悪気はなかったんだ、ちょっと俺との仲を自慢したかっただけなんだよ!ずっと奴隷でいいからこの事は誰にも…」 「”あの事”と引き替えに…と言ったら?」 「”あの事”って…!」 島村が俺より低い位置から俺を見下ろす視線で問い掛けてきた。 ”あの事”とは、俺が女子トイレから出てきた事を言っているんだと瞬時に理解する。 いきなりの問いに戸惑う、だってもし”あの事”がバラされれば俺の高校生活が終わる。 俺の青春に有終の美を飾れなくなる…。 「構わない、”あの事”をバラしていいから”この事”だけは言わないでくれ!」 でも加奈の人生に比べれば自分の人生を捨てるなんて簡単だ。 加奈が幸せじゃないなら俺はどんなに充実した日々を送れたとしても幸せにはなれない。 加奈が幸せならそれでいいんだ、その一心を視線に乗せて島村に送る。 視線が交錯する、お互いに相手の考えを読み取ろうとするように。 しばらくして俺の顔を凝視していた島村が突然ニヤけた、無垢な少々のように。 「何真剣になっているんですか、私がそんな事するような人間に見えます?」 思わず「見える」と言いそうになるのを何とか堪えた。 そして考える、島村はどういうつもりなのかと。 「安心して下さい、どちらの事も始めから言う気なんてありませんよ」 意外な言葉だった。 まさか”あの”島村が…俺を縛っている”縄”の存在を切り捨てるような発言をするから。 始めから言う気がないなんて言ってしまったら俺を”あの事”で縛る事はもう出来なくなるじゃないか…頭が混乱している俺に更に島村が追い討ちをかけてくる。 「いい機会ですし、もう”奴隷”から解放しますよ!」 「え、何でだよ!?」 「そちらこそ何ですか、まだ奴隷になっていたかったんですか?」 「そんな訳ないだろ!」 思わずムキになってしまう俺を楽しそうに笑う島村。 本当にこの女の考えは読めない、そのくせこちらの考えは全て見透かされている気がしてならない。 島村の心中は分からないが、とりあえず半永久奴隷からの解放は素直に嬉しい。 昨日は正直絶望したが、まさか一日で終わるとは。 嬉しさついでに俺は何も考えずに素朴な質問をぶつける。 「なぁ、なんで加奈がやったって事を確認しようとしたんだ?言う気がないなら知ったところで意味がないだろ?」 「何言っているんですか、ライバルの性格を把握するのは略奪愛の基本ですよ」 ………ん? 今なんか明らかに変な事を言ったような気がした。 気のせいかと思い聞き流そうとした俺、しかしそれを残酷に島村は拒んだ。 「まぁ”あんな事”して誠人くんを困らせているような女に負ける気なんてありませんがね」 「は?何を言ってんだお前は?」 思った事がそのまま口から漏れた。 だって本当に意味が分からない、突然俺の事名前で呼ぶし、”負ける気がしない”って誰に対して言っているんだ? 次の瞬間、様々な俺の疑問を”一言で”島村は片付けてくれた。 「私あなたの事好きなんですよ?まさか気付いてなかったなんて事はないですよね?」 28 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 52 47 ID 7vA5fpNJ 今島村は何と言った…”好き”?俺を? ”島村が俺の事を好き”? 呆然とする俺に呆れ顔で島村は眼鏡の奥に隠した鋭い視線を向けてきた。 俺を切り裂くように見つめてくる。 「本当に気付いていなかったんですか?好きな人でもないと相手を奴隷にしようだなんと思いませんよ」 言われて何となく納得した。 確かにその通りだ。 指を舐めさせるなんて普通の人間にやらせる訳がない…。 首元へのキスマークを含めて、今までの行動は全て俺への好意からだったのか? そう仮定した途端全てが噛み合った。 まさかこんな意外なところに解答があったなんて…俺は愕然としながら改めて島村の顔を眺めた。 その顔は言いたい事を吐き出せたからか、爽快感に満ち溢れていた。 「ま、という事で」 そう言うと島村が俺に近付いてきた。 俺は島村と真っ正面に向き合いながら硬直しているので距離差はどんどん縮まっていく。 やがて靴一個分までに接近してきた島村、何の躊躇いもなく右手をするりと首元に回し、艶っぽい声で囁く。 「これから”よろしくね”、誠人くん?」 あまりにも近過ぎる俺たちの顔、思わず紅潮させてしまうと島村が子供のようにクスクス笑った。 「本当に可愛いんだから…」 そう言うと、島村の言葉の魔力に縛られた俺の口と島村の口が触れそうになる…”触れそうになった”。 「ハハ、誠人くん見ぃっつけた!あは」 そして一気に魔法はとけ現実に引き戻された、目の色を失っている少女の小刻みに震えた声によって。 「か、加奈ッ!?」 俺は一体どれだけ神に翻弄されればいいんだ…? 目の前の最悪な状況を前にして、俺は運命を呪った。 29 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 00 54 43 ID 7vA5fpNJ 投下終了です。ちょっと短かったような気もしますがお許しを。 今回は修羅場スレ向けな気もしますが次からはしっかりヤンデレにしますんで。 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 06 21 ID DXwhBY6F 上書きキタワァ.*・゜゚・* .。..。. *・゜(n‘∀‘)η゚・* .。. .。. *・゜゚・*!!!!!☆ GJ! 島村さんも本格参戦でしょうか しかし誠人は無意識に地雷踏みすぎだw 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 06 28 ID Jt4vtuqM とりあえず、長くなりそう&序章ですが投下します。 32 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 10 29 ID Jt4vtuqM 10月12日 19時 竹宮邸 来栖凛(くるす りん) 私の体の中に無数の蟲が注入されていた。それは醜悪なる肉塊を通じて、何度も何度も私 に注がれ、その蟲どもはただ己の下種な本能に従って私の身体の「ある一部分」を目指す 。 その蟲どもの息吹に、かつて私はある種の歓楽を感じていた。無数の蟲どものただ一つの 欲望を叶えてやりたいとさえ願っていた。 しかし、今では私はこの私の体内で蠢く蟲に嫌悪しか抱かない。そう、私の中に注がれた 蟲はただ一匹を残して全てが息絶えたが、生き残った一匹はこうして今も私の身体の奥深 くで目覚めの時を待っているのだ。私はそのおぞましい感触に耐えられず、それを想像す る度に込上げてくる嘔吐物を撒き散らした。 我慢出来ない程の屈辱だった。耐え難い陵辱だった。そして私の文字通りの「栄辱」の始 まりであった。 私にこの忌まわしい蟲を植え付けた秋月否命(あきつき いなめ)は、私の身体の事を知 ると、発情した雌犬の如き下卑た眼で私の蟲が宿った身体を舐め回し、物狂いのように甲 高く意味の無い声で唾を吐き散らした。もっとも、その時の私も恐らく否命と同様か、そ れ以下の醜い喜悦の表情を浮かべていただろう。 蟲の轟きは日増しに強くなる。恐らく今日がその日なのだろう。 私の体の中で唯一生き残った蟲がこの世界に顕現する日だ。この日のために蟲は、私の五 臓六腑を飽く事無く、果てる事無く、貪り喰らい、そのことごとくを自身の血肉としてい た。全ては今日、私の身体から這い出るためだけに。 その兆候は既に表れていた。 最初の兆候は私が部屋で物思いに耽っている時であった。その蟲がタイナイを駆け巡る痛 みに私は悲鳴を上げそうになった。悲鳴とは、自身の周りの人に自分の状況を伝え、助け を求めるための信号とされているが、この事実は他に知られてはいけない。自分の状況を 他人に知られてはならないのだ。私の現在の状況が知られたら、すぐさま私は病院に移さ れてしまうだろう。それを拒否する事も出来るが「何故か?」と問われたら、私は言葉に 詰まってしまうだろう。 私がしようとしている事は病院にいては不可能なことなのだ。しかしながら、その理由を 人様に説明する事がどうして出来よう? 詰まる所、今から私がしようとしている事はそういうことなのだ。 33 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 12 15 ID Jt4vtuqM 幸いな事に、今まで私は自身の身体のことを否命を除けば誰にも知られずにいられた。そ の否命だって、こんなに早く「その日」が来る事を予期してはいまい。 だが、竹宮源之助(たけみや げんのすけ)は何か気付いていることだろう。 ちなみに、源之助はこんな厳つい名でありながら女である。そして私の居候先の唯一の住 人にして、私の同級生だ。 彼女には感謝してもし尽くせぬものがある。 源之助は最初の兆候の日、私の腕に深い噛み傷を発見した。私は身体の奥底から湧き上が ってくる悲鳴を殺すため、咄嗟に私の腕を口に入れたことにより出来た傷である。源之助 は何も言わず、ただ黙って私の傷の治療をしたが、何か感づいたとみて間違いはないだろ う。 あの時は、私は気が動転していたのでそこまで配慮が回らなかったが、二回目以降はその 兆候の意味と周期を理解し、幾分かは冷静に兆候に対応することが出来た。 それでも、源之助は何か気付いているようだった。 だが、所詮はその程度だろう。源之助は私の現在の状況を今も尚、知らないままだ。故に 、源之助は今から私がしようとしていることは想像もつかないだろう。 そう、今、この時より始まるのだ。 これより否命の栄辱が幕を開けるのだ。 最後の兆候が始まった。 34 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 13 32 ID Jt4vtuqM ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 次の日の明朝、朝食の支度を終えた源之助は通常どおり、凛を起こしに凛の部屋を開けた 。 瞬間、源之助は言葉を失った。 源之助の顔を見ると凛は、 「おはよう。フフン、どう、驚いた?私だってたまには早起きするのよ」 とニッコリと微笑みかけた。勿論、源之助が驚いているのは凛が早起きしたからではない 。そして凛のこの言葉は、それを分かっているからこそであった。 凛は待っているのだ、源之助がこの部屋の惨状を問いかけるのを…。 「どうしたの?固まっちゃって。早く、学校に行かないと遅刻するわよ」 説明するのが楽しみで仕方の無い、といった風情である。あまりの事に源之助は返す言葉 を失い、無言で凛の部屋の様子を見ていた。 床に溜まる血の跡、凛の血が付着しているパジャマ、乾いた血がこびり付いている凛の拳 、そして部屋に立ち込める獣臭。そして源之助の目はある一点に…凛の足元に転がってい る物体に注がれた。 源之助の頭よりも先に身体が反応する。 源之助は凛の足元にゴミ屑みたいに転がるものの正体を理解した時には、既に怒りで凛を 殴り飛ばしていた。 「凛!貴方が!」 少し遅れて言葉が飛び出す。源之助は分かっていた、分かっていたが、叫ばずには言られ なかった。これはお前のやったことかと。 「そう、私がやったの」 殴られた事も意に介さず、凛が笑って言う。 「殺してやったわ。あの色キチガイの…、否命の子よ」 そうして、凛は可、可、可と笑い声を上げた。 投下終わりです 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 27 31 ID JmkqAhOQ 34 最初よくわかんなかったが2回読んでわかったぜ! これからの展開に期待なんだぜ! 36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 01 45 13 ID wFDH2Yl3 34 タイトルを見て「しまっちゃうおじさん」を思い出したのはおれだけではないはず 37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 10 20 26 ID q39byBT/ 29キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!GJ! 加奈タンがさらに病んだらどうなってしまうのかとガクブル&wktk 34いきなり惨劇((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル この先の展開に期待! 38 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 36 11 ID OmIerb7I 投下します。 第三話目になります。 39 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 37 19 ID OmIerb7I 眠り過ぎたせいか、頭に靄がかかっているようだった。 学校… 行きたくない… 午前7時。時計を見て最初に思ったのは、それだった。 行きたくない、というより、会いたくない。 昨日の視線を思い出しただけで、身体が震え頭がぐらぐらする。 今日は学校を休もう。 単なる逃げでしかないのは解っていたが、そう思うと少しは気が楽になった。 兄さんを起して、まだ具合が悪いって言おう。そう思った矢先、ノックの音が響いた。 「夏月、起きてる?」 朝が弱い兄さんがこの時間に起きているという事に驚いて、直に返事が出来なかった。 「…兄さん?」 「入るよ?」 わたしの小さな声に起きている事を確認した兄さんが、そっと部屋に入ってきた。 「どうしたの、兄さん? こんな朝早くに…」 「夏月の具合が悪いのに、ぐーぐー寝てられる訳ないだろ? それより、具合はどう?」 朝が弱い兄さんがわたしを心配してわたしの為だけに、無理して早起きしてくれた。 ぎゅうと胸が締め付けられるような喜びに、緩む頬を見られない様に俯いて小さく返事をする。 「ん… まだちょっと……」 兄さんに嘘を吐かなければならない事に、罪悪感で一杯になりながらも、 それでも今日は学校には行きたくなかった。 おでこに手を当ててきた兄さんは、熱はないみたいだね、と優しく言うと、 俯くわたしの頭を軽く撫で、横になるように促がす。 「昨日の今日だし、今日は学校休もっか」 にこりと微笑む兄さんに緩く頷く。 「ごめんね、兄さん」 迷惑かけて、ごめんなさい。心配かけて、ごめんなさい。嘘吐いて、ごめんなさい。 「夏月はそんな事、気にしなくていいから。朝ご飯作ってくるから、寝てな」 「あ、大丈夫、自分で出来るから。兄さんは自分の用意して? 学校遅れちゃう」 そこまで迷惑かけられないよ。 「だから、気にしなくていいって。どうせ金曜だし、僕も学校休むから」 「え?」 兄さんが学校を休む? わたしのために? 「夏月は何も心配しなくていいから、お兄ちゃんの言う事ちゃんと聞く事。解った?」 「…うん」 わざと怒ったような顔をしていた兄さんは、わたしが頷くとにっこりと笑って、 ご飯作ってくるからと部屋を後にした。 冷え切っていたわたしの心が、兄さんの笑顔に気遣いに幸せで温かくなった。 40 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 38 03 ID OmIerb7I 学校を休んで兄さんと二人きりで家にいられるという事が、わたしを落ち着かせ、 昨晩あれだけ寝たというのに、午前中はずっと微睡んでいた。 どこもかしこも兄さんとわたしの気配しかしないこの家は、わたしにとって最後の砦だ。 ここに居れば大丈夫。何も怖い事なんて、ない。 余り物で作った雑炊で簡単にお昼を済ませると、枕元に座った兄さんに甘えて、 膝枕をねだった。兄さんは嫌な顔一つせず、あんまり寝心地いいとは思えないけど、 と言うと優しく笑って膝を貸してくれた。 兄さんの膝に甘え微睡みながら、ふと思い出す。 「ねぇ、兄さん。兄さんは憶えてる?」 「何を?」 どこまでも優しくわたしの髪を撫でる兄さんの手に、うっとりと目を閉じる。 「わたしが兄さんを、兄さんと呼ぶ事になった出来事を」 双子であるわたし達にも、勿論兄と妹という概念はある。 しかし歳が違う兄妹とは違い、双子にはその感覚は希薄であった。 兄さんとわたしも当初は兄妹という感覚は希薄で、名前で呼び合っていた程だ。 それは兄さんとわたしが5歳の頃だった。 初めて母方の本家の集まりに、一家で参加した時の事だった。 そこにいた同い年くらいの女の子に、わたしは目を奪われた。 艶やかな長い黒髪は流れる様に真っ直ぐで、長い睫毛に色彩られた大きな瞳は 宝石の様に黒く輝き、小さな唇は薔薇色にすっきりとした頬は桜色に染まっていた。 誰もが見蕩れてしまうような、神様が創ったようなお人形のような女の子。 わたしは、ただただ見蕩れてしまった。 するとその女の子は軽やかに、まるで羽根でも生えているかのようにふんわりと、 12・3歳くらいの少年の元に駆けていった。 「お兄ちゃま!」 その女の子が少年に呼びかけた事で、二人が兄妹だという事が解った。 その後、二人がどんな会話をしていたのか記憶にない。 しかし二人がとても仲睦まじく、兄の少年が妹であるあの女の子をとても大事そうに していた事が、強烈に記憶に残った。 本家の集まりから家に帰る車の中、わたしは父さんと母さんにお兄ちゃんが欲しいと 泣いて駄々を捏ねた。 わたしはあの女の子に、憧れていたんだと思う。 あの女の子が羨ましくて、あの女の子になりたくて駄々を捏ねた。 泣きくれるわたしに、父さんと母さんはお手上げだったらしい。 家に着く頃にはわたしも大分泣き止んでいて、夜も遅い事から兄さんとわたしは 早く寝なさいと子供部屋に押し込められた。 しゃくりあげながらも寝ようとしたわたしを、兄さんの小さな掌が止め、 促がされるまま二人して兄さんのベッドに座った。 41 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 38 51 ID OmIerb7I 「夏月は、お兄ちゃんが欲しいの?」 「うん。夏月、お兄ちゃんが欲しいの…」 兄さんに聞かれ、わたしはまた悲しくなった。 父さんも母さんも、お兄ちゃんはあげられないと言っていたのを思い出したからだ。 「ぼくじゃ、ダメ?」 「え?」 「ぼく、夏月のお兄ちゃんなんだよ?」 その時のわたしは、兄さんが言った事がよく解らなかった。 「ぼくと夏月は双子だけど、ぼくの方が先に生まれたから、 ぼくは夏月のお兄ちゃんで、夏月はぼくの妹なんだよ」 「陽太が夏月のお兄ちゃん?」 「そうだよ。だから新しくお兄ちゃんなんて、いらないよ」 「陽太のこと、お兄ちゃんて呼んでいいの?」 「うん! 夏月のお兄ちゃんは、ぼくだけだよ? ぼくの妹も夏月だけだからね」 「うん! 夏月のお兄ちゃんは、お兄ちゃんだけだね!」 こうしてわたしは、兄さんを兄さんと呼ぶようになり、それ以来わたしの中で、 兄さんはもっともっと特別で唯一の存在になった。 「憶えてるよ」 わたしが記憶をなぞり終わると、兄さんもまた思い出していたのか、その分遅れた 返事が優しく降ってきた。 「夏月があんまり泣くから、困ってさ… それで、悔しくなった」 「え? 悔しい?」 意外な兄さんの言葉に、閉じていた目を開いて兄さんを見上げる。 「夏月には僕っていうお兄ちゃんがいるのに、欲しい欲しいって泣いてるから、 夏月が欲しがってる居もしないお兄ちゃんに、嫉妬した」 「…わたしの兄さんは、兄さんだけよ」 兄さんの言葉に呆然としてしまったけれど、咄嗟に口から出た言葉は、 偽らざるわたしの本音だ。 「僕の妹も夏月だけだよ」 あの時の再現のような、言葉遊び。 悪戯っぽく笑う兄さんのその言葉は、揶揄いが含まれているとしても、 わたしを甘く、どこまでも陶酔させる。 「兄さんがいてくれれば、それだけでいい… 兄さん以外、いらない…」 火照る身体の熱を逃がすように、吐いた息と共にそっと呟く。 42 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 39 40 ID OmIerb7I 「珍しいね、夏月がこんなに甘えるなんて」 「ダメ? 兄さんはこういうの嫌?」 兄さんが嫌だったら、もうしない。甘えない。 「ダメじゃない、夏月だったらいいよ。だからそんな顔するなって」 そんな顔ってどんな顔だろう? と思いながらも、起き上がってしまったわたしを、 横になるように促がす兄さんに従って、膝枕に戻った。 「普段こんな風に甘えてくれないから驚いたけど、こういうのもいいね」 「ホント?」 「ホントにホント。夏月はさ、小さい頃からあんまり我侭とか言わないじゃないか。 まあ、父さんも母さんも忙しいからって事もあるんだろうけどさ。 いつも頑張ってるし、僕にだったら、もっと我侭言ってもいいんだよ?」 「兄さん… ありがとう…」 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…! 兄さんが好き、兄さんが好き、兄さんが好き! 誰よりも、兄さんが好き! ピンポ―――ン…… 「あれ? 誰か来たみたいだ。夏月、ちょっと待ってて」 「うん」 来客を告げるチャイムの音に、名残惜しく兄さんの膝の上からどくと、 兄さんは慰める様に、わたしの頭にぽんと手を置きひと撫ですると玄関に向かった。 東尉君かな? あ、でもそれにしては時間が早いか… 勧誘か何かかな? 平日のこんな時間に居た事が、あまりないから解らないなあ… あれ? 兄さん、誰かと話してる? 二人分の足音が、この部屋に向かって来ている。 やっぱり、東尉君だったんだ。今日は学校早く終ったのかなあ? がちゃりとドアが開いて、わたしの愛おしい兄さんが入って来る。 そして… 「夏月、お友達がお見舞いに来てくれたよ。 どうぞ、伊藤さん」 どうして? どうして? ここは安全じゃなかったの? どうして? どうして? 「夏月、具合どお? 心配したんだよぉ」 怖いよ、怖いよ、怖いよ! 昨日の視線よりも、今目の前で笑ってる、好乃の笑顔が、怖い、よ… -続- 43 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/26(月) 17 40 57 ID OmIerb7I 以上、続きます。 1 乙です。 保管庫管理人さん、いつもありがとうございます。お疲れ様です。 数々のレス、ありがとうございました。 44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 18 19 25 ID q39byBT/ 43 GJ! 夏月のデレっぷりと好乃さんの忍び寄る病みが(・∀・)イイ! 45 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/26(月) 21 57 04 ID zyiHHZzN 新スレが立ってるから来てみれば素晴らしい作品が投下されている…。 GJ! 46 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 00 01 54 ID TMZLf/lG おうっいっぱい投下されてる・・・職人さんがたGJです。 前スレ埋めました・・・今回のはさすがに反省・・・ でもちょっとまってほしい。病院編は頑張る気なんです。 「みんな病んでる」 「病んでるけどドジッ子」 の二つを主眼に書いていきます。保管庫の方、前スレ291を「淳、昼休みにて」 として、淳シリーズとしてまとめてください。前スレ 291のときに名前をつけず申し訳ない。 後もう一つネタだけはあるんですがさすがに追いつかない・・・ とりあえず受難書き上げます。 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 12 49 20 ID AIeNLagm 新スレでの連続投下、全ての神々にGJを 46wktkして待ってます 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 13 34 03 ID 7lrNAGRh 「夏月、具合どお? 心配したんだよぉ」 思わず勃起しますた! しかしキモウトはいいねぇ まだ病んでないかわいい状態だけど泥棒猫の攻撃でだんだん病んでくるのかwktk 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 15 17 31 ID aBx8Gk3h ここに投稿しようと思うけど、結局ヤンデレSSと嫉妬SSの違いは何ですか 流血沙汰は必須なのかな・・ 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 15 27 00 ID TflrmxA/ 49 簡単に言えば、嫉妬SSスレは女性同士(単独もか?)のやきもちや嫉妬、 もしくはそれによって起こる修羅場を描く。 ヤンデレSSスレはヒロイン単独でも複数でも成り立つ。 ヒロインが病みつつ、狂うほどに主人公を愛しているのならば。 流血は行動によって起こる結果であって、目的ではない。 よって、必須とは言えない。 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 15 38 35 ID TflrmxA/ ごめん。追加。 嫉妬SSスレ=嫉妬が必須。嫉妬・修羅場に重点が置かれる。 ヤンデレSSスレ=嫉妬が無くてもいい。ヒロインの狂愛に重点が置かれる。 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 16 13 51 ID LfItP5lF 難しいなぁ・・ 狂愛と来たか・・ 難題を抱えて作品を書くのはちょっと困難だぁ 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 16 38 22 ID TiFDd3k+ 深く考えるな 55 『やっちゃいけないこと』をヒロインにさせればいいんだ。 54 名前:53[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 16 39 40 ID TiFDd3k+ 52だ、スマソ 55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 16 45 16 ID ciBdQby7 俺!? ってやりたかっただけ。今は後悔してる。 56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 17 16 56 ID QKGh0bEG 八百屋お七みたいのもヤンデレかね? 57 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 20 17 ID Quf4Ljbq 43 夏月の今後にwktk 勿論好乃さんも好きですよw では上書き投下します。 58 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 21 19 ID Quf4Ljbq 昨日のように、あるいは条件反射のように、加奈の視線を感じた瞬間俺は島村との距離を置いた。 その一瞬の動作だけで俺の息は荒くなる、心臓の鼓動音が聞こえてくる、胸が破裂しそうになる。 加奈の存在が、”いい意味”でも”悪い意味”でも俺の心をかき乱している。 そんな俺の精神状態を覗き込むように加奈は笑顔を崩さないまま、相変わらずの光沢を失い黒々とした目を細めてくる。 「誠人くんのクラスの人に聞いたら”他の人と”どっかに行ったって言ってたから探したんだよ?勝手に行っちゃうなんて意地悪だなぁ」 「悪い加奈…」 「素直でよろしい!」 表面上は何の変哲もないやり取り、いつもと違うところと言えば加奈の目が俺を凝視したまま笑っていないのと、加奈の笑顔が明らかに”貼り付けた”ものだという事だ。 無理に笑顔を取り繕っているのが口元の僅かな痙攣から読み取れる、その動揺した様子が俺の中で一つの確信を生む。 ”加奈が俺と島村の『距離』を見ていた”という確信を。 そう、加奈はいつからかは分からないが少なくとも俺と島村が危うく”行為”に及びそうになったところは見ているはずだ、なのに…妙だ。 加奈は昨日とは違って、偽りの笑顔を通したまま”その事”について一切言及してこないのだ。 何事もなかったかのように、まるで、”自分が見た事”を全否定しその事実を直視しないかの如く。 ”直視しない”と言えばもう一つ加奈には大きな異変があった事にようやく気付いた…加奈の奴、先程俺に話し掛けてきてからずっと島村の事を見てない。 チラ見すらしない、視線は動かず真っ直ぐ俺の事だけを見つめてくる…恰も今この場にいるのは俺と自分だけで、”島村なんていない”と言い聞かせているように。 そんな風に明らかに常軌を逸している加奈が足取り軽そうに、しかし地面をしっかり踏みしめるようにゆっくりと俺の下へと歩み寄ってくる。 「さっ、一緒に帰ろ!今日は誠人くんのお母さんいないからあたしの家に泊まっていかない?」 「ッ!な、何で加奈が俺の母さんの事を知ってるんだよ!?」 「さて何故でしょう?強いて言うなら、”恋人同士だから”かな?フフフ…」 俺は露骨に動揺を示してしまった、それが加奈の怪しい含み笑いを引き起こす原因になってしまうと分かっていながら反応せずにはいられなかった。 加奈の言う通り、母さんは今日何かの会のイベントで一泊の旅行に行っている。 問題はその事を俺は一切口外していないのに何故加奈が知っているのかという事だ…まさか盗撮…って少し冷静になれ。 俺が言わなくたって母さんは加奈の母さんである君代さんに言っているかもしれない、そこを通して加奈に伝わったと考えれば自然じゃないか。 確かではないがそんな事は君代さんに尋ねればすぐ確認出来る、問題はそこじゃない。 こんな単純な事を理解するのにこれ程の時間を有する今の”俺の精神状態こそが”問題なのだ。 ただでさえ叫んで逃げ出したい状況なのに、加奈の巧みな言葉遣いに俺の思考は混乱させられている、正常な判断を下せずにいる。 加奈を”元に戻す”と意気込んでおきながら、ミイラ捕りがミイラになってしまいましたじゃ話にならない。 とにかく今は波を立てない、石橋は渡らない、それを肝に銘じなければ。 加奈が”島村の存在”を直視していないという現状はかなりマズイが、幸い今はそれが非常に望ましい。 加奈が島村への敵意を忘れているのならば”最悪の事態”には発展しない。 このままこの場は潔く去って加奈を落ち着かせてからゆっくり心の緩和を進めて行けば良い。 「あたし、お母さんと最近お菓子作りを始めたから食べさせてあげるよ!」 「是非ともご馳走させて貰うよ」 俺と視線を外さないまま俺との距離を詰め、さしのべてくる加奈の手を掴もうとする。 「人の事無視するなんて、結構な態度ですね」 「はい?」 その手は空を切る、代わりに島村の言葉に踵を返した加奈の背中に触れる。 その背中は少女のものとは思えない程俺には邪悪なまでに巨大に見えた。 島村が…加奈に火を点けてしまった。 59 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 22 21 ID Quf4Ljbq 先程まで俺だけを見つめていた加奈の目が島村へと向けられる、俺の時と違いメラメラと苛立ちが溢れているのが揺れる眼球から見て取れる。 加奈にとって”島村の存在を認める事”と”俺と島村の『行為』を認める事”は同意義だから、動揺するのも頷ける。 何て風に冷静に場を解説している場合じゃない。 「あっ…島村さん、いたんですか?」 「えぇ、あなたがここに来るより前から”ずっと”誠人くんといますよ」 はっきりと加奈は今下唇を噛んだ、その証拠に加奈の下唇から血が滲み出ているのが確認出来る。 滲む血は加奈の島村に対する憎しみを顕著に示している。 それを島村も分かっているからか、分かっていないからかは分からないが、いつものように腕を組み余裕そうに加奈を見下ろしている。 こんな具体的に口で出さず相手の腹を探り心を絞ろうとする女同士の緊迫した状況に、俺は立ち尽くすしかなかった。 自分の無力さの程を思い知らされ欠片程のプライドが切り捨てられてしまう。 「それともう一つ、盗み聞きは人としてどうかと思いますよ?」 「なっ…」 「盗み聞き!?」 思わず叫んでしまった。 加奈の方を向いて更に叫びそうになるのを何とか堪える、加奈が島村の言葉に動揺している。 動揺しているという事は……… 「その様子から見て図星ですね」 その問いの答えを一足先に答える島村。 「そこの壁からあなたの長髪が風になびいているのが見えましたよ?」 島村は加奈が出てきた方向を指差しながら嘲るようにクスクス笑う。 俺は全く気付かなかった、逆の方向を向いていたからな…ってちょっと待てよ。 という事は島村は、加奈が見ている事を”知っていた”上で見せ付けてやるようにしたという事か…。 とんでもない女だ。 島村の理不尽な一方的な攻撃に防戦一方の加奈、目と目の間に皺をつくり渾身の力で島村を睨みつけている。 加奈がここまで怒っているのは初めて…いや、最早”怒っている”とかいう次元の話じゃない。 こんなにいがみ合っている人間同士を俺は昼ドラのドロドロ恋愛劇でしか見た事がない。 「あたしの駄目出しばかりしていますが、島村さんこそどうなんですか?」 「何がですか?」 「あなただって”今朝の騒ぎ”は知っていますよね?”あたしと誠人くんが付き合っている事”知っているんですよね?」 「その発言は盗み聞きしていた事の自白と捉えてよろしいんですね?」 「黙れっ!!!」 長い沈黙がはしった。 今まで一度だって聞いた事のない、こんなに大声を張り上げる加奈を。 既に断崖絶壁に追い詰められたように息苦しくしている、事実今の状況はその通りなのだと思う。 島村が「やれやれ」と呆れた感じで呟きながら手慣れたように眼鏡の位置を直した。 「あたしたちの仲を知っておきながら”邪魔”するなんて、酷過ぎるっ!」 加奈の言葉に余裕さは欠片も感じられない、焦りと緊張で喋り方も思った事をそのまま言っているような感じだ。 「何をそんなにムキになっているんです?別にあなたと誠人くんの関係が強国なものであるなら私の事なんて気にする必要はないはずですよ」 対する島村は俄然冷静な態度を崩さない。 相手の言葉全てに反論出来ると言いたげな自信たっぷりの目が眼鏡越しに光っている。 「あたしたちの仲は絶対にこわれないわよ!ねっ?誠人くん!」 「あぁ!」 突然話を振られた俺は反射的にそう答えてしまった。 まぁそう言うつもりだったから別に問題はないが、自分がここまで緊迫していたという事を再確認し改めて驚いた。 頭の中で必死に二人の一挙一動を整理する俺をよそに、即答した事を満足に思ったのか、加奈は”俺にだけ”純粋に微笑みかけた。 そしてすぐに島村へと視線を戻す。 「ほら!あんたなんかじゃあたしたちの仲は壊せないのよ!」 俺からの援護に心から喜び、束の間の勝機に打ち震える加奈。 しかし、やはり”俺たち”は島村を侮っていた。 「確認を要しなければならない関係なんて、”ない”に等しいですね」 60 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 23 11 ID Quf4Ljbq 多分”俺たち”は同時にキレた。 島村に、”部外者”に自分たちの関係を否定された事にかつてない程に怒りが込み上げた。 本来なら、俺は女である島村であろうと容赦なくその胸倉を掴み叫んでいただろう。 しかし、加奈の素早く且つ不自然な動きに俺は見とれた。 慣れたように胸ポケットから”何か”を取り出そうとしている加奈、そして、それの招待が分かった瞬間… 「誠人くん離してっ!」 俺は加奈の腕を力一杯握り締めた。 痛がっている加奈の様子に心を痛めながらも、俺は改めて加奈の手に握られている”物”が何かを確認し戦慄した。 それは、何の変哲もない”カッター”、刃が出ていない為”今のところ”は殺傷能力ゼロだ。 しかし、親指を数センチ上げるだけでそれは簡単に人を殺める凶器と化す。 無我夢中で俺の腕を振りほどこうとする加奈を何とか押さえ付ける、もし今この手を離したら加奈は一体何をするというのだろうか…考えただけで背筋が凍る。 「こんな奴ッ!あたしたちの邪魔をするこんな人間をかばわないでっ!!!」 「落ち着け加奈!」 俺が加奈を見るとその視線は別の方向、島村の方向を憎々しく見つめていた。 俺もその方向に首を傾げると、俺たちのこんな様子をまるで楽しむように、滑稽に思うように島村はニヤついていた。 その表情を見て理性を失いそうになるのを必死に抑える、今は加奈を何とかしなければならない。 「加奈、このカッターを離すんだ!」 「あたしは誠人くんがいればそれでいいのにっ!なのにこの女はっ!」 「やめろォ!!!」 俺の声が響いた瞬間、加奈が視点が定まらない目をキョロキョロさせながら体だけ俺に向けてきた。 「え?」という間の抜けた声と共にカッターが加奈の手から滑り落ちる。 俺の発した大声によってより一層静けさが強調された体育館裏にカッターの落ちる音が響く。 俺も、島村も、そして、加奈も、呆然とする中最初にこの沈黙を切り裂いたのは、 「あ…あ………あ…」 加奈のうめき声だった。 加奈が吐き気を催したように口に両手を当て、そこから加奈のうめき声が漏れる。 俺だけを見ながらよろよろと後退りする加奈。 「加奈、どこ行く気だ?」 俺への返答は依然変わらないうめき声だけだった。 俺と徐々に距離を置いていく加奈、小刻みに全身を震わせながら、目に涙を溜め何か言いたげな様子だ。 そんな加奈が発した言葉は、思わず意外と思ってしまうものだった。 「………ごめ…んなさ………い…」 絞り出した言葉はかすれていた。 その言葉を言い残すと、加奈は俺に背を向け走り出していった。 「加奈ッ!」 呼び止めたがそんな俺の声を無視して加奈はどんどん先に行ってしまう。 しばらく呆然とした後追い掛けてみたが、加奈が出てきた壁の分かれ道の左右どちらにも加奈の姿は確認出来なかった。 「加奈…」 何度も呟く、そうすれば戻ってきてくれる気がして…。 「誠人くんはあの人のどこが好きなんですかね?」 そんな俺の期待虚しく、背後から聞こえたのは島村の声だった。 その透き通るような声で先程俺たちに”何を”言ったのか思い出して無性に腹が立った。 島村の言葉を無視し、加奈が放置した加奈の鞄を拾い上げると、島村に俺自ら近寄る。 ちょっと勢いをつければすぐに接触してしまう程近寄った、それ程の距離で行ってやらないと気が済まない。 「何か?」と言いたげなとぼけた表情の島村に俺は思い切りその想いをぶつけてやった。 「今度加奈を侮辱するような事言ったら殺すぞ」 自分でも驚いた、まさか俺の口から”殺す”なんて言葉が出るとは。 しかし、俺は軽はずみでそんな事は絶対言わない、だからこれは本心なんだろう。 吐き捨ててやった後はさっさと島村に背を向ける、この女の顔を一秒でも見ているのはご免だった。 「加奈さんを侮辱してやった時のあなたの顔、格好良かったですよ」 61 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 24 10 ID Quf4Ljbq 昨日加奈と抱き合った時のように陽が僅かに覗く、そんな夕方の道を俺は一人で歩いている。 周りには誰もいなく、小鳥のさえずりが聞こえてくる程静かだ。 あましにも静か過ぎて自分の存在が一人浮き、より一層”孤独”である事を思い知らされる。 今までは加奈と一緒にいたから、加奈と一緒に歩いたから、加奈と一緒に笑い合ったから、寂しさなんて感じなかった。 しかし、こうして初めて加奈のいない帰路を踏みしめて俺は孤独感を痛感している。 加奈の存在がこんなにも大切だと分かり切っていた事を再確認する、そして先程自分が加奈にしてしまった事を思い出し拳を握り締めた。 ”あの状況”ではああするしかなかったとはいえ、加奈の気持ちも考慮したもっと上手い対応が出来なかったのかと反省と自問を同時に行う。 加奈は俺が好きなだけだ、ただそれがいき過ぎているだけ…いや行き過ぎるなんてある訳ないかと一人で笑った。 加奈からの愛情なら腹を壊してでも全て頂く、どんなに歪んでいても”加奈からのだから”構わない。 こんなにも好きなのに、何が噛み合わないのだろう…? まぁその答え探しは今度に回そう、今は加奈に謝りたい思いで一杯だった。 きっと家に寄っていったら喜ぶに違いない…俺は”この事態”を楽観視し過ぎていた。 陽はとっくに沈み、街灯が灯り始めた頃、俺はようやく家に着きそうになった。 自分の家と加奈の家と先にどっちに行くか迷いながら向かい合っている二軒を見渡すと、遠くからではっきりしないが人影を発見した。 特に気にはしないつもりだったが、明らかにその人影がこちらの存在に気付くと手を降ってきたのを確認して気が変わった。 少々足早に歩を進めていくと、次第に何か言っている声も聞こえてきた。 その声と、その内容を理解した瞬間、同時にその人影の招待も分かった。 「誠人くーん!」 「君代さん!」 まだ顔ははっきりとしないが、この声で俺を名前で呼ぶのは加奈の母さんである君代さんだけだ。 君代さんとの遭遇で寂しさが紛れたなと安堵していると、君代さんが突然催促し出す。 「誠人くん、早く来てーっ!」 あの穏やかな君代さんが俺を急かすというのは中々ない事だ。 不思議に思い、近付いてみて驚いた、君代さんの顔が困惑と焦りに満ちていたからだ。 「君代さん、どうしたんですか?」 「誠人くん、それが加奈が!加奈がっ!」 鬼気迫る君代さんの表情、それがこの周りで起こっている事態の深刻さを示している。 普段の君代さんからは考えられない程の慌て様に俺にも緊張がはしり、冷や汗が頬につたわった。 「落ち着いて下せず!一体何があったんですか!?」 そう言いながら君代さんの両肩を掴む、自分が思った以上に早口だったのは、俺自信も焦りを隠せないからだ。 さっき君代さんが呼んだ名前…加奈に何が起こったのか、気にならない訳がない。 ただでさえさっきまでなし崩し的に半ば喧嘩別れのようになって加奈を見失ってしまったのだ、責任を感じる。 「加奈が部屋に閉じ篭ったまま出てこないのよ!」 「!」 俺は一瞬にして現実の残酷さを思い知らされた。 俺は考えるよりも先に走り出した、多分本能的な行動だったと思う。 鞄を放り投げて、君代さんが何か言っているのも全て無視して加奈の下へと急いだ。 走りながら後悔や責任や使命感といった様々な感情が俺の中を渦巻く。 どうして”こうなる事”を予期出来なかったのか、思慮の浅い自分をこれでもかという位呪った。 62 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 25 07 ID Quf4Ljbq 今日は朝から”異変”だらけだった、それこそ数え切れない位、日常がねじ曲がる位狂っていた。 そんな限りなく非日常に近い日常に身を置いていたから、感覚が麻痺してしまっていたんだろう。 それが、加奈がさっき小声でうめきながら去っていき”俺と一緒に帰ろうとしない”というのが”おかしい”事だという事に気付かせなくした原因なんだと理解した。 しかし、”感覚が麻痺していた”事だけが今の事態への引き金になった訳ではない、それ以上にもう一つ最大の要因がある。 あの時、加奈がうめきながら俺に何かを絶望したような視線を浴びせてきた時、その目には間違いなく”正気”が宿っていた。 行き過ぎる事のない…まぁ繰り返し言うが”行き過ぎの愛”なんて存在しないが、そんな純粋に人を、俺を愛している時の目だった。 俺に対して”上書き”しようとする時の目じゃない、鮮やかな色で彩られた美しい目をしていた、”だから”だ。 そこだけが俺が微かに記憶の底にある”日常”の風景だったから気付けなかったのだ。 つまり、俺が戻そうとしたのは”狂気に満ちた加奈”であって”正気の加奈”ではない、だからあの時の”正気の加奈”に対して危機感を感じなかったのだ。 そして、ここまでに探り当てたピースを合わせて一つの結論が出た…”加奈は正気と狂気の間にいる”。 正気と狂気が混合しているのだ、この状態の時は非常に危ない。 正気だけなら純粋、狂気だけならそれもまた純粋、しかし”二つ”が混ざったらどうなる? 単純にプラスにマイナスを乗法して”マイナス”という訳にはいかないだろう。 ”相反する二つの明確な目的”が衝突した後の結末………これはあくまで推測でしかないが、”本来の目的”を見失う事になりかねないと思う。 具体的に何が起こるのかは想像すら出来ないが、少なくとも”加奈の幸せ”が実現するとは思えない。 それだけは防がなければ、加奈が誤った判断で自ら”幸せの可能性”を潰してしまったら何もかもが水泡にきしてしまう。 何が起こるか分からないのに、目処さえつかない未来の未然防止の為だけに俺は加奈の下へと急ぐ。 恐ろしい程思考が働く事に僅かに自分も”おかしく”なったなと失笑しながらひたすら走った。 許可もなく加奈の家のドアを乱暴に開け、靴を乱雑に玄関に放り出した。 昨日来たのにまるで別世界かのように暗い家屋内を徘徊し、加奈の部屋へと通じる階段を駆け上がる。 焦れば焦る程息が絶え絶えになり、十数段上の二階が遥か彼方に感じる。 焦れったくなる中二階へと到達し、すぐ横にある加奈の部屋のドアを躊躇なく開けようとする。 しかし当然のようにそこには俺の侵入を拒む鍵がかかっている 「加奈っ、俺だ!」 焦りが募り乱暴に部屋のドアを叩く、しかし返事は返ってこない。 その事が俺の心を引き裂く、”加奈が俺を拒んでいる”ような気がして。 しかし今の俺はかなり行動的になっていて、傷付いている暇なんてないと割り切りすぐさまドアに体ごとぶち当たる。 さすがに一回じゃ開かないが高校男子の力だ、徐々に感触を掴みかけたと思った瞬間固く閉ざされたドアがとうとう開いた…そして、”その先”の光景を見て、初めて自分の加奈だけの為の躊躇ない行動に自画自賛したくなった。 「加奈ァー!」 俺は幽閉されたように黙りこくって”ある事”をしようとしていた加奈の腕を掴んだ。 その衝撃で、一糸纏わない加奈の腕から鋭く輝くカッターが”あの時”のように床に落ちた。 落ちたカッターを瞬時に拾い上げ、刃をしまうと自らの懐にしまう。 一時的な危機回避に一瞬の安息を得る、そしてその部屋の有り様を見て動悸が激しくなるのを感じた。 昨日見た部屋とは比べようもない、本当に同じ場所なのか疑いたくなる。 63 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 25 51 ID Quf4Ljbq 規則正しく並べられた書物は殆どが本棚から投げ出され床に散乱している、水玉の布団は無惨に引き裂かれ、机の棚は何かを漁られたかのように全開になっていた。 そして最も驚くべき事は加奈の制服を俺が踏んでいるという事…そう、加奈は服を一枚も着ていないのだ。 もしこんな荒れ果てた場でなければ、小さな膨らみの先にある更に小さな山を思わず見てしまうところだった。 まだまだ幼い体に目を取られそうになるところで何とか煩悩を吹き払い、加奈の目を見る。 加奈も俺を見つめている、いきなりの来訪者に驚いている様子だ。 という事は俺が部屋に入ってきたところで俺の存在に気付いた、つまり俺が部屋を破ろうとしていた時には”加奈にはその音が聞こえていなかった”、それ程なまでに”一つの事”に熱中していたという事に恐怖を覚えながら加奈に問い掛ける。 「加奈、今何しようとしていた?」 「何って、”いらない物”を捨てようとしていたんだよ」 加奈は微笑みながら自分の左腕を指差した。 そう、俺が部屋に入った時見た光景とは…加奈が自らの左腕にカッターを添えているというシーンだった。 今思い出すと身震いがした。 俺を見上げ微笑む加奈の笑顔が、”俺の為に”必死に頑張って作っているものだという事に何となく気付き胸が苦しくなる。 「ごめんね…誠人くん」 「何で謝るんだよ?」 「だって、あたしが”欲張り”だから」 加奈の笑顔がみるみる内に崩れていく、その事に罪悪感を感じつつ、加奈の言っている意味の解読に俺は必死になっていた。 加奈が謝っているのは島村にカッターをつきつけた事か? しかしそれは俺に謝るべき事じゃない…考える俺をよそに、加奈は俺を見つめ続けている、その目は”正気”、しかししようとしていた事は”狂気”、俺の恐れた事態にやはりなっていた。 「あたし…”あの時”…誠人くんがあたしに怒鳴ってきた時分からなかったんだ…」 「分からないって、一体何がだよ?」 「島村さんには怒らないのに”あたしにだけ”怒った理由…」 その言葉が深く、深く俺の心に突き刺さる。 加奈に言われて思い出した、俺は”加奈にしか”怒らなかった、いや正確には加奈はそう思っている。 島村の侮辱的な発言に俺はキレかけた、でも加奈も同時にキレたからそれを防ぐ為に俺は加奈に”自分が島村に怒っている”事を見せられなかった。 加奈に”あんな顔”をさせたのは俺のせいじゃないかと理解し、この場から消えたくなった。 何も言えない俺をよそに、加奈は続ける。 「でも部屋で考えて分かったんだ、あたしが”欲張り”だからいけなかったんだって。”誠人くんがいてくれれば”他に何もいらないとか言っておきながら、”誠人くんを独占する権利”まで欲していたあたしが悪かったんだよ…」 加奈が言っているのはきっと今朝の”あの紙”の事だと思った。 あれは加奈が俺を独占しようとした心の象徴だから。 「あたし”誠人くん以外のものは何もいらない”、本も服も友達も何もいらない!だから色々と”捨てた”けどまだ足りない気がして…」 ここまできてようやくこの部屋の有り様と加奈の姿の理由を理解した。 「だから”あたし自身”も切り捨てようと思ったの…誠人くんがいればあたしは…誠人くんがいないと………”生きていけないよ”!何を捨てても構わない、だから誠人くんだけにはどうしてもいて欲しいの!好きなの!好きなんだよ!」 目の前で必死に涙を堪えている加奈を前に、俺は抱き締めたい衝撃を抑えきれなかった。 裸の加奈の小さな体を力一杯抱き締める、その体は柔らかくて、良い匂いがして、愛しくて………ここまで自分を愛している少女を危うく自滅させてしまうところだった自分自身への怒りで頭が爆発しそうになった。 それを堪え、加奈に優しく囁きかける。 「ごめん…こんなになるまで………俺が…」 俺の謝罪に、俺の胸に顔を埋めていた加奈が瞬時に顔を上げる。 その顔は嬉しそうな悲しそうな…”人間味溢れる”ものだった。 「謝らないで!あたしが…」 「もう…思い詰めないでくれ…!」 更に加奈を抱く力を強くし、加奈の言葉を封じる。 驚きながらも加奈は、かつてない程安らいでいる表情をしていた。 そんな加奈に俺は言い放った。 「加奈、”今日母さんいないから”、俺ん家来ないか?」 俺はどういうつもりで言っているのだろうか…分からない。 しかし少なくとも… 「うん…」 一瞬驚きながらも加奈の面した小顔でこくんと頷いた様子を、俺は”了承”と受け取った。 64 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 27 58 ID Quf4Ljbq 投下終了です。 とりあえず次回で最後になると思います。 最後なんでもう一度だけ選択肢つける予定です、では。 65 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/02/27(火) 18 58 47 ID TiFDd3k+ GJ!…って、えー!? 最後で選択肢ですか!? つまりは三択で、 1:世間一般でいうハッピーエンド 2:このスレ的ハッピーエンド(心中) 3:ほのぼの純愛エンド(島村さんの復讐) か!? 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 19 31 49 ID LYIjrxYL 64 GJ!とうとう自分さえも壊し始めた加奈可愛いよ加奈 二人がどんな結末を迎えるのか…… しかし島村さんの反撃も期待している俺ガイルw 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 20 55 45 ID YYAdv7RY こんなにワクワクするなんて何年ぶりだろ・・・・それはそうとGJ! 68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 21 10 50 ID C2CowERc GJ!もう終りか…って選択肢アル━━(゚∀゚)━━ヨ! 69 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/27(火) 22 02 33 ID PKuCcyJr GJ!!って微妙に誠人も狂ってきてね? 70 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/27(火) 23 59 55 ID ZCsRHVK/ 加奈と誠人には幸せになってほしいです。島村はどーでもいい。 71 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 00 34 34 ID xK/FxZZe 以前描いた絵を使ってちょっと実験 http //p.pita.st/?m=rprso3ha VGA画像を携帯でうpして貼り付け。携帯では見れないサイズになってるんだが、PCだとどうなって見えるか教えてくれまいか。 72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 00 35 10 ID JAnAE6a4 ぐっじょぶ(*´ρ`*) 個人的には、島村さんの恐ろしさをじっくりと堪能したいです。 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 00 36 32 ID JAnAE6a4 71 >作成者様がPCからの観覧を拒否しております。 >お手数ですがお手持ちの携帯端末でアクセスしてください。 こうなっちゃってて見れませんOTL 74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 00 45 49 ID ZQkXrt0l 71 そういうロダに貼るとだいたい小さいサイズに変換される 75 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 06 06 ID xK/FxZZe 重ね重ねすまない こっちだとどうだろう? http //imepita.jp/20070228/033710 76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 08 07 ID QyMZTwWI 殺人だとかそういう血生臭いのもいいけど、別の方向に女の子が壊れていくのもよいかな 精神崩壊とか幼児化とか自傷とか 77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 08 27 ID GBft8iOs 75 PCからだと大きく見える 78 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 11 35 ID xK/FxZZe 77 おk。分かったありがとう。どうやら今まで使ってたので良かったらしい。 んじゃ次以降はVGAで画像うPします。 79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 48 29 ID GBft8iOs 短編投下します 80 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 49 30 ID GBft8iOs 1851年現在、ユーリ・ハルフォードについて詳しく知る人物は、実のところただの三人しか いなかった。 即ち―― 彼の父、モーフィン・ハルフォード。 彼の母、アリシア・ハルフォード。 そして家事使用人のキャロルの三人だ。 ハルフォード家は大きくもなく小さくもなかった。土地と、金と、権力と。必要なものは必 要なだけ持っていた。徐々に没落するものが目立ち始めた時期において、むしろ淡々と続くハ ルフォード家は安定していたといってもいいのかもしれない。モーフィンは偏屈な人間で、偏 屈がゆえに古きも新しきも嫌っていた。そんな彼だからこそ、時代の流れについていけたとい うのは皮肉としかいいようがないのだろう。 モーフィンはメイドたちから陰口を叩かれようが、執事たちから疎まれようが一切気にしな かった。それどころか、自身の妻が不義を働いていることを知りながら、放任している節さえ あった。彼が何を思っていたのかは、彼自身しか知りえないし――ひょっとしたら、彼すらも 自身のことをよく分かっていなかったのかもしれない。 が、それらは全て詮索に過ぎない。この物語の主人公は、彼のたった一人の子ども――ユー リなのだから。 ユーリ・ハルフォードについて知るのは、たったの、三人だけだ。 なぜならば――妻にも使用人にも何一つ命令しなかったモーフィンが、ただ一人だけ命令に よって縛ったのがユーリなのだから。自身の子供に対して、モーフィンは硬く命じた。 部屋から出るな、と。 彼が家族に対して望んだのは、それだけだった。 望んだのはそれだけで――それが故に、広い部屋から一歩たりとも出ることなくユーリは育 ったのだった。部屋を訪れるのは、父と、母と、専属メイドのキャロルのみ。育つにつれてま ず父が寄り付かなくなり、それから母が遠退いた。九つを迎えるころには、ユーリの元に訪れ るのはキャロルだけになった。 閉ざされたユーリの世界にいるのは――キャロルだけだった。 81 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 50 02 ID GBft8iOs 「ユーリ様、失礼します」 いつもと寸分変わらぬ時間に、ノックと共に木製の配膳台を押したキャロルがやってくる。 窓の外は昼間だというのに薄暗い。やむことのない雨が、雨樋にぶつかっては垂れていった。 分厚い灰色雲に切れ目はなく、どんよりと暗い空はどこまでも続いていた。 晴れる気配のない、陰鬱な天気だった。 「…………」 天蓋つきのベッドに横たわったまま、ユーリはその空を見ていた。雨の降り落ちる灰色の 空。見ても面白いものは何もないだろうに、それ以外に見るものはないかのように、ただ空 だけを見ている。部屋へと入ってきたキャロルを見向きもしない。 視線の先にあるのは、雨の空。 九年間そうしてきたように――じっと、窓の外だけを見ている。 鳥の飛ばない、雨の空を。 「お食事をお持ちしました」 配膳台を部屋の中にいれ、キャロルはきちんと振り返って扉を閉めた。丁寧に丁寧に閉め られた扉が、それでもぎぃ、と幽かに音を立てた。雨で木が軋んでいるのかもしれない。部 屋よりも廊下の方が壁が薄いのか、雨の音が強く聞こえた。 扉が閉まりきると同時に、雨音が僅かに薄まった。 部屋の中にはユーリとキャロルしかいない。二人が何も喋らない以上、そこにはただ沈黙 があるのみだ。その沈黙を蝕むように、雨音が忍び寄ってくる。部屋の中に雨が降っている かのように錯覚してしまう。 それでも、ユーリは雨が好きだった。雨の音が好きだった。 『外』の音を、全て洗い流してくれるから。 世界にはこの部屋しかないように思えるから――ユーリは、雨音が好きだった。 「…………、」 音のないため息を吐く。何かに疲れているわけでも何かに呆れているわけでもない。ごく 自然に、癖のように吐息は漏れた。 しいて言うのならば――生きるのに疲れているのかもしれない。 音もなく絨毯の上を配膳台が進む。ユーリはようやく気だるそうな仕草で振り返った。ネ グリジェのような薄く布を重ねた黒服が、ベッドの上でかすかに衣擦れの音を立てる。生ま れてから一度もきったことのない黄金の髪が、白い毛布の上を滑る。 振り返った先にいるのは、配膳台を運ぶキャロルだ。まだ若い、ぎりぎり少女と呼んでも 差し支えない顔立ち。短く切った黒髪は両脇に撥ね、ヘッドレスでまとめてある。フリルの 少なく裾の長い、観賞よりは実用を主としたメイド服。絹の手袋を嵌めた手で、配膳台をベ ッドの脇まで運ぶ。 82 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 51 00 ID GBft8iOs 「どうぞ」 無表情のままに、キャロルは台の上に食事の用意を済ませる。その様を、ユーリはあくま でもベッドに横になったまま、気垂い眼差しで見つめている。鎖骨がはっきりと見えるほど に痩せているのは、満足に食事を取らしてもらえないからではなく――満足に食事を取る気 がないからだ。 ゆっくりと朽ちていくことを選ぶように、ユーリは、積極的に生きようとはしない。 「……おなか、すいてない」 いつものように、ユーリは食事を拒否した。身体を起こすことさえしない。冷めた目で、 冷めた料理を見遣るだけだ。 「困ります」 いつものように、キャロルは率直に答えた。眉一つ動かすことはない。下腹の前で両手を 揃え、礼儀よく立ち尽くしている。 どこまでも――いつもと変わらないやり取りだ。 「…………」 ユーリは長い睫を伏せる。頭に浮かぶのは、『誰が困るのだろう』という問いだ。父が困 るのか。母が困るのか。それとも、キャロルが困るのだろうか。幾度となく疑問に思っても、 その問いが実際に口から出ることはなかった。 そう、とだけ端的に答えて、ユーリはようやく身を起こす。ベッドの上をもぞもぞと動き、 膝から下だけをベッドから下ろした。身を起こしているにも関わらず、毛布の上に髪が届く。 服の乱れを直そうともせずに、ユーリはキャロルを見上げた。 「食べさせて」 「――はい、ユーリ様」 彫像のように立ち尽くしていたキャロルは、ユーリの一言で動き出した。配膳台の二段目 から銀器を取り出す。ナイフ、フォーク、スプーン、それぞれが数種類ずつ。それらを全て 決められた手順通りに並べ、外側から使用していく。決して手を使おうとはしない。パンす らもナイフで切り、ユーリの口元へと運ぶ。 「ん」 食べる方であるユーリもまた、一切動こうとしなかった。口を開けて、閉じるだけ。身を 乗り出そうともしない。餌を待つ雛鳥のように口を開け――開いた口にキャロルが銀器をそ っと差し込み、口を閉じる。その際にも会話は一切ない。無言のまま食事はつつがなく進み、 時折かちゃ、と銀器と皿が触れ合う音だけが響く。 半分ほど食べた所で、 「もう、いい」 とユーリが言い捨てた。初めからそれを知っていたかのように、滞ることなくキャロルは 銀器を片付ける。もう食べないんですか、とも、もう少し食べないんですか、とも言わない。 無表情のままに、ユーリの言うことをきくだけだ。 拒否も、承諾もない。 それが――全てだと、キャロルの態度が物語る。 83 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 51 33 ID GBft8iOs 「歯、みがいて」 「はい」 頷き、キャロルは配膳台の横をすり抜け、ユーリの前に膝立ちになる。ベッドに座るユーリ と、床に膝立ちになるキャロルの目の高さが同一になる。ユーリの両脚の間を割って入るよう に、キャロルは身体を寄せた。近寄る身体を、ユーリは手を伸ばして受け止める。キャロルの 脇の下に手を回し、細い腕で抱き寄せる。 倒れないようにベッドに手を置き、キャロルはユーリへと身を寄せて――そのまま唇を重ね た。粘液の触れ合う音が雨音に混じる。紅もひいていないのに、薄紅色に染まる唇が、キャロ ルのそれに覆われる。 ユーリは引かない。目を閉じることもすらしない。睫の触れそうなほどに間近にあるキャロ ルの目を、じっと、じっと見つめている。 目を逸らすように――視線から逃げるように――キャロルが瞼を閉じた。舌先で唇を押し分 け、ユーリの口内へと舌を侵入る。唾液を帯びた舌が、小さなユーリの口内を蛇のようにのた うつ。 舌先が求めるのはユーリの舌ではない。並びのいい、白く耀くユーリの歯だ。歯茎の奥から なぞるようにして舐め上げる。食事でついた汚れを、キャロルは丹念に拭っていく。愛撫です らない、ただの日常行為。 ユーリは冷めた目で、感慨なくその行為を見つめている。自身の口内を蹂躙されても眉一つ 動かさない。ずっと続けてきた行為を、ただあるがままに受け止めている。 退屈交じりに、ユーリは舌を動かした。歯を舐めるキャロルの舌を、自身の舌先で軽くつつ く。 「、んん……」 微かな、けれど確かな反応があった。抱きしめていたキャロルの身体がわずかに震える。無 表情であることに変わりはない。けれど、かすかに頬が紅潮しはじめていた。 これからの行為を、楽しみに待つかのように。 「――――」 その様を、瞼を閉じることなく見つめながら、ユーリはさらに舌を動かした。『歯を磨く』 という仕事をこなそうとするキャロルをからかうように、ユーリの舌先がつん、つん、とつつ いていく。舌を絡めては仕事にならないと思っているのか、キャロルはそれに抗うこともでき ず、なすがままに受け入れる。 「う……、ん、ぁ……」 唇の端から押し切れない声が漏れる。キャロルは舌を絡ませまいとしているのに、ユーリの 舌はなおも大胆に絡んでくる。それから逃れ歯をなぞろうとするものの、その逃げる動きのせ いで舌同士がこすれあい、雨のような水音をたてる。ぺちゃり、ぴちゃりと口から唾液が泡立 つ音が耳に響く。一筋の唾液が、糸を引いてベッドの上へと落ちた。 84 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 52 58 ID GBft8iOs 「ユ、ユーリさま……」 口を離したとき、キャロルの瞳はこれ以上なく潤んでいた。毎日毎日、一日三回これが行わ れているのだ。パブロフの犬のように、条件反射を仕込まれてもおかしくはない。それでも無 表情たらんとするのは、彼女が、自身はメイドであると心がけているからなのだろう。 そのことに対して、ユーリはいつも何も思わなかった。 手を伸ばせばキャロルがそこにいる。呼べばいつでもくる。それで十分だった。 けれど――この日は、違った。 常ならばすぐに離す手を、ユーリは離さなかった。抱きしめたまま、キャロルの身体を離そ うとしなかった。 「……ユーリ様?」 そのことを怪訝に思ったのか――表情には出さないままに――キャロルが首を傾げる。それ でもユーリはキャロルを話さない。 手を伸ばせば届く。 呼べば来る。 それだけでは嫌だと、この日、初めてユーリは思ったのだ。手を伸ばさなくても触れ合って いたいし、呼ばなくてもずっといてほしいと、そう思ったのだ。 いや。 ずっと――思っていたのだ。この日、初めてそれを実行しただけで。 「ねぇ、キャロル?」 抱きしめたまま、間近で瞳をのぞき込みながら、ユーリは言う。教会の鈴のように高い声。 雨音に満ちた部屋の中に、その声は静かに響き通る。 いつもと違う声色に、キャロルの顔がこわばった。 数年間、ずっと『いつも』を続けてきた。それが今、ゆっくりと、音を立てて崩れようとし ていた。 「キャロルは――」 キャロルと自身の唾液に塗れて光る唇で、ユーリは言う。 「――ボクのものだよね」 言って。 「あ、――」 ユーリは、抱きしめていたキャロルの身体を引き寄せるようにして身体を後ろに倒した。捕 まれたままのキャロルの口から声が漏れ、そのままベッドになだれ込む。 気付けば。 薄布一枚を着る主人を――メイドが押し倒すような、図になっていた。 実質は逆だった。下に組み伏せられているユーリが、組み伏せているキャロルを支配してい る。下から覗き上げる瞳に見竦められて、キャロルは何もいえない。 ユーリはそっと、キャロルの片手を上から握る。そのままそっと、スカートの中へと誘導さ せる。スカートの下に、何もはいていないユーリの股間に、キャロルの手が添えられる。 そこにある、幼くしてそそり立ったものを、キャロルに握らせて。 「ボクだけのものに、なってくれる?」 微笑みと共に、そういった。 85 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 53 38 ID GBft8iOs 「…………」 キャロルは答えない。沈黙するキャロルの手は、それでもユーリからは離れない。それを確 認して、キャロルの手を誘導したユーリの手が、ゆっくりと上へとあがっていく。キャロルの 手を伝うようにして上へ昇り――メイド服のスカートの中へと侵入りこむ。丈の長いドロワー ズは、布の上からでも分かるくらいにぐっしょりと濡れていた。 汗――ではない。 雨、でもないだろう。 濡れていることを確認して、ユーリは少女のように微笑んだ。ゴムを押し分けてドロワーズ の中へと手を入れ、濡れた秘所をユーリは指先でなぞる。組み伏せている側の身体が頼りなげ に震える。 満足げに笑って、ユーリは言う。 「嫌なら、やめる?」 笑みの混じる問いかけに、キャロルは誰からも虚勢と分かる無表情を意地したままに――首 を、横に振った。 「そう」 答えて。 ユーリは、中指を――思い切り、差し込んだ。 「――――――ぅあ!!」 無表情を割るようにして声が出た。嬌声よりも、悲鳴に近い声。九つの細く短い指とはいえ、 何の前触れもなく、勢いに任せて差し込まれたのだ。十分に濡れていたから痛みはないとはい え――衝撃だけはあますことなく伝わっていた。 身体を支えていた手から、力が抜ける。 がくがくと震えながら、キャロルの身体がユーリに折り重なる。それでもユーリは指をひき 引き抜かない。第二間接まで差しこみ、先でぐりぐりと肉を押し分けながら、ユーリは言う。 「ね、キャロル。ボクだけのものに、なってくれる? 答えてよ」 「こ、こたえ、答えます、から――」 「早く」 ぐい、と一際強く指が動かされる。ひぁ、とキャロルの口から吐息が漏れ、腰ががくがくと 震えた。まるで押し倒して腰を突き入れているように見えて、ユーリはくすりと笑ってしまう。 のしかかるキャロルの体温を感じる。 「答えて、ね?」 指を止めて、ユーリは問う。 キャロルは、露に濡れる瞳で、ユーリの瞳を覗き込んで。 「はい――ご主人様」 そう、頷いた。 この日、初めて――ユーリはキャロルを抱いた。 十歳の、誕生日だった。 86 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 54 39 ID GBft8iOs 夜になっても雨はやむことはなく、むしろ一層その強さを増していた。遠くで時折雷が落ち、部屋の中を轟音と共に白く染めた。 だから、気付かなかった。 ノックの音にも、扉が開く音にも――ユーリは気付かなかった。 気付いたのは、「ご主人様」とキャロルが声をかけてからだった。 「キャロル――」 微かに喜びに染まる声と共に、ユーリは振り返る。 そこに、キャロルはいた。 開いた扉の向こうに、キャロルは、いた。薄明かりの中、キャロルは、立っていた。 その姿を見て――ユーリは、言葉を失う。 言葉を失うユーリの元へと、キャロルは一歩、また一歩と近寄る。ベッドの脇まで辿りつき、ようやくその脚が止まった。 ユーリは、言葉もなくキャロルを見上げる。 キャロルは、言葉もなくユーリを見つめる。 見つめて、キャロルは言う。 「これで、貴方『だけ』の、キャロルです。貴方『だけ』が――私の主人です」 近くに雷が落ちる。轟音と共に、白光が部屋の中を満ちる。 雷に照らし出されたキャロルのメイド服は――返り血で真っ赤に染まっていて。 この日、初めて――キャロルは、その無表情を崩して、ユーリに微笑みかけていた。 幸せそうな、笑みだった。 (了) 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 01 56 07 ID GBft8iOs メイドを書きたいと思って短編を書きなぐったら長編の一部みたいになってしまった 精進しないとなあ…… 56 八百屋お七や「弔問客を待つ未亡人」もヤンデレだと思う 88 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 02 26 00 ID xK/FxZZe 早速一枚 神無佐奈/虐げられるモノ http //imepita.jp/20070228/084180 ぶっちゃけると佐奈さんが一番好き。 86 GJ!読み終わってからお茶会の人だと気付きました。 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 02 57 33 ID 6f+bLbU7 86 88 お二方ともGJ! つか確かに佐奈さん顔は幼いわw 90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 08 48 46 ID EiPoDCFh 86GJ! 短篇もいいですね。でも二人のその後も読みたくなってしまう 88ママン可愛いよママン(*´Д`)ハァハァ 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 13 32 20 ID sT/DhgTR 非常に読みやすかった 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 18 29 22 ID Gep1iBdr 88 こらまたプリチーなママン。そしておっぱいおっぱい。 ぶっちゃけ自分がヤンデレ化して旦那さん取り戻してほしいが、 そんなキャラには見えないよなぁ・・・w 93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 22 11 17 ID 9Dpto7j5 88 ママン可愛いよ(*´д`*) 94 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 33 58 ID 4cDItwUT では投下致します 95 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 37 22 ID 4cDItwUT 目が覚めると古ぼけた屋内の中に僕はいた。 中古のアパートで建物の老朽化があちこちに目立ち、自分が住んでいる家とは全然違う。 田舎に帰った頃に感じられる懐かしいの樹木の匂いがする。余程、このアパートが建築されてから随分の歳月が経っているのであろう。 それはともかく、僕は両足両腕をしっかりと縄で縛られていた。 いかにも、僕は一体どこの誰かわからない人間に拉致か誘拐をされてしまったのだろうか? 恐らく、後者だろう。こんな高校生になったばかりのガキを拉致する変態よりも、誘拐して多額の金を両親に請求する誘拐犯の方が この不景気の世の中では当たり前だと思ったのだ。 狭い家に閉じこめられているが、犯人らしき姿はどこにも見当らない。両親に多額の身の代金を請求している最中だろうか。 見張りも置いていないし、単独犯による犯行なのだろうか? 僕は冷静に物事を考えていた。 今の状況に不安や怯えなど感じないと言えば嘘になるが、誘拐されたことを僕にとってはいい機会だと思っていた。 両親同士は不仲であり、父と母は互いに口を合わせず、顔を合わせない日々が長い間ずっと続いていたからだ。 そんな間に生まれた息子は可愛いはずもなくて、愛情を注ぐどころか、名前さえ呼んでもらった記憶もなかった。 常に放任されて、自分はただ家族の中で孤独を背負って生きていたのだ。 もし、誘拐されたことによって僕の事を想っていてくれるなら。助けだそうと身の代金を払うか、 それなりの行動を表に出してくれるはずであった。だから、今だけは誘拐犯に礼を述べよう。ありがとうと。 意識を取り戻してから、しばらくすると。玄関のドアが開く音が確かに聞こえてきた。 僕を誘拐した犯人が襖で塞がれた間を躊躇なく開けた。 「ただいま……」 「あっ……」 僕は自分が予想していた事が裏切れて茫然としていた。誘拐犯だと思っていた犯人は、若い女性であった。 黒い髪を長く伸ばしすぎて、陰気な印象を感じさせる。その白い肌は陽に焼けたこともなく、容貌は端正に整っていて美人だと言ってもいい。 ただ、彼女を包み込む暗い何かが全てを台無しにして、近寄りがたいオーラーを全身に発していた。 その彼女はスーパーの袋を片手に持って、僕の方を嬉しそうに見つめていた。 「えへへ……今日から私は一人じゃあないんだね」 その女はスーパーの袋をその場に置くと縄で縛られている僕の体を抱き締めた。 腕に強い力を込めながら、彼女の体は震えていた。温もりを求めるように、僕の体が望むように。 彼女は僕に何かを求めていたが、そんなことは知ったことじゃなかった。 誘拐犯だと思っていたが、実は全然違うようだ。これは誘拐ではなくて、拉致だったのだ。 「き、君の名前はなんていうの?」 僕の顔を頬で擦り合いながら、首に腕を回した彼女が優しく微笑んで聞いてきた。 教えてやる義理もなかったが、今の自分に陥っている状況を理解していると彼女を邪険するしかなかった。 「僕は河野京介(こうの きょうすけ)って言います」 礼儀正しく僕は拉致した彼女に挑むように刺々しく言ってやった。 気を悪くした様子が見えない彼女は僕の頭を撫でながら……可愛らしく媚びるように言った。 「お姉ちゃんの名前はね……。須藤 英津子(すどう えつこ)って言うんだよ。京介君。これから、ずっと私と一緒に暮らすんだよ。よろしくね!!」 僕は全身に悪寒が走って行く。余りにも居心地の悪さに抱き締められているだけでこの場所から逃げ出したくなった。 年上の女性が舌足らずの口調で甘えてくる光景は年下の僕にとっては悪夢に近い。 まだ、これが同世代の女の子なら頬を赤面させて照れているだけで済むのだが。彼女はちょっとだけ痛い。 96 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 40 31 ID 4cDItwUT 「お姉ちゃんねぇ……ずっと一人で寂しかった。私は孤児院で育ったからお父さんもお母さんもいなくて……孤独だったの。 こんな暗い性格だったから親友と呼べる人もいなかった。孤児院を出てから社会人になっても、私は一人だった。 でもね、会社の仕事の帰りに一人で歩いている寂しそうな男の子を見つけたの。私と同じ、温もりに餓えている京介君を」 「だから、僕を拉致してきたというのか?」 だんだんと意識を失う前の記憶が戻ってきた。そう、僕は拉致される当日はいつものように友人の家で陽が沈むまで遊びまくっていた。 それは僕にとっては日常茶飯事であり、あの家に戻りたくないという意志の表れであった。 その帰り道に僕の背後を歩く足音をはっきりと聞こえていた。そして、僕は……誰かに頭を何かで殴られた。 「うん。そうだよ」 焦点の合わない虚ろな瞳で英津子さんは僕に微笑する。 「夕食のおかずにしようとした大根で京介君の頭をぽかんと殴ったんだよ。 幸い、私の家から近かったことだったし。私の家で監禁して調教すれば私のモノになってくれるはずだから。 だから、こうやって縄で両手両足を縛っているんだよ」 殴った凶器は大根だったんですか……と僕は口から空気の読めない言葉を溢れだしそうになったのを必死に留めた。 ただ、拉致を躊躇なく実行した英津子さんは狂ってる。 更に僕を監禁して調教するという言葉にさっきとは違う恐怖を覚えた。 自分の心の隙間を埋めるために同じ空気を持っている僕を利用する。僕の都合を考えずにだ……。 「う、嘘でしょう……本当の誘拐犯なんでしょう?」 「どうして、京介君を誘拐しなきゃいけないのかな。身の代金を要求する金額を貰ったとしても、 私の暗闇と底無しの絶望から解放されるはずがない。 独りぼっちの恐怖に打ち勝つことができないよ。でも、京介君が傍に居てくれるなら。私は救われるんだよ」 「僕は……帰りたい。昨日まであった僕の居場所に」 確かに両親の仲は不仲で僕の居場所なんて存在していないかもしれない。 でも、僕の家以外の居場所はあったんだ。学校に通えば、心を許せる友人たちが居る。 笑い合ったり、喧嘩したりといろいろ友情を深め合った仲間たちがいる。 英津子さんとは異なるのは僕にはまだ救われるモノがあるからだ。 それと反対の位置にいる英津子さんが居る場所は、完全なる破滅。 独りぼっちの恐怖に負けて、孤独の辛さに我慢できずに手を出しては行けない禁断の果実を手にしてしまった。 それは、犯罪という甘い誘惑だ。 一時の温もりが欲しかったために英津子さんは犯罪に手を染めてしまったのだ。 「だ、ダメっっ!! 京介君はお姉ちゃんとずっと一緒にいるんだよ。もし、京介君がここを出て行くと言うなら……私は死ぬんだからっっ!!」 抱き締めていた僕の体から離れると台所から鋭利な刃物を取り出した。 それを英津子さんは自分の首に当てていた。少し力を入れているのか、血の雫が首筋を伝ってぽつりと零れ落ちて行く。 「あっつははっは……京介君京介君京介君っっっ!!」 僕は弱かった。こんな電波女を突き放す言葉を言えば、勝手に自滅して死ぬかもしれない。 そうすれば、僕は助かって元の居場所に帰れるはずだった。 でも、一人の女性の追い詰めようとするのは間接的に僕は殺人を犯したことになる。 僕のせいで誰かが死ぬのは到底耐え切れるものじゃなかった。 抗うこともできずに、僕は全面降伏するしかなかった。 「ご、ごめんなさい。僕が悪かったです。だ、だ、だから、死ぬなんて言わないでください」 「き、京介君っっっ!!」 凶器を力なく落として、泣きながら英津子さんは再び僕の体にしがみつく。身動きできない僕は彼女の温もりを感じていた……。 抜け出すことができない狂気に絶望することしかできなかった。 これが、僕を拉致した電波女と全てを失った僕との奇妙な共同生活の始まりであった。 97 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 43 39 ID 4cDItwUT ヤンデレスレには初めて投稿致します。どうか、よろしくお願いしますね。 短編で全3話の予定です。 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 46 06 ID 5rP1JExH 97 トライデント神キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!! いきなりの監禁スタートテラGJ! 99 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 57 39 ID EiPoDCFh GJ! てか大根で拉致かよ!w これからにwktk! 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 23 59 47 ID IVbMFwF6 一応、有名人なのか? 俺は新たな新人がやってきたぐらいにしか思ってないが 作品の内容は 監禁から始まるヤンデレ・・イイw 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 00 22 57 ID 3tDAV0ge おお、このスレの趣旨をまさに具現化している内容! 続きが激しく気になりますな。 102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 01 18 41 ID pNN+HnOF 大根はヒロインが美味しくいただきました^^ 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 01 29 53 ID LXdXh0b5 京介の大根が使われることはあるのか 続きが気になる 104 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 01 42 09 ID UY0YWck8 投下します ヤンがありませんが、後ほど出します 5月15日 「おはよう、沙紀さん。今日はいい天気だね」 秋月否命(あきつき いなめ)のこの何気ない一言に、浅原沙紀(あさはら さき)は何 か別の世界に引き込まれて、この世では無い物語を聞かされているような気になった。 時刻はまだ六時、沙紀は起きたばかりの胡乱な頭で自分の身に起きた事を必死に整理して いた。とりあえず、沙紀は周りを見回した結果、ここが自分の部屋であることを確認した 。それでも、まだ沙紀の頭はこんがらがっている。 もっとも否命も沙紀のこの反応を予測していたのか、ニッコリと沙紀のベッドの傍らで得 意げな様子で微笑んでいた。否命は待っているのだ、沙紀がこの状況につっこみを入れる のを。 「お嬢様…私は長らくお嬢様の使用人としてこの家、秋月家に仕えて参りましたが、未来 過去においてこのような事…お嬢様が早起きし、尚且つ私を起こして下さるなんてことは ありませんでした。はい。未来過去に渡ってです!しかしながら、現在においてお嬢様が 私を起こして下さっているのはどうしたことでしょう?」 「どういうことだと思うの?」 「ありえません。はい。ですからこれは夢に違いないかと」 そう結論付けた沙紀は、もう一度ベッドに潜り込み寝ようとした。 「違うの、私だってたまには早起きすることだってあるんだもん!ほら沙紀さん起きて」 「バレバレの嘘ですよぉ、ゲンカクさん、あの鈍くて、ドジで、何処か抜けていて、それ が魅力のお嬢様が…」 「だから、これは現実なんだってば!って沙紀さん、言っている傍からベッドで丸くなら ないでよぅ。ねぇ、起きてったら」 否命は丸まっている沙紀の肩に手を添えると、それをユサユサと揺さぶった。 「うーん、なんだか夢にしてはこの振動は妙に生々しいですね、それにお嬢様の声が良く 耳に響いています」 「じゃあ、沙紀さんはこの状況をなんて説明するの?」 「はい。最近の夢は随分生々しくなったなぁ…と」 「違うの、私が早起きして沙紀さんを起こしているの。これは現実なんだってば」 否命は真っ赤になりながら腕をブンブンと振り回しながら熱弁する。 「沙紀さん…、お願いだから寝ぼけないでよぅ」 「寝ぼけている…、私がですか?」 「沙紀さんがッ!」 「そうですね、私としたことが寝ぼけている場合ではありませんでした」 やっと分かって貰えた…と否命は溜息をついた。 「色々考えましたけど…やはり、お嬢様がこんな朝早くに起きるはずはありません。はい 。とするならば、これは間違いなく夢。はい。そして夢の中なら何をやってもいいわけで す。あぁ、お嬢様!」 そういって、沙紀がベッドから跳ね起きた瞬間、沙紀はシーツに足を引っ掛けて ゴチンッ っと、盛大に頭から転んでしまった。 「沙紀さん、大丈夫?」 「なんとか大丈夫です。うぅ、なんだ、本物のお嬢様ですか…、ガッカリです」 「当たり前だよ!もう、さっきからそう言っているのにぃ」 「すみません、私ったら最近よくお嬢様の夢を見ますので…てっきりその発展系かと」 「ところで、沙紀さん、もし私が夢だったらどうする気だったの?」 「知りたいですか?」 沙紀の目が妖しく光る。 「いや、遠慮しておきます」 「ガッカリです」 肩をわざと大げさにすくめてみせると、沙紀は時計を確認した。 時刻は六時十分。 沙紀はこれが現実だと理解しても尚、狐につままれたような顔をしていた。 105 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 01 42 59 ID UY0YWck8 浅原沙紀は四歳の頃から、十七歳の現在に至るまで秋月家の奉公をしている。と、いって も実際には秋月の家には否命しかいないから、沙紀は事実上、否命の専属の使用人である 。 元々、秋月家には否命とその姉「梓」が住んでいたが、梓は既に死んでいた。 その後、保護者のいなくなった否命は、親戚に引き取られる事となったが、親戚は否命の 身体の「ある一部分」とそれに伴う「奇行」を疎み、否命が元いた家に別居という形で住 まわせたのである。生計はその親戚の援助と梓の残した遺産で立てている。 「幼く、黄花女にして既に色狂いの気配。我が子に悪影響を与えるものと覚えたり」…、 否命が親戚に疎まれた理由であった。 沙紀は、一人暮らしをしている否命の補佐をするようにと、否命の親戚が雇った使用人の 娘であった。そして親に習って子である沙紀も、それが当然のように否命に奉公した。ち なみに沙紀と否命は同い年である。学校も小中と一緒に通い、現在は否命と高校に通って いる。使用人はこの二人を暖かく見守っていた。そうして、この日常がずっと続いていく のだと否命は思っていた。 しかし、使用人・・・沙紀のお母さんはある日、突然失踪した。だが、その頃には既に一人 で家事を切り盛りするには十分な年齢になった沙紀がいたので、別段それに困る事は無か った。それからは、こうして沙紀と否命は二人だけで暮らすようになったのである。 それにしても…と沙紀は思う。 自分はお嬢様を起こすために普段は六時五分に起きている。中途半端な時間のほうが、意 識しやすいからだ。そして、飯の支度を終えて、お嬢様を起こす時刻は七時半過ぎ。その 七時半過ぎでさえ、お嬢様が起きていた事もないのに、今日は普段より一時間半も早く起 きて私を起こしてくれた。 その事実が沙紀には未だに信じられなかった。 106 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 01 43 53 ID UY0YWck8 「本当にどうなさったのですか?こんなに早く、ご起床なされて」 「なんだか、今日は新しい事が起こりそうな気がして」 「ワクワクして眠れなかったですか…」 「うん!」 「まるで小学生ですね」 「うぅ~」 「いえいえ、まるで小学生のように可愛らしい…という意味ですよ」 「それって、褒められているのかなぁ?」 「はい。幼い=可愛い事だと猿渡哲也さんも申しておりました」 「へぇー、そうなんだ。沙紀さん、ありがとう」 「いえいえ、どういたしまして」 ころころ表情を変える否命を見て、沙紀は一日が動き出したのを感じていた。 「おはようございます。お嬢様」 「おはよう、沙紀さん」 そういって、二人は挨拶を交しリビングへと降りていった。 しかし、新しい事が起こりそうでワクワクしている否命とは対象的に、沙紀の心境は複雑 だった。沙紀はこの日常が好きだった。この日常が変わる事なく、ずっと続いていけばい いと思っていた。その沙紀にとって「新しい事」が起こりそうと、喜ぶ否命の姿は何処か 沙紀に寂しさを感じさせたのである。 「新しい事が起こりませんように」 沙紀は、リブングへ向う否命の姿を見ながら心の中でそう呟いた。 投下終わります 107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 02 11 37 ID m8ReScE/ レズもの? 108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 10 00 12 ID 6WodSekU 英語版wikiのヤンデレの項、楓が載っててワラタw ttp //en.wikipedia.org/wiki/Yandere 109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 14 41 03 ID UZcf3gJl ひぐらしが記されてるのは相変わらずだな。 奴のどこにデレがあるのかプレイしてない俺にはわからん。 もしかしたらどこかにキッツいデレ描写があるのか?教えてくれ。 あと、レズもの書くなら注意書きあった方がええよ。 110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 14 45 39 ID VXD84EcP レズは苦手ずら・・・・・ 111 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 14 57 11 ID bb9d9jAJ SS保管庫の管理人さんが実は「無口な女の子」のSSも保管されてることに気づいた。 http //yandere.web.fc2.com/mukuchi/index.html 112 名前:前スレ523[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 15 08 46 ID XJ16OTtm http //bbs11.fc2.com/bbs/img/_219000/218976/full/218976_1172727777.jpg 「上書き」壁紙作ってきました。 振り回されてる誠人はなんだかんだ言って幸せそうだなー。 ってことでゲージ3本使った加奈。 伊南屋氏のように素早くかわいく描けるようになりたい。 113 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 18 55 15 ID jPMoDmc3 112 これはイイ殺意の波動に目覚めたカナタンですね。 114 名前:しまっちゃうメイドさん[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 19 27 34 ID rk5Un/gm 109 確かに苦手な人がいそうですね。予め、注意書きを入れておくべきでした。 次回から、冒頭に注意書きを入れておきます。 115 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 19 33 16 ID /G5772A5 104-106 猿渡哲也さんも申しておりました コブラソード吹いたw このメイドさん何を読んでるんだw 112 何このツキノヨル オロチノチニ クルフ カナwww 116 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 19 56 57 ID UZcf3gJl 114 病んでるのは愛情だけでいい、性的倒錯までいらんって人は多いからね。 逆に、そこがいいって人もいそうだが。 117 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 39 56 ID UGBbX2QX では投下致します 118 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 41 35 ID HjI1GnvV ttp //pikupiku.com/upload/src/pikupiku0570.jpg うへぇ、これによるとヤンデレは「現状は二次創作のみ」って認識らしいぞ? 119 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 42 36 ID UGBbX2QX 僕が拉致されてから数日の月日が経っていた。縄で縛られて監禁状態はすでに卒業している。 英津子さんが導いた僕をこの家から抜け出さずに依存できる方法は常人では到底理解できない方法であった。 そう、足を、骨を、折ってしまえば、逃げることは不可能だ。 まさかと思った提案は発言直後に実行された。鈍い痛みの後に僕は気を失ってしまい、起きたら縄を解かれて、 逆に足にはギプスがはめられていた。右足が骨折して、英津子さんの診断によるとなんとなく全治3ヵ月だよてへ。 だそうだ。 もう、この女は狂っているとしか言いようがない。 僕は肉体的な痛みよりも彼女に生活の全てを依存しなきゃいけないという精神的な苦痛に苦しんでいた。 骨折した後に嘘のような謝罪の言葉と治療が完了する頃には京介君の調教を完了しているよと有り難くもない予言していた。 吐き気がする。 英津子さんと同じ空気を吸っていることが、英津子さんが作ってくれた手料理も、 英津子さんの必死すぎる看病も。全てがうんざりしていた。 孤独を埋めるための手順。そして、僕の全てを奪っていた。 憎いという一言だけでは片付けられない。 僕は英津子さんに同情と憐れみを抱いていた。 120 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 45 26 ID UGBbX2QX フリーターである英津子さんは夜8時頃になると家に帰宅する。 真っすぐに僕の様子を見て、部屋で大人している所を見ると彼女は安堵の息を漏らす。 それはそうだろう。僕が骨折の痛みをやせ我慢して助けを呼ばれることになれば、 英津子さんは間違いなく逮捕されるであろう。英津子さんは震えた体で僕を抱き締めると頭を撫でてくれた。 僕は愛玩動物じゃないんだぞと言いたかったが、頭のおかしい英津子さんに何をされるのかわからない。恐すぎるっっ!! 「京介君は今日も家で大人しくしてくれていたから。お姉ちゃんとっても嬉しいんだよ。 夕食に京介君の大好きな物を作ってあげちゃうよ。何が好きなのかな?」 「もやし炒めでお願いします」 「も、も、もやし炒めねぇ……。もやしはお姉ちゃんは大嫌いだから。そうね。カレーライスにしましょう。うん。決定だよ」 骨折している足をさっさと治療するために栄養のある食材を摂って、ここから抜け出したかったのに。 と、台所に向かって食材を鼻歌混じりで機嫌のいい英津子さんの後ろ姿を凍り付くような殺意に似た視線を僕は送っていた。 「今日も明日も~10年後~るるる~~ずっと~~京介君と~~一緒だよ」 幸せの絶頂にいる英津子さんには全く気が付く様子もなくて僕は思わず嘆息した。 しばらくすると部屋にはカレーの匂いが充満して、朝から何も食べてないせいか食欲が沸いてくる。 カレーが出来上がると笑顔で英津子さんは二つのお皿を持ってやってきた。 テーブルは僕が寝ているために片付けられているが、英津子さんは僕の隣にやってきて、右腕にしっかりと彼女の腕が絡み合うように組む。 「京介君は怪我人なんですから。お姉ちゃんがちゃんと食べさせてあげるね」 「僕は一人でも食べられますよ」 「ダメです。私が食べさせてあげるんだから。京介君。はい。あ~ん」 スプーンにカレーを僕の口に持ってきた。英津子さんを怒らせると 今度は臓器まで摘出される恐れがあるので僕は大人しく従った。 口に入れると普通にカレーな味はするが、女の子から恋人らしいことをしてもらった経験のない 若造である僕は何らか感動を覚えてしまうのは無理はない。 「お姉ちゃんが作ったカレーは美味しい?」 「うんっ」 「じゃあ、いっぱいいっぱい私が食べさせてあげますよぉ。京介君もたくさん食べてね」 英津子さんは喜んで僕にカレーを食べさせた。自分の手で食べることは全くさせてくれない。 最初はこの状況に文句の一つを言うと、英津子さんは目に涙を蓄めて潤んだ瞳で訴えるように僕を見つめてくる。 その仕草に参らない男性はいないだろう。 特に僕のような子供が大人の女性の魅力と泣き落としに勝ることができずに、忠犬のように従うことしか道は残っていない。 「えへへっ……。お姉ちゃんはねぇ。京介君が来てくれたから。会社のお仕事が終わってから家に帰るのはいつも寂しくして嫌だったけど。 今は誰か待ってくれている人がいると思うと嬉しくてたまらないの」 英津子さんが無理矢理拉致してきたんだろうが!! と僕は笑顔を崩さずに心の中にツッコミを入れてしまう。 言ってしまえば、腕を骨折しそうで扱い難しい。 121 名前:黒の領域2 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 47 28 ID UGBbX2QX 僕と英津子さんは食べ終わると食器を片付けると就寝までの時間はぼんやりと二人で部屋を過ごすだけ。 ただ、普通の同居人でない英津子さんは僕の手をしっかりと握り締めていた。指と指を絡め合う恋人握りってものです。 英津子さんの手は震えていた。何かに怯えるように震えていたが、僕はあえて彼女の暗闇に触れようとはしなかった。 所詮は、僕と英津子さんの関係は英津子さんが拉致した事による作られた偽りの関係に過ぎない。 彼女の寂しさや孤独を埋める義務は僕にはないのだから。 これは僕が今までの生活を奪い取られた事に対する精一杯の抵抗であった。 「京介君? 寒くない。お姉ちゃんはとっても寒いから。今日も一緒に寝てあげるね」 「別に寒くはありませんし、年頃の男女が間違いを起こす可能性もありますし。丁重にお断わりします」 だが、僕の拒否の意志をはっきりと示しているのにも関わらず、英津子さんは問答無用に僕の布団に入り込んできた。 まあ、一人暮らしの英津子さんが寝る場所は僕が奪っているから仕方はない。 「じゃあ、もう電気を消すね」 繋がれた手を離さずに電気の明かりを消すと部屋は薄暗くなってきた。 再び入り込んだ英津子さんはさっきよりも僕の体にしがみつくように密着してくる。 女性特有の温もりを感じてしまうが僕はそれを感じる余裕はなかった。 「京介君の足は大丈夫? 痛くない」 「とっても……痛いです。当分、寝られそうにはありません」 「ごめんね。お姉ちゃん。こんなことしか京介君をここに閉じ込める方法を知らなかったから。ごめんなさい。だから、嫌いにならないでっっ!!」 再び震える手が僕を求めるように痛みを感じるぐらいに強く握り締められた。 一人という孤独と寂しさに耐えられる人間はいない。英津子さんは それらの苦しみを抜け出すために僕を奈落に誘い込んだ。 同じ匂い、同じ空気、同じ境遇。僕と英津子さんを結ぶ接点はただそれだけ。 この関係に愛情はなくて、互いの傷を舐め合うだけの関係なのだ。 だから、僕は英津子さんに愛情は求めない。できることは、ただ同情だけ。 答えが返ってこないことに不安になったのか、英津子さんは僕の顔を覗き込んでくる。 「き、き、京介君は、あ、あ、明日は何が食べたい?」 会話の話題を変えるのに必至になっていた。だから、僕も英津子さんを安心させるように食べたい物を言った。 「もやし炒めで」 122 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/01(木) 22 51 06 ID UGBbX2QX 以上 黒の領域2話でした。 短編ですが一度書いてしまうと予定よりもお話の中に入れたいことを 少しだけ詰めたいために予定した短編3話の完結はちょっと難しいと思います。 もう少しだけ延びそうです。 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 23 03 35 ID m8ReScE/ 122 乙 折っといて謝るところがいいヤンデレ 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 23 09 13 ID jPMoDmc3 118 ヤンデレキャラ自体は昔から存在してたんだろうけどな。認識されなかっただけで。 あと、ミ(ry主催のイベントと高野三四と朝倉涼子はねーーよwww逝ってるだけじゃんwww そしてカテ公が載っているのに、何故園崎詩音が載っていないのか。 122 俺は野菜炒め肉抜きで食べたくなってきたぜ…… 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/01(木) 23 40 13 ID nZKeo5aH 112 GJ!誠人カワイソスw 122英津子さんのデレと京介君の醒めっぷりの差がwGJ 126 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 53 01 ID JAN0JkXr 投下します。 第四話目になります。 127 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 54 24 ID JAN0JkXr 目の前の展開に付いて行けない。 「ちょっと、お茶淹れてくるよ」 「あたし、やりますよ!」 「お客さんにそんな事させられないよ。座ってて」 「じゃあ、お手伝いします!」 「いや、でも…」 「陽太さん、キッチンどこですかぁ?」 兄さんと好乃が、笑顔で話している。 いいえ、兄さんは来客用の笑顔、本気で笑ってない。満面の笑顔なのは好乃だけ。 兄さんが困ってる。 あ、兄さんの腕に、好乃が自分の腕を絡めた! 大きな胸を押し付けてる! …よかった、兄さん迷惑そうだ。 言いたい事が一杯あるのに、咽喉がひりついて声が出ない。 ぼんやりしていると、好乃が兄さんの腕を引っ張って部屋を出ていってしまった。 しばらくしてお茶の用意をして戻ってきて、訳も解らぬまま三人でお茶を飲んでる。 何だろう、これは? わたしは夢でも、悪夢でも見ているのかな? 兄さんの隣に強引に座った好乃は、じりじり距離を詰めて兄さんにくっつくほど 近付いて、兄さんだけを見て兄さんにだけ話しかけている。 「ええと、伊藤さんが来てくれてるから、ちょっと買い物に行って来ようかな!」 好乃の話しを半ば強引に遮って、兄さんがそう言って立ち上がった。 正直、好乃と二人きりになりたくなかったけど、兄さんの困っている顔を見ていると、 嫌だと言えない。 好乃は兄さんに付いて行くと言うだろうけど、兄さんのためには好乃を引き止めないと。 しかし、 「夏月の事、あたしがちゃーんと見てますから、陽太さんはお買い物行って下さい」 予想外の言葉だった。 笑顔でそう言った好乃の顔を、わたしはぽかんと凝視してしまった。 「伊藤さん、お願いします。じゃあ夏月、ちょっと行ってくるから」 「…う、うん」 「すぐ戻るから」 「陽太さーん、早く戻ってきて下さいね~」 「あ、うん…」 心配げな顔で出て行く兄さんに、何とかぎこちない笑顔を返す事が出来たが、 とても心細くて本当は行って欲しくなかった。 ばたんと玄関のドアが閉まった音が、やけにはっきりと耳に届いて微かに身体が震えた。 眼の端で、好乃が紅茶を飲んでいるのが見える。 カップをソーサーに戻した音が響く。 「ねぇ夏月、協力してくれないかなぁ。 あたしとぉ、陽太さんがぁ、上手くいくように~♪」 128 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 55 08 ID JAN0JkXr 「……っ!」 嫌、嫌、嫌、嫌! 絶対に、嫌っ! 兄さんが誰かと付き合う手助けなんて、わたしには出来ない。絶対無理。 …でも、そんな事、言えない。 協力するって言わなきゃ、協力出来ない理由を聞かれるだろうし、理由なんて それこそ絶対に言えない。 「ねぇぇ、夏月ぃ?」 にたり、と好乃が笑い掛けてくる。 どうしよう… どうしたら… 「勿論、協力してくれるよねぇ? あたし達、ト・モ・ダ・チ、だもんねぇ?」 友達… 友達だったら、協力しないと、変、だよね? でも、でも… 「それともぉ… 夏月にぃ、認められた人じゃないとぉ、だめって事ぉ?」 「違う!」 違う、そうじゃない。認めるとか、認めないとか、そんなんじゃない。 わたしは、わたしは、 わたしは、誰が、兄さんと、付き合うのも、嫌… 「じゃあ、協力ぅ、してくれるよねぇぇ」 にたああ、と好乃が笑う。でも、 「ごめん、好乃… やっぱり無理…」 出来ない。それだけは。 「どぉしてぇ? 何で協力してくれないのぉ? 何で無理なのぉ?」 笑顔のまま、好乃はわたしに詰め寄る。 「えぇと… わたし、そういう事に向いてないって言うか…」 「嘘」 「え?」 「嘘、嘘、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘うそうそうそぉ!」 笑顔で吐き捨てる好乃。 「夏月ったら~♪ 嘘ばっかり~♪」 「本当の事~♪ 言ったら~?」 「アンタがぁ、陽太さんの事ぉ、好き、だってぇぇ!」 笑顔のまま、吐き捨てた好乃の言葉に、わたしは凍りついた。 129 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 56 00 ID JAN0JkXr 「あたしが気付いてないとでも思ったのぉ? あんな顔しておきながらぁ」 あんな顔? 何の事だろう? 「陽太さんに向けるアンタの顔ったらぁ、まるで発情中の雌猫そのものよぉ」 「なっ…!」 何言ってるの? わたしそんな顔してない… 「あらぁ~? アンタ自分で気付いてないワケぇ? あんな顔して陽太さんに擦り寄っていながらぁ、自覚ナシってコトぉ~?」 どんな顔だかわたしには解らないけど、好乃が気付いてしまったのなら、 きっと顔に出してしまっていたんだろう。 わたしが兄さんを好きだという事が。 黙るしかなかった。好乃の言った事は当っていたから。 「反論しないのぉ? じゃぁ、認めるってコトねぇ?」 「アンタがぁ、実の兄をぉ、好きだってコトぉぉ!」 黙るわたし。この場での沈黙は、肯定と同じ意味だとしても、黙るしかない。 わたしが兄さんを好きだという事は、事実なのだから。 「はぁぁぁ… 陽太さんもぉ、可哀相よねぇぇ」 「…可哀相?」 突然、芝居掛かった好乃の台詞に、首を傾げる。 「アンタみたいなぁ! 変態のぉ! 妹がいてぇぇぇ!!」 変態…? 可哀相…? 兄さんが…? わたしが…? 「血の繋がった実の妹が兄の事を好きだなんて、変態じゃなくて何だって言うのよ!? 盛りのついた雌猫なんて例えたけど、猫に失礼よね? 猫もアンタみたいな変態と、一緒にされちゃあねぇぇ!?」 「アハハハハハハハハハハハハッ!! 変態変態変態変態変態! このぉ変態ぃぃ!!!」 狂ったように笑う好乃。 わたしを罵り嘲笑う好乃。 やめてやめてやめて… 耳を塞いでいたらしいわたしの手を、間近に迫っていた好乃が痛いくらい強く掴むと、 引き剥がして、また笑う。 「でもぉ、安心していいわよぉ。そんな事ぉ、どーでもいいからぁ♪」 「陽太さんはぁ、あたしとぉ、付き合うからぁ、 アンタの事なんてぇ、眼中になくなるのよぉぉ♪」 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ♪」 塞ぐ事も出来ない私の耳に、好乃の言葉が注がれる。 130 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 56 48 ID JAN0JkXr 「大丈夫ぅ。もしアンタが変態だって陽太さんにバレたりしてもぉ、 あたしが陽太さんの事ぉ、慰めてあげるからぁ!」 「貧相なアンタの身体と違ってぇ、このあたしのぉ、カ・ラ・ダ、でぇぇぇ♪」 もう耳を塞ぐ気も起こらず、いつの間にかへたり込んでいたわたしの前で、 くるくると制服の裾を翻しながら回っている好乃。 「アンタさぁ、陽太さんの事思ってぇ、一人エッチしてるんでしょぉ。 気持ち悪ぅ~い! 本当に変態よねぇぇぇ!」 ぴたりと好乃は回るのを止めると、笑うのも笑顔も止める。 そしてわたしの髪を掴んで、無理矢理顔を上げさせられた。 「ねぇ、アンタ、実の兄に欲情するなんて、汚いと思わない?」 …きた、ない? 汚い? わたし、汚い… 「陽太さんが、汚れるじゃない。穢らわしいッ!!」 汚れる? 兄さんが、汚れる? わたしが、わたしが… がちゃん… 「あ! 陽太さんがぁ、戻ってきたぁ♪」 途端に笑顔になって立ち上がると、好乃は歌う様に叫びながら玄関に駆けていった。 「ただいま、夏月…… 夏月? どうしたの? 夏月!?」 兄さんの声が、する。近いような遠いような。 近い訳ないよね。だってわたしと兄さんは違うもの。 兄さんは、綺麗。わたしは、汚い。 「夏月!? 夏月!?」 だめだよ、兄さん。わたしに触ると、兄さんが汚れちゃう。 「陽太さぁん、夏月なんかほっといてぇ、あたしと…」 「五月蠅いな、お前、帰れ」 好乃の声と東尉君の声だ。東尉君いつ来たのかな? 「前園君には関係ないでしょ?」 「お前が一番関係ない。いいから帰れ!」 「…伊藤さん、帰ってくれない」 あ、好乃が部屋を出ていく… 兄さんと東尉君の声が、段々遠く遠くなっていく… でも、笑い声が、好乃の嗤う声が、ずっと耳の奥で、響いてるよ… -続- 131 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 00 57 38 ID JAN0JkXr 以上、続きます。 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 01 17 54 ID 7BLaByxe 乙 続きが気になります 133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 02 51 40 ID xvuJcKp1 131 さーあ俺が大好物の空気になって来たwwwwwwwww 134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 03 21 22 ID n1aJazIV いきなり好乃が壊れてる! だがそれがイイ! 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 08 09 19 ID YrKL7l/U うおおい! スゲェコレ、キャラ濃すぎるぜ! 兄も妹も親友も友人も皆がスッゲェいいキャラしてるよ、とにもかくにもGJッス! 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 08 56 14 ID XhfQbB7T ≫131 GJでした!! 続きを楽しみにして松 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 15 30 05 ID kjuaz4yk 置いていきますね。 ツンデレのエロパロ4 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172665361/ 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 16 34 51 ID 3iFQZylS 皆さん、病んでますか? しかし、最近のエロパロSSは盛り上がってきたな 139 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 18 17 51 ID zDbIUDq8 106 百合ものですか、個人的にストライクなんでwktkしていますw にしても主従関係感じさせない会話に和みました。 112 523氏、保管庫掲示板でも書きましたが改めて御礼させて頂きます。 本当にありがとうございます。ネタ絵でだなんてとんでもありませんよ。 >振り回されてる誠人はなんだかんだ言って幸せそうだなー。 まぁ嫌がりながらも甘んじて受けていますからね。 多分軽いMなんだと思いますw 122 いきなり足折られるとはヤバイw 監禁の果てに京介がどうなるのか非常に楽しみ、GJ! 131 罵られる夏月に何故か悶えましたww GJです! 次回の投下は前スレでの予定通り今月の11日になりそうです。 かなり間が空きますが、よろしくお願いします。 140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 19 16 56 ID EWZ75SwM 足ぺっきりぽっきりと聞くといつも思わずマナマナを思い出すぜ 141 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 22 58 04 ID 96pJgTHX では投下致します 142 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 23 01 14 ID 96pJgTHX 今日は英津子さんが休日だったので僕と彼女はお互いの顔を睨めっこするように一日中飽きずに見ていた。 それしかやることがないのだ。骨折した足の具合はまだ悪くて、外に出掛けることは不可能。 監禁している状態で僕を外出すると問題なく他人に大声で助けを求めるであろう。 それに対して英津子さんは会社に行く事と買物する以外は僕の隣で手を握っていた。 僕の温もりを感じるだけで安心するらしい。微笑ましい英津子さんの照れている顔にいい加減に飽きる。 毎日毎日同じ事の繰り返しだ。そこに退屈を覚えても、新たな新鮮な出来事に遭遇するわけでもないし、 電波女と慰めしかやる事がないのはいろいろと欲求不満になってくるわけだ。 ここで初めて僕はこの監禁されている場所から抜け出して、自分の家に帰りたいという気持ちが胸から溢れだしそうになった。 さっさと僕の居場所に戻って、僕の世界へと回帰する。仲間達とまだまだ遊びたかったし、 引き裂かれる寸前の家族を救うことも諦めていなかった。 そろそろ、20過ぎの独身女性の心の隙間を埋めるボランティア活動は終了させてもらおうか。 機会はある。 英津子さんは今日は休日なので必ず買物に行く。その瞬間を狙って、ドアを叩き開けて周囲に助けを呼ぶ。 その辺を歩いている通行人でもいい。助けを呼べば……僕は帰れるんだ。 昼頃を過ぎると英津子さんは冷蔵庫の中を険しい顔をして覗いていた。 普段は仕事で忙しい彼女は休日にいろいろと買い溜めをしておいて、休日になるまで食材や材料を切らさないように気を遣っていた。 また、休日になると食料を補充するために買物に出掛ける。 これが僕と英津子さんが同居している時に気付いた彼女の生活パターンである。 もちろん、自宅に僕がいるから鍵を閉めるなんてことはしなかった。 「京介君。お姉ちゃんねぇ、ちょっと近所のスーパーまで買物をしてくるから。よい子で待ってくださいね」 「はい。わかりました」 僕はいつものように笑顔で返事を返すと外に出掛ける英津子さんを注意深く観察する。 バックを持って、英津子さんが玄関に行ってドアを開けて出掛けるところを確認すると。 時計で5分ぐらい待ってから、作戦を実行に移す。 寂しさと孤独を紛らわす生活に慣れていた英津子さんは油断していた。 一緒にご飯を食べて、一緒に居る時間が長かったから 英津子さんは僕が立派に調教されて大人しく従う愛玩動物になっていると……。 現実はそう甘くない。帰る場所がある人間は揺るがない。 擬似的に僕の寂しさと孤独が英津子さんによって癒されたとしても、 捨て去ることができない物がある以上は優先順位に従って、人は行動する。 だから、僕は動かせば激痛がする足を引き摺ってまで玄関のドアの方向へゆっくりと動いた。 左足を軸にして、大根によって折られた右足を少しづつ動かす。 1cm単位でも動かせば、感じたこともない痛みに苦渋の表情を浮かべるが。僕は我慢した。 希望の扉まで後もう少し。ノブに手が届くと僕は最後の力を振り絞って。 ドアを開けた。 143 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 23 03 36 ID 96pJgTHX ドアを開けた瞬間、僕に待っていた光景は久しぶりに見るはずの外の光景。 のはずだった。 開けた先には英津子さんがいつものように優しく微笑んでいる表情を浮かべて待ち伏せるように立っていた。 「京介君……、一体何をやっているのかな? かな?」 「あっっ……、いやぁぁ……」 僕の顔色がどんどんと青くなっていくのがわかる。英津子さんは外見は笑顔を崩さずにいるが、 目は全然笑っていなかった。女の子が怒っているのは、暴力や汚い罵声など 頼らずにただひたすら冷笑するだけで男を怯えさせることができるのだ。 「お姉ちゃん。言ったよね? 京介君はよい子で待ってくださいね? どうして、私との約束を守れなかったの。 そんな悪い子にはちゃんとしたおしおきが必要だよ」 「い、いやぁ……。や、やめて」 英津子さんは僕を突き放すように押すと尻餅を着く。その間にドアを閉めて英津子さんは僕の方に近寄ってきた。 「京介君はもう私の物なんだよ。勝手に外に出掛けたらどうなるかわからないわけじゃあないでしょ。 私と京介君だけの生活が終わちゃうんだよ。私は絶対にそんなの嫌っ!! もう、一人は嫌なんだよ」 骨折している足の激痛に襲われて蹲っている僕を見下すように冷たい視線で英津子さんは睨んでいた。 視線を合わせるのが恐くて、僕は思わず外した。 「京介君。今度はどこの体を痛め付けて欲しいの? 左足? 右腕と左腕。 どちらが不自由だったら今度はもう私たちの楽園から逃げ出そうとしないはずだよね?」 「もう、やめてぇぇ……。謝るから。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。 だから、もうこれ以上は痛い目に遭わせないでください。お願いしますっっ!!」 「そんなに懇願しなくても……。まだまだ、大根はこんな時のためにたくさん買ってきたから大丈夫だよ」 「だ、だ、だ、だ、いこんいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」 冷静な判断できずにあまりの恐怖に僕は精神の限界に耐え切れずに癇癪を起こす。 あちこち身体を激しく動かし、首を左右に揺らす。口から溢れだす唾液は垂れ流していた。 「もう、こんなことはしないよね?」 「う、う、うん」 僕は必至に首を下に振って頷いた。英津子さんの迫力に圧されて、僕の体は硬直していた。 喉の奥深くから懇願するようにようやく声を搾り出して言うと、英津子さんは満足な表情を浮かべた。 「でもね……。ちゃんとおしおきするよ」 「えっ……?」 唖然とした僕の隙を突いて、英津子さんは僕の唇を奪った。 それはキスと呼ばれる行為だったかもしれない。 「んっ……ちゅうちゅ……あっ。京介くぅぅん」 僕の唾液と英津子さんの唾液の交換し、僕の口から侵入してくる英津子さんの暖かい舌が僕の舌と絡み合う。 初めての体験に脳に鋭い電撃が落ちたような感覚に陥る。 英津子さんとの行為に没頭していると骨折した足の痛みもどこかへと飛んで行く。 「え、英津子さんっ……」 「お、お、お姉ちゃんの舌は気持ち良かった?」 唇から離れると僕と英津子さんの間に唾液の糸がいやらしく繋がっていた。 その光景に年頃の男性である僕は興奮を覚える。それは、快楽の表情を浮かべている英津子さんも動揺であった。 「き、気持ちよかった」 「京介君が私の初めてだよ。ファーストキスを貰ったのは……」 「僕も初めてだったよ」 「だったら、ちゃんと責任取ってくださいね。京介君」 「ええっ……!?」 「つ、次はお姉ちゃんのセカンドキスを奪って欲しいな」 僕の返事を待たずに英津子さんはまた僕の唇を奪う。貪るように僕の唾液を飲み込む彼女を拒むことは僕の頭の中にない。 もう、僕はこの監禁生活という現実をしっかりと受け止めてしまったから。 144 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日:2007/03/02(金) 23 05 37 ID 96pJgTHX 一応、次で最終回の予定だが・・ 最後はちゃんと纏めて終わらせることができるのかと ちょっと不安が・・www 執筆していたら英津子さんというキャラクターが勝手に動いて暴走するしw 扱いには難しいです 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/02(金) 23 24 29 ID kAznxOhm 144 GJ! 最終回をwktkして待ちます てか京介君大根がトラウマにwww 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 00 44 31 ID nSDzYsFw 京介おまえカルシウムとっとけwwwwwww 147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 02 25 26 ID rdkRfA/B ヤンデレスレは! 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 03 10 50 ID zmLQ0ToO エロエロよー! しまったつい思わずw 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20 27 05 ID 6+pMsIgz 保管人様更新乙です ところで「ヤンデレ」でぐぐったら保管庫がかなり上に出て来てビビったw 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/03(土) 20 27 57 ID yiWw5kzz 英津子さんに惚れた俺はどこで監禁されたらいいんですか!!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1075.html
401 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 05 43 ID ErgPvPGu がちゃり 「あ、マユミ起きてたんだ」 名前を呼ばれて視線を向けると、ユキが部屋に入って来たところだった。 ユキ。高校時代に一緒だっ 来るな!!!!! ユキを見た途端に全てを思い出した。 そうだ。 昨日久しぶりに飲もうと誘われてコイツとあって飲んでたら体が重くなってきて そしたら知らない男が5、6人出て来て車に押し込まれてこの部屋に連れ込まれて 怖くて声が出なくて体に上手く力も入らなくて布団の上に投げ出されてたくさんの目が ぎらついた目がこっちを見ててユキが笑って服に手がかかってボタンが飛んで手が いっぱい伸びてきて息が舌が手がそれからそれからそれからそれからああああああああ 「まだ薬残ってるのかな。ごめんね」 上手く動かない体で必死に逃げようとしたがユキに簡単に捕らえられた。 がちゃりと手錠が嵌められる。次いで足にも枷が嵌められた。 「まだ起きないと思ったから拘束衣は下なの。後で着せてあげるね」 なんでこんなことするの 涙が頬を伝った。相変わらず声は音にならず私の中にたまっていく。 402 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 08 39 ID ErgPvPGu 「マユミ、汚れちゃったね」 ユキが私の肌を撫でながら静かな笑顔でポツリと言った。 そして顔をあげ、私の目を見て深い笑みを作る。 「もうカズキさんのところには帰れないね」 カズキさんには手を出さないで! 「大丈夫だよ関係ない人のことなんてすぐ忘れるから」 恋人の名前を出されて動揺する私を宥めるようにユキは笑った。 そんなことより言ってる意味が分からない。関係ない?彼は私の恋人だ。忘れる? 「ねえ、今日からマユミは私のモノだよ。ずっとずっと欲しかった」 ユキが私を抱きしめる。 「女だからって理由であなたを諦めなきゃいけないのは辛かった。そして諦めきれなかった。」 彼女の手が私の頭を撫でる。 「もう、私のモノだよ。こんな汚れたらどこにもいけないでしょう?体も動かないのに」 彼女は……泣いている。 「やっと手に入れたよ。マユミ。逃げたらまたあいつらが犯すからね」 私の心はじわじわと恐怖に染まって行った。 「もうどこにも行かないでね。マユミ。愛してる」 ユキの唇が私に触れた。 彼女の狂気が流れ込んで来た。 403 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 11 29 ID ErgPvPGu 以上です。スレ汚しすみませんでした。 タイトルは無いです。続きが浮かんだけれど書く体力はありませんでしたorz 暮らしが落ち着くまでリハビリして 逃亡作者になってしまってる分の続きを書きたい……とは思ってます。 404 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 26 20 ID vzzNGVTy GJ! 405 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 44 06 ID /q2T6qAy 402 超怖っ……あれ、なんかおちんちんが…… 406 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 21 49 19 ID /NDXokSL 403 GJ!!レズ注意は欲しかった気もするけど、それだとオチバレになるし難しいか。 407 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/23(金) 22 43 23 ID ErgPvPGu そうでしたすみませんでした。百合モノなんで注意迷ったんですがすみませんでした。 408 名前:きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 06 36 ID E4af3Dlk 投下します。 409 名前:お見舞い ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 08 10 ID E4af3Dlk 「気が乗らないなぁ~」 僕は、そう思いつつ今日、風邪で休んだ高島さんにプリントを届けに彼女の家へ向かった。 普通は、高島さん家に一番近い吉田がこの役を先生に任せられるべきなのだろうが どうやら高島さんが電話で先生に俺に来させろっと電話してきたそうだ 普通なら却下されるところだが いかんせん高島さんのおじいちゃんは、うちの学校の理事長らしい だから一介の教師であるうちの担任は、高島さんに頭が上がらない 「しかし、いつ見てもでっかい屋敷だなぁ~」 僕は、(これまたでかい)門の前のインターホンを鳴らす 3秒もしないうちにインターホンから 「はぁ~い、努くんですか?森野努くんですね今、門は開いていますよぉ」と 高島さんのとても風邪とは、思えない元気いっぱいの声が聞こえた。 門を通り屋敷の戸を開けると玄関に綺麗な黒髪の割れ目から見えるオデコに 冷えピタシートを装着しパジャマ姿の美少女が立っていた。 彼女が今日、風邪で休んだ高島詩織である あぁ~本当に風邪ひいてたのね 「さぁ努くん、あがって下さいな」 「いや…プリント渡しに来ただけだから………」 「まぁ私の為にはるばる我が家へ!? まさかとは思ってましたがやっぱり私達は、相思相愛だったのですね」 僕は、高島さんが来いって呼んだんじゃんっと言いそうになったが辞めとこう…きっと無駄だ そんな事より早く用事を済ませて帰ろう 「えぇ~っと、これが今日渡されたプリントで…」 「ここじゃ寒いでしょうから中に入ってお話しましょう」 「いや結構でs「そんな遠慮しないで努くんと私の仲じゃないですか」 そう言うとどこから出るのか細い腕で僕を客間へと連れてった。 客間には、お茶とお菓子が置いてあった。 多分…というか確実に媚薬かしびれ薬、もしくは両方が入っていると思っていいだろう 先週、コレのせいで危うく高島さんに童貞を奪われるところだった(いやぁ~あの時は危なかった) 410 名前:お見舞い ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 08 49 ID E4af3Dlk 「さぁ努さん、私が作った手作りお菓子を食べてくださいな」 芸がないな高島さん、同じ過ちを二度繰り返す僕じゃない!! 「ご・ゴメン、僕、虫歯だから悪いけど食べられないや」 「あらそうでしたの?それは、失礼を」 高島さんは、残念そうな顔でお菓子を片づけに炊事場に行った。 悪い事したかな?否、断じてそんな事はない ってそんな事より早くプリント渡して帰らなきゃそろそろ危険だ 「努くん♪」 どうやら炊事場から戻って来たみたいだ 「高島さん、はいプリン………と」 そこには、素っ裸になった高島さんが立っていた。 上半身を見ると小さいながらも形の良い胸が見える 下半身の方を見ると薄い桜色の秘所が見え…なかった。 「た・高島さん、なんでそんな格好を…っていうかアンタ風邪引いてるんだぞ!!」 「うぅ…だってだって努くんがあまりに素直になってくれないから」 「素直じゃない?」 「本当は、私の事好きなのに嫌いな振りして意地悪するから」 そう言うと高島さんは、座っている僕に回り込み背中を抱きしめてきた。 「もう絶対に離しませハックシュン…んがらね」 「高島さん、とりあえず服着たほうがいいよ寒いでしょ?」 「ぞんな事言っでまだ逃げる気でじょう?努くん湯だんぽがあるがら寒ぐありまぜん」 鼻水声で何言ってるかわかんないけどとりあえず離さないらしい こりゃまた帰るの徹夜になりそうだ やれやれ家に電話しておこう 411 名前:お見舞い ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 09 57 ID E4af3Dlk (1時間後) なんとか寝かしつけられた。 思ったより速く寝付いてくれてよかった。 あの後、なんとか説得しパジャマを着せるのに成功したはいいが 「一緒にお布団入ってくれなきゃ死んでやる」っとペーパーナイフを自分の首に向けられ しぶしぶ一緒に布団に入らされる事になってしまった。 その後、「男女が一緒に寝る時って…その…セックスする時ですよね? 私、風邪で弱ってるから犯そうと思えば…努くん、聞いてますか?」と色っぽい声で コチラを誘惑してくるのだった(我が理性、よくぞ頑張った) 高島さんが起きないようにそっと高島さんの寝部屋を後にした。 そして僕は、高島さんの部屋に向かった。 別に高島さんの下着を盗んで家に帰ってスーハースーハーしようと言うわけじゃない っというかそんな回りくどい事せんでも高島さんの事だから下着はおろか使用済みタンポンとかくれそうな気がする まぁしないけどね 「あった」 高島さんの机からどこで隠し撮りしたのかわからない僕の排泄シーンが写った写真が数枚。 きっとおじいちゃんに頼んで隠しカメラを設置してもらったのだろう こういう陰湿なところがなかったら付き合うんだけどなぁ こっちの写真は、修学旅行の時に撮られた僕の寝顔写真。これは、前田に金渡して撮ってもらったのだろう 最後に僕と高島さんのツーショット写真2枚(1枚は無理矢理撮らされもう1枚は合成) どの写真も高島さんの唾液と愛液まみれでベタベタしてる とりあえず排泄写真は、家に帰ってゆっくり処分。 寝顔写真とツーショット写真は、流石に取り上げるのかわいそうなのでそのままに さてと、じゃあそろそろお暇させていただきますか さてと家に帰って『銀魂』観るかな 自分の今日のスケジュールを考えながら靴を履こうと靴を取ろうとした時 「どこ行くの?努くん!!」 いつの間に高島さん、起きたんだろう? 「やっぱり私を置いて出て行こうとしましたね?一緒にいるって約束したのに」 そんな約束した覚えは断固としてない 約束した覚えはないのでそそくさと靴を履きダッシュで高島さん家を後にした。 「あっ待ちなさい!未来の奥様の約束を破る悪い人はお仕置きです!!」 高島さんは、パジャマ姿で追っかけてきた。 こうして今日もいつ果てるとも知れぬ鬼ごっこを繰り返すのであった。 あぁ~『CLANNAD』始まる前には帰りたいなぁ~ 412 名前:きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 13 15 ID E4af3Dlk 投下終了です。 嫉妬やグロエロのないヤンデレを書こうとしたらいまいちヤンデレっぽくない物が出来てしまった。 413 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 02 17 27 ID fmHmhBQ2 個人的には彼女の方は十分ヤンデレだと思う。 ただ、慕われてる方が怖がらなければ物語の上での脅威度が薄れるってだけで。 怪物や幽霊に対抗する手段が出た途端に、ホラー映画がアクション映画に切り替わるような感じ。 っつーか努君余裕ありすぎだろw このぐらい器がデカい男なら、ヤンデレ相手でも普通に対処出来てしまうに違いない。 414 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 03 14 05 ID HAgQ6NZf 412 これはまた明るく良いヤンデレです 415 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 13 19 15 ID uX2E3vqm GJ! ヤンドジっぽい感じもする。個人的には続けてほしい。 416 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 13 29 22 ID Ge8dQqZ4 「~」をみると岡山の糞親父を思い出してだめだw 417 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 14 10 25 ID JECmWZMr 412 うむ。高島さんは立派にヤンデレなんだが 努くんの度量の広さというか能天気さでお馬鹿な印象になっているような気がしないでもない。 とにかくGJ 418 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 17 36 50 ID 8nn39tfs 本保管庫のBBS、アダルトサイトの宣伝がさりげなく削除されている……。 管理人さん、ちゃんと見てるんだな。 419 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 20 58 04 ID WeiTbhQG wikiについての提案。 1スレから前スレまでのログをHTMLで見られるようにしようと思うんだが。 俺がやってもよろしいか? 420 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 21 11 49 ID WVaTjaa0 419 ログ消しちゃった俺には吉報だ。 よろしくたのむ 421 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 22 12 27 ID KS9/mzXJ 一応、保管庫の中に前々スレまではhtml化されたのがあったぜ。 どうやってftpの中身を見たかについては聞かないでくれよ。 ttp //yandere.web.fc2.com/thread/ 422 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 22 28 44 ID KS9/mzXJ うはwwwwwwwwwもう消されてるwwwwwwwww 保管庫の人、まだここみてるんだなwwwwwwwwww 423 名前:419[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 22 47 27 ID WeiTbhQG 過去ログを見られるようにしといたよ。 424 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 01 26 08 ID sJRlPWsq 電波を受信した。 主人公(おまいら)は電話相談の人(いじめとかの)。 ある日電話がかかってくる。それは、高校生の男の子からで、 姉が自分のことを本気で愛している事、そのせいで性的ないじめを受けている事などをその子から聞く。 主人公はできるだけのアドバイスを彼にして、 「次があった時の為に」と、名前と電話番号を伝える。 次の日、彼からの電話がかかってくる。 「助けてほしい」と。 自分の考え一つで彼を幸せにもできるし、又その逆も。 あなたはどうする? …うん、長々とごめん。 どこかで見たやつに妄想付け加えただけなんだ。本当にごめん。 425 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 01 54 14 ID DvD+xI7G それはキモ姉、キモウトスレの範疇じゃないか それがクラスメイトとか先輩とかならこのスレでOKだろうけど 当然このスレの住人なら「2人」が幸せになるように煽るだろうな。 426 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 02 24 40 ID eP4QT8Oo そーいや、たとえばヤンデレだった女の子が浄化されてまともになる、 みたいな感じのもここの範疇でいいのか? それとも最終的に二人とも堕ちる筋書きじゃないとダメなんだろうか。 427 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 03 00 53 ID K9fL5Dsu 426 少なくともスレ違いにはならないと思うが。 428 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 04 26 23 ID BagYiQGw 堕ちる以外のも見てみたいな。 429 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 05 19 03 ID YwD9rO2U 読みたいな、それ。 たまにはこのスレの娘達にも普通の幸福を手に入れて欲しい。 430 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/11/25(日) 07 35 33 ID QLG5I9lw 431 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 08 13 13 ID QCgLMV5B 426 つ『あなたと握手を』 432 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 10 54 26 ID 1rtHo8AE 424 キモ姉スレの保管庫で似たような話を見かけた気がする 433 名前:ヤンデレの薬[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 21 36 33 ID gK1hC/nj 「ついに完成だ!」 怪しげな研究者が怪しげな研究室で何か薬を開発していた。 「ヤンデレの薬が!」 この科学者の名前は薬丸、ヤンデレが大好物でヤンデレ系作品で彼がやったり読んだことが無い作品は無い程だ。そんな彼はどんな人でも(女限定)ヤンデレにできる薬の研究をしていたすべては自分の欲望を満たす為に 「宮本君!」 名前を呼ぶとくるぶしまでとどく長いツインテールで背丈は158くらい、割とスレンダーな女の子が出てきた。 「なんですか教授」 「この薬を全国に散布してくれ」 薬瓶を彼女に渡す。 「わかりました」 434 名前:ヤンデレの薬[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 21 38 42 ID gK1hC/nj 研究室を出た後彼女は考えていた 「彼氏と別れて気付いたのは良いけどこの想い教授にどう伝えよう、とにかく仕事頑張ってチャンスを探しましょう!」 ちなみに彼女はしっかりしているけどドジです。 「きゃ!?」 自分のツインテール踏んでこけました パリーン 「教授……」 「お、早かったね宮本くんぐ!?」 いきなり抱きつかれキスされました。 「私教授が好き!」 彼女は半泣きで自分の気持をうったえてきた。 「でも君には彼氏が」 「ずっと前にわかれましただから私のモノになってください」 「わかったこれからは君を真剣に愛そう!ぐッ?」 いきなり腹から激痛が走る 「アハハじゃあずっと私しか見れないようにしてあげます!他の女なんかに渡さない!」 ぐりぐりと包丁を動かす。 「みやもとく……」 薄れゆく意識の中で彼は思った、最高に幸せだ! 変態は死ぬまで変態だった。 彼女は血だらけだった、多分他の助手の女の子達も殺したのだろう 「さて、ホルマリンとか用意しなきゃね、教授待っててくださいねアハハハアハハハアッハハハハハハ」 研究室無いに響くのは彼女の悲しく狂った笑い声とスキップする音だけだった。 435 名前:ヤンデレの薬[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 21 49 13 ID gK1hC/nj ヤンデレ初めて書いたんですがこんなんで大丈夫ですか?(´・ω・`) 436 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 22 06 36 ID QCgLMV5B なんとわかりやすいヤンデレキャラ。 そしてGood Job. 長いツインテールと聞いて宮本くんのイメージが初音○クになったのは俺だけでいい。 437 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 22 43 59 ID ksGoxaSF 敢えて言おうと思う。展開が早い。薄い。あと刺さなくても、むしろ刺さない方がヤンデレになれると思う。 もっと丁寧に作れば、素敵になると思う。次に期待。 438 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 22 48 10 ID nEQ9b22z 句読点はきちんと入れましょう 特に読点をもっと使ってみては あと擬音は止めておいた方が 439 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 22 52 56 ID G0LDmkGF 何でも狂気があればヤンデレって訳じゃない。 狂ってるベクトルが全身全霊で愛に向かっているのがヤンデレなんだ! だからそれはヤンデレではないと個人的に思う。 別に非難してるわけじゃないんでスルーしてくれてもかまわない。 だが最近になってヤンデレじゃないキャラがヤンデレと呼ばれてたりしていないかい? 目のハイライトが消えればヤンデレですか? 鉈やナイフを振り回せばヤンデレですか? 440 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 23 06 29 ID dRCV+Tzd 量産機とカスタム機の違いだな 441 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 23 10 49 ID LIEiMn/E ヤンデレとはな・・・・・・ 萌えるんだ。とってもな。もう、様を付けたくなる程に愛おしいんだよな 小動物の女の子が愛しい主人公を手に入れるために黒化して 必死に着信99件にしたり、主人公の家の合鍵を作ったり、 盗聴器も仕掛けて24時間監視したりと そんな健気な行動が評価されて今があったらいいなと思う。 個人的にはヤンデレ化したヒロインの頭を優しく撫でると 喜んで尻尾を振るのか? 難問に俺は立ち向かっている 442 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 23 51 26 ID CFJAVw4r 「べ、別にただの残り物だよ!捨てるの勿体無いし、俺は腹空いてないし…え~とっ、残飯処理!そうお前は残飯処理係な」 ヤンキーデレスレはここでつか? 443 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/25(日) 23 55 26 ID Ja5nu43W 439 いかなる言葉も、普及するにつれて意味が拡散していく。 ツンデレとかゴスロリとか見てると分かるだろう? まったく別物になっちまった。 444 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 00 08 55 ID 53kU/T/b 441 「病み」の質に寄るんじゃないかな? 仮に優しく頭を撫でても「この人は優しい振りで私を騙しているだけなんだ」と思えば「私のものにならないならいっそ・・・」と邪魔な連中共々デストロイしちゃうだろうし 「彼が私以外の人間に優しくするはずないもん!」と信じ込んでいるなら「あいつ等がいなくなれば私ダケノモノ・・・」と相手だけをデストロイするだろう ヤンデレは無限大の可能性がある ヤンデレは俺たちを育む宇宙なんじゃないかと俺は思うよ 445 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 01 26 28 ID SZjTJRlX 443 明確な定義があればいいんだけどね。 広辞苑あたりがビシッと載せてくれればそれで解決だぜ。 446 名前:429[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 02 11 31 ID bi7ww6P2 431 ありがとう、俺の心が浄化された。 俺の携帯からだと少し面倒臭い事しないと読めなかったから飛ばしてたみたいだわ。 447 名前:ヤンデレの薬[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 08 38 45 ID u5ECGHpw みなさんありがとうございます。 自分シリアスが苦手なんでシリアスな話になりやすいヤンデレを笑いにしようってコンセプトで書いてみたんですが、ヤンデレと笑いって合い入れないものなんですかね(´・ω・`) それともただ単に自分の力量不足なだけかもしれませんがw なんにせよ次は頑張ります。 ヤンデレを 萌のかわりに 笑にする 448 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 10 00 19 ID FBz1G16h ヤンデレのコメディはなんだろうな 病的にまで愛してるんだけど、どこか憎めない、どこか怖くないって感じが強いかもな 住人は基本ヤンデレになった過程と理由を重視するので、 「病んでしまうくらい愛してしまった」過程になんか面白みを入れてみるのもいいかもな 例えば夢見がちな女の子がいたとして、主人公がたまたま毎回毎回 その女の子が困ってたりするときに助けてくれたりするうちに 『私の王子様!』みたいな感じでとってしまってたりな でも主人公には自覚なくてただ偶然に助けたりしてるだけなかんじ で、いっつも告白しようとしたりするんだけど妄想がひどいので いっつも言いたいことが伝わらなかったりとかなw 449 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 16 49 ID USB98JEl こんばんは、大変時間がかかってしまいましたが無事にショタヤンデレ作品が完成しましたのでさっそくですが 投稿します。 ショタヒロインに関して貴重なご意見を頂けて大変嬉しかったです、どうもありがとうございました。 それでは始めます、一応ショタとグロ、そしてインチキ時代劇注意です、長くなりますがご覚悟を…。 「月輪に舞う」① …あらあ、兄ちゃんここいらじゃ見かけない顔だわね…いやいやあ、こんな狭めー村じゃあよその人なんて一発で解っちまうからよお……そんで、今日は何かい?こんな山奥の村の、よりにもよって居酒屋によお…へえ、学生さんで、こんなところまで民俗学の研究ってかい…。 そんで…昔話?そんなモンを調べてんのかい?…いいぜえ、んならおらっちさが教えてやっからよお…。 …これはむかーしむかし、まぁだ織田信長がガキ大将をしてた頃…そこの筑摩山に、忍者の里があったころのお話でよぉ…。 …空からは大粒の雪が降っていた、まだ季節は神無月の初旬であるというのに…。 男は走っていた、といってもただあてもなく走っていたわけでもない、久々に仕事を終えて久々に里に帰るために走っていたのだ。 「寒いな…全く…」 男の口からはそんな言葉が漏れた、無理もない。時刻は丑三つ時、さらに雪が降っていると言うのに男は傘もかぶらず薄い綿入りを着ているだけといった格好で、更に汗で髪と、眼帯と顔を濡らしながらもすさまじい速度で街道を走っているのだ。 普通の人間ならばこの季節柄、凍傷…最悪凍死しまってもおかしくないだろう。しかし男は普通の人間ではなかった。 男の生業は忍者だった、しかもただの下忍ではない…里の土地柄ゆえか活動範囲こそ限定されてしまっているが、それでもそこそこ名の知れた流派の腕扱きとして、たった今まで任務をこなして…やっと里に帰ろうとしたときにこんな目にあってしまったのだ。 「今日はついていないな…本当に…」 そういいながら男は立ち止まると街道の右側にある山の獣道に向かって走り出した…獣道をまっすぐ入り、そのまま山を二つ越えれば男は見事里の家に帰れるといった具合である。 (二刻ほど掛かるかな…早く帰らねば本当に風邪を引いてしまう) 男はそんなことを考えながら懐かしい故郷の山道の土を踏みしめて…ふと異変に気づいた。 臭い…何かが匂う…それも普通の糞尿の類の匂いではない、これは…人間の血糊の匂いだ。 「…死体か?」 男は呟いて辺りを見回した、訓練された目はこんな夜道でも梟のごとくものを見ることが出来るのだ。 男は視線を周囲にめぐらし…自分の横にある大木の下に目を向けた。 そこには一人の…裸の人間が横たわっていた。まだ雪が降り積もっていない分熱を帯びているようだ…辺りには衣服が乱雑に散らばっており、血の匂いもそこから漂っている…。 「…生きているのか?」 倒れこんだ人間にそう男が尋ねた瞬間、背後にまばゆい光が迫った…。 450 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 19 24 ID USB98JEl 「月輪に舞う」① 「水雲さま!帰ってこられましたか!蓑虫は嬉しゅうございますぞ!!」 男…水雲が背後に振り向くと、そこには提灯を持った初老の…隻眼の男 が立っていた。 「…何だ、蓑虫か…驚かすなよ…」 「へへぇ…すいやせん…」 そういって蓑虫は顔をくしゃくしゃにして微笑んだ…その手には蓑と傘、更に はかんじきと酒徳利までもが握られている…どうやら帰るのが遅い自分を心配して 迎えに来てくれたようだった。 「出迎え有難う…ところで蓑虫、少し提灯を貸してはくれぬか?」 「へえ?いいですが一体何を?」 「…あれだ」 そう言うと水雲は蓑虫から提灯を受け取り、大木の根元を照らした。 「…こりゃあ…死体?ですかい?」 「いや…息があるな……これは」 水雲はそういいかけて…息をのんだ。 根元に横たわっていたのは少年…いや、少年だった、と言うべきか… その見た目は少年と言うにはあまりにも美しすぎた。 …まるで雪と同化したような真っ白な肌と髪、そして少女のように 整った顔立ち…そして前文全てを否定するかのように股間に生えた可愛らしい一物 …脱がされた服と、下腹部の出血から考えれば乱暴され、そして口封じがわりに刀で斬られた のは明白だったが…その光景さえも美しく感じるぐらいに少年は魅力的な…まるで、妖気を放っていた。 「うう…」 光に反応したのか、少年は弱弱しい声を上げる…そのわずかに見開かれた目と、紫色の唇は…。 …どういうことだコレは、俺は狸にでも化かされているのか?…コイツは、コイツは一体?…。 「…鬼灯…」 「ひ…ひい!いけません水雲様!すぐお離れください!こいつはきっと妖の類です!…でなければ あんな、ほ、鬼灯様のような顔は!」 後ずさる蓑虫を、水雲は睨み付けた。 「・・・蓑虫、少し黙れ」 その目は普段の穏やかな水雲の目ではない、近頃関八州を騒がせる忍…天目水雲の目だ。 そういうと水雲は蓑虫に手を差し出した、蓑虫は事情を察してすぐに酒徳利を手渡す。 水雲はそれを手に取ると口に含み、少年のそばに寄ると、酒を傷口に吹き付けた。 「…ぎああああああ!!!」 少年はまだそれほどの力が残っていたのか甲高い絶叫を上げる、水雲はついで懐にしまった 路銀代わりの絹糸を取り出し、持っていた針に糸を通す。 「…助けるのでございますか?水雲様?」 「ああ、このままほおっておいたのでは気分が悪い」 そう言うが早いか水雲は絹糸で少年の傷口を仮縫いして、自分の着ていた綿入りを着せ、蓑虫 の持ってきた傘と蓑を被せた。 「これを飲め…体が温まる…」 「う…あう…」 「もう大丈夫だ、お前は必ず助かる」 水雲は普段の柔和な顔でそう呟きながらかんじきを履いた。 451 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 24 59 ID USB98JEl 月輪に舞う」① …これは、やはり神様仏様が下された罰なのか…?。 …少年を担ぎ、少年を気味悪がる蓑虫を連れて里に向かって走っている間 水雲はずっと考えていた、背に担いだ少年は微弱ながら脈もあり、声も上げ られる、急いで里に帰れば命は助けられるかもしれなかった。 しかしその少年の容姿は…あまりにも似ていた、いや…瓜二つだった… まるで金型で鋳造したかのような容姿…そして、よくよく見ればその姿は… 白子(アルビノ)というところまで全く同じだった。 …水雲、好きだよ…そう、今にも少年は自分にそう呼びかけてきそうな気がした。 「…馬鹿な事を考えるな、こいつは鬼灯ではない…」 水雲はそう呟いて自分の考えを否定した…そう、こいつは鬼灯ではない、彼女はあの 日死んだのだ…だから、そんなことはもうあるわけがないのだ…。 水雲は動揺する心を必死に押さえつけて二つの山を越え、やっとの思いで筑摩の里に たどり着いたのはやや空が白くなり始めた頃だった。 筑摩の里は周りを山野に囲まれた小さな小さな村である、しかし塩が取れないと言う 事情からか物流は行われ、人の行き来は常人が思うよりは多少はある…忍者を育成する のに適した、それでいて程よい閉鎖環境を保っている村だった。 「先生!起きてくれ!頼むから起きてくれ!!」 明朝、朝一番に筑摩の村の診療所に乗り込んだのは水雲だった。 水雲はまだ鶏が鳴く前に医者をたたき起こすと、すぐさまに少年の怪我を直すように頼み込んだ。 そしてそのまま家にたどり着くと、水雲は死んだように眠った、実際二日も目を覚まさなかった ので蓑虫は本気で水雲が死んだのではないのかと心配したくらいだった。 「…遅れましたが報告終わりまして、以上にございます」 そして二日後、水雲はすぐ様に飛び起きると里の長に仕事の報告をした かりにも水雲は里でも腕扱きの忍…筑摩七本槍の四位である。これを三日も 怠って臥せっていては七本槍の名が泣くだろう。 「ご苦労であったな…時に水雲よ」 「はっ…何でございましょうか?」 「某はあの山で…鬼灯に似た少年を拾ったそうだな」 「はっ!」 「…陰間にでもなるつもりか?」 ぎりりと、水雲は唇をかんだ…。 「いえ…そんな気はありませぬが、どうも罪無き手負いのものは頬って はおけないゆえ…怪我が治ったらば、事情を聞いて元居た所に帰そうかと…」 「ならばよいがな…お主は里の宝故…間違いがあってはいけぬのでな」 「…ありがたきお言葉…ではこれにて」 内心苦々しい顔のまま、一礼をして水雲は里長の屋敷を後にした。 「鬼灯のことは忘れるのだ…」 里長の言葉はどんな攻撃よりも、水雲の心を傷つけた。 452 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 27 04 ID USB98JEl 「月輪に舞う」① 鬼灯を忘れろ、か…よくも言えたものだな。そう内心をいらいらさせながら も水雲は家に帰り、蓑虫の用意した茶漬けを食い、そのまま診療所に向かった。 「経過は良好だがな…どうにも人を怖がってかなわん…」 ため息をついて医者はそういった、もともと子供好きな男だったのだが、少年 には全くなついてもらえず、さらに自分を見ておびえられるという行為には耐えられなかったようだ。 「それで今、あの少年はどこに…」 「縁側で日向ぼっこをしているよ…しかしあの年で乱暴されて斬られるとは…不憫だな」 「…全て時代が悪いのですよ、それ一言で飲み込みたくは無い言葉ですが…失礼」 そういうと水雲は土間から診療所に上がり、縁側に向かった。 少年は縁側にたたずんで、飛んできた鳥と戯れていた、白子、と言う見た目と少女のように整った 顔はまるで風景を一枚の絵に変えていくようだった。 「…調子はいいようだな」 「…っ!!……あなたは…」 少年は水雲の声とともに竦み、びくりと体を震わせたが…その顔を見るなり、まるで地獄に仏、と いったような笑顔で水雲に微笑み返した。そして立ち上がると水雲にぺこりと頭を下げた。 「私のようなものの命を助けていただいて…本当に有難うございました…貴方がいなければ、僕はあ のまま死んでいたでしょう…本当に何度お礼を言っても言い足りないぐらいです…有難うございました」 「いや…例には及ばない、狭い里だがゆっくり休んでいくといい…怪我が治ったら元居た場所に送り届けてやるから安心しなさい」 「…お優しいのですね、有難うございます…」 忍びの性か、声や顔には出さなかったが水雲は大きく動揺していた、少年の凛、とした声は、そして笑顔はまるきり鬼灯と同じだった のだ…このまま押し倒したい、着物の襟から除く少年の白い首筋を見ると、水雲はそんな感情を抱きはじめ…また必死にその感情を抑えた。 「…しかし、申し訳ありませんが、自分には…もうきっと帰る家はありません。野党に襲われて…家は、屋敷は焼かれました…父様も、母様 も…生きているのかは怪しいものです…それに、家に帰っても…白子の自分は…」 座敷牢くらいしか居場所は無い、そう言いたいのだろう…この地方では白子は福を招く富の象徴だ…箱入りで閉じ込めて大切にはされるかも しれないが、人並みの幸せは与えられない…きっと少年を襲った連中もそのご利益だのといったくだらない理由で少年を犯したのだろう…と、なんとなく想像がついた。 それに少年がそういう身の上かもしれないことはうすうす気づいていた…もちろんその場合の返答も…苦心はしたが、考えてはいた…自分はもう二十歳で、さらに里 で責任ある立場にいるのだ、拾った孤児を放り出すのは恥だ…取るべき責任はきちんと取るべきだ。 怖がらせないように笑顔でそっと、そしてやさしく、水雲は少年に声をかけた。 「ならばうちに来るといい、ちょうど小間使いが欲しかったところだ…うちで使ってやろう…」 「…迷惑では、ございませんか?こんな、私のようなものなど…」 「迷惑などではないさ、それにこの村の住人もいい奴ばかりだから安心するといい…きっともう、つらい思いをする事はないだろう」 「う…う、うああああああ!!!ありがとうございます!ありがとうございますぅううう!!!」 少年は大粒の涙を零すと水雲に抱きついた、乱暴された記憶からか、男を見て怯えるという症状を起こしていたのが嘘のように、ぎゅ っと強く水雲を抱きしめた。 「…大丈夫、もう大丈夫だ…」 そういって少年を抱きしめ返す水雲の心境は複雑なものだった。あまりにも鬼灯と同じ外見を持った少年は…どれほど心で否定しても、水雲 のその心を惑わせるものでしかなかった。 …怖いよ、水雲…怖いよ… 少年の柔らかい肌…その感触で記憶が蘇る、初めて鬼灯を抱いたあの日の記憶が…。 「私の名は…天目水雲…お前の名は?」 「弧太郎…弧太郎と申します」 悲劇は、このときにもう始まっていたのかもしれなかった…。 453 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 28 19 ID USB98JEl 月輪に舞う① それから二週間ほど時が流れた、弧太郎はある程度心の傷が癒え始めたのか、水雲以外の他の男を見ても あまり怯えなくなってきた…。 弧太郎は村人たちとの交流も上手くいっているようだった、同い年の子供たちも始めはよそ者とあって近寄り がたいようだったが…それでもその人をひきつける容姿と優しい性格から打ち解けあい…やがては鬼灯の亡霊と 気味悪がっていた村の大人たちとも交流が出来るようになっていった。 「蓑虫様、それではそろそろ出かけましょう!」 「あいさあ!それでは早速行きましょうか!」 蓑虫も例外ではなかった…早くに子を失い、熱病で枯れたこの男もまるで 孫が出来たかのように弧太郎を可愛がってくれた。 「…よかった、本当に…」 水雲はほっとしていた、もしも弧太郎が皆と上手くいかなかったらどうしよう かと思っていたが…どうやらそのような心配は要らないようだった、まあ…しかし今一番の問題は…。 「よお!弧太郎ちゃん!釣りに行くなら俺も…うわっと!!!」 玄関から盛大に転ぶ音が聞こえる、妖気に弧太郎に声をかけるこの男は名を冬士郎といった…男が転ぶ 理由はただ一つ、男も水雲と同じ筑摩七本槍の上…片目を眼帯で覆っているからだ。 「馬鹿だねえアンタ…ねえ水雲、あんたもそう思わないかい?」 そしてその背後にもう一人、やはり眼帯の女が立っていた。 「門女まで…一体どうしたんだお前ら…?」 「っつ!どうしたもこうしたもないさ…弧太郎が釣りにいくって言うから俺も一緒に行こうと思ったのよ!」 「…そうか、人気者なんだな…あいつは…よかった」 「ああ、人気者だよあの子は…化粧もよく似合うしねぇ…ふふふ」 そういって笑う門女と冬士郎の笑顔を見て水雲は笑った…。 「しかし、遅かったな冬士郎…弧太郎なら今さっき蓑虫と沢に向かっていったところだぞ」 「何ぃ!早く言えよ!じゃあな!」 水雲と門女は急いで駆け出す冬士郎の背中を見送った。 「…しかし不思議だねえ、鬼灯の実の兄貴だったアイツが…あんなにもあの子と遊びたがるなんて」 「…それをいうなら、鬼灯と許婚の俺はもっと不思議と言う事になるな…ところで門女」 「ああ、私もあの子と遊びたいのは山々だけど…アンタに用があったんだよ、はい!」 そういうと門女は懐に持っていた札を水雲に差し出した、真っ赤に塗られた札には、甲斐という文字が書かれている。 「…仕事か、今度は甲斐の国とは…長くなりそうだな」 「ああ、そうだろうね…」 「冬士郎共々…弧太郎を頼むぞ…色々と、な」 「任せときなって、それよりあんたも…生きて帰ってくるんだよ、弧太郎ちゃんが悲しむから」 「ああ…それから」 水雲は門女の言葉に安心すると、身支度を始めた。 赤札は暗殺の印だ、詳しい情報は甲斐にいる草の者にでも聞けば解るだろう…。 「あの子は何が何でもこの世界にかかわせないでくれ…頼むぞ」 「…任せときな…」 水雲にとって一番の心配事、それはやはり…弧太郎がこの忍の世界にかかわる事だった。 454 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 29 56 ID USB98JEl 月輪に舞う① 翌朝、水雲は泣きじゃくる弧太郎をおいて村を出た、名残惜しかったが仕方のない事ではあった。 いかないでくださいませ!水雲様…そういう小太郎を振り切って、水雲は甲斐の国へ向かった。 休息が終わり、任務に戻れば日々はまたいつものように殺伐としたものだった。 今回の仕事は近々行われる戦の情報収集というものだった、水雲は主に的に作戦を傍受してそれを伝え さらに作戦に重要な指揮官を暗殺してくる任務を負わされた。 普通の忍なら甲斐お抱えの根来衆の目をくぐって諜報活動をするのは至難の技だろう、しかし水雲には それを可能にする特殊能力があった。 水雲は甲斐の陣よりやや離れた森にいた、見回りの来る心配のないそこで深呼吸をすると水雲は片目を 覆う眼帯を取った…象牙で出来た眼帯の下には、大きなくぼみと…青い義眼が埋め込まれていた。 青い義眼は筑摩の里の秘法…忍術を使える者にのみ与えられる証明だ…そして水雲の忍術は…一瞬にして 背景と自分とを同化して、視覚と聴覚、さらに嗅覚から自分を消し去るというものだった。 (いっそ任務も俺のように消え去って、早く里に帰れればいいのにな…) 敵たちの横を悠々と通りながら水雲はそう考えた…早く帰って弧太郎に会いたかった…。 その頃、弧太郎は一人深夜の神社に御参りに行っていた、俗に言うお百度参りというものである… 願いはもちろん、水雲が無事に帰ってくるように…それだけだった。 (水雲さま…生きて、帰ってきてください…) 弧太郎は無心に祈っていた、自分の命の恩人の生還を…それはもちろん救ってもらった恩義もあったが 弧太郎はそれ以上に一刻も早く水雲に会いたかった…会って、何時もの笑顔を浮かべたまま、自分をやさしく 抱きしめてもらいたかった…。 まだまだ子供とはいえ…弧太郎は水雲に対して淡い恋をしていたのだ。 「水雲さま…弧太郎は、早く会いとうございます…」 「そうか、それほど会いたいのか…ならいい方法を教えてやろうか?」 背後からいきなり声をかけられて弧太郎は一気に後ろに振り向いた。その先には …眼帯をした老人がいた。 「何者です!?」 「安心しろ、わしはこの村の者だ…」 老人はそう言うと微笑んだ、そしてこう言った。 「水雲に会いたいのなら忍になれ、さすれば嫌でも一緒に仕事をすることになるだろう …それに、あの男の役に立ちたいとは思わんか?」 「…役に、立つ…」 その言葉に、弧太郎は悩んだ…今こうしてあの人の帰還を望むだけでいいのか、恒にそう も考えていた彼にとっては…老人の言葉は渡りに船、といった所だった。 目の前にいる笑顔の老人の正体がこの筑摩の村の長であるという事も知らずに…。 455 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 10 31 54 ID USB98JEl 月輪に舞う① それから半年後、やっとの思いで任務を終えた水雲は一刻も早く帰郷するべく、筑摩の里への山道を 凄まじい速度で上っていた。 その背には大きな風呂敷包みがある、中には露店で買った弧太郎へのお土産が山ほど詰まっていた。 (弧太郎、喜んでくれるといいのだがな…) と、顔をにやつかせながら走る水雲の前に、白い影が現れた。一瞬で立ち止まって身構える水雲。 「山河と筑摩…その意は」 白い影はそう訪ねた、夕暮れ時の山道で顔はよく見えないが…これは筑摩の里特有の、確認の合図だ… 水雲は答えた。 「ただ一人、月輪に舞う…」 「水雲様!!帰ってまいられましたか!!」 白い影はそう言うと、水雲の胸に飛び込んだ…その小さな姿、そして香る少女のような匂い…間違いない… コイツは弧太郎だ…。 「ああ…さびしい思いをさせてすまなかったな、弧太郎…」 「嬉しゅうございます、手も…足もある…ぐ・・・ぐず…」 弧太郎は水雲の胸で泣きじゃくった…無理もない、半年も文もよこせずに任務に没頭していたのだ。 さぞ寂しかったのであろう…やはりこう言う所は鬼灯とは違うのだな…だが、それでいい…。 そう考えて…ふと、感じた違和感を拭うため、水雲は一気に弧太郎を押し倒した。 「うわ!!ああ!!水雲様…何を…!?」 水雲は一気に弧太郎の服の胸元をはだけさせる…そして、白い肌とともに現れたあるものに、水雲は愕然とした。 「……お前、忍になるのか?…誰に技を教わった!?」 「は…はい…まだまだ至りませんが…蓑虫様に…」 弧太郎は少し嬉しそうに、顔を赤らめながらも答えた…。 「里へ帰る!帰るぞ!!」 水雲はそういうと、凄まじい速度で山道を駆け出した、そんな態度に弧太郎はきょとんとしながらも… 衣服の乱れを直し始めた。 弧太郎は嬉しかった、水雲は自分の変化と…服の下に隠れた…稽古の後の痣に気づいてくれたのだ。 きっと水雲は驚いて、嬉しさで言葉も出ずに走り出してしまったのだろう…そう考えた。 …恥ずかしがり屋なのかな…でも、こうして水雲様に…思ってもらえているというのは…悪くないなあ ・・・でもどうしたんだろう、いきなり僕の裸を見て…興奮したのかなあ?…そうだったら、少し嬉しいな…。 弧太郎は気づいていなかった、水雲の顔が完全に青ざめていた事に。 「お館様!これは一体どういうことでございますか!?」 水雲は一気に里の館に向かうと、任務の報告もそこそこに里長に事を問いただした。 「どうもこうもない…あのものは忍の素質があるでな、わしが蓑虫に育てるように命じた」 「…里の秘法を、部外者に教えるということは…」 「これは里の総意だ、そのような小さなことはどうでもいい…それにお主も見ておろう、弧太郎は この半年で…蓑虫の攻撃全てを交わし、反撃を二手三手いれるほどになったのだぞ…あの実力は素晴らしい きっと鬼灯のように抜け忍などにならずに…里の反映に手を貸してくれようぞ」 …水雲はぎりぎりと、歯をかみ締めた…。 最も起こってはいけない事が起こってしまったのだ。 456 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 27 01 ID USB98JEl 月輪に舞う① 弧太郎は戸惑っていた、あれから数日の間、水雲はまるで口も聞いてくれないのだ。 「水雲様…今日は、蓑虫様ではなく、水雲様に術を教えていただきたいのですが…」 「成らぬ、師が二人つく事は里の掟に反する」 そういって昼ごろに起きると、いつもどこかにふらふらと出かけてしまうのだ。 …やはりまだ自分は半人前故に、厳しくしてくれるのかな?…弧太郎はそう考えた それはある意味いつか自分を認めてくれるのだろうという期待に繋がった…。 「行きますぞ!弧太郎様!」 蓑虫は師として厳しく、時には何時ものようにやさしく弧太郎に師事した、水雲の 任務に比べれば軽い仕事なども任されるようになった。 泣きたくなるような日もあった…そして、時に人も殺した…それでも、この行いが いつの日か水雲への恩返しに繋がるのなら…そう考えた。 「もう…駄目なようだな…あれほどの才能が有れば…今夜辺りには…」 「ごめんね…水雲…私、力になれなくて…」 そんな様子を門女と共に影で眺めながら、水雲は涙をこぼした…。 「…そうではない、あれほどの才能があれば里の忍は誰も放ってはおけないさ…でも でも俺は…あの子に…なんて事を…」 「…ごめんね、ごめんね…私が悪いんだ…鬼灯の時だって…私が…」 「…いうな、かどめ…うう、うう…」 二人は抱き合って、泣いた。 457 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 31 18 ID USB98JEl 月輪に舞う① その晩、弧太郎は蓑虫に里の近くを流れる渓流に呼び出された…奥義の伝授、そういう話だった。 「あ…蓑虫様…」 弧太郎は影から音もなく現れた蓑虫のその格好に驚いた…服は黒の忍服、鉄鋼と脚半を装備した その姿は…まるで修行ではなく、本当の任務に向かうときのような服装だったからだ…。 「…先手は譲ろう…来い、弧太郎!!」 「は、はい!!」 言うなりいきなり抜き身の刀を渡すと、蓑虫は後ろを向いた。 「こ、これは一体…」 「この里では奥義の伝授は…師を殺して初めて行われるのだ!!…水雲と並ぶ実力が欲しいの ならば…ためらわずに来い!!」 「う…うおおおおお!!!」 蓑虫の声はぞっとするほど冷たい…しかし…ここまで来て、ためらうわけには行かない…そう 弧太郎は…水雲の手助けをするため…そのために忍になったのだ。 刀を水平に構えて、一気に蓑虫の背後に迫る。しかしそうもうまくはいかない、蓑虫は軽く その攻撃を受け流すと、後方に弧太郎を弾き飛ばした。 「ぐう…っつ!」 倒れこむも一気に飛び起きて襲い掛かろうとする弧太郎、しかし眼前に蓑虫の姿はなく…いや、 その姿は上空にあった…蓑虫は服の袖からは黒い縄が四本、まるで触手のように飛び出していた。 蓑虫の術は袖から出した縄をまるで本当の腕のように使う、といったものだった・・・伸縮自在な上 にまるで鉄鞭のような硬度を持ったそれでいっぺんに叩かれては、普段の練習とは違い…弧太郎の肉 は簡単に裂けてしまうだろう。 ヒュ!!ヒュ!!!ビシイ!!!! 凄まじい音が響く、しかし縄が叩いたのは蓑虫が手渡した刀であった。 弧太郎は一気に後ろに飛ぶと、手に持っていた標で次々に三本の縄を切り落とす、これが弧太郎の 修行の成果だった。 もちろんこんな芸当は水雲でも出来ない。 「はあ!!」 蓑虫は残った一本の縄で木に飛び移ろうとする、しかしその縄すらも切り落とされると…一気に地面 に落ちた、いや、叩き落された。 「…ぐ、うう…」 それほどの高さではなかったので何とか息はあった、しかし片手の骨が折れたようで…老体の蓑虫に 反撃は不可能なように思えた。 「はあ、はあ…」 その体の上に弧太郎が馬乗りになる、手には大きな標が握られていた…勝ちはもう決まっていた、しかし 弧太郎は…息を荒げたまま 刃を刺せないでいた。 「どうした…やれんのか…」 「…はあ、はあ…あなたをそう簡単に…出来るわけ…」 「…やはりな、余所者の上に…陰間にはそのような根性はありはせぬか…」 「な…なあ!!!」 まだ数えで11である弧太郎にとって…蓑虫を、水雲のいない間、まるで孫のように可愛がって くれた蓑虫を本気で尊敬する弧太郎にとってその言葉は…ただただ動揺するしかなかった。 「忍になって水雲の気を引きたいのであろう…しかし、哀れよ…愛するもの以外を殺す覚悟のない お前には…陰間のお前には…水雲に愛される資格などは…抱かれる資格等はないわ!…あやつにとって お前はただの…拾った子犬に過ぎぬ!!」 弧太郎は動揺していた、訳がわからなかった。 何で、何でそんなことを言うのです…蓑虫様…僕は、貴方を尊敬しているというのに、水雲さまの次に 僕をかわいがってくれた貴方を…親同様に、好きだったというのに…わからない…なぜこの様な目にあうのか 人を愛するのがこんなにつらくて大変な事なのか…何故こんなにも苦しむのか…わからない、わからないわからない わからないわからないわからない……うああああああああ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!こんなことせずに…いっそ僕が… でも…でも水雲様…僕は貴方の事が、僕は貴方の事が…ダイスキナンデス・・・オヤクニタチタインデス…ソバニイタインデス…ダカラ… ごめんなさい、本当にごめんなさい…みのむしさま。 「は…はははっ!!はははははははははははは!!!!」 どすり!!と…笑い声と共に、弧太郎は標を蓑虫の胸に突き刺した。 ぐう!と蓑虫が悲鳴を上げる。 458 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 33 33 ID USB98JEl 「…お見事…もう、これで…水雲様の守護のお役目は任せられますな…弧太郎様…」 そういうと、蓑虫は弧太郎の頬を優しくなでた…弧太郎はきょとんとする。 「…貴方の実力なら…その覚悟がおありなら…たとえ子は宿せずとも、夫婦には なれずとも…ずっと水雲さまをお守り出来ましょう…なに、元は里一といわれたこの 蓑虫を殺せたのです…しんぱいは…」 「あ…ああああああ!!!いやだ、蓑虫様!!いやだああああああ!!!!」 弧太郎は全てを悟ったのだ、蓑虫の想いを…しかし時はもう遅かった、蓑虫の呼吸は 次第に弱弱しくなっていく…その間、弧太郎には蓑虫とすごした日々の走馬灯が見えた …たった半年とはいえ、彼との思い出は…弧太郎にとっては大切なものだった。 そして数秒後、蓑虫の息は完全に途絶えた…。 「ふ…ふふふ、あははっ!!ははははははは!!!あはははははははは!!!!」 顔を血にぬらし、涙を流しながら笑う弧太郎…その背後に突如として篝火が現れ… 弧太郎の周りを七つの影が取り囲んだ。 「大儀であったな弧太郎…これでお前は晴れて筑摩の里の忍…それもその上の、筑摩七本槍 の七位の位が授けられようぞ…」 七つの影を引き連れて、弧太郎の眼前に現れたのはあのときの老人…この筑摩の里の里長だった。 「…あなたは…そうですか、貴方が里長なのですか…」 微笑む里長と、空ろな目と言葉でそれを帰す弧太郎…弱弱しいながらも弧太郎は里長にぺこりと頭 を下げる…その瞬間に、弧太郎は二つの影に両手を掴まれた。 「悪く思うなよ、弧太郎…」 影の正体の一人は冬士郎だった、冬士郎はそう耳元で呟くと、懐から竹筒を取り出して里長に渡した。 この筒を使って里長は継承儀式で師を殺した忍の目をえぐり…秘伝の義眼を埋め込む事で奥義を継承させる ことでこの儀式は終了する…それが手順だった。 「・・・・・・いえ、里長殿と、冬士郎様の手を煩わせるまでもありません…」 しばしの沈黙の後、弧太郎はそういった…するり、と二人の拘束を解いて竹筒を里長の手から取り上げる。 「これも、必要ありません…」 ヒュ!という音と共に手刀で竹筒を割る。そして弧太郎はそのまま…人差し指を一気に瞼に当てた。 これは罰だ、自分を大切にしてくれた人を殺した自分への罰だ。 「ぐ……ぎああああああ!!!!」 ブチュ!グチュ…血の音と共に甲高い声で悲鳴を上げながらも一気に目玉を引き抜く弧太郎…ひときわ 甲高い声を上げると同時に…目玉は弧太郎の手中に落ちた。 「よろしい…それではこれからも…せいぜい…水雲と、筑摩の里のために働くがよいぞ、弧太郎」 里長は弧太郎の目玉を受け取ると、それと引き換えに白い義眼と、象牙の眼帯を与えた。 …弧太郎はそれを聞くとその場にへたり込んだ、里長と七本槍のうち四人はそのまま渓流を去り… 残りの二人…門女と冬士郎は蓑虫の死体を担ぎ上げて墓地へ向かう、そしてその後には…水雲と弧太郎 のみが残された…水雲はそのまま弧太郎を優しく担ぎ上げる。 水雲は泣いていた…蓑虫を失ったという悲しみもあったが…それ以上に、これまでさせるまいと思って いた弧太郎に…つらい思いをさせてしまったのが申し訳なかった。 「私は…水雲さまを守ります…絶対に守ります…ふふふ、あははははは…」 うわごとのように、こんな言葉を繰り返させるくらいに…弧太郎の心を追い詰めていた原因が自分にある のが…とても悲しかった。 「おしたい申しております…大好きです、水雲さま…」 こんな自分でもなお、慕ってくれている弧太郎…水雲は、その弧太郎の姿をいとおしく思うと共に…それでも 鬼灯の事を忘れられずに弧太郎の気持ちに答えられない自分を恨めしく思った。 459 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 35 18 ID USB98JEl 月輪に舞う ① それから二日の間、弧太郎は屋敷の自分の部屋にこもってしまい、たとえ水雲がなれない 食事をつくろうとも…部屋から出てこなくなってしまった…。 三日目、水雲は意を決して弧太郎の部屋に飛び込んだ。 「弧太郎…いい加減に飯を食わないと死んでしまうぞ…」 炊いた粥をもって部屋に飛び込む。その先では痩せこけて青ざめた弧太郎が…抱きしめた布団 に何かを呟いていた。 「…大好きですよ…すいうんさま…え、もちろんみのむしさまもだいすきですよ…うふふ…」 心が壊れたのか…いたたまれない…そう思い、それでもあきらめきれない水雲は弧太郎を抱き 起こすと、その唇に口付けをした…それならば、せめてものこいつの願いをかなえてやろうと。 「うわあ!…ん…ちゅ…はあ…」 そのまま舌を口腔内部に侵入させる…唾液もほとんどなく、乾いたそこは甘い味がした。それに あわせるかのように、弧太郎も水雲の舌に自分の舌を絡ませ…そのまま、長い長い接吻が続いた。 「ん…水…雲さま…弧太郎は…弧太郎は…水雲さまを…愛しております…だから…」 抱いて欲しい、そういうことなのだろう…水雲は無言で了承して、弧太郎の寝巻きを脱がせた。 「あ…恥ずかしいです…」 弧太郎はまるで少女のように胸と股間を隠す…そんなことはしなくても、何度となく見ているという のに…水雲はその行為を微笑ましく思った。 ……いや、違う…水雲は頭の中で浮かび上がる思考を必死に否定した…あの時も同じだったのだ…自分の 師を、祖母を殺して…自ら片目をえぐって儀式を終え…引きこもる鬼灯を抱いた日も…今日と同じこの日この季節…。 「水雲さま・・・やはり、私は…男は…嫌いですか?」 「そうではない、そうではないのだ…俺は、お前を…別の女と…死んだ許婚と…重ねようとしているのだ、そんな 俺にお前を抱く権利など…」 肩を震わせる水雲、弧太郎はその体を優しく抱いた。 「ふふふ…いいのですよ水雲様…私は…たとえ貴方が…貴方がどう思おうと…たとえどんな女性と私を重ねようと… 私は貴方を、愛しておりますから…」 水雲は情けなかった、涙を流した…しかし、それでも、弧太郎が元気になればと…弧太郎を抱いた。 「っ…痛くないか…弧太郎…」 「はい…嬉しいです、嬉しいです…ん…ああ…うれしいです…すいうんさま…ああ!!」 「…くう…は!あ!」 二人は同時に達した…事後…水雲は弧太郎にやさしく口付けをし、抱きしめ…明朝、里長の指令を受けて 奥羽に向かうべく屋敷を後にした。 「もしもこの任務を断れば、弧太郎にはもっときつい任務を与える」 里長はじかに水雲の前に現れてそういった…応仁の乱をとうに過ぎたとはいえ、まだまだ未開の地である 奥羽への遠征はたとえ水雲であってもそれなりに危険が伴うだろう…それでも、それでも水雲はたった一人 奥羽へ向かった。きっと弧太郎は悲しむだろう、でも…この指令を聞かねば、それだけはすまないのも事実だろう。 (何があっても…俺は必ず守る、弧太郎を…この命にかけてでも…) 水雲の決意は固かった…里を離れると言う事がどういう意味を持つ事なのかも考えずに。 460 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 37 13 ID USB98JEl 月輪に舞う② そしてそれから一年の月日が流れた、水雲は奥羽から里に帰る前にさらに尾張の任務に向かわされ… ある日、尾張の町で薬屋に変装して蕎麦屋で食事を取っていると…こんな噂を聞いた。 「-近頃、腕利きの白子のくの一が現れる-」と 水雲は嫌な予感を抑え、必死の思いで任務をこなし…里へ戻った。 里に戻った水雲が見たのは…月日が流れて男らしく成長するどころか…まるきり、そう、まるで鬼灯 の生き写しのように…化粧のよく似合う、女のように育った弧太郎だった。 「お前らは里長にいいように使われてたのさ…」 冬士郎は久々にあった水雲にそう言った…里長は同じ事を弧太郎にいい、そして弧太郎をきつい任務 につかせて…二人を使っている、冬士郎はそう断言した。 「なぜ…そんな事を…」 「お前が不安要素だからさ…お前の力は強いが、抜け人の鬼灯の許婚だ、いつ裏切るかわからない分 こうやって弧太郎っていう子犬を人質に取っておけば裏切られる心配はないし…忠実な子犬を安心して飼う事も出来る…」 「なぜ、我々はこうも…あの子はこうも…辛い目に合わされるのだ?」 「そうするしかないのだよ、それが忍だ…そう割り切らなければ、お前に殺された妹は…鬼灯は、もっと簡単に抜け出せたはずだ…」 二人は同時に俯く、とそこに弧太郎が走ってきた。 「…水雲様…お会いしとうございました!お会いしとうございました!」 弧太郎はそう言うなり水雲をひしと抱きしめた、事態を悟った冬士郎は気を使ってその場を離れる。 「少し、背が高くなったな…ただいま、弧太郎…」 「はい、はい…お帰りなさいませ!!水雲さま…大変お疲れだったでしょう、今夜はごゆっくりお休みくださいませ・・・」 弧太郎の顔は少し痩せているように見えた…そして表情もあの日からあまり変わらず、どこかその瞳も空ろに見えた…。 弧太郎は水雲の体を話すことなく、そのままぼろぼろと涙を流し始める…そんな弧太郎を水雲はせいいっぱいの気持ちで労う為… 口付けをして、その場に弧太郎を押し倒した。 それから数日の間、弧太郎と水雲は交わり続けた、弧太郎は何度となく水雲を求め続け、水雲もそれに応じた…まるで埋められなかった 時間を体で埋めるかのように…そして、事が終われば二人は抱き合って眠りについた…そんな生活が二、三日続いた。 なぜそこまで執拗に弧太郎が体を求めてきたのか?・・・その謎はその日、呼び出された里長の屋敷で判明した…里長は水雲に命じたのだ 門女との結婚を…。 461 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 39 15 ID USB98JEl 月輪に舞う② 「もう…ここまでなのですかね…」 弧太郎は川原にいた、たった一人・・・里の中でもっとも信頼した師である蓑虫を殺した川原で、手に短刀を持ってたたずんでいた。 弧太郎は悩んでいた…せっかく得た水雲を守るという誓い、たった一人で彼に仕える…その想いすら打ち砕かれる事になってしまう ことに、彼の心はもう耐え切れなかった。 いっそ門女を殺したかった、でもそれは出来なかった…もう誰も傷つけたくない、蓑虫を殺した時のような想いはしたくない…そして 何より、水雲の悲しむ顔を見たくはなかった。 「よせ、自害などするな…」 背後から声をかけたのは冬士郎だった、彼は涙で頬をぬらす弧太郎に手ぬぐいを渡すと弧太郎の横に座った。 「冬士郎様…しかし自分は…怖いのです、このまま壊れて…誰かを傷つけてしまうくらいなら…いっそこの手で…」 「俺の妹も、鬼灯もそうだった…あいつはお前と同じく、心が壊れるのを防ぐために逃げて…最も愛する水雲に殺されたのさ」 「…!!…何故…一体鬼灯さまという方に何があったというのですか!?」 「あいつは心が壊れたのさ…師であるおばあを殺した日から水雲に依存を重ねてたんだ…そしてその挙句、水雲に横恋慕して迫った くの一を殺して…」 里掟を破り、責任を取るべく送り込まれた水雲に殺された…それが鬼灯をめぐる事件の顛末だった。里の友人である門女を人質に 取られた水雲は悩んだ挙句…斬り殺したのだ、鬼灯を。 「うれしいよ…こんな私でも泣いてくれるんだね…水雲…」 彼女はそういって事切れたらしい。 「…私はその方と同じように生きていたのですね…でも、その方と同じになって…水雲さまに迷惑をかけるくらいなら…いっそ! うわあ!!な、何を!?」 言い終わるのを待たずに冬士郎は弧太郎を押し倒した、そしてそのまま一気に着物の服をはだけさせる。 「…俺の話がここで終わると思ったか?…俺はお前に言いたいのだ…弧太郎、もう俺は我慢できん…俺の女…いや、男になれ、俺は 絶対にお前を幸せにする!悲しませることなどしない!…もう嫌なのだ…水雲に、あの男にお前を取られるのは…こたろう、こたろう!!」 「い…いやあ!!お止めくださいませ!!冬士郎様!!あ!ああ!!」 弧太郎の弱弱しい叫びを無視して冬士郎は弧太郎の乳首を舐めまわす…そしてその唇を弧太郎に近づけたとき…冬士郎の首は綺麗こぼれ落ちた。 「あ…ああああああああああ!!!!嫌嗚呼嗚呼アアア!!!!!」 条件反射、といった方がよいのだろうか…弧太郎はいつも、暗殺任務のときにそうしていたように手に隠し持った大型の標で一気に冬士郎の首を 切り落としたのだ…初めて里の皆にあったとき、陽気に自分に話しかけてくれて…まるで実の兄のように遊びを教え、蓑虫と同様に自分を気にかけて くれた男を…冬士郎を…。 「・・・…うああああああああ!!!!ああああああああ!!!!!」 弧太郎は泣いた、泣きながら走り出した…もう何が何かわからなかった、自分の生き方を呪った……自分に優しくしてくれた人を殺し、愛してくれた 男に迷惑をかけ続ける自分を呪った、でも…それでも、弧太郎は…愛していた、水雲を、愛していた。 「あはははははははははは!あはははははは!!水雲様、もう、もう弧太郎に生きる資格はありません! でも、それでも貴方を!貴方が!私は貴方が好きなのです!!!あははははははははは!!」 せめて、里掟にしたがって水雲に自分を殺させないようにと…山の谷に向かって弧太郎は走った。 462 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 41 14 ID USB98JEl 月輪に舞う② 弧太郎に相談があると呼ばれて、所用で少し遅れながらも川原にたどり着いた門女は冬士郎の 首なし死体を見て…ここで起こった事の全てを悟った。 「…このままじゃだめだ!弧太郎を助けなきゃ!!」 門女は眼帯を取って術を使った…門女の術は一種のレーダーのようなものである、弧太郎の残 した気配をたどれば彼がどこに向かうのかは察しが着いた。 門女はいそいで水雲の家に向かう、そして水雲に全てを話して…自分の持っていた巾着袋を放り投げた。 「このままいけばあの子は自殺しちまうだろうし…もしもそれを食い止められても、里掟でまたあんたは あの子を鬼灯と同じように殺す羽目になる…だから、逃げな…それを持って、唐にでも」 以外に大きな袋の中には金塊と宝石が入っていた、これだけの量が有れば唐まで逃げるのは余裕だろう。 「…かたじけない、しかし…そうなればお前は…」 脱走幇助でどの道死ぬ羽目になる、そう言おうとした瞬間、門女は怒鳴った。 「馬鹿野郎!あの子はアンタが好きなんだよ!蓑虫を殺して!心を壊しながらも忍びになって!冬士郎を 殺せるくらいにあんたの事が好きだったんだよ!?それを…また助けてあげないでどうするのさ!また助け られなかった私はどうなるのさ!…早く行っちまえよ馬鹿野郎!!」 「…すまない、門女…」 そういって水雲は門女に背を向けると、山の谷に向かって走り出した…門女はそれを涙目で見送ると…胸に 短刀を当てながらこう呟いた。 「あの子を幸せにしろよ…大好きだったよ、水雲…」 門女は一気に自分の胸元を短刀で刺し貫いた。 弧太郎は崖の前で立ちすくんでいた…そろそろ、潮時かな…そう考えて崖に飛び込もうとしていた。 このまま飛び込めば下は岩石がごろごろした大きな穴が広がっている、きっと死ぬ事は簡単だろう。 「愛していますよ…水雲様…ふふふ…」 …ありったけの思い出を思い出して、たっぷり感傷に浸った後、弧太郎は一歩一歩、崖に向かって歩き 出した。一歩、また一歩…そして最後の一歩を踏み出そうとしたとき、弧太郎は首根っこを掴まれた。 「なら…死ぬな、ずっと一緒にいよう、弧太郎」 弧太郎はその手の主が誰なのかを一瞬で判断した。 「でも…このまま一緒にいれば…私は必ず貴方を…水雲様を不幸せにしますよ?大切な人の命を奪う かもしれませんよ…もう、もう…私など…貴方のために、死ねたほうが…!!」 ばちいん!!と、弧太郎の頬を叩く水雲、彼はその後すぐに弧太郎の体を抱きしめ、言った。 「俺はお前が好きだ、もう放したくない…たしかにこれまで多くの、俺の大切な人が死んだかもしれない… お前はその人を手にかけたかもしれない…それでも、それでも俺は…お前が愛しいのだ!!お前と一緒にいたい たとえ病めるときも…老いて死ぬときも…片時も離れずに、同じく死に、腐れ落ちる…俺はそうありたいのだ! …たとえ里も、国も…全てを敵に回してでも!!俺はお前が好きなのだ!」 水雲の言葉に偽りはなかった、鬼灯への想いは…未練と後悔は、捨てていた。 「本当に…いいのですか…本当に…わたしなど、わたし…う、うああああああああああああああ!!!!ああああ ああああ!!!!!」 弧太郎は水雲の胸で泣いた、水雲はそれを抱きしめた。 そして二人は手をとり、里から街道へ抜ける道を、手をつないで目指した。 瞬間、ぐさり!という音と共に血を噴出して水雲は倒れた。 青ざめる弧太郎たちを…鉄砲を持った忍の群れが囲んでいた。理由は一つしかない…抜け忍に対する 制裁行為だろう。 パン!パン!パン!パン!! 次々に弾丸が飛び交う、水雲は弧太郎を守るべく必死に立ち上がって自分の体を盾にしようとしたが… それもむなしく、二人は倒れこんだ。 463 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 43 06 ID USB98JEl 月輪に舞う② 里長は二人が死んだ事の報告を受けて、本当に嬉しそうな笑顔を見せた。 自分の娘である鬼灯と、出来損ないとはいえ息子の冬士郎の仇が討てたのだ… それも鬼灯の仇である水雲はさんざん苦悩させた挙句、一番の幸福を与えてから殺す というサディスティックな方法が行えた…里長にとってこれほど嬉しい事はなかった たとえ里にとっては逸材の、とても優秀な忍を二人失う結果になったとしても、である。 里長は村を守らねばならない立場だ、でもそれでも…掟で、自分が命令を出したとはいえ …娘を殺した水雲が憎かった…いや、誰かを憎まねば気がすまなかった。 冷酷な里掟の矛先は…歪んだ男の逆恨みの復讐劇を成就させた、たとえその行為が矛盾だらけ な上に…全く理のないものだとしても、男…里長は満足していた。 ふと、里長が床に眼をやると…そこには何かが転がっていた。よくよく見ればそれは…見覚えの ある七つの玉…七本槍に与えた、さまざまな色の義眼だった。 「たあああああああ!!!」 里長が手槍を取って身構えた瞬間、その首は簡単に落とされた。 里長の背後には、標を構えた弧太郎がいた。 「あはははははは、あはははははははははは!!!!」 弧太郎の体は血にまみれていた、先ほど鉄砲で撃たれた傷の出血も十分に酷かったが…その血の殆どは …水雲を殺そうとした七本槍と…それを見てみぬ振りをした、村人達の返り血だった。 「あははははは!あはははははは!!!」 弧太郎の心は完全に壊れた、そしてその怒りを村の住人にぶつけて…本気で暴れた結果、小さな村は一夜に して軽々と全滅したのだ…。 かつて死を恐れぬと言われた南洋の戦士は第一次世界大戦の際、十二発もの弾丸を心臓と頭部に打ち込まれ ながらも動き回り、二人の騎兵を軽々と切り殺したと言う…忍の天才である弧太郎にとって、重傷を負いながら の戦闘行為は…至極可能なものだったのかもしれない。 戦闘が終わり、村に朝日が昇る頃…弧太郎は再度崖の近くに向かい…そして、水雲と一緒に埋まれるような、大きな 大きな墓穴を掘った。 「老いて死ぬときも…片時も離れずに、同じく死に、腐れ落ちる…ふふふ、いっしょですよ、ずーっといっしょですよ すいうんさま…」 穴に綺麗に水雲の死体を寝かせると、そんな言葉を呟きながら…弧太郎は穴に入って水雲の死体を抱きしめ…その中で ようやく絶命した。 …自分が上になっていいのかなあ…水雲さま、きっと恥ずかしがるだろうなあ…。 そんな事を考えながら、弧太郎の意識は途絶えた。 464 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 44 20 ID USB98JEl 月輪に舞う エピローグ …おしまいおしまい、と…ああ、猛こんな時間かい…悪かったない、こんな遅くまで くだらねえ忍者の話なんかでつき合わせちまってよう…って、泣いてんのかい?… 涙もろいやねえ兄ちゃんはよお…。 へ?二人が可哀想だって?まあまだ話には続きがあってさね…このあと二人は地獄に 落ちるってんだけどよお、あの世で二人を哀れに思った閻魔様は…二人を畜生…狐にして この筑摩の山に夫婦として永遠に転生させるってことに決めたってんだわなあ…。 そうして今でもあの山では…二人は中むつまじく、夜もすればおどってんだとよ…どうだい? これで安心したかい…っと、これで店じまいだな、お代はいらねえよ…くだらねえ年寄りの話に 付き合ってくれたお礼だ…また来てくんな、今度はもっと泣ける話をしてやっからよお…。 筑摩の山ではかつての里の跡も消え、今では木々が広がっていた。 そしてちょうど木々がなくなった原っぱでは…満月ともなれば、どこからともなく二匹の狐が現れて くるくると…まるでダンスを踊るかのように双方が回って、戯れていた。 空には月がさしていた、そしてそこには弧太郎と水雲の二人がいた。 二人の愛は、たとえ姿が変わっても永遠だったのだ。 …山河と筑摩…その意はただ二人、永久に月輪に舞う… FIN 465 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/11/26(月) 12 46 20 ID USB98JEl 以上で終わります、長文な上になんかあまりショタヤンデレっぽくないかなあ?な出来でしたが 長文にお付き合いいただき有難うございました。 466 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 13 10 10 ID kxLbGy42 465 GJ! どうでもいいが1970年~1990年代のドラマは女がヤンデレって言うケースが多いな。 最近は見かけないけど規制とかかけられたのかな。 467 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 15 59 51 ID FWyskqo5 466 単に今やっても受けが悪いからじゃないかな なんか今は綺麗事並べる恋愛の方が受け良さそう 468 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 16 17 57 ID u5ECGHpw 465 (´;ω;`)ぶわっ GJ!すぎてなんて言えば良いかわかんない ところでヤンデレ男×女ってありかな? ストーカーっぽくなりそうだけど 469 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 17 01 09 ID 2vXOBINk 1にヒロインって書いてあるから多分なしじゃないか? 需要については俺一人の意見で決めつけるわけにはいかないから、↓を参考にしてくれ 470 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 17 04 47 ID jArq0QpM あれ?そうなると、 465の小説もスレ違いになるなね。 だってヤンデレ化するのはショタだし……。 471 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 17 05 36 ID z/rMFJ17 過去ログ読めば分かるがその話は毎回議論が続くんだが結局男のヤンデレは基本NGって事になる。 472 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 17 20 39 ID 2vXOBINk 470 ショタなら許容範囲って意見も少なくないからスレ全体の判断は難しいんだよな 473 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 17 36 14 ID 7lJ/mAI4 主人公がショタだと思ってたんだが違うのか 昔他スレでそれっぽいの読んでグッときたせいで勘違いしてた 474 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 18 28 14 ID dYQ6FbdK そんな事だったら百合物も駆逐してほしいわ まあ、無しとかそういう話はやめにして個人個人がNGすればいいだろ 475 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 18 54 21 ID SZjTJRlX 474 だな。 百合注意とか書いておいてくれればおkだろ。 476 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 19 24 15 ID MLwnsq7n 遅くなり気味ですが投下します 477 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 19 25 36 ID MLwnsq7n 8 カーテンを開ける。 カーテンを開けた瞬間に差し込む健康的な光。 天気は、今日の幸先の良さを思わず感じさせる程の晴天だった。 ベッドから本格的に起き上がり、 始めに感じたのはとてつもない空腹感。 凄くオーバーなリアクションを取るとしたら、 ベタだが死にそうな位と言いたくなる程に、お腹が空いていた。 考えてみれば、昨日の夜から今日の昼まで何も食べていない。 お腹が空いているとなればやる事は一つしかない。 携帯をポケットにしまい、一階の冷蔵庫に向かう。 短い廊下を通って、階段を降りる。 階段を降り終わると、直ぐに目的地、リビングに着いた。 リビングと聞くと賑やかなイメージが自分の中ではあるのだが、 今自分の視界に入っている居間の雰囲気は、賑やかとは到底言えない静けさだ。 「またいないのか………」 誰に言うでもなく一人呟く。 ただ、口から溢れただけの声は、リビングの静けさの中で反響した様に聞こえた。 柄にもなく久しぶりに感傷に浸ってしまったお陰で、本来の目的を忘れる所だった。 今はさほど気にしていない静かな居間の中央を通りすぎて、キッチンにある冷蔵庫へ向かう。 何かないかな?と思い、冷蔵庫を開ける。 幸いにも、鮭が入っていた。 昼ご飯を食べ終え、暫くボーッとしている。 ボーッとしている内に、眠くなってきてしまったので、 そのまま、カーペットで保護されている床に体を倒す。 と同時に、ポケットの辺りに圧迫感を感じる。 何だ?と思いながらポケットから何かを出す。 あぁ…… そういえば携帯をポケットに入れていたんだっけ……。 ポケットから取り出した携帯をじっと眺める。 水無月さんのメールの事を忘れていたわけではない。 ただ、考えるのを後回しにした。 それだけの話だ。 携帯の受信ボックスは再度見る。 そこに書かれている差出人は全て水無月さんだ。 「何でだろうなぁ…………」 そう呟きながら、さっき見ていなかった残りのメールを見ていく。 478 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 19 26 42 ID MLwnsq7n 見ていく事で、ある事に気が付いた。 全てのメールが、30分の間隔で送られている。 妙に律義というかなんというか…… そしてもう一つ気が付いた。 メールが約12時頃に終わっている。 これが意味する事は何か。 確か僕はメールで寝る時間帯は12時だと答えた。 そして、水無月さんの少し異常とも取れるメールの数。 30分間隔、12時にピタリとメールを送るのをやめている。 つまり、水無月さんは少なくとも普通にメールを送っていたという考えが浮かぶ。 その普通が、少し異常なのが問題なのだろうけど……… 考えても、これからどうすればいいのかが分からない。 無視しようかとも考えたが、結局そんな事は出来ず、 水無月さんに昨日のメールの返信をする事にした。 (ごめんね、昨日は早く寝ちゃってた(汗)) 嘘は付いていない。 色々理由はあったのだけど、早く寝たのが一番の理由なのだから。 昨日のメールの返信なので、届くまで時間が掛かると予測したねで、 それまでの間にテレビの電源を入れようと立ち上がった。 立ち上がったのだが、床に置いた携帯から着歌が流れたので直ぐに腰を降ろす。 さて………、差出人は水無月さんだった。 もしかしたら水無月さんは携帯を常に自身の回りに置いているのかな? などとおぼろげに考えながら、返ってきたメールを見る。 (そうだったんだ……いきなりメールが戻ってこないから心配しちゃったよ) 心配………か 僕が少し考え過ぎていただけだな………… 何でもかんでも僕は深く考えすぎるんだよ。 深く考えるという事は、日常的にはあまり意味がない事だ。 お陰で昨日なんかはトラックに轢かれそうになったし。 (本当にごめん(汗)) 分かっていて返信をしなかった事もあって、もう一度謝罪のメールを送る。 今度も大して待たずに返信がきた (うーん………じゃあ、お詫びという形で買い物に付き合ってくれないかな?) (それ位なら全然構わないよ) 誘いのメールを即座に受ける。 ちょっとした罪悪感と、どうせ今日は暇だからだ。 (じゃあ、2時30分に繁華街の北入り口で) (了解) メールを送り、携帯で現在の時刻を確認する。 携帯に表示されている数字は1と50、 479 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 19 27 17 ID MLwnsq7n つまり1時50分だ。 ここから繁華街に着くまで6分程度、充分に時間はある。 準備は先に済ませてしまおう。 使用した食器を片付け、2階にある自室に向かう。 廊下を一歩、一歩と進む毎に足元から木が軋む音が聞こえる。 足元から軋む音が聞こえる度に、床が抜けやしないかと冷や汗をかく。 簡単に床が抜けるわけがないと分かっていても、そう思ってしまう。 何より、さっき通った時は鳴ってなかった気がするんだけどな……… ひやひやしながら廊下を通り、階段を登る。 自室に入り、着替えを済ませる。 着替えが終わった頃には、時間が2時を回っていた。 「うーん……」 待ち合わせの時間は2時30分、 今の時間は2時近くだ。 「今から行くか……少しのんびりしてから行くか………」 今は寒い季節ではなく、これから歩いて10分頃には着く。 約束は30分からなので20分位待つという事になる。 しかし、のんびりしてギリギリ位に行けば相手を待たせる事になる可能性もある。 「………行くか」 結局、今から出る事にする。 少し待つ位、別にいいじゃないか。 そう考えて、薄着で外に出る。 徒歩で歩くこと約6分、水無月さんとの待ち合わせ場所に着いた。 待ち合わせ場所には、 誰が作ったのかが全く分からない、犬と人間の像が中央に建てられていて、 像の近くには、ところどころにベンチが設置されている。 やはり少し早すぎた様で、まだ水無月さんは来ていないみたいだ。 辺りを見回すと、待ち合わせ場所としてはそこそこ人気なのか、それなりに人が集まっている。 再度時計を見る。 現在2時8分。 多分あと10分位で水無月さんは来ると思う。 とりあえずはベンチに座って待つ事にしt 「約束20分前行動とは、感心しますね」 ベンチに腰掛けようとした時、背後から声をかけられた。 480 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 19 30 22 ID MLwnsq7n 投下終了 最近は続きがなかなか書きだせない・・・ 逃亡作者にはならないようにします 481 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 20 29 47 ID z/rMFJ17 まあ簡単に言えば 水無月さんが可愛いのでオールOKw なんかバランス取れてきた気もするけどこれからどうなるのやらw 482 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 21 49 06 ID eYhb8Oas 溶けない雪GJ これからどういう風な 展開になるのかwktkして待ってるぜ 483 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 02 29 ID nZgZ3m6t 投下します。10レス使用。第四話目になります。 484 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 03 25 ID nZgZ3m6t 保健室。そこにいくのは本日二回目になる。 一回目にやってきたときは怪我した指に絆創膏を貼るのが目的だった。 そして二回目たる今は、怪我はともかく病気などろくにしないくせに、今日どういうわけか廊下で 倒れていたらしい弟の様子をみるのが目的である。 弟は成績はそれほどよくはないが、その代わりに自身の持つ身体能力を活かして体育や部活動では かなりの活躍を見せている――らしい。 噂でしか聞いたことがないので、その辺りのことは詳しくは知らないのだ。 あえて知ろうとは思わないだけであって、知りたくないわけではない。 兄弟であり同居人であるため、ただでさえ俺は弟のことをいろいろ知っているのだから。 弟が高校にあがってからも妹と風呂に入っていることなど、学校にいる連中は誰一人として知らないだろう。 妹の仲を誤解されるようなことを弟が自分から口にするはずがない。俺だってもちろん口外していない。 他に知っていることとしては、弟が未だに自慰行為の意味すら知らないことがあげられる。 ちなみに、これは嘘ではない。 弟が嘘を言っているのでなければだが。 以前、話の流れで弟にさりげなく「弟。オナ……自慰をしたことがあるか?」と質問したところ、 「示威? ……兄さん、人を脅すのは良くないよ」という天然ボケを思わせる回答が返ってきたのだ。 あの時は、あえて自慰と言い直した俺の言い方が悪かったのかもしれない。 だが、『じい』と言ったら示威よりも自慰の方をすぐに思い浮かべるはずだろう。高校生であるならば。 それはまあ、高校生と言っても様々な人間がいるから自慰のことを知らない者がいてもおかしくはない。 しかし、まさか俺の弟がそうであるなどとは足の小指の爪先ほどにも思わなかった。 この他にも、弟に関して知らなくてもいいのに知っていることはたくさんある。 その代償として、家族として知っておかなければいけないことは全て把握している。 今まで弟が貧血を起こして倒れたりしたことは一度もなかった。持病があるという話も聞いたことはない。 うちの兄妹が近親相姦で生まれたと知ってから今まで、兄妹のうち誰かの体に欠陥がないかと疑ってきたから、 俺はその手のことに関してはかなり気を配っている。 今のところ、俺が平凡で、弟が身体能力が優れていて少し天然ボケが入っていて、妹が弟に対して異常なまでの ブラザーコンプレックスによる執着と独占欲を見せているぐらいで、誰の体にも変なところは見られない。 だというのに、今日弟は倒れた。 もしかしたら何かの病気が発症したのかも、と不安にはなる。 だが、今日に限ってはその不安は外れていると考えられる。 それは、保健室であの女の子に出会ったからだ。 あの子は、俺の身近にいる誰かを気絶させようと目論んでいた。 学校にいて俺と接点のある人間というと、弟と葉月さんとクラスにいる数人の友人ぐらいだ。 それ以外は教師や顔も知らない生徒たちだけだが、あまりに対象が多すぎる。知り合いには含まれない。 それを考慮に入れると、保健室で会った女子生徒の狙いは弟である可能性が高い。 もちろん、あの子に全ての嫌疑をかけるわけではない。 日々大量のラブレターや遊びの誘いのメールを受け取る(らしい)弟は、同学年の女子生徒のあこがれだろう。 弟を無力化して無理矢理モノにしようとする過激な女子がいてもおかしくない。 恋の力というのは人間の正常な判断力を奪うものだ。 俺だってそんな気分になったことがあるのだから、犯人の感情は否定しない。また責めもしない。 しかし、弟や妹や友人に手を出したのならば、俺は犯人を断固否定する。 事を無理に押し進めようとすれば周囲との軋轢が生じるものだ。 その軋みがいかなる結果を生むのか、犯人は分かっていない。 これから先の長い人生を犠牲にしてしまうような取り返しの付かないことになる前に、何としても止めなければ。 485 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 04 44 ID nZgZ3m6t 幸いにも廊下を走っている現場を教師に発見されることもなく、保健室に到着した。 保健室の入り口は、その地点だけが高い人口密集度を見せていた。 男女の比率は男ゼロで女が百。集まっているのは全員が女子生徒であった。 事情を知らない生徒であれば一体どんなアイドルが保健室に匿われているのかと疑う状況だ。 しかし俺は知っている。保健室の中にいるのは歌って踊れて演技もできるアイドルではない。 俺の弟だ。特技が『特撮ヒーローの必殺技のモノマネ』の弟である。 ここにいる女子達が弟を心配してやってきたということは言うまでもない。 ポイント稼ぎのつもりだったのだろう。 だが、これだけ集まっていたら弟のポイントは全員に行き渡る前になくなるな。 「ちょっと御免なさい。通してね」 葉月さんが女子達の中へ突っ込んでいった。 俺もそれに続こうとしたのだが、葉月さんの真似をするには難度が高すぎることに気づいた。 女子生徒の人混みに紛れ込んでいいのは同性である女子か、人気者の弟みたいな男ぐらいである。 特徴を挙げるなら地味の一言に尽きる俺がとっていい行動ではない。 先に進むことを逡巡しているうちに、葉月さんは保健室の入り口に到着していた。 しかし、どういうわけか葉月さんはドアを開こうとしない。何かあったのだろうか。 女子達は俺に背中を向けていて、俺の存在には気づいていない。 これ幸いと女子達の人混みに少しだけ接近する。 ……むう。あまりドキドキしないのは俺が葉月さんと話すことに慣れているからなのであろうか。 葉月さんと数人の女子の会話が聞こえる。 「……ちょっと。どいてくれない? 保健室に用事があるのよ」 「駄目です。いくら葉月先輩でも、いやむしろ葉月先輩だからこそ、中に入れるわけにはいきません」 葉月さんに先輩をつけて呼んでいるということは、相手は一年生のようだ。 しかし、なぜ一年の女子は保健室に通してくれないのであろうか。 「中にいる男子生徒に用があるの。倒れたって聞いたけど」 「やっぱり彼に会うのが目的なんですね。……怪我はしていないから安心して帰ってください」 「直接見なくちゃ信じられないわよ。別に変なことしないって。ただ様子を見に来ただけだから」 「それでも駄目です。他の女子生徒を中に入れることはできません」 これはおかしい。まるで面会謝絶状態ではないか。 怪我をしていないのなら、ここまで強硬につっぱねることもないだろうに。 入れられない理由でもあるのか? 「ハア……。あなたたち、やっぱりあれ?あの、噂の」 ん、噂? 「そういうことです」 「確かにあの子は顔もいいし運動もできるから、あなたたちみたいなミーハーな子が騒ぐのも無理ないけど。 だからって私が中に入れない理由にはならない。勝手な決まりを作るなら内輪だけでやって頂戴」 「できません! 会員第四条特例項目、『葉月先輩は要注意』! それに、個人的にも葉月先輩を彼に近づけたくないんです!」 今、変な単語が出たぞ。会員? 第四条特例? 何の会の、どんな決まりのことを言っているんだろう。 「……いいからそこ、どきなさいよ。力づくで通ってもいいのよ、私は」 「できるならやってみてください。すぐに先生を呼びますから」 「言うわね。一人じゃ近づくこともできない、告白する勇気もない、だからせめて誰も近づけないようにしよう、 なんて甘い考えのお嬢様集団が」 まずい。葉月さんの声が低くなり出した。おまけにセリフに毒がにじみ出している。 このままじゃ、葉月さんと対面している女子の身に危険が及ぶかもしれない。 だが、こんな離れた場所からじゃどうにもならない。止めようがない。 お願いだ、見知らぬ女子よ。これ以上葉月さんをヒートアップさせないでくれ。 486 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 06 52 ID nZgZ3m6t 「葉月先輩みたいに綺麗な人にはわかりませんよ。私は、自分に自信が持てないんですから……」 「あなたが自分に自信を持っていようがいまいが、私には関係ないでしょう」 「だって……葉月先輩が彼と付き合いだしたら、私は邪魔なんかできないじゃないですかぁ……。 絶対、葉月先輩には勝てないもん……」 涙声。泣いているのは葉月さんと向かい合っている女の子だろう。 そりゃまあ、容姿で葉月さんに勝っている女子はそうはいないから、勝てないと思い込んでも無理はない。 しかし、容姿が良くても恋愛成就するとは限らないぞ。 事実、弟は葉月さんの容姿を褒めることはあっても付き合いたいと言ったことはない。 というか、弟は誰かと付き合いたいという話を持ちかけてこない。 弟が中学時代に女子に付きまとわれ始めてから今まで、ただの一度もだ。 誰か好きな人がいるのかと問い質しても答えをはぐらかすばかりで、未だに奴の真意はつかめない。 ただ、その相手が妹でないのは確かだろう。 もし弟が妹に惚れているのならば、今以上の心労がたたって俺は色々な部分がボロボロになっているはずである。 「言っておくけど、私はあの子と付き合うつもりなんかさらさらないわよ。 だって…………他に好きな人がいるから」 葉月さんのカミングアウト。続いて女子の集団から大きなざわめきが起こる。 「ええっ! ほ、本当ですかっ?!」 「相手は? 三年の男子の小山さんですか?」 「数学教師の奥ちゃんだよ、きっと!」 「そんな……憧れの葉月姉様が……」 保健室のドアの前が多数の驚きの声と少しの悲しみの声で騒々しくなる。 女子達の放つ熱気は俺の足を勝手に後退させるのに十分な勢いを持っていた。 しかし後ずさりしたのは熱気に押されたことだけが理由ではない。 ――激しく嫌な予感がしたのだ。 葉月さんが好きな人。以前ならそれが誰であるのか、俺だって興味津々だった。 今では、葉月さんが誰を好きなのか知っている。 彼女はその相手にラブレターを書き、屋上で告白をし、相手の家に押しかけまでした。 羨ましくも葉月さんにそこまで想われている相手は―― 「そこにいる、彼よ」 葉月さんが短く、しかしはっきりとその場にいる全員に聞こえるように言った。 そう、未だになぜ好かれているのか自分の行いを省みても全く心当たりがないのだが、 どういうわけだか葉月さんが想いを寄せている相手というのは俺なのである。 葉月さんの言葉に反応した女子全員が俺の方を向いた。 振り向いた瞬間の彼女たちの目は隠しきられていない好奇心で一杯だった。 言葉にするなら、一年女子の一部に憧れの目で見られている葉月さんが好意を寄せる相手はどんな人間なのか、 ものすごく素敵な人に違いない、という感じだろう。 だからであろう。全員が俺の顔を見た瞬間に肩透かしを食らったような表情をしたのは。 「えー……っと」 「この人を? 葉月先輩が?」 「あの……とりあえず、こんにちは」 一番近くにいた女子生徒が軽く会釈してきた。頷きで返事する。 ……いや、いいんだけどね。そういう反応されてもさ。 自分の顔は毎日鏡で拝んでどんなものかよくわかっているし、クラスの女子にも似たような反応をされているし。 彼女たちは、なんで俺みたいな地味な奴が葉月さんに好かれているのかわからないのだろう。 俺だってわからない。だから彼女たちに何かを言う資格は俺には無い。 だがそこまで落胆してもらうと、さすがにこっちまで落ち込むというか、なんで同じ親から生まれた兄妹なのに ここまで扱いに差が出るのかとか、そんな微妙な気持ちになってしまうではないか。 最近葉月さんに優しくされているから錯覚していたようだ。 やはり、異性は俺に対して薄い印象しか抱かないらしい。 487 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 08 01 ID nZgZ3m6t この空気に耐えかねてそろそろ立ち去ろうかと思ったとき、葉月さんが俺の方へ戻ってきた。 立ちすくむ俺の腕を取り、保健室の入り口の方向へと連れて行く。 ドアの前にはやはり知らない女子生徒が立ちはだかって進路を妨げていた。 「そういうわけだから、あなたたちの心配するようなことはしないわよ。 もう一人男子が一緒に行くんだから、変なことをする心配もしないで済むしょう?」 「ええ、そういうことでしたら。疑ってすみませんでした、先輩」 女の子は申し訳なさそうに頭を下げると、ドアの前からどいてくれた。 「いいのよ。なるべく危険因子は近づけたくないっていうその気持ち。よくわかってるつもりだから」 「先輩。最後にひとつだけ聞いてもいいですか?」 「何?」 「その人、何者ですか?」 「……質問の意味がよくわからないんだけど」 同意である。何者と言われても、ただのいち高校生としか答えられない。 以前は久しぶりに会った親戚に実年齢より五歳以上年上に見られたりしたが、今は制服を着ているのだから 高校生にしか見えていないはずだ。 「いろいろと疑問に思うことはあるんですけど、一番わからないのはその先輩まで保健室に入ることです」 「あ、そういう意味なの」 「葉月先輩の付き添いできたんですか? それともただ心配で来たんですか?」 「後者よ。だって彼、あの子のお兄さんだもの」 「……お兄さん?」 「そうよ。知ってるでしょ、あの子にお兄さんがいることぐらい」 「じゃあ、この人が、あの」 女子生徒はここで言葉を飲み込んだ。 あの、ってなんだろう。俺に関する噂でも流れ出しているのか? 葉月さんと一緒に登下校するようになってから変な噂が流れていないか耳を澄ませているが、 タチの悪いものはまだ耳にしていない。軽い恨み程度ならしょっちゅう聞いているが。 「そうなんだあ……お兄さんか」 人形でも見るような無機質な女の子の目に色が宿った。 俺の正体が知人の兄だということがわかって、ようやく警戒が解けたようだった。 だが、どうにもそれだけではないような気もする。 さっきまで邪魔者でも見るような目つきだったのに、今ではにこやかに微笑んでいるのだ。 視線を横に流す。他の女子も雰囲気を柔らかくしていて、排斥する気配を消していた。 変わり身が早すぎるだろう、後輩諸君。 俺が憧れの男の兄だとわかっただけでここまで手のひらを返されると、弟の人気者ぶりに少しの誇りと たくさんの嫉妬を覚えてしまうではないか。 左にいた女の子が俺の左手を握った。しかも両手で。 「あの、お兄さん。私村田って言います。いつも弟さんには仲良くしてもらってます。よろしくお願いしますね」 「……はあ」 どう答えたらいいかわからないので、こんな声しかでない。 ぼんやりしているうちに、今度は周囲から色々な声を投げかけられた。 「村ちゃんずるい! あの、私は石川です!」 「平田です! 気軽に平ちゃんって呼んでください!」 「みんな少しは落ち着きなさい。……広瀬です。私の名前だけは覚えてください」 自己紹介の嵐。続々と女の子が俺に向けて名乗りを上げる。 悪いけれど、左手を握ってきた女の子以外の名前はちっとも耳に残っていない。 俺は基本的に人の名前を覚えるのが苦手なのだ。 いや、仮に得意であったとしても十人以上の女の子の名前と顔を一致させる離れ業まではできない。 この子達も、俺に自己紹介したところで弟の好感度がアップするわけではないというのにご苦労さまなことである。 488 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 09 34 ID nZgZ3m6t さて、今の俺は右手を葉月さんに、左手を村田という名の女子に握られたままの状態にある。 両手に華とはまさにこの様子のことをいうのだろう。 むしろ周りは女子だらけなわけだからお花畑の中にいるとでもいった方がふさわしいかもしれない。 しかし、どうにも納得のいかないこともある。 なぜ俺の右手は握られている痛みで悲鳴をあげているのであろうか。 「なによ……あんたたち……勝手に手なんか握って……しかもいきなり馴れ馴れしくなって……! 私でさえ、簡単に声をかけられなかったのに…………」 この声は葉月さんか。いつもと違って声を絞り出すようにして喋っているからすぐにわからなかった。 どうやら葉月さんは怒っているご様子。女の子達が俺に話しかけだしたのが気に入らないらしい。 もしかして、やきもちというやつか? 葉月さんは後輩の女子に嫉妬している? それほど葉月さんに想われているなんて、俺はなんと幸せ者なんだろう。 右手に痛みどころか触覚まで感じなくなるほど今の俺は喜びに打ち震えている! 学年一の美女プラス多数の後輩女子による似非ハーレム状態を堪能していると、突然保健室のドアが開いた。 「みなさん、少し騒ぎすぎですよ」 と言いながら扉から顔を出してきたのは――我が2年D組の担任であった。 なぜ担任が保健室からでてくるのだろう。授業中以外は職員室で茶を飲みつつ文庫本を読んでいるか 図書館にて分厚い本を読んでいるかという行動パターンしかとらないはずなのに。 「中には寝ている生徒がいるんですから、心配してきたのならもっと気を配ってください」 担任の声を聞き、女子達は急に静かになった。 少しの注意であれだけ騒いでいた女子を鎮めるとは意外である。 もしかしたらうちのクラスの担任は生徒からの人望を集めているのかもしれない。 「あら? お二人ともどうしてここに?」 担任が俺と葉月さんに向けて疑問の声を向けてきた。 「実は弟が倒れたって聞いたもんで。ちょっと見に来たんですよ」 「弟? ああ、そういえば名字が同じでしたね。 ふー……む」 担任は俺の顔を見たまま右手を顎に当てた。何かを考えているようである。 「あまり似ていな――――いえ、なんでもありません」 「……今、似ていないって言おうとしませんでした?」 「弟さんは中にいます。どうぞ、中に入ってください」 この教師は、人のツッコミに対してなんと見事なスルーをするのであろうか。 流石、その年になっても独身でいられるだけある。 聞きたくない人の言葉を切り捨てる技術は並ではない。そこだけは見習いたいものだ。 「ところで先生はなんで保健室に来てるんですか?」 「私が弟さんの倒れていた現場の第一発見者だからです。廊下を歩いていたら偶然倒れている生徒を 見つけたので、他の生徒の手を借りて保健室に運び込んだんです」 「そうだったんですか。それは、どうも……ありがとうございます」 「弟さんは体調管理を怠っているのではないですか? 倒れた場所が校内、しかも廊下だったから よかったものの、車道の近くで倒れたりしたら命に関わりますよ」 「はい、家に帰ったら言い聞かせときます……」 「まったく。……あら?」 担任の視線が斜め下、俺の右手へと向けられた。 つられて自分の右手を見る。俺の手と葉月さんの手は繋がったままだった。 それはいい。それはいいのだが――指が紫色になっているのはよろしくない。 そして、手が危険な色になっているというのに痛みを感じないのはどういうわけだ。 489 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 10 34 ID nZgZ3m6t 「あの、葉月さん?」 「また……女が増えた……」 「手を離して――いえ、お手を離していただけないでしょうか?」 「年増のくせに…………!」 これは――葉月さん、相当頭にきてらっしゃる。やきもちを妬くとかそういうレベルではない。 俺でさえ担任に向けて年増という暴言は頭の中でしか吐かないというのに、葉月さんは口に出してしまった。 ぽつりとつぶやいた感じだったが、これだけ近ければ担任にも聞こえているはずだ。 しかし、担任は相変わらずのやる気があるのかないのかわからない事務的な表情をしたままであった。 「葉月さん、そろそろ手を離してあげてはどうですか?」 葉月さんは答えない。俺の手を握りしめて俯いたままだ。 「そのまま握り続けていると、彼の右手は使い物にならなくなってしまいますよ?」 その通りだ。こんな紫色の手では塗料の瓶の蓋を開けることすら出来ない。 ぜひとも今すぐに離して欲しいところである。 「私と彼の繋がりを……断とうっていうの? そんなのは……」 「まったく……仕方がないですね」 担任はため息を吐くと、葉月さんの耳に口を寄せた。そして小さな声で呟く。 「彼の右手が使い物にならなくなったら、指で弄ってもらえなくなりますよ?」 「――――――あっ!」 突然声をあげた葉月さんから俺の右手がようやく解放された。 右手には葉月さんの手形がはっきりと残っていた。 紫に染まった手の中でそこだけは白いままで、まるで葉月さんの手形によって守られていたみたいだった。 もちろん、右手を変色させてくれたのは葉月さんなわけであるから、感謝しようとは思わない。 「ごめんね! 大丈夫だった?!」 葉月さんが俺の右手をとってマッサージをしだした。 見ている分にはしきりに手を揉み続けているようだったが、どうにも指の感覚があらわれてこない。 「ごめんなさい、ごめんなさい! つい頭に血が上っちゃって、それで……」 「いや、いいよいいよ。そんなに謝ってくれなくても。たいしたことないし、それに感覚も戻ってきたし」 マッサージが効いたのであろう。指の辺りにこそばゆい痺れがあらわれだした。 よかった。まだ俺の右手は生きている。 これからも趣味を継続していける。そんな当たり前のことがこんなに嬉しく感じられるなんて。 幸せというのは日々の生活の中に溶けこんでいるものなんだなあ。 490 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 13 26 ID nZgZ3m6t 謝り続ける葉月さんをどうにかなだめ、保健室の中へ。 「あ……兄さん」 するとそこには、どういうわけか相も変わらず柔和な表情の弟が立っていた。 廊下で倒れていたことなどまったく連想させない顔色。 安堵すると同時に、拍子抜けした。無駄な心配をした気分だ。 しかし心配したのが無駄だったとは思わないのも事実。 いつ何時、どんな場所で、俺たち兄妹は体に異常をきたすかわからないから気を配りすぎても配りすぎ、 ということはない。 とはいえ、弟の顔を見て心配させやがって、とか小言を言うと弟を心配していた兄だと葉月さんに思われかねない。 こういうむきだしな感情はなるべく人には見せたくない。俺は冷静な男というイメージを守りたいのだ。 ――待てよ。 今時家族に対する情が厚い男というのはなかなかいないのではないか? だとすれば、意外に葉月さんの受けもとれるのでは? よし。ここは兄として、弟を心配していたような振りをするとしよう。 「ごめん、兄さん。心配させて」 「心配させやが…………は?」 「倒れたって聞いて、心配だったから来たんでしょ? だから、ごめん」 なぜこんなときにしおらしい態度をとりやがる、弟。 そんな台詞を聞くと頬がひくつくだろうが。 「…………別に心配してたわけじゃないぞ。勘違いするな」 「そう……」 弟が表情のベクトルをほんの少しだけ残念そうな方へ向けた。 ――しまった。つい天の邪鬼な性質を表に出してしまった。 だって、それはあれだ。家族に謝られたらなんだか気恥ずかしいんだよ。だからついやってしまったんだよ。 軽くさらっと礼を言われたり、憎まれ口を叩かれている方が俺は気楽だ。 弟だって普段勉強を教わった後は深々と頭を下げたりしない。ありがと、とか言うだけだ。 だというのに今日はどうしてそんな反応をとるんだ。 なぜ弟の見舞いに来た俺が、弟からの予想外の謝罪を見舞われなければならない。 機会を逃しては普段通りに冷静で厳しい兄として振る舞うしかないではないか。 葉月さんへの好感度を上げる絶好のチャンスがふいになってしまった。 弟から目を逸らし、回れ右。保健室の出口へ体を向けて、後ろにいる弟に告げる。 「体調が良くなったんならさっさと帰るぞ。葉月さんも送って行かなきゃならないんだから」 「うん……」 やけに低い調子の弟の声。しかし俺は謝らない。 俺は少し不機嫌なのだ。帰りは遅くなるし、ポイントは取り損ねるし。 と、その時。 「ふふふ……」 背後からささやくような笑い声が聞こえてきた。 肩越しに視線を向けると葉月さんが右手を唇に当てながら微笑んでいた。 「弟君。残念がることないわよ。お兄さんはあなたが倒れたって聞いて、 すっとんきょうな声を上げるほどに驚いたんだから」 んな! 「……何を言っているんだい、葉月さん。俺がそんな声出すわけがないじゃないか」 そう。あの時声を上げたのは、――かけ声を出しただけだよ。 うん、文化祭で呼び子をしなきゃいけないから、その練習をしただけさ。 一通り頭の中でそんなことを考え、さらにごまかしついでにハハハハハ、と笑ってみる。 「そうなの? 兄さん」 返答代わりに、ハを連発させる。今度はちょっと長めに。ハハハハハ、ハッハッハッハッハ。 「イエス、だってさ。弟くん」 「兄弟の仲はよろしいようですね。 正直お兄さんの方が劣等感を――いえ、遠慮をしているのではないかと思っていましたが。 仲良きことは美しきかな。これからもご兄弟で助け合っていってくださいね」 声の調子から意外なことに葉月さんのポイントを稼げていたことがわかったとか、担任のごまかしきれていない 失言が聞こえたとか、そんなことはどうでもよかった。 ただ俺は笑った。笑い続けたらこの状況から逃れられそうな気がしたからだ。 491 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 18 13 ID nZgZ3m6t ***** 俺と葉月さんと弟の三人で校門から出たときには、時刻はすでに六時近くになっていた。 最近は平均気温低下の進行に連動するように、日の暮れるペースもだいぶ早まっている。 そのため六時、つまり今頃の時間には辺りはすっかり暗くなってしまうのである。 黒の色合いを濃くした路地を俺、その左に葉月さん、そのまた左に弟という陣を組んで進む。 正面から見れば俺と弟で葉月さんの両脇を固めているように映るはずだ。 もっとも、暴漢に襲われた際、三人の内で無傷でいられる可能性が高いのは葉月さんである。 だが、もちろんそんなことは言わない。 そんなことを言うのは失礼だし、何より葉月さんだって無敵ではないのだ。万が一ということもある。 いや、万が一という言い方も失礼か。もしかしたらということもある、に訂正。 それに、葉月さんの武道家としての実力云々を別にしても、俺自身が葉月さんを家に送りたいのだ。 学内でも美人と評判の女子生徒との下校。さらにその子は自分の憧れの女の子。 本来ならこちらから頭を下げてでもお願いしたいシチュエーションだ。 幸いにして、俺の場合は葉月さんからの申し出を二つ返事するだけで引き受けることができた。 そんな経緯を経て、頼りない実力皆無の葉月さん専用ナイト(俺)が誕生したわけである。 実は、葉月さんが家に入ったのを確認してから俺の警戒レベルが数段上がるのは秘密である。 最近は学校の中でも冷ややかな視線を浴びている俺としては、暗い夜道など避けたい状況でしかない。 誰かが俺を影から狙っているかもしれない。しかもそれがクラスメイトの誰かである可能性まである。 したがって、葉月さんと別れた後の俺の下校方法は競歩ではなく、またジョギングでもない。 サブスリーを目指すマラソンランナーのようなペースでの疾走である。 走っていると、緊張感から自分の足音を追ってくるような靴の音まで聞こえてくる。 強迫観念により、俺の足はさらに加速する。自分がどんな呼吸をしているのかも意識できなくなる。 よって葉月さん宅から自宅までの距離を、俺が何分で走り抜けているのかは未だに計測していない。 しかし、路地を走る自転車をあっさり抜いている点から考えて結構な記録が出ているのではなかろうか。 足が速くなったところでプラモデル作りの腕が上がるわけではないのだから、嬉しくはないのだが。 俺が考え事をしている間に、左側にいる葉月さんと弟は親しく会話を交わしていた。 「僕、葉月先輩の家に行ったことがないんですよ。学校から遠いんですか?」 「ううん。歩いて十分ちょっとで着くよ。……ほら、見えてきた」 葉月さんの視線の先には、立派な構えの門がそびえ立っていた。 永い時の経過を感じさせてくれる漆黒としけった茶の混ざり合った木柱が四本と、それに支えられて鎮座する 瓦を被った屋根の組み合わせである。長く連なる塀が門の威容を慎ましくも壮大なものとして見せつけている。 「はー……すごいですね。先輩ってもしかしてお嬢様ですか?」 「そんな大したものじゃないよ。道場が敷地の中にあるから、おっきいだけ。 昔からある家をそのまんま残しただけだから、うちの両親も武道が出来る以外は平凡な夫婦だよ」 「そうなんですか。うちの両親は普通――――だけど、ここまで大きな家は持ってないから、ちょっとうらやましいです」 「あははっ。お兄さんと同じこと、言うんだね。実際は知り合いも多いからめんどくさいんだけど。 ほら、家が長く続いてると親戚も比例して増えていくからさ。その分お年玉はがっぽり、ね」 「お年玉、ですか……」 「二人とも、お年玉とかどれぐらいもらうの?」 「えっと……そこそこです。はい」 「そうなの?」 と、葉月さんが俺に話を振ってきた。 「そうだねぇ……。うん、やっぱりそこそこかな。月の小遣いよりも多く、だが決して無駄には使えない、って感じ」 「へー、そうなんだ」 葉月さんは納得したように二回頷いた。どうやら、ボロは出さずに済んだようだ。 492 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 20 17 ID nZgZ3m6t 両親が血の繋がったブラザーアンドシスターである我が一家でも、葉月さんの家族のように正月は迎える。 盆と正月ばかりはさすがに両親も実家に帰る。そして両親の生みの親である祖母と過ごす。 他の家庭では正月には親戚なども集まるらしい。だがうちの家族はひと味違う。 親戚がろくに来ないのだ。当然である。別々の家同士を結びつけるはずの結婚を身内同士で行ったのだから。 来てくれるのは祖父方の親族が数名のみ。しかも軽く挨拶して、祖父に線香を供えるだけで帰って行く。 その時に上手く鉢合わせできればお年玉を戴けるのだが、タイミングを逃せば無論のこと……である。 そのため、うちの兄妹はお年玉にあまり縁がない。 祖母と両親からは毎年もらえているから、絶縁状態でないだけマシかもしれないが。 さて、あまり人様の門前で立ち話するのも失礼だ。今日は帰るとしよう。 「葉月さん。また明日、学校で」 「先輩、さようなら。今日はどうもありがとうございました」 「うん、それじゃあね。二人とも気をつけて帰ってね。……バイバイ」 葉月さんに見送られ、弟と二人で自宅への帰途につく。 今日は弟がいるから走って帰る必要はない。 さすがに二人を相手にしてまで襲いかかってくるほど、敵も不用心ではあるまい。 事前に二人を相手にする準備をしていたのならともかく、俺が弟と帰るのは久しいのだから、今日のことは 予想していないはずだ。 冷たい空気の中、腕で伸びをしながら歩きつつ弟に話しかける。 「お前、今日は一体どうした?」 「ん、どうしたって、倒れたことを言ってるの?」 「ああ。お前が倒れるなんて今まで一度もなかったからな。ご飯を抜いて、そのせいで……とかじゃないんだろ?」 「朝も昼も、妹の料理をちゃんと食べたから、それはないよ」 ふと、そのせいで倒れたのではないかとか考えてしまった俺は兄貴失格なのであろうか。 長男としては末っ子の妹のことも信じてやるべきなのだろう。 だが、どうにもなあ。弟よ、わかっているんだろう? 料理しているときの妹の嬉しそうな表情の意味を。 愛しの兄に料理を作っているという理由だけでは、絵本に出てくる魔女みたいに唇の端をあげないぞ。 あれは、興奮状態とか恍惚状態って言うんだぞ。言い換えればエクスタシーだ。 まあいい。今までも弟は妹の料理を食べても倒れなかったのだから、血の繋がった魔女の仕業ではないということだろう。 ――では、一体なぜお前は倒れたんだ、弟? 「実は、僕のクラスは文化祭でコスプレ喫茶なんてものをやるんだ」 「……ほう。どんなプレイをするんだ?」 「プレイって言わないでよ。そうだね、巫女さんとかメイドさんとか、侍とか甲冑を着た騎士とか。 あ、ピーターパンなんてのもあったっけ。僕はヒーローの役をやりたいんだけどね」 「ほっほぅ。それはそれは。素晴らしい事じゃないか」 「うん。で、まだ準備が終わってなくて。放課後も残って作業なんかしてるんだけどね」 くくく、結構結構。僥倖だ。 「僕も残ろうと思ってて、HRが終わってからすぐにトイレに行ったら……後ろからチョークスリーパーをかけられて、 顔にいきなりスプレー……かな、あれは。それを吹き付けられたら眠くなって、たぶんそれで」 「なるほどなあ。ま、無事だっただけ儲けもんだな」 「うん。篤子先生には感謝してるよ」 突然知らない名前が出てきた。 「誰だ? 篤子先生って。担任の先生か?」 「……兄さんのクラスの担任でしょ。名前、覚えてないの?」 「特徴的な外見をしているからすぐにわかる。名前なんて必要ないだろう」 常に文庫本を片手に持ち歩いているセーターとジーンズも似合うけどどんな格好も似合いそうな文学オタ美人、 とでも覚えておけばいいんだ。おっと、年増と独身というフレーズも忘れてはならないか。失礼した、篤子女史。 493 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 22 42 ID nZgZ3m6t 「いいけどね、別に。ともかく、さっき説明した通りの状況で眠らされたんだよ」 「ふむ。後ろから襲われたということは顔も見ていないわけか」 「うん。小さい手だったから女の子じゃないかとは思うけど、それだけ」 「女の子、か……」 どうしても今日保健室で会った美少女の顔が浮かんでしまうな。 彼女の不審な言動。俺のことを知っているような素振り。今のところ、彼女が一番疑わしい。 というより、今のところ他にいないか。 女の子という条件で弟を狙いそうな女子というと……保健室の前に集合していた女子達が全員疑わしくなる。 今のところは犯人を特定できない。ヒントが少なすぎる。 ――ならば、こちらから探ってやろうではないか。 「弟、さっき文化祭の準備が遅れている、と言っていたな」 「うん。接客する人だけ衣装を用意すればいいんだけど、クラスの半分以上がやるつもりみたいだから。 裁縫係の女の子たちはすっごいぴりぴりしてるよ。小道具担当もね」 弟の言葉を聞き、自然と頬がつり上がる。 最高だ。この状況こそ、俺が望んだものだ! 「誰か手伝ってくれる人、いないかな。誰でもいいんだけど。兄さん、心当たりはない?」 「ここにいるだろう」 「ここに? ……って兄さんしかいないけど」 「だから、俺がいるだろう、という意味で言っている」 「え……でもさ。兄さんのクラスは?」 「ふん。純文学喫茶など灰にして塵として土に帰してやればいい。俺にはやらなければならないことがある。 そう。お前のクラスのコスプレ喫茶を成功させるため、力を貸すという大事な仕事がな」 正直に言えば俺の欲求不満を満たすのが目的なのだが。 だが、弟はそんな俺の本心など微塵も悟ってはいない。 「ありがとう! 兄さんみたいな器用な人が居れば、準備がもっと早く終わるよ!」 このように、俺の助けを得られるとわかって神の手でも得たときのようにありがたがっている。 期待に応えようではないか。俺の覚悟は今すぐに学校に引きかえすことも辞さない。 途中で通り魔に遭おうと知ったことではない。 襲いかかってくるナイフを鞄で受けて、ウエスタンラリアットの一撃でコンクリートのマットに沈めてやる。 「じゃあ、早速明日からよろしくね! 兄さん!」 「応ともよ」 文化祭まで、あと一週間もない。 だがそれは、一週間近くも時間があるということでもある。 なにせ一日は二十四時間もあるのだ。数日あれば十分だ。十分すぎる。 弟の素晴らしきクラスメイトたちよ――もう、安心していい。俺が居れば全てが上手くいく。 ------ 今回はここまでです。 494 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 01 53 04 ID DY+ELF68 493 GJ 例の美少女が誰狙いなのか次回には明かされることを 期待して待つよ。 495 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 02 10 00 ID N3DqyGoF 493乙。そしてGJです。 それにしても葉月さんは可愛いなw 続きを楽しみにまったりと待ってます。 496 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 02 21 29 ID 8CgDs1O3 493 GJ!葉月さん可愛すぐる それにしても兄貴は文化祭で何をするつもりなのか怪しく見えるぞww 497 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 02 58 06 ID VyLR6Dyt 弟の好きな人、・・・いや、なんでもない。忘れよう。GJ! 498 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 03 27 20 ID U0IjNHUH 男が軽くヤンデレになるSSなんだけどここが該当するのか? 499 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 03 30 59 ID nzxekUae 493GJ! 葉月さんも可愛いのだが、兄のキャラがすごくつぼにはまる 500 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 03 48 07 ID inV+gPrq まさか弟…ウホッではなかろうな 501 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 10 15 53 ID OkiUSePz すでに不測の事態に備えて弟を鰤に脳内変換している自分は 石橋を叩いてわたる派 502 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 10 32 00 ID 02+niPWa 498 みたくないやつはフィルターかけるしあらかじめNGワードふっとけば良いんじゃね? 俺は読んでみたい 503 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 11 37 26 ID NuzDpeQh 男を病ませて一体誰が得するんだと何度 鬱屈したキモい奴か陵辱モノの主人公かのどっちかになると思う 他の住人が良いんなら試しに見てはみたいけど…惨状必死 504 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 11 52 42 ID ogY1vAem 男でヤンデレというとすげこまくんが頭に浮かぶ。 あれくらいはっちゃけてて、殺傷方面にいかないなら読んでみたいかも。 505 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 12 10 01 ID i//yxhr4 見たくなければNG登録を住人が徹底できればいいが、 過去に百合でも突っかかってくる人とかいて荒れたりしたからなあ。 慎重にやらないと空気悪くなるのは避けられないので配慮していただければ。 まあ読みたいか読みたくないかで言えば俺は読みたくない。 506 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 14 04 39 ID GjpQSCFo 過程にもよるんけど ヤンデレ女にMCされて男が病むとかだったら読んでみたい 507 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 16 50 00 ID U0IjNHUH 最終的に嫉妬スレに書いたんでよろ 508 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 19 44 20 ID gPOzsm69 493 GJでした。 しかし、兄さん。もはや傍観者じゃないだろw 509 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 21 32 51 ID hM8hQ68V 507 明らかにプロットに見えない件www 510 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/11/27(火) 22 21 19 ID P3ImyfcO 493 GJ 篤子女史が弟を気絶させたのではないかと考えている俺 511 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 23 58 10 ID zS2alqz5 弟の思い人が篤子女史であると推測。 512 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/11/28(水) 00 39 05 ID CkzdOEiH 弟が、実は女で兄を慕っているなんて話だとかなり嬉しい俺 513 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 02 48 20 ID wK9GFkl8 弟が、実は兄を慕っていると推測。 514 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 11 36 15 ID QLkMAClv 何度読んでも弟→兄にしか見えない 515 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 13 17 10 ID QjtXn+Gr 脳内変換「準にゃん」 516 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 19 40 47 ID edWuJzEc アッー!は某プロ野球選手だけで十分なんだぜ 517 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 20 21 06 ID /1Nd5e28 てかおまいら明らかに期待してるだろw 518 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 21 01 46 ID ufvIBa6S 男は度胸!なんでも試してみるモンだ。きっと気持ちいいぞ! 519 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 21 34 43 ID 7IQmR5w+ そういえば、ガチホモのSSがなぜか投下されていた時期もあったなぁ… 懐古してしまった、スマソ 520 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 22 47 06 ID 52NVVfRb 初代スレだよな!ログはなくなってしまったが覚えてるぞおー 521 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/28(水) 23 15 46 ID /1Nd5e28 あれは荒らされてただけだw 懐古ついでに言えば初代の頃は「ヤンデレ」でスレタイ全板検索しても こことVIPしか引っかからなかったなあ。 522 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 00 21 01 ID P4TdiHns 懐かしいなww あの小説を読んでおっきしたのも今となってはいい思い出だ… 523 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 00 44 42 ID fpaMTy/S 唐突だけど 臨時保管庫にて編集作業している人、乙です ほとんど時間を置かずに保管してくれていつでも見られるので感謝してますよ これからもよろしく 524 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 00 58 00 ID rCB25aQZ お久しぶりです。以前の投稿から半年以上が経っていますが 投下致します 525 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 01 00 50 ID rCB25aQZ 第1話『幽霊屋敷』 この春。 俺はめでたく浪人することが決定した。 そりゃ、大学受験の当日に受験会場へ辿り着かなかった不運の持ち主だったら、 来年は頑張って志望の大学に受かってやるという意気込みが沸いてくるのだが。 学力以外の方法で試験に合格する手段はある。正真正銘のアホである俺は裏技を使わざるえなかった それは……カンニング。 数学関連は適当に解けばいいんだが、暗記が必要とされる科目に関してはお手上げだ。 事前に用意したカンニングのために仕込んだ消しゴム。目が怪我しているように装い、左目の包帯に いろいろと英単語や別に覚えてなくていいだろう歴史や地理の名前など。 完璧に用意したカンニング方法は……試験開始5分ぐらいでバレた。 試験官が俺の背中を優しく叩いた瞬間に、皆がテストを受けている時に 俺は相手の胸に頭突きしたサッカー選手のようにレッドカ-ドで退場。 後は偉そうな天下りしてそうな貫禄のあるハゲに人生とは何か? だんご大家族とは何かと延々と説教させられた。 悪質なカンニング行為をした懲罰として俺は試験を受けさせてもらう資格を剥脱された。試験を受けさせないなら受験料を返せよ。 そんな感じで俺は浪人することになった。 両親も息子がカンニング行為をやったぐらいでお前は勘当だ。 家から出ていけと怒鳴られて、僅かなお金を渡されて家に追い出される始末。 まあ、母親が仕送りと予備校の学費と引っ越し予定のボロいアパートの家賃を送ってくれなければ、 念願の独り暮らしなんてできなかっただろう。その事に感謝しながら。 引っ越してきたボロいアパートで俺の新生活が始まろうとしていた。 さて、引っ越したアパートの物件を選んだ理由は家賃が安いし、周囲には駅も近く遊ぶ所には困らない。 今時、家賃1500円なんて信じられない家賃に少しでも仕送りのお金を節約して 小遣いを増やそうとこすいことを考えていた俺は速攻で契約した。敷金も保証金も0円という。本気で有り難い。 ただ、物件を仲介した人は本当にいいんですか? 何度も何度も確認を求めてくる。 怪しい態度に気付いた俺は何を隠しているのかと怯えている仲介人の胸倉を掴まさせて、白状させた。 なんと、俺が契約したアパートには幽霊が住んでいるらしいのだ。 そう、この物件と契約した人たちはたったの三日ぐらいで契約解除して泣きながら助けを求めてきたらしい。 正直、俺も信じがたい話だが、その仲介人も幽霊の存在を見たことがあると自分の恐怖体験を延々と語りだした。 深夜零時頃になると幽霊がうらめしやーと叫びながら姿を現す。 予想もしていない異物な存在にパニックを起こした仲介人が唯一確信を持って言えたのは、幽霊は女性だった。 たった、それだけのことである。 526 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 01 03 23 ID rCB25aQZ その事実を知ってから、松山光一(俺)は中古アパートに引っ越して一週間。 何事も起こらなかった。 幽霊なんて噂話に過ぎなかったのではないか? 住人の全てが麻薬中毒者で幻覚症状に陥っていた可能性すらも浮かんでくる。 ともあれ、夜だ。 「今夜も秘蔵のお宝をインスト-ルするか」 浪人生である俺が自宅から持ってきたPCでお目当てのゲームをインスト-ルするのは 真面目に受験に取り込んでいる人たちが見るとお前絶対に必ず落ちると指を差して笑われるかもしれないが、断固として言うであろう。 激しい受験勉強で数々のストレスが体に蓄積しているので、少しぐらいゲ-ムをやってもいいだろ。 そんな感じでPCを起動して、スピーカーの差し込み口にヘッドホンをする。隣に住人はいないが、外に声が漏れるのはよろしくはない。 完全最強装備を整えた俺はいざ勝負っ!! 「う~ら~め~し~や~」 「ん? 何か聞こえたような?」 スピーカの音量をMAXにしているため、僅かな小さな声が聞こえるだけである。 「そんなことよりもヤンデレヒロインを頑張って病んでもらわないとステ-ジクリアができねぇよ」 「う~ら~め~し~や~」 「最近のヤンデレヒロインは着信99件に、ポストに五年分の手紙が入っていると年々と凄くなってきているな」 「う~ら~め~し~や~」 「ひゃっほっっっ!! ヤンデレゾンビが鉈を装備かよ。誰かロケットランチャ-持ってきてくれ」 「う~ら~め~し~や~。う~ら~め~し~や~」 「う~む……。精神世界にダイブするとまともだったヒロインがヤンデレ化して、 自分のために死んでよと嘆願されてもなぁ。男は余裕でひくって……」 「う~ら~め~し~や~。うらめし~や」 「ん?」 後ろを振り返ると……そこには見慣れない少女がいた。 白い服だけ身に纏っていた少女が涙目になって、うらめしやと呟いていた。 年頃は俺と同じくらいであろう。腰まで届く長い髪に、整った可愛らしい容姿。 これが幽霊と言われると、押し掛けてきたストーカーが家に侵入してきたように思える。 「とりあえず、うらめしいんですよぉ!!」 と、目の前の幽霊は振り返った来た俺の身体にポカポカと力を入れずに叩き出した。 何がうらめしいのか、その小さなお口でちゃんと事情を説明して欲しいもんだ。 「その前に。あんたは噂になっている幽霊なのか?」 「そうですよ。すでに故人です!! お墓もありますよ!!」 「それは良かったな。じゃあ、俺はヤンデレオンラインRPGの攻略するからじゃあ」 「ひ、酷いです。わ、私のお話も聞いてくれてもいいじゃないですか……」 「いや、聞いてもさ。生前、私は犬でしたがご主人さまのために転生しましたオチでしょ?」 「犬なんかじゃあありません。生前はまともな人間でしたよ!! それに私が話したいことはそういうことじゃあないんです」 この幽霊はしつこく俺に歯向かってくる。せっかく、至福の時間を潰す奴は極楽へ行かせてあげたい気分になってきた。 527 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 01 05 43 ID rCB25aQZ 「大体、光一さんはあなたは一体何ですか!! あなたがアパ-トにやってきた日からずっとずっと、 うらめしやうらめしやって言っているのに全然気付いてくれないじゃないですか? あなたは本当に人間なんですか。他の人なら私の声に気付いて、すぐに逃げるんですよ」 と、幽霊はポカポカと俺の頭を叩いてくる。力が篭もっていないので全く痛くも痒くもないが、幽霊の愚痴はまだまだ続く。 「なのに……光一さんは毎日毎日PCゲ-ムで夢中になって、本当に受験生なの!? って感じに朝になるまでゲ-ムをやっているだもん。 私、一度その人に姿を見られない限りは朝になると見えなくなるんですよ。 だったら、夜は早く寝てください。そうじゃないと私の声が聞こえないでしょう!!」 「ようするに気付かなかったことに怒っているのか」 「そうです!! 寂しがっている女の子の気持ちに気付かないと背後から鋸から刺されますよ」 俺に無視されて、寂しかったのか幽霊。 「まあ、気付かないのは真面目に受験勉強に取り込んでいた俺の落ち度ということは認めよう」 「誰がが真面目に勉強していたんですか?」 「ともあれ、幽霊が実在していると証明されたので。それじゃあ」 「それじゃあないんです!!」 と、先程から幽霊は自分の受けた仕打ち分は怒る権利があると言うばかりに怒鳴り散らしていた。 可愛いらしい容姿をしていても、カルシウム不足の女は男にモテないと思うんだが。 「どうして、光一さんは私のことを恐がらないんですか? 仮にも、私はすでに死んでいるんですよ」 「恐がると言われてもな……」 これが筋肉ダルマの幽霊や顔が半分潰れている生理的に受け付けない幽霊なら 裸足でお宝のソフトコレクションを持ちながら逃げ出していただろう。 だが、目の前の少女は和やかな雰囲気を部屋に充満させているおかげでそんな恐怖を微塵も感じなかった。 「幽霊が居てくれないと家賃が上がるじゃん」 「家賃って」 「幽霊が出ると噂されているボロいアパ-トのおかげで家賃が安くて助かっているんだ。恐れるどころか、逆に感謝したいとこです」 「感謝って……」 「でも、遠きヴァルハラの道に行きたいなら、別に成仏してもいいんだけど」 「いいえ。まだ、私は成仏したくありません。この世に未練はたっぷりとあるんですよ」 528 名前:幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 01 08 24 ID rCB25aQZ 「その未練とは?」 幽霊がこの世に固執した理由を肴にして、今晩は暇つぶしができそうだ。 軽い気持ちで聞いた俺とは違って、幽霊は前髪で表情を隠して陰気な雰囲気を漂わせてから言った。 「私が死んでから15年の月日が経ちました。 生前は光一さんと同じように新築したアパ-トの部屋に住んでいました。 ここに住んだ理由は一生懸命勉強して入った大学に通うために下宿したんです。 この大学に入るために青春の全てを犠牲にして猛勉強しました」 小さな手で鉛筆を動かしている幽霊の姿を思い浮べる。バカと書かれていた鉢巻きを頭にしている 彼女の健気な受験勉強に声援の一つとバナナの皮を持ってきて、 その場で滑って見せたりといろいろな悪戯もやりたくなるわけだが。 幽霊は感情が強くこもった声が周囲の空気を更に重くした。 「せっかく、ギリギリで受かった大学も勉強が難しくてついていくことがやっとでした。 毎日毎日、自習や勉強に貴重な時間を費やしたときに気付いたんです。 他の皆は大学を勉強している場所ではなくて、男遊びにやってきた雌だということに。 友達も勉学よりも医大や一流大学のボンボンばかりを狙う狩人でしたし。 そこで私は勉強のおかげで自分の初恋もまだだったことに気付きました。 これからは男を、彼氏を作って、失われた青春を取り戻してやるんです!! 宮野由姫(みやの ゆい)20才。運命を変える決心した日ですぅ」 宮野由姫……男に泣かされるフラグが見事に立ちやがった瞬間だな。 「ところが、私は情けない事故で死ぬことになりまして。 若い年頃の女の子が初恋もできずに死んでしまうということは幽霊になる理由としては充分すぎると思いませんか? それがこの世に未練を残すことになったんです。本当に可哀相だと光一さんも思ってくれますよね?」 「俺が言えることはたった一つだけだよ」 宮野由姫の悲しい過去に同情することはできないだろ。 どう受け止めるかは人それぞれ違うものだから。 俺は俺の真実を大声で告げるだけだ。 「実年齢35才!!?? いや、それよりも。驚くべきことは…… この鍛え抜かれた鋼鉄の肉体!!!!」 「鍛え抜いていませんし、普通の女の子の体ですよぉぉ!!」 幽霊・宮野由姫は頬を膨らませて、女の子に鋼鉄の肉体って嫌味ですかとジト目で睨まれていた。 小動物が少しムクれている姿は幽霊であっても可愛いもんだ。 と、俺は今まで話を聞いてとある事実に気付いた。 「未練を残して幽霊になったってことは……宮野由比さんが初恋するまでは成仏できないのか?」 「その通りです」 「それまでは俺の部屋で居座るつもりかよ」 「ううん。ずっと、光一さんの傍にいますから。よろしくお願いしますね」 こうして、俺と幽霊の奇妙な共同生活が始まった。 やれやれだぜ。 529 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 01 10 26 ID rCB25aQZ 投下終了です。 一応、短編で終わらせる予定です。 ヤンデレスレは二度目の投稿になるので よろしくお願いします。 530 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 03 40 52 ID lmJpuons 所謂ヤンデレコメディ的なノリですな。 こういう笑えるの大好物だwww てか男のキャラに吹いたwwwニヤニヤしながら癒されましたww GJ!! 531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 04 17 11 ID 8topzTfM トライデントってあの荒らしのトライデントか? 532 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 07 31 44 ID fZEMAy9O NG指定:8topzTfM 533 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 07 33 49 ID glm/58lu 529 GJ 黒の領域好きでした 続きを楽しみに待ってます 534 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 12 43 12 ID dKmP0TWA 529 GJ!! こういうの大好きだ。 短編なのが残念だ。 535 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 12 52 53 ID vRFIwkkU 529 GJと言いたい所だけど、言葉の使い回しとか誤字が多いので、しっかり推敲してほしいです 536 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 13 33 32 ID 8X5oLiXt 535 そんなに誤字が多かったけ? よくわからないけど 537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 17 18 58 ID X3e5tVc7 一瞬「えっ!!桜荘はっ!?」 って思ったけど ここはヤンデレスレだったな 538 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 17 37 49 ID g+HB/JQ1 529 GJGJ!!!!1 3年前に北海道の会社に就職したとき家賃3000円の部屋に幽霊が出たのを思い出した。 539 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 18 05 14 ID bzDg5k5i トライデントさんは荒らしに好かれてるからな、もれなく荒らしが着いてくるんよね しかし文法間違いや誤字が多いのは事実 540 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 18 44 49 ID FN75cyde 539 だったら、ちゃんと間違いを指摘してあげたら? 個人的にはネタが良ければ、それでいいんだが 541 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 18 58 35 ID 74u0AYNO 例えばこことか。 >他の皆は大学を勉強している場所ではなくて、男遊びにやってきた雌だということに。 まああんだけ言われてんのに直らないってことは この人の芸風なんじゃね?って俺は解釈してるけど。 542 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 04 18 ID DLC4FQNb トライデントさんGJです 誰がなんと言おうと俺は書き続けるあなたを尊敬するしあなたのファンです。 逃亡したと思われているであろう俺が投下します。リハビリ投下で書く希望をもらいました。 本当にすみませんでした。 初見の方もたくさんいらっしゃると思います。 本保管庫の方にまとめていただいているので興味が合ったら読んで下さい。 では投下します↓ 543 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 09 03 ID DLC4FQNb シャラン 湯の中で鎖を揺らすと耳に心地良い音が鳴った。聖佑人はだいぶのぼせた頭で鎖を 鳴らして遊んでいた。そろそろ姫野亜弓にでも助けを求めようか、と考えながら どうにも面倒で体が動かない。このままいたら立てなくなるな。頭の隅でそう呟く。 先ほど、姫野真弓は佑人に口づけた。 唇はすぐに離れて一瞬だけ2人の瞳が交錯する。 「あっいや……今のは……」 目を逸らして口ごもると次の瞬間に真弓は弾かれたように立ち上がり素早く 手錠を蛇口に付け替えると風呂場から逃げ出してしまった。 「ゆっ佑人が見つめるからいけないんだからね!!!!」 扉ごしにそう意味の分かるような分からないようなことを叫ばれて佑人は放置された。 そして今に至る。ぼーっと湯に浸かり続けて一時間、佑人はのぼせきっていた。 ■■■■■■ ■■■■■■ 急にに鮮烈な空気が入ってきて顔をあげる。風呂場のドアが開いて亜弓が立っていた。 「のぼせちゃったかしら……ごめんなさいね、真弓を宥めるのに時間がかかってしまって」 言いながら入ってきてカチャリと手錠を外す。湯気で青白いほどの肌に黒髪が 張り付いていた。生き物のようにも見える黒髪。その下に見えるうなじから鎖骨に かけて目を走らせると平素よりか幾分色づいている。血が通っているのだ。 この人も生きてるんだな。佑人は妙な実感を覚えた。 「ありがとうございます」 「いいのよ……部屋で真弓が待っているわ。行ってあげて」 そう言いながら亜弓は佑人の首輪の鎖を有無を言わさずに引いていた。 ■■■■■■ 544 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 12 05 ID DLC4FQNb ■■■■■■ 暗い部屋に入る。亜弓は音も立てずに真弓の首輪に鎖を繋ぐと出て行った。 「……真弓」 黙っているのも気まずいので話しかける。返答は、無い。一メートル程度の距離の所で 背中を向けてうずくまる真弓は酷く小さく見えた。こんな子に俺は繋がれてるのか。 酷くバカバカしい事実だったが、事実は事実だった。もうすぐ終わるであろうにしても 今現在繋がれていることに変わりはない。薬がまた回ってきたのか体が酷く重かった。 「真弓。寝ようか」 肩に手をかけると真弓の体がびくんと震えた。 「真弓?」 「……っ佑人は、佑人は私に興味ないの?」 「は?」 佑人には脈絡なく感じる問いだった。 「だから、佑人は、私と、その……その、えっちな事とかしたくないの?」 暗闇でも分かる。真弓の顔は赤かった。 「いや…」 「だって好きなんでしょ?好きだったらしたいものでしょ?」 一度言ってしまうと真弓は吹っ切れたのか一気に言葉を継ぐ。 「私は……佑人と、したいよ?体も佑人のものになりたい。佑人が、好きだから」 言い切ると真弓は一旦俯いて、それから驚きで硬直している佑人にキスをした。 545 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 16 33 ID DLC4FQNb 始めは唇が触れるだけの。 その次は触れた後に舌でなぞって。 三度目に触れた時に真弓は佑人の中に舌を差し込んだ。 口腔の中に真弓が入って来るに至って佑人の鈍った頭にも警鐘が鳴りだした。 まずい。このままではまずい。また侵食されてしまう。だがそう思う間にも真弓の舌は 佑人を犯していた。絡みつき、隅々まで舐めていく。ゆっくりとした動きだが確実に 佑人の脳は快感を感じていた。いつの間にか腕が首に回されており体が密着している。 薄いパジャマを通して真弓の胸が、太ももが、腹が、佑人に密着していた。 彼女の鼓動――早鐘を打っている鼓動が伝わってくる。 その暖かさは、愛しささえ錯覚させて来る。しがみつくように、離さないように 腕や足に力が込められ、軽い圧迫感すら与えた。 軽い呼吸音。 息が続かなくなったのか真弓が顔を離した。小さく佑人、と囁いて首に回していた 腕をとく。そのまま佑人のパジャマのボタンを外し始めた。 「真弓っ何し」 止めようとすると唇を塞がれる。舌を吸われながら、佑人はそれでもまだ抵抗 しようとしていた。自由にならない体に加えて抵抗しようとする気さえ萎えていく。 546 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 19 57 ID DLC4FQNb いいじゃないか。殺される訳では無い。 だがそう思う一方でこれ以上進めば戻って来られない領域に足を踏み込むことに なることも分かっていた。取り返しのつかない、帰って来られない領域へ。 あまり自分を明け渡してはいけない。分からないけど何かが危険だ。 これ以上自分を削られてはいけない。名前を読んでキスをして愛を告げて もう自分は随分真弓に取り込まれていないか? 佑人の頭の中で鳴る警鐘を押し流すように真弓は行動を続けた。舌が這う。 佑人の上半身を脱がしたところで唇を離し、そのまま首筋を伝って行く。 首輪に沿ってキスをされ、一瞬痛みのような感覚が走る。 547 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 24 42 ID DLC4FQNb 「痕、つけちゃった」 軽く笑いながらいつの間にか彼女のパジャマのボタンも外されきっていた。 少し涙で潤んだ瞳が見上げて来る。 「佑人、脱がして?」 「俺は」 「女の子が必死で迫ってるのに……」 「そういう問題じゃなくて」 「佑人」 暗くて見えない筈なのに分かった。 真弓の瞳の色が変わった。 持ち上がって来た手が首輪に繋がる鎖にかかる。 じわじわと力がかかって首が締まって行く。 真弓の瞳には佑人が写っている。写っているがそれは真弓の佑人ではない。 真弓の佑人は優しくキスをして真弓を抱き締めて頭を撫でてくれる。 今真弓の瞳に写っているのはそうでは無い佑人だ。 そんな佑人は、真弓には必要ではない。 「……ま…ゆみ…」 意識が遠のく。殺されないんじゃ無かったのか。 死にたくない。 死にたくない。 まだ明日も生きたい。真綾に会いたい。……真綾。 彼女を思い出すのも随分久しぶりかもしれない。 かすみそうな意識の中で佑人は決めた。 俺は生きたい。 手を伸ばして少女の頬に触れ、そのまま下に下ろして羽織っているだけだった パジャマを滑り落とす。 佑人は自分を明け渡すことに決めた。 ■■■■■■ ■■■■■■ 548 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 25 45 ID DLC4FQNb 今回は以上で終わりです。 すいませんでしたorz すみませんでしたorz 549 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/11/29(木) 19 28 53 ID +9AjyI/l 548GJ 550 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 19 35 51 ID o/mwFYq7 548 誰だっけ? 嘘です。 うおおおーー! 素で忘れていたじゃないか! 初代スレの話題が出たり、カムバックが最近の流れなのか? 大歓迎だぜ!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/472.html
601 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 27 56 ID +Ky50rQJ 600 パスタGJ!! 崩壊していく光景を眺めながらバジリコのパスタを食べたいもんです。 では、続けて投下します。 WARNING! WARNING! 警告です。途中の注意書きをよく読んでください。 602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 28 20 ID mCeR+K8E ノベルゲーの人どうなったんだろ? 流石に二、三日で出来てるとは思わないがタイトルとか気になる 603 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 29 18 ID +Ky50rQJ 真也は今、自宅の玄関前で目を閉じている。 (鍵を回したらすぐにドアを開けて、PC本体を床に叩きつける。 そしてフィギュアを見たら踏み潰してハンマーで粉々にする。 その後でハードディスクを取り出して叩き割る。よし) 自分がこれから行うべきことをおさらいし、いざ―― ズッ! ガチャリ! ばん! ドアを開けて、彼が目にしたものは―――― いつも通りの自分の部屋だった。 「あ、あれ、れ?」 真也は拍子抜けした。 何かおかしなことが起こるだろうと覚悟していたからだ。 たとえば『オカエリナサイ シンヤクン オソカッタネ』って言いながら歩いてきたりとか、 PCから触手が出てきてゲームの中に閉じ込めたりするとか。 しかし、現実はあっけないものだった。 部屋のレイアウトは変わっていないし、フィギュアも当然どこにも無い。 PCにインストールされているプログラムを確認してもあのエロゲーの タイトルは見つからなかった。メールにも送信履歴は残っていない。 「なあんだ。白昼夢だったのか。 はああああ・・・・・・」 一気に疲れが押し寄せてきた。 「あーーーーー。 昨日は寝るのも遅かったしな。今から寝よ」 仕事着のままベッドに倒れ込む。 そのまま横になっているとすぐに睡魔がやってきた。 「もうエロゲーはこりごりだ・・・・・・」 そう言うと真也はゆっくりと寝息を立て始めた。 しかし、この男はまたしてもとんでもないミスを犯した。 部屋の鍵を開けっ放しにしていたことを忘れていたのだ。 そしてこの後にすぐ――ではなく、眠りから覚めた後にそれを後悔することになる―――― 604 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 31 13 ID +Ky50rQJ 夢の中で真也は天国を味わっていた。 「ああ・・・・・・そんないきなり、おっぱいに・・・・・・」 「いいじゃねえか。お前も好きなんだろ?」 エロゲーのヒロインの胸を後ろから揉んでいる。 昨晩ナニのネタにしなかった方のヒロインだ。 「ん・・・・・・やあ、ん・・・・・・直に触っちゃだめよぉ・・・・・・」 「天国を味あわせてあげるって。お前言っただろ?」 最初はあの時の恐ろしい描写を思い出してしまい、ためらったが・・・・・・ 彼の胸フェチぶりはやはり常軌を逸していた。 「確かに・・・言ったけど・・・・・・でも・・・・・・ ふえ? あ! ・・・・・・こんなの恥ずかしいよ。 ・・・・・・ね、口じゃだめなの?」 「俺は挟んでもらうのが好きなんだよ!」 経験なんか一度も無いくせに。 まあ、彼は自分のことを非童貞にして超絶倫のイケメンだと 妄想の中で変換しているから、夢の中限定でそういうことにしてもいい。 「ひあっ! ふぁん! やあっ! 待ってよ! 真也くん! 激っ・・・しすぎるよお!」 「あーーーー、やっぱでかい方が締りがいいわ」 真也は声を上げながら激しく動いている。 しかしここではカットさせていただく。聞かせられるようなもんじゃないし。 「っ!・・・・・・んあっ、・・・や! 待って! 息が、ちょっと! 止まってよ! 真也くん!」 「もう無理だ! いくぞ!」 もう少し粘れよ!黒川真也! ええい、検閲だ! ピ――――――――――――――――――――――――――――――― 「あ、白いのが、いっぱい出てる・・・・・・」 「ふううう、はああああ、いい・・・・・・・・・」 自家発電よりもだいぶ良かったらしい。 検閲も長めになってしまった。 絶頂を味わった真也は、このヒロインの虜になってしまった。 ーーーーーーーーーーーーー ※エグイ描写が嫌いな方はこのまま『ジャンプ先』へ向かってください。 男性の場合は、『特に』それをオススメします。 605 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 31 53 ID +Ky50rQJ ※ジャンプすることを推奨します。 コトが終わってからもまだ真也は夢の中にいた。 夢だったらコトが終わってから目が覚めるものだが、 まだ彼の横には巨乳のヒロインが上半身裸で寝そべっていた。 「・・・・・・ね、真也くん。 私の話、聞いてくれる?」 「んーーー? 別にいいけど、何?」 ヒロインは体を起こし、真也の足の間に座った。 「私の人形をさ、ゴミ袋に入れたよね?」 どきっ・・・・・・ 「あれさ、どういう意味だったのかなあ? まさか、焦らしプレイ? 放置プレイ? 放棄プレイ?」 「いや・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・・・」 まさかその話を今されるとは思っていなかったらしい。 真也は答えることが出来ずに口をぱくぱくさせている。 「答えられないの? じゃあ・・・・・・」 「おしおきだよ」 ぐあっ! 「ひえっ?!」 ヒロインが大きく口を広げた。 そしてそのまま―――― 606 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 32 41 ID +Ky50rQJ ※ジャンプすることを推奨します。 「はむ・・・・・・ん、・・・・・・んちゅ・・・・・・ れろ・・・・・・ちゅる。んふ・・・・・・ん・・・・・・ ぷはあ。・・・・・・私の必殺技、受けてもらうよ」 真也のナニを咥えながら口淫を開始した。 それは自信を持って必殺技と呼ぶに値するほどの技術だった。 ちゅばっ ちゅる れろれろ 「う、ああ・・・・・・く、かあ・・・・・・」 真也は再び天国に連れて行かれた。 夢の中だというのに、信じられないほどの快楽が襲いかかってくる。 真也はこのプレイにすっかり夢中になってしまった。 自分の体が動かないことに気づかないほど。 かり かり 「うああ・・・・・・いた、気持ちいい・・・・・・」 ヒロインがナニを根元近くまで咥えながら甘噛みしてきた。 かり かり かり それは、次第にエスカレートしていく。 甘噛みから、噛み切る動きへと。 607 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 33 34 ID +Ky50rQJ ※ジャンプすることを推奨します。 がり がり がり 「?! ・・・・・・っつぅ、おい。何を」 がりっ! (うがあああああああああああ! 何しやがるんだ!) がり みちみち ぶち (あがああああああ! ああああああああああああ! いてえ! いてえええええええええ!) ヒロインが、真也のペニスを噛み千切ろうとしていた。 真也が悲鳴をあげようとしても、暴れようとしても何もできない。 ・・・・・・まるで人形のように。 ぎり ぎり ぎり ぎりぃっ! (ーーーーーーーーーっ!!!!! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああっ!!!!) 真也のペニスはすでに原型を成していない。 そして、無慈悲にも。 ぎりぎりぎりぎり! ガチンッ!! 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 夢から覚めた真也は地獄の痛みに苦しみ―― その後、彼の男性としての命は失われた。 608 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 34 13 ID +Ky50rQJ ※『ジャンプ先』 もしあなたがエロゲーをしていたとして、ヒロインの一人を スルーして別のヒロインに夢中になったとします。 その後でもしもスペシャルステージやアナザーストーリーが 画面上に出てきたら、注意してください。 ゲームの特典としてフィギュアやポスターが付属していたら、 さらに注意が必要です。 クリアしていない状態では決して捨てないでください。 もしクリアせずに捨ててしまうと、彼と同じ目に遭うかもしれません。 終 609 名前:シアン・マゼンダ・イエロー・ストーカー ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 34 58 ID +Ky50rQJ 終わりです。 今度こそエロゲやってる人。ごめんなさい。 タイトルはCMYKからとりました。 最後のストーカーというのは『stalKer』の『K』からとりました。 610 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 57 08 ID DDHJWf5a 600GJ!これからが楽しみ!wktk! 609ちょwwwwwこれはwwwww (((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク 611 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 58 48 ID OApDMel9 こえ~ 612 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 22 59 24 ID q3jSbcqG これ世にも奇妙な話じゃね?GJ 613 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 08 44 ID 6L6iLFF5 600 幼なじみの方もただのツンデレでは無いようで…wktk 609 GJ!!!なんとか事件を思い出した。 614 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 09 01 ID mCeR+K8E 609 GJ!好みの内容だw なんちゃってパッケージ描いてた http //imepita.jp/20070210/831400 けどここまで描いてキモウトと神無士乃の入る余地が無いことに気付いたorz 615 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 12 43 ID EZ/bc10q 589 楽しみにしてますw 600 これは次回に期待w 609 GJ過ぎwww エロゲ出来ないww て事で投下します 616 名前:上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 16 03 ID EZ/bc10q 今日もいつもと変わらない朝。 朝の新鮮な空気をたっぷり吸い込みながら、家の前で加奈を待つ誠人。 「誠人くん~!もうちょっと待ってぇ~!」 「はいはい待ってるよ」 開いたままのドアから加奈の叫び声が聞こえる。 ひどく慌てた様子が誠人に伝わる。 いつも寝坊する加奈を待つのは、誠人の日課だ。 家中に縦横無尽に動き回る加奈の足音が広がる、それを聞くのが楽しかった。 「ごめ~ん!すぐ行こう!」 両手を合わせ真剣な表情で謝る加奈をおかしく思う誠人。 「あっ!笑ったな!?」 「笑ってないから、さっさと行こうぜ」 「ちょっと待ってよぉ!」 早足で歩く自分に並ぶために必死についてくる加奈を見つめる誠人。 (本当可愛いな…) あんまりにも見とれていた加奈が不審な目で誠人を見つめ返す。 「どうしたの?あたしの顔なんか付いてる?」 自分より一回り小さい少女に指摘され、ようやく自分が彼女を見続けていた事に気付く誠人。 紅潮した表情を悟られないよう前を向き、ちょっと走り出す。 「誠人くん~!」 走る誠人の背中を追う加奈。 誠人が後ろをチラ見してみると、中身の少ない鞄を振り回しながら必死に走る少女の姿が映る。 一生懸命にしているほど、誠人は意地悪な気持ちになっていく。 (相当参っているな、俺も…こんな好きなんてな…) 「もうちょっとゆっくり行こうよ!」 「早くしないと遅刻だぞ」 そう言いながらも走るペースを緩めてやり、距離差を縮めてやるようにする。 ようやく追いついた加奈が息を切らして誠人を見上げる。 「誠人くん早過ぎ…」 「お前が遅いだけだ」 「もう…!」 頬を膨らして怒っている加奈も、誠人にとっては天使の微笑みだった。 こんな関係であり続けたい、心からそう思った誠人であった。 617 名前:上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 17 04 ID EZ/bc10q 「それじゃ!」 俺は加奈に手を振って教室へと入っていった。 加奈とはクラスは分かれている、といっても隣同士なんだけど。 お互い学校ではそこまで親しくはしない、加奈にも、俺にも付き合いというものはある。 学校ではなるべくそれを大事にしたい、恋にうつつを抜かして友達一人も出来ませんでしたじゃ充実した青春とは言えない。 こんな気遣いがお互いに嬉しい…んだと俺は思っている。 無理はせず、相手を思い遣っていられる、そういう関係に情熱的な恋とは違った、落ち着きを伴った感情を俺は抱いている。 きっと、加奈もそのはず…。 今は日本史の授業中な訳だが、欠伸が出ちまう…。 そんな単語の羅列を板書されてもわかんねぇよ…なんて風に愚痴を溢しながら寝ようとした時、ポケットに入っている携帯が震えた。 差出人を確認してみると、加奈からだ。 『誠人くん今日本史だよね? あたしは数学だけど、全く意味不明…。 当てられないかビクビクしてます…』 全く…授業中はメールはよそうって言っていたのに………。 まぁ俺も今寝ようとしてたし、何よりも加奈からのメールだ、素直に嬉しい。 机の下で手馴れた感じでメールを打っていく。 『安心しろ、数学は俺の専売特許。 当てられたらすぐにメールしろ、答えてやるよ』 送信後一分もしない内に返信メールが届く。 『誠人くん中間テスト数学39点だったじゃん! そもそもメールしてその返信を待つってどれだけ時間かかるのよ~!』 全く以ってその通り…だが、俺の数学の点数は93点だ。 どうして逆さまに脳内変換してんだよ…、ちょっとムッときたので、メールを無視してみる。 五分くらい経つと、また加奈からメールが届く。 『ごめん、怒っちゃった? 言い過ぎたのなら謝るから…』 何真に受けてんだか、その反応が見たくて無視した訳だが。 本当にコイツは俺の心を的確に射やがるな…朝天使だと思ったが前言撤回、こいつは悪魔だ。 そんな悪魔が見せる無邪気さに打ちのめされながら、メールを返信する。 『冗談だよ、怒ってないから気にすんな』 送信ボタンを押しながら、時刻を確認する。 後もうちょいで授業終わるな…。 重苦しい空気から開放されると思うと、嬉しくなる。 そんな中、やや遅れて返信がくる。 『良かったぁ~! ねぇ?もうすぐお昼ご飯だし、今日は一緒に食べよ?』 そうか、この授業四時間目だった…と確認した。 いつも友達と食ってるしな、たまにはそれもいいか。 久しぶりの加奈との昼飯に何となく新鮮さを覚えながら、携帯を弄る。 『いいよ、終わったら俺んとこきて』 618 名前:上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 18 45 ID EZ/bc10q チャイムが拷問のような時間の終わりを告げる。 今日は加奈とメールしてたからそこまで苦じゃなかったけど。 席で弁当を用意して加奈を待っていると、近づいてくる奴が見えた。 「沢崎くん………」 「島村…またか?」 俺が呆れた顔で邪魔臭そうに言ってみるも、表情は変わらない。 「本当にごめんなさい、何か私こういう事妙に気にするタイプで…」 「気にすんなって、てかそんな常に相手に気使ってたら疲れるぞ?」 俺の目の前で申し訳なさそうに頭を深々と下げているのは、クラスメイトの島村由紀だ。 何でこんな風にいるかというと…昨日の授業中に俺の前の席にいる島村が突然奇声を発しながら立ち上がったのだ。 そこで椅子が俺の机に当たって、俺は転がり落ち、右腕を床に擦ってしまったのだ。 その事に関して島村は昨日から何度も謝っている。 友達からわざわざ親しくない俺のメルアドを聞き出してまで謝ってきた時にはさすがに驚いた。 「別に掠り傷なんだから気にすんなって」 「でも…」 心配そうに俺の右腕を見つめている島村を確認した俺は、やれやれと思いながら制服の上着を脱いでワイシャツを捲くった。 「な?大した傷じゃないだろ?」 怪我した時は血がやけに出たが、止血が終われば大したもんではなかった。 「…良かった………」 ホッと胸を撫で下ろす島村の様子が見て取れる。 ずれた眼鏡を直しながら、やっとの事で笑顔を俺に向ける。 「ま、そういう事だから」 俺がワイシャツを再び着ようとした時、腕に痛みが奔った。 一瞬顔をしかめるほどの痛みに、何事かと思ってみてみると、そこには……… 小刻みに震えながら俺の腕を片手で掴んでいる加奈の姿があった。 反射的に傷を隠そうとするが、細い腕からは到底想像のつかない力に振り払う事が出来ない。 目が静かに俺を見下ろす…そのあまりの怒りの視線に、俺は恐怖を覚えた。 昼休み教室にこいと言ったのは俺だ………迂闊だった、自ら俺は…。 「ちょっと来て」 有無を言わさず加奈が俺の腕を引っ張る、落ちた弁当に目もくれない加奈。 加奈の腕を媒介にして俺に恐怖が伝わる…ヤバイ! 619 名前:上書き第2話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 19 16 ID EZ/bc10q 「おい!加奈ここ女子トイレ…」 俺の声なんか無視して加奈は強引に女子トイレの個室に押し込める。 独特の異臭が鼻をつく中、只ならぬ雰囲気の加奈に寒気を感じる。 「誠人くん…」 名前を呼んだかと思うと加奈は俺の唇をいきなり奪った。 壁に押し付けられながら、普段の様子からは到底想像のつかない情熱的なキスを交わす。 舌まで入れてきて、口の中で厭らしい痺れが広がる。 俺の唾液を掻っ攫って満足したのか、加奈は口を離した。 「か、加奈…?」 無言で俯く加奈、不安になってくる…嵐の前の静けさとはこんな事を言うのかな…? 「あたし…誠人くんが好き」 顔を上げ分かりきっている事を口にしてくる。 笑顔だが目に色がない。 「俺もだよ…!」 「ありがとう…。でも、あたし短気なのかな…?他の人に誠人くんを触らせたくない。 その傷が…他の人が誠人くんに触れた証拠があるのが耐えられない! そんなの見てるとあたし壊れちゃうよ!!!」 押し付ける力が弱くなったと思った瞬間、加奈が掴んでいた右腕を見つめてきた。 嫌な予感がした…。 「…ハハ…こんな、こんな傷があるのがいけないんだよ…?あたしも誠人くんも悪くない…”この傷”がいけないんだよ!?」 すると加奈が俺の傷を引っ掻き始めた。 瘡蓋が剥がれピンク色の皮膚が覗く。 その皮膚の周りを上から下へと懇親の力で引っ掻いてくる。 「いぇが!痛ぇ!やめてくれ加奈!!!」 皮膚が破れる鈍い音が聞こえる。 加奈は相変わらず笑いながら俺の皮膚から血が出る様子を楽しんでいるように見える。 俺の声など無視して一人笑っている。 「あああ!!!か、加奈ぁ~~~!!!」 「大丈夫大丈夫大丈夫…すぐに消えるから………傷も、痛みもすぐに消えるから!」 昼飯時でトイレには誰も来ない、俺の悲鳴だけが虚しく響き渡った…。 「はぁはぁ…終わった………あはっ」 加奈は俺の血まみれの腕を見て満足そうに笑っている。 止め処なく溢れる血に俺は呆然としていた。 「痛い?誠人くん…ごめん………こんなあたしでごめん…」 突然態度を翻してくる加奈、いや、これが本当の加奈なんだ! そう思いたかった…。 心配そうに下から覗き込むように見上げる加奈、さっきまでの鬼神の如き表情じゃない…いつもの加奈だ。 「あたしが弱くてごめん…。ホントごめんなさい!あたし誠人くんが好きなの!好きで好きで…ごめんなさい…」 ずるいよ…加奈、そんな風に謝られたら………。 「き、気にすんな。俺も怪我しないように気をつけるから」 自分でも何を言っているのか分からなかった。 ただ今加奈が一番喜ぶであろう言葉を本能的に選択しただけだ。 案の定、涙目だった顔に光が差し込む。 この笑顔の為なら、許してしまう…どうしようもないな…俺。 620 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 21 50 ID EZ/bc10q 投下終了です。 こんな感じなんですかね…。難しいですわ。 614 GJ! 621 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 30 54 ID DDHJWf5a 620 GJ!これはいいヤンデレですね(*゚∀゚)=3ハァハァ 622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 44 38 ID vNNnHOPO 609 天国の後に地獄が! 620 通常時がまったくまともなだけに恐ろしい。 どちらもGJです! 623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 47 20 ID 13yW4C4n 614 大丈夫ですよ! 世の中にはFDになった途端パッケージから消えるメインヒロインだっているんですから! 「それ、誰のこと(ですか)?」 「――あ」 暗転 624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 52 24 ID Rd11u8D4 609 怖いお。エロゲーのヒロインならエロゲーの主人公を追ってろお(つД`) でもGJだお。 625 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 52 58 ID 8jgVWqnM 614 彩色してロゴ入れたらまさにパッケージだ パッケージにメインヒロインがいないことだってあるさ…… ノベルゲーの方、必要ならば追加シナリオとか追加エンドとか書きますので、遠慮なく言ってください 埋めネタとして投下するはずだったのを投下 『終わったあとのお茶会』全三話です 登場人物はマッド・ハンター如月更紗、一般人須藤幹也、三月ウサギの兄妹 パラレルワールドというか楽屋裏のようなものだと思ってください 626 名前:終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 54 12 ID 8jgVWqnM 「チェンジ」 二枚のカードを、里村冬継は机の上に放り投げる。ダイヤの7とスペードのエース。代わり にやってきた二枚は、ダイヤの8とハートの7。手元にあるカードは、ハートの8、クローバ ーの2、スペードの2。 8のツーペアだった。 「おや、おや、おや。なんとも微妙な顔をしているね」 くすくすと笑いながら、角の席に座る如月更紗が言う。いや、今は如月更紗ではなく、マッ ド・ハンターなのかもしれない。男物のタキシードに小さなシルクハット、黒い杖は逆向きに して肩にかけている。 手に持つのは、五枚のカード。片手で持つそれを、指先だけで器用に閉じ、開いた。その際 に落ちた一枚が、ひらりと机の上、冬継が捨てたカードの上に落ちた。ゲームを始めたばかり なので、机の上にはまだ三枚しかカードがない。 捨てたカードは、ハートの4。 「一枚でいいのか?」 冬継の対面――椅子に座り、退屈そうな顔をした少年、須藤幹也が問いかける。マッドハン ターは黙って頷き、手元の山から幹也は一枚を引き抜いて手渡す。冬継の位置からでは、一体 何を貰ったのかは判別できない。マッドハンターは常に笑っているせいで、表情から手のうち を読みとることはできそうにもなかった。 ――一枚交換ってことは、良い手か。 そう思考することしかできない。 ポーカー、である。 ルールは単純だ。カード交換の回数は一回、枚数は自由。入っているジョーカーは一枚。あ とは掛け金を積み上げて、ハッタリとブラフと騙しと賺しで勝負を決める。捨て札を切ること はなく、山札を使い切るまでが一ゲーム。この場にいるのは三人なので、平均して三回の勝負 が出来る。 ただし、かけるのは金銭ではない。 ――御伽噺だ。 勝った人間が、負けた人間に、質問をする。負けた方は御伽噺を聞かせるように、昔のこと を物語る。そういう、狂気倶楽部内に伝わる遊びだった。 コール(勝負に乗る)をせずに、ドロップ(降りる)をした場合、質問されることはない。 ただし、質問することもできないので、完全に蚊帳の外だ。 そういう、微妙な損得を釣鐘にかけ、相手の真理を読み解くのが――ポーカーというゲーム だった。 もっとも。 627 名前:終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 55 28 ID 8jgVWqnM 「なら僕も一枚だ」 淡々と、あくまでも退屈そうに須藤幹也――五月生まれの三月ウサギは、自身のカードを一 枚捨て、山札から一枚引く。捨てたカードはダイヤのA。 退屈そうな須藤幹也と。 楽しそうなマッドハンター。 表情を変えない二人を前に、心理ゲームは、圧倒的に不利だということを冬継は自覚してい た。その上、頭が痛くなることに、須藤幹也の後ろには―― 「あら兄さん、この手で本当にいいんですか?」 真顔で囁くのは、須藤幹也の片膝の上に身を座らせ、生身の手で首に抱きつくようにしてい る『妹』だ。べったりと、兄にくっついて離れようとしない。右腕以外の腕と両脚は義手・義 足であり、それらを動かすことなく、右手一本で兄に寄り添っている。時折思い出したかのよ うに幹也の首筋や耳にキスをするので、そのたびに冬継はなんともいえない気分に襲われる。 実の兄妹、なのだ。 そして、『女王知らずの処刑人』、八月生まれの三月ウサギという仇名を授かる、狂気倶楽 部の住人だ。 マッド・ハンター。 元・五月生まれの三月ウサギ。 その跡継ぎであり妹である、八月生まれの三月ウサギ。 周りを狂気倶楽部で囲まれてることに対する居心地の悪さがあった。 里村冬継は、狂気倶楽部の住人ではない。 住人だったのは、今は亡き彼の姉で――その姉もまた、元・三月ウサギなのだ。かつてマッ ド・ハンターの友人であり、五月生まれの三月ウサギと付き合い、そして殺されたという、絡 み合った人間関係の中にある。死してなお、その影響力は残っている。 居心地が、悪くならないはずがなかった。 「……なんで僕がお前らと和気藹々とポーカーしなきゃなんないんだろうな」 「和気藹々?」 答えたのは、幹也だった。カードに眼を落としていた幹也が顔を上げ、 「和気藹々としてると言えるのかなこれは」 「言える、言えるさ、言えるとも。なあ忘れてしまったのかい三月ウサギくん。私たちはずっ と、こうしていたよね」 「私は――知りません。兄さんたちとは、時期が違いますから」と、妹。 「そうだね、そうだよ、そうだとも。かの黄金のお茶会時代においては、いつでもいつだって こうしていたのさ。ヤマネとグリムは学校になどいっていなかったからね」 「ヤマネ? グリム? おい如月更紗、誰だそれ」 知らぬ名前に冬継が反応し、対するマッド・ハンターはにやりと笑った。 「それが、君の質問かい?」 「……まさか。それじゃ、賭けるよ」 百円玉を机の上に置く。ゲームの形式上、硬貨は必要だった。ちなみに賭けられた金は、す べて一階にある喫茶店のコーヒー代になるらしい。 628 名前:終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 56 11 ID 8jgVWqnM 「コール」 マッド・ハンターは短く続き、 「兄さんはどうします?」 「僕もコールだ」 示し合わせたように、幹也も百円玉を机の上に置いた。 「…………」 わずかな緊張。 公開するこの瞬間が、一番気の張る時間だった。 「……8のツーペア」 「負け、負け、負けたね」 スペードの6とクローバーの6、クローバーのKとハートの3、ダイヤの3。 クローバーの2ペアだった。 2ペア同士ならば、数字の高いほうが強い。そして、最後の一人、幹也は―― 「僕も負けた」 ハートのAとハートの10、クローバーの9とスペードの7、ダイヤの4。 ブタ、だった。 「…………」 「…………」 「だから言ったでしょう兄さん? その手じゃ負けますよ、って」 「二人が降りてくれることを期待したんだけどね」 「あら兄さん。兄さんが三番目なんだから、それは無理だわ」 「ああ、それもそうだね」 「兄さんはお茶目ですね――」 うふふ、と妹は笑い、兄は笑わなかった。 マッドハンターの笑いはいつも通りで――冬継の笑みは引き攣っていた。 「……おい、如月更紗」 「なんだいなんだね冬継くん」 「こいつら、いつもこうなのか?」 「当然だ」 彼女にしては珍しく、はっきりときっぱりと、ただの一言で切り捨てた。 この兄妹は、いつだってこうなのだと。 「そう、当然です。私と兄さんは、この世界で唯一の家族なんですから」 「……唯一?」と、冬継が首を傾げる。 「よくある話だよ。父親も母親も殺された。それだけのことさ」 あっさりと、幹也が答える。声には動揺も憤慨もない。そんなことは、自分にとってはどう でもいいことなど、その態度に表していた。 あまりにも――乾いている。 見た目は、普通の高校生にしか見えないのに。 「それより、質問はそれで終わり?」 「あ、いや――あんたには質問はないよ」 言いながら、冬継は心の中でこっそりと思う。 本当に訊きたいことは。 跪かせ、命乞いと共に訊いてやる――と。 今はまだ、そのときではない。 代わりに、前々から気になっていたことを訊ねた。本編だと、なし崩し的に監禁ルートに突 入したため聞く暇がなかったのだ。 629 名前:終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 56 45 ID 8jgVWqnM 「如月更紗。お前、いつから此処にいるんだよ。少なくとも一年前からはいるんだろ? その ――姉さんと、友人だったってんなら」 「そうだね、そうかな、そうかもね。一年といわず……」ひい、ふう、みい、とマッドハンタ ーは指折り数えて、「七年ほどいるよ」 「七年!?」 「そんなに前から……」 「ふぅん」 驚きと、呆れと、無関心。 三者三様の返事は、前から冬継、幹也、妹である。 「七年ってことは……九歳からマッドハンターを?」 言いながら、冬継は頭の中で想像する。 九歳の如月更紗が、あの馬鹿でかい鋏を振り回している姿を。むしろそれは、鋏に振り回さ れているといってもいい想像だった。可愛らしいといえなくもないが――それ以上に物騒極ま りない。 けれども、マッドーハンターは。 「いや、いや、いや」 と、大仰に首を振った。 「七歳の頃は違うのさ――そう、違うのよ。あの頃の私はまだマッドハンターじゃあなかった」 「まだ、か」 呟く幹也に、マッドハンターは「その通りだよ、その通りだ元・三月ウサギくん」と微笑み、 「ここにきたときに振り当てられた役柄は――『ハンプティ・ダンプティ』」 ハンプティ・ダンプティ。塀の上で狂っている、擬人化された卵。世界を内包したキャラク ター。 それは――鏡の国のアリスに出てくる登場人物だ。 マッド・ハッターのように。 三月ウサギのように。 あるいは――白の女王の、ように。 「狂気倶楽部は代替わりがあるからね。演劇の役者変更みたいなものだよ」 幹也が、冬継の方を向いて言った。この場で唯一、狂気倶楽部に所属しない彼へと説明した のだろう。そんなことは知っている、と言いたかったが、ここで噛み付いても何にもならない ので我慢した。 須藤幹也は、きっと何を言われたところで――堪えたりはしないだろう。 退屈だな、と返すだけだ。 何を言っても無駄な相手に、何かを言うことほど、虚しいことはない。 630 名前:終わったあとのお茶会 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 57 51 ID 8jgVWqnM 「ところが、ところが、ところがだ! 一年もしないうちに事件が起きて――ハンプティ・ダ ンプティはくだけ散った。それはもう、見事に、砕け散って、元には戻らなくなった」 「…………」 それも、また。 原作と、同じように。 ハンプティ・ダンプティが塀の上。 ハンプティ・ダンプティがおっこちた。 王様の馬みんなと、王様の家来みんなでも ハンプティを元には戻せない。 壊れたハンプティ・ダンプティは――元には戻らない。 「『卵の中身のダンプティ』は『白の女王』へとプロモーション。そしてそして、『卵の殻の ハンプティ』は――ご存知の通り、イカレ帽子屋に成り下がり。おかげで白い女王陛下のため に働く、しがない首狩り役人になってしまったというわけさ」 自嘲するように。 おどけるように。 あざけるように。 嘲笑うように。 マッド・ハンターは、そう言った。 「マッド・ハンター。以前言ってた、『首切り女王』っていうのが?」 訊ねたのは。 かつて、マッド・ハンターとお茶会を共にした、須藤幹也だった。 かつて、マッド・ハンターは、自身の立場をこう表現した。 ――首切り女王のために働く、狂った狩り人にしてイカレ帽子屋だけどね。 そのことを、幹也は覚えていたのだろう。 「おや、おや、おや。よく憶えているね――本当によく憶えている。私としても、あまり関わ りたい人物ではないのよ」 「ふうん……お前にも、色んな過去があるんだな」 納得したように、冬継は頷く。 白の女王。 首切り女王。 ハンプティ・ダンプティ。 マッド・ハンター。 七年前。 九歳。 情報が多すぎて、何について考えればわからない。 ふと、最初に思いついたことを、冬継は口にした。 「なあ如月更紗。ってことは、ハンプティ・ダンプティって――」 その問いを遮って、マッド・ハンターは高らかに言った。 まるで、そこには触れてほしくないと、言わんばかりに。 「さぁさぁさぁ! 質問はそこまでだよ冬継くん。次のゲームといこうじゃないか。あとは本 編でのお楽しみ、という奴さ」 「なんのことだよなんの……」 ぶつくさと、それでも冬継は従った。一気に話を聞いても、全てを理解できるとは思わなか った。 カードはまだ三分の二は残っている。あと二回は出来るだろう。 「それじゃあ、配るよ」 言って、幹也がカードを配り出す。 奇妙なお茶会は、まだ、続く。 631 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 59 26 ID 8jgVWqnM ・使用済み ハート A 34 7 十 ダイヤ A 34 78 クローバー 2 6 9 K スペード A2 67 以上で(1)終了です。 ぶっちゃけると本編で張ってた伏線が弱かったので補強もかねてます あとは単に、ありえないメンバーで平和にゲームをするところを書きたかったという 次はちゃんと本編投下します 632 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/11(日) 00 14 51 ID fR7UUWKX 誠に良いヤンデレだ! GJ!! 633 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/11(日) 00 17 05 ID fR7UUWKX 誠に良いヤンデレだ! GJ!! 634 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 38 10 ID Wy/5ziQ0 GJでありました! パッケージリベンジ編 今度は全員入った。 http //imepita.jp/20070211/020390 ラフなので分かりにくい為一応解説。 上段左から神無士乃、里村冬継、須藤冬華 下段左から須藤幹也、ヤマネ、マッドハンター となっております。 635 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 40 12 ID W1wZyw7C 型月ネタで敬遠する方もいるかも知れませんが、以前月姫のFDである歌月をプレイしていた際、投稿された二次創作を収録していたのを思い出しました。 そこで、お茶会もお茶会の二次創作を募り、優秀な作品を収録する。というのはいかがでしょうか? 636 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 48 26 ID cTVOpEhn 635 ふむん? 確かに面白いアイデアではあるのだが、気が早くないか? それに優秀かどうかをスレで語りだしたら荒れる可能性がある。 それだけのために別スレを用意するというのも微妙だな。 別の板ならもしかしたら・・・・・・だが。 637 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 52 43 ID W1wZyw7C 636 勿論それを決めるのは作者様で、発売まで誰の作品が収録されるのかワクワクするのも良いかと思ったのですが…… 638 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 54 14 ID 3IO5fhab 二次創作!? 止めとけ止めとけ。 最悪の場合スパシン(ザザーン)、U-1、スレナルとかと同じ方向に走るぞ。 639 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/11(日) 00 57 09 ID Y6fxQTxR 634 神無士乃が個人的にすげーぐっとくる(*´ρ`*) 635 TYPE-MOONに限ったわけじゃないけど、二次創作っていうのはすこぶるデリケート。 わざわざ荒れる種を蒔く事はないでしょ。 640 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 00 58 57 ID jmw5a2Dm 投下された職人様GJです。 活気出てきましたね。 635 いいアイデアだとは思いますが・・・ 636氏が仰ってる通り、少し気が早い話だと思います。 後は批評による荒れもありえないわけではないでしょう。 したらばかなんかに二次創作、そして それについて批評するスレを立てるというのも 手でしょうけど、まだその時期ではないと思います。 未完の作品も多いですし・・・・ ただ需要があれば建てに行きますが。 641 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 01 32 10 ID eieYISQQ 635 ならば言い出しっぺの君が(ry 642 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 01 45 12 ID Wy/5ziQ0 みんなに質問。 今までの冬継と http //imepita.jp/20070211/061840 ではどちらが良い? 素直な意見を聞きたい。 643 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 01 49 58 ID nccjQsTV 642 自分的には、今回の冬継君の方がいいかも。 何と言うか、今まで以上に「らしさ」が出てて良い感じ。 644 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 03 03 40 ID 82LinrPT 642 あくまでもお茶会の人の意見が最優先ではあろうが、自分としては今回の方かな。 645 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 06 05 48 ID UzgpzIlV 642 俺も今回の方が良いです 個人的に雰囲気がピッタリ合っています 646 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 08 33 44 ID Wy/5ziQ0 どうやらリテイクの方が公表。 以下はこちらに統一しますかね。 ぶっちゃけ前のバージョンはアシメトリーの髪型のせいで自分でも向きによる髪型の描き分けが出来なかった……orz 647 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 09 13 05 ID NE4Gly5N 前のシスコンはヤンキー臭がしたし、個人的にはリテイクの方がしっくり 648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 09 21 53 ID cTVOpEhn リテイク後の方が姉に似てる気がする。 あと、後輩に寸止めされてもおかしくない顔に見えるw 649 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 09 42 50 ID Wy/5ziQ0 648 似てるっていうか似せた。 そしてパッケージ2(偽)/線画 http //imepita.jp/20070211/348380 キモウトの後頭部については背景に同化って事で。 650 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 14 40 10 ID lO8FfN+d そういや、ヤンデレに該当するスレが他にないからここで言うけど、 病み鍋PARTYっていうヤンデレオンリーイベントが開くらしい。 ヤンデレのイベントなんて前例がない分すっげぇ不安。 ただのキチガイや邪悪ヒロインをヤンデレと勘違いする人が絶対来そう。 とりあえず、竜宮レナはヤンデレじゃないぞ。デレてないもん。 651 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 15 34 49 ID Wy/5ziQ0 650 不安だが楽しみでもある。 ま、どうせ僕は行けないんだけどね。 ノベルゲーについて フラグ規制でクリアする度にルートが増えて全ヒロインを攻略すると全ての謎(お茶会、喫茶グリムについてとか)が解けるとかどうだろうか? ただし各ルートの謎解きの折り合いが難しいが。 BGMを既存の曲から使うならイノセンスの曲が良い感じ。特にオルゴールの曲が狂気的。 キャラ絵 再びマイナーキャラ。 呼び水の猫/チェシャ http //imepita.jp/20070211/559070 ペン入れ用の筆ペン変えたら乾く時間を見誤ったという。スマンただのグチ。 652 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 16 11 45 ID cTVOpEhn 650 ひぐらしは漫画しか読んだことないからはっきりと言えないが、 あれはデレじゃなくて友達想いなだけだよな。 アプローチをかけていればヤンデレとして成立したんだけどな。 ていうかヤンデレって難しいわ。 愛情と狂気を結び付けなきゃいけないわけだし。 話は変わるが、『死国』って映画をレンタルして見た。 正直言ってあまり怖くなかったな。 むしろ萌えたよ。栗山嬢に。 653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 17 26 10 ID iA+Bj06e なんか大量投下来すぎて読むのが追いつかない みなさんGJ! エロゲーは控えますw 654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 18 34 36 ID eieYISQQ 650 けっこう前にこのスレで言った 655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 19 24 34 ID lO8FfN+d 652 簡単だと思うよ。ストーカーや拉致監禁等の性犯罪者を出せばいい。 つまり、狂おしいがまでに強烈な愛を書けばいいんだよ。 656 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/11(日) 19 46 04 ID fR7UUWKX スレ違いで非常に申し訳ないのですが、嫉妬スレまとめサイトSUGEEEEEE!! ま、まさかこれ程のヤンデレがいるとは・・・。 このスレも盛況だし俺はどっちをとればいいんだぁぁぁぁぁ!? と言うか、嫉妬スレとヤンデレスレとの関係自体がかなり修羅場なのでは・・・? 嫉妬「名無しちゃん、また来てくれるよね?」 ヤンデレ「ハァ? 何言ってんのよ! 名無しは私のところだけに来るんだからその薄汚い手で私の名無しに触れないで頂戴!!」 読み手としては両方とりたいところなのですが 657 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 05 00 ID cTVOpEhn 656 両方とればいいじゃないか。 そしたら・・・・・・ 656が嫉妬SSスレへ遊びに行った日のことだ。 「えへへ。やっぱり 656は私を選んでくれたんだね。 また、明日もイイコトしようね!」 嫉妬SSスレの自宅を出て、 656は足取りも軽く自宅へと帰った。 がちゃ ドアを開けたらすぐ目の前にヤンデレスレがいた。 「おかえりなさい 656。 ・・・・・・また、アイツのところへ行ったのね。 あれだけ行かないように、って釘を刺したのに」 「いや、つい魔が差してしまって・・・・・・」 「ちょっとこっち来て」 ヤンデレスレが居間へと 656を引っ張っていく。 「手、出して」 「え。」と言う前にちゃぶ台の上に手を押し付けられた。 「今度こそ、『釘』を刺しておかないとね」 ヤンデレスレの右手にはハンマーが握られている。 そして左手で 656の掌の上に釘を構えている。 そして―― ぶんっ! ガン!! 「うっ・・・・・・ギャアアアアアアアアアア!」 ・・・・・・なんてな。 ちなみに嫉妬スレとヤンデレスレは仲悪くないよ。 時々変わった人が行き来してるだけ。 658 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 14 07 ID AcKNDcu5 両方とって 657みたいになるなら喜んで… それは置いといて、投下します。 話はほとんど進みませんが…。 659 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 15 22 ID AcKNDcu5 ――――――――――――――――――――――――――――――― 「それじゃ!」 そう言ってあたしは誠人くんと別れた。 本当はもっと一緒にいたいけど、クラスが違うから仕方がない。 普通恋人同士なら、学校でも一緒にいたいって気持ちは普通だと思う。 だけど誠人くんは違う。 ”お互い学校での付き合いってのもあるだろ”と極力会わない様に仕向けてくる。 あいさつは勿論交わすし、時々は一緒に弁当食べてくれたりもしてくれるから誠人くんがあたしを好きでいていくれるのはわかるけど、 でもやっぱり足りない。 あたしにも友達だっているし、友達と話してたりしている時は楽しけど、誠人くんと一緒の時間に比べれば他愛ないものだ。 誠人くんと一緒にいられるなら他に何もいらない、そう思っているけど誠人くんは”今しかできない事”を全うしたいらしい。 本当はもっと恋人らしい事をしたい、もう付き合い始めて八年にもなるんだ。 そう思うのはおかしい事じゃないはず、誠人くんにもそう思って欲しいのにな…。 660 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 16 28 ID AcKNDcu5 昼休み、あたしは隣のクラスへと向かう。 四時間目の授業の時、誠人くんとメールしてお昼を一緒に食べる事になったのだ。 誠人くんとのお昼は久しぶり、承諾してくれるか不安だったけど何の問題もなく了承してくれた。 弁当箱を大事に抱えながら、軽くスキップする。 誠人くんはやっぱり優しい。 確かに微妙にすれ違っていたりはするけど、誠人くんはあたしを愛してくれている。 今はそれだけでいい、誠人くんがあたしのものだけってわかれば何でも我慢できる。 そんな事を思いながら教室へ入ると、誠人くんが誰か女子と話していた。 あたしに気付いていないみたい、ちょっと脅かしてやろう。 そんな悪戯心で足音を立てず誠人くんにそっと近づくあたし。 誠人くんの背後まで忍びよっていって、いよいよびっくりさせてやろうとした時、突然誠人くんが制服の上着を脱ぎ始めた。 「な?大した傷じゃないだろ?」 ………傷?どういう事?そんなもの昨日はなかったはず…あっ、そっか。 誠人くんいつも上着着てたから、見えなかっただけか…てそんな事はどうでもいい…それ何の傷? 「…良かった………」 誠人くんと話していた女子が胸を撫で下ろして安堵の表情を浮かべている………誠人くんが傷を見せてそれでこの女が安心する理由って……… そんなの一つしかない! 瞬間あたしは誠人くんの傷のある右腕を掴む。 弁当を落とした事なんかどうでもいい。 また付けられた、また汚された、あたしだけの誠人くんが、他の人にっ! あたしがいる事に気付いた誠人くんが見上げてくる。 心なしか、何だか怯えているように見えるけど…そんな事どうでもいい。 早くこの傷”上書き”しなきゃ!、その思いだけがあたしを支配している。 冷静でいられず手が震える…早く!早く! 「ちょっと来て」 あたしは腕を掴んだまま誠人くんを強引に椅子から引き上げる。 早くしないと、あたしだけの誠人くんが汚れていっちゃう、早く早く早く!!! 661 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 17 34 ID AcKNDcu5 勢いに任せ女子トイレに入って行く。 「おい!加奈ここ女子トイレ…」 誠人くんの言葉を無視して一番遠い方の個室に押し込める。 今どんな顔してるのかわからないけど…誠人くんやっぱり怯えている。 ごめんね…でもこうするしかないの! 「誠人くん…」 子供のように弱々しい目の誠人くんを一瞬だけ安心させるためにあたしは誠人くんにキスをする。 呆気にとられている誠人くんをよそに舌も入れてみる、こんなの初めてだった。 人形のように動かない誠人くんの口の中をひたすら貪る。 絡めた舌がありえないほどの熱気を帯びている、すごく興奮する…。 ありたっけの唾液を吸い尽くし、やっと口を離す。 あたしも誠人くんも息が荒い。 目を合わせるのが恥ずかしくなり俯いてしまう、誠人くん今どんな気持ちなんだろ…でも、今はそれどころではない。 「あたし…誠人くんが好き」 確認を要求してあたしは言う。 いい答えを期待して必死に笑っているけど、ちゃんと出来てるか不安…。 「俺もだよ…!」 良かった、ちゃんと笑えてた。 良かった、誠人くんはまだあたしの誠人くんだ。 「ありがとう…。でも、あたし短気なのかな…?他の人に誠人くんを触らせたくない。 その傷が…他の人が誠人くんに触れた証拠があるのが耐えられない! そんなの見てるとあたし壊れちゃうよ!!!」 さっきまで押さえ込んでいた感情が爆発する、もう駄目だ、限界だ。 誠人くんの右腕にある傷、誠人くんを蝕もうとしている諸悪の根源! それを見つめながら、一歩だけ後ろに下がる。 「…ハハ…こんな、こんな傷があるのがいけないんだよ…?あたしも誠人くんも悪くない…”この傷”がいけないんだよ!?」 そう、あたしは悪くない、誠人くんも悪くない、この傷なんだ! あたしの誠人くんを”他の人が触れた”という事実で汚そうとしているこの傷がいけないんだ。 こんなものさえなければ、いつものあたしでいられるのに………この傷が! あたしは我を忘れ、その傷を引っ掻き始める。 瘡蓋が剥がれるけどまだ駄目だ、まだ根は潰し切っていない。 もっと深く、根から摘み取ってやらなければならない! そうしないと幾らでも再生する…二度と寄生しないように、奥の奥まで抉り取ってやる! 誠人くんが悲痛の叫びをあげている、痛そう…ごめんね。 でも、大丈夫だよ…もうすぐ終わる…。 「大丈夫大丈夫大丈夫…すぐに消えるから………傷も、痛みもすぐに消えるから!」 子供をあやすように優しく囁く、その声は誠人くんの悲鳴によってかき消されていった…。 662 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 18 19 ID AcKNDcu5 あたしの爪から指にかけては血だらけだ。 それはあたしが傷を上書きしてあげた証、これで良かったんだ。 誠人くんは確かに痛い思いをしたけど、そうしなければあたしだけの誠人くんじゃなくなってた。 あたしたちの仲を取り持つにはこれしかなかったんだ…。 「痛い?誠人くん…ごめん………こんなあたしでごめん…」 それでも罪悪感は感じる、他に方法がないとはいえ、こんなに誠人くんは血だらけになっている…。 呆然としている誠人くんを見つめながら、何度も許しを乞う。 「あたしが弱くてごめん…。ホントごめんなさい!あたし誠人くんが好きなの!好きで好きで…ごめんなさい…」 嫌われたくない! 伝わって欲しい、流れる血はあたしの誠人くんへの想いだって…。 さっきまで無言だった誠人くんがようやく口を開く。 「き、気にすんな。俺も怪我しないように気をつけるから」 分かってくれた、あたしの想いを分かってくれた! 自然に笑顔がこぼれてしまう。 許してきれてありがとう…誠人くんも同じ気持ちなんだ、きっと! 朝はちょっと不安だったけど、やっぱり誠人くんはあたしのもの。 何者にも汚させはしない、絶対に。 その為なら、何だってするから、安心してね…誠人くん。 ――――――――――――――――――――――――――――――― 663 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 18 57 ID AcKNDcu5 「動ける?」 加奈は誠人に手を差し伸べる。 「あぁ…ちょっと保健室行って来くるから、先食べててよ…」 「あ、そっか!弁当食べるんだ…って弁当!?」 加奈はようやく誠人と一緒に食べるはずだった弁当の事を思い出す。 「あたしどこに置いてきちゃったっけ?」 焦って問い詰めてくる加奈を笑いながら誠人は頭を左手で掻く。 「教室の俺の机んとこに落としてたよ」 それを聞きホッとする加奈。 そんな加奈に一安心した誠人は、右手の傷口をハンカチで押さえながら立ち上がった。 痛みはさほど感じていない、もう慣れたようだ。 「あっ、あたしも一緒に保健室行くよ!」 「何言ってんだよ、俺の事より弁当を保守しときな」 誠人の事に気をとられ、またしても弁当の存在を忘れていた加奈が口に手を当てる。 数秒心の中で葛藤して、頭を下げる。 「ごめんね、待ってるから」 そう言い残して加奈は去っていった。 取り残された誠人も出て行こうとした時、かなり重大な事に気がついた。 「おい…嘘だろ…?」 認めたくない事実に、もう一度座り込みたくなってしまった。 「ここ女子トイレじゃねぇか…」 そう、誠人が今いるのは女子トイレ、男子禁制の場所だ。 それを理解して急に押し黙ってしまう誠人。 (物音一つだって立てられない…) さっきまで大声で喚いていた人間が考えるとは思えない事を考えている。 (万が一出て行こうとした時に誰か入ってきたら…俺は卒業まで変態として避けられちまう…) 沈み込む誠人、こんなんなら加奈と一緒に出ればよかったと後の祭り尚且つ筋違いな事を思う。 (で、でも、慎重に行けば多分…どの道次の授業までには出なきゃならないんだ!) 誠人は意を決した。 強い決心の割りにはゆっくりと扉を開ける。 誰もいない事を二回も三回も確認する、青信号の状態で三回確認してから渡る子供のように。 (よしっ!) 誠人は一気に女子トイレを出ようとする、焦る気持ちを何とか押さえ込む。 (もうちょいもうちょい!) 本当にもうすぐのところだった、しかし不運な事に誠人は遭遇してしまう。 「さ、沢崎くん…?」 「なっ!島村…」 二人の間に重苦しい沈黙が舞い降りた。 664 名前:上書き第3話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 21 06 ID AcKNDcu5 以上投下終了。 650のイベント行きたいなw 665 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 25 10 ID cTVOpEhn 664 GJ!! 嗚呼、誠人はこのまま変態の烙印を押されてしまうのか? 666 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 29 12 ID AZd0RGPA 上書きキタ━━(゚∀゚)━━!! GJ! 次回は修羅場か変態認定か?w 667 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 34 53 ID Wy/5ziQ0 GJ!これからが楽しみだ! そいでもって神無士乃 http //imepita.jp/20070211/736670 中央の空白には各自、お好きなナニかを当てはめて下さい。 ……いや、大丈夫だよな。コレ? 怒られない? 668 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 39 23 ID AZd0RGPA 667 ちょwwwエロktkr GJ! 669 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 45 01 ID AcKNDcu5 今回はちょい進まなかったから次回は頑張ります。 667 これはwww 伊南屋さん最高ww 670 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 48 54 ID cTVOpEhn お前は「これなんてエロゲ?」と言う!↓ 671 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 20 52 40 ID W1wZyw7C 667 冬継のサイズって標準サイズなんですね。 幹也はどれくらいなんだろ? 672 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 21 02 00 ID nccjQsTV 667 671に代わって言う。これなんてエロゲ? 673 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 21 06 10 ID Wy/5ziQ0 おまけ 地下室/束縛と悪戯(主観) http //imepita.jp/20070211/758380 土下座する準備は出来ている。 674 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 21 12 19 ID AZd0RGPA 673 うはwwwテラGJ! 675 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 21 25 08 ID UhInmlj9 (*´д`*)ハァハァ 676 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 21 54 15 ID NE4Gly5N シスコンのくせにいいいいい 677 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 22 16 24 ID Wy/5ziQ0 THE・主人公 S 諦観の少年/妄執の少年 http //imepita.jp/20070211/800750 エロスよりこういう絵の方が描きやすいなやっぱり。 678 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 23 41 38 ID UzgpzIlV 伊南屋氏GJ! 679 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 23 45 51 ID ACgqNhIR ゲーム化を企む者です… 677 GJ!二人はお茶会では貴重な男性キャラですね~。 ところで、伊南屋様のキャラデザをトレースして 勝手に描いてゲームに使用してよろしいでしょうか? あ~あと、お茶会シリーズのゲーム化についての話は スレ違いになりかけだと思うので、 お茶会作者様、伊南屋様、その他意見有る方は、 kyoukikurabu_gameka@hotmail.co.jp までメール下さい。 入手したアドレスは もちろんゲーム化以外には使用しませんので、 フリーアドレスでも作って送ってやって下さい。 特に作者様と伊南屋様。 680 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 00 48 ID Wy/5ziQ0 勿論でありますよ。 むしろ使ってくれないかな~っていう下心全開ですから。 本当は原画が出来れば良いんですがね。 なんでまあドシドシ使ってやってくださいませ。 こういう絵が見たいとかあれば応えますし。これはノベルゲー作者様に限らずスレ住人からも。 だもんで要望はただ一つ。 完成だけはさせて下さい。その為の協力は惜しみませんから。 681 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 07 02 ID gUrHAfpe もうアレだ。 ゲームは伊南屋さんに原画任せちゃったらどうだろう。 ハッキリ言って絵のレベルとんでもなく高いし、スレ住民としてはゲーム化した時親しみやすいし。 どうだろ? 682 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 18 49 ID YJ0sg9qM 681 そういう意見は、上のアドレスに送ったほうが良いんじゃない? 683 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 26 33 ID zj6Fc85K 書き込んだばっかだけど再登場。 神無士乃再び。 幼き躯/特異点二つ http //imepita.jp/20070212/014160 紙がクシャってしまった残念な絵。 684 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 39 08 ID iHZWMzxV (;´Д`)ハァハァ・・・ GJ!!!! ここで、保健室での更紗が見てみたいと言ってみる 685 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 46 26 ID +fVGc6IS それじゃリクで出来れば如月更紗・学生服verお願いできますか。 それと出来れば線画だったキャラのカラーを見てみたいっす。 686 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 53 32 ID PlyyGhUv 638 「うおおお! この力はなんなんだ如月更紗!」 「それが冬継くんの中に眠っていたジャバウォックの力だ! 反物質で全てを塵に出来るぞ!」 「そうか分かったぞ! ジャバウォック・ハンマーコネクト! 光になれ如月更紗――!」 こういうことですね。 伊南屋 氏 リテイク後の方がしっくりきますね リテイク前は、もう二年後くらいに育った感じです そしてパッケージはもう本当に存在しそうで驚き 650 狂ってるほどの愛情が可愛いと思うんだ 主人公が受け入れられなければホラー、受け入れれば純愛。 687 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 00 57 36 ID PlyyGhUv 神無士乃エロ これなんてエロゲ? GJ! 671 とりあえずメールお送りしました 伊南屋 氏と同じで、きちんと完成さえできればいうことはないです こちらも協力しますので、何でも言ってください 688 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 01 56 17 ID zj6Fc85K 朝の自室、保健室。 如月更紗/白布の海で http //imepita.jp/20070212/066750 あれだ背景の差分で自室と保健室で使い回しだ。 カラー化について 今回で肌色のコピックを切らしたのでしばらくは無理。 むしろゲーム版のCGに期待……ってダメ? 689 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 02 20 55 ID BJCQe24c 如月更紗、増量中(主に胸が)!? 690 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 02 47 44 ID 9WEbGmpv 各キャラのバストに関しては作者の方のご意見を伺いたいですねw 691 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 03 10 11 ID UaLvR0ph ここ最近の流れにはついていけぬ… 692 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 04 33 00 ID aUpOEiWP 確かにちょっと過熱気味かなと思ったりもする いやクオリティはすっごい高いんだけどね 693 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 05 35 05 ID O6duMRrj 690 とりあえず、描写からちょっと抜き出してみると 如月更紗は「女性的な膨らみとは彼方の関係だが、絵画的な綺麗さがある」という「人間味のない彫刻」で 神無士乃の方は「小さな背と大きな胸」で「丸い瞳と、女性らしい体つき」をした「人間味に溢れる少女」 とのこと。あと如月更紗は生えてない。 691-692 それぞれにハイクオリティな小説と絵が投下されて、ゲームにしたいという人までいる状況だからなぁ。 ちょっと加熱気味になっちゃうのも仕方ないところがあるんじゃない? もう少し落ち着いてもいいとは思うけど。 694 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 09 20 24 ID wqvf+upe まくなく次スレの時期だな。440KB超えてる。 今度投下があったら立てた方がいいかも 前スレは消費するまで半年くらいかかったっけ。 それなのにどの辺からこんなに活発化したんだ? 695 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 09 21 48 ID nuQO+uZd 作者様方はメールでやりとりも始めたみたいだし スレも落ち着いてくると信じてる。 696 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 11 16 27 ID zj6Fc85K そうだった。更紗はひんぬーだった……。 てわけで 如月更紗/白布の海で(リテイク) http //imepita.jp/20070212/404420 横にして見る絵です。念の為。 697 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 11 31 10 ID pPuhHdo9 696 絵画的な美しさキターー!! 貧乳好きにはたまらん…… 698 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 12 41 54 ID 9WEbGmpv コスチュームからしてもマニッシュなイメージですね カッコイイ 699 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 12 43 46 ID kMEZ1UDW Operaイメピタ見られないからいちいちIEで開かないといけない 700 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 13 01 41 ID yPOnFcDW 699 つ[保管庫]管理人さんの迅速な保管ですぐに見れるよ 701 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 13 10 20 ID pPuhHdo9 本当だw管理人さん超GJ 702 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 13 16 13 ID kMEZ1UDW うおおおおお! 703 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 14 17 12 ID zj6Fc85K イベント絵っぽい何か。 http //imepita.jp/20070212/513350 ラフ画で力尽きた。 704 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/12(月) 15 00 14 ID 7tTv6zZw 修羅場ッテルーーーーーー!? ヤンデレ+刃物=修羅場系血の海地獄 705 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 15 33 14 ID YJ0sg9qM 6話後編のイベント絵ですね? 個人的には、Aルート13話キボンヌ(゚∀゚)!! 706 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 16 19 36 ID T+uQkUaN ちょ、冬継まで刃物持ってるwww 707 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 16 25 07 ID 0Na19PY6 704 sageようね 708 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 16 37 55 ID zj6Fc85K 冬継の刃は本編に出て来た春香の遺品(魔術短剣) 場面は 705が正解。 そして懲りずにリテイク 如月更紗/白布の海で(TAKE3) 絵の元ネタはアレクサンドル・カバネルの“The Birth of Venus(ヴィーナスの誕生)” 有名な貝殻に立つヴィーナスのやつはウィリアム・ブゲロー作。 チャールズ・シャノン作の“ヴィーナスの誕生”もあるんだけど、どれもやたらエロく、それ以上に美しい。 スマン。関係ないですね。 709 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 16 39 29 ID zj6Fc85K リンク張り忘れ……orz http //imepita.jp/20070212/594010 710 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 37 37 ID 7UHLx3tv 708 GJ!そしてこれはエロい(*゚∀゚)=3ハァハァ 711 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 44 47 ID pPuhHdo9 709 ……(*´д`)ハアハア これは素敵な更紗ですね ↓投下します。 712 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 45 49 ID pPuhHdo9 真綾が家に帰り着くとちょうど祐人からメールが届いた。 to;真綾 from;祐人 message;無事家着いたか? 「はぃはい着いたよぉっと……」 メールを返しながら鍵を開けて家に入る。 「ただいまー。お母さーん?」 「おかえり真綾。今日はずいぶん早いのね。さては祐人くんと喧嘩でもした?」 「もぅやめてよお母さん。私と祐人はラブラブですょうだ。 ってかお母さんが電話くれたから早く帰って来たんだけど?」 「え?電話なんかしてないわよ?」 「え?だって早く帰って来てって…」 真綾が着信履歴を確認する。そこにはしっかりと履歴が残っていた。 「変ねぇ…電話してないわ。ほら」 母親の携帯にはもちろん発信履歴など無かった。 ■■■■■■ ■■■■■■ 「お姉ちゃん。祐人が目覚まさないんだけど」 「真弓……まだ眠らせてから一時間しか経って無いわ。 最低六時間は目覚めないと言ったでしょう」 「でもこのまま眠ったままだったらどうしよう。どうしたらいい?」 713 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 46 31 ID DlOueibL 絵の投下は別に専用スレ立ててやったほうがいいんじゃないか? 714 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 46 50 ID pPuhHdo9 倒れてから深く眠ったままの祐人を見続けるうちに不安に駆られた真弓はほとんど 半泣き状態だった。 さっきまで眠った祐人を部屋へ運んだり祐人の携帯から真綾にメールを送ったりと 忙しくしていたために余り祐人をゆっくり眺められ無かったため気にならなかった。 が、家に着いた祐人が体がダルいので早く寝た、と真綾に思いこませてメールが一段落 したところで改めて見ると本当に文字通り死んだように眠っていた。まるで二度と 目覚めないかのように。 「目覚めなかったら……絶対にどこにも行かないからそれでいいんじゃないかしら」 「お姉ちゃんは良くても私は良くないわ!私は人形が欲しいんじゃない、 生きて動いている祐人が欲しいの!」 「大丈夫よ。十時間は効くって意見も載ってたから……むしろ今すぐ目覚めた方が どんな体質なのか不安だわ……」 「他人事だと思って!」 「大丈夫よ真弓、泣かないで……それより貸した機械返して欲しいのだけど」 「あ、忘れてた。ごめんね」 真弓は電池式の充電器のような機械を拾うと亜弓に返した。もちろん充電器では無い。 携帯のロックを強制解除するためのものだった。 715 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 48 12 ID pPuhHdo9 「それと真綾に電話かけてくれたのありがとう。助かったわ。お姉ちゃんがいないと 関係ない真綾にまで実力行使しなきゃいけないとこだったから」 「それなら思ったより簡単だったわ……薬を探すことの方がむしろ大変だったもの」 「お姉ちゃんには感謝してるよ。本当にいつかこの借りは返すね」 真弓は不安そうな目を祐人に戻した。 「祐人……本当にごめんね」 真弓は祐人の手を握りしめた。 そして数秒、祈りを込めるような仕草で手の甲に口付けると立ち上がった。 「じゃあお姉ちゃん、行ってくるね」 真弓は暗くなりはじめた街へ消えていった。祐人を自分だけのものにするために。 ■■■■■■ 716 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 49 02 ID pPuhHdo9 ■■■■■■ 結局姫野真弓が帰ってきても聖祐人が目を覚ましておらず、彼が目覚める前に真弓は 眠ってしまった。もちろん祐人の手は握ったままで。やはり疲れきっていたのだろう。 「夕食ぐらいは食べて欲しかったのだけど……」 亜弓は2人の微笑ましい光景を見ながら祐人が起きるのを待つかどうかを迷っていた。 別に真弓に頼まれたわけでは無いので待っている必要は無いのだが。それに起きたら 起きたで状況を説明するのが面倒くさい。 「……あら」 ぐずぐずと悩んでいるとちょうど祐人が目をあけた。 「おはよう……祐人くん」 祐人はまだ薬が抜けきって無いようでぼんやりと視線をさまよわせている。彼の 視界には白っぽい部屋と微笑んでいる見慣れない――長い黒髪の青白い顔のどこか 見覚えのある女性が写っていた。 「ぇぇと……とりあえず朝になったら真弓が起きるから。そしたら状況を説明して もらってね……多分真弓もそうしたいと思うわ」 亜弓の生き方は少し独特だった。彼女は妹の真弓と自分の「運命の人」以外の全ての 事象に固執しない。興味が無い。配慮が無い。亜弓は―― 「真弓には内緒ね。じゃあおやすみなさい……」 スタンガンで祐人をもう一度眠らせた。 ■■■■■■ ■■■■■■ 717 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 50 21 ID pPuhHdo9 今回はここまでです。 話全然すすんでないorz 718 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 58 34 ID gcg1Uoes 717 乙 続きを楽しみにしてます 719 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 15 54 ID laI97l2T 713のIDに嫉妬w 717 真弓の監禁劇場は先延ばしのようですね、焦らしますねw 今日の夜くらいには4話投下します。 それにしても、ゲーム化が本格化してて嬉しいw 720 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 23 19 ID YJ0sg9qM 姫野姉妹キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! これから祐人をどのように堕としていくのか、楽しみです。 721 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 23 54 ID rR6YJAWq 今日彼女に 「私という彼女がいるんだから、T君にはこんなもの要らないよね!?」 みたいなことを怒鳴られた、あまりの剣幕に俺が(゚Д゚)ポカーンとしてると俺の携帯アプリのデジモンがデリートされた 俺のガルルモンが・・・・・・orz スレ違いだな・・・・・・ガルルモンに会いに逝くよ ノシ 722 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 28 36 ID wqvf+upe 721 それは本当にキミの彼女かい? 俺の統計によるとそんなことを言う女性はストーカーしかいないと出ているのだが。 723 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 37 32 ID rR6YJAWq 722 マジで? 付き合って2週間位だけど、今まではこんなこと無かったし・・・・・・あっても嫌だけど 何回デリートされても俺はまたガルルモンを育てようと思う 724 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 39 52 ID kMEZ1UDW クマー 725 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 49 24 ID DlOueibL rR6YJAWqは死亡フラグ立ちかけか? うらやましい…。 726 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 49 56 ID 2kVD3lGM きみのその体験はヤンデレスレではなく嫉妬修羅場スレ向きだと思う。 727 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 52 48 ID laI97l2T 721 最高の彼女だな…。 て事で4話投下します。 728 名前:上書き第4話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 53 37 ID laI97l2T マズイ、絶対にマズイ! まだ女子トイレ内にいる俺を見ながら固まっている島村。 状況を理解し切れていないのか、微動だにしない体に反し目がきょろきょろとしている。 それがせめてもの救いだった、この場で悲鳴でもあげられようものならその瞬間俺の高校生活は幕を閉じる。 軽蔑の眼差しを常に受けながら無視され続け、友達も思い出もないまま俺の青春が終わる。 そんな情景を思い浮かべて思わず身震いしてしまう。 絶対にそれだけは免れなければならない、俺はその一心で島村の左腕を掴む、加奈によって上書きされた右腕で。 痛みは先程より若干増しているが、それどころではない。 「えっ!?」 一瞬周りに誰もいない事を確認すると、驚く島村と顔を合わせないように前を向き、俺は掴んだ手を引っ張る。 とにかく今はこの場を去った方がいいだろう、島村が事を理解しない内に。 「ちょっと、どこ行くんですか?」 島村の言葉を完全無視して強引に連れて行く、人気のなさそうな場所へと。 729 名前:上書き第4話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 54 52 ID laI97l2T 早走りさせる事数十秒、俺と島村は体育館裏にいる。 人気のない場所で体育館裏というのもベタだが、ここより安全なところはそうないだろう。 とりあえずここなら誤解を解く前に叫ばれても誰にも聞こえない。 息切れしたのか、胸を押さえて俯いている島村。 表情が読み取れない事に不安を覚えつつ、その思いを振り払う。 今は一刻も早く説明をしなければならない時だ。 「島村…」 返事はない、というより出来ない様子だ。 どうやら無意識の内にかなり走らせてしまったらしい。 僅かに覗く島村の眼鏡の縁が光っているのが妙に気になりつつ、もう一度呼び掛けようとした。 しかし、俺の声は突如顔を上げた島村の言葉に遮られる。 「…変態………」 思い切り胸に突き刺さった。 まだ肩で呼吸している島村のまじまじと俺を見つめる、もとい睨む目線がかなり痛かった。 何となく驚いた、俺は島村とはほとんど面識はないが、結構おとなしめの子だろ思ってた…そりゃ昨日は突然叫び出したりしたけど、それを入れたって信じられなかった。 島村が、こんな相手への尊厳をまるでなくしたかのような視線を送れるなんて事が…。 こんな対応をされるなら、まだ泣きながら発狂された方が何倍もマシだと思った。 しかし、もっと驚いたのはこの後だ。 「なんですね、沢崎くんって」 突然島村が笑顔になったのだ。 さっきまで幻滅したと言わんばかりの表情だったのに、突然手の平を返したように明るくなった。 何が何だか分からないが、とりあえず島村の言葉は否定しなければならない。 「ち、違うんだ島村っ!」 「何の前触れもなく女子トイレから出てきた男のどこが変態じゃないんですかね?」 こいつ…昼飯前までは散々俺にペコペコ頭下げてたくせに、急に偉そうになっていやがる。 いや、俺が悪いからなんとも言えないんだけれどもさ…。 最初こそ暗かったものの、島村は今はくすくす笑っている…女子トイレから出てきた男がそんなに可笑しいのか? 「これにはなぁ、色々と訳があってだなぁ…」 「訳ってどんな訳です?相当な理由でないと私は納得しませんよ?」 730 名前:上書き第4話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 55 39 ID laI97l2T 試すように俺の顔を見つめてくる島村…俺の考えを読み取ろうとするかのようにジッと視線を外そうとしない。 困ったな…素直にそう思った。 本当の事は口が裂けても言えないし、かと言って相当な理由なんて即興で思いつくはずがない。 女子トイレから出てきて許されるのは小学校低学年がいいところだ。 声変わりもした男臭い高校生が女子トイレから出てきて正当化される理由って………? 先生から何かしらの罰で掃除してたってのは先生に訊けばすぐバレるし、落し物したって言ったって俺は今ペンの類を持ち合わせていない。 妙な予感がしてなんてのはどうだ!………いや、変態プラス電波ってレッテルを貼られてしまう。 女子トイレのタイルを急に舐めたくなって…って落ち着け俺! どんどんおかしい方向に行っている事にいい加減気付け、とにかく…とにかく………。 「やっぱり、理由もなく女子トイレに入ったって訳ですね」 俺が押し黙っているところを島村が追い討ちをかけてくる。 何故だか楽しそうにしているのが腹が立つ…でも、言い逃れは出来ない。 「いや…その………」 「見苦しい言い訳は結構」 ビシッと俺の事を指差す島村、完全に形勢逆転してしまったな…始めっから不利な状態だったけど…。 「私、言い訳する人は好きじゃありませんね。素直に謝ればとりあえずは誰にも言いませんよ?」 言い訳うんぬん以前に女子トイレから出てくるような男を好きになる女なんて天然記念物並の希少な存在だろ、と思ったが口には出さなかった。 ”とりあえずは”というのが引っ掛かったが、今は謝罪する他ない。 「す、すまないっ!」 プライドは捨て自分より小さな少女の前に跪き、土下座をする。 頭を地面に擦り付けないのはちっぽけな意地だ。 「謝ったって事は、認めるんですね?”入りたくて女子トイレに入った”って事を」 一瞬反論しようとしたが寸でのところで思い止まった。 今は感情的になってはいけないと必死に自分に言い聞かせる。 この場はもう島村が主導権を握ったと言っても過言じゃない。 「返事は!?」 「…は、はい………」 生まれて今までで多分一番の屈辱だったと思う。 別に男尊女卑の気なんてないけど、やっぱり女に頭を下げるのは抵抗のある事だ。 それでもこれで許してもらえるなら…と思っている自分が悔しい。 731 名前:上書き第4話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 56 26 ID laI97l2T 「はぁ…まさか沢崎くんがそんな事する人だったとは…」 わざとらしく溜息をつく島村、頭は下げたままの状態だからはっきりと表情は読み取れない。 「いつまで土下座してるつもりですか?」 許しの印かと思い頭を上げようとすると、後頭部に衝撃が奔った。 思い切りのある力に今度は地面に擦り付けられてしまう。 何事かと思って視線だけを見上げると…一瞬信じられなかった。 あんなに謙虚な態度の…まぁ俺がそう思っていただけかもしれないが、その島村が俺の頭を靴で踏みつけているのだ。 「誰がやめていいと言ったんです?」 もう俺は島村の事が分からなくなっていた…それは確かに島村の事は昨日の事があるまでは名前しか知らなかった。 特に関わりがあった訳でもないから何とも言えないのだが、土下座した人間を踏みつけられるような女が同じクラスにいた事が信じられない。 「ま、それは冗談として…」 呆気に取られている俺をよそに、島村の足の力が緩む。 何となく未だに不安で島村の顔を伺っていると、手を微妙に上げる動作をしてきた。 どうやら、これで本当に許してもらえたようだ…と思ったのは俺だけだった。 「じゃあ、俺はこれで」 「待って下さい」 立ち上がって即座にこの場を立ち去りたかった俺の動きを言葉で制す島村。 丁寧語だが俺には明らかに命令口調に聞こえる、勝手にそう脳内変換されてしまう。 俺のこいつに対しての印象はどうやら180度変わってしまったらしい。 「本当に謝罪の意があるなら、態度で示すべきだと思いませんか?」 「だから土下座したんじゃ…」 「別に沢崎くんが土下座したからといって私が得をした訳ではありません」 「そりゃそうだけど…」 物凄く嫌な予感がした。 こういう時、大抵パターンは決まっている…でも、まさか島村に限って…有り得るな。 心の中を絶望感が支配する中、予想通りの事を島村は口にした。 「これからしばらくは私はご主人様、沢崎くんは奴隷ね」 笑顔で肩を叩きながらまた試すような視線を送る島崎。 逆らったら皆にバラすとか言うんだろうな…ある意味もう終わったと言っていいな…。 「”しばらくは”って、いつまでだよ?」 「私が満足するまでです」 当然といえば当然の返答…まぁ島村が満足すれば俺の高校生活はとりあえずは安泰になるんだ…安く思おう…。 こんな事考えるなんて、きっともう感覚が麻痺してしまったんだろうな。 732 名前:上書き第4話 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 57 08 ID laI97l2T 「分かったよ…」 「それじゃ早速、一つ目の注文」 「もうかよ…」 意気消沈する俺…でも覚悟は出来ている、どんな理不尽な要望でも了承する覚悟はある!…女子トイレ入る以外ならな。 「一歩こっちに来て下さい」 腕組をしながら命令する島村に、情けないほどげっそりとした俺は渋々一歩前進する。 ぶたれるのかな…なんて暗い想像をしていた。 「まずは”首輪”を付けないといけませんね…」 そう言った瞬間、島崎は俺の首を掴んで思い切り引き寄せてきた。 あまりの勢いに、倒れそうになる俺を島村が支えたかと思うと、首元にひんやりとした感覚が奔った。 変態と言われた時よりも…軽蔑の眼差しを送られた時よりも…踏みつけられた時よりも…多分一番驚いた。 島崎が俺の首元に自分の唇をつけてきていたのだから。 抵抗する気力も起きない…というかどこから抵抗したらいいのか分からなかった。 俺が想定していた光景とはあまりにもかけ離れている、何の脈絡もないこの行動に俺は何も言えずにいた。 茫然自失の俺を置いてきぼりにしひたすら首元を蹂躙している島村。 永遠にも感じられた何十秒の後、ようやく島村は唇を離した。 「これで良しっ!」 満足そうにさっきまで繋がっていた部位を見つめてくる島村。 心なしか、濡れているその部位から唾液の香りまで漂ってきそうだ。 ようやく意識を取り戻した俺は、同時に恐怖を覚えた。 「おまっ、まさかつけたのか!?」 頼むから否定して欲しかった…そんな俺の期待虚しく、島村は笑顔で言い放つ。 「勿論、くっきりとキスマークついてますよ」 その言葉を聞いた瞬間、最悪の未来像が俺の頭の中を駆け巡った。 「さ、これで第一の命令はお終い。第二の命令は一緒に保健室にくる事です」 そう言って島村は最初とは逆に俺の腕を掴み引っ張った。 しかし、そんな事は今の俺にはどうでもいい事だった…頭の中にはもう最悪の想像しか浮かばない。 (もしこいつが、加奈に見つかったら………俺は…) 733 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 19 58 14 ID laI97l2T 投下終了です。 ヤンデレから激しく遠ざかって…orz 734 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 20 05 49 ID BJCQe24c うはww え ぐ ら れ る 735 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 20 14 42 ID zj6Fc85K 頸動脈に“上書き”して大量出血。失血死の死亡フラグw 736 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 20 14 47 ID 7UHLx3tv 今日も連続投下キタ━━(゚∀゚)━━!! 717 GJ! 姉妹揃っていい病みっぷりです! 733 GJ! 島村さん怖いよ島村さん(*´Д`)ハァハァ 737 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 21 22 09 ID dJAJczQi 誠人不幸すぎワロタwww こうまで顕著な死亡フラグが立った主人公が今までにいただろうか、いやいない 738 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 21 37 37 ID T+uQkUaN 修羅場フラグキタコレ 735 ってやっぱキスマークにも傷で上書き!?キスで上書きじゃなくて?? そうだよなぁ・・・。やっぱそういうやり方しかしそうにないよなぁ・・・。 739 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 21 47 10 ID wqvf+upe 俺の予測 誠人は熱湯を首にかけられる ↓ 首が水ぶくれになる ↓ その状態になってから皮をはがし、キスで上書き 740 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 41 04 ID MD4+xJFQ 真夜中のよづり、投下します。 741 名前:真夜中のよづり3 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 42 16 ID MD4+xJFQ 「私に優しくしないでね。かずくん」 よづりは俺をリビングに案内するなり、こう宣言した。俺は眉をひそめる。 あれか、これは今流行の不思議系とかお姫様系とかそういうのか。しかし、この姫はクリームいっぱいのいちごショートケーキのお姫様というよりかは、蝙蝠や墓場が立ち並ぶ暗黒世界の姫に近い。 俺の説明で、ゴシック系を浮かべたら俺は違うと言い張る。そんな上品なものじゃない。もっと毒々しい感じだ。毒の沼とかそんなの。 榛原よづり宅のリビングは床暖房が効いているのか、足からぬくぬくしていてとてもあったかかった。 しかし、榛原よづりはその上をまるで氷の上に立つかのように冷たそうに歩く。この人もしかしたら体温無いんじゃないのかと疑ってしまうほど、彼女はこのあったかそうなリビングとはミスマッチだった。 リビングは木のテーブルに対面したソファがふたつ。大きな本棚がふたつあるがどれも大きくて厚い本が詰まっている。背表紙には英語やたぶんドイツ語あたりの文字が羅列してあって、妙な圧迫感を覚える。 ひろいリビングだが、妙に殺風景だった。こんな一般家庭でテレビも無いリビングなんて初めて見たぞ俺。 「コーヒーでいい?」 「あ、お構いなく」 「優しくしないでいいから」 遠慮も勘弁して欲しいらしい。俺は何も言えず、憮然とした顔で黙るしかなった。 榛原よづりがひたりひたりと歩いて台所に消える。なんだか、リビングが急に明るくなった気がした。 「しかし、予想外だ……」 俺は頭を抱えた。軽い気持ちで挨拶して終わるつもりだったが、相手は二十八歳の引きこもりだった。俺より十以上も年上である。どんな対応の仕方をすればいいのかわからない。 こんな相手とこの三学期中仲良くしろと言うのか? 会話が絶対つづかねぇよ。 うーん、こんなことなら副委員長の仕事ちゃんとやっときゃよかった……。最後の最後にものすごい爆弾な仕事落としやがって。 俺が委員長の愚痴をぶつくさ呟いていると、榛原よづりが戻ってきた。 「えへへ……。おまたせ、かずくん」 彼女はコーヒーカップをひとつだけお盆に乗っけて、小さなリビングのテーブルにコーヒーを並べた。 それを俺の前に差し出す。どうやら俺のコーヒーしか淹れていないようだ。俺は無言で受け取ると、ついていた角砂糖を2・3個茶色いのコーヒーに落としかき混ぜる。 榛原よづりはえへへとはにかみ気味に笑うと、ソファに座る俺の横に体を預けた。 ……なんで俺のすぐ横に座るんだよ……。 ソファは確かに広いけどわざわざそこに座らなくてもいいだろ。 「飲んで、かずくん」 「は、はい」 榛原よづりは俺の前に乗り出すように顔を近づけて笑いかける。前髪の間から見える口元はにんまりと笑っていて妙に不気味だった。 俺は一口、コーヒーを含む。ほんのりと香りが口の中を支配して、独特の渋みと苦味が舌に乗る。結構美味い。 「……どう?」 「うん、美味しい、です」 まるでホテルで淹れてもらうコーヒーのようだ。俺がそう言うと、よづりはにんまりとした口元をさらにきつくゆがめた。俺は褒めたのが気に入らなかったのかと思ったが、そうではないらしい。 「敬語じゃなくていいよ。年上だけど、同級生だもん」 「そ、そうか? じゃあ……おいしいぞ、コレ」 「えへへ……」 優しくしないでくれと言われたが褒められるのは純粋に嬉しいようだった。 二十八歳のくせに妙に子供っぽい笑い方だ。黒い服に包まれて、高校生には不釣合いな体つき(改めて巨乳だ……!)だけど精神年齢は俺より低そうである。いや、むしろ精神防御率が低いのかな? 俺は榛原よづりの黒いセーターを押し上げる二つの丘に目線が釘付けになっていた。まてまて、それを引き剥がすと茶色く濁ったコーヒーに目線を落とす。 コーヒーの表面は小さな泡がくるくるりとまわっている。俺はそれを一気に飲み干した。 「ねぇ……」 「ん?」 俺はすぐ横の榛原よづりに顔を向ける。 「えっとね、ごにょごにょ……」 榛原よづりは相変わらず辛気臭い顔を俯かせ、消え入りそうな声で喋っていた。 「え、なんて言った? よく聞こえねーんだけど」 「うん、ごにょごにょ……」 心なし榛原よづりの顔が赤い。俺はさらに消え入りそうになって行く声に耳を傾けた。しかし、ぼそりぼそりと喋る榛原よづりの声はなかなか聞き取れない。 742 名前:真夜中のよづり3 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 42 55 ID MD4+xJFQ 「え、なんて言った? よく聞こえねーんだけど」 「うん、ごにょごにょ……」 心なし榛原よづりの顔が赤い。俺はさらに消え入りそうになって行く声に耳を傾けた。しかし、ぼそりぼそりと喋る榛原よづりの声はなかなか聞き取れない。 「ごめん、もう一回言ってくれない?」 「……んっ」 突然、榛原よづりが俺の左手を両手で掴み、勢いよく引っ張られた。俺の頭や体は突然の引力に油断し、左手からの引力にくっついていく。 引力に引っ張られた上半身は斜めに傾いてバランスを崩し、今度は重力に従って榛原よづりの方向に倒れ掛かってしまう。 ぼふっと、やわらかい何かに顔が当たった。頬あたりに黒いセーターの毛糸の玉があたる。クッションのようなやわらかい何か。 ちょっと待て、今俺の顔に当たっているのは……。榛原よづりのバストっ? 俺は榛原よづりの体に体重を預けて、胸に顔をうずめた状態になっていたのだった。二十八歳の独特の体のやらしげな感触を間近に感じて、俺は妙な気分になった。 「えへへ……」 目線をあげると、榛原よづりが俺を見下ろしていた。ちょうど、俺の頭は彼女の長い髪の毛のカーテンの中に入っていたのだ。首筋にかかる彼女の髪の毛がくすぐったい。 榛原よづりはえへへと笑うと、その顔を下ろして胸に抱かれる俺の頭の耳元にその小さな唇を寄せた。 そして、先ほどから言っていたであろう言葉を、消え入りそうな声で再度告げる。 「今日、ご飯食べていかない……?」 ぶにゅっ。 榛原よづりの細い右の二の腕が俺の首元にかかる。そして左腕も同じようにして俺の頭をかき抱いた。そして俺の頭をなでなでと撫でる。 やわらかい体と細くて硬い腕に掴まれて、俺は身動きが取れなかった。 「え、えっと………」 「かずくんのために、一生懸命つくるから……食べてって……」 榛原よづりが俺を見る目はまるでキュピンと光りそうなほどぎらついていた。俺は得体の知れない寒気に襲われる。彼女を振りほどくのは簡単だ。しかし、恐怖で体が動かない。 ただ、首元に回された腕が締め付けないことを祈っていた。 俺の頭の中の危険信号が光りだす。やべぇ、コイツは危険だ。 十七年の経験と直感が俺の脳内に警告を続けている。俺のこの危険信号がなったのは十年ぶりだった。最後に鳴ったのは小学生の頃、グラウンドで上級生が屋上から投げたセロハンテープ台が俺の脳天に直撃する直前だったか? 「お肉も、お魚も、いっぱいいっぱいあるから……食べてって……」 ぎゅうっと榛原よづりの腕が締められていく、体も押し付けられていき顔に当たる柔らかな感触に頬がどんどん埋もれてゆく。 くそっ、乳に顔をうずめて死ぬのは男の夢だけど……、今死にたいとはまったく思ってねぇよ! しかもこんな暗い女にな! ここは頷くしか離してもらえないだろう。 俺は締まっていく首を限界まで動かしてこくりこくりと頷いた。 「そう……よかった」 その瞬間。榛原よづりの腕ははずされ俺の頭は彼女の膝の上にダイブする。今度は膝枕か? 「ふぅ、助かった」 俺は安堵の息を吐いた。 膝の上、榛原よづりの長い髪の毛がかかってすこし首筋がくすぐったかった。 「じゃあ、美味しいものいっぱい作るからね。待ってて、かずくん」 ごとん、俺を膝の上に乗せたまま榛原よづりは立ち上がった。当然、おれの頭は重力に乗ってごろりと転がる。俺はソファから落っこちてしまった。 「いてぇ!」 「ふんふんふんー♪」 「む……無視かよ」 あれだけ、俺に密着していたにもかかわらず榛原よづりは、俺が落ちたのにも一瞥せず、鼻歌まで歌いながらリビングを出て行った。 「……わけわからん」 そんなに料理を作るのが好きなのか? 俺はぽりぽりと頭を掻きながら起き上がる。そのままやわらかいソファへぽふりと腰を落とした。 それにしても、 「気に入られたのかな……?」 俺は彼女の対応が気になっていた。初対面の人にいきなりメシ作ってくれるってことは、好意を持ってくれてるってわけだよな。いや、もしかしたらめっちゃくちゃ嫌ってて、アーモンド風味の白飯が出てくる可能性も否定できないぞ。 743 名前:真夜中のよづり3 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 43 48 ID MD4+xJFQ だけど。いまのところ、俺は彼女に対して何も失点は無いはず。たいした話はしていないし。やられたのはおっぱいを顔に押し付けられただけ。 にへらー、 だらしなく頬が緩む。いやぁ、あの高校生には無い体系とバストはすっげぇ煩悩を刺激されるなぁ……。いや、まてまて。胸にだまされるな。 俺は彼女の本質を見て判断しないといけない。人間を測るのに胸は単なるオプションの一部だ。まぁ、プラス修正はかかりまくるけど。それにしても感触まだ残ってるよ、ノーブラかなぁ……。 「かずくん……」 「うわっ!」 いつのまにか、俺の目の前に榛原よづりが立っていた。やっぱり気配はなかった。 「ニヤニヤしてどうしたの……?」 「な、なんでもないっ!」 どうやらニヤけていた顔を見られていたようだった。俺は慌てて顔を背ける。 気配が読めなかったのは俺が胸の事ばっかり考えていたからなのかもしれない。俺は自分の煩悩の深さに頭を押さえた。不覚だ。 「で、どうしたんだ?」 俺は、自らを軽く反省すると榛原よづりに向き合う。 向き合うが、自然に目線は胸に行ってしまう。彼女が着けたエプロンが押し上げられている。まてまて、さっき反省したばかりだろ。俺は胸に行く目に心の中で叱ると、彼女の顔へ四川を移動させた。 だが、彼女の長い髪に包まれた顔からは表情が読めない。長い髪が邪魔なんだよな。 「えへへ……」 彼女の含んだような笑い声が聞こえた。 すると、彼女が右手を動かして、背中を掻くようにゆっくりと背後へ腕が回る。俺は身構えた。 一拍おいて、彼女の背中から出てきたのは、大きなはさみだった。 刃渡り約20センチの鋏で、親指と人差し指を動かせばじゃきんじゃきんと音が響く大きな凶器。 なんだ、お前は。実は如月更紗か、もしくは双識か! 俺はさらに警戒を強めた。幸い手の届くところにカバンがあった。それを掴み、いつでも反撃できるようにする。 まさか、これを俺に突きつけるとか言うなよ? が、俺の身構えなど榛原よづりには関係ないことらしい。彼女は身構える俺にその含んだ笑い声を浴びせると、そのまま右手の鋏を自分の顔の前まで持っていった。人差し指と親指が開き、二枚の刃が大きく口を開ける。 そして、 じゃきんっ。 彼女はその長い長い前髪を切り落とした。 「え……」 ぱらぱら、ではなくどさりと落ちる黒い髪の毛。呆然とする俺を尻目に、榛原よづりははにかんだような笑顔でさらにじゃきんじゃきんと鋏を動かすと、自分の前髪をばっさりと切り落としていく。 髪の毛の束が足元に散乱し彼女の前方1メートルは黒いじゅうたんと化した。 じゃきんっ。 最後に、一文字にまとめるようにおでこの前を斬る。 まるで日本人形のような髪型だ。前髪で隠れていた彼女の顔がすべて露わになる。彼女の美人な表情が日の光を浴びた。 日の光を浴びていないだけではない、天然の決め細やかな白い肌。クマののこる目つきは目じりが垂れていて、柔らかな印象を受ける。 「えへへ」 「な……なんでいきなり?」 俺はワケがわからなかった。 榛原よづりは俺に、その露わになった目元、口元で感情を表現して、 「……君に料理を振舞うためなら、こんな前髪いらないね……」 まるで俺に喜んでもらえるように。そんな声で言う。 「邪魔だし……。人に出す料理だから……」 確かに、その前髪で料理するには不便だろう。第一衛生的にも問題だ。それに長い髪の毛が火に引火したら火事なんてものじゃない騒ぎになる。 しかし、しかしだ。 俺のために、そう、今日いきなり会った俺のために、 その長く伸びた髪の毛を何のためらいも無くばっさりと切ってしまうのか? 「でもさ。 ほら、か、髪の毛は女の命と言うし」 「いいの。君のためなら命なんてどうでもいい……」 じゃきんじゃきん。 彼女は顔に笑顔を貼り付けたままハサミを鳴らし、エプロンのポケットにしまう。そして、床に散らばった黒髪をそのままにふらりふらりと台所へ消えていった。 「……」 俺はしばらくの間、呆けていた。 ダメだ。この女は。俺はふるふると頭を振る。 想像を超える相手だ。改めて思う。 耳を澄ませば、聞こえてくる彼女の楽しそうな鼻歌。これだけなら、ただの家事好きのお母さん。しかし、実態は刃渡り20センチのハサミを所持する元引きこもりの高校生二十八歳巨乳だ。 そもそも、二十八歳で高校生でひきこもりってどういうことなんだよ! くそっ。ヤツの行動がまったく予測できない。 ……もしかしたら、本当にメシの中に青酸カリ入れてないよなぁ? 「やべぇ、不安になってきた」 744 名前:真夜中のよづり3 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 45 12 ID MD4+xJFQ 様子を見てみよう。俺は音を立てぬようにしのび足でリビングを横断する。台所にはレースカーテンがかかってあり中の様子が良く見えない。 俺は台所の壁に体を貼り付けて、ちょうど覗き込むように頭を出してレースのカーテン越しに榛原よづりを観察する。 ……。 榛原よづりはテーブルの前で卵をといていた。細い腕と指が菜ばしを掴み、かちゃかちゃとボウルの中の黄色い卵を空気を混ぜるようにかき回していた。 彼女の長い髪の毛はちゃんと、後ろで結ばれ食材に触れないようにしてある。料理を熱心に見る目は先ほどまでの緩んだ表情とはかけ離れたように真剣だった。 「……ちゃんと料理できるんだ」 俺は安堵する。 テーブルを見ると、玉ねぎやハム、にんじんが細かく刻まれ、ケチャップのチューブが何本も並べられていた。 「オムライスかな?」 幸いにも俺の大好物である。俺は期待しつつ榛原よづりを眺めていた。料理をしている榛原よづりはとても美人だった。 ……こういう姿は様になっているのにな……。 俺は静かに息を吐く。 「ふんふんふんふ~♪」 まったく、楽しそうだ。人に料理を振舞うだけでそんなに気分が乗るものなのか? ……ん、ちょっと待て。そういえば、さっきあいつはなんて言った。たしか、人に料理を振舞うのははじめてだと言っていた。 と、いうことはなんだ? あいつは二十八歳になるまで、誰にも料理をしてあげたことはないのか? いや、あの手つきや手際のよさは料理経験者のものだ。彼女は付け焼刃でやっているわけではなく、 きちんと毎日規則正しく料理をしていると見れる。 では、こうか。料理はするけど披露したことは無い。披露する相手がいないのか? 友達も? 家族も? そういえば、この家に来て俺は家族の姿を見ていない。 というより、このリビングや家の中。全てにおいて生活感が感じられないのだ。人が住んでいるところ家はある程度はなにか、人の匂いや手垢など、住んでいる証というものがでるものなのだが……。 今俺が居るリビングも殺風景すぎて、まるで無人の部屋のようだ。いや、俺が居るが。 「……もしかして、あいつは一人でこの家に居るのか?」 榛原よづりの姿を眺めながら俺は呟く。 くそっ、なんだよ。ひきこもりが居るって言うのに家族は居ない。助けるものはおらず彼女はずっとひきこもっていたのか? 二十八歳の女が? 物事はどうやら単純ではないようだ。 俺は改めて、副委員長の仕事を呪った。やっぱりサボりキャラを貫いて委員長に行ってもらえばよかった。面倒ごとばかりだ。 「ふんふんふ♪ ……………」 「……ん?」 突然、榛原よづりの鼻歌が止まった。 俺は考え事をしてあさっての方向に向いていた意識と視線を元に戻す。 レースのカーテン越し、榛原よづりは卵の入ったボウルをといていた。そういう風景だった。 が、改めて意識を戻して見直してみると、彼女の動きが止まっている。 菜ばしを回す手をとめ、ボウルを顔に近づけていた。 「なんだ?」 榛原よづりはボウルの中の卵をじっと眺めていた。まるで呆けたような半開きの口。俺の第六感が急に冴えわたる。頭の中には『これ以上見てはいけない』という一文。 しかし、俺はそれを無視して彼女の挙動を見続けていた。 「……えへっ」 榛原よづりは卵を見つめて、にやりと笑う。そして半開きの口から赤い舌をぺろりと突き出すと。 べと。 べとべと。 べとべとべとべとべとべとべとべと。 その赤い舌から流れる自らの唾液を、ボウルの中へ落としていった。 「!!!」 俺は思わず声を上げそうになり……あわてて口を押さえる。 何をやってるんだ!? あいつは……。 「えへ、えへへっ、えへ、えへへへへへへへ……」 俺が見ていることも知らず、恍惚の表情で榛原よづりは俺に振舞うであろうとき卵の中に唾液を混ぜてゆく。 彼女の笑顔が歪み、目つきは狂ったように潤む榛原よづり。口から赤い舌をぺろりと突き出す、口元からねばりと透明な液が溢れ、ぼとりぼとりと落とす。 そしてそれを一心不乱にボウルに入れていき、時折菜ばしでかちゃかちゃと混ぜ合わす。 「食べてくれるんだぁ……えへ。かずくんがぁ、あたしの料理と……これ。 えへ、えへ……、えへへ、えへへへへへへへへ……」 べとべとべとべとべとべとべとべとべとべと。 べとべとべとべとべとべとべと。 べとべとべとべと。 745 名前:真夜中のよづり3 ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 45 48 ID MD4+xJFQ 榛原よづりの顔は恍惚に歪んでいた。赤く染まった頬にどこか知らない場所を眺める淀んだ瞳。それは俺を喜ばせるための笑顔ではなく、ただの自己満足の極みの顔だった。 「……やべぇ。コイツやべぇ……」 俺はあまりの恐怖に腰を抜かしそうになった。 幽霊を見たとか、ゾンビ映画を見たとか、そういう怖さじゃない。まるでなにか人の心の裏側を見たような得体の知らない怖さだ。 頭の中の警告音はすでに鳴りっぱなし。 「……逃げなきゃ……」 俺はしのび足でリビングのソファに戻って、自分のカバンを掴んだ。リビングに散らばるヤツの髪の毛が一本一本意思を持って襲ってきそうで怖かった。 「あの変態がよだれを入れている夢中なうちに逃げなきゃっ……!」 榛原よづりに気付かれないように、リビングを出るとそのまま廊下を歩く。 玄関に合った俺の靴を履く。がさりがさりと土間と靴の裏の小石がする音が響いた。 刹那。 「かずくんっ!?」 とんとんとんとんとんとんとんとんっっ!! 台所から走ってくる足音! 「やばっ!」 俺は靴を履き終わると玄関のドアノブを掴む。鍵はかかっていなかった。すんなりと開く。 瞬間。玄関に榛原よづりが走りこんできた。 「かずくんっ!! どこ行くの!?」 長い髪の毛を振り回し、榛原よづりは先ほどまでの消え入りそうな声とはうって変わった、大きく甲高い声で叫ぶ。 その手は包丁が握られていた。 それを見た途端。とっさに、俺は「刺される!?」と思ってしまった。 「ごめっ! 用事ができた! 俺帰るわ!!」 恐怖で俺は早口でそれだけしか言うことができなかった。早くこの家から出たかったのだ。 「待って!」 「じゃあな!」 俺は開いたドアに体を滑り込ませる。榛原よづりの顔なぞ怖くて見れなかった。そして、バキィンと壊れそうなほど力強くドアを閉めた。 「かずくぅぅぅぅんっっっっ!!」 玄関のドア越しに響く彼女の声。 俺はそれを背後に聞きながら出入り口の門を開き、夕闇が辺りを覆い始める住宅街走って逃げていった。 足が千切れそうなほど、全速力で走り。時折後ろを振り返って後をつけてないか確認しつつ住宅街の坂道を駆けて、気がつけばヤツの家から500メートルも離れたコンビニエンスストアまで走りこんでいた。 「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」 自販機でジュースを買う。普段は炭酸系が好みだが、今は落ち着きたかった。スポーツドリンクを購入。ボトルタイプの缶が排出される 俺はそれを掴むと、寒い冬空の下、胃に響く冷たいスポーツドリンクを一気に飲み干した。 榛原よづり。 彼女とのファーストコンタクトは不気味さと恐怖の感情しか残らなかった。 「帰っちゃった……。まぁ、いいわ……。また逢えるもん。だって、明日迎えに来てくれるだもんね、かずくん?」 (続く) 746 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 46 28 ID MD4+xJFQ ゲーム化の話も動いてスレが加速している中、真夜中のよづり第三話をお送りしました。 書いていくうちにやっぱり彼女もどんどん性質がおかしくなってますが、気持ちのよい終わり方になるように努力していきますのでよろしくお願いします。 魔女とよづり、この二つを平行して作っているので更新は遅めですが、ライトなヤンデレを目指していきますのでよろしくお願いします。 お茶会の方は、ぶれない世界観やじわじわとくる女の子の恐怖などが素晴らしいです。ぜひ、ゲームの完成を期待しています。 747 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 48 11 ID YJ0sg9qM ギャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!! やっぱり、最初から病んでる!!? 748 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 02 12 ID dJAJczQi やべえよづりが俺の中でかなり大ヒットだ エロいヤンデレというかなんというか ていうかここからライトなヤンデレ……?(´・∀・`) 749 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 04 25 ID wqvf+upe うわあああああああああああ どう見てもこれライトじゃないだろ! すでにハードコアだよハードコア! もしかしてコーヒーにも何か入っていたんじゃなかろうか? 750 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 06 09 ID GBfGW7RC そろそろ500k 俺は無理っぽいから誰か新スレ頼む。しかしこのスレは速かったな。 751 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 12 40 ID 3F4iYY5m 750 うぃいってみる。 テンプレは 1ので大丈夫? 752 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 18 22 ID T+uQkUaN GJですた。しかし、冒頭の心中エンド・・・。気になる・・・。 753 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 19 07 ID wqvf+upe 751 既存キャラの~っていうのは無くしてもいいのでは? それ専用のスレは大量にあることだし。 というかすでにあっちでヤンデレ化?してるしな。 754 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 21 40 ID 3F4iYY5m 753 了解。あとは、関連すれとして修羅場スレを入れるかどうかだが・・・ 自分としては入れなくてもいいかな?と思ってるのですが。 755 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 22 38 ID dJAJczQi いいんじゃねいですか? 756 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 25 17 ID 3F4iYY5m ヤンデレの小説を書こう!Part3 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171290223/ 完了・・・かな? 職人様のすばやい仕事がこのスレの活況につながってます。 GJだけでは足らない・・・ では埋めていきましょう。 757 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 25 34 ID NnICWW/f お互い無干渉のほうが面倒なこと起きないしいいんじゃないかな 758 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 27 25 ID wqvf+upe ありゃ、立っちった。 とりあえず置いていきます。 「今回は保留キボンヌ」 759 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 28 16 ID x5krOcBQ 746 28歳の時点でちょっと恐怖を覚えた おばはんやんwwww 760 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 29 51 ID yPOnFcDW スマン…リロってなかった… 関連いれちゃったよorz 761 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 32 33 ID wqvf+upe 760 以後語り合えばいいさ。キニスルナ 762 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 59 33 ID 7Z5KGgGL 746 ものすっげぇ強烈な料理でも、後味は良いものを目指して がんばってください。 この最低な第一印象から、かずくんがどういう風によづりを 受け入れていくのか楽しみに待っています。 763 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 03 50 ID dJAJczQi 759 バカ、おばはんじゃねえ ヤンデレ熟女高校生だ 764 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 06 27 ID FnEeh2NW 昔のモーニング娘に、あからさまに娘でない人がいたことを忘れてはならない。 765 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 09 23 ID J4YNFArw 巨乳で美人で精神年齢やや低でヤンデレで(恐らく)処女だぜ? これでただのおばはんとか言うなら俺はお前を鼻血水流カッターで刻んでやる 766 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 21 46 ID GQbfbDMd 28歳巨乳が熟女と申すか レーザードバズソーで切り刻んでやる 767 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 26 07 ID EIaTgmpr ヤンデレなら不倫でなければ39歳まで可能 768 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 28 15 ID v4rGzLRf はっ!俺なんか某麻木久仁子でもいけるぜ! そんなこと言うやつはエロゲヒロインに噛み切られろ! 769 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 50 39 ID ZLb7CIwF あはははは こんなスレ埋めてやる あはははははははははは 770 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 01 04 00 ID Jcwk0VJZ オレも参加するぜ! あははははははははははは 771 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 01 05 03 ID Jcwk0VJZ オレも参加するぜ! あははははははははははは 772 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 07 36 ID 5al/rzxv このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のものこのスレは私のものこのスレは私のもの このスレは私のもノこのスrは私のもnこおここここここ 773 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 08 10 ID ITwVDmp/ あと9kb……。 このスレは、1スレとは違って短命だったな。 774 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 29 11 ID TiStBspt それだけの活気があったのだよ 775 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 45 58 ID SwevXqhF うめえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ 776 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 02 07 30 ID gnRHxdtb 知ってた。 ナナシ君にとって私なんて使い捨てだって。 それでも私は好きだった。 私の代わりはいくらでもいる。それこそ次々に現れる。ナナシ君にとって私はきっと たくさんの中の1人でしかないと思う。というか確実にそう。初めての子は印象に残る っていうけど……私は初めてですら無いから。現に初めての子とは結構長く続いてた みたいだけど、私とは1ヶ月も保たなかった。次の子も、その次の子もきっと 短いんだろう。短く無かったら許せない。私だけ短いなんてことになったら…… 呪ってやる。ナナシ君はもう誰とも長く付き合えない……もしそんな運命なら私も 少しは救われるのかな。 ねぇナナシ君。あなたは知らないかもしれないけど私本当に好きだったんだよ。 使い捨てでもいいって本気で思ってたよ。他の誰を好きでもいいって。でもやっぱり 耐えられ無いよ。本当はどこにも行かないで欲しい。ずっと私だけを、他の何をも 見ずに私だけを見て欲しいんだよ。1ヶ月にも満たないけど一緒にいる間は本当に 幸せだった。この思い出だけで私は行ける、誰にも嫉妬なんてせずに独りひっそりと ナナシ君を思っていられると。 思ってた、けど。 そんなのやっぱり無理で。 醜い感情が溢れてくる。私を見て。私だけを見て。私だけを私だけを。……こんな 醜い感情はナナシ君には似つかわしく無い。こんな醜い面を見られる前に捨てられて 良かったよ。ナナシ君を汚さないで済んだから。 うん、良かったよ。 一番良かったわけじゃないけど、最悪では無かったと思う。 ナナシ君はもう私のこと忘れたかな?忘れててもいい。 私が最後に発するのはあなたの名前と別れの言葉。 「ナナシ君……さよなら」 私はそうして、空へと舞った。 777 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/13(火) 02 36 51 ID TiStBspt 705のリクエストに応えようと描いたイベント絵らしきもの http //imepita.jp/20070213/089040 やはりラフで力尽きたり。ポージングも微妙。 新スレにと思ったけどまずはこっちに。 まとめサイトの如月更紗/白布の海で(TAKE3)について。 あれは頭を右側にした横長の絵です。 なので管理人の方。どうか向きの修正よろしくお願いします。 別スレの話について 絵の投下は別スレにしたらどうか? という意見なんですが、自分一人の為に別スレ立てるのはアレですし、なにより板が違ってしまいます。 なんでまあ、差し支えなければヤンデレスレで続けたいなと思ってます。 778 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 03 18 55 ID ITwVDmp/ 777 thx. そしてすんません。 考え無しでした。 今考えたら、リクエストは板違いだった……。 779 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 03 36 40 ID ofO+wJaT 777 毎度GJです! 個人的にはここに投下で良いと思いますけど ヤンデレ系のネタなら大体なんでも扱ってきてましたし 780 名前:同族元素(1) ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/13(火) 03 37 40 ID TFH/jbmS 「お待たせしたかしら? 射蔵(いぞう)」 「いや、俺も来たばっかりだ」 射蔵と呼ばれた男は立ち上がると、自分の向かいの席を引く。 女はにこりと微笑むと射蔵のエスコートで席に付き、射蔵が元の席に付くのを待って話し掛けた。 「何を注文したの?」 「エスプレッソ。湖杜(こと)はどうする?」 「同じものでいいわ」 「解った」 射蔵は手を上げてウェイトレスを呼び湖杜の分を注文すると、煙草に火を付けた。 そのまま射蔵は黙って煙草を吸い、湖杜もまたその様子を黙って見つめていた。 「お待たせ致しました」 暫く後、頬を染めたウェイトレスがエスプレッソを運んできて、ゆっくりと馬鹿丁寧に 二人の前に注文の品を置くと、名残惜しげに去っていくまで二人は無言のままだった。 人目を惹く射蔵の外見とその連れの湖杜がこれまた人目を惹き、更に厭味すら感じさせない 射蔵のエスコートぶりや湖杜のエスコート慣れに、このカフェの注目を一手に集めていた。 しかし当の二人はいつもの事と、まるで気にはしておらず、どこ吹く風という風情だ。 互いに一口飲んだ所で、漸く射蔵が口を開いた。 「どうだ? 見つかったか?」 「見つかっていたら、真っ先に報告しているわ。射蔵こそ見つかったのかしら?」 美しい柳眉を僅かに顰めて冷たく言い放った湖杜に、軽く肩を竦めてみせ射蔵は鼻で笑う。 「お互い様だったな」 何を言っているのかは聞こえないが、儚げに微笑み合う艶やかな黒髪の美形の二人に、 カフェの客や店員はうっとりと溜息を零す。 射蔵は均整のとれた体型に、長目の前髪から覗く鋭い切れ長な目が印象的な美形で、 湖杜もモデルの様なすらりとした、しかし出ている所は出ている体型に、 やや切れ長の目はけぶる睫毛に色彩られ、日本人形の様な流れる黒髪は腰まで伸びた美形だった。 そんな二人が注目をされない訳がない。 しかし人目の多いこのカフェを選んだのには理由があった。席から席が意外に離れており、 そして店内に流れるクラシックが丁度よく、話し声を他の席へと聞き取れない様にしている為、 密談にはもってこいの穴場なのだ。 だから二人が会うのは、このカフェと決まっていた。 781 名前:同族元素(2) ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/02/13(火) 03 38 17 ID TFH/jbmS 「そういえば… 鹿子(かのこ)に意中の君が出来たらしいわ」 「…本気なのか?」 危うく飲んでいたエスプレッソを吹き出しそうになりながら、辛うじて耐えた射蔵は眉を蹙めた。 優雅に一口飲んだ湖杜は、伏せていた目を射蔵に向けると悪戯っぽく笑う。 「今回は本物、運命の相手だそうよ。業平(なりひら)に頼んで、今はストーキング中。 阿津(あつ)に聞いたから間違いないわ」 「そうか… そういえば阿津の相手は観念したのか?」 「微妙、といった所かしら? まだ監禁して一ヶ月だし、阿津ったら甘いから、 調教はもう少しかかるんじゃないかしらね」 「まあ、よかったな。阿津は20代後半だし、鹿子は大学生だしな。 いつまでも独りじゃ辛いだろ」 「そうね…」 射蔵の言葉に緩く微笑むと、ティースプーンでくるくるとエスプレッソをかき混ぜながら、 湖杜は深い深い溜息を付いた。 「私はいつになったら、巡り逢えるのかしら…」 「大丈夫だ。俺達はまだ鹿子達より若いんだぞ。直に逢えるさ」 テーブルの上に頼りなく置かれた湖杜の手をそっと握ると、射蔵は励ますように笑い掛ける。 「でも、こんなに探しているのに逢えないなんて…」 射蔵の大きな手を細く華奢な手で弄びながら、湖杜はつい弱音を吐いてしまう。 「しょうがないさ。フラグの立ち易い幼馴染はみんな血縁だし、俺達一族は血縁には滅多に萌えないからな。 それに外で相手を見つけるのは難しいよな」 こくりと頷く湖杜の目は生気が無く、かなり煮詰まっているのが射蔵に見て取れた。 「でもね、射蔵。私も早く誰かを見つけたい、そして愛し愛されたいわ。 束縛して束縛されて、どろどろになるまでセックスしたいの」 「解る、俺には、俺だから解る」 ぎゅっと痛いほど強く湖杜の手を握った射蔵は、真っ直ぐ湖杜を見つめて言い聞かせる。 「俺だって同じだ。だけど焦って相手を見誤ったら最悪だぞ?」 「うん…… そうね、その通りだわ」 少し生気が戻った湖杜は、射蔵の言葉に頷き大きく息を吐いた。 「湖杜に運命の相手が見つかったら、ちゃんと手伝ってやるから。 拉致だろうと邪魔者の抹殺だろうと何でも協力は惜しまないからな」 「うん、ありがとう。射蔵も相手が見つかったら、ちゃんと報告してね。 私も協力するわ、監禁の手助けだって何だって、ね」 ふふふといつもの様に微笑み合っていると、湖杜は少し寂しそうに言った。 「…射蔵を好きになれれば良かった」 射蔵もまた淡い笑みを浮かべて頷く。 「そうだな… 俺達、恋愛観そっくりなのにな」 「でも、ダメなんだものね」 「そうだな。お互い恋愛感情で見れないからな」 共に最後の一口を飲み干すと、綺麗で壊れた笑みを浮かべて囁くとカフェを後にした。 「未だ見ぬ愛しい人を探しに」 -了-
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501 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/09(火) 20 08 07 ID S13vgeDg 乙 502 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/09(火) 21 45 45 ID mUE1aMSf GJ 委員長に反応したのは俺だけじゃないはず しかしあれだな、読み手もずいぶんと変わったけど書き手も変わってきてるな なんというか、ノベゲー風が多いというか 503 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 01 02 26 ID NSUmFfdy 私は一向に構わんッ!! 504 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 01 25 16 ID E2X3Fhsw おいどんも構わんでごわす!!! 505 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 01 57 54 ID l4TEquzJ GJ!! おいおい、姉上様何教えてんだよ!? 506 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 19 53 28 ID h/bqAUCp ヤンデレ家族マダー? 507 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/12/10(水) 21 26 32 ID D7g0devE ええい、ヤンデロイドシリーズはまだかっ! 508 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 21 32 09 ID /J0T4MN6 慌てる乞食は儲けが少ないと云ふ 509 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 21 42 35 ID fcWEIgA6 作者の事を考えて発言しようぜ 最近作者を文章製造機とでも考えてる奴大杉 510 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 22 31 43 ID CYPlr6kA 509だな、今は師走だけに忙しいだろうしな……のんびり待つか。 511 名前:飼いならす、飼いならされる ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23 27 29 ID Y37HkJWJ 俺は、俺に触れようと伸ばされた彼女の手を定規で打った。 「いたっ」 「ダメだって言ってるだろ」 「ごめんなさい……」 彼女はしゅんとして俯いている。首輪につけられた鎖がチャリ、と鳴った。 俺と彼女は二人、こたつに入って勉強会をしている。ありふれた、幸せな光景。ただ一つ異質なのは、彼女の首には首輪がつけられ、その首輪から伸びた鎖で柱につながれている、ということだ。 彼女は「普通」ではない。どう普通ではないかと言うとあまりに長くなるので省くが、酷く大雑把に表現すると、彼女は愛情表現が過剰すぎるのだ。そう、一般から見たら「異常」とすら思われるほどに。 だから俺は彼女から俺に向けられるスキンシップを規制した。その結果がこの首輪だ。 彼女がどんなに身を乗り出しても、せいぜい俺の手に触れることぐらいしか出来ない。しかし俺はそれすらも彼女に許可しない。彼女と俺の触れ合いはすべて俺の手の中にあるのだ。 彼女がどんなに望もうとも、俺の許可なしではそれは与えられない。支配者の喜び。自分の中に、黒い愉悦が生まれるのを感じる。 彼女はまるで犬のようだ。鎖でつながれ、ご主人様の許可を待つだけの、犬。 こんな可愛い彼女を犬にできるなんて、俺はなんて果報者なのだろうか。 「わ、私のこと、嫌いになっちゃった? ご、ごめんなさい! 嫌わないで! 嫌いにならないで!」 俺がちょっと難しい問題に突き当たり、頭を悩ましていると、彼女は突然ヒステリックに取り乱した。 ああそうか、俺が叱ってすぐに無言で難しい顔をしだしたから不安になったのか。まったく、犬でももう少し忍耐がある気がするけどな。 俺は溜息を漏らしながら彼女の潤んだ目を覗き込む。 「犬の癖に待ても出来ないのか? そんな駄犬に御褒美はやれないな」 そうして、俺はまた問題文に目を落とす。彼女の息を呑む音が聞こえる。カタカタと小さく震える音も。深い悦楽で、俺の口が歪に歪みそうになる。ああ、お前は最高の彼女――いや、犬だ。 数時間して、勉強に一区切りつけると、俺は彼女の鎖と解いて彼女の家を出た。「待て」と命じつけた後に。 512 名前:飼いならす、飼いならされる ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23 28 14 ID Y37HkJWJ 「先輩……博昭先輩!」 下校中、後ろから呼び止められた。 後ろには、いつの間にかかつての部活の後輩がいた。俺は三年。紅葉の散ったこの季節にはもう部活はとっくに引退していた。 「お久しぶりですね!」 俺を見つけて走ってきたのか、頬は若干上気しているし、息は荒い。お久しぶりというが、少なくとも先週にも会っていたはずだ。 その旨を告げると、「えへへ、うっかりしてました」と彼女ははにかんだ。 彼女は何かにつけ俺に接近してくる。なんらかの好意的な感情を俺に対して持っていることは明らかだ。 だが、俺には飼い犬がいる故にその思いに答えることは出来ない。――とてつもなく嫉妬深く、病的で、俺に近付くものは泥棒でも警察でも構わず吠え散らすような躾けの出来ていない犬が。 当然後輩も俺に彼女がいることは知っている。何せ、彼女は引退前は毎日のように部室まで俺を迎えに来ていたのだから。知らないはずも無い。 それをわきまえているのか、後輩は直接的なアプローチはしてこない。ただ俺と一緒にいられるという立場に甘んじているのか、それとも俺に対する好意というのは単に親愛や尊敬の情だというだけなのか。 珍しく、学校が終わると真っ先に俺に寄ってくる彼女がいないので、俺は後輩と二人で下校した。家の前で別れると、参考書の類を揃え、彼女の家に向かう。 彼女の家には彼女しかいない。だから俺は呼び鈴すら鳴らさず、鍵のかかってない玄関を抜け、彼女の部屋の戸を開けた。 赤かった。 夕焼けや俺の目の錯覚などではなく、部屋中を染めつくす血によって。 「あ、ひろくんきたー。ねえねえ、ひろくんにまとわりつくきったない野良猫駆除したよー。私とってもいい子でしょー? 褒めて褒めてー」 彼女はニコニコしながら俺ににじり寄ってくる。その手に握られているものは何だ。やめろ、そんなもの俺は見たくない。 彼女が手に持っていたもの。それは殴打によって晴れ上がっていて分かりにくくなってはいるものの、紛れもなく後輩の生首だった。彼女は、それの髪の毛を掴んでぶら下げていた。 場違いにも、犬が自らの捕らえた獲物を主人にアピールする様が思い出された。 ああ、俺はどうやら根本的に間違えていたようだ。 彼女をうまく飼いならせている。そう思いあがっていた。まさしく、それは完全に思い上がり以外の何者でもなかった。飼いならせない。飼いならすだなんてとんでもない。こんなモノ、俺ごときが飼いならせるはずがない。 ――ああ、そうか。そうだったのか。 俺は彼女を飼いならしているつもりだったが、その実は―― 「いい子、いい子」 俺は血にまみれた彼女を抱きとめ、そっと頭を撫でた。 513 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23 29 01 ID Y37HkJWJ 489を見てつい(ry 続かない 514 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23 38 11 ID VN0XrVUS これは恐い だがそれがいい 515 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23 58 23 ID WviTm0LQ ヤンデレ「男くんのためにトレーニングして体型絞ったし、髪伸ばしたし、お化粧も覚えたetc……。デ・ニーロアプローチなんて目じゃない!」 ↑ |ここで二人の認識に大きな溝 ↓ 男「彼女は俺が求める物を全て持って生まれてきたようだった」 516 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/11(木) 00 25 33 ID DHdPX4rV GJ! 俺の理想のヤンデレだ… 517 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/11(木) 19 45 19 ID llhyMJYi GJ 518 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/11(木) 21 41 40 ID Lu7UB0fR http //zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20081204-00000014-rnijugo-ent ・「発情期の雌猫が」。突然の罵倒にビクッとすると、隣のクラスのヤンデレ…。 ・なぜそんなにも懸命に尽くそうとするのか? それはヤンデレが愛情深いからなのだそう。 ・ただその分、嫉妬深いといわれています。 ・ヤンデレを飼っている男性が、女性を部屋に入れたとすると、嫉妬する。襲いかかる可能性だってあります ・愛情が深いほど、嫉妬心も深いとな…。 519 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/11(木) 21 53 57 ID 5EDW78kU 発声練習だけでは収まらず、執念で遂に擬人化したオウムが泥棒猫を抹殺し、愛する飼い主を逆レイプ。 まで妄想した。 520 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/11(木) 23 21 45 ID NWg/r+C4 数日待ってください。書いてきます>病みオウムSS 521 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 00 01 05 ID NWg/r+C4 猫以外の動物はけっこう嫉妬深いイメージ ヤンデレは「愛がないのに発情してる」ってののしる意味で泥棒猫ってライバルを表現するのだろうか 522 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 00 02 39 ID 5EDW78kU これは期待wktk 523 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 00 12 30 ID uosYZKSS ヤンデレっぽい動物というと猫が浮かぶんだけどなあ、怪談とかでもよく出てくるし。 まあそれとこれとは違うといえば違うんだが。 524 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 01 59 15 ID 5YSQXMAi うちの猫(♀)は水道工事のオヤジが上がってきても爆睡してるくせに、 従妹が泊まりにきたときは毛を逆立てて寄り付かなかった。 嫉妬されたと思いたい 525 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 01 59 21 ID peMJR1Jw サ〇エさんの歌のように昔から人のモノを盗むからじゃないか 526 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 06 29 14 ID Rr5MCYZ6 519-520 擬人化スレでやれよw 527 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 06 48 48 ID rfbHsdru この手のシチュ系のスレは被ることが多いから ヤンデレメインなのか擬人化メインなのか どちらにするのかは作者が判断して投下先決めればいい。 外野がどうこう言うことではないと思われ。 528 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 11 44 17 ID raB5quqb 擬人化した狂暴な♀動物が逆レイプする【十四匹目】 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1225189442/ こんなスレもあるんだぜ? 529 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 15 58 27 ID 9G8ICf6q ヤンデレによる全戦争行為への武力介入を開始する 530 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 19 19 44 ID kDqm96VM 529 (((゜Д゜;)))ガクガク 531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 19 38 10 ID RVnPt7/w まさに愛は地球を救う、だな 532 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 00 07 05 ID tEtRuQ4S ヤンブレラが製作したヤンデレウイルスが研究所内に汚染 ヤンデレハザードが発生したが、感染した場所が悪かった 感染した地域は研究所の隠れのみにしている 女子校 約300人の女の子がヤンデレウイルスに感染、ヤンデレ化したと思われる 日本警察はヤンデレバスターズに出動要請。 政府が下した決断は…… ヤンデレの殲滅 それは300人の女の子を皆殺しにして、全ては隠滅する予定だったが ヤンデレバスターズに裏切り者がいて、部隊は半壊滅状態。 それを救助するために、新たなヤンデレバスターズ部隊が派遣されることになったが…… 続かない 次はどうせ、県内が全て感染地域でヤンデレ化するオチだしw 533 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 00 57 03 ID JbEw8e+t Y(ヤンデレ)ウイルスですかw 効果 感染者は一人の男への異常な愛を持ち それによって様々な影響がある(男には危害を加えない) 女性ホルモンの多量分泌から外観が美しくなる。 むしろこれは全世界にバラ撒くべきだろ。 534 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 02 02 24 ID Fy62xmXW だがヤンデレが別々の男を好きになるとは限らんからな… むしろ地獄絵図が見える 535 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 08 05 32 ID z2xamz91 そんな作られた愛なんていらん 536 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 10 18 13 ID j999FvRl ヤンデレに『これって婚姻届だよな』って言ったらどうなるの? 537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 10 47 25 ID UJCpgIEa ヤンデレの前で女友達と一緒に石破ラブラブ天驚拳やってみたい 538 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 30 41 ID ARqPzft2 では投稿致します 539 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 33 12 ID ARqPzft2 第2話『依存対象』 人は平等ではない。 親がいる子供、親を失った子供では その後の子供の人生は大きく変わっていく。 例え、それが最初から両親の愛情を受けずに育った子供なら尚更だ。 人生に勝ち負けはないと思うが、私にとって人生とは惨めな自分を思い出せる過酷な日々だった。 私、桜井彩は孤児である。 両親は私が生まれてから、すぐに交通事故で亡くしたと聞く。 特に両親は駆け落ちするように付き合ったおかげでどの親戚も私を引き取ることを嫌がり、 赤子の私を孤児院に預けた。親がいない子供が行く先はまさに地獄であった。 物心を覚えた私は孤児院の職員に厳しく躾けられ、ただの世話というよりは機械的な作業であったと思う。 それは他の孤児院の子供たちも一緒で、彼らは自分らの給料以上のことは動かない。 厳しく躾けられるのは自分達の仕事を減らすためにある。 言うことを聞かなければ、子供に暴力を振るい、逆らう人間は食事を抜きにする。 職員の気分次第では暗くて狭い部屋、懲罰室に何日も閉じ込めたりする。 彼らは子供たちにとっては悪魔だった。 孤児であった私の安らぐ場所はどこにもない。通っていた学校などは最も私の嫌いな場所の一つである。 無邪気な子供は何も知らない。何も知らないからこそ、自分の言葉に責任も持たず、刺々しい事を言ってくる。 両親のいないというだけでバカにされ、のけものにされる。 何か欠点さえあれば、それを口実に強者は弱者を叩く。叩く側は勝利の美酒に酔い、負け犬はひたすら泣き続けるしかなかった。 特に一番嫌だったのは、運動会と参観日などと言った行事であった。 私には誰も声援を送ってくれる人なんかいないし、他の子供たちが親と仲の良い光景を見せつけられると 自分が不幸のどん底にいることを感じさせる。 誰にも優しくされることもなく、私は一人寂しく生きていた。 抜け出したかった、孤児院は経営者の無謀な経営方針のおかげであっさりと潰れ、 真っ先になんとかしなくてはいけない孤児の子供たちを見捨てて、自分達はさっさと逃げた。 債権者から追求を避けるために。 孤児院がなくなったおかげで私は強制的に孤児院を追い出される形になった。 とはいえ、その頃は高校生だったので、誰も引き取る孤児院や人がいなかったから、一人の生活を余儀なくされた。 通っていた高校を中退して、一人で生きるためにアルバイトで生計を立てた。 更にその仕事先でも、高校中退で孤児院出身の私の世間体は悪く、誰からも相手にされなかった。 そのような人生を歩んでいたせいだろうか、私は自然と人という生物は信用しなくなった。 温もりさえ求めなければ、何かに期待しなければ裏切られることはない。 私は私の心を防衛するために孤独でいる。愛情を求めずに、ずっと一人で生きていこう。 そう、決心したはずなのに。 私は、彼と出会ってしまった。 周防 忍さんに。 540 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 35 26 ID ARqPzft2 うにゃーーーーーー!! 私は引っ越してきたばかりの家で奇声を発していた。 だって、だって、信じられる? 今日は凄いことがあったんだよ。 いつも、一人だった私に優しくしてくれた人がいたの。 悪徳引越しセンターどもが私の荷物を捨てるように投げた柄の悪い男のせいで一人途方に暮れていたのに。 困っている私に周防忍さんが声をかけてくれたの。 『手伝います』 って。 最初は信用できる人じゃあないと思っていたけど、そうじゃなかった。 あの重たそうな荷物を周防忍さんはほとんど一人で運んでくれた。私のためにだよ。 私のために忍さんは引越しの手伝いをしてくれた。それだけで充分に嬉しかった。 きゃは。 わたし、忍さんなんて。名前で呼び捨てしているし。 うんうん。 落ち着け、私。 忍さんと私は今日初めて出会ったんだから、名前で呼ぶなんて……。 心の中だけなんだからね。 本人の前で忍さんなんて言った日には、私は多分恥ずかしいあまりに体が溶ける。 ううん、体の8割の水分が流れきってしまうはずだよ。 それにしても、私は忍さんに冷たい態度を取ったから、嫌われているかもしれない。 初対面であんな突き放すようなことを言っていたら、普通は好感度だって下がるよね? 某内閣支持率も急落に下がる。 ど、どうしよう。 とはいえ、忍さんに助けてもらったから、ちゃんとお礼をしよう。心を込めて謝罪すれば、私の想いに気付いてくれるかな? 今日、生まれた淡いな想い。 人を好きになる。 いつも孤独であり、人間不信に陥った私が異性を好きになるなんて夢にも思ってなかったけど。 その想いだけで私の胸が自然と温かくなる。床の上をゴロゴロと反転して、 うにゃ、うにゃ、うにゃ、と奇声を発しながら私は久しぶりに心地良い時間を過ごした。 だから、就寝する頃になってある事に気付かなかった。 「どうやって、寝ましょうか」 荷物生理してないダンボールだけが積み重ねた部屋を見て、私は呆然と立ち尽くしていた。 今日の出来事を何度も思い返して、妄想の渦に流れ込んでいた罰が当ったのでしょうか。 お布団はこのダンボールの中に埋もれている。 探し出すのは困難であり、引越し作業で体力を使い果たしているから無理に等しい。 私は途方に暮れていた。 疲労のおかげで正常の判断を失っていたと言ってもいい。 「今夜は忍さんと一緒に寝たいな」 と、一人で呟く。 そう呟いてから、私の行動は早かった。 『女の子は行動力なのよ!!』 どこかの誰かが残した言葉だ。 その言葉の意味を知る時がやってこようとは。 恋する女の子は受身だけじゃあダメなの。攻めて、攻めて、攻めて、攻めまくらないと 恋愛という乙女の命がけの戦いに勝利することはできないんです。 そう決意すると家を抜け出し、 忍さんの家のインターホンを鳴らした。 私は精一杯の勇気を振り絞って言った。 「泊めてくれませんか?」 541 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 37 28 ID ARqPzft2 今日、出会ったばかりの女性にいきなり、『泊めてくれませんか?』と言われた時、 正常な男性はどういった反応を返せばいいんだろうか。常識的に考えても、恋人ではない男女が 一夜を過ごすのは倫理的に許されるわけがない。もし、間違いを犯せば彩さんを悲しませることになる。 「ダメでしょうか?」 彩さんが消費者金融のCMのごとく潤んだ瞳で俺を見つめている。そんな瞳で見つめられたら断ることができない。 「わかった。泊めましょう。今日だけですよ」 「はい。ありがとうございます」 と、俺は軽い気持ちで彩さんを部屋に入れた。 人生で初めて女性を自分の家に招いたことにある一種の感動と緊張感が俺の中で生まれていた。 彩さんは相当な美人な分類に入り、本来の俺ならお近づきすることもできない人だ。 その人を俺のちらかっている部屋に泊まるというだけで何か興奮する。 テレビとタンスなど日常品やベットを置けば、部屋一杯になる狭い部屋だ。 クッションの敷いた場所に彩さんを座らせて、俺はお客様を歓迎するためにキッチンにお茶の葉を探していた。 ちらりと彼女の姿を覗くと。 彩さんは嬉しそうに俺の部屋を眺めていた。 「あの何か飲みます。お茶しかありませんけど」 「ああ。いいですよ。そんなに気を遣わなくても」 「そうですか」 「あの周防さん?」 「うん?」 「今晩は同じ布団で一緒に寝ていいですか?」 「なんですと!!」 突然の彩さんの衝撃発言のおかげで俺は猫を被るのを忘れて叫んでいた。 年頃の女性が一緒に寝るのは間違いなく危険な発言だ。俺の中の狼が覚醒しそうだ。 「そんなのは絶対に駄目ですよ」 「うにゃ……駄目なの?」 「ううっ。確かに一人分の布団しか家にはないけど。彩さんはベットに寝てもらって、俺が床で寝るつもりだったけど」 542 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 38 33 ID ARqPzft2 「そんなの駄目ですよ。私のせいで周防さんが床に寝るなんて。そんなのダメなんですから」 「でもな」 「でももヘチマもありません。一緒に寝た方がきっと温かいですよ」 確かに彩さんと一緒に寝れば、今日の夢心地は良く、明日は爽やかな朝を迎えることが出来るかもしれない。 天使のような微笑を浮かべている彼女の期待を裏切ることもしたくはないし。ここは誘惑に負けてしまおう。 「わかったよ。一緒に寝ましょう: 「うにゃーーーー!! ありがとう」 彩さんは嬉しさのあまりに俺に抱きついていた。背中には彼女の手がぎっちしと包むように抱き込んでいた。 予想すらもしなかった行動に俺は自分の顔から首まで真っ赤になってしまうのがわかる。 異性の接触は思っていた以上に全体的に柔らかくて気持ちいい。 更に自分の心のどこかで安心できる癒しみたいなを感じていた。 彩さん効果だな。 「あの抱きつくのは彼氏さんにしてあげたらいいのでは?」 「彼氏?」 「彩さんは彼氏いるんでしょう?」 「そ、そ、そ、そ、そんなのいませんよ。ううん、いないよ。私、今まで男の子と付き合った経験なんて全然ないですから!!」 「そうなの」 「そうなんですよ」 そうか、彩さん彼氏いないのか。良かった。って、俺ごときが彼女なんかに相手にしてもらえるはずないのに。 なにが良かっただ。 「あの、周防さんは……その、彼女とかいるんでしょうか?」 「え、えっと、生まれてから今まで女性と交際経験なんてありません。ぐすん」 「そうなんですか!!」 と、俺が彼女がいなかったことに凄い喜びを彩さんは感じていた。更に抱きついている手に強い力が込められる。 「大丈夫ですよ。周防さんなら素直で優しい彼女ができますよ」 「そうかな」 「私が保障しちゃいますよ」 彩さんみたいな女の子から彼女ができると断言されるってことは俺に気があるというのはほぼ絶対的にありえないわけで。 少し悲しい気持ちになってきた。 「ではもう寝ましょうね」 543 名前:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 40 06 ID ARqPzft2 就寝。 シングルベットで二人で寝るのは狭くて窮屈だった。 俺と彩さんの肩が触れ合い、腕と腕の感触が男と女とでは温度差が微妙に違う。 女性の温もりは誰かを包み込むような優しさに満ちており、俺の心にやすらぎを感じさせる。 どうして、今日会ったばかりの人と一緒に寝ているのだろうかとか、些細な疑問などどうでもよくなる。 だけど、隣で彩さんが寝ていると思うと寝付けることができなかった。 仰向けになって天井ばかりを見る時間が増える。 「周防さん、起きてますか?」 「はい、起きてます」 と、俺は彩さんの顔を見ようとせずに曖昧な返事で返していた。 「引越しの手伝いをしてくれて本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」 「その事は彩さんが困っていたし、助けなきゃと思っていたわけであって」 「誰にでもできませんよ。困っている人を助けることなんて。周防さんは私を見捨てることだってできた。 けど、それをしなかったのは周防さんが優しい人だからだよ」 「優しいねぇ」 「うんうん」 自分は本当に優しい人なのだろうか。俺は今日出会ったばかりの彩さんを助けようと思ったのは 困っている彼女を助けられないことを後で後悔したくなかったからだ。 「それだけじゃないです。寝る場所がなかった私をこうやって泊めてくれたし。それに……一緒に寝てくれました」 「シングルベットは狭いけどな」 「うふふっ。周防さんが傍に居てくれるから、とても温かいですよ」 彩さんが優しく微笑する。確かに二人の距離は密着する程に近づいている。 昨日は互いに知らぬ人であり、今日は出会ったばかりなのに。本気で摩訶不思議な体験をしているな。 「夏だったら、こんな風に寝たら暑苦しいだけだが」 「そんなことはありませんよ」 「そうか」 「周防さん?」 「うん?」 「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」 「ああ。俺からもよろしくな」 「で、周防さんにまたご面倒をかけることになるんですが」 「何かあったの」 「興奮したら、ちょっと鼻血が」 えっ? 鼻血って。 544 名前:トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 41 39 ID ARqPzft2 以上で投下終了です 545 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 16 52 00 ID Q8HIaJUX 544 GJ!まだよんでないけどとりあえずGJ 546 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 17 08 15 ID Q8HIaJUX 544 読み終わって再びGJ! 547 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 17 33 57 ID k1uKj/Un good job!! 548 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 17 51 37 ID jgZmUCKD 544 正に俺の理想のヤンデレだ・・・GJ!! 549 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 17 57 33 ID UJCpgIEa GJ ! これからどう病んでいくかwktk 550 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 20 42 56 ID bC7t8Aj1 乙! 551 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/13(土) 22 07 07 ID E+XhNyzv 最近よくコカ・コーラを飲むんだが、コーラをコップに注ぐ時なぜか氷を入れてないと嫌なんだよな 552 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 00 22 41 ID /orquzC0 お前に氷入りコーラだす女がいたら気をつけろよ 553 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 00 23 48 ID +bsboBlw キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 554 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 01 16 34 ID zzgAnyX1 コーラが? 555 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 03 15 26 ID 3FOxxmPI コーラに入れる氷は、作るときにラムネ菓子を適量入れておくと大人の味わいだぜ!!!! 556 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 06 14 10 ID ZJBmsLnM 555金持ちな泥棒猫に飲ませて赤恥をかかせるのか。 ホントにヤンデレは容赦ないぜ。 557 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 10 02 28 ID /VlbnucL モットーが勝負とか心とか才能とか半歩先とか成仏とかXO醤とか。 そんなこと言い出す若い子達が包丁投げたりサメやダチョウと戦ったり、犬を殺したりします。 出てくるキャラはコスプレ好きとかゴスロリとか中仏ハーフとかそんなのばっかです。女装もあるよ。 メインヒロインも血まみれになりながら生肉食べたりします。そして出てくる女の子はすべて爆乳。 前作の最後で死者が出ちゃったのでヒロインと主人公は手を取り合って高飛びしました。 それが鉄鍋のジャン 558 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 11 47 08 ID TtfUSnXO 料理漫画じゃなかったのか・・・・ 559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 12 01 53 ID 7LJzo0q+ 物は言い様だなw 560 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 12 55 40 ID wPJKRBrB ・「泥棒が」とショットガンで迫られる ・熱烈なビデオレターを何度も送る ・男の幼馴染に刃物を突きつけた上にビルから突き落とす。 ・男の友人をトレーラーで追い回す ・男の友人と幼馴染を誘拐、拉致、殺害(友人は重傷) ・「私にはあなたが要るのさ」 ・「一つ屋根の下で暮らそう」と提案するも拒否される ・笑いながらビルから落下 それがダークナイトの嬢カー 561 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 14 18 13 ID CooFlo12 557 なんだろうこのモヤモヤした気持ち… 562 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 15 33 04 ID s4pPpVcs 一酸化二水素のガイドライン中止。 563 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 16 34 00 ID T3U6oU8b DHMOですね 564 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/14(日) 23 09 48 ID jM4V278G 逆に考えてみよう すべてのヤンデレは一酸化二水素を摂取している つまり一酸化二水素を女性に与えればヤンデレになるのではないだろうか 早速学会に報告してくる 565 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 00 30 08 ID Htc8in9w 泥棒猫の母親を抹殺するため、ヤンデレに送り込まれた人型ロボットヤーミネーター、Y-800。 シュワルツェネッガーが筋骨隆々としていたのと同じくらい胸が大きいが、最終的にはプレスされて死んだ。 子供時代の泥棒猫を抹殺するために送り込まれたヤーミネーター、Y-1000。 Y-800の失敗によって、弱点を反省した結果貧相な体つきに。最期は溶鉱炉に突き落とされて破壊された。 以下黒歴史↓ なかったことにされたヤーミネーター、Y-X。 バットマンのCベイルがジョンコナーなので出番が来そうにない新Y-800 566 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 09 34 29 ID YRRCiIsV 565 レス内容は馬鹿馬鹿しいが、ヤーミネーターという単語に言い知れぬときめきのようなものを感じた。 567 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 11 57 50 ID EayzVPwT ヤーミネーチャンとか… ガキの頃はやったターミネーチャンの改変。 K君の姉はよくK君に鉄拳制裁していた。 その様を見た何人かが「ターミネーチャン」と言い初めて流行った。 568 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 13 46 10 ID 1Mdadp/H 自分語りうぜえ 569 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 18 48 24 ID tDVa7aLa 568 で? 570 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 19 01 55 ID JPrhzK3J 569 察してやれよ ヤンデレは自分の好きな人以外はすべてどうでもいいから自分語りをうざく思うだろうし 仮にヤンデレの好きな対象が自分語りしていたとしても 「それは私だけが知っていればいいの!私たち二人だけの秘密なの!こんな泥棒猫がいるような場所で言わないで!」 ってなるだろうし どっちにしろ、ヤンデレにとって都合が悪いわけだ 571 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 20 28 26 ID Htc8in9w 「誠越えしても心が自分に向いてればいい」 「なに、初恋じゃない? 関係ない」 「ファーストキスなんかいらない」 「誰が好きだったとしても、振り向かせてみせる」 「なんで非童貞なんだよ! 私以外の女を抱いちゃダメぇぇぇ!」 「え!? はじめてのチューじゃないの!? お仕置きが必要みたいね」 「これが初恋じゃないの!? 童貞でも心が中古じゃダメぇぇぇぇ! 女殺す!」 572 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 20 34 57 ID 1Mdadp/H 570 自演乙 573 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/15(月) 23 49 55 ID 15cLkSWG 571 ご立派(褒め言葉 574 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 00 21 34 ID ynMH5ncy 569 こ! 575 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 00 41 06 ID sjMatI1A 571 誠越えって何? あの男のクズを上回る女性遍歴の持ち主ってこと? ちょっと意味合いが想像できん単語だなあ。 576 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 00 48 05 ID wTYK+bW0 誠の親父がいるだろ 577 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 02 08 36 ID WpWGyWY1 すみません、質問なんですけど「いない君といる誰か」という作品はまだ完結されてないんでしょうか? 578 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 02 45 02 ID 5QrbnSwF 過去ログ嫁 579 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 11 35 16 ID 0aUVjz5x 576 あのレベルならなおのこと『心』なんて言葉の響きが空しくなるんだが。 580 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 22 08 02 ID LJbDn/nh つか、ワイヤードってまだなのかな? ずっと待ってんだけどな・・・ 581 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 22 09 26 ID 6BK6Ilgk まだまだうるせーんだよ 582 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/16(火) 23 29 51 ID 5QrbnSwF 作者乙 583 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 00 23 33 ID Nd3xUFU7 嫌な流れだな・・・ 年末だからか? 584 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 01 10 26 ID hAI2gg+1 お客様気質(笑) 585 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 01 35 34 ID /7MJD3UQ 「嫌な流れだなぁ……年末だから?」 また、お兄ちゃんにメールが来た。 【クリスマス空いてますか?】 何処で調べたかは知らないけど、お兄ちゃんにメールで愛の告白なんて百年……ううん、 この世が終わったってお前に資格はないんだから。 とりあえず、この糞生意気なメールの履歴と内容を素早く消去する。 「ついでにメールの受け取り拒否を設定しておいてあげる」 私って何て親切なんだろう。だって、下手にお兄ちゃんに近づいたら、階段から転げ落ちて 怪我するような不幸に見舞われてしまうかもしれない。 「そう、お兄ちゃんに近づいた人って、何故か不幸な目に遭うのよね。私が注意してあげないと」 お兄ちゃんに話しかけたり、触ったりして平気でいられるのは私だけ。ずっと昔から……。 隣の幼なじみの子、やたらとお兄ちゃんにベタベタまとわりついて仲良くしていた。 3年前、交通事故で大怪我したっけ。 お兄ちゃんに初めて告白した子。 クラスの全員に嫌われて、虐められて……最後は登校拒否になって転校していった。 その頃からかな。お兄ちゃんも女の子の告白を断るようになったのは。 仕方ないよね。だって、お兄ちゃんは私以外の女の子には、貧乏神になっちゃうんだもん。 「あれ?俺の携帯?」 お兄ちゃんがお風呂からあがってきた。 「うん、お兄ちゃん。また出しっぱなしだったよ。お父さんやお母さんに見られたら困るような メールが入っているんじゃない?賢い妹が見られる前に避難させておきました~」 「馬鹿、そんなの入っているわけ無いだろ」 「だって、お兄ちゃんもてるんでしょ~」 「俺の恋人はサッカーなの。それに、お前が思っているほど俺はもてないよ」 「そっかぁ。残念。もてる兄をもっていれば、妹としても自慢できるんだけどなぁ」 「悪いな、もてない兄で」 「仕方がないなぁ、恋人ができるまで私が恋人の代わりになっててあげる」 「馬鹿、やめろ、俺っ、裸だぞ」 ふふっ、私に抱きつかれてお兄ちゃん焦ってる。可愛い。 いつまでも、ずっと、私が恋人になっていてあげるね。 お兄ちゃんが多の女の子とくっついて……貧乏神……ううん、死神にならないように。 583へのレス 586 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 12 35 02 ID PtpcVTOy 583に嫉妬 587 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 18 24 38 ID NvTuxHJW 「あの泥棒猫が憎い憎い死ね死ね」 ↓ 「あの女を殺していいのは私だけ」 ↓ 「女さんの魅力を一番分かっているのは私だ。 敬意を表して、彼女の死に水は私が取ってやる」 588 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 19 13 49 ID oe0aX7+P それなんてベジータ 589 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/17(水) 23 34 25 ID X8dqwOKt 「あんたがNO.1よ…」 ~和解~ 590 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 05 02 22 ID K0PjllMa ヤンデレの物語とは、ある意味泥棒猫と結ばれようとする話だよ。 ヤンデレ>>>生きている者と死んでいる者の壁>>>泥棒猫 怒りを我慢するから憎いのであって、ぶち殺せば泥棒猫を主人公以上に好きになると思うよ。 591 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 08 06 54 ID ecRD/r0c もうなんかヤンデレから離れ始めてるな 592 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 08 20 42 ID sNt0kDZI 590うぜえ 593 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 10 43 15 ID 8vFXx+m5 とりあえず死ね死ねしとけばヤンデレだと考えていそうだな。 594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 14 35 04 ID 5/DFFOx5 殺す殺す詐欺 595 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/18(木) 17 20 00 ID zV8w6KYs 機械と彼をこよなく愛す女技術者。 最初は戦闘機械の着装者として接していたのだが、次第に愛着が湧いてくる。 それと共に機械のデザイン等も変わってくる。 スーツ式→着脱式開放型→着脱式一体型→生体改造。 最後、最終兵器彼氏となった男と開発者の女技術者は駆け落ちすることに… と突っ込みどころ満載のネタで流れ変えてみる。 596 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 01 13 36 ID MAXL5Z/3 週刊新潮に面白い記事が。 インドのある男性が嫉妬した元彼女に薬盛られて動けない間にちんこ切断され 彼女は切り取ったちんこ持って逃走。 597 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 03 15 40 ID i8qLx/c3 阿部定事件を思い出す…。 598 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 09 08 06 ID uRAZkXWZ 女性の犯罪率って全体の2割くらいなんだが、殺人とかの暴力事件ってのはその中でもかなり珍しいらしい。 多いのは麻薬と窃盗。 たまに女性が殺人とかを起こすとそれだけで大きなニュースになるのはそのせい。 599 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 17 11 55 ID HNVCl+76 なるほど 600 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 20 41 36 ID SQWVIM9q 595 >機械と彼をこよなく愛す女技術者。 一瞬某フェアリイ空軍大尉を連想したぜ 601 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 22 09 02 ID wq1erpvs ヤンデレが愛しの彼に付きまとう泥棒猫(彼女)を始末しようとするんだけど、 逆に返り討ちにあってボコボコにされたあと泥棒猫が変に気をつかって傷の手当とかしてもう彼には近づかないでとか言うんだけど、泥棒猫の強さと優しさに感動して今度は彼女に惚れてガチ百合に目覚めるヤンデレが見たいです 602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 22 10 26 ID O3gr+5aT ヤンデレは一途さも魅力だと思うよ 603 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/19(金) 22 52 07 ID 2jsbQBxE 601 XCAでもやってろ 604 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 00 29 06 ID hU7gELmS 601 病んでるほど(彼氏に対して)愛してない。デレてない。 もはやそれはただのいやあるいは 605 名前:601[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 01 02 05 ID 6jPlUKqo 皆から言われてちょっと考えたんだが、俺が言ったのはヤンデレじゃなかったな・・・もっと一途で純粋だった気がする 保管庫見て勉強するわ 606 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 01 58 07 ID 460gRkhm オレはヤンデレは自分のことをヤンデレだなんて思ってないと思うんだけど 最近の自分のことヤンデレって言ってるやつ何なの? 607 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 02 01 23 ID qqrNPySK メンヘラ 608 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 06 05 16 ID idmLZwz7 バカ 609 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 11 27 03 ID vI8oM7o4 ヤンバカと聞いて 610 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/20(土) 14 12 11 ID WTX42Iv7 609 ただのバカでよろしい 611 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00 51 42 ID xOkGEuh3 ヤンデレ自称すると死亡フラグ立ちそうだね 612 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00 54 28 ID fdVCnfvR 仲良しなヤンデレと泥棒猫から発想を得たので投下します 「まゆり!開けろ!開けるんだ!!」 あ、たっくんだ お風呂場のドアをドンドン叩きながら私のこと呼んでる 嬉しいな たっくん、このごろ美由ちゃんとばっかりお話してたから 私のこと忘れちゃったのかと思ってた 「おい!なにやってるんだ!!」 何をやってるかって?ええっとね たっくんのお部屋にこっそり入って、たっくんの部屋のごみを持ってきたんだよ たっくんがいらないと思っても、私は欲しかったからもらったんだ あ、後ね、美由ちゃんにたっくんを返してって言ったよ たっくんは私の幼馴染だもん 後から来た美由ちゃんが私より優先されるのっておかしいよね それに、美由ちゃんってば悪い子なんだよ たっくん以外を見るし、たっくん以外と話すし、たっくん以外に触るんだから たっくんが好きなら、たっくんのこと以外気にかけない子じゃないとダメ 私みたいに、毎日たっくんのことだけ考えて、見て、触って、話すような子じゃなきゃ認めない そのことでさっきたっくんと喧嘩しちゃったんだよね でもでも、追いかけてきてくれたんだよね 嬉しいな、嬉しいな 「開けろ!開けろって!!まゆり!」 どうしたの?なんか怖いよ、たっくん 「早く!まゆり!」 何を言ってるの?ドアは開いてるじゃない 「頼む・・・俺が悪かったなら謝るから、だから・・・!」 「死なないでくれ!!まゆり!」 しぬ?しなないよ。しんだらたっくんにあえないもの 613 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 00 55 02 ID fdVCnfvR たっくんが最近私に優しくなった 嬉しいな 毎日会いに来て、私の世話をしてくれるんだ 美由ちゃんとは別れたんだって あの日、たっくんが飛び込んできてくれたおかげで私は死ななかった 死ぬつもりはなかったんだけど、ちょっと間違えて混ぜちゃいけない洗剤を混ぜてお風呂に入っちゃったんだって そのせいで、ちょっと足が動かなくなっちゃった だからって、たっくんが気に病むことなんてないんだよ その前にちょっとたっくんと美由ちゃんのことで喧嘩してたり たっくんに向けてたっくんに嫌われたら生きていけないって言ったりしてたのは 全然関係ないよ そう私は言ったんだけど、たっくんは真面目な人だから責任を取るって言ってくれた 嬉しいな、幸せだな たっくん、ずっと一緒にいようね もしもたっくんがいなくなったら 今度こそ 死んじゃうから ヤンデ・・・レ? ヤンデレ成分が極少になことをお詫びいたします 614 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 01 12 37 ID KohrDFPl 613 自傷行為に走るタイプか。 いいと思います。 615 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/12/21(日) 01 13 23 ID B6ZyfQhu 612 久々にゾクゾク来た ありがとういいくすりです 616 名前:615[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 01 14 16 ID B6ZyfQhu ご、ゴメンネ 617 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 02 20 23 ID wDZKkWLk 男「そこもとは素直クールの妹、かのツンとて粗略にはなさるまい。城を出て我が菩提を弔ってくれ」 女「ありがたきお心なれど、わらわは男管領様の妻、どこまでもお供します」 618 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/21(日) 13 25 12 ID 7Ug9CUxa 600 早くFAFに行けwww 619 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 01 03 19 ID r8LzR/W3 静かだ…… Xdayに向けて皆忙しいのか 620 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 13 26 00 ID suHcCMCj 嵐の前の静けさだな 621 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 14 47 25 ID apFP+hYL 荒らし…?((゜д゜;))ガクガク 622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 15 41 15 ID sf2Otdzc 621 呼んだ? 誰かひぐらし原作知ってる人詩音がヤンデレなのかどうか説明付きで教えてください 623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 18 21 11 ID tnO2VRTj 他所でやれ 624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 21 05 18 ID +7XLxyIq 622 笑った。さすが荒らし。 よいこは真似しないでね 625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 22 01 46 ID zILVfweb 他所でやれ 626 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 22 39 37 ID Jf3mBDhm 頭の中ではヤンデレが思い浮かびまくるのに文章にできないぜ 627 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 23 52 07 ID sf2Otdzc 623-625 悪ノリだったなすまん 628 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 23 53 33 ID Jn59817y SAWのジグソウ的要素を加えたヤンデレだと、誰を監禁してゲームに興じるのだろうか? おはよう、女さん。 ここが分からないだろう。教えてやる。この地下室でお前は死ぬ。 お前はいつも我が物顔で私たちの仲に割り込む。だが”泥棒猫”は鏡の中に何を見るか? 私に言わせれば、今のお前の姿は怒りと恐怖が混じり、ひたすら哀れだ。 お前は今日、自分の死を見るか、上手く逃げ出すか・・・ 629 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/23(火) 00 21 58 ID uY5x6PpG 一般的にいってヤンデレの最終目的は男との夢の生活で ライバルの排除なんて手段にすぎないわけだから そんな風に、獲物を目前にして舌なめずりしていたぶったり 無駄に関わりあって時間をかける必然性がほとんどない気がするけどな 「ただ殺すだけではあきたらん!」なんて持って行き方はあるかもしれないが それにしても、SAWみたいなことまでするなら 既にそのゲームが目的になってしまってて、ヤンデレとしてはなんか違わね? 630 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/23(火) 00 23 22 ID Ed2ySbMD わざわざ言ってるんだから触れるなよ 631 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/23(火) 10 37 58 ID RIMa4jvA 今頃病んだサンタ娘がプレゼントの荷造りしながら大好きなトナカイくんにどうやって今もうずいて止まないプレゼントを渡して、ひとりじめするかを考えてるんだよなぁ。 もしくは逆に病んだトナカイ娘がサンタくんから白いプレゼントを貰うかを考えてたり 632 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/23(火) 21 12 29 ID +c+4d1wJ 女だけでなく主人公もぶっ壊れていて 周りの女が死んでいく →実はある女のせいだと分かる →男「実は僕も好きだったんだ。嬉しいよ、こんなに愛してくれるなんて。でも殺人は控えようね。」 →数日後 女「〇〇を殺したわ。あなたにやたら話し掛けて目障りだったから。スクイズみたいに腹かっさばいてやったわ。」 男「へえ…なかなかオツなことをするじゃないか。よしよし(なでなで)」 女「えへへ」 男「でも警察とかも怪しむだろうからしばらく我慢してね。その代わり縛ったりして楽しんでもいいよ。」 みたいなのを考えたが文章化不可。 633 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/23(火) 23 33 26 ID JMHcbQxa 632 629を十回ぐらい読んだ方がいいと思う 634 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 02 31 59 ID g0lzs8Ir 629 つまり君は病んでさえいれば障害が何も無いラブラブなヤンデレでもよろしいと申すか。 …文章化したときに盛り上がりがないよママン… 635 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 05 05 42 ID UiKR7vYR 634 障害が何もないラブラブなヤンデレで何の問題があるというのだ 盛り上がりなんて、最初からクライマックスですよ 636 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 05 17 37 ID Jt+6KoWl イブの朝一から股間の盛り上がりとかいっていい? 637 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 07 29 13 ID 8x+G3Hg7 ほう。なかなかのセンスだ 638 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 11 16 36 ID ksL8Dfrg 視線を感じる 無言電話 下駄箱に想いのたけを綴った無名の恋文 よく話していた(?)女子の失踪 そしてある日我慢できなくなった女は主人公の家に忍びこみ・・・ 632へ やっぱり文章化しても盛り上がらないかorz 書けないけど。 639 名前:クリスマスが今年もやってくる[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 49 06 ID aGZLMkj+ 携帯ですが投下します。 初めてなので、いろいろとご指導をお願いします。 640 名前:クリスマスが今年もやってくる[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 50 46 ID aGZLMkj+ あなたはサンタクロースにどんなイメージを持っていますか? 一般には、赤い服に白い髭をたくわえ、白くて大きな袋を持ったおじいさんでしょうか? でも、本物は違うんですよ。本物は赤い服じゃなくて黒っぽい藍色の服を着てるんです。 なんでも、近頃は不法侵入で捕まってしまう仲間もいるので、見付かりにくい服を着ているそうです。 それに、白くて大きな袋なんて持っていません。彼が持っていたのは黒い鞄でした。 中に入っているのは、プレゼントの、宝石がついたアクセサリー等や、仕事に使う秘密道具。 最近の家には煙突なんてお洒落なものがないので、いろいろ道具が必要なようなんです。 そして極めつけに、サンタは白いお髭のおじいさんじゃなくて、若いお兄さんなんです。 おじいさんサンタはもっぱら、どの家をまわるかなどの計画を練る係で、実際に配るのはお兄さんみたいな若者なんだそうです。 641 名前:クリスマスが今年もやってくる[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 52 27 ID aGZLMkj+ どうしてこんなに詳しいのかって? 実は私、去年のクリスマスにあったことがあるんです、サンタに。 嘘じゃないですよ。ちゃんと本人に確認をとったんですから。それにプレゼントも貰いました。一生の宝物です。 この一年間、大切に育ててます。といっても、育て始めたのは二ヶ月前なんですけど。 世話は大変だけど毎日がとっても楽しいです、ホントにサンタには何度お礼を言っても足りません。 だから、捜しました。彼を。 そしたら、すぐに見つかりました。探偵ってすごいですね。みなさんも人捜しするときはお願いしたほうがいいですよ。 沢理 惣佑(さわり そうすけ)22歳、独身、彼女無し。家族は父母と妹が一人。現在は家族とは別居し、アパートで一人暮し。 サンタとしてのお仕事がないときはコンビニでアルバイト。サンタってクリスマスの日以外にも、働くんですね。 彼を見つけたときに、私は一つ、アイディアを思い付きました。とってもステキなサプライズを。 サンタはいつもプレゼントを配る側、だから今回はもらう側になってもらいましょう。 642 名前:クリスマスが今年もやってくる[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 53 58 ID aGZLMkj+ 今夜はクリスマス。きっと彼の帰りが遅いはず。そのすきに部屋に入ってパーティーの準備をしたいと思います。 彼がアパートを出たのを確認したら彼の部屋へ。幸い、部屋の鍵は入手済み。すぐに入れました。 料理は得意なので手料理です。伊達に一人暮しを五年もやってません。飾り付けは苦手ですが頑張ってみました。 プレゼントもちゃんと用意しました。彼が帰ってきたらどんな顔をするでしょうか? 今から楽しみです。 643 名前:クリスマスが今年もやってくる[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 55 01 ID aGZLMkj+ 今年はあげる側の私ですが、今年もプレゼントをもらいたいです。なので、ちょっと料理に一工夫をしてみました。 ああ、そうだ。彼が帰ってくるのを待っている間に、私の宝物にお乳を与えておきましょう。 もしかしたら、彼もこうやって私のお乳を飲むかもしれません。そう考えるだけで胸が張ってきます。 果たして彼は気に入ってくれるでしょうか。このプレゼント《家族》を。 ああ、今年もクリスマスがやってくる。 644 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/24(水) 23 59 53 ID aGZLMkj+ 以上です。 こうして投下してみるとクソ文でしたorz もっと上手くなって出直したいとおもいます。 645 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 00 06 01 ID 6miUWsnu GJ 646 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 03 43 50 ID pej+gs/V 644 GJ 647 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 11 39 23 ID aSUmwkx6 644 GJ。 男もぶっ壊れているのだとやっぱりヤンデレは成り立たないのかな・・・。 648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 11 43 42 ID eKif6H2j 644 GJ お茶会は男も壊れてる。 というか、あの作品は登場人物大体壊れてるな。 649 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 11 58 39 ID 2BvqwYcV 『書く』って思った時にはすでに行動は終っているからだッ!! 『書いた』なら使っていいッ!! 書きたいなら書けばいいじゃない。そしてそれからどうするか考えればいいじゃない 650 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 19 56 01 ID YO9k43GO 不法侵入者でレイパーということか? 651 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 20 30 29 ID oJJR4NWC 650 それと泥棒ですかね 泥棒に入ったら女と遭遇。勢いでレイプってイメージで書きました やっぱり書き足りてなかったですね 652 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 20 51 53 ID 2BvqwYcV いや、十分伝わってたよ 653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 10 23 ID oJJR4NWC すみません、厚かましいとは思いますが、どうやったらもっといい作品が書けるか、アドバイスをいただけませんか? どんな細かいことでも構いません。 目指している作品は『黒の領域』と『恋人作り』、それに『真夜中のよづり』です 654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 21 10 ID mlz2ua5D 日本語や文章がおかしいのはそれだけで読む気が失せる 読者を置いてけぼりにする白々しいノリも読んでて苦しい 655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 24 00 ID BbeV9TIh エロパロ板の作品に文章力を求めるのはどうかと思うが 656 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 37 21 ID YO9k43GO 色々な作品に触れてみるとか? 洋画ドラマやサスペンスはヤンデレ男が多くてオススメ。 657 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 42 27 ID mlz2ua5D そりゃあ読んでて関心するような文章は求めないけど、 正直、例えば同じ接続詞を何度も使わないとか最低限の事は出来て欲しい 中学生レベルの話だから。良い作品を書きたいと思うならさ 趣味だから自由と言ってしまえばそれまでだが 658 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 21 52 08 ID pTqasxnP 読者の心情を想像して書くとか。こう書けば読んでる人はこう想像するだろうって具合で。 私の読解力の無さと想像力の欠落からきてるのだろうが、作者の想像したものと自分が(読んで)想像したものが違うなって自分でわかるときがあるし。 違うかもしれないが、作者がイメージを文にするのに対し、読んでる人は文からイメージを作るからね。 なんか偉そうに言ってごめんね。これも653君を愛してるからなの。 ごめんね。 659 名前:プロット?[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 22 06 22 ID QZc/9ee+ ある少年が女性に恋をする。 大人の色香、どこかに弱さを感じさせる強い性格、そして、何故か妖しさを感じさせる美貌…。 少年は女性に愛されたいと願った。 例えこの身が傷つこうとも。 ある少女は幼なじみの少年の事を愛している。 あまのじゃくな性格も、時折見せる孤独な微笑みも、そして、その少年という存在を… 少女は少年の全てが欲しいと願った。 例え何を失っても。 ある女性は少女に溺れている。 その愛くるしい瞳を、その穏やかな声色を、そして、その一途な想いを。 女性は少女を一途に愛している。 例え誰かを殺す事になっても。 誰かこんな感じのお話を書いて下さい。 660 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 22 16 51 ID oJJR4NWC いろいろなアドバイス、ありがとうございます。 言われたところを見直して、次はもっといい作品を書きたいと思います。 これからもお世話になりますが、よろしくお願いします。 661 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/25(木) 23 10 17 ID YO9k43GO 男と仲のいい ゆっくりしていってねにまで嫉妬する。 あれは饅頭なのに 662 名前: ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 43 29 ID mVrqxCHs 遅ればせながら、クリスマス短編投下します。 663 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 44 01 ID U0/jVdTY 支援 664 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 44 36 ID mVrqxCHs 『ヤンタクロース・サンタガール』 「あの……できれば、この状況について説明していただきたいのですが」 滋郎(じろう)は、非常に困惑していた。 それは十二月二十五日の朝。独り淋しい生活を続ける滋郎が、いつも通り独り起床した時のことである。 「あの……朝食をおつくりしましたので……まずは、食べてください」 顔を赤くしながら応える少女。 もちろん、生まれて二十三年間の間、女性と付き合うことはおろか、手さえ握ったことの無い滋郎には、実に覚えの無い人間だった。 知り合いではないことに加え、なぜ、知らないうちに家に入り、エプロンをかけ、朝食を作っているのか。 皆目見当もつかない。 まあ、相手からは敵意は感じられないし、説明してくれるということなのだろうから、と、滋郎は椅子に座った。 テーブルの上に、少女は食器を置いていく。 「おお……」 思わず、滋郎は声を漏らした。 家の冷蔵庫の中の適当な賞味期限ギリギリの食材たちが元になったとは思えないほどの美味しそうな朝食ではないか! 「あの、いただいて、いいんですか?」 「はい。そのために作ったんです」 一応、訊いた。不法侵入者にこういうことを言うものかと思うが、少女はそう言った犯罪的な、泥棒的な何かと無縁の存在に思えた。 だって――どっからどう見てもサンタだし。 ずずっと、薄め(滋郎の好みの加減だ)の味噌汁を啜り、一息つき、言う。 「サンタさん、なのかな?」 「あ……」 少女はもともと赤くしていた顔を、さらに赤くした。来ているサンタ装束と同じような色に染まっている。 訊いちゃだめなことだったのだろうか。滋郎は一瞬だけ罪悪を感じたが、やめた。冷静になるべきだ。 「はい。そうですね、言い忘れていました。わたしは、サンタガールをしています。『サンタ=マリア』と申します」 「はぁ、それはご丁寧に。でも、なんたって僕の家に。それに、深夜にプレゼントを渡すとかならまだしも、もう朝ですけど」 「そ……それは」 内気そうな少女、マリアは、もごもごと口篭もり、言った。 「わたしが……プレゼント、なんです」 665 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 45 06 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ 時はさかのぼり、十年前のクリスマス・イヴ。 その時、マリアは十歳。滋郎は十三歳であった。 マリアは、当時現役サンタクロースだった祖父につれられ、トナカイそりで聖夜の空を疾走していた。 「うわぁ……。おじいちゃん、人間界には、こんなにいろいろな『光』があるんですね」 「ほっほっほ。マリアは人間の『光』が見えるのじゃなぁ。こりゃ、将来大物サンタになるのう」 「人間の『光』?」 「そうじゃ。わしらサンタは、プレゼントを渡すことで、彼らの『光』をすこしずつわけてもらって生きるんじゃよ」 「そうなんですか……。すっごく、綺麗な光ですね」 「マリア、綺麗な光と、汚い光は。その違いは、見えているかの?」 「綺麗と、汚い……? 確かに、個人差があります。子供が綺麗で、大人は汚いです」 「一概にそうともいえんがのう。確かに、大抵はそうじゃ」 「どうして、同じ人間でも、違うんですか?」 「それはのう、この『光』は、人の『願い』『執着』『夢』そのものだからじゃ。大人になるに連れ、人はそれらの呪縛にがんじがらめにされていってしまうのじゃ」 「悲しい、ことですね……」 「じゃが、例外ならある。『恋心』じゃ」 「恋……?」 「恋をしている人間の光は、そのどれもが美しいのじゃよ」 「……」 「わしも、ばあさんと出会ったときは、それはそれは……」 また始まった。と、祖父ののろけ話には耳を塞ぎ、マリアは空を駆けるそりから身を乗り出し、地上の光をみつめた。 たくさんの光がうごめいて、まるで蛍。しかし、ぱっと見ただけでは気付かなかったが、綺麗な光は、目立つが実際は少ない。 殆どは闇のようなどす黒い光だった。 「……あ、あれは」 マリアは、その中に妙なものを見つけて、思わず手を伸ばしてしまった。 「あ――」 ひゅう。 マリアの小さな身体は、簡単に空に投げ出されてしまった。 「ばあさんとの情熱的な恋は、わしの『幻惑』能力抜きには語れんじゃろうな。お前にも遺伝していれば~」 祖父は、未だ嫁とのラブストーリーに陶酔していた。 666 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 45 37 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ ぼふん。 雪がクッションになり、マリアは殆どダメージを受けずにすんだ。 しかし、雪の塊に全身をつっこませてしまったため、せっかくの子供用サンタ服がびしょぬれだった。 「おじいちゃんにもらったのに……」 ぐずぐずと、涙を流すマリア。 「おい」 そこに、1人の少年が現れた。 「……?」 「びしょぬれじゃないか。雪遊びもほどほどにしろよ」 少年は、悪態をつきながらも、自らの上着を脱いでマリアに差し出した。 「寒いだろ。これ、やるよ」 「え……。でも」 「やるって」 強引に押し付け、少年はさっさと走り去った。 「おーい、マリアー!」 サンタクロースがそりで駆けつけたのは、それから少ししてからだった。 そこには、びしょぬれではあったが、この上なく幸せそうな顔をした孫の姿があったという。 ♪ ♪ ♪ 「で、その時の少年って言うのが、僕、と。そういうことですね」 滋郎は、正直困っていた。確かに、いい話だ。いい話ではあるが、さっぱり身に覚えが無い。 「人違いでは?」 「いいえ。サンタのデータベースでちゃんと確認しましたから……。滋郎さんが、あのときの男の子で、間違いありません」 そう言うと、マリアはプレゼント袋をごそごそと探り、子供用の上着を取り出した。 「これ、お返しします」 「え、いいですよ。あげたんだし。今更もらっても、僕は着られないし」 そりゃ、マリアにも使い道はないのだろうが。滋郎はココロの中でそう付け加えた。 「それで、君はこの上着をわざわざ返しにきてくれたんですか?」 「あ、の……その……」 「?」 「プレゼントは、わたし自身だと、さっきも言ったと思いますが……」 「うーん。すみませんが、いまいちピンとこないというか……」 「恩返しがしたいんです……。家事でも、なんでもします。ご迷惑はおかけしません。この家に置いてください」 マリアは、そう言って床にひれ伏した。 「ちょ……ちょっと! やめてください!」 「……?」 「何年も前の恩じゃないですか。それに、当然のことをしたまでですから、感謝してもらっただけでも嬉しいですよ」 「しかし……。それでは、わたしの気がすみません」 「うーん」 滋郎は、しばらく考えて、応えた。 「なら、来年のクリスマスまで、家で家政婦さんをしてもらう、というのは?」 「は、はい! ありがとうございます! 頑張ります!」 「お礼を言われるとは思わなかったけどね……」 一年という長い期間が、若い娘なのに苦にならないのだろうか。滋郎は、断られると思って提案したのだ。 まあ、言ってしまったものは仕方が無いと、滋郎はマリアを受け入れることに決めた。 667 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 46 07 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ それからの滋郎の生活は、刺激的で楽しいものとなった。 滋郎は御神グループ系列の、なかなか良い会社に努めており、将来はなかなか明るい部類だ。 そんな彼に唯一足りないのは、女性に好かれること(彼は『いい人』で止まるタイプだった)と、家事の能力。 マリアは、そのどちらも満たす存在だった。 マリアは献身的に滋郎に尽くし、精一杯の愛情を注いだし、滋郎はそんなマリアを大切に扱った。 二人は、間違いなく幸せだっただろう。 が、唯一、かみ合わない点があった。 滋郎は、マリアの愛に全く気付いていなかったのだ。彼は、あくまでマリアの目的が『恩返し』なのだと思い込み、彼女に手を出さなかった。 それでも、二人の間には何も問題は生じなかった。 そういうすれ違いがあろうが、マリアは滋郎のそばで暮らせることだけが幸せだったからだ。 しかし、約束のクリスマスは、待ってはくれなかった。 ♪ ♪ ♪ 「そろそろ、クリスマスですね」 食卓で、マリアはそう切り出した。 「そうだね。君はいつもサンタの衣装だから、見慣れてしまってどうにも気付かなかったよ」 滋郎は、ははっと笑う。その笑顔を見て、マリアも幸せを感じていた。 「そっか……。もう、クリスマスか。君とも、そろそろお別れなんだ。淋しくなるね……」 だから、滋郎がぽそっとそう漏らしたことにも、気付かなかった。 668 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 46 38 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ そして、クリスマス・イヴ。滋郎はこんな日にもしっかり出勤し、仕事を終えて家に帰ってきた。いつもより遅かった。 「お帰りなさい、滋郎さん。今日は、クリスマス・イヴだからちょっとだけ豪華なお食事を用意しました」 「うん、いい匂いだね」 マリアと滋郎は食卓につく。すると、深刻そうな顔をして、滋郎はこう切り出した。 「明日で、お別れなんだね。淋しくなるな」 「え……」 予想だにしていなかった――ココロの中から、自然に消してしまっていたことが、マリアに突きつけられた。 「ありがとう。こんな僕のお世話をしてくれて。本当に、感謝してるよ」 「……で、でも、わたしがいないと、滋郎さん、困って……。やっぱり、これからも、ずっと……」 「君は若い女の子だ。自分の時間を大切にしなきゃ。……大丈夫、僕もこれから何とかやってくから」 「でも……」 「今日ね、会社の女の子に、告白されたんだ」 「……!」 「その女の子は、本当にいい子だよ。僕も、彼女となら暮らしていけるんじゃないかって思ってる」 「でも……でも……」 「僕は、君みたいに綺麗で優しくて、頭も良くて、何でもできるような、そんなすごい女の子を、僕なんかにとらわれたままにはしておけないんだ。だから、分かって欲しい」 「……」 「今まで、ありがとう。僕なんかを心配してくれて。僕は、なんとかやっていくよ。もう、君に心配かけないように。……本当に、ありがとう」 マリアは、もう何も言い返せなかった。 滋郎は優しい。だから、マリアも好きになった。 だが、だからこそ、マリアを無意識に傷つけていた。 ただの家政婦にとっては。ただ、世話を焼いてくれている優しい人にとっては。その言葉は、滋郎の自立や感謝を表す、誠実な言葉だったろう。 だが、マリアにとっては死刑宣告以外の何ものでもない。 「……少し、時間をください」 マリアは、うつむいたまま部屋をでた。 669 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 47 08 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ 「本当に、これでよかったのかな」 滋郎は、マリアの悲しげな顔をみて少し後悔した。 しかし、これでいいのだとも思っている。勇気を出して告白してくれたあの子に応えるためにも。 そして何より、優しいマリアが、彼女自身の幸せをつかめるようになるためにも。 「そのためには、僕は邪魔だから」 ふぅ。溜め息をひとつ。 無理矢理追い出す形になったのは、やはり申し訳が無かった。 もう少し、何か別の方法をとることはできなかったのだろうか。 「……。帰ってきたら、もうすこし。もうすこし、話をしよう」 マリアに幸せになって欲しいのは、本心だ。マリアを、ついにできた恋人のために追い出す口実などでは、決して無い。 しかし、さっきの宣告は、そういう風に伝わったかもしれない。即ち、「女が家にいると彼女が勘違いするから、もう出て行けよ」と。 「だとしたら、ひどい奴だな、僕は」 だから、帰ってきたら。もっと誠実な言葉でマリアを説得するつもりだった。 だが、待っていることすらマリアを傷つけるのではないのか。 誰かが言っていた。「こういうときは、追いかけるべきだ」と。 滋郎は立ち上がった。 670 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 47 39 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ ふらふらと、マリアは当ても無く街を彷徨った。 彼女のサンタ服も、この繁華街ではもう珍しくない。似たような格好の、あらゆる店の店員が自らの店のクリスマスセールを宣言していた。 疲れきった街。 この街に、もう光など見えない。昔はもっと輝いていたのに。 いや――。 (わたしが、もう……サンタの力を失ってる) マリアは、なんとなくそう思った。去年、人間界に居候を始めてから、マリアは明らかに弱くなった。 (人間になっている……わたしは) 思えば、人間に対する恋心というのは、普通サンタは持たないそうだ。 人間とサンタは違う。人間とチンパンジーが恋をしないように、似てはいても結局は交わらない。 おそらく、滋郎もその理由で、マリアのアプローチに気付かなかったのだろう。 だが、マリアの心は、違った。マリアは確かに滋郎に恋をしている。 そして、人間ゆえのあらゆる苦悩が芽生えているのだった。 執着、願い、夢、欲望。その全てが、人間らしい活力だった。同時に、人間を縛る鎖だった。 (滋郎さん……) この十一年間、マリアはずっと滋郎を見てきた。 サンタの能力である透明化と、透視を利用して、空から、あるいは窓から、あるいはどこか遠くから、あるいは、すぐ隣から。 ずっと、ずっと。どこにいても、何をしていても、気がつけば滋郎のことを目で追っていた。 滋郎を観察しつづけるにつれて、その恋心は深くなっていった。 根っからの善人の滋郎は、誰よりも輝いているように見えた。少なくとも、マリアにとっては、これ以上ない、輝ける存在だった。 ずっとずっと。見つめつづけた。 起きるときも、食べるときも、風呂に入っても、笑っても、悲しんでも、転んでも、なにをしているときでも、いつも隣にいた。 触れることができなくても、満足だった。 マリアにとって、なにより嬉しいのは滋郎の自慰行為をいくらでも観察できることだった。 マリアは滋郎の自慰を観察しながら、自らも快楽をむさぼった。 時には、あの時もらった上着の匂いをかぎながら――あるいは、股に擦りつけながら。その手触りを、滋郎自身の代わりにして。 ずっと見つめるうちに、同じく滋郎を見つめる存在に気付くこともあった。 滋郎は優しい男だ。確かに、好意を持つ女も多いだろう。それはマリアにはよく分かっていた。 しかし、理解はできても納得はできない。 マリアは、滋郎に必要以上に近づく女を排除しつづけた。故に、滋郎はいつだって独り身だった。 時に、陰湿に、時に、強引に。マリアは、社会的に敵を抹殺しつづけ、滋郎の貞操を守った。 また、自分の貞操を守ることにも必死だった。 国家資格が必要で、高給取りのサンタガールは、サンタの世界では非常によくもてる。 祖父が見合いの話をだしてくることも少なくなかったし、親は何度も下らない男達を紹介してきた。マリアはそれらを実に巧みに退けた。 全ては、滋郎を観察しつづけるため。 そしていつか、結ばれるためだった。 「それなのに……。それなのに……」 マリアが滋郎を『見つめる』ことができなくなったのは、退職して滋郎のもとに転がり込んでからだ。 マリアの暴走する欲望が実に人間的なレベルに到達したその時、マリアは力を失い、透視もなにもできない、ただの人間となったのだった。 しかし、マリアは滋郎とともにいられるだけで満足だった。それ以上望まなかった。それが大きな油断だったのだ。 目を離した一年で、滋郎は女に目をつけられ、ついには告白されてしまった。 今まで女性に縁がないが故に、押しには弱いだろう滋郎。 「助けないと……」 ぶつぶつと呟きながら、マリアは夜の町を歩いてゆく。 「待っててください、滋郎さん……。今、目を覚まさせて上げます……」 671 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 48 10 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ (やっちゃった……! ついに、憧れの滋郎君に告白したぞ……!) 裕子は、はっきり言って浮かれていた。ついに、人生をかけた告白が成功したのだ。 彼女の失恋率は100%。全ての恋が、告白の時点で破れている。 容姿のせいではない。彼女の異様な不器用さのせいだ。 彼女は人付き合いが余り上手ではなく、口下手だ。それに、身持ちも硬い。 それらがたたって、二十七歳となった今までずっと処女だった。 (これでやっと処女卒業できる! その相手は、しかもあのいかにも童貞な滋郎君……! この年になって処女童貞のカップルって、むしろ国宝級よね……。あたしたし、絶対幸せになれる。そう、これはサンタさんがくれたプレゼントなのよ!) ああ、サンタクロースよ。ひげのおっさんでいいから処女奪ってくださいなんて願ってすみませんでした。あれは思春期の過ちですから! 空に向かって、裕子は手を合わせた。 「あなた、滋郎さんの同僚のかたですよね」 妄想に浸っている間に、急に後ろから声を掛けられ、裕子はとっさに奇行をやめ、とりつくろう。 「え、ええ。そうよ。それが何か?」 「少し、お話があります」 ――大切なお話ですから、人気のないところに行きましょう。誰かに聞かれては大変です。 人気のないところに行く。男に誘われるならまだ警戒するが、相手は女。それも、若くて美しい女。裕子は警戒心を全く持たなかった。 672 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 48 40 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ 「いい格好ですね」 「あ……あんた、なんでこんなこと!」 縄で縛られた裕子を、美しい女――マリアが、生ゴミでも見るような目付きで見下ろしていた。 「何故? 決まっているじゃないですか。あなたが滋郎さんを誘惑した、淫売だからですよ」 「い、淫売ですって!? そんな侮辱……げふっ!」 マリアの蹴りが、裕子のみぞおちに直撃した。 「淫売は淫売らしく、下のお口で会話したらどうなんですか?」 マリアは、裕子のスカートをめくり上げると、さっと下着を取り去ってしまう。 「や、やめっ……むぐっ!」 そのまま裕子の口に、丸めた下着を押し込んだ。ざらざらした、布の舌触りにうめく。 その上に猿轡をはめ、マリアは立ち上がって、言う。 「さて。ここは非常に人気のない場所ですね。大変ですよ、こんな所に女性一人でいては……ねぇ、皆さん?」 『皆さん』? 裕子が不審に思って視線をそらす。 すると、どこからか男達があつまり、裕子を取り囲みはじめていた。 「ん―!! んー!!」 裕子は精一杯わめくが、言葉にはならない。 「皆さん、この女性は二十七歳にもなって処女だからコンプレックスを持っていた、不幸な人です。どうか、皆さんの聖なるつるぎで、その不幸を貫き壊してあげてください」 「んー!! んー!!!」 もう、ここまでくれば裕子にもこの先の展開が予想できていた。 しかし、予想はついても回避できない未来がある。これはそういう類いのことだ。 (ああ、神様……!) 裕子は涙を流しながら、ついに諦めた。 「駐在さん、こっちです! 今、女性が襲われています!」 と――その時、天の助けが現れたのだ。 男達は、ちぃ、と言い残し、どこかしらに消え去った。 が、いくら待っても警察はこない。おそらく、今現れた男の仕掛けたハッタリだったのだろう。 「大丈夫ですか、裕子さん」 そう言って、猿靴差をはずす男。どう見ても、その男は裕子の知った顔だった。 というか、彼は……。 「滋郎君……!」 「はい、危なかったですね」 「滋郎君……怖かったよぉ!!」 ひしと抱きつく。 「でも、滋郎君。なんでここに?」 「探している人がいて……。見失ったんですけどね。サンタの服をきた、綺麗な女の子です」 「サンタ服の……綺麗な子……?」 「はい。見ていませんか?」 「その子は……あたしを襲って……」 「襲った……? そんなまさか」 「いえ、あの子、普通じゃなかったわよ! きっと、滋郎君に恨みがあるんだわ! だから恋人になったあたしを狙ったのよ!」 怒りに打ち震えながら、裕子はまくし立てた。 「滋郎君、気をつけなきゃだめよ……。なんなら、今夜はあたしと一緒にすごさない?」 「それは……」 「こうやって、平気なふりしてるけど、あたしも正直不安なのよ。その……リンカン、されそうになったし」 「それは……確かに、ほうってはおけませんね。いいですよ、裕子さん。僕の部屋に泊まっても」 673 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 49 11 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ (マリアさんなんだろうか。やっぱり……) 滋郎は、考えていた。 裕子の話をきくと、たぶん裕子を襲ったのはマリアなのだろうと推測できる。 しかし、あの優しい女の子がそんなことを……? (僕が……。僕があんな、ひどいことを言うから……) 非常に、後悔していた。マリアが裕子を襲ったのは、自分に責任があるのではないのかと感じていた。 (もう、このまま帰ってこないのかな……) そんなの、いやだな。滋郎は、マリアに謝りたいと強く願っていた。 「滋郎君……あたし、こわいわ。一緒に寝ましょう」 「で、でも……」 「今日から、あたしたち恋人同士よ。普通のことよ」 有無を言わせず、裕子は滋郎のベッドに潜り込む。 「滋郎君、抱きしめて……。絶対、放さないで」 「裕子さん……」 裕子は、自らの服に手をかけ、取り去っていった。 滋郎の前に、その裸体が晒される。 (裕子さん、思ったより、すごい……) 裕子の身体は、普段服の上から見たよりも見事で、美しかった。 「滋郎君……あたしたち、幸せに……!」 「裕子さん……!」 674 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 49 45 ID mVrqxCHs ♪ ♪ ♪ 「四回も、中に出しちゃったのね。滋郎君、見かけによらず好きねぇ」 「裕子さんこそ、初めてなのに感じすぎです。こえ、すごかったですよ」 ――近所にも聞こえてるかも。 「……ねえ、滋郎君、あたしの身体、どうだった?」 「しょ、正直、おぼれちゃいそう、でした。この世のものとは思えないというか……」 「そうですか。うれしいです」 「え――?」 奇妙なことが起こった。 裕子が、急に口調を変えたかと思えば。その顔が――マリアのものに変わっていたのだ。 「マリア……さん……?」 「はい。そうです。滋郎さんが今まで獣みたいに犯し尽くした女が、わたしです」 「……ど、どうして……? いつから、入れ替わって……?」 「裕子さんを家に連れ込んだ後、ころあいを見計らって、です。滋郎さんと自然に近づける状況があれば、それでよかったですから。それと、裕子さんなら無事ですから、安心してください。死んじゃったら、滋郎さんの日常に支障をきたしますから」 「どうして……」 「まだ、わからないんですか……?」 マリアは、再び――偽の裕子だったときにしたように――滋郎に跨った。 「滋郎さんを、ずっとずっと……見てきたんですよ。愛していたんですよ」 腰を動かし始める。 「ああっ……滋郎さん……滋郎さんなら、わたしが妊娠したら、責任とってくれるって、確信してるんです……あんっ……!」 「うっ……き、きみはっ……」 「ゆ、裕子さんの存在を知って……あ……最初は……殺したくなるほど……あぁ……憎みました……。でも、利用価値に、気付いて……感謝しました」 マリアは興奮状態のまま、膣の収縮で滋郎のモノを締め付ける。 ねちっこく、絡みつくように。 ――もう、はなさない。 「これは、人間になって、恋をしたわたしへの……プレゼント、なんです」 思い出したのは、祖父の言葉だった。「恋をする人の光は美しい。そして、美しい光をもつものは、きっと誰よりもすてきなプレゼントを授かるだろう。 すなわち、それは彼女のパーソナルギフト(サンタとしての特殊能力)である『幻惑』で滋郎を錯覚させ、性交に及ぶ機械を与えたこと。これは、今までどおり女たちを排除していては無理な戦法だった。あくまで、恋人の裕子なしには成立しないのである。 そして、もうひとつのプレゼント。 「今日、すっごく危険日なんですよ。こんな日にいっぱい中に出されて……わたし、赤ちゃんできちゃうかもしれません」 マリアは、神に感謝した。 彼女は人間化が進んでいたというのに、サンタの能力たる『ギフト』を使うことができた。これは、殆ど奇跡のようなものだ。 彼女の作戦にはこの幻惑能力が必要不可欠だった。彼女が失った透視や透明化を差し置いてでも復活すべき能力が、これだったのだ。 そして、彼女は賭けに勝った。 裕子の存在、能力の存続、そして、危険日。 これらの要素が揃ったこと。これは、もはや神か、あるいは天国の祖父がくれた、プレゼントだとしか思えなかった。 ――そういえば、『幻惑』能力は祖父から隔世遺伝したんだっけ。 (まあ、そんなのはどうでもいいんです) 今は、とにかく、滋郎との性夜を楽しまなければ。 「あ……滋郎さんの、熱い……!! 赤ちゃんできちゃいます……!」 これからは、今までの。十一年間のツケを、たっぷり身体で払わせてやろう。 マリアは、今、幸せだった。 おわり 675 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 52 17 ID mVrqxCHs ちょっと淡白すぎたかなと思いますが、よく分からない部分は、たぶん次回投下するもう一つのサンタ物の短編で補完されます。 本来そっちから書き始めたので、サンタの設定やマリアの行動についてなどは、そっちで説明がなされると思うので。 文章も非常に淡白ですが、絵本っぽくしようと無意味に工夫した結果の賛辞です。 次回は改善します。 676 名前:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI [sage] 投稿日:2008/12/26(金) 00 52 47 ID mVrqxCHs 賛辞→惨事 でした。失礼しました。 677 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/26(金) 01 00 59 ID DRUfW3Yq 674 GJ! 大変美味しくいただきました。 678 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/26(金) 01 03 45 ID 3OaICsMd GJ!! 679 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/26(金) 02 26 47 ID M6QiPY5I 674 GJ!!! 680 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 01 17 54 ID hNv0s7Dg GJ! 681 名前:名無しさん@ピンキー ◆m6alMbiakc [sage] 投稿日:2008/12/27(土) 02 54 52 ID y0ytdvCE 初めて投下させて頂きます。 どうかお手柔らかにお願いします。 682 名前:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc [sage] 投稿日:2008/12/27(土) 02 57 36 ID y0ytdvCE 狂っている。そうとしか形容のしがたい状況に追い込まれてしまった愚か者、それが俺、大沢 宗佑(おおさわ そうすけ)だ。 「あはははっ」後ろから聞こえてくる、乾いた笑い声が聞こえてくる。しかしながら、その笑い声は俺にとっては恐怖以外の何物でもない。 「くそっ!」今さっきの笑い声にびびり、足がもつれる。 衝撃。 見事なこけ方をかました体には、擦り傷が多く付いているが、そんなもの気にしてもいられない。なぜなら、後ろから追って来ている笑い声の主に捕まるほうが、億倍危険だからだ。 「そーちゃんみっけ!」しまった。そうとしか言いようのない。コケた際にずいぶんと距離をつめられたらしく視認できるほど近付かれていた。 いそいで逃走を開始する。後から再び声がする「そーちゃんどうして逃げるの?」 お前が危険なやつだからだ。声に出さずに即答する。 そもそも、なぜ追いかけられているのか、それすらはっきりとしていない。 何をどこで間違えたのか、それを思い出してみることにする。 § § 俺と、相良 風深(さがら ふうか)とは家が隣というそれだけのことだった。 昔から、仲良しだった俺たちは、小学校、中学、そして高校の登下校はほぼ毎日一緒だった。 小学校の頃から、俺は風深の世話役のようなものだった。 まあ、頼られることは正直、悪い気はしなかった。 そんな感じで、高校生活も2年目を迎えた、ある日のことだった。 「好きです」 突然、言われた言葉。断じて、頭に花畑が十個くらい咲き乱れているような幼馴染から言われた言葉ではない。 目の前にいて、聞きなれない言葉を言ったのは、一谷 日出(いちたに ひので)さんだ。 学校の中でも五本の指に入るとさえ言われる、美人から告白されたのだ。実感が湧くわけがない。 「ええっと・・・。こちらもよろしくお願いします。」 とりあえず、実感の湧かないまま了承する。 返事を聞いて、一谷さんの顔に一輪の白い花が咲いたかのように、綺麗に笑った。 「ありがとう・・・。」 か細い声だが一谷さんが返してくれる。 どうにも実感が湧かないが、心臓が高鳴り、痛いくらいなので夢ではないのだろう。 俺はそのままのご機嫌な気持で今日という日をすごした。 § § 「よう、ソースケ!!聞いたぞ。お前、一谷さんと付き合うことになったらしいじゃないか!」我が悪友の、裕司が次の日の朝いつも通りの調子で、話しかけてくる。 いったいこいつの情報は、どこから仕入れてくるのか疑問に思うくらい情報が早い。 「お前は、一体どこからそんな話を聞いてきた?学校中に監視カメラでも仕掛けているのか?」あきれ気味に問う。 「まさか!」裕司はとんでもないといった風に返し、続ける。 「そんなものを使うくらいなら盗聴器のほうが・・」「もういい、黙ってろ。」 なんとも変態じみた裕司の声を耳からシャットアウトし、我が麗しの一谷さんに目を向ける。 「おやおや。」ニヤニヤ笑いの裕司が話しかけてくる。 うるさい、馬鹿、黙っていろ。人の考えている途中に口を挟むな。 さすがに声に出すのは躊躇われた。とりあえず、鬱陶しいので振り払う。 「で?風深ちゃんはどうすんの?お前とは夫婦のようなもんじゃねえか?ん?」 しつこく纏わり付いてくる裕司に半分あきれ気味で返してやる。 「だから、俺と風深はそんなんじゃないって。」 「おやおや、毎日一緒なのに夫婦じゃあないと?」 「そうだ。」 うんざりしつつも、返答する。 「ま、せいぜい後からナイフで『グサッ』なんてことねえようにな。」 「はいはい。」適当に返事をして、気持ちの悪い笑い方をしている裕司を、頭の中から排除する。 それにしても、風深にこのことを放すとどういう反応を示すか楽しみだ。 「ねえ。」おっと、どうやらちょうどいいタイミングで、風深が来たようだ。 「なあ風深、俺な・・。」「一谷さんと付き合ってるってほんと?」 こいつ何で知ってるんだ?まさか、裕司の言うように盗聴器を仕掛けているのかもしれない。そう思うと、けっこう怖いな。 少し躊躇いながらも、返答する。「ああ。俺も信じられないがな。」「ねえ、なんで。」 「ん?」何でって聞かれても、何を?「なんで。何で私の気持ちに気づいてくれないの?」 「はあ?」おいおい、俺とおまえは、ただの昔からの友達だろ。何を言ってるんだ、本当に。 その旨を伝えると、何故か風深は涙目になって教室から出て行った。いったいなんなんだ。 683 名前:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc [sage] 投稿日:2008/12/27(土) 02 58 59 ID y0ytdvCE ・・・・放課後 そのまま風深は教室には、帰ってこなかった。 まあこういう日もあるさ。今日は一谷さんと一緒に帰ろう。 ここは、学校前の坂。俺の左手には一谷さんの右手が握られている。 やわらかく透き通りそうな肌から伝わってくる体温。やばい、なんかドキドキしてきた・・・。 「あ、あの・・・。一谷さん?」どもりながらだが、何とか口を開く。 「えーと・・、一谷さんの家ってどの辺りにあるの?」一谷さんとの親睦を深めようと話しかける。 「そーちゃん。」後から突然話しかけられる。 振り向いた先には、目に光のない幼馴染が立っていた。 「ねえ、そーちゃん。なんで?なんでなの?」 おまえは何が言いたいのかがわからない。「風深、何を言っているんだ?」 風深はにこりと笑い、「そーちゃん。大丈夫。私がそーちゃんをつけ込む泥棒猫には制裁を加えてあげるから。」とつぶやき、包丁を懐から取り出す。 なんだか、危険な感じがする。逃げなければと本能が告げる。 「一谷さん、逃げるよ。」「う・・・うん。」手を握り締めて走り出す。 「そーちゃん。そんな汚らしい女の手なんか握っちゃダメなの!!」 後から狂ったかのような声が聞こえてくる。 包丁を振り回す風深から、逃げようと必死に走る。だが、異様に早い風深の動きは俺たちを捕捉する。 「一谷さん!!!」ふとした瞬間に手から一谷さんの手が離れる。 「あはは!!」遅かった。完全に捉えられてしまった、一谷さんは、銀色に光る刃に切り裂かれて、鮮血を飛び散らせる。 「あは、あははははは!そーちゃん、ねえ、嬉しいでしょ?ねえ?」動かなくなった一谷さんを、蹴り飛ばしながら、ゆっくりと近づいてくる。そう、時間と呼吸の止まりそうなくらいの恐怖が、ゆっくりと。 「くそっ!」 毒付いて、そのまま全力で走る。 近づいてくる風深を押し飛ばし一谷さんに駆け寄る。 しかし、目からは光が消え失せ、鼓動を知らせる脈は絶えていた。 「そーちゃん、何でそんな女なんか庇うの?」「うるさい!!」俺は、怒りを声に乗せて、風深へと振り返る。 そこに立っているのは、もはや親しい幼馴染でも、正気を保った人間でもなかった。 包丁を持った右腕からは、一谷さんの血が垂れ落ち、こちらをまっすぐと見る目からは、後悔の念など浮かんではいなかった。 「そーちゃんはいつもそう。誰かのために怒る。泣く。悲しむ。 私がつらい時だって、同じように悲しみ、励ましてくれた。 でも、そんな女なんかと一緒にいたら、そーちゃんが汚れちゃう。そーちゃんも汚れたくないよね?」 風深が一気にまくし立てる。 「おまえ・・・、狂ってやがる・・・。」俺は心の底からの本音を、言葉に出す。 直後、風深の動き、呼吸、何もかもが止まった気がした。 事実、止まっていた。 「あは・・・・、あはは・・・・、そーちゃんがそんなこと言うはずが無い。 そっか・・・、そーちゃんはもうあの女に汚されちゃってるんだね?そうだよね? そうじゃなきゃ、私にそんな言葉、言うはずないもんね?ねえ?」 だめだ。もはや聞く耳も持っていない。 「ねえ?そーちゃん?汚れてるのはそーちゃんも嫌だよね?だから、私が責任持って元に戻してあげるから。」近づいてくる。当然、俺は一歩ずつ後ずさる。 「なんで?何で逃げるの?ねえ?なんで・・・。」風深がさらに距離をつめようと走ってくる。 やばいと本能が告げている。俺は、背を向けて走る。 「あはは!」 後ろから、笑い声。 そして、冒頭へと話がつながる。 684 名前:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc [sage] 投稿日:2008/12/27(土) 02 59 53 ID y0ytdvCE 回想終了。結果、俺はどこで間違えたのかが理解できない。 とりあえず、この地獄の鬼ごっこから逃れることに専念しようと、決心する。 後ろを振り返るが風深が追ってきている様子は無い。 「少し休もう。」疲れているのか、思わず独り言を口から漏らす。 前に向き直ると、そこには風深が立っている。 「な・・・。」「そうだね、鬼ごっこはやめて、休もうか。」 俺はとっさに逃げようとする。 だが、背中を向けた直後に鋭い痛みを感じて、体が倒れていく。 意識が薄れる中、かすかに残る視界には、影を含んだ幼馴染の笑みだった。 § § 「ん・・・?」まぶたが開き、微弱な光が差し込む。 薄暗い部屋だった。おまけに、窓ひとつ無い。 とりあえず、ドアを開こうといすから立ち上がろうとする。 だが、出来なかった。できるわけが無い。椅子に縄で括り付けられ、おまけに後ろ手に手錠という、状態だったからだ。 がちゃり、ドアが開く。こんな馬鹿馬鹿しいことをした愚かな奴を目にしようと、開いたドアを凝視する。 居たのは、最も可能性がある、だが、同時に最も居て欲しくなかった奴が立っていた。 そう、風深だ。 「そーちゃん。」風深がさらに続けようとする。だが、その言葉を遮り、言葉を出す。 「何でこんなことをした。さっさとここから出せ。」怒りを抑えた声で、問いかける。 「だめ。そーちゃんは、私とこれから住むの。 でも、そーちゃん、恥ずかしがり屋だからすぐ逃げちゃうでしょ? だから、こうしたの。そーちゃんも実は嬉しいでしょ?」 なにを言ってるんだこいつは。まったく理解が出来ない。 「冗談ならこの位にしとけ。でないと、警察沙汰になってロクなことに・・・。」「そーちゃん。」 今まで聴いたことのないような、冷たい声で中断させられる。 不意に、ふわりと抱きすくめられる。 「私は、そーちゃんのことが好き。大好き。 だから、私以外のことを考えないで。私のことだけを見て。ね?」 肯定しか許されていない質問だった。 何も言えない俺を、ただ風深は抱きしめていた。 ずっと、ずっと。 685 名前: ◆m6alMbiakc [sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 02 45 ID y0ytdvCE 投下終了です。 稚拙な文で申し訳ありませんでした。 686 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 08 42 ID c283yFLf GJ 次はエロを期待してる 書き手が増えるのは良いねぇ 687 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 12 00 ID m+Mb33Nu さがら・・・そうすけ・・・? 688 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 25 27 ID QziZd2WZ GJ!! 申し分ないSSでしたよ!!!もっと自分に自身を持ってください! 689 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 38 23 ID rBMVIG99 685 GJ! 文章が素直で読みやすかったです。 もっと掘り下げて語れる設定だけに、長い文章を読んでみたかったかな。 今後の活躍に期待します。面白いSSが書ける人だと思います。 エロ描写にも挑戦してくれると嬉しいかな。 ただ、頑張っているだけにちょっとだけ苦言も。 文章を書くに当たって、ちょっとだけ知っておくと良いルールがあるんです。 (1)「 」台詞の最後に句点をつけない 「おやおや。」のように「」台詞の最後に通常句点はいりません。「…。」等も同様です。 結構、気にする人もいるので、無くされた方が良いかと思います。 (2)台詞の引用、状況の描写の改行に一貫性を持たせる。 改行する部分にかなりばらつきがあり、文章全体が読み辛いものになっていたように 感じられます。 台詞では「」を2度続けないとか、「」の後の情景描写や心理描写を改行後に繋げるとか すると、読み手も読みやすく助かります。 では、今後も頑張ってください。 690 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 03 51 19 ID c283yFLf 荒れるだけだから反応するなよ もういくつ寝るとお正月。 大晦日もやはり監禁で 691 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 05 14 49 ID 74xTZfg/ 691そして除夜の鐘を監禁されながら聞くのですね、わかります 692 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 08 37 21 ID Mxsq1x2g 691 おめでとう、来年はヤンデレ娘といい年を迎えられるだろうよ 693 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 14 02 00 ID /gFssgqk むしろ鐘の中に監禁される。 694 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 17 35 57 ID PmyEaVGn 693 嫉妬に狂った女が蛇になって鐘の中に隠れた男を焼き殺す的な話って何だっけ? 695 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 18 33 28 ID m+Mb33Nu ソウルイーター 696 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 00 19 36 ID tzlnWr1P 689 改善点を分かりやすく挙げていただきありがとうございます。 参考にさせていただきます。 694 おそらく安珍・清姫伝説では? 697 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 00 24 16 ID 8a8854su ヤンデレの好意を無視し続けるとどうなるかよくわかるお話です 698 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 49 35 ID LjD7YQ3b しれっとクリスマスSSを投下します 699 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 50 35 ID LjD7YQ3b 世の中はクリスマスだったらしい。 俺は年末の忙しさに忙殺され、ケーキなぞ食う時間もなくすでに太陽が昇り始めた高速道路を家へと向かい車を走らせていた。 すでにこの仕事について3年ほどたち、この勤務体制にも慣れてきたが流石に3日も会社で寝泊りを繰り返していると憂鬱になる。 俺一人ではないにしろ、男ばかりの職場なので安らぎもなにもない。 そんな中でやれクリスマスだプレゼントだとはしゃいでいる輩は、俺からすればよく年末に遊んでいられるなといった感じだ。 まあそんな華やかな行事は性に合わないので、逆に今くらいの忙しさが俺にはあっているのかもしれない。 そうこう考えている間に高速道路が終り、国道へと降りた。 そういえばこの近くに新しくコンビニができたなと思い出し、せめて一日遅れのクリスマスを過ごそうとそこでショートケーキを買う事にした。 車を停め、外へと降りる。他に誰も車を停めていなかったが、念のため車の鍵を閉める。 息を吐くと白い湯気が顔の前に立ち上り、すぐに空気と混ざって消えた。冬というもあるが、朝方という最も寒い時間帯だ、いつまでも外にいるのは体によくないと店内に歩を進めた。 700 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 51 22 ID LjD7YQ3b よく聞くあのなんともいえない電子音と店員のいらっしゃいませという言葉と共に俺は店内に入った。 店の中は温かく、おでんやら中華まんのにおいがした。そういえばろくに飯を食ってなかったと今になり空腹感を覚える。 なにか簡単に食べれるものも買っていくことにした。 レジの脇にある弁当売り場からおむすびを2つ、シャケとオカカを手にとり、そのすぐ隣にある洋菓子などが並べられているコーナーから売れ残っていたのであろうショートケーキをひとつ掴むと、 それをレジへともっていく。 商品をレジに置き、財布をポケットからだす。ふと顔を上げると店員と目が合った。 店員はなにか俺の顔についているのか、最初の数秒まじまじと俺の顔を眺めていたが、思い出したように商品を清算していく。 たしかに最近は忙しくてろくに寝てもいなかったが、まじまじと見られるとそうとう酷い顔をしていたに違いない。 今日と明日は休みを貰ったのでゆっくり休む事にしよう。 会計で475円ですと言われたので、財布から小銭を探す。ちょうどの代金を払い、袋を持ち店をでようとすると袋の中に買った覚えのない栄養ドリンクが入っていた。 「あの、これ買ってないですが?」 そういうと、うっとりとしたような笑みを浮かべながら、 「いえ、これは私のサービスです。ちゃんと休んでおかないと体壊しますよ?」 「はあ、それはご丁寧にどうも。それじゃいただいておきます」 折角相手の厚意でくれるというのだから貰っておく事にした。それに夜勤明けで断る体力もなかったともいえる。 こんなご時世だから人と人との助け合いが大切なんだろうな、これからはあそこのコンビニをひいきにしようと名もしらぬ店員の優しさをかみ締めながら家へと帰ることにした。 不思議と外の寒さも気にはならなかった。 しかし、家についた俺はせっかくもらった栄養ドリンクやショートケーキも口に入れる事なく布団へ倒れこんだ。 予想以上に疲れが溜まっていたらしい、俺の意識はすぐに夢の中へと堕ちていった。 701 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 52 08 ID LjD7YQ3b 変な夢を見た、俺に娘ができる夢だ。しかも5歳くらいの娘がだ。 朝から晩まで俺の後をテコテコついてきてなにをするにも一緒である。 娘はとても可愛らしく、俺の遺伝子をどういじくればこんな子供ができるのだろうというくらい可愛らしかった。きっと母親が美人なのだろう。 だが、夢のなかにその母親はでてこず、家の中に俺と娘とでふたりきりだった。 おままごとだったり、お馬さんごっこだったり、とにかく時間が経つのも忘れずっと娘と戯れていた。 しかしふと思い出したように、俺は仕事をどうしたのだろうという気になった。夢の中でも俺は社畜なのかと嫌気がさしたが、 夢の中でも今の会社に勤めていたのだったら他の人に迷惑をかけていることになる。課長にはよくしてもらっているのでなおさらだ。 いまから一度会社にいってくると娘に告げると娘は頑なに拒んだ、小さな瞳を涙で潤ませ、俺の目をみていやいやをするのだ。 母親がこの夢にはいないのでひとりになるのはこの娘も嫌なのだろう。 娘は俺の手にしがみつき、俺を仕事にいかせまいと必死である。さて、どうしたものかとしばらく困り果てていたが、これは夢である。 そうであれば、別に無理に仕事にいくこともないかと先程の決意をあっさりと曲げ、今日はこの娘と一緒にいることにした。 俺が諦めるのを感じ取ったのか娘は俺の手を放し、またさっきのようにコロコロと笑い出した。しかし本当に可愛い、嫁にだすのが今から惜しいと思うほどだ。 色々と気になることもあるが、今はこの娘と戯れる事にしよう。そう思い、俺はまた娘と遊び始めた。 視界がごろんと回転し、夢から覚める。せっかく娘とオムライスを作っていたというのに。 俺はベットから上半身を床に投げ出す格好で目が覚めた。 そのままズリズリと下半身も床に落とし、体が天井へ仰向けな格好になる。 ガバッと勢いよく体を起こす。不味い、時計はどこだ、完全に遅刻だ。急いで目覚ましを引っつかみ時間を確認する。15時21分。 いったいなんでこんな時間まで寝てたんだ、俺は。目覚ましのアラームは、なんで今の今まで俺は寝てたんだ。 俺を起こさなかった目覚ましを乱暴に放り、軽いヒステリックを起こしながら駆け足で洗面所に向かう。 幸いスーツのままで寝ていたので着替えに時間をとられることはない。 あとは髭をそってさえ行けば大丈夫なはず、飯は昨日買ったおむすびがあるはず。 ん?おむすびを昨日買った?そんで昨日はクリスマスで、俺はショートケーキを買って… ふう、とため息をつく。なんだ、そういえば課長が俺に気を使って2日間の休みをくれたんだ。 だがこんなに血相をかいて飛び起きたりするなんて、やっぱり日ごろの習性ってのはなかなか抜けないもんだ。 いくら休みだと頭に言い聞かせても、体はいつものようにしっかりと動く。 だが、これじゃまるで仕事が俺の人生みたいじゃないか。 確かに、仕事は辛いが給料はいい、だが金を溜めたところで特に使う道もなく、毎日体をすり減らして働く。いつからこんなに夢がない人間になったんだろうな。 「なにやってるだろうな。俺」 だれもいない、寝て起きるだけの部屋で俺は独り言を漏らした。 「なら、やめましょうよ。無理に疲れて生きるより、自由に素直に幸せに生きましょうよ」 突然、誰も居ないはずの俺の部屋から返事が返ってきた。本当に唐突のことだったので、体がびくりとはねる。 そしてゆっくりと声がした方向へ体を向ける、そこには見覚えのない女性が立っていた。 「おはようございます、ゆっくり眠れましたか?」 「きみは誰ですか?どうやってこの部屋に入ったんですか?なんで俺の部屋に?」 もっともな質問が口からでる、そりゃ見知らぬ人間が自分の家に居て、突然自分の後ろに立っていたら驚くだろう。 物騒な世の中だ、なんの目的もなく他人の家に入りはしないだろうし、要件次第じゃ警察を呼ぶ事も考えにいれておいた。 「そんなに矢継ぎ早に質問をされても困っちゃいますが、一つずつお答えします。 まず最初の質問ですが、私は久野巴です。さっきまでコンビニで正社員をしてましたがやめちゃいました。 次の質問ですが、玄関の鍵が閉まってませんでしたよ?そんな無用心だから簡単に部屋に入れちゃいました。 最後の質問ですが、好きだからです、このさい私と結婚しましょう」 一応俺の質問に全部答えてくれたようだけど、どこかずれている気もする。 一部おかしな返答もあったし、なんなんだろう。やはり警察に通報した方がいいのだろうか。 考えるにも、こういう手合いの人間は初めてだ。だから俺はとりあえず 「まあ、立ち話もなんですし。座って話しましょう、コーヒー飲みますか?」 コーヒーを交えて、話し合うことにした。 702 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 53 15 ID LjD7YQ3b 飯台の反対側に久野さんを座らせ、今後の俺たちの関係をどうするか話し合うことにした。 一応コーヒーはドリップ式で結構値の張るものを使っている。湯を二人分のカップに注ぎながら俺は再度久野さんに質問をした。 「いつから俺の部屋に入ったんです?というより赤の他人の、しかも男の部屋に躊躇なく入るってどういうことですか。若い女性がそういうことしちゃいけないですよ」 「あなたが寝てからしばらくしてからですかね。家の鍵も空いてたので駄目だとは思いつつやっぱり入っちゃいました。 あと、実はなんどか会ったり話したりしてます。たぶん覚えてないと思いますが。だから赤の他人とはいいません。それに私貞操観念硬いですよ、未だに純潔です」 たとえ純潔でも、数回会っただけの男の部屋に入ってる時点で十分軽いのではないだろうかと思うが、どうなんだろう。 それにこの会話のかみ合わなさ、なにか事情があるのだろうか。 コーヒーを蒸らしながら次の質問をする。 「好きってどういうことですか、さっき聞いたぶんには俺に惚れる要素なんて皆無じゃないですか」 「そんな、人を好きになるっていう事に時間とかを持ち出すなんてナンセンスですよ。 しいて言えば最初は生き生きしていた貴方の顔が日を重ねるごとにやつれていくのにですかね。その顔をみていたらぞくぞくしてきちゃって、 どうしようもなくあなたと幸せになりたくなりました」 やっぱりどこか感性がおかしい人だ、と思いながらコーヒーが出来上がったので久野さんにお出しした。 「どうぞ」 「どうも、温かいですね。こんなに温かい飲み物を入れることもできるんですね。真心がこもってます」 そういうと、顔に満面の笑みを浮かべながら、久野さんはコーヒーをすすった。 「そういえばさっきから私が質問に答えてばかりですね、そろそろ私が質問をしてもいいですか?」 まあ、たしかに変な人だけど悪い人じゃなさそうだと思い。俺はその要望に応じる事にした。 「変に俺の過去に突っ込んだ質問でなければいいですよ」 「それじゃあ、なんで私がプレゼントした栄養ドリンクを飲んでないんですか?」 栄養ドリンク?はて、そんなもの貰った覚えはない………と思ったが、確かに貰ったな。あの店員は久野さんだったのか。 「ああ、あの店員さんは久野さんでしたか。家に帰ったらすぐに寝ちゃったのでまだのんでませんよ?」 「やっぱり覚えてないんですね。予想はしてましたが、いつだって私はあなたの目を見て話してるのにそれに気づきもしない。私は寂しいです」 久野さんはおもむろに立ち上がり、それでその栄養ドリンクはどこに置いたんですか?と訊ねてきた。 「それならコートの下のレジ袋の中に」 それを聞くと久野さんは俺のコートをとり、いったん綺麗にたたんでからレジ袋の中の栄養ドリンクを取り出した。 「まったく、私が色々と元気になってくれるように作った特性のドリンクをなんですぐに飲んでくれないですか」 少し怒ったような口調でカリカリとドリンクのキャップを開けてながら、俺の隣に座る久野さん。 703 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 53 54 ID LjD7YQ3b 開けおわったキャップを飯台におき、グイッと自分の口に入れる。俺に飲ませるためにくれたのではなかったのかと疑問に思っていると、 久野さんの顔が俺の顔に重なり、唇を奪われた。 あまりにとっさのことだったので反応しきれず、そのまま唇をこじ開けられる。 久野さんの舌がドリンクと共に口内に入ってくるのが分った。駄目押しに鼻をつままれる、こばもうととするも、息苦しさから長続きせず、そのまま口の中のものを飲み込んでしまう。 飲み込んだのを確認したのか、鼻をふさぐ指は解かれたものの、唇は重なったままだった。 人付き合いが苦手でいままで彼女なんてできなかった俺が、女性とディープキスなぞできるはずもなく、俺の唇はただ彼女に蹂躙される。 むさぼるように唇を求めながら彼女は俺の口内のいたるところに舌を這わせ、何度も何度も俺の舌を吸い上げた。 ひとしきり、キスをしつづけた後、唾液の糸を引かせながら唇をはなす。それを俺の唾液ごとすするように飲み込んだ。 「飲みましたね?ちゃんと飲み込みましたね?私とキスしてくれましたね?私も初めてだからうまく出来たか分かりませんがとにかくキスしましたね。 いいんですうまく出来たかなんてことは、これから二人で上手になっていけばいいだけなんですから。でもちゃんとあなたからも求めて欲しかったです。 今度はちゃんとあなたからもキスしてくださいね?」 そういうとぽかんと開いたままの俺の口はまた彼女の唇でふさがれた。 求めろといわれても、こんなムードもへったくれもない状況でどう求めればいいのか分らなかったが、とにかく相手の舌に動きをあわせてみようとした。 もとより性欲が強いほうではなかったが、仕事仕事の毎日で俺のなかにも溜まるものは溜まっていたらしく、彼女とのキスで俺の男もその存在を主張しはじめていた。 俺の舌の動きを感じた彼女も、俺を押し倒し俺の頭を両手で抱きしめてきた。心なしかさきほどより彼女の体が熱を帯びてきたように思えた。 いや、駄目だろ。普通であったばかりの男女がこんなことしちゃ、風俗じゃあるまし。常識から逸脱している。 手遅れながらも働き出した理性で、俺の顔に張り付いてる久野さんの顔を引き剥がす。むぅと艶のある声で抵抗されても構いはしない。 「どうしたんです、途中からのりのりだったのに。いきなりやめちゃうなんてムードぶち壊しですよ」 「いやいや、やっぱり駄目でしょう。それに久野さんはこの状況にムードを感じてたんですか?」 久野さんは唇を指で拭いながら、恍惚とした表情で 「久野さんだなんて、他人行儀ですね。巴でいいですよ。それにふたり一緒ならいつでもムード満天じゃないですか?」 やっぱりこの人どこかおかしいですよ、部屋に入り込まれた時点で外に追い出すべきだった。 「もうやめましょう、帰ってください。俺は好きでもない人にこんなことされても嬉しくないです。それにこういうことを軽い気持ちでする人は嫌いです」 「嫌い?私のこと嫌い?そうなの?」 「はい、俺はそういう人が大嫌いです」 そっか、とつぶやき久野さんの顔に笑みが張り付く。昨日俺に栄養ドリンクを渡した時のような妖艶な笑みだった。 「しかたないよね。そう、しかたない。でも大嫌いとまでいわれちゃと流石に傷ついちゃなあ」 笑みを浮かべながらおもむろに尻ポケットを探る久野さん。次の瞬間何かを腹に押し付けられたと思うと、鋭い刺激が走りみるみるうちに俺の意識は混濁していった。 視界が完全に閉じる瞬間に見えた久野さんの瞳は暗く濁り、その色が暗転した俺の意識と混ざっていく。 意識が夢に落ちていく間際、大丈夫絶対幸せにするよ?、という囁きが聞こえた気がした。 704 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 54 28 ID LjD7YQ3b ああ、またこの夢か。俺はまた自分の娘と戯れていた。 娘は俺の膝の上にちょこんと座っており、俺はこの娘に本を読み聞かせていたようだ。 そういえばまだ、オムライスを作ってなかったな。時計を見るとちょうどお昼時、よし今度こそ作ろうか。 俺がそういうと、娘は大きくうなずきキッチンへとかけていく。転ぶとあぶないぞと声をかけながらそれを追いかける。 キッチンにいくと、内装こそ変ってないがやはり食器や調理道具が増えている。実際の俺はパスタをゆでる深鍋なぞ買っていなかった。 冷蔵庫を開けると、都合よく卵やその他野菜類が置いてある。流石夢だな、欲しいものが事前にそろっているとは。 娘と一緒に野菜を切りそろえていく、包丁も鉄の出刃包丁ではなくプラスチックの可愛らしい奴だ。 身長が足りてないので、小さな脚立を使いながら器用に包丁を使う娘。こういう手先の器用さは俺に似るのだなと思い、にやりとする。 野菜を炒める段階になり、娘がやりたいといいだすが、流石に火を使わせるのはまだ早いだろうと思いそれを制止する。 渋りながらも了解する娘。このどことない強情さは母親に似たのだろうか?俺はもう少し聞き分けがいいと自分では思っている。 てきぱきと野菜をいためていき、そこに1人前強のご飯を入れる。あとは男の料理でコンソメとケチャップをぶち込む。 出来きた似非チキンライスを皿に盛る。次は卵だねと、娘に卵を割らせてやることにした。 幼いながらも卵を慎重にひびをいれ、カパリと割る。やっぱり器用なところは俺に似たなと、親馬鹿じみた考えが浮かぶ。 夢の中なのにいやに現実感があるなと疑問を抱きながらも娘が割った卵を溶き、再加熱したフライパンに落とす。 高温のフランパンで急速に固まっていく卵を崩しながらフライパンの端によせ、ひょいひょいとオムレツ状にしていく。 昔は自炊もしてたが、最近ろくな飯をくってないなとふと現実にもどされそうになるが、夢の中くらい現実を忘れようと出来上がった半熟オムレツを似非チキンライスの上に乗せる。 さあ食べるぞ、と飯台へとオムライスと運ぶ。娘にはスプーンを二つ持たせてだ。 ここでも一つ気づいたが、俺の家には丸型のクッションなぞ置いてなかった。それも丁度3つ。はて、この娘の母親はどうなったんだろうか? そんなことを考えていると、娘が早くたべようと膝の上から俺の襟を引っ張っていた。 そうだねと笑顔で返し、いただきますを言う。作法も小さい頃からしっかりとせねばな。 オムライスのオムレツの部分をスプーンで割っていく、こうすれば半熟のオムレツがとろけるように自らの重さでチキンラスを包むはず、はずなのだ…… しかしこのオムレツは半熟ではなく、完全に固まったオムレツに成り下がっていた。きっと余熱で固まったんだなと自分を擁護する。 「パパ駄目だね」という娘の心無い一言が胸に刺さる、こういうぶっきらぼうなところまで俺に似なくていいのに思う。無駄に現実感あるんだよな、この夢。 「パパ頑張ったけど上手く作れなかったよ、でも味は一緒だから食べようか?」 気を取り直して食べようと膝の上の娘の顔を覗き見る。うん、と元気よく返事をした娘の顔が俺の顔を見つめ返した。 眉や顎のラインはたしかに俺に似ているが、この目じりがやんわりとさがりった目元は母に似たのだろうか? そう思うと何か心あたりがあるように思え、しばらく娘の顔をまじまじと見る。ここまで出掛かっているのに、見覚えがありながらも思い出せない。 もどかしさを覚えながら、頭の上に『?』マークを浮かべている娘の目を見る。この目、目なのだ。きっとこの目が最大のヒントだろう。 そう思いもっとよく見ようと顔を娘の顔に近づけようとした時、 俺の意識は覚醒した。 705 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 55 45 ID LjD7YQ3b まずいつもの天井があった、味気の無い俺好みのベージュの天井。この色に惚れてこのマンションに契約を決めたのだ。 しかし色々とおかしな夢ばかりみたものだと思い、体を起こそうとして俺は自分の手足がベットの四隅に貼り付けにされているのに気がついた。 いつから俺は自分を縛り付けなきゃ寝れなくなったのだと思い首を真横に傾けると、夢の一部は夢でなく現実であったと気づかされた。 両手で頬杖を付いた久野さんの顔がそこにはあった。意識を失ったときに見たあの笑顔のまま、今も俺を見つめているのだ。 「起きました?どうです、体の方も調子がいいでしょう?」 「貼り付けられた状態で、どうやって体の状態を確認しろっていうんだよ」 「あ、その口調。敬語じゃなくなってますね。少し私たちの関係進展ですね」 さらに顔を緩ませ、嬉しそうに微笑む久野さん。いや、もう「さん」は要らないな、久野で十分だ。 「でも、もっと進展しますよ。なにせ私たち結婚するんですから、夫婦のスキンシップは大切です。 さっき体の状態なんて分らないっていってましたけど、ちゃんと目に見えるくらい元気ですよ。ほらこんなにいきり立ってるじゃないですか?」 そういうと久野は、俺の分身をさすり上げる。なにか寒いと思ったら、俺は全裸だったのかとその原因に納得する。 しかしいつからこの状態なのか、さすがに凍死はしないだろうが衰弱くらいしていてもおかしくはない。 でも今の俺の状態を見るに、そんな様子は毛ほどもない。久野の栄養ドリンクが本当に効いているのだろうか? 「あの栄養ドリンクになにを入れた?真冬に全裸でいて肌寒いとしか感じないなんて異常だぞ?」 「普通の栄養ドリンクをベースに、巷で話題の精力増強剤を各種混ぜ込んでます。味もちゃんと飲んでも美味しいように結構頑張りました。実際美味しかったですよね?」 あんな無理矢理なディープキスをして飲まされたもの味なんて覚えてるわけないだろう。鼻だってつままれてたしな。 それにおかしいぞ。混ぜ込んだってそれなら普通蓋を開けるときにキャップがガリガリとはいわんぞ。 「普通に工場の人に頼んだらやってくれましたよ?」 頼んだって、さっきから普通普通とこともなげに危ないことを言われてもな。一般人の頼みを聞いちゃいけないだろ、俺の系列の会社に頼んでなきゃいいがな。 「ラベルだって私のオリジナルなんですから、手作りです。さっきは軽いとか言われましたが、これでも軽いとか言いますか?」 たしかにただの一般人がここまでのことはしない、それこそ普通は。だが言動の節々から薄々久野が普通の人間じゃないってことには気づいていた。 いままでの人生で唯一好意を寄せられた人間がこんなアブノーマルな奴だったとは、笑い話にもならない。 「はあ、流石です。思ったとおりです。こんなに大きくてグロテスクだと逆に惚れ惚れしちゃいますよ。これで沢山子供を作りましょう。いえ、授かりましょう」 そういうと、さっきから寒い室内でもその勢いを衰えさせない我が分身をしごきだす久野。 気を失う前に飲まされた精力剤のせいか、かなり敏感に反応する愚息。 「やっぱり興奮してくれてるんですね、じゃなきゃこんない汁が出るわけないですもんね。でもまだ駄目です。ただ何もないところに精子をぶちまけるのは許しません」 そういうと、彼女は俺の体の上にのしかかり、腰にまたがる。 「そこからでも見えます?キスしてからだいぶ時間が経っているのにずっと下着の中がぐしょぐしょです。さっきから切なくて切なくて早く繋がりたいっていってるんです でもちゃんとあなたにも感じて欲しくてずっと我慢してたんですよ?もうおあずけされるのは沢山です」 下着をわずかにずらし、秘部をあらわにさせそのままゆっくりと腰を落としていく。 先端から徐々に自分が久野の中に包まれていく。彼女の秘部は大量の汗をかいたように濡れぼそり、溢れ出る愛液が触れ合う肌を通して自分へと伝ってくるのが分った。 706 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 56 15 ID LjD7YQ3b 「感じますよ、ちゃんと感じます。少しまだほんのさきっぽだけなのにこんなに気持ちいいですよ。んぁ、もう一気にいっちゃいます」 すとんと一気に腰を落とす。同時に自分の全てが包まれた感覚になり、それが快美な波となり押し寄せた。 久野の顔は初めての性交で痛みを感じているのか、頬を引きつらせながらか細い声で小さくうめいた。 「くぅ、やっ…ぱり、い…たいです…ね。でも、これ…で繋がった…んですよね。夫婦になったんですよね?」 繋がった状態で体重を俺に預けながら、久野は俺を抱きしめる格好になる。 久野の乳首は硬くなっており、それが自分の胸板に擦れる。 「でも、やっぱり痛いからキスしながらしましょう。それなら私耐えられます。いい…ですよね?」 上目づかいで俺を見つめる。頼りなささげに眉をさげながらそんなことを言われると、俺の気持ちは揺らいだ。 それに初めての性交で、繋がったまま。久野は痛いといってはいるが、さっきから俺の分身は彼女の中で締め上げられており、早く動きたいと脈打っていた。 「わかった…から、動いてくれ。もう…どうにかなりそう、だ」 その顔を見て満足したのか、妖艶な笑みを浮かべた久野は再度俺に唇を重ねた。 すぐさま、舌をねじ込ませ俺の舌を求める。舌を絡ませ吸いたてながら、互いの唾液を貪りあう。 荒い呼吸をしながら、重なり、互いがそこにいるかを確かめ合うように求める。 俺は腰をまるで獣のように久野の膣に突き立て、久野はそれに応えるように受け止めた。 心臓が早鐘のように脈打つのがわかる、それは久野も同様だった。 重なり合った胸の鼓動が、しかと感じられた。抱き合って分ったのだが、久野もやはり女性。その体は柔らかく華奢で手荒く扱えば壊れてしまいそう気がした。 意識すればするほど、自分が熱くなるが分る。俺は欲望に身を任せひたすらに久野を求めた。 自分から行為に及んだとはいえ、やはり痛みがあるのか久野は涙をこぼしながら、俺の体をしっかりと抱きしめてくる。 いったん唇をはずし、大丈夫かと声をかける。 「痛くないのか?駄目ならやめてもいいんだぞ?」 「巴、巴って呼び捨ててください。名前を呼ばれるだけで私は気持ちよく慣れるんです。それだけで我慢できます。だからいっぱい呼んでください」 自分が一番辛いのに、それを隠すように弱さを見せない久野、もとい巴のいじらしさが俺にはとても愛しく思えた。 「クッ、もう限界だ。出すぞ、巴」 名前を呼んだ瞬間、膣の中が勢いよく締まり、射精感がさらに高まる。 「でますか?でるんですね?いいですよ、来てください。私を貴方のものにしてください、もっと貴方の色に染めてください」 ピクピクと肉茎が脈打ちながら、関をきったように精液をはきだす。俺は巴の中で果てていた。 「やっと名前で呼んでくれましたね。でも、これくらいでへばってちゃ駄目ですよ。今までお預けをくらっていたぶんをたっぷり返して貰いますからね」 そういうと、射精して間もない俺の肉棒を抜くことなく、またリズミカルに動きはじめる。 「私もアソコで気持ちよくなりたいので、とりあえずそれまで頑張ってください」 たとえそうなったとしても終わらせる気なぞ微塵も感じさせない顔で、巴は幸せそうに微笑んだ。 その顔を見て、俺はあの夢の娘の母が誰なのか分ったようなきがした。 艶めかしい声を上げながら何度も何度も腰を打ち下ろす。あれからすでに何度射精したかなぞ覚えておらず、何時間この状態かも分らない。 それでも巴は俺を求めつづけた。小刻みに腰を揺すりたて、肉壁をきつく締め上げ、何度も何度も。 「まだ、だめです。もっとください。もっともっともっともっともっともっと、いっぱい赤ちゃん産みます。一生気持ちよくしてあげます。 だからもっと私に愛をください。ふたりで愛を育みましょう。少し遅めの私からのクリスマスプレゼントです。 くふっ、うふふふふふふふあははははははははは」 精力剤の効果なぞとっくにきれていたが、射精を終え息子が萎えるとそのたびに前立腺に指を突きたてられ、何度も何度も性交をし続けた。 射精感はあるものの、精子はとっくに打ち止めになっていただろう。それでも巴は求め続けた。より確実に俺を虜にするため。 「幸せにしてあげます。幸せになります。もうやつれなくてもいいんですよ?もう寂しくないですよ?これからはずっと死ぬまでいっしょです」 俺は幸福がなにかは分らなかったが、確実にいえることはこのままではいつか俺は干からびるということだ。 それでもなんとなく、こんな生き方も悪くないのじゃないか、と思い始めていた。 707 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 03 57 30 ID LjD7YQ3b 投下終了です。時期を過ぎたネタって冷めたコーヒーなみに美味しくないですよね。 お目汚し失礼。 708 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 04 00 31 ID c45MDk1A 乙GJ 工場の人いい加減だなwww 709 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 06 31 07 ID cbSN5lz3 707 GJ。好きよこういうの、大好きよ 710 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 08 26 18 ID 804Vi+VM 707 GJ! 大好物です うちにも是非きてホスイ 711 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 13 18 42 ID Ir4HZHAq 707 GJ 冷めたコーヒーでももっと冷たくしてアイスコーヒーとして飲めばおいしいですよね 712 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/28(日) 20 35 00 ID Aa5J88xF 誰かクロノトリガー並みマルチエンディングのSS書いてくれないものか・・・ 713 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/29(月) 00 56 48 ID w8tBw/X6 707 GJ、続きがあったら読みたいぜ ヤンデレの敬語はたまらん 714 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/12/30(火) 13 48 45 ID HmI1iUSl ヤンデレって、ヤンデレになる過程が大事なんだと思うんだよな。 715 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/30(火) 23 24 55 ID WUkKbHGo 714 あなたの気持はすごくわかります 716 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/30(火) 23 51 39 ID 59aJux5c ヤンデレスレの住人なら初詣のお願いはみんな決まってるよな! 717 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 00 52 21 ID LI1WqhQ2 少しは女の子にもてますように。ですね、わかります。 718 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 01 12 37 ID Imb5yBK1 普通の女の子にモテて嬉しいわけないだろ…常識的に考えて 719 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 01 14 23 ID J5cXBKJz 朝起きたらイケメンになっていますように 720 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/12/31(水) 02 36 23 ID If6V0G+v 朝起きたらベッドに拘束されていて、そのままヤンデレの女の子に逆レイプされますように。 721 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 03 36 44 ID op0Mou2V 健康 722 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 04 16 57 ID LI1WqhQ2 718 「少しは女の子にもてますように!」 「どうして?私がいるのにどうしてそんな事言うの?ねえどうして?」 というフラグを回収したいのだよ。わかるな? 723 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 07 49 00 ID mJzKbRJ/ 普段はさっぱりしてるんだけど、実はかなり病んでたりする 明るくかっぱつな女の子に監禁されてますように 724 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 10 28 46 ID 7JMY1SBB 俺も監禁されて逆レイプがいいなぁ 725 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 12 39 46 ID HkWOYGhS 俺は、薬盛られてレイプ→責任とってね。がいい。 726 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 16 49 16 ID 7JMY1SBB それもすばらしい 727 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 20 21 45 ID +HVWEYvs 卑劣なヤンデレ (中略) 千葉でピーナツと暮らしていたあなた、 また千葉の田舎へ戻られたらいかがですか? 728 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/31(水) 22 44 13 ID nA0sRVBT デヴィ夫人やめてください! 729 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/01(木) 02 08 52 ID /0LXhUsS あけおめ!今年こそ監禁されますように! 730 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 06 23 51 ID OPHRWBQa 全ての人類は地球と言う名の惑星に監禁されている。 731 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 06 46 11 ID /VduVH7H 重力萌えとは新しい。 ロケットの歴史を思い出す。 732 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 11 24 38 ID /3yHLEEe 地球か・・・ なにもかも、皆、なつかしい・・・ 733 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 12 48 32 ID UUoOjEBr 地球姉さんと月妹が海男をキモ引力で引っ張り合うのを想像した。 734 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 20 59 33 ID Q1ZRHzw2 ヤンデレが活きる正月ネタが思い浮かばない… 735 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 21 16 08 ID lyxUwZKa 病み巫女? 736 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 22 06 36 ID GrcPYkEl 神頼みならぬ、病み頼み… 訳が解らんなこりゃ 737 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 01 08 33 ID DXtKf1eI ヤンデレ×お正月=X 誰かXを解明してくれ! 738 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 01 25 51 ID 5DlT/RoW そりゃ初詣へ一緒に行くをすっぽかされたのに、寒い風の中唇が割れても男が来るのを待ち続けるヤンデレだろ。 冷たく乾いた風が容赦なく皮膚から水分を奪い取り、 ヤンデレの柔らかい唇がひび割れても待つのだ。 739 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 01 33 33 ID HXGNFBbU 年賀状がやたら多いと思ったら! 740 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 05 29 48 ID VF1d/Oyy 「ねぇ、737君。お年玉ここに頂戴?」 と振り袖を開いていくとか? 741 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 09 01 56 ID jB5Mx4ly 白いお年玉ですね、わかります。 742 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 14 58 23 ID WVYPPA0+ 739 全部同じ人からだった……。 743 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 20 19 09 ID jtLrve4E しかも郵便局からではなく直接投函されていた 744 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/02(金) 23 35 53 ID UgkQUOuY 一人で何通も直接投函とかきめえ そんな女がいたらすぐさま警察に突き出すよ 745 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 00 03 03 ID SebtgLWn 744 ははは、ツンデレめ 746 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 00 42 56 ID W2NgNIn5 逆に考えるんだ。 下のお年玉番号で当選する確立があがると。 747 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 01 06 45 ID W41gAez9 746 当選する賞品はすべてヤンデレ自身ですね 748 名前: ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 04 50 02 ID clWZ+s3E 投下待ちしてる間に自分も小説つくってみました。長編です。投下します。 749 名前:似せ者 ◆Tfj.6osZJM [sage] 投稿日:2009/01/03(土) 05 00 55 ID clWZ+s3E 第一話 ~始まり~ 偽者は本物を越す事は出来ない。 偽者が本物を越す時、それは偽者と本物が入れ替わる時。 似せ者は本物になる事は出来ない。 似せ者は本物を越そうが越さまいが似ているだけのオリジナル。 入学式から丁度一ヶ月が経った。 俺は苦労の末に仁衣高校に入学した。 県内トップクラスの学力を保持、様々なスポーツで好成績を収めるという文武両道の校風、そしてさらに日本トップレベルの仁衣大学へエスカレーター方式で行かれるとなれば、当然、皆行きたがるというものだ。 女子の場合はさらに制服が可愛いことも人気に拍車をかけているらしい。 倍率は10倍以上。去年は二年前に仁衣高校に入学した姉さんとの猛特訓の日々だった。 「はい、次はこの問題を解く!出来なかったら罰ゲームよ」 次から次へと来る問題。そして悪魔のような罰ゲーム。二度と思い出したくない…。 しかしそんな地獄のような日々を乗り越えて手に入れた生活はまさに夢のようだった。何から何まで楽しくて充実している。一ヶ月があっという間であった。 入学してすぐに陸上部に入学した俺は走ることで青春を満喫していた。たった今も練習に励んでいる。 「んじゃ始めっか!」 俺は気合を入れるように呟いた。 一週間前から、朝の授業前に一年部員同士で集まっての自主朝連をしているのだ。 早起きが苦手な俺だが大好きな陸上の為となると話が違う。目覚ましやら携帯のアラームやらを何重にも設定し、体を叩き起こしていた。 みんなで一緒に朝練と言っても、やることは様々だ。体操だけ全員一緒にやり、後は個人個人で好きなようにやっている。 投擲や跳躍などのフィールド種目専門の人間とトラック種目専門の人間が一緒に練習したって仕方がない。そもそも、同じトラック種目専門だって、短距離専門の人間と長距離専門の人間じゃ、鍛え方はまるで違う。 俺はというと…、とにかく、がんがんと長い距離を走っていた。それこそ、ブレーキのない車のように。 きっかけはなんだっけ?オリンピックのマラソンに感動した時だろうか。それとも駅伝のゴボウ抜きというものに強く憧れた時であろうか。案外、幼い頃に読んだ『走れメロス』に影響されてなどといった、くだらない理由だったかもしれない。 とにかく俺は走ることが大好きだった。 とりあえず俺はいつも通りジョグを始める。もう5月だが、まだまだ風は冷たい。しかし、それは、身を凍えさせるような冷たさではなく、朝の肌を適度に刺激する心地の良い冷たさだった。 うん、今日もいい朝だ。 「じゃ最後に全員参加で400mダッシュ。ビリの奴は今日の昼休みに好きな女子に告白」 いきなりそんなふざけた事を言い出したのは俺の悪友の杉下だ。 「俺はパス」 「無理」 人間のインパルスの限界スピードを越しているのではないかと疑うほど、瞬時に俺の意思は却下された。 「あのですね、俺はジョグやらインターバルやらをやりまくった後で、歩くのもキツイので…」 「だから?」 今度は最後まで言葉を発することすら、許されなかった。 周りの奴らはニヤニヤと俺を見ている。この状況が面白くてたまらない様子だ。 そういえば、今日はやたら、俺以外の奴らの練習が軽かった気がする。 「嵌められたな…」 元々、400mとなると長距離専門の俺は分が悪い。さらにこの状況となると… 「おいおい、諦めるのか?俺の知っている赤坂映太という男はどんな逆境にも勇敢に立ち向かう強い人間なのだが、はたして違ったのかな?」 「俺の知っている杉下隆志のイメージ通りの発言、ありがたく受け取っておくよ」 「さぁ、スタートラインにつくがよい」 見ると、既に俺以外はスタートの体勢であった。こういう時、うちの部員は妙に団結するから困る。 「詰みだな」 俺は自らの運命を悟った。 どうやら俺は今日、藤堂優奈に告白する運命のようだ。さてどうしようものか…。